説明

乳頭状腎細胞癌におけるテムシロリムス(Temsirolimus)の抗腫瘍活性

本発明は、乳頭状腎細胞癌の治療の方法又は前記治療におけるCCI−779の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
CCI−779は、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステルであり、インビトロ及びインビボの両方のモデルにおいて腫瘍増殖に対する有意の阻害作用を示したラパマイシンのエステルである。この化合物は現在、テムシロリムスという名称で一般的に知られている。CCI−779単独(例えば米国特許第7,189,735号参照)又は他の活性薬剤との組合せ(例えば米国特許出願第2004−0258662A1号参照)での使用が記述されている。
【背景技術】
【0002】
腎細胞癌(RCC)は成人における最も一般的な原発性腎悪性腫瘍であり、すべての悪性腎腫瘍の85%を超える割合を占め、すべての成人悪性疾患の2%を占める。腎悪性腫瘍の大部分は尿細管上皮から生じ、WHOの腎腫瘍の国際的組織学的分類(WHO International Histological Classification of Kidney Tumors)に定義されている形態学的特徴に基づいていくつかの異なるサブタイプに分類される。
【0003】
最も一般的なサブタイプである明細胞腎細胞癌(cRCC)は、すべてのRCCの約70〜75%を占める。乳頭状腎細胞癌(pRCC)は、症例の約15%を占める2番目に最も頻度の高いサブタイプであり、色素嫌性腎細胞癌(約5%)、腎膨大細胞腫(約3%)、及び腎集合管癌(約2%)がそれに続く。
【0004】
PRCCは、組織学的には乳頭状構造に配置された腫瘍細胞を伴う線維性血管芯の存在によって特徴づけられる。PRCC腫瘍の大部分は無痛性挙動を示し、進行及び死亡の危険度は限られているが、異なるサブセットは高度に攻撃的な挙動を示す[X. J. Yang et al, Cancer Res. 65, 5628 (2005)]。PRCCの治療にはまだ依然として問題が多い。現在まで、進行したpRCCを有する患者のための有効な治療法は使用可能でなく、pRCCを有する患者は、通常はより一般的な明細胞腎細胞癌のために設計される臨床試験から通例的に除外される。
【0005】
マルチキナーゼ阻害剤、ソラフェニブ(Nexavar(商標))及びスニチニブ(Sutent(商標))は、進行した腎細胞癌及び転移性腎癌を有する患者の治療に関してFDAの認可を取得した。両阻害剤は、VEGF、PDGFR、及び、その他の低分子マルチ受容体キナーゼ阻害剤であり、従来のサイトカイン治療薬の一部と比較して改善された無増悪生存期間と低い毒性プロフィールを示した。しかし、これらの臨床試験には明細胞疾患を有する患者だけが登録され、非明細胞疾患を有する患者は除外された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,189,735号
【特許文献2】米国特許出願第2004−0258662A1号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】X. J. Yang et al, Cancer Res. 65, 5628 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
求められているのは、非明細胞腎細胞癌を治療するための有効な方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、mTOR阻害剤、例えばCCI−779(テムシロリムス)を使用して非明細胞腎細胞癌、例えば乳頭状腎細胞癌を治療するための方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、非明細胞腎細胞癌、例えば乳頭状腎細胞癌を治療するための、又は治療用薬剤の製造における、mTOR阻害剤、例えばCCI−779(テムシロリムス)の使用を提供する。
【0011】
1つの態様では、本発明は、有効量のCCI−779を単独の抗腫瘍薬として投与することにより、乳頭状腎細胞癌の治療が必要な被験者において乳頭状腎細胞癌を治療する方法を提供する。1つの実施形態では、被験者はこれまでいかなる全身性抗腫瘍薬によっても治療されていない。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、遺伝性I型乳頭状腎細胞癌を治療するためのCCI−779の使用を提供する。尚さらなる態様では、本発明は、遺伝性II型乳頭状腎細胞癌を治療する際のCCI−779の使用を提供する。さらにもう1つの態様では、本発明は、散発性乳頭状腎細胞癌を治療する際のCCI−779の使用を提供する。
【0013】
本発明のさらなる他の態様及び利点は、以下の本発明の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、被験者において乳頭状腎細胞癌を治療するため、例えば散発性pRCCを含む、及びこれまでに治療されていない、抗療性である又は進行したpRCCを含む、遺伝性I型乳pRCC、遺伝性II型pRCCを治療する際の、又は治療するための薬剤を調製する際の、ラパマイシン誘導体、CCI−779の使用を提供する。
【0015】
本発明に従って使用される、「治療する」という用語は、乳頭状腎細胞新生物を有する哺乳動物を、新生物を低減する若しくは根絶するため及び/又は哺乳動物の生存の延長及び/又は哺乳動物の緩和のために前記哺乳動物に有効量のCCI−779を提供することによって治療することを意味する。
【0016】
本明細書において使用される、乳頭状腎細胞癌は、サブタイプ1及び2にさらに分類することができ、またこれらのサブタイプの混合型として存在し得る。1型は、淡色の細胞質を有する小さな細胞で覆われた乳頭と管状構造、目立たない仁を備える小さな卵形の核、頻度の高い糸球体様乳頭、乳頭浮腫、乳頭芯内の泡沫状マクロファージ及び砂腫体からなると特徴づけられる。2型は、豊富な好酸性細胞質を有する大型細胞によって覆われた乳頭と擬似層化からなると特徴づけられる。PRCCはまた、散発性(非遺伝性)及び遺伝性形態でも起こり得る。
【0017】
本発明に従って使用される、CCI−779を提供することに関しての「提供する」という用語は、CCI−779を直接投与すること、又は体内で有効量のCCI−779を形成するプロドラッグ、誘導体又は類似体を投与することのいずれかを意味する。
【0018】
本発明に従って使用される、「これまで治療されていない」という用語は、その所与の新生物のために適切な標準的、全身性化学療法又は他の承認済み又は実験的治療で治療されたことがない、患者における新生物を指す。
【0019】
本発明に従って使用される、「抗療性」という用語は、典型的にはその所与の新生物のために適切であった標準的化学療法での治療後に進行していた、患者における新生物を指す。
【0020】
本明細書で使用される、「CCI−779」という用語は、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(テムシロリムス)を意味し、そのプロドラッグ、誘導体、医薬的に許容される塩、又は類似体を包含する。「CCI−779」及び「テムシロリムス」という用語は、本明細書全体を通じて交換可能に使用される。
【0021】
テムシロリムスの調製は米国特許第5,362,718号に述べられている。テムシロリムスの位置特異的合成は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,277,983号に述べられている。テムシロリムスの合成のためのさらにもう1つの位置特異的方法は、2004年7月30日出願の米国特許出願第10/903,062号(2005年2月10日に米国特許出願公開第2005−0033046−A1号として公開)、及びそれに対応する国際公開第2005/016935号(2005年4月7日公開)に述べられている。
【0022】
1つの実施形態では、テムシロリムスは遺伝性I型乳頭状腎細胞癌の治療において提供される。もう1つの実施形態では、テムシロリムスは遺伝性II型乳頭状腎細胞癌の治療において提供される。さらにもう1つの実施形態では、テムシロリムスは散発性乳頭状腎細胞癌の治療において提供される。さらにもう1つの実施形態では、乳頭状腎細胞癌はこれまで治療されていない。もう1つの実施形態では、乳頭状腎細胞癌は進行している。
【0023】
もう1つの態様では、乳頭状腎細胞癌は、危険性の高い特徴、すなわち患者の生存期間短縮についての予後因子に関連する。さらなる実施形態では、危険性の高い特徴は、血清乳酸デヒドロゲナーゼレベルの上昇;ヘモグロビンレベルの低下;血清カルシウム上昇;1年未満の初期診断から無作為化までの期間;70又はそれ以下のKarnofskyパフォーマンススコア;及び複数の転移の臓器部位を含む。
【0024】
1つの実施形態では、テムシロリムスは、例えばアルキル化剤等の化学療法剤;ホルモン剤(すなわちエストラムスチン、タモキシフェン、トレミフェン、アナストロゾール又はレトロゾール);抗生物質(すなわちプリカマイシン、ブレオマイシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン又はダウノルビシン);抗有糸分裂薬(すなわちビンブラスチン、ビンクリスチン、テニポシド又はビノレルビン);トポイソメラーゼ阻害剤(すなわちトポテカン、イリノテカン、エトポシド又はドキソルビシン);及びその他の薬剤(すなわち、ヒドロキシウレア、トラスツズマブ、アルトレタミン、リツキシマブ、パクリタキセル、ドセタキセル、L−アスパラギナーゼ又はゲムツズマブ・オゾガマイシン);生化学的調節剤、イマチブ;EGFR阻害剤、例えばEKB又は他のマルチキナーゼ阻害剤、例えば腫瘍細胞と腫瘍血管系の両方においてセリン/トレオニン及び受容体チロシンキナーゼを標的するもの、又は免疫調節剤(すなわちインターフェロン、IL−2又はBCG)を除外して、単独の活性薬剤として投与される。インターフェロンの例は、インターフェロンα(αインターフェロン)、インターフェロンβ、インターフェロンγ、及びそれらの混合物を含む。
【0025】
もう1つの実施形態では、CCI−779は単独の抗腫瘍薬である。さらにもう1つの実施形態では、CCI−779はさらなる活性薬剤と共に提供されるが、但しさらなる活性薬剤はインターフェロン、例えばαインターフェロンではない。
【0026】
腫瘍治療に典型的であるように、投薬レジメンは、数多くの因子、例えば疾患の重症度、疾患に対する応答、治療に関連する毒性、患者の年齢及び健康状態に基づき、治療する医師によって注意深く監視される。テムシロリムスの初期i.v.注入用量は、週に1回の投薬レジメンで投与されるとき、約1〜250mg、約5〜約175mg又は約5〜約25mgであると予想される。1つの実施形態では、用量は1週間につき1〜250mgである。さらなる実施形態では、用量は1週間につき25mgである。他の投薬レジメン及び変法も予測でき、医師の指導を通して決定される。テムシロリムスは、i.v.注入によって又は、好ましくは錠剤又はカプセルの形態で、経口的に投与されることが好ましい。1つの実施形態では、投与は週に1回、1〜24ヵ月間である。しかし、他の治療期間も適切であり、当分野の技術範囲内である。
【0027】
投薬レジメンは投与経路によって異なると予想される。本発明において有用なテムシロリムスの経口用量は、10mg/週〜250mg/週、約20mg/週〜約150mg/週、約25mg/週〜約100mg/週又は約30mg/週〜約75mg/週であることが予想される。ラパマイシンに関しては、予想される経口用量は0.1mg/日〜25mg/日である。正確な容量は、治療される個々の被験者についての経験に基づき投与する医師によって決定される。
【0028】
本発明において有用なテムシロリムスを含有する経口製剤は、通常使用される任意の経口剤型、例えば錠剤、カプセル、口腔製剤、トローチ、ロゼンジ及び経口液体、懸濁液又は溶液を含み得る。カプセルは、活性化合物の混合物を、不活性充填剤及び/又は希釈剤、例えば医薬的に許容されるデンプン(例えばトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、糖類、人工甘味料、粉末セルロース、例えば結晶及び微結晶セルロース、小麦粉、ゼラチン、ゴム等と共に含有し得る。有用な錠剤製剤は、従来の圧縮、湿式造粒又は乾式造粒法によって製造され得、医薬的に許容される希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化又は安定化剤を利用し得るが、それらは、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、滑石、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合シリケート類、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、滑石、乾燥デンプン及び粉糖を含むがこれらに限定されない。好ましい表面改質剤は、非イオン性及びアニオン性表面改質剤を含む。表面改質剤の代表的な例としては、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びトリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書における経口製剤は、活性化合物の吸収を変化させるために標準的な遅延又は時間放出製剤を利用し得る。経口製剤はまた、必要に応じて適切な可溶化剤又は乳化剤を含有する、水又は果汁中の有効成分を投与することからなり得る。3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステルについての好ましい経口製剤は、2004年4月22日公開の米国特許出願公開第2004/0077677A1号に述べられている。
【0029】
一部の場合には、テムシロリムス組成物をエアロゾルの形態で気道に直接投与することが望ましいと考えられる。
【0030】
テムシロリムス組成物はまた、非経口的に又は腹腔内に投与し得る。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としてのこれらの活性化合物の溶液又は懸濁液は、界面活性剤、例えばヒドロキシ−プロピルセルロースと適切に混合された水中で調製できる。分散も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及び油中のこれらの混合物中で調製できる。通常の保存及び使用の条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含有する。
【0031】
注射用の適切な医薬形態は、滅菌水溶液又は分散液及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。すべての場合に、医薬形態は無菌でなければならず、また容易に注射できる程度に流動性でなければならない。製造及び保存の条件下で安定でなければならず、また微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用に対して保護されていなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステルについての好ましい注射用製剤は、2004年8月26日公開の米国特許出願公開第2004/0167152A1号に述べられている。
【0032】
本開示の目的に関して、経皮投与は、体表面並びに上皮及び粘膜組織を含む身体通路の内層を横切るすべての投与を包含すると理解される。そのような投与は、ローション、クリーム、泡、パッチ、懸濁液、溶液及び坐薬(直腸及び膣坐薬)中で本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩を使用して実施され得る。
【0033】
経皮投与は、活性物質に対して不活性な担体であって、皮膚に非毒性であり、そして全身的吸収のために皮膚を介して血流中に薬剤を送達することを可能にする担体及び活性物質を含有する経皮パッチの使用を通して達成され得る。担体は、様々な形態、例えばクリーム及び軟膏、ペースト、ゲル並びに閉鎖装置(occlusive devices)の形態をとり得る。クリーム及び軟膏は、粘性液体又は水中油型若しくは油中水型のいずれかの半固体エマルジョンであり得る。有効成分を含有する石油又は親水性石油に分散した吸収性粉末からなるペーストも適切であり得る。様々な閉鎖装置、例えば担体と共に又は担体なしで有効成分を含有するレザバーを覆う半透膜、又は有効成分を含有するマトリックスが、有効成分を血流中に放出するために使用され得る。他の閉鎖装置は文献において公知である。
【0034】
坐薬製剤は、坐薬の融点を変化させるためのワックスを添加した又は添加していない、ココアバターを含む従来の材料、及びグリセリンから作られ得る。水溶性坐薬基剤、例えば様々な分子量のポリエチレングリコールも使用し得る。
【0035】
1つの実施形態では、本発明の方法において使用される方法又は組成物中のテムシロリムスをもう1つ別のmTOR阻害剤に置換し得る。本明細書において使用される、「mTOR阻害剤」という用語は、G1期からS期への細胞周期の進行をブロックすることによって細胞の複製を阻害する化合物若しくはリガンド、又はその医薬的に許容される塩を意味する。この用語は、中性の三環式化合物ラパマイシン(シロリムス)及び他のラパマイシン化合物、例えばラパマイシン誘導体、ラパマイシン類似体、mTOR活性を阻害する他のマクロライド化合物、及び「ラパマイシン」という用語の以下の定義に含まれるすべての化合物を包含する。これらは、「ラパマイシン」に構造的類似性を有する化合物、例えば治療的有用性を高めるように修飾された類似の大環状構造を有する化合物を含む。FK−506も本発明の方法において使用できる。
【0036】
本明細書において使用される、「ラパマイシン」という用語は、以下に示す基本ラパマイシン核を含む免疫抑制化合物のクラスを定義する。
【化1】

本発明のラパマイシンは、免疫抑制特性を保持しつつ、ラパマイシン核の誘導体として化学的又は生物学的に修飾されている化合物を含む。従って、「ラパマイシン」という用語は、ラパマイシン、及びラパマイシンのエステル、エーテル、カルバメート、オキシム、ヒドラゾン及びヒドロキシルアミン、並びにラパマイシン核上の官能基が、例えば還元又は酸化を通して修飾されているラパマイシンを包含する。また、ラパマイシンの医薬的に許容される塩も「ラパマイシン」という用語に包含される。
【0037】
「ラパマイシン」という用語はまた、すべてが参照により本明細書に組み込まれる、以下の特許に述べられているラパマイシンの42−エステル及びエーテル並びに/又は31−エステル及びエーテルを包含する。アルキルエステル(米国特許第4,316,885号);アミノアルキルエステル(米国特許第4,650,803号);フッ素化エステル(米国特許第5,100,883号);アミドエステル(米国特許第5,118,677号);カルバメートエステル(米国特許第5,118,678号);シリルエステル(米国特許第5,120,842号);アミノジエステル(米国特許第5,162,333号);スルホン酸及び硫酸エステル(米国特許第5,177,203号);エステル(米国特許第5,221,670号);アルコキシエステル(米国特許第5,233,036号);O−アリール、O−アルキル、O−アルケニル及びO−アルキニルエーテル(米国特許第5,258,389号);炭酸エステル(米国特許第5,260,300号);アリールカルボニル及びアルコキシカルボニルカルバメート(米国特許第5,262,423号);カルバメート(米国特許第5,302,584号);ヒドロキシエステル(米国特許第5,362,718号);ヒンダードエステル(米国特許第5,385,908号);複素環式エステル(米国特許第5,385,909号);ジェミナル二置換エステル(米国特許第5,385,910号);アミノアルカン酸エステル(米国特許第5,389,639号);ホスホリルカルバメートエステル(米国特許第5,391,730号);カルバメートエステル(米国特許第5,411,967号);カルバメートエステル(米国特許第5,434,260号);アミジノカルバメートエステル(米国特許第5,463,048号);カルバメートエステル(米国特許第5,480,988号);カルバメートエステル(米国特許第5,480,989号);カルバメートエステル(米国特許第5,489,680号);ヒンダードN−オキシドエステル(米国特許第5,491,231号);ビオチンエステル(米国特許第5,504,091号);O−アルキルエーテル(米国特許第5,665,772号);及びラパマイシンのPEGエステル(米国特許第5,780,462号)。これらのエステル及びエーテルの調製は、上記に列挙した特許に開示されている。
【0038】
さらに、米国特許第5,256,790号に開示されているラパマイシンの27−エステル及びエーテルも、「ラパマイシン」という用語の定義に包含される。またC−27ケトンラパマイシンも記述されており、これは対応するアルコールに還元され、次に対応するエステル又はエーテルに変換される。これらのエステル及びエーテルの調製は、上記に列挙した特許に開示されている。また、米国特許第5,373,014号、同第5,378,836号、同第5,023,264号及び同第5,563,145号に開示されているラパマイシンのオキシム、ヒドラゾン及びヒドロキシルアミンも包含される。これらのオキシム、ヒドラゾン及びヒドロキシルアミンの調製は、上記に列挙した特許に開示されている。42−オキソラパマイシンの調製は米国特許第5,023,263号に開示されている。
【0039】
ラパマイシンの例は、例えばラパマイシン、32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イルイルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イルイルオキシ−32(S)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)、40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシン、又は米国特許第5,362,718号に開示されている、それらの医薬的に許容される塩、ABT578、又は例えば国際公開第99/15530号に開示されている、40−(テトラゾリル)−ラパマイシン、40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン、又は国際公開第98/02441号及び同第01/14387号に開示されているラパマイシン類似体、例えばAP23573を含む。もう1つの実施形態では、化合物はCertican(商標)(エベロリムス、2−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン、Novartis、米国特許第5,665,772号)である。
【0040】
以下の標準的な薬理学的試験手順は、ある化合物が本明細書において定義されるmTOR阻害剤であるかどうかを判定するために使用できる。増殖因子で刺激した細胞の、ラパマイシンのようなmTOR阻害剤による処理は、ウエスタンブロット法によって証明されるようにセリン389のリン酸化を完全にブロックし、それ自体mTOR阻害についての良好なアッセイを構成する。したがって、mTOR阻害剤の存在下で培養中の、増殖因子(例えばIGF1)によって刺激した細胞からの全細胞溶解産物は、p70s6Kのセリン389に特異的な抗体で標識することができるアクリルアミドゲル上のバンドを示すことができないはずである。
【0041】
1つの実施形態では、インターフェロンα(α−インターフェロン又はα−IFN)の非存在下で、乳頭状腎細胞癌の治療が必要な哺乳動物に有効量のCCI−779を提供することを含む、前記哺乳動物において乳頭状腎細胞癌を治療する方法が提供される。また、乳頭状腎細胞癌の治療が必要な哺乳動物における乳頭状腎細胞癌についての治療レジメンのための薬剤中でのCCI−779の使用が提供され、CCI−779はそのレジメンにおける単独の活性薬剤である。さらにもう1つの実施形態では、乳頭状腎細胞癌の治療が必要な哺乳動物における乳頭状腎細胞癌についての治療レジメンのための薬剤中でのCCI−779の使用が提供され、CCI−779は併用レジメンで使用されるが、前記レジメンはαインターフェロンを除外する。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、単位投与形態のテムシロリムスの1、1〜4又はそれ以上の単位を有する1又はそれ以上の容器を含む、一個体の哺乳動物のための一連の抗腫瘍治療を含む製品又は医薬パックを包含する。もう1つの実施形態では、医薬パックは、単位投与形態のテムシロリムスの1単位を有する容器を含む、一個体の哺乳動物のための一連の抗腫瘍治療を含む。
【0043】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、投与のための準備が整った形態でパック又はキット中に存在する。他の実施形態では、本発明の組成物は、場合により投与用の最終溶液を作製するために必要な希釈剤と共に、濃縮形態でパック中に存在する。さらなる他の実施形態では、製品は、固体形態の本発明において有用な化合物及び、場合により、本発明において有用な化合物のための適切な溶媒又は担体を有する別途の容器を含む。
【0044】
さらなる他の実施形態では、上記パック/キットは、他の成分、例えば製品の希釈、混合及び/又は投与についての指示書、他の容器、注射器、針等を含む。他のそのようなパック/キット成分は、当業者には容易に明らかである。
【0045】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明の限定ではない。
【実施例】
【0046】
非明細胞腎細胞癌に対する単独の全身性活性薬剤としてのCCI−779
この第III相試験では、26ヶ国から626名の進行した転移性腎細胞癌患者を一次治療としてαIFN又はCCI−779(テムシロリムス)に無作為に割り付けた。この群は、早期死亡についての多くの危険因子を有する患者の非常に予後不良の群である。患者は、週に3回300万単位(MU)のαIFN単独の皮下投与を受け、18MUまで段階的に増加されるか、又は週に1回25mgのCCI−779の静脈内注入を受けた。
【0047】
この試験についての適格性として求められたのは、これまでにこの疾患のための全身的治療を受けていない、組織学的に確認された進行性(IV期又は再発性疾患)RCCであった。中枢神経系転移を有する被験者、RCCのための事前の抗癌治療及び無作為割り付けの前4週間以内の治験治療/治験薬を受けた被験者は試験から除外した。
【0048】
この試験の主要目的は、全体的生存率の主要評価項目と効果であった。この試験の副次的目的は、安全性、健康転帰及び付加的な効果評価項目であった。この試験の副次的効果評価項目は、無増悪生存期間、奏効率(完全及び部分奏功)、臨床的有用率、全体的奏功の期間、症状悪化までの期間、及び健康転帰の測定であった。加えて、3つの治療群すべてにわたる被験者の応答を、AKT−mTOR経路に関与するタンパク質の腫瘍発現をスクリーニングすることに基づいて評価した。腫瘍組織学(明細胞対非明細胞)、年齢(65歳対≧65歳)、及び予後リスク群(中等度対不良)の影響を評価するため、他の予定された解析及びポストホック解析を実施した。
【0049】
以下は得られた結果(表1)を要約する。
【表1】

【0050】
異なる組織学を有する患者の割合は、試験のすべての群にわたってバランスがとれていた(81%明細胞;13%不確定;6%非明細胞)。付加的なサブタイプデータを有する患者のうちで、75%が乳頭状RCCであった。明細胞腫瘍を有する患者に関しては、全体的生存率(OS)及び無増悪生存期間(PFS)の中央値は、CCI−779(TEMSR)の方がαIFNより長く、ハザード比(HR)はそれぞれ0.82及び0.76であった。他の腫瘍組織学を有する患者については、OS及びPFS中央値は、やはりTEMSRの方がαIFNより長く、HRはそれぞれ0.49及び0.38であった。65歳未満の患者においては、OS及びPFS中央値は、TEMSRの方がαIFNより長く、HRはそれぞれ0.62及び0.61であった。TEMSR又はαIFNで治療した65歳以上の患者に関してはOS又はPFSに差はなかったが、TEMSRはαIFNよりも良好な副作用プロフィールを有していた。
【0051】
TEMSRは、それまで未治療であった明細胞型の進行した腎細胞癌(advRCC)を有する患者においてPFSを31%延長させ、HRは0.76であり、死亡又は疾患増悪の危険度が24%低下したことを示す。TEMSRはまた、αIFNに比べて、それまで未治療であった明細胞advRCCを有する患者においてOSを22%改善した。0.82のハザード比は、αIFNと比較してTEMSRを摂取した患者に関する死亡の危険度の18%低下を指示する。
【0052】
TEMSRは単独で、それまで未治療であった非明細胞advRCCを有する患者においてPFSを163%延長させ、HRは0.38であり、死亡又は疾患増悪の危険度が62%低下したことを示す。またTEMSR単独で、αIFNに比べて、それまで未治療であった非明細胞advRCCを有する患者においてOSを104%改善した。0.49のハザード比は、αIFNと比較してTEMSRを摂取した患者に関する死亡の危険度の51%低下を示す。
【0053】
65歳未満の患者の集団では、TEMSRは、それまで未治療であったadvRCCを有する患者においてPFSを61%延長させた。0.62のハザード比は、死亡又は疾患増悪危険度が38%低下したことを指示する。65歳未満の患者の集団において、TEMSRは、αIFNに比べて、それまで未治療であったadvRCCを有する患者においてOSを64%改善した。0.61のハザード比は、αIFNと比較してTEMSRを摂取した患者に関する死亡危険度の39%低下を示す。
【0054】
本明細書において言及するすべての特許、特許出願、論文及び他の文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で述べる特定の実施形態に、本発明の範囲から逸脱することなく修正を加え得ることは当業者に明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳頭状腎細胞癌の治療が必要な哺乳動物に有効量のCCI−779を提供することを含む、前記哺乳動物において乳頭状腎細胞癌を治療する方法。
【請求項2】
乳頭状腎細胞癌が遺伝性I型乳頭状腎細胞癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乳頭状腎細胞癌が遺伝性II型乳頭状腎細胞癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
乳頭状腎細胞癌が散発性乳頭状腎細胞癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
乳頭状腎細胞癌が以前に治療されたことがない乳頭状腎細胞癌である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
乳頭状腎細胞癌が危険性の高い特徴に関連するものである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
乳頭状腎細胞癌が進行したものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
CCI−779が静脈内投与されるものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
CCI−779が週に1回、1〜24ヶ月間投与されるものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
CCI−779が1週間につき1〜250mgの用量で静脈内投与されるものである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CCI−779が1週間につき25mgの用量で静脈内投与されるものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
CCI−779がレジメンにおける単独の抗腫瘍薬である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
CCI−779が投薬計画における単独の活性薬剤である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
さらなる活性薬剤をさらに含むが、但し前記のさらなる活性薬剤がインターフェロンではない、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
インターフェロンαの非存在下で、乳頭状腎細胞癌の治療が必要な哺乳動物に有効量のCCI−779を提供することを含む、前記哺乳動物において乳頭状腎細胞癌を治療する方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の乳頭状腎細胞癌の治療のためのCCI−779。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか一項に記載の乳頭状腎細胞癌の治療のための薬剤の製造におけるCCI−779の使用。

【公表番号】特表2010−523660(P2010−523660A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503027(P2010−503027)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/004501
【国際公開番号】WO2008/124125
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】