説明

乾式消火用送水管の試験又は点検用の送吸水ユニット及びその使用方法

【課題】乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検のために送水管へ送り込んだ水を、低い位置の配管からも確実に回収して繰り返し使用可能にすると共に、同送水管の耐圧性の試験又は点検と気密性の試験又は点検を同一の機器によって実施し、両者の所要労力と所要コストを低減できる送吸水ユニットとその使用方法の提供。
【解決手段】水槽の水吐出口と送水ポンプを結続してなる送水管路の先と水槽の水回収口と真空ポンプとを結続してなる吸水管路の先を合体させ、合体した配管の先を乾式消火用送水管の送水口に結続可能にしてあり、バルブの切り替え操作により、乾式消火用送水管への送水と水槽への回収を繰り返し可能にしてある乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検用の送吸水ユニット及びその使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式消火用送水管の耐圧性や気密性を試験又は点検するために用いる送吸水ユニットとその使用方法に関する。本発明において「乾式消火用送水管」とは、乾式連結送水管、乾式散水設備、スプリンクラー設備など、消火に用いる各種の送水管ないし送水設備で、通常は空(カラ)の状態になっているもののことである。以下、主として、これら「乾式消火用送水管の試験又は点検」の代表例である「乾式連結送水管の点検」の事例に基づいて、本発明を説明する。
【背景技術】
【0002】
乾式連結送水管(以下単に「連結送水管」と記載することがある。)は、火急に際して消防車が現場へ到着した後ただちに注水活動ができるように消防ホース数本に相当する立管を高層ビルなどの建物内部に敷設したものである。そのため、日頃から保守・点検を行なって万一の事態に備えておく必要がある。平成15年に一部改正施行された消防法によれば、7階建以上のビルの連結送水管で設置後10年を経過したものは、定期的な耐圧点検とその結果報告が義務付けられている。なお、乾式連結送水管の構造や点検の方法については、特許文献1に詳しく説明してある。
【特許文献1】特開2005−205050号公報 乾式連結送水管の耐圧性の点検は、一般に、同送水管へ加圧水を送り込んで所定の時間(例えば3分間)静水圧を加え、漏水やバルブの変形の有無など所定の点検項目についてチェックする方法が採られている。通常、高層ビルに設けた連結送水管は、専門業者が、水を満たした大容量の水槽と送水ポンプと所要配管や送水ホースなどから構成される送水ユニットを専用車両に搭載して各ビルなどを定期的に巡回し、点検を実施している。すなわち、専用車両に搭載してある送水ユニットの水槽に送水ポンプを介して連結した送水ホースの注水口を連結送水管の送水口につなぎ、送水口のバルブ以外の全てのバルブを閉止して送水ポンプを起動し、連結送水管内に水を送り込んで所定の点検を行ない、点検終了後は、連結送水管内の水を排水バルブを開いて排出口から排出し、廃棄している。
【0003】
このように、従来から一般に行なわれている乾式連結送水管の耐圧性の点検方法では、点検の終了後、連結送水管内に充満している水を廃棄しているので、送水ユニットの水槽(通常は消防車と同じ大きさで概ね容量1500L)に水を満杯していても、数回の点検を行なえば水槽の水を使い果たすことになり、現場で水を調達し、補給しなければならない。すなわち、従来から一般に行なわれている乾式連結送水管の試験又は点検方法及びその方法に用いる送水ユニットは「乾式連結送水管へ送水すること」のみを考えた方法及び装置であり、乾式連結送水管へ送り込んだ水を回収し、再使用することについては全く考慮されていない。
【0004】
このような状況に鑑み、本発明者は、乾式連結送水管を代表例とする乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検において、使用した水を水槽へ回収し、繰り返し使用できる送吸水ユニットとその使用方法を発明し、特許出願している(特許文献1)。
【0005】
特許文献1に開示した乾式消火用送水管の試験又は点検用の送吸水ユニットとその使用方法(以下「先開発の送吸水ユニットとその使用方法」と記載することがある。)は、水の送り込みと回収をバルブの切り替え操作により1台のポンプによって行なえるようにしたので、乾式消火用送水管の耐圧性の試験・点検に用いる水のほとんどを送吸水ユニットの水槽へ回収して再使用でき、そのため、水を大幅に節減できると共に、水を調達・補給しないで終日点検作業を続けることができるので、きわめて作業効率を高めることができるなど、画期的な効果を上げている。
【0006】
しかし、先開発の送吸水ユニットとその使用方法は、1台の送水ポンプで送水と回収を行なうため、乾式連結送水管のうち低い位置の配管(例えば、地下埋設管)の水を完全に回収できなくて配管内に水が溜まることがある。最近のビルの乾式連結送水管は排水口を備えていないものが多く、配管内に少しでも水が残留すると、配管腐食の原因となりやすい。また、先開発の送吸水ユニットとその使用方法は、送吸水ユニットの配管がメイン配管路、第1バイパス配管路及び第2バイパス配管路の3つの管路で構成されているので、構造と操作がいささか複雑である。よって、本発明者は、先開発の送吸水ユニットとその使用方法をさらに改良して、水を確実に回収できると共に、より構造を簡単にして製作コストを低減し、しかも、より作業負担を軽減できる送吸水ユニットとその使用方法を開発した。
【0007】
また、乾式連結送水管内へいきなり水を送り込むと、バルブの毀損や閉め忘れ、配管のゆるみなどがあれば大変な水損事故になるので、通常は、乾式連結送水管内へ水を送り込んでその耐圧性を点検する前に、乾式連結送水管内へエアを送り込んで配管やバルブの気密性を試験・点検している。この気密性の点検は「空気圧予備試験」とか「エアー試験」などと称されることもあるが、従来の一般的な方法では、気密性の点検の都度、送水ユニットの配管とは別に、エアコンプレッサーと発電機を結続した送気管を乾式連結消火用送水管の送水口に取り付け、エアコンプレッサーを始動させて、連結送水管内へ加圧したエアを送り込んで配管やバルブの気密性を確認し、点検が終了すると放水バルブなどを開放してエアを排出し、エアコンプレッサーの送気管を取り外し、その後に送水して耐圧性の点検を行なっている。このように、現在一般的に実施されている乾式連結送水管の気密性の点検には、大変手間がかかる方法が採られている。
【0008】
このような状況であるため、本発明者は、乾式連結送水管に代表される乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検の方法を改善すると共に、併せて、その気密性の試験・点検の方法を改善することも志向し、種々研究の結果、本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の状況に鑑み、本発明は、従来から一般に行なわれている乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検方法を改善し、試験又は点検に要する労力とコストを低減できる送吸水ユニットとその使用方法を提供すること、具体的には、乾式消火用送水管内の水を、低い位置の配管部分からも確実に回収して、その耐圧性の試験又は点検に繰り返し使用可能にすると共に、耐圧性の試験又は点検に要する労力とコストをさらに低減できる送吸水ユニットとその使用方法を提供することを第1の課題とする。
【0010】
また、本発明は、乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検と気密性の試験又は点検を同一の機器によって実施することによって、乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検の所要労力とコストを低減すると共に、その気密性の試験又は点検の所要労力とコストも低減できる送吸水ユニットとその使用方法を提供することを第2の課題とする。
【0011】
すなわち、本発明は、乾式消火用送水管の試験又は点検について、耐圧性の試験又は点検方法と気密性の試験又は点検方法の両方を改良することによって、乾式消火用送水管の試験又は点検に要する労力とコストを大きく低減できる送吸水ユニットとその使用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明のうち特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、水槽の水吐出口と送水ポンプを結続してなる送水管路の先と水槽の水回収口と真空ポンプとを結続してなる吸水管路の先を合体させ、合体した配管の先を乾式消火用送水管の送水口又はそれに嵌合する送吸水ホースに結続可能にしてあると共に、全ての配管は耐圧性の管で構成してあり、水槽の水を送水ポンプによって乾式消火用送水管へ送り込み、バルブの切り替え操作により、送り込んだ水を真空ポンプによって水槽へ回収し、再びバルブの切り替え操作により、水槽に回収した水を送水ポンプによって乾式消火用送水管へ送り込む作業を繰り返し可能にしてある乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検用の送吸水ユニットである。
【0013】
同請求項2に記載する発明は、送水管路にエアコンプレッサーを取り付けてあり、エアコンプレッサーを始動して送水管路から乾式消火用送水管へエアを送り込むことによって乾式消火用送水管の気密性の試験又は点検を可能にしてある請求項1に記載の送吸水ユニットである。
【0014】
同請求項3に記載する発明は、車両に搭載してある請求項1又は2に記載の送吸水ユニットである。
【0015】
同請求項4に記載する発明は、試験又は点検を行なう乾式消火用送水管が乾式連結送水管である請求項1から3のいずれかに記載の送吸水ユニットである。
【0016】
同請求項5に記載する発明は、請求項1に記載の送吸水ユニットを用いて、乾式消火用送水管へ送り込んでその耐圧性の試験又は点検に使用した水を、試験又は点検の終了後、水槽へ回収し、回収した水を用いて次の乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検を行なう乾式消火用送水管の試験又は点検方法である。
【0017】
同請求項6に記載する発明は、請求項2に記載の送吸水ユニットを用いて、乾式消火用送水管へエアを送り込んでその気密性の試験又は点検を行なった後、同送水管へ水を送り込んでその耐圧性の試験又は点検を行なう乾式消火用送水管の試験又は点検方法である。
【0018】
同請求項7に記載する発明は、請求項5又は6に記載の試験又は点検方法を請求項3に記載した送吸水ユニットを用いて行なう乾式消火用送水管の試験又は点検方法である。
【0019】
同請求項8に記載する発明は、試験又は点検を行なう乾式消火用送水管が乾式連結送水管である請求項5から7のいずれかに記載の試験又は点検方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る乾式消火用送水管の試験又は点検用の送吸水ユニットとその使用方法(以下「本発明の送吸水ユニットとその使用方法」と記載することがある。)は、上記の構成からなるので、乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検に用いる水を配管内に残さず、確実に回収して繰り返し使用することができる。したがって、乾式消火用送水管を腐食させるおそれがないと共に、試験又は点検に用いる水の量を確実に節減できる。そのため、本発明の送吸水ユニットとその使用方法によれば、乾式消火用送水管の試験又は点検の現場で大量の水を調達・補給する必要がないので、すこぶる作業効率が向上する。
【0021】
本発明の送吸水ユニットとその使用方法によれば、耐圧性の試験又は点検のため、乾式消火用送水管へ水を送り込むときは、真空ポンプの吸入バルブを閉じて送水ポンプの吸水バルブを開け、送水ポンプを起動すればよく、また、水を回収するときは、吸水ポンプの送水バルブを閉じて真空ポンプの吸入バルブを開け、真空ポンプを起動すればよい。すなわち、水の送り込みと回収のバルブ操作が2つのバルブの開閉のみで済むため、いたって容易であり、耐圧性の試験又は点気のための操作労力が軽減されると共に誤操作の発生を抑止できる。
【0022】
さらに、気密性の試験又は点検のために、乾式消火用送水管へエアを送り込むときは、送水ポンプの吸水バルブと真空ポンプの吸入バルブの閉止状態を確認した後、エアコンプレッサーの送気バルブを開け、エアコンプレッサーを始動すればよい。このように、本発明の送吸水ユニットとその使用方法によれば、気密性と耐圧性の試験又は点検のバルブ操作を、エアの送り込み、水の送り込み、水の回収という3つの操作に対応する各1個のバルブを開閉するだけで済ますことができる。そのため、総合的に、操作労力が大いに軽減されると共に誤操作の発生を大きく抑止できる。
【0023】
本発明の送吸水ユニットとその使用方法によれば、水の繰り返し使用が可能となり、水槽を小型化(容量500〜1000L程度に)できるので、水槽の製作コストを抑えることができる。また、水槽を小型化すると、それを搭載する車両も小型化できる。一般に、乾式消火用送水管の試験又は点検に要する水量は、1箇所につき、15階建てのビルの場合でも約500Lあれば十分であるが、超高層ビルの場合は1000L(1トン)程度必要である。そのため、本発明の送吸水ユニットとその使用方法によれば、超高層ビルは別にして、通常のビルの試験又は点検用には、1トン車に容量500Lの水槽を搭載することで十分である。超高層ビルの場合はでも2トン車に容量1000Lの水槽を搭載することで十分である。このように、本発明の送吸水ユニットとその使用方法によれば、乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検の所要コストを大幅に低減できる。
【0024】
また、本発明の送吸水ユニットとその使用方法によれば、乾式消火用送水管の気密性の試験又は点検を耐圧性の試験又は点検用の送吸水ユニットを用いて実施できるので、気密性の試験又は点検のたびにエアコンプレッサーや発電機などを取り付ける必要がなく、手間がかからない。そのため、本発明の送吸水ユニットとその使用方法によれば、乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検の所要労力を大幅に低減できると共に、その気密性の試験又は点検の所要労力も大幅に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
乾式消火用送水管は、乾式連結送水管をその代表例とするので、以下、本発明の実施例として、乾式連結送水管の耐圧性の試験又は点検用の装置とその使用方法、使用方法の中でも特に乾式連結送水管の耐圧性の点検方法について、図面に基づいて詳しく説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明に係る乾式連結送水管の耐圧性の試験又は点検用の送吸水ユニットの一実施例の説明用平面図である。
【0027】
図1において、1は、某高層ビルの1階から屋上まで建物内部を貫通して敷設してある乾式連結送水管であり、放水口14・15・16・・が各階に設けてある。また、10は、乾式連結送水管1の最下部で、水が溜まりやすい配管部分である。図1にはその部分を斜線で示してある。
【0028】
図1において、乾式連結送水管1の1階の配管部分11には2カ所の送水口、すなわち、逆止弁22を備えた送水口12と逆止弁23を備えた送水口13が設けてある。24は逆止弁23を押し開くための押込金具である。すなわち、押込金具24は送水口13に被せたキャップ内部のネジに羅合するようにネジ切りがしてあり、ネジを回しながら図の左方へ押し込むことによってその先端が逆止弁23を押し開く機構にしてある。押込金具24は、送水口13に常備しても構わないが、連結送水管1から水を回収するときに使用するので、水の回収開始時までに送水口13に取り付ければよい。なお、逆止弁22・23は公知のものが装備されていて、その構造と開閉機構や押込金具の作動機構などは特許文献1に詳しく説明してある。
【0029】
火急の場合には、消防車の送水ホースの給水口を乾式連結送水管1の送水口12(又は送水口13)に取り付け、水圧によって逆止弁22(又は逆止弁23)を押し開いて連結送水管1内へ送水し、連結送水管1の適宜の放水口14・15・16・・に消火ホースの取水口(図示せず)を嵌合して放水し、消火に努める。31・32は送水口12・同13に取り付けた圧力計、4は先端部41・42を有する耐圧ゴム製の送吸水ホース(口径25mm)である。
【0030】
図1において、5は、1トントラックの荷台X(図1にその範囲を一点破線で示す。)に搭載した送吸水ユニットである。送吸水ユニット5は、送水ポンプP(6.4PS、50L/分、4MPaまで加圧可能)、真空ポンプV(600W)、エアコンプレッサーA(1PS)、ポリエチレン製の水槽6(容量500L)、耐圧ゴム製の配管71・72、同81・82、同9(いずれも口径25mm)で構成されている。
【0031】
送吸水ユニット5の水槽6は、吐出バルブ62を備えた水吐出口61と回収バルブ64を備えた水回収口63を有している。65は給水口である。また、送水ポンプPは送水バルブP3を備えた送水口P2と吸水口P1を、エアコンプレッサーAは送気バルブA2を備えた送気口A1を、真空ポンプVは吸入バルブV3を備えた吸入口V1と吐出口V2をそれぞれ有している。
【0032】
送吸水ユニット5は、水槽6の水吐出口61と送水ポンプPの吸水口P1を配管71で結び、かつ、送水ポンプPの送水口P2の先に配管72を取り付けて送水管路7を構成している。また、配管72の途中にはエアコンプレッサーAを取り付けてある。一方、水槽6の水回収口63と真空ポンプVの吐出口V2を配管82で結び、かつ、真空ポンプVの吸入口V1の先に配管81を取り付けて吸水管路8を構成している。さらに、送吸水ユニット5は、送水管路7の先端71と吸水管路8の先端81をT字型の配管9で合体させてある。また、配管9の一端は送吸水ホース4の先端41に嵌合してある。
【0033】
上記の構成からなる送吸水ユニット5を用いて、水槽6内の水を乾式連結送水管1へ送り込む方法と水槽6へ回収する方法について説明する。
【0034】
水槽6内の水を乾式連結送水管1へ送り込むときは、送吸水ホース4の他方の先端42を乾式連結送水管1の送水口12又は同13に繋ぐ。図1は送吸水ホース4を送水口12の方へ繋いだ状態を示す。なお、送吸水ホース4は送吸水ユニット5に組み込んで常備しておいてもよい。
【0035】
乾式連結送水管1では、全てのバルブを閉止する。一方、送吸水ユニット5では、水槽6の吐出バルブ62と送水ポンプPの送水バルブP3を開き、エアコンプレッサーの送気バルブA2と真空ポンプの吸入バルブV3を閉める。これで水槽6の水吐出口61、配管71、送水ポンプP、配管72で構成する送水管路7が配管9と送吸水ホース4を経由して乾式連結送水管1の送水口12に連通したことになる。この連通状態を確認した後、送水ポンプPを起動する。そうすると、水槽6内の水は、送水管路7から配管9と送吸水ホース4を通って連結送水管1の送水口12に送り込まれ、水圧によって逆止弁22を押し開き、送水口12から連結送水管1内へ供給される。
【0036】
所定の耐圧性の点検が終わって乾式連結送水管1内の水を水槽6へ回収するときは、まず、送水ポンプPを停止し、送水バルブP3を閉める。送水が停止すると逆止弁22は閉止状態に戻る。次いで、送水口13に押込金具24を取り付け、回しながら押し込んで逆止弁23を押し開く。続いて送水口12から送給水ホース4を外し、これを送水口13へ取り付けた押込金具24の先へ嵌合する。水槽6の回収バルブ64と真空ポンプVの吸入バルブV3を開けて、真空ポンプVを起動する。そうすると、乾式連結送水管1内に充満している水は、その送水口13、送吸水ホース4、配管9を経て、配管81、真空ポンプV、配管82で構成する吸水管路8を通って、水回収口63から水槽6へ吸引・回収される。真空ポンプVのバキュームによって、連結送水管1の水が溜まりやすい配管10内についても、強力に吸引され、連結送水管1内の水をどこにも残留させることなく、確実に回収する。水の回収作業が終わったら、真空ポンプVを停止し、吸入バルブV3を閉める。次いで、送吸水ホース4の先端42を連結送水管1の送水口13から外す。
【0037】
上記説明のとおり、本実施例の送吸水ユニット5は、バルブの切り替え操作により、乾式連結送水管1へ水を送り込むときは送水ポンプPを使用し、乾式連結送水管1から水を回収するときは真空ポンプVを使用するという2基のポンプを切り換えて使用する構成であるが、真空ポンプの強力な吸引力によって水の完全回収が可能であると共に、先開発の送吸水ユニット及びその使用方法に比べて、配管の構成が簡単であるから、作業が容易となり、かつ、送吸水ユニットの製作コストを低く抑えることができる。
【0038】
上記実施例では、2個の送水口12・13を有する乾式連結送水管について説明したが、乾式連結送水管の送水口は2個に限るものではない。例えば、送水口が1個の連結送水管の場合は、耐圧性の点検が終了した後、一たん送給水ホースを送水口から外して、送水口に押込金具を取り付けて逆止弁を押し開いた後、再び送給水ホースを取り付ければよい。
【0039】
本発明に係る送吸水ユニットは、上記のとおり、水の繰り返し使用が可能であるため、水槽を小型化できるので、車両に搭載するのに適している。そのため、上記実施例では、小型トラック(1トン車)に容量500Lの水槽を搭載した送吸水ユニットについて説明したが、本発明に係る送吸水ユニットで用いる水槽の容量や車体の大きさは、これらに限定するものではない。例えば、本発明は、2トン車に容量1000L(1トン)の水槽を搭載した送吸水ユニットにも適用できる。また、本発明に係る送吸水ユニットは、車両に搭載するものに限るものではない。例えば、ビル近傍に設置された貯水槽の水を用いて連結送水管の点検を行ない、その終了後、その貯水槽 水を回収する送吸水ユニットも、本発明に係る送吸水ユニットに含まれることは勿論である。
【0040】
また、本発明では、実施例1に示した配管方法に限るものではなく、いろいろな配管方法を採ることができるが、要は、水槽の水吐出口と吸水ポンプとを結続してなる送水管路の先端と水槽の水回収口と真空ポンプとを結続してなる吸水管路の先端とを合体させ、合体した配管の先を乾式連結送水管の送水口に結続可能にし、送水ポンプの送水バルブと真空ポンプの吸入バルブの切り替え操作により、送水ポンプによって水槽の水を乾式連結送水管へ送り込んだり、再びバルブの切り替え操作により、乾式連結送水管内の水を真空ポンプVによって水槽6へ回収したり、どちらも自在に繰り返すことができるのであれば、どのような配管にしてもよい。
【0041】
上記実施例のバルブ操作について補足すると、水槽6の吐出バルブ62は、通常は開いたままで、ほとんど操作しない。また、水槽6の回収バルブ64も通常は開いたままであるから、設けなくてもよい。その他、バルブの取り付け位置などは、本発明の構成を外れない限り、適宜変更して差し支えない。
【0042】
なお、乾式連結送水管の最下部の配管に排水バルブを備えた排水口が設けてあると、連結送水管内の水を空(カラ)にしやすいが、最近のビルの消火設備の配管には排水口を設けてないものが多く、そのような乾式連結送水管は、従来の方法では水溜まり部分ができやすい。
【0043】
また、従来の消防用ホースはゴム引きのものが多いが、ゴム引きホースは一方向への送水は可能であるが、水を逆送することは困難である。そのため、本発明のように、水の送り込みと回収(逆送)を繰り返す送吸水ユニットの配管には、耐圧性を有する管を使用する必要がある。耐圧性を有する管としては、本実施例で用いた耐圧ゴムホースが好適であるが、ステンレス鋼製の管でもよい。耐圧ゴムホースはフレキシブルであるから、配管の一部(例えば、送水管路)にステンレス鋼製の管を用い、他の部分には耐圧ゴムホースを用いてもよい。なお、送水ポンプや真空ポンプの入口部には、異物混入防止のためストレーナーを取り付けることが好ましい。
【0044】
なお、実施例1で用いた耐圧ゴムホースには、通常、カプラー継手が装備されているので、万一、配管が離脱する事態が生じても、瞬時に配管の出口が閉止され、送水・回収・送気ともストップするのですこぶる安全である。
【実施例2】
【0045】
次に、乾式連結送水管の耐圧性の点検に使用した実施例1の送吸水ユニットを用いて、同送水管の気密性を点検する方法について、図1に基づいて説明する。通常、乾式連結送水管の耐圧性の点検(送水による確認)は、この気密性の点検(エアによる確認)を済ませた後で実施している。
【0046】
図1において、まず、乾式連結送水管1の全てのバルブが閉止状態になっていることを確認した後、乾式連結送水管1の送水口12(又は送水口13)と送吸水ホース4の先端42を結続する。また、送水ポンプPの送水バルブP3と真空ポンプVの吸入バルブV3が閉止状態になっていることも確認する。確認後、エアコンプレッサーAの送気バルブA2を開いて送気路を開通し、エアコンプレッサーAを始動する。そうすると、エアは、エアコンプレッサーAから、送気路、すなわち、配管72、同9、送吸水ホース4を通って、乾式連結送水管1の送水口12に達し、エア圧によって逆止弁22を押し開き、送水口12から連結送水管1の内部へ送りこまれる。配管にゆるみや毀損がなく、全てのバルブが閉止されていれば圧力は上昇するので、圧力計3で確認することができる。
【0047】
乾式連結送水管1の気密性の点検が終了すると、各階の放水口14・15・16のバルブなどを開く。そうすると、連結送水管1内のエアが抜けて圧力計はゼロとなる。これで乾式連結送水管1の気密性の点検は完了し、続いて耐圧性の点検を開始することができる。このように、本実施例の送吸水ユニットを使用すれば、気密性の点検のために別の機器を取り付ける必要がなく、乾式連結送水管1の気密性をきわめて容易に点検できる。
【0048】
以上、乾式連結送水管の耐圧性と気密性を点検する2つの実施例に基づいて本発明を説明したが、スプリンクラー設備や乾式散水設備など、乾式連結送水管以外の乾式消火用送水管についても、送水管の構造は乾式連結送水管と同じであるから、乾式連結送水管の場合と全く同じように本発明を適用できる。また、各種送水管の試験方法と点検方法は水又はエアを送り込む点では全く同じであるから、各種送水管の耐圧性や気密性を試験する場合でも、実施例などで説明した点検方法の要領で実施すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上詳しく説明したとおり、本発明に係る乾式消火用送水管用の送吸水ユニット及びその使用方法は、乾式消火用送水管の試験又は点検に用いる水を繰り返し使用できるので、水の量を大幅に節減できる。そのため、現場で大量の水を調達・補給する必要がない。また、水槽の容量を小さくできるので試験・点検用の送吸水ユニットを小型化でき、通常、これを搭載する車両も1トン車程度の小型車で済む。したがって、本発明によれば、乾式連結送水管を代表例とする乾式消火用送水管の耐圧性と気密性の試験又は点検の所要コストを大幅に低減できると共に、作業負担を軽減するので、事故の発生を抑止できる。このように、本発明は、乾式消火用送水管の試験又は点検にすこぶる有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る送吸水ユニットの説明用平面図(実施例1・実施例2)
【符号の説明】
【0051】
1:乾式連結送水管、
11:乾式連結送水管の1階部分の配管、 10:同最下部の配管、
12・13:送水口、 14・15・16:各階の放水口
22・23:逆止弁、 24:押込金具
31・32:圧力計
4:送吸水ホース、 41・42:その先端
5:送吸水ユニット
6:水槽、 61:水吐出口、 62:吐出バルブ、 63:水回収口、 64:回収バルブ
7:送水管路、 71・72:その配管
8:吸水管路 81・82:その配管
9:送水管路と吸水管路を結ぶ配管
P:送水ポンプ、 P2:送水口、 P1:吸水口、 P3:送水バルブ
V:真空ポンプ V1:吸入口、 V2:吐出口、 V3:吸入バルブ
A:エアコンプレッサー、 A1:送気口、 A2:送気バルブ
X:トラックの荷台に搭載する範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽の水吐出口と送水ポンプを結続してなる送水管路の先と水槽の水回収口と真空ポンプとを結続してなる吸水管路の先を合体させ、合体した配管の先を乾式消火用送水管の送水口又はそれに嵌合する送吸水ホースに結続可能にしてあると共に、全ての配管は耐圧性の管で構成してあり、水槽の水を送水ポンプによって乾式消火用送水管へ送り込み、バルブの切り替え操作により、送り込んだ水を真空ポンプによって水槽へ回収し、再びバルブの切り替え操作により、水槽に回収した水を送水ポンプによって乾式消火用送水管へ送り込む作業を繰り返し可能にしてある乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検用の送吸水ユニット。
【請求項2】
送水管路にエアコンプレッサーを取り付けてあり、エアコンプレッサーを始動して送水管路から乾式消火用送水管へエアを送り込むことによって乾式消火用送水管の気密性の試験又は点検を可能にしてある請求項1に記載の送吸水ユニット。
【請求項3】
車両に搭載してある請求項1又は2に記載の送吸水ユニット。
【請求項4】
試験又は点検を行なう乾式消火用送水管が乾式連結送水管である請求項1から3のいずれかに記載の送吸水ユニット。
【請求項5】
請求項1に記載の送吸水ユニットを用いて、乾式消火用送水管へ送り込んでその耐圧性の試験又は点検に使用した水を、試験又は点検の終了後、水槽へ回収し、回収した水を用いて次の乾式消火用送水管の耐圧性の試験又は点検を行なう乾式消火用送水管の試験又は点検方法。
【請求項6】
請求項2に記載の送吸水ユニットを用いて、乾式消火用送水管へエアを送り込んでその気密性の試験又は点検を行なった後、同送水管へ水を送り込んでその耐圧性の試験又は点検を行なう乾式消火用送水管の試験又は点検方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の試験又は点検方法を請求項3に記載の送吸水ユニットを用いて行なう乾式消火用送水管の試験又は点検方法。
【請求項8】
試験又は点検を行なう乾式消火用送水管が乾式連結送水管である請求項5から7のいずれかに記載の試験又は点検方法。















【図1】
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【公開番号】特開2007−295999(P2007−295999A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124586(P2006−124586)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(504032905)株式会社ファイアーコントロール (1)
【Fターム(参考)】