説明

乾燥器

【課題】試料載置棚の高さを簡単に変更することができるとともに、試料載置棚の高さを変更しても棚ヒータを確実に所定温度まで上昇させることができる乾燥器を提供する。
【解決手段】棚ヒータ5aを一体に備えた試料載置棚5をチャンバ2内に複数段配設し、棚ヒータ5aによって試料載置棚5を加熱して試料を乾燥させる真空乾燥器1において、試料載置棚5の端部に、棚ヒータ5aに通電する受電側コイル6を一体に設け、受電側コイル6に対応して、チャンバ2の外面に送電側コイル7を配設し、送電側コイル7から受電側コイル6への電磁誘導により棚ヒータ5aに電力を伝送し、試料載置棚5を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料載置棚に設けた棚ヒータで、載置した試料を直接加熱して乾燥させる乾燥器に関する。
【背景技術】
【0002】
棚ヒータを備えた試料載置棚をチャンバ内に複数段配設し、前記棚ヒータによって載置した試料を加熱しながら真空にして乾燥させる真空乾燥器では、前記棚ヒータに通電するための外部電源からの配線を、チャンバ側面を貫通して設けた真空コネクタを通して接続するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開昭61−63692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のような真空乾燥器では、試料載置棚は、チャンバの内壁に設けられたガイドレールに支持されており、試料載置棚の高さを変更する際には、試料載置棚を所望の高さのガイドレールに差し替えることによって行われるが、これに伴って、ガイドレールの後端に配設された真空コネクタを差し替える必要があり、手間が掛かっていた。また、この差し替え時に、コネクタがきちんと差し込まれていないと、棚ヒータに通電できないことから、温度を上げることができない。さらに、乾燥中の試料から腐食性ガスが発生すると、真空コネクタや配線等の金属部分が腐食性ガスに侵されて不具合を生じる虞もあった。
【0004】
そこで本発明は、試料載置棚の高さを簡単に変更することができるとともに、試料載置棚の高さを変更する際に、狭いチャンバー内でのコネクタの脱着作業をを省き、これに伴って、コネクタの差込不良や、コネクタ部や配線部の金属部分の腐食といった不具合をなくし、常に適切な制御を行なうことができる乾燥器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、棚ヒータを備えた試料載置棚をチャンバ内に複数段配設し、前記棚ヒータで、載置した試料を直接加熱して乾燥させる乾燥器において、前記試料載置棚の端部に、前記棚ヒータに通電する受電側コイルを一体に設けるとともに、前記チャンバの外面に、前記受電側コイルへの電磁誘導によって前記棚ヒータに電力を供給する送電側コイルを配設したことを特徴とし、前記チャンバは、送電側コイルと受電側コイルとが対向する部分を非磁性材料で形成すると好適である。また、前記受電側コイルの回路及び配線を樹脂材料でモールドしてもよく、前記送電側コイルは、各段の試料載置棚の設置位置に応じて複数設けることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の乾燥器によれば、棚ヒータに、外部電源から非接触で電力伝送できるので、コネクタの差し替え作業が必要なくなり、試料載置棚の高さを簡単に変更することができるとともに、試料載置棚の高さを変更しても、棚ヒータを確実に所定温度まで上昇させることができる。また、送電側コイルを各段の試料載置棚の設置位置に応じて予め複数設けておくことにより、試料載置棚を所定の段に設置するだけで、送電側コイルから受電側コイルに電力伝送可能となり、棚ヒータも確実に所定温度まで上昇させることができる。さらに、送電側コイルと受電側コイルとが対向する部分のみを非磁性材料で形成し、その他の部分を安価な材料で形成することにより、製造コストの上昇を抑えることができる。また、乾燥させる試料によっては、乾燥中に腐食性のガスを発生させることがあるが、受電側コイルを樹脂材料でモールドしておくことにより、回路や配線が腐食することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を真空乾燥器に適用した一形態例を図面に基づいて詳しく説明する。図1は真空乾燥器の一形態例を示す断面説明図で、真空乾燥器1は、ステンレス製のチャンバ2と、該チャンバ2の前面に開閉可能に取り付けられたチャンバ扉3とを備えたもので、チャンバ扉3を閉じて密封し、チャンバ2と連通する真空ポンプの接続口を真空ポンプに接続してチャンバ2内を真空にする。
【0008】
チャンバ2内には、3段のガイドレール4が設けられ、このガイドレール4に、棚ヒータ5aを一体に備えた試料載置棚5が装着されている。各試料載置棚5の後端部には、棚ヒータ5aに通電する受電側コイル6が一体に設けられている。チャンバ2の外面には、3段のガイドレール4に装着される各試料載置棚5に取り付けられた受電側コイル6の配設位置に対応して、3つの送電側コイル7がそれぞれ配設されるとともに、チャンバ2の側壁で、受電側コイル6と送電側コイル7が対向する部分を非磁性ステンレス等の非磁性材料Mで形成している。また、受電側コイル6は、回路や配線が樹脂材料でモールドされている。
【0009】
前記真空乾燥器1では、例えば、上段及び中段を使用して試料を乾燥する場合、上段及び中段のガイドレール4,4に試料載置棚5,5をそれぞれ挿入するだけで、試料載置棚5,5の受電側コイル6,6と送電側コイル7,7とがチャンバ2の側壁を挟んで対向し、各試料載置棚5の棚ヒータ5aに通電可能となる。試料を載せた各試料載置棚5をガイドレール4に挿入後、真空ポンプを作動させて、チャンバ2内を真空にし、次いで各試料載置棚5の棚ヒータ5aに通電し、該棚ヒータ5aを所望の温度まで上昇させ、試料を加熱して乾燥させる。
【0010】
このように、各試料載置棚5の棚ヒータ5aは、外部電源から非接触で電力伝送できるので、試料載置棚5の位置を変更する際に、従来のようにコネクタの差し替え作業が必要なくなり、試料載置棚5の高さを簡単に変更することができるとともに、試料載置棚5の高さを変更しても、送電側コイル7から受電側コイル6を介して棚ヒータ5aに電力を確実に供給できるので、試料載置棚5を確実に所定温度まで上昇させることができる。また、送電側コイル7を各段の試料載置棚5の設置位置に応じて予め複数設けておくことにより、試料載置棚5を所定の段に設置するだけで、送電側コイル7から受電側コイル6に電力伝送可能となり、試料載置棚5を確実に所定温度まで上昇させることができる。さらに、少なくとも送電側コイル7と受電側コイル6とが対向する部分のみを非磁性材料で形成することにより、全体を非磁性材料で形成する場合に比べて製造コストの低減を図ることができる。また、乾燥させる試料によっては、乾燥中に腐食性のガスを発生させることがあるが、各受電側コイル6を樹脂材料でモールドしておくことにより、回路や配線が腐食することを防止できる。
【0011】
なお、本発明は上述の形態例のように、試料載置棚を加熱しながら真空にして試料を乾燥させる真空乾燥器に適用するものに限らず、チャンバ内を加熱して試料を乾燥させる通常の乾燥機にも適用することができる。また、チャンバ内を真空にし、低温で試料を乾燥させる低温乾燥機にも適用することができる。
【0012】
[実験例1]
図2に示されるような非接触電力伝送の実験装置を用いて行った実験について説明する。図2に示される非接触電力伝送の実験装置は、非磁性体材料Mを挟んで受電側コイル6と送電側コイル7とを配設し、受電側コイル6には試料載置棚5に設けた棚ヒータ5aを接続している。入力電源電圧:AC100V,誘導電圧(出力電圧):DC24V,使用棚ヒータ容量:50W,DC24V電源を用いて、試料載置棚5の棚ヒータ5aに通電し、試料載置棚5の表面温度と上昇時間とを測定した。その結果を図3に示す。
【0013】
通電前の試料載置棚5の表面温度は、約25℃であった。6分経過するまで、表面温度は毎分約15℃上昇し、6分経過時に表面温度は約115℃になった。6分経過後からは表面温度は緩やかに上昇し、27分経過時に約155℃となった。
【0014】
[実験例2]
実験例1の非接触電力伝送の実験装置と同等出力のスイッチング電源を用い、使用棚ヒータ容量:60Wで、真空度:5mmHgの状態で棚ヒータ5aに通電し、試料載置棚5の表面温度と上昇時間とを測定した。その結果を図4に示す。
【0015】
通電前の試料載置棚5の表面温度は、約20℃であった。4分経過時には約110℃、8分経過時には約150℃、12分経過時には約180℃となった。
【0016】
[実験例3]
実験例1の非接触電力伝送の実験装置と同等出力のスイッチング電源を用い、使用棚ヒータ容量:60Wで、大気圧で棚ヒータ5aに通電し、試料載置棚5の表面温度と上昇時間とを測定した。その結果を図5に示す。
【0017】
通電前の試料載置棚5の表面温度は、約30℃であった。5分経過時には約130℃、10分経過時には約160℃、35分経過時には約180℃となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の真空乾燥器の一形態例を示す断面説明図である。
【図2】非接触電力伝送の実験装置を示す説明図である。
【図3】非接触電力伝送の実験装置の棚ヒータに通電し、試料載置棚の表面温度と上昇時間とを測定した結果を示す図である。
【図4】非接触電力伝送の実験装置と同等出力のスイッチング電源を用いて真空状態で棚ヒータに通電し、試料載置棚の表面温度と上昇時間とを測定した結果を示す図である。
【図5】非接触電力伝送の実験装置と同等出力のスイッチング電源を用いて大気圧状態で棚ヒータに通電し、試料載置棚の表面温度と上昇時間とを測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1…真空乾燥器、2…チャンバ、3…チャンバ扉、4…ガイドレール、5…試料載置棚、5a…棚ヒータ、6…受電側コイル、7…送電側コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚ヒータを備えた試料載置棚をチャンバ内に複数段配設し、前記棚ヒータで、載置した試料を直接加熱して乾燥させる乾燥器において、前記試料載置棚の端部に、前記棚ヒータに通電する受電側コイルを一体に設けるとともに、前記チャンバの外面に、前記受電側コイルへの電磁誘導によって前記棚ヒータに電力を供給する送電側コイルを配設したことを特徴とする乾燥器。
【請求項2】
前記チャンバは、送電側コイルと受電側コイルとが対向する部分を非磁性材料で形成したことを特徴とする請求項1記載の乾燥器。
【請求項3】
前記受電側コイルの回路及び配線を樹脂材料でモールドしたことを特徴とする請求項1又は2記載の乾燥器。
【請求項4】
前記送電側コイルは、各段の試料載置棚の設置位置に応じて複数設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の乾燥器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−303707(P2007−303707A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131005(P2006−131005)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(591245543)東京理化器械株式会社 (36)
【Fターム(参考)】