乾燥方法、機能膜の製造方法、電気光学装置の製造方法、及び有機EL装置の製造方法
【課題】表示品質を向上させることができる乾燥方法、機能膜の製造方法、電気光学装置の製造方法、及び有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体が塗布された基板をチャンバの中に配置する配置工程と、前記チャンバ内の圧力が前記溶媒の蒸気圧より高く、かつ、前記蒸気圧に近い圧力になる第1排気速度で前記チャンバ内を排気する第1減圧工程と、前記第1排気速度より速い排気速度からなる第2排気速度に切り換えて、塗布された前記液状体を乾燥させる第2減圧工程と、を有する。
【解決手段】表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体が塗布された基板をチャンバの中に配置する配置工程と、前記チャンバ内の圧力が前記溶媒の蒸気圧より高く、かつ、前記蒸気圧に近い圧力になる第1排気速度で前記チャンバ内を排気する第1減圧工程と、前記第1排気速度より速い排気速度からなる第2排気速度に切り換えて、塗布された前記液状体を乾燥させる第2減圧工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に塗布された液状体を減圧下で乾燥して基板の表面に機能膜を形成するための乾燥方法、機能膜の製造方法、電気光学装置の製造方法、及び有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記機能膜としては、例えば、有機EL装置の発光層が挙げられる。機能膜の製造方法は、まずインクジェット塗布法を用いて基板(パネル)の画素に対応する部分に液状体を塗布する。次に、例えば、特許文献1に記載のように、基板を真空乾燥装置のチャンバの中に入れて減圧する。そして、チャンバ内の圧力が液状体を構成する溶媒の蒸気圧以下になると、溶媒の乾燥が進んで発光層が形成される。
【0003】
【特許文献1】特開2007−61674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図10に示すように、基板101の表面に塗布された液状体102の位置(例えば、基板101の周囲Xと中央付近Y)によって、実際には液状体102の乾燥する時間が異なる。周囲Xと中央付近Yとにおいて乾燥する時間に大きな差が生じると、図11に示すように、液状体102がゆっくり乾燥した場合(乾燥時間の範囲Zが広い場合)、乾燥中に液状体102内で溶媒の移動が生じ、完成した発光層103の膜厚や膜形状のばらつきが基板101面内において大きくなる。これにより、基板101面内において輝度ムラが大きくなり、その結果、表示品質が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る乾燥方法は、表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体が塗布された基板をチャンバの中に配置する配置工程と、前記チャンバ内の圧力が前記溶媒の蒸気圧より高く、かつ、前記蒸気圧に近い圧力になる第1排気速度で前記チャンバ内を排気する第1減圧工程と、前記第1排気速度より速い排気速度からなる第2排気速度に切り換えて、塗布された前記液状体を乾燥させる第2減圧工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
この方法によれば、上記した圧力になるタイミングで、第1排気速度より速い第2排気速度に切り換えてチャンバ内を減圧するので、溶媒をすばやく蒸発させて機能膜が形成される。よって、例えば、第1減圧工程のみで液状体を乾燥させる場合と比較して、短時間で液状体を乾燥させることが可能となり、基板面内における乾燥時間差を小さくすることができる。その結果、乾燥時間の差に起因する機能膜の厚みや膜形状のばらつきを抑制して、機能膜を基板面内に亘って均一に形成することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第2減圧工程は、前記溶媒の蒸気圧より低い圧力に減圧することが好ましい。
【0009】
この方法によれば、急激に溶媒の蒸気圧より低い圧力までチャンバ内を減圧するので、液状体を確実に乾燥させることが可能となり、乾燥ムラを抑えることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第2減圧工程は、前記第1減圧工程より到達真空度が高いことが好ましい。
【0011】
この方法によれば、第1減圧工程と比較して第2減圧工程の到達真空度が高いので、チャンバ内の減圧速度を速め、溶媒を急激に乾燥させることができる。よって、短時間で機能膜を形成することが可能となり、その結果、基板面内の乾燥時間の差に起因する機能膜の膜厚や膜形状のばらつきを抑えることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続する配管を、配管D1から前記配管D1よりも太い配管D2に切り換えることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、第2減圧工程で細い配管D1から太い配管D2に切り換えるので、配管の中を流れるガスの排気抵抗を小さくすることが可能となり、ガスの排気速度を速くすることができる。よって、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、乾燥する時間の差を小さくすることができる。加えて、例えば、排気速度の速いポンプに切り換える構成と比較して、簡単な構成で実現することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続する配管を、配管L1から前記配管L1よりも短い配管L2に切り換えることが好ましい。
【0015】
この方法によれば、第2減圧工程で長い配管L1から短い配管L2に切り換えるので、配管の中を流れるガスの排気抵抗を小さくすることが可能となり、ガスの排気速度を速くすることができる。よって、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、乾燥する時間の差を抑えることができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続するバルブの開度を、第1開度から前記第1開度よりも大きい第2開度に切り換えることが好ましい。
【0017】
この方法によれば、第2減圧工程で小さい第1開度から大きい第2開度に切り換えるので、配管の中を流れるガスの排気抵抗を小さくすることが可能となり、ガスの排気速度を速くすることができる。よって、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、乾燥する時間の差を抑えることができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバ内のガスを排気するポンプの種類を、第1ポンプから排気速度の速い第2ポンプに切り換えることが好ましい。
【0019】
この方法によれば、第2減圧工程で排気速度の遅い第1ポンプから排気速度の速い第2ポンプに切り換えるので、チャンバ内のガスを速く排気することができる。よって、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、乾燥する時間の差を抑えることができる。
【0020】
[適用例8]本適用例に係る機能膜の製造方法は、基板の表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体を塗布する塗布工程と、塗布された前記液状体を乾燥させ機能膜を形成する乾燥工程と、を備え、前記乾燥工程は、上記した乾燥方法を用いて前記液状体を乾燥させることを特徴とする。
【0021】
この方法によれば、上記した乾燥方法を用いて機能膜を形成するので、機能膜の厚みや形状を均一に形成することができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例に係る機能膜の製造方法において、前記塗布工程は、インクジェット法により前記液状体を前記基板に塗布することが好ましい。
【0023】
この方法によれば、インクジェット法を用いて基板の表面に液状体を塗布するので、所望の位置に塗布したり所望の量を塗布したりすることを、比較的簡単に行うことができる。
【0024】
[適用例10]本適用例に係る電気光学装置の製造方法は、上記した機能膜の製造方法を用いて電気光学装置を製造することを特徴とする。
【0025】
この方法によれば、上記した機能膜の製造方法を用いて電気光学装置を製造するので、基板面内において機能膜の厚みや形状を均一にすることが可能となり、輝度ムラなどによる表示品質の低下を抑えることができる。
【0026】
[適用例11]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、上記した機能膜の製造方法を用いて有機EL装置を製造する有機EL装置の製造方法であって、前記機能膜は、発光層であることを特徴とする。
【0027】
この方法によれば、上記した機能膜の製造方法を用いて発光層等を形成するので、基板面内において発光層等の厚みや形状を均一にすることが可能となり、輝度ムラなどによる表示品質の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、乾燥方法、機能膜の製造方法、電気光学装置としての有機EL装置の製造方法について説明する。まず、有機EL装置の構造から説明する。図1は、本実施形態の有機EL装置の構造を模式的に示す等価回路図である。以下、有機EL装置の構造を、図1を参照しながら説明する。
【0029】
図1に示すように、有機EL装置11は、複数の走査線12と、走査線12に対して交差する方向に延びる複数の信号線13と、信号線13に並行に延びる複数の電源線14とを有している。走査線12と信号線13とは、それぞれ格子状に配線されている。そして、走査線12と信号線13とにより区画された領域が画素領域として構成されている。また、複数の信号線13が接続された信号線駆動回路15と、複数の走査線12が接続された走査線駆動回路16とを備えている。
【0030】
各画素領域には、走査線12を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT21と、このスイッチング用TFT21を介して信号線13から供給される画素信号を保持する保持容量22と、保持容量22によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT(Thin Film Transistor)23とが設けられている。更に、各画素領域には、駆動用TFT23を介して電源線14に電気的に接続したときに、電源線14から駆動電流が流れ込む画素電極24と、共通電極としての陰極25と、この画素電極24と陰極25との間に挟持された機能膜としての機能層55とが設けられている。
【0031】
有機EL装置11は、画素電極24と陰極25と機能層55とにより構成される有機EL素子57を複数備えている。また、有機EL装置11は、複数の有機EL素子57で構成される発光領域を備えている。
【0032】
この構成によれば、走査線12が駆動されてスイッチング用TFT21がオンになると、そのときの信号線13の電位が保持容量22に保持され、保持容量22の状態に応じて、駆動用TFT23のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT23のチャネルを介して、電源線14から画素電極24に電流が流れ、更に、機能層55を介して陰極25に電流が流れる。機能層55は、ここを流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0033】
図2は、有機EL装置の構造を示す模式断面図である。以下、有機EL装置の構造を、図2を参照しながら説明する。なお、各構成要素は、断面的な位置関係を示すものであり、相対関係は度外視されている。
【0034】
図2に示すように、有機EL装置11は、発光領域31において発光が行われるものであり、基板32と、基板32上に形成された回路素子層33と、回路素子層33上に形成された発光素子層34と、発光素子層34上に形成された陰極25とを有する。基板32としては、透光性を有する材料であり、例えば、ガラス基板、石英、プラスチック等が挙げられる(以下、「ガラス基板32」と称する。)。また、図2に示す有機EL装置11は、例えば、機能層55を構成する発光層26から発した光がガラス基板32側に射出されるボトムエミッション方式である。
【0035】
回路素子層33には、ガラス基板32上にシリコン酸化膜(SiO2)からなる下地保護膜37が形成され、下地保護膜37上に駆動用TFT23が形成されている。詳しくは、下地保護膜37上に、ポリシリコン膜からなる島状の半導体膜42が形成されている。半導体膜42には、ソース領域43及びドレイン領域44が不純物の導入によって形成されている。そして、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域45となっている。
【0036】
更に、回路素子層33には、下地保護膜37及び半導体膜42を覆うシリコン酸化膜等からなる透明なゲート絶縁膜38が形成されている。ゲート絶縁膜38上には、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)などからなるゲート電極46が形成されている。ゲート絶縁膜38及びゲート電極46上には、透明な第1層間絶縁膜47及び第2層間絶縁膜48が形成されている。第1層間絶縁膜47及び第2層間絶縁膜48は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)、チタン酸化膜(TiO2)などから構成されている。ゲート電極46は、半導体膜42のチャネル領域45に対応する位置に設けられている。
【0037】
半導体膜42のソース領域43は、ゲート絶縁膜38及び第1層間絶縁膜47を貫通して設けられたコンタクトホール51を介して、第1層間絶縁膜47上に形成された信号線13と電気的に接続されている。一方、ドレイン領域44は、ゲート絶縁膜38、第1層間絶縁膜47、及び第2層間絶縁膜48を貫通して設けられたコンタクトホール53を介して、第2層間絶縁膜48上に形成された画素電極24と電気的に接続されている(なお、図2において、ゲート絶縁膜38の貫通の図示を省略している)。
【0038】
画素電極24は、発光領域31(画素)ごとに形成されている。また、画素電極24は、透明のITO(Indium Tin Oxide)膜からなり、例えば、平面視で略矩形の形状となっている。なお、回路素子層33には、図示しない保持容量22及びスイッチング用TFT21が形成されている。このようにして、回路素子層33には、各画素電極24に接続された駆動用TFT23が形成されている。
【0039】
上記した画素電極24を含む発光素子層34は、マトリクス状に配置された発光素子を具備して回路素子層33上に形成されている。詳述すると、発光素子層34は、画素電極24上に形成された機能層55と、機能層55を区画する隔壁(バンク)56とを主体として構成されている。機能層55上及び隔壁56上には、陰極25が配置されている。画素電極24と、機能層55と、陰極25とによって有機EL素子57が構成されている。
【0040】
回路素子層33と隔壁56との間には、絶縁層58が形成されている。絶縁層58は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)である。絶縁層58は、隣り合う画素電極24間の絶縁性を確保するために、画素電極24の周縁部上に乗り上げるように形成されている。つまり、画素電極24と絶縁層58とは、平面的に一部が重なるように配置された構造となっている。言い換えれば、絶縁層58は、発光領域31を除いた領域に形成されていることになる。
【0041】
隔壁56は、例えば、断面に見て傾斜面を有する台形状に形成されている。絶縁層58と隔壁56とは、回路素子層33上に、例えば、格子状に形成されており、発光領域31を区画している。
【0042】
機能層55は、例えば、正孔注入層61と、発光層26とが積層されており、これらが隔壁56に囲まれた領域、すなわち発光領域31に形成されている。正孔注入層61は、画素電極24を底部とし、隔壁56を側壁とする凹部に形成されている。また、正孔注入層61は、導電性高分子材料中にドーパントを含有する導電性高分子層からなる。このような正孔注入層61は、例えば、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を含有する3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)などから構成することができる。
【0043】
発光層26は、エレクトロルミネッセンス現象を発現する有機発光物質(有機物)の層である。画素電極24と陰極25との間に電圧を印加することによって、発光層26には、正孔注入層61から正孔が、また、陰極25から電子が注入される。発光層26において、正孔と電子とが結合したときに光を発する。なお、機能層55は、後述する真空乾燥装置71を用いて製造することができる。
【0044】
陰極25は、機能層55及び隔壁56を覆うように形成されている。言い換えれば、陰極25は、発光層26を挟んで画素電極24の反対側に形成されている。陰極25は、例えば、カルシウム(Ca)及びアルミニウム(Al)の積層体である。陰極25の膜厚は、例えば50〜200nmである。
【0045】
陰極25の上には、水や酸素の侵入を防ぐための、樹脂などからなる封止層(図示せず)が積層されている。封止層は、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる。なお、発光素子層34と陰極25とによって有機EL素子57が構成される。
【0046】
なお、有機EL装置11は、ボトムエミッション方式に限定されず、発光層26から発した光が封止層(図示せず)側に射出されるトップエミッション方式であってもよい。有機EL装置11がトップエミッション方式である場合、ガラス基板32に代えて透明な材料及び不透明な材料のいずれを用いてもよい。この場合、陰極25には透光性を有する導電材料が用いられ、封止層には透光性を有する材料が用いられる。
【0047】
続いて、機能層を乾燥によって形成するための真空乾燥装置について説明する。図3は、真空乾燥装置の構造を示す模式断面図である。以下、真空乾燥装置の構造を、図3を参照しながら説明する。まず、図3に示すように、真空乾燥装置71は、基板32(基板32上に形成された膜も含む)をチャンバ72内に収容し、基板32上に塗布された液状体を減圧下で乾燥させる装置であり、減圧手段として例えば、第1ポンプとしてのドライポンプ73と、第2ポンプとしてのターボ分子ポンプ74と、補助ポンプ75とを備えている。
【0048】
チャンバ72には、基板32を載置する載置台76が設けられている。チャンバ72の下部には、排気口81が設けられている。排気口81を含む第1配管82は、第2配管83を介してドライポンプ73に接続されている。また、第1配管82は、第3配管84を介してターボ分子ポンプ74に接続されている。
【0049】
第2配管83には、圧力調整バルブ85が取り付けられている。また、第3配管84には、圧力調整バルブ86が取り付けられている。つまり、圧力調整バルブ85,86を開閉することによって、ドライポンプ73とターボ分子ポンプ74とを切り換えることが可能となっている。加えて、ターボ分子ポンプ74は、第4配管87及び圧力調整バルブ88を介して補助ポンプ75と接続されている。また、チャンバ72の上部には、チャンバ72内の圧力を測定する圧力計77が備えられている。
【0050】
ドライポンプ73は、チャンバ72内の圧力を大気圧から所定の圧力まで減圧するために用いられる。ターボ分子ポンプ74は、前述した所定の圧力より更に低い圧力にするために用いられる。所定の圧力は、後述する比較例にて説明する。
【0051】
ターボ分子ポンプ74は、ドライポンプ73に比べて排気量が多い。言い換えれば、ターボ分子ポンプ74の方がドライポンプ73より排気速度が速い。また、ターボ分子ポンプ74は、ドライポンプ73より到達真空度が高い。以上のようなポンプを備えた真空乾燥装置71を用いて、基板32上に塗布された液状体(例えば、発光層26となるもの)を減圧下で乾燥させる。
【0052】
<比較例1>
図4は、ドライポンプを用いたときのチャンバ内の圧力特性を示すグラフである。以下、図4を参照しながらドライポンプの圧力特性(排気時間と圧力との関係)について説明する。
【0053】
図4に示すグラフの横軸は、チャンバ72内の気体(ガス)を排気する時間であり、図示右側にいくに従って時間が経過することを示している。グラフの縦軸は、チャンバ72内の圧力であり、図示下側にいくに従って圧力が低くなる(図示上側が大気圧)ことを示している。
【0054】
図4に示すグラフは、次のような条件で行ったものである。経過時間が0分のとき、大気圧となっている。使用するポンプは、ドライポンプ73である。排気速度(第1排気速度)は1300l/分、到達真空度は2Paである。この条件で29分間減圧乾燥を行ったときの実際の到達圧力は、4.05Paである。
【0055】
このグラフによれば、排気時間が0分から約2分までにチャンバ72内の圧力が急激に低下することがわかる。また、その時点から29分までは、圧力低下の変化量が緩やかになっている。
【0056】
基板32上に塗布する液状体(溶液)は、例えば発光層26となるものであり、溶媒にR(赤)、G(緑)、B(青)の発光ポリマー(機能性材料)を溶解(分散)させたものである。溶媒は、例えば、シクロヘキシルベンゼンである。また、シクロヘキシルベンゼンは、20℃(室温)で飽和蒸気圧が7Paである。
【0057】
以上のように、ドライポンプ73を用いて液状体を減圧乾燥させる場合、溶媒の蒸気圧である7Pa付近において圧力の低下が緩やかになる。言い換えれば、ゆっくり液状体を乾かしている。これにより、基板32上における溶媒の乾燥時間の差が大きくなり、発光層26の膜厚や膜形状が、特に基板32面内の端と中央付近とで安定しないという現象が発生する。詳しくは、基板32の端と中央付近において乾燥する時間差が大きい。乾燥する時間が長いと隔壁56の側面に液状体が移動する量が多い(基板32の端の部分)。乾燥する時間が短いと隔壁56の側面に液状体が移動する量が少ない(基板32の中央部分)。その結果、基板32面内において輝度ムラが大きくなる。
【0058】
<実施例1>
図5は、ドライポンプとターボ分子ポンプの両方を用いたときのチャンバ内の圧力特性を示すグラフである。以下、図5を参照しながら、2つのポンプを用いたときの圧力特性(排気時間と圧力との関係)について説明する。なお、液状体についての詳細は、上記で説明した内容と同じである。
【0059】
図5に示すグラフの横軸と縦軸の詳細は、図4に示すグラフと同様である。実線Aは、ドライポンプ73を用いて大気圧から減圧したときの特性を示している。実線Bは、減圧途中でドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換え、引き続きターボ分子ポンプ74で減圧したときの特性を示している。
【0060】
実線Aは、図4に示した条件と同様に、ドライポンプ73にて、排気速度(第1排気速度)が1300l/分、到達真空度が2Paで減圧乾燥を行った場合の特性である。ただし、ドライポンプ73を用いる時間(減圧時間)は、5分である。このときの到達圧力は、32.3Paである。
【0061】
実線Bは、ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換えて減圧乾燥を行ったときの特性を示している。このときの減圧乾燥条件は、次の通りである。排気速度(第2排気速度)は21000l/分、到達真空度は10-4Paである。この条件で9分間減圧乾燥を行ったときの到達圧力は、1.3×10-2Pa(0.013Pa)である。
【0062】
ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換えるC点(32.3Pa)は、液状体を構成する溶媒の蒸気圧より高く液状体の流動性が維持でき、かつ、蒸気圧に近い圧力である。
【0063】
詳しくは、ポンプ(ドライポンプ73、ターボ分子ポンプ74)の能力と使用する溶媒の蒸気圧とによって求めることができる。この場合、溶媒は蒸気圧が7Paのシクロヘキシルベンゼンであり、考えられるC点の上限としては、少なくとも、溶媒の蒸気圧の1000倍程度の圧力である。しかしながら、C点があまりに大きすぎると、第2減圧工程で使用するポンプへの排気負荷が大きくなり、ポンプを長期的に安定して使用するという観点から好ましくない。従って、好ましいC点の上限としては、溶媒の蒸気圧の10〜100倍程度の圧力である。
【0064】
このグラフによれば、排気時間が0分から5分までは、図4に示す圧力特性と同じ値の特性を示している(実線A)。また、C点でドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換えているので、排気時間が5分以降、短時間でチャンバ72内の圧力が急激に低下していることがわかる(実線B)。つまり、短い時間で溶媒の蒸気圧(7Pa)より低い圧力まで低下させて、基板32面内における端と中央付近で乾燥する時間差を小さくしている。
【0065】
言い換えれば、ドライポンプ73のみを用いて液状体を乾燥させる場合(比較例1)と、ドライポンプ73とターボ分子ポンプ74とを用いて液状体を乾燥させる場合(実施例1)とでは、溶媒が乾燥する7Pa付近において、乾燥時間に差がある。つまり、7Pa付近で圧力を急激に低下させることができるドライポンプ73及びターボ分子ポンプ74を用いた方(実施例1)が、短時間で液状体を乾燥させることが可能となり、基板32面内全体に亘って発光層26の膜厚や膜形状を安定させることができる。その結果、輝度ムラを抑えることができる。
【0066】
図6は、有機EL装置の製造方法を工程順に示す工程図である。図7は、有機EL装置の製造方法のうち、真空乾燥装置を用いて発光層(機能膜)を製造する方法を工程順に示す工程図である。以下、有機EL装置の製造方法を、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0067】
図6に示すように、まずステップS11では、ガラス基板32上に、成膜技術を用いて回路素子層33を形成する。回路素子層33は、駆動用TFT23やこれらの配線、駆動回路等を有する。ステップS12では、回路素子層33上にITO等からなる画素電極24を形成する。
【0068】
ステップS13では、回路素子層33上及び画素電極24上の一部に絶縁層58及び隔壁56を形成する。具体的には、まず、絶縁層58の材料となる、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)を、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、回路素子層33及び画素電極24上を覆うように形成する。次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、発光領域31に開口部を形成する。次に、同様の方法を用いて、絶縁層58上に隔壁56を形成する。隔壁56は、例えば、アクリル樹脂からなる。
【0069】
ステップS14では、画素電極24上を含む隔壁56で囲まれた開口部に、正孔注入層61を形成する。ステップS15では、正孔注入層61の上に発光層26を形成する。発光層26の形成方法については、図7に示す工程図に従って説明する。
【0070】
まず、図7に示すように、ステップS151(塗布工程)では、有機EL装置11の画素領域(隔壁56で囲まれた領域(基板32の表面))に、例えば、インクジェット法を用いて液状体を塗布(充填)する。
【0071】
ステップS152(配置工程)では、液状体が塗布された有機EL装置11(基板32)を、液状体を乾燥させて発光層26(機能層55)を作るための真空乾燥装置71(図3参照)の中に挿入する。詳しくは、チャンバ72内の載置台76に基板32を載置する。次に、チャンバ72を密閉する。このときのチャンバ72内は、大気圧となっている。
【0072】
以下、ステップS153〜ステップS155は、液状体の乾燥方法である。ステップS153では、第1減圧処理(第1減圧工程)を行う。まず、圧力調整バルブ85を開状態、圧力調整バルブ86を閉状態にする。次に、ドライポンプ73を用いて、チャンバ72内の圧力を減圧する。具体的には、大気圧から、液状体を構成する溶媒の蒸気圧より高い圧力まで下げる(図5におけるA線)。この時点で液状体は、流動性を有している。
【0073】
ステップS154では、使用ポンプをドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換える。具体的には、ドライポンプ73の稼動を停止して、圧力調整バルブ85を閉状態、圧力調整バルブ86及び圧力調整バルブ88(いずれも図3参照)を開状態にする。
【0074】
ステップS155では、第2減圧処理(第2減圧工程、乾燥工程)を行う。使用するポンプは、上記したターボ分子ポンプ74及び補助ポンプ75である。具体的には、チャンバ72内の圧力を、溶媒の蒸気圧より高い圧力から蒸気圧より低い圧力まで下げる(図5におけるB線)。これにより液状体(発光層)は、球状の液状体から隔壁56の側面に反り上がった形状となる。
【0075】
この様な減圧処理を行うことにより、チャンバ72内を急激に減圧することが可能となり、第1減圧処理のみで発光層26を形成するより短い時間で形成することができる。基板32面内において乾燥時間の差が大きくなると、上記した液状体(発光層)の形状が大きく変わる。具体的には、液状体の反り度合い(U字度合い)が面内の端と中央付近で変わる。詳しくは、端の方が隔壁56の周囲に固形分がもっていかれた状態となり、中央付近の方が膜厚が厚くなる。
【0076】
一方、短い時間で液状体(発光層26)を乾燥させることにより、乾燥時間の差を小さくすることができ、その結果、基板32面内全体に亘って発光層26の厚みや形状を均一に形成することができる。
【0077】
ステップS16では、発光層26を覆うように陰極25を成膜する。具体的には、発光層26及び隔壁56を含む基板32上の全体に、例えば、カルシウム膜及びアルミニウム膜からなる陰極25を積層する。
【0078】
ステップS17では、陰極25を覆うように、封止層(図示せず)を形成する。以上により、有機EL装置11が完成する。
【0079】
図8は、有機EL装置における画素の位置と輝度値との関係を、比較例1の場合と実施例1の場合とにおいて比較したグラフである。図9は、有機EL装置を上方から見た模式平面図である。以下、画素の位置と輝度値との関係を、図8及び図9を参照しながら説明する。
【0080】
図8に示すグラフの横軸は、画素の位置(番号)を示している。具体的には、例えば、図9に示すように、有機EL装置11の横方向(長手方向)の画素が160画素、縦方向(短手方向)の画素が120画素であるとする。横方向の半分の画素である80画素目の縦ライン、計120画素を有機EL装置11の端から順に画素の番号をつけている。つまり、グラフの左右両端が有機EL装置11の端部となり、グラフの中央が有機EL装置11の中央となる。
【0081】
縦軸は、各画素の輝度値を示している。詳しくは、各画素に定電圧を印加したときの各画素の輝度値であり、図示上側にいくに従って輝度値が高いことを示している。
【0082】
E線は、比較例1における画素位置と輝度値との関係を示している。F線は、実施例1における画素位置と輝度値との関係を示している。
【0083】
このグラフを見ると、ドライポンプ73のみを用いて溶媒を乾燥させたE線は、基板32(有機EL装置11)の端(画素番号0番付近、画素番号120番付近)と中央(画素番号60番付近)とにおいて、輝度値が大きく変わっている。詳しくは、輝度値の最大値は、基板32の端である画素番号120番であり、127%である。一方、輝度値の最小値は、基板32の中央付近である画素番号65番であり、84%である。ばらつきのレンジは、43%である。
【0084】
また、ドライポンプ73とターボ分子ポンプ74とを用いて溶媒を乾燥させたF線は、基板32の端と中央において、E線に比べて輝度値の変化が少ない。詳しくは、輝度値の最大値は、基板32の端である画素番号8番であり、106%である。一方、輝度値の最小値は、基板32の中央付近である画素番号74番であり、92%である。ばらつきのレンジは、14%である。
【0085】
以上のように、比較例1と比べて実施例1は、溶媒の蒸気圧付近でチャンバ72内を急激に減圧するので、短い時間で溶媒(発光層26)を乾燥させることが可能となり、基板32面内において乾燥時間の差を小さくすることができる。なお、乾燥時間の差が大きくなると、基板32の中央付近の膜厚がより厚くなり、暗くなる。また、基板32の端の膜厚がより薄くなり、明るくなる。その結果、図8に示すように、基板32面内全体に亘って輝度ムラのばらつきを小さくすることが可能となり、表示品質を向上させることができる。
【0086】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
【0087】
(1)本実施形態によれば、液状体を構成する溶媒の蒸気圧より高く液状体が流動可能な圧力であり、かつ、蒸気圧に近い圧力になったタイミングで、ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換えて減圧するので、溶媒が蒸発して発光層26となるときに、チャンバ72内を急激に減圧することが可能となる。よって、例えば、ドライポンプ73のみで液状体を乾燥させる場合と比較して、短時間で液状体を乾燥させることが可能となり、基板32面内において乾燥時間の差を小さくすることができる。その結果、乾燥時間の差に起因する発光層26の厚みや形状のばらつきを抑制し、発光層26を基板32面内に亘って均一に形成することができ、輝度ムラを抑えることができる。その結果、表示品質を向上させることができる。
【0088】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0089】
(変形例1)
上記したように、C点を境に(図5参照)ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換え、排気速度を速くすることに代えて、例えば、ドライポンプ73と接続されている第1配管82及び第2配管83の配管径を変えて排気速度を変えるようにしてもよい。具体的には、大気圧から減圧する場合に用いた配管(配管D1)の径に対して、C点から減圧する場合に太い配管(配管D2)の径にする。例えば、細い配管と太い配管とがあり、配管の流通を切り換えることによって排気速度を変える。なお、ドライポンプ73の排気能力は変わらない。これによれば、細い配管から太い配管に切り換えるので、排気抵抗を小さくすることができ、配管の中を流れるガスの速度を速くすることが可能となる。よって、チャンバ72の中を更に減圧することができる。その結果、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、基板32面内において乾燥する時間の差を小さくすることができる。加えて、ドライポンプ73とターボ分子ポンプ74の2つのポンプを備える構成と比較して、簡単な構成で排気速度を変えることができる。
【0090】
(変形例2)
上記したように、C点を境に(図5参照)ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換え、排気速度を速くすることに代えて、例えば、ドライポンプ73と接続されている第1配管82及び第2配管83の配管長さを変えて排気速度を変えるようにしてもよい。具体的には、大気圧から減圧する場合に用いた配管(配管L1)の長さに対して、C点から減圧する場合に短い配管(配管L2)にする。例えば、長い配管と短い配管とがあり、配管の流通を切り換えることによって排気速度を変える。これによれば、長い配管から短い配管に切り換えるので、排気抵抗を小さくすることができ、配管の中を流れるガスの速度を速くすることが可能となる。よって、チャンバ72の中を更に減圧することができる。その結果、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、基板32面内において乾燥する時間の差を小さくすることができる。
【0091】
(変形例3)
上記したように、C点を境に(図5参照)ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換え、排気速度を速くすることに代えて、例えば、第2配管83の途中に接続されている圧力調整バルブ85の開度を小さい第1開度から大きい第2開度にして排気速度を変えるようにしてもいい。これによれば、小さい第1開度から大きい第2開度に切り換えるので、排気抵抗を小さくすることができ、配管の中を流れるガスの速度を速くすることが可能となる。よって、チャンバ72内を更に減圧させることができる。その結果、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、基板32面内において乾燥する時間の差を小さくすることができる。
【0092】
(変形例4)
上記したように、機能膜は有機EL装置11の発光層26に限定されず、例えば、フォトリソグラフィ技術に用いられるレジスト膜、オーバーコート膜(平坦化膜)、液晶装置などに用いられるカラーフィルタの色層及び配向膜、有機TFT、金属配線等であってもよい。
【0093】
(変形例5)
上記したように、電気光学装置は有機EL装置11に限定されず、例えば、液晶装置、プラズマディスプレイ、電子ペーパーなどに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態に係る有機EL装置の構造を模式的に示す等価回路図。
【図2】有機EL装置の構造を示す模式断面図。
【図3】真空乾燥装置の構造を示す模式断面図。
【図4】ドライポンプを用いたときの圧力特性(比較例1)を示すグラフ。
【図5】ドライポンプとターボ分子ポンプを用いたときの圧力特性(実施例1)を示すグラフ。
【図6】有機EL装置の製造方法を工程順に示す工程図。
【図7】有機EL装置の製造方法のうち、発光層の製造方法を工程順に示す工程図。
【図8】有機EL装置における画素の位置と輝度値との関係を、比較例1の場合と実施例1の場合とにおいて比較したグラフ。
【図9】有機EL装置を上方から見た模式平面図。
【図10】従来の有機EL装置を上方から見た模式平面図。
【図11】従来のポンプの圧力特性を示すグラフ。
【符号の説明】
【0095】
11…電気光学装置としての有機EL装置、12…走査線、13…信号線、14…電源線、15…信号線駆動回路、16…走査線駆動回路、22…保持容量、23…駆動用TFT、24…画素電極、25…陰極、26…発光層、31…発光領域、32…ガラス基板、33…回路素子層、34…発光素子層、37…下地保護膜、38…ゲート絶縁膜、42…半導体膜、43…ソース領域、44…ドレイン領域、45…チャネル領域、46…ゲート電極、47…第1層間絶縁膜、48…第2層間絶縁膜、51,53…コンタクトホール、55…機能層、56…隔壁、57…有機EL素子、58…絶縁層、61…正孔注入層、71…真空乾燥装置、72…チャンバ、73…第1ポンプとしてのドライポンプ、74…第2ポンプとしてのターボ分子ポンプ、75…補助ポンプ、76…載置台、77…圧力計、81…排気口、82…第1配管、83…第2配管、84…第3配管、85,86,88…圧力調整バルブ、87…第4配管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に塗布された液状体を減圧下で乾燥して基板の表面に機能膜を形成するための乾燥方法、機能膜の製造方法、電気光学装置の製造方法、及び有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記機能膜としては、例えば、有機EL装置の発光層が挙げられる。機能膜の製造方法は、まずインクジェット塗布法を用いて基板(パネル)の画素に対応する部分に液状体を塗布する。次に、例えば、特許文献1に記載のように、基板を真空乾燥装置のチャンバの中に入れて減圧する。そして、チャンバ内の圧力が液状体を構成する溶媒の蒸気圧以下になると、溶媒の乾燥が進んで発光層が形成される。
【0003】
【特許文献1】特開2007−61674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図10に示すように、基板101の表面に塗布された液状体102の位置(例えば、基板101の周囲Xと中央付近Y)によって、実際には液状体102の乾燥する時間が異なる。周囲Xと中央付近Yとにおいて乾燥する時間に大きな差が生じると、図11に示すように、液状体102がゆっくり乾燥した場合(乾燥時間の範囲Zが広い場合)、乾燥中に液状体102内で溶媒の移動が生じ、完成した発光層103の膜厚や膜形状のばらつきが基板101面内において大きくなる。これにより、基板101面内において輝度ムラが大きくなり、その結果、表示品質が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る乾燥方法は、表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体が塗布された基板をチャンバの中に配置する配置工程と、前記チャンバ内の圧力が前記溶媒の蒸気圧より高く、かつ、前記蒸気圧に近い圧力になる第1排気速度で前記チャンバ内を排気する第1減圧工程と、前記第1排気速度より速い排気速度からなる第2排気速度に切り換えて、塗布された前記液状体を乾燥させる第2減圧工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
この方法によれば、上記した圧力になるタイミングで、第1排気速度より速い第2排気速度に切り換えてチャンバ内を減圧するので、溶媒をすばやく蒸発させて機能膜が形成される。よって、例えば、第1減圧工程のみで液状体を乾燥させる場合と比較して、短時間で液状体を乾燥させることが可能となり、基板面内における乾燥時間差を小さくすることができる。その結果、乾燥時間の差に起因する機能膜の厚みや膜形状のばらつきを抑制して、機能膜を基板面内に亘って均一に形成することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第2減圧工程は、前記溶媒の蒸気圧より低い圧力に減圧することが好ましい。
【0009】
この方法によれば、急激に溶媒の蒸気圧より低い圧力までチャンバ内を減圧するので、液状体を確実に乾燥させることが可能となり、乾燥ムラを抑えることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第2減圧工程は、前記第1減圧工程より到達真空度が高いことが好ましい。
【0011】
この方法によれば、第1減圧工程と比較して第2減圧工程の到達真空度が高いので、チャンバ内の減圧速度を速め、溶媒を急激に乾燥させることができる。よって、短時間で機能膜を形成することが可能となり、その結果、基板面内の乾燥時間の差に起因する機能膜の膜厚や膜形状のばらつきを抑えることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続する配管を、配管D1から前記配管D1よりも太い配管D2に切り換えることが好ましい。
【0013】
この方法によれば、第2減圧工程で細い配管D1から太い配管D2に切り換えるので、配管の中を流れるガスの排気抵抗を小さくすることが可能となり、ガスの排気速度を速くすることができる。よって、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、乾燥する時間の差を小さくすることができる。加えて、例えば、排気速度の速いポンプに切り換える構成と比較して、簡単な構成で実現することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続する配管を、配管L1から前記配管L1よりも短い配管L2に切り換えることが好ましい。
【0015】
この方法によれば、第2減圧工程で長い配管L1から短い配管L2に切り換えるので、配管の中を流れるガスの排気抵抗を小さくすることが可能となり、ガスの排気速度を速くすることができる。よって、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、乾燥する時間の差を抑えることができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続するバルブの開度を、第1開度から前記第1開度よりも大きい第2開度に切り換えることが好ましい。
【0017】
この方法によれば、第2減圧工程で小さい第1開度から大きい第2開度に切り換えるので、配管の中を流れるガスの排気抵抗を小さくすることが可能となり、ガスの排気速度を速くすることができる。よって、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、乾燥する時間の差を抑えることができる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に係る乾燥方法において、前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバ内のガスを排気するポンプの種類を、第1ポンプから排気速度の速い第2ポンプに切り換えることが好ましい。
【0019】
この方法によれば、第2減圧工程で排気速度の遅い第1ポンプから排気速度の速い第2ポンプに切り換えるので、チャンバ内のガスを速く排気することができる。よって、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、乾燥する時間の差を抑えることができる。
【0020】
[適用例8]本適用例に係る機能膜の製造方法は、基板の表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体を塗布する塗布工程と、塗布された前記液状体を乾燥させ機能膜を形成する乾燥工程と、を備え、前記乾燥工程は、上記した乾燥方法を用いて前記液状体を乾燥させることを特徴とする。
【0021】
この方法によれば、上記した乾燥方法を用いて機能膜を形成するので、機能膜の厚みや形状を均一に形成することができる。
【0022】
[適用例9]上記適用例に係る機能膜の製造方法において、前記塗布工程は、インクジェット法により前記液状体を前記基板に塗布することが好ましい。
【0023】
この方法によれば、インクジェット法を用いて基板の表面に液状体を塗布するので、所望の位置に塗布したり所望の量を塗布したりすることを、比較的簡単に行うことができる。
【0024】
[適用例10]本適用例に係る電気光学装置の製造方法は、上記した機能膜の製造方法を用いて電気光学装置を製造することを特徴とする。
【0025】
この方法によれば、上記した機能膜の製造方法を用いて電気光学装置を製造するので、基板面内において機能膜の厚みや形状を均一にすることが可能となり、輝度ムラなどによる表示品質の低下を抑えることができる。
【0026】
[適用例11]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、上記した機能膜の製造方法を用いて有機EL装置を製造する有機EL装置の製造方法であって、前記機能膜は、発光層であることを特徴とする。
【0027】
この方法によれば、上記した機能膜の製造方法を用いて発光層等を形成するので、基板面内において発光層等の厚みや形状を均一にすることが可能となり、輝度ムラなどによる表示品質の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、乾燥方法、機能膜の製造方法、電気光学装置としての有機EL装置の製造方法について説明する。まず、有機EL装置の構造から説明する。図1は、本実施形態の有機EL装置の構造を模式的に示す等価回路図である。以下、有機EL装置の構造を、図1を参照しながら説明する。
【0029】
図1に示すように、有機EL装置11は、複数の走査線12と、走査線12に対して交差する方向に延びる複数の信号線13と、信号線13に並行に延びる複数の電源線14とを有している。走査線12と信号線13とは、それぞれ格子状に配線されている。そして、走査線12と信号線13とにより区画された領域が画素領域として構成されている。また、複数の信号線13が接続された信号線駆動回路15と、複数の走査線12が接続された走査線駆動回路16とを備えている。
【0030】
各画素領域には、走査線12を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT21と、このスイッチング用TFT21を介して信号線13から供給される画素信号を保持する保持容量22と、保持容量22によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT(Thin Film Transistor)23とが設けられている。更に、各画素領域には、駆動用TFT23を介して電源線14に電気的に接続したときに、電源線14から駆動電流が流れ込む画素電極24と、共通電極としての陰極25と、この画素電極24と陰極25との間に挟持された機能膜としての機能層55とが設けられている。
【0031】
有機EL装置11は、画素電極24と陰極25と機能層55とにより構成される有機EL素子57を複数備えている。また、有機EL装置11は、複数の有機EL素子57で構成される発光領域を備えている。
【0032】
この構成によれば、走査線12が駆動されてスイッチング用TFT21がオンになると、そのときの信号線13の電位が保持容量22に保持され、保持容量22の状態に応じて、駆動用TFT23のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT23のチャネルを介して、電源線14から画素電極24に電流が流れ、更に、機能層55を介して陰極25に電流が流れる。機能層55は、ここを流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0033】
図2は、有機EL装置の構造を示す模式断面図である。以下、有機EL装置の構造を、図2を参照しながら説明する。なお、各構成要素は、断面的な位置関係を示すものであり、相対関係は度外視されている。
【0034】
図2に示すように、有機EL装置11は、発光領域31において発光が行われるものであり、基板32と、基板32上に形成された回路素子層33と、回路素子層33上に形成された発光素子層34と、発光素子層34上に形成された陰極25とを有する。基板32としては、透光性を有する材料であり、例えば、ガラス基板、石英、プラスチック等が挙げられる(以下、「ガラス基板32」と称する。)。また、図2に示す有機EL装置11は、例えば、機能層55を構成する発光層26から発した光がガラス基板32側に射出されるボトムエミッション方式である。
【0035】
回路素子層33には、ガラス基板32上にシリコン酸化膜(SiO2)からなる下地保護膜37が形成され、下地保護膜37上に駆動用TFT23が形成されている。詳しくは、下地保護膜37上に、ポリシリコン膜からなる島状の半導体膜42が形成されている。半導体膜42には、ソース領域43及びドレイン領域44が不純物の導入によって形成されている。そして、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域45となっている。
【0036】
更に、回路素子層33には、下地保護膜37及び半導体膜42を覆うシリコン酸化膜等からなる透明なゲート絶縁膜38が形成されている。ゲート絶縁膜38上には、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)などからなるゲート電極46が形成されている。ゲート絶縁膜38及びゲート電極46上には、透明な第1層間絶縁膜47及び第2層間絶縁膜48が形成されている。第1層間絶縁膜47及び第2層間絶縁膜48は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)、チタン酸化膜(TiO2)などから構成されている。ゲート電極46は、半導体膜42のチャネル領域45に対応する位置に設けられている。
【0037】
半導体膜42のソース領域43は、ゲート絶縁膜38及び第1層間絶縁膜47を貫通して設けられたコンタクトホール51を介して、第1層間絶縁膜47上に形成された信号線13と電気的に接続されている。一方、ドレイン領域44は、ゲート絶縁膜38、第1層間絶縁膜47、及び第2層間絶縁膜48を貫通して設けられたコンタクトホール53を介して、第2層間絶縁膜48上に形成された画素電極24と電気的に接続されている(なお、図2において、ゲート絶縁膜38の貫通の図示を省略している)。
【0038】
画素電極24は、発光領域31(画素)ごとに形成されている。また、画素電極24は、透明のITO(Indium Tin Oxide)膜からなり、例えば、平面視で略矩形の形状となっている。なお、回路素子層33には、図示しない保持容量22及びスイッチング用TFT21が形成されている。このようにして、回路素子層33には、各画素電極24に接続された駆動用TFT23が形成されている。
【0039】
上記した画素電極24を含む発光素子層34は、マトリクス状に配置された発光素子を具備して回路素子層33上に形成されている。詳述すると、発光素子層34は、画素電極24上に形成された機能層55と、機能層55を区画する隔壁(バンク)56とを主体として構成されている。機能層55上及び隔壁56上には、陰極25が配置されている。画素電極24と、機能層55と、陰極25とによって有機EL素子57が構成されている。
【0040】
回路素子層33と隔壁56との間には、絶縁層58が形成されている。絶縁層58は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)である。絶縁層58は、隣り合う画素電極24間の絶縁性を確保するために、画素電極24の周縁部上に乗り上げるように形成されている。つまり、画素電極24と絶縁層58とは、平面的に一部が重なるように配置された構造となっている。言い換えれば、絶縁層58は、発光領域31を除いた領域に形成されていることになる。
【0041】
隔壁56は、例えば、断面に見て傾斜面を有する台形状に形成されている。絶縁層58と隔壁56とは、回路素子層33上に、例えば、格子状に形成されており、発光領域31を区画している。
【0042】
機能層55は、例えば、正孔注入層61と、発光層26とが積層されており、これらが隔壁56に囲まれた領域、すなわち発光領域31に形成されている。正孔注入層61は、画素電極24を底部とし、隔壁56を側壁とする凹部に形成されている。また、正孔注入層61は、導電性高分子材料中にドーパントを含有する導電性高分子層からなる。このような正孔注入層61は、例えば、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸を含有する3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)などから構成することができる。
【0043】
発光層26は、エレクトロルミネッセンス現象を発現する有機発光物質(有機物)の層である。画素電極24と陰極25との間に電圧を印加することによって、発光層26には、正孔注入層61から正孔が、また、陰極25から電子が注入される。発光層26において、正孔と電子とが結合したときに光を発する。なお、機能層55は、後述する真空乾燥装置71を用いて製造することができる。
【0044】
陰極25は、機能層55及び隔壁56を覆うように形成されている。言い換えれば、陰極25は、発光層26を挟んで画素電極24の反対側に形成されている。陰極25は、例えば、カルシウム(Ca)及びアルミニウム(Al)の積層体である。陰極25の膜厚は、例えば50〜200nmである。
【0045】
陰極25の上には、水や酸素の侵入を防ぐための、樹脂などからなる封止層(図示せず)が積層されている。封止層は、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等からなる。なお、発光素子層34と陰極25とによって有機EL素子57が構成される。
【0046】
なお、有機EL装置11は、ボトムエミッション方式に限定されず、発光層26から発した光が封止層(図示せず)側に射出されるトップエミッション方式であってもよい。有機EL装置11がトップエミッション方式である場合、ガラス基板32に代えて透明な材料及び不透明な材料のいずれを用いてもよい。この場合、陰極25には透光性を有する導電材料が用いられ、封止層には透光性を有する材料が用いられる。
【0047】
続いて、機能層を乾燥によって形成するための真空乾燥装置について説明する。図3は、真空乾燥装置の構造を示す模式断面図である。以下、真空乾燥装置の構造を、図3を参照しながら説明する。まず、図3に示すように、真空乾燥装置71は、基板32(基板32上に形成された膜も含む)をチャンバ72内に収容し、基板32上に塗布された液状体を減圧下で乾燥させる装置であり、減圧手段として例えば、第1ポンプとしてのドライポンプ73と、第2ポンプとしてのターボ分子ポンプ74と、補助ポンプ75とを備えている。
【0048】
チャンバ72には、基板32を載置する載置台76が設けられている。チャンバ72の下部には、排気口81が設けられている。排気口81を含む第1配管82は、第2配管83を介してドライポンプ73に接続されている。また、第1配管82は、第3配管84を介してターボ分子ポンプ74に接続されている。
【0049】
第2配管83には、圧力調整バルブ85が取り付けられている。また、第3配管84には、圧力調整バルブ86が取り付けられている。つまり、圧力調整バルブ85,86を開閉することによって、ドライポンプ73とターボ分子ポンプ74とを切り換えることが可能となっている。加えて、ターボ分子ポンプ74は、第4配管87及び圧力調整バルブ88を介して補助ポンプ75と接続されている。また、チャンバ72の上部には、チャンバ72内の圧力を測定する圧力計77が備えられている。
【0050】
ドライポンプ73は、チャンバ72内の圧力を大気圧から所定の圧力まで減圧するために用いられる。ターボ分子ポンプ74は、前述した所定の圧力より更に低い圧力にするために用いられる。所定の圧力は、後述する比較例にて説明する。
【0051】
ターボ分子ポンプ74は、ドライポンプ73に比べて排気量が多い。言い換えれば、ターボ分子ポンプ74の方がドライポンプ73より排気速度が速い。また、ターボ分子ポンプ74は、ドライポンプ73より到達真空度が高い。以上のようなポンプを備えた真空乾燥装置71を用いて、基板32上に塗布された液状体(例えば、発光層26となるもの)を減圧下で乾燥させる。
【0052】
<比較例1>
図4は、ドライポンプを用いたときのチャンバ内の圧力特性を示すグラフである。以下、図4を参照しながらドライポンプの圧力特性(排気時間と圧力との関係)について説明する。
【0053】
図4に示すグラフの横軸は、チャンバ72内の気体(ガス)を排気する時間であり、図示右側にいくに従って時間が経過することを示している。グラフの縦軸は、チャンバ72内の圧力であり、図示下側にいくに従って圧力が低くなる(図示上側が大気圧)ことを示している。
【0054】
図4に示すグラフは、次のような条件で行ったものである。経過時間が0分のとき、大気圧となっている。使用するポンプは、ドライポンプ73である。排気速度(第1排気速度)は1300l/分、到達真空度は2Paである。この条件で29分間減圧乾燥を行ったときの実際の到達圧力は、4.05Paである。
【0055】
このグラフによれば、排気時間が0分から約2分までにチャンバ72内の圧力が急激に低下することがわかる。また、その時点から29分までは、圧力低下の変化量が緩やかになっている。
【0056】
基板32上に塗布する液状体(溶液)は、例えば発光層26となるものであり、溶媒にR(赤)、G(緑)、B(青)の発光ポリマー(機能性材料)を溶解(分散)させたものである。溶媒は、例えば、シクロヘキシルベンゼンである。また、シクロヘキシルベンゼンは、20℃(室温)で飽和蒸気圧が7Paである。
【0057】
以上のように、ドライポンプ73を用いて液状体を減圧乾燥させる場合、溶媒の蒸気圧である7Pa付近において圧力の低下が緩やかになる。言い換えれば、ゆっくり液状体を乾かしている。これにより、基板32上における溶媒の乾燥時間の差が大きくなり、発光層26の膜厚や膜形状が、特に基板32面内の端と中央付近とで安定しないという現象が発生する。詳しくは、基板32の端と中央付近において乾燥する時間差が大きい。乾燥する時間が長いと隔壁56の側面に液状体が移動する量が多い(基板32の端の部分)。乾燥する時間が短いと隔壁56の側面に液状体が移動する量が少ない(基板32の中央部分)。その結果、基板32面内において輝度ムラが大きくなる。
【0058】
<実施例1>
図5は、ドライポンプとターボ分子ポンプの両方を用いたときのチャンバ内の圧力特性を示すグラフである。以下、図5を参照しながら、2つのポンプを用いたときの圧力特性(排気時間と圧力との関係)について説明する。なお、液状体についての詳細は、上記で説明した内容と同じである。
【0059】
図5に示すグラフの横軸と縦軸の詳細は、図4に示すグラフと同様である。実線Aは、ドライポンプ73を用いて大気圧から減圧したときの特性を示している。実線Bは、減圧途中でドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換え、引き続きターボ分子ポンプ74で減圧したときの特性を示している。
【0060】
実線Aは、図4に示した条件と同様に、ドライポンプ73にて、排気速度(第1排気速度)が1300l/分、到達真空度が2Paで減圧乾燥を行った場合の特性である。ただし、ドライポンプ73を用いる時間(減圧時間)は、5分である。このときの到達圧力は、32.3Paである。
【0061】
実線Bは、ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換えて減圧乾燥を行ったときの特性を示している。このときの減圧乾燥条件は、次の通りである。排気速度(第2排気速度)は21000l/分、到達真空度は10-4Paである。この条件で9分間減圧乾燥を行ったときの到達圧力は、1.3×10-2Pa(0.013Pa)である。
【0062】
ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換えるC点(32.3Pa)は、液状体を構成する溶媒の蒸気圧より高く液状体の流動性が維持でき、かつ、蒸気圧に近い圧力である。
【0063】
詳しくは、ポンプ(ドライポンプ73、ターボ分子ポンプ74)の能力と使用する溶媒の蒸気圧とによって求めることができる。この場合、溶媒は蒸気圧が7Paのシクロヘキシルベンゼンであり、考えられるC点の上限としては、少なくとも、溶媒の蒸気圧の1000倍程度の圧力である。しかしながら、C点があまりに大きすぎると、第2減圧工程で使用するポンプへの排気負荷が大きくなり、ポンプを長期的に安定して使用するという観点から好ましくない。従って、好ましいC点の上限としては、溶媒の蒸気圧の10〜100倍程度の圧力である。
【0064】
このグラフによれば、排気時間が0分から5分までは、図4に示す圧力特性と同じ値の特性を示している(実線A)。また、C点でドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換えているので、排気時間が5分以降、短時間でチャンバ72内の圧力が急激に低下していることがわかる(実線B)。つまり、短い時間で溶媒の蒸気圧(7Pa)より低い圧力まで低下させて、基板32面内における端と中央付近で乾燥する時間差を小さくしている。
【0065】
言い換えれば、ドライポンプ73のみを用いて液状体を乾燥させる場合(比較例1)と、ドライポンプ73とターボ分子ポンプ74とを用いて液状体を乾燥させる場合(実施例1)とでは、溶媒が乾燥する7Pa付近において、乾燥時間に差がある。つまり、7Pa付近で圧力を急激に低下させることができるドライポンプ73及びターボ分子ポンプ74を用いた方(実施例1)が、短時間で液状体を乾燥させることが可能となり、基板32面内全体に亘って発光層26の膜厚や膜形状を安定させることができる。その結果、輝度ムラを抑えることができる。
【0066】
図6は、有機EL装置の製造方法を工程順に示す工程図である。図7は、有機EL装置の製造方法のうち、真空乾燥装置を用いて発光層(機能膜)を製造する方法を工程順に示す工程図である。以下、有機EL装置の製造方法を、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0067】
図6に示すように、まずステップS11では、ガラス基板32上に、成膜技術を用いて回路素子層33を形成する。回路素子層33は、駆動用TFT23やこれらの配線、駆動回路等を有する。ステップS12では、回路素子層33上にITO等からなる画素電極24を形成する。
【0068】
ステップS13では、回路素子層33上及び画素電極24上の一部に絶縁層58及び隔壁56を形成する。具体的には、まず、絶縁層58の材料となる、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)を、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、回路素子層33及び画素電極24上を覆うように形成する。次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、発光領域31に開口部を形成する。次に、同様の方法を用いて、絶縁層58上に隔壁56を形成する。隔壁56は、例えば、アクリル樹脂からなる。
【0069】
ステップS14では、画素電極24上を含む隔壁56で囲まれた開口部に、正孔注入層61を形成する。ステップS15では、正孔注入層61の上に発光層26を形成する。発光層26の形成方法については、図7に示す工程図に従って説明する。
【0070】
まず、図7に示すように、ステップS151(塗布工程)では、有機EL装置11の画素領域(隔壁56で囲まれた領域(基板32の表面))に、例えば、インクジェット法を用いて液状体を塗布(充填)する。
【0071】
ステップS152(配置工程)では、液状体が塗布された有機EL装置11(基板32)を、液状体を乾燥させて発光層26(機能層55)を作るための真空乾燥装置71(図3参照)の中に挿入する。詳しくは、チャンバ72内の載置台76に基板32を載置する。次に、チャンバ72を密閉する。このときのチャンバ72内は、大気圧となっている。
【0072】
以下、ステップS153〜ステップS155は、液状体の乾燥方法である。ステップS153では、第1減圧処理(第1減圧工程)を行う。まず、圧力調整バルブ85を開状態、圧力調整バルブ86を閉状態にする。次に、ドライポンプ73を用いて、チャンバ72内の圧力を減圧する。具体的には、大気圧から、液状体を構成する溶媒の蒸気圧より高い圧力まで下げる(図5におけるA線)。この時点で液状体は、流動性を有している。
【0073】
ステップS154では、使用ポンプをドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換える。具体的には、ドライポンプ73の稼動を停止して、圧力調整バルブ85を閉状態、圧力調整バルブ86及び圧力調整バルブ88(いずれも図3参照)を開状態にする。
【0074】
ステップS155では、第2減圧処理(第2減圧工程、乾燥工程)を行う。使用するポンプは、上記したターボ分子ポンプ74及び補助ポンプ75である。具体的には、チャンバ72内の圧力を、溶媒の蒸気圧より高い圧力から蒸気圧より低い圧力まで下げる(図5におけるB線)。これにより液状体(発光層)は、球状の液状体から隔壁56の側面に反り上がった形状となる。
【0075】
この様な減圧処理を行うことにより、チャンバ72内を急激に減圧することが可能となり、第1減圧処理のみで発光層26を形成するより短い時間で形成することができる。基板32面内において乾燥時間の差が大きくなると、上記した液状体(発光層)の形状が大きく変わる。具体的には、液状体の反り度合い(U字度合い)が面内の端と中央付近で変わる。詳しくは、端の方が隔壁56の周囲に固形分がもっていかれた状態となり、中央付近の方が膜厚が厚くなる。
【0076】
一方、短い時間で液状体(発光層26)を乾燥させることにより、乾燥時間の差を小さくすることができ、その結果、基板32面内全体に亘って発光層26の厚みや形状を均一に形成することができる。
【0077】
ステップS16では、発光層26を覆うように陰極25を成膜する。具体的には、発光層26及び隔壁56を含む基板32上の全体に、例えば、カルシウム膜及びアルミニウム膜からなる陰極25を積層する。
【0078】
ステップS17では、陰極25を覆うように、封止層(図示せず)を形成する。以上により、有機EL装置11が完成する。
【0079】
図8は、有機EL装置における画素の位置と輝度値との関係を、比較例1の場合と実施例1の場合とにおいて比較したグラフである。図9は、有機EL装置を上方から見た模式平面図である。以下、画素の位置と輝度値との関係を、図8及び図9を参照しながら説明する。
【0080】
図8に示すグラフの横軸は、画素の位置(番号)を示している。具体的には、例えば、図9に示すように、有機EL装置11の横方向(長手方向)の画素が160画素、縦方向(短手方向)の画素が120画素であるとする。横方向の半分の画素である80画素目の縦ライン、計120画素を有機EL装置11の端から順に画素の番号をつけている。つまり、グラフの左右両端が有機EL装置11の端部となり、グラフの中央が有機EL装置11の中央となる。
【0081】
縦軸は、各画素の輝度値を示している。詳しくは、各画素に定電圧を印加したときの各画素の輝度値であり、図示上側にいくに従って輝度値が高いことを示している。
【0082】
E線は、比較例1における画素位置と輝度値との関係を示している。F線は、実施例1における画素位置と輝度値との関係を示している。
【0083】
このグラフを見ると、ドライポンプ73のみを用いて溶媒を乾燥させたE線は、基板32(有機EL装置11)の端(画素番号0番付近、画素番号120番付近)と中央(画素番号60番付近)とにおいて、輝度値が大きく変わっている。詳しくは、輝度値の最大値は、基板32の端である画素番号120番であり、127%である。一方、輝度値の最小値は、基板32の中央付近である画素番号65番であり、84%である。ばらつきのレンジは、43%である。
【0084】
また、ドライポンプ73とターボ分子ポンプ74とを用いて溶媒を乾燥させたF線は、基板32の端と中央において、E線に比べて輝度値の変化が少ない。詳しくは、輝度値の最大値は、基板32の端である画素番号8番であり、106%である。一方、輝度値の最小値は、基板32の中央付近である画素番号74番であり、92%である。ばらつきのレンジは、14%である。
【0085】
以上のように、比較例1と比べて実施例1は、溶媒の蒸気圧付近でチャンバ72内を急激に減圧するので、短い時間で溶媒(発光層26)を乾燥させることが可能となり、基板32面内において乾燥時間の差を小さくすることができる。なお、乾燥時間の差が大きくなると、基板32の中央付近の膜厚がより厚くなり、暗くなる。また、基板32の端の膜厚がより薄くなり、明るくなる。その結果、図8に示すように、基板32面内全体に亘って輝度ムラのばらつきを小さくすることが可能となり、表示品質を向上させることができる。
【0086】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
【0087】
(1)本実施形態によれば、液状体を構成する溶媒の蒸気圧より高く液状体が流動可能な圧力であり、かつ、蒸気圧に近い圧力になったタイミングで、ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換えて減圧するので、溶媒が蒸発して発光層26となるときに、チャンバ72内を急激に減圧することが可能となる。よって、例えば、ドライポンプ73のみで液状体を乾燥させる場合と比較して、短時間で液状体を乾燥させることが可能となり、基板32面内において乾燥時間の差を小さくすることができる。その結果、乾燥時間の差に起因する発光層26の厚みや形状のばらつきを抑制し、発光層26を基板32面内に亘って均一に形成することができ、輝度ムラを抑えることができる。その結果、表示品質を向上させることができる。
【0088】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0089】
(変形例1)
上記したように、C点を境に(図5参照)ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換え、排気速度を速くすることに代えて、例えば、ドライポンプ73と接続されている第1配管82及び第2配管83の配管径を変えて排気速度を変えるようにしてもよい。具体的には、大気圧から減圧する場合に用いた配管(配管D1)の径に対して、C点から減圧する場合に太い配管(配管D2)の径にする。例えば、細い配管と太い配管とがあり、配管の流通を切り換えることによって排気速度を変える。なお、ドライポンプ73の排気能力は変わらない。これによれば、細い配管から太い配管に切り換えるので、排気抵抗を小さくすることができ、配管の中を流れるガスの速度を速くすることが可能となる。よって、チャンバ72の中を更に減圧することができる。その結果、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、基板32面内において乾燥する時間の差を小さくすることができる。加えて、ドライポンプ73とターボ分子ポンプ74の2つのポンプを備える構成と比較して、簡単な構成で排気速度を変えることができる。
【0090】
(変形例2)
上記したように、C点を境に(図5参照)ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換え、排気速度を速くすることに代えて、例えば、ドライポンプ73と接続されている第1配管82及び第2配管83の配管長さを変えて排気速度を変えるようにしてもよい。具体的には、大気圧から減圧する場合に用いた配管(配管L1)の長さに対して、C点から減圧する場合に短い配管(配管L2)にする。例えば、長い配管と短い配管とがあり、配管の流通を切り換えることによって排気速度を変える。これによれば、長い配管から短い配管に切り換えるので、排気抵抗を小さくすることができ、配管の中を流れるガスの速度を速くすることが可能となる。よって、チャンバ72の中を更に減圧することができる。その結果、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、基板32面内において乾燥する時間の差を小さくすることができる。
【0091】
(変形例3)
上記したように、C点を境に(図5参照)ドライポンプ73からターボ分子ポンプ74に切り換え、排気速度を速くすることに代えて、例えば、第2配管83の途中に接続されている圧力調整バルブ85の開度を小さい第1開度から大きい第2開度にして排気速度を変えるようにしてもいい。これによれば、小さい第1開度から大きい第2開度に切り換えるので、排気抵抗を小さくすることができ、配管の中を流れるガスの速度を速くすることが可能となる。よって、チャンバ72内を更に減圧させることができる。その結果、溶媒の乾燥を短時間で行うことが可能となり、基板32面内において乾燥する時間の差を小さくすることができる。
【0092】
(変形例4)
上記したように、機能膜は有機EL装置11の発光層26に限定されず、例えば、フォトリソグラフィ技術に用いられるレジスト膜、オーバーコート膜(平坦化膜)、液晶装置などに用いられるカラーフィルタの色層及び配向膜、有機TFT、金属配線等であってもよい。
【0093】
(変形例5)
上記したように、電気光学装置は有機EL装置11に限定されず、例えば、液晶装置、プラズマディスプレイ、電子ペーパーなどに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態に係る有機EL装置の構造を模式的に示す等価回路図。
【図2】有機EL装置の構造を示す模式断面図。
【図3】真空乾燥装置の構造を示す模式断面図。
【図4】ドライポンプを用いたときの圧力特性(比較例1)を示すグラフ。
【図5】ドライポンプとターボ分子ポンプを用いたときの圧力特性(実施例1)を示すグラフ。
【図6】有機EL装置の製造方法を工程順に示す工程図。
【図7】有機EL装置の製造方法のうち、発光層の製造方法を工程順に示す工程図。
【図8】有機EL装置における画素の位置と輝度値との関係を、比較例1の場合と実施例1の場合とにおいて比較したグラフ。
【図9】有機EL装置を上方から見た模式平面図。
【図10】従来の有機EL装置を上方から見た模式平面図。
【図11】従来のポンプの圧力特性を示すグラフ。
【符号の説明】
【0095】
11…電気光学装置としての有機EL装置、12…走査線、13…信号線、14…電源線、15…信号線駆動回路、16…走査線駆動回路、22…保持容量、23…駆動用TFT、24…画素電極、25…陰極、26…発光層、31…発光領域、32…ガラス基板、33…回路素子層、34…発光素子層、37…下地保護膜、38…ゲート絶縁膜、42…半導体膜、43…ソース領域、44…ドレイン領域、45…チャネル領域、46…ゲート電極、47…第1層間絶縁膜、48…第2層間絶縁膜、51,53…コンタクトホール、55…機能層、56…隔壁、57…有機EL素子、58…絶縁層、61…正孔注入層、71…真空乾燥装置、72…チャンバ、73…第1ポンプとしてのドライポンプ、74…第2ポンプとしてのターボ分子ポンプ、75…補助ポンプ、76…載置台、77…圧力計、81…排気口、82…第1配管、83…第2配管、84…第3配管、85,86,88…圧力調整バルブ、87…第4配管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体が塗布された基板をチャンバの中に配置する配置工程と、
前記チャンバ内の圧力が前記溶媒の蒸気圧より高く、かつ、前記蒸気圧に近い圧力になる第1排気速度で前記チャンバ内を排気する第1減圧工程と、
前記第1排気速度より速い排気速度からなる第2排気速度に切り換えて、塗布された前記液状体を乾燥させる第2減圧工程と、
を有することを特徴とする乾燥方法。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥方法であって、
前記第2減圧工程は、前記溶媒の蒸気圧より低い圧力に減圧することを特徴とする乾燥方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乾燥方法であって、
前記第2減圧工程は、前記第1減圧工程より到達真空度が高いことを特徴とする乾燥方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乾燥方法であって、
前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続する配管を、配管D1から前記配管D1よりも太い配管D2に切り換えることを特徴とする乾燥方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乾燥方法であって、
前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続する配管を、配管L1から前記配管L1よりも短い配管L2に切り換えることを特徴とする乾燥方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乾燥方法であって、
前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続するバルブの開度を、第1開度から前記第1開度よりも大きい第2開度に切り換えることを特徴する乾燥方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乾燥方法であって、
前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバ内のガスを排気するポンプの種類を、第1ポンプから排気速度の速い第2ポンプに切り換えることを特徴する乾燥方法。
【請求項8】
基板の表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体を塗布する塗布工程と、
塗布された前記液状体を乾燥させ機能膜を形成する乾燥工程と、を備え、
前記乾燥工程は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の乾燥方法を用いて前記液状体を乾燥させることを特徴とする機能膜の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の機能膜の製造方法であって、
前記塗布工程は、インクジェット法により前記液状体を前記基板に塗布することを特徴とする機能膜の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の機能膜の製造方法を用いて電気光学装置を製造することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
請求項8又は請求項9に記載の機能膜の製造方法を用いて有機EL装置を製造する有機EL装置の製造方法であって、
前記機能膜は、発光層であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項1】
表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体が塗布された基板をチャンバの中に配置する配置工程と、
前記チャンバ内の圧力が前記溶媒の蒸気圧より高く、かつ、前記蒸気圧に近い圧力になる第1排気速度で前記チャンバ内を排気する第1減圧工程と、
前記第1排気速度より速い排気速度からなる第2排気速度に切り換えて、塗布された前記液状体を乾燥させる第2減圧工程と、
を有することを特徴とする乾燥方法。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥方法であって、
前記第2減圧工程は、前記溶媒の蒸気圧より低い圧力に減圧することを特徴とする乾燥方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乾燥方法であって、
前記第2減圧工程は、前記第1減圧工程より到達真空度が高いことを特徴とする乾燥方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乾燥方法であって、
前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続する配管を、配管D1から前記配管D1よりも太い配管D2に切り換えることを特徴とする乾燥方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乾燥方法であって、
前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続する配管を、配管L1から前記配管L1よりも短い配管L2に切り換えることを特徴とする乾燥方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乾燥方法であって、
前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバと前記チャンバ内のガスを排気するポンプとを接続するバルブの開度を、第1開度から前記第1開度よりも大きい第2開度に切り換えることを特徴する乾燥方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の乾燥方法であって、
前記第1排気速度から前記第2排気速度への切り換えは、前記チャンバ内のガスを排気するポンプの種類を、第1ポンプから排気速度の速い第2ポンプに切り換えることを特徴する乾燥方法。
【請求項8】
基板の表面に機能性材料と溶媒とを含有する液状体を塗布する塗布工程と、
塗布された前記液状体を乾燥させ機能膜を形成する乾燥工程と、を備え、
前記乾燥工程は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の乾燥方法を用いて前記液状体を乾燥させることを特徴とする機能膜の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の機能膜の製造方法であって、
前記塗布工程は、インクジェット法により前記液状体を前記基板に塗布することを特徴とする機能膜の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の機能膜の製造方法を用いて電気光学装置を製造することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
請求項8又は請求項9に記載の機能膜の製造方法を用いて有機EL装置を製造する有機EL装置の製造方法であって、
前記機能膜は、発光層であることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−80167(P2010−80167A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245396(P2008−245396)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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