説明

亀裂および引っ掻き抵抗性のガラスおよびそれから製造されたエンクロージャ

ガラス並びにそのガスを含む、携帯型電子装置のための窓、カバープレート、および基板を含むエンクロージャが開示されている。このガラスは、直接的な衝撃に耐えるのに十分な亀裂発生閾値を有し、ソーダ石灰ガラスとアルカリアルミノケイ酸塩ガラスよりも大きい、磨耗後に維持される強度を有し、引っ掻かれたときの損傷に対して抵抗性である。エンクロージャとしては、携帯型電子装置や情報端末装置のためのカバープレート、窓、スクリーン、およびケーシングが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2009年8月21日に出願された、米国仮特許出願第61/235767号の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電子装置の窓、カバープレート、および基板を含むガラスエンクロージャに関する。より詳しくは、本開示は、亀裂および引っ掻き抵抗性のエンクロージャに関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスには、電話などの電子装置、およびゲーム、音楽プレーヤなどの娯楽装置、並びにラップトップ・コンピュータなどの情報端末(IT)装置に設計されているものがある。携帯型装置におけるカバーガラスの破損の主因は、点接触すなわち鋭い衝撃である。この問題に対する解決策は、ガラスを保持し、そのような衝撃からガラスを保護するためのベゼルまたは類似の保護構造を提供することにあった。特に、ベゼルは、ガラスの縁に加わる衝撃からの保護を提供する。カバーガラスの縁は、直接的な衝撃によって最も破砕されやすい。ベゼルの組込みにより、ガラスの使用が装置の平らな構成要素に制限され、ガラスの結晶状の外観を利用したデザインを利用することができなくなってしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ガラス、並びにそのガラスを含む携帯型電子装置の窓、カバープレート、および基板を含むガラスエンクロージャが提供される。このガラスは、直接的な衝撃に耐えるのに十分な亀裂発生閾値を有し、ソーダ石灰ガラスとアルカリアルミノケイ酸塩ガラスよりも大きい、磨耗後に維持される強度を有し、引っ掻かれたときの損傷に対してより抵抗性である。エンクロージャとしては、携帯型電子装置や情報端末装置のためのカバープレート、窓、スクリーン、タッチパネルおよびケーシングなどが挙げられる。このガラスは、軽量、高強度、および耐久性のガラスが望ましい、車両のフロントガラスなどの他の用途にも使用できる。
【0005】
したがって、本開示のある態様は、ある実施の形態において、少なくとも50モル%のSiO2、他の実施の形態において、少なくとも58モル%のSiO2、さらに他の実施の形態において、少なくとも60モル%のSiO2、並びにアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種類の改質剤を含むアルミノホウケイ酸塩ガラスを提供することにある。このアルミノホウケイ酸塩ガラスは、イオン交換可能であり、
【数1】

【0006】
を示す。
【0007】
本開示の第2の態様は、アルミノホウケイ酸塩ガラスを提供することにある。このアルミノホウケイ酸塩ガラスは、50〜72モル%のSiO2、9〜17モル%のAl23、2〜12モル%のB23、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2Oを含み、
【数2】

【0008】
ここで、改質剤が、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される。このアルミノホウケイ酸塩ガラスはイオン交換可能である。
【0009】
本開示の第3の態様は、電子装置に使用するためのガラスエンクロージャを提供することにある。このガラスエンクロージャは、幅wの引っ掻き傷を形成するために少なくとも5Nの荷重でヌープダイヤモンドに引っ掻かれたときに、幅wの3倍超のサイズを有するチップ(chip)を含まない強化ガラスから構成される。
【0010】
これらと他の態様、利点および特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1a】ベゼルにより適所に保持された従来技術のガラスカバープレートの説明図
【図1b】ベゼルから盛り上がったガラスカバープレートの説明図
【図2a】10Nの荷重でヌープダイヤモンドにより形成された引っ掻き傷を有する従来技術のイオン交換されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスの顕微鏡画像
【図2b】10Nの荷重でヌープダイヤモンドにより形成された引っ掻き傷を有する強化アルミノホウケイ酸塩ガラスの顕微鏡画像
【図3a】イオン交換されていない従来技術のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスにおける1キログラム重(kgf)のビッカース圧痕305の平面図
【図3b】イオン交換されていない従来技術のソーダ石灰ケイ酸塩ガラスにおける1kgfのビッカース圧痕の側面または断面図
【図4】従来技術のイオン交換されたソーダ石灰ケイ酸塩ガラスにおける1kgfのビッカース圧痕の側面または断面図
【図5a】イオン交換されていないアルミノホウケイ酸塩ガラスにおける1kgfのビッカース圧痕の平面図
【図5b】イオン交換されていないアルミノホウケイ酸塩ガラスにおける1kgfのビッカース圧痕の側面または断面図
【図6】イオン交換されたアルミノホウケイ酸塩ガラスにおける30kgfのビッカース圧痕の平面図
【図7】Al23+B23−Na2Oの関数としてのアルミノホウケイ酸塩ガラスの測定した亀裂発生閾値をプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に渡り、同様の参照記号が同様のまたは対応する部品を示す。別記しない限り、「上」、「下」、「外部へ」、「内部へ」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語と解釈すべきではないことが理解されよう。その上、ある群が、要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個々または互いの組合せのいずれかで、列記されたそれらの要素をいくつ含む、いくつから実質的になる、またはからなってもよいと理解されよう。同様に、ある群が、要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個々または互いの組合せのいずれかで、列記されたそれらの要素、いくつからなってもよいと理解されよう。別記しない限り、値の範囲は、列記された場合、その範囲の上限と下限並びにそれらの間の部分的な範囲の両方を含む。別記しない限り、ここに記載された組成の成分を含む全ての組成および関係は、モルパーセント(モル%)で表される。
【0013】
図面を一般に参照すると、図示は、特定の実施の形態を説明する目的のためであり、本開示または添付の特許請求の範囲をそれに制限することを意図したものではないことが理解されよう。図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、図面のある特徴や視野は、明白さおよび簡潔さのために、尺度と図式が誇張されて示されているかもしれない。
【0014】
ここに用いたように、「エンクロージャ」、「カバープレート」、および「窓」という用語は、相互に交換可能に使用され、携帯型電子装置のためのディスプレイスクリーン、窓、または構造の外部を形成する、窓、カバープレート、スクリーン、パネル、および基板を含む、ガラス物品を称する。
【0015】
ガラスには、電話などの携帯型電子装置、およびゲーム、音楽プレーヤなどを含む娯楽装置、ラップトップ・コンピュータなどの情報端末(IT)装置、およびそのような装置の類似の据置タイプのものに設計されているものがある。
【0016】
ある場合には、そのような設計は、ベゼル、すなわち、ガラス窓またはカバープレートを所定の装置内に保持し保護するために使用される枠、により保護されるガラスの平らな構成要素に制限される。ベゼルにより適所に保持されるガラスカバープレートまたは窓の例が、図1aに示されている。カバープレート110は、ベゼル120の枠122に載置され、ベゼルが、カバープレート110を装置100の本体105上の適所に保持し、カバープレート110の縁112を鋭い衝撃から保護する。
【0017】
そのような装置においてガラス窓、カバープレートなどの結晶状の外観を利用するために、ガラスがベゼルから「盛り上がる」ように、デザインが拡張されている。「ベゼルから盛り上がる」という用語は、ガラスが、装置の縁まで延在し、装置のどのベゼルまたは枠の上にもそれを超えて突出することを意味する。図1bは、ベゼル120から盛り上がり、装置100の本体105に固定されているガラスカバープレート110の例を示している。ガラスカバープレート110は、ガラスカバープレート110の縁112が曝露され、その他にベゼル120により被覆されていないように、ベゼル120の表面に搭載されている。カバープレート110の縁112は、本体105の縁107まで延在している。
【0018】
そのようなデザインにおいてベゼルから盛り上がっているカバープレートまたは窓を実施するための主な制限は、直接的な衝撃にガラスカバープレート110−特に縁112−が耐えられず、それゆえ、ベゼル120によりガラスカバープレート110の縁112を保護する(図1a)必要があることである。さらに、ベゼル120から盛り上がったガラスカバープレート110(図1b)は、ガラスカバープレート110の縁112が曝露されているために、取扱い中と使用中に引っ掻かれる可能性が大きい。したがって、上述した新しいデザインを実施するために、ガラスカバープレートは、そのような用途に現在使用されているガラスよりもうまく、直接的な衝撃に耐えられなければならない。さらに、ガラスは、引っ掻き抵抗性でなければならず、引っ掻かれたり磨耗された後に高い強度を保持すべきである。
【0019】
フロントガラスまたは電子装置におけるカバーガラスなどの用途におけるガラスの破損の主因は、点接触すなわち鋭い衝撃である。そのような用途においてカバーガラスまたは他のエンクロージャとして働くために、ガラスの亀裂発生負荷は、直接的な衝撃に耐えられるように十分に高くなければならない。圧縮応力下にあるガラスの表層の深さは、引っ掻かれた際または磨耗された際に生じる損傷に対する増加した抵抗性および高い保持強度を提供するのに十分でなければならない。
【0020】
したがって、鋭い衝撃に対してより抵抗性であり、直接的衝撃または点衝撃に耐えられるガラスまたはガラス物品が提供される。そのようなガラス物品としては、以下に限られないが、電子装置のためのカバープレート、窓、ケーシング、スクリーン、タッチパネルなどのガラスエンクロージャまたはフロントガラスが挙げられる。ガラスエンクロージャは、以下に限られないが、5Nの荷重、ある実施の形態において、10Nの荷重で、ヌープダイヤモンドの先端の前縁と後縁との間の対稜角が172°30′であるように方向付けられたヌープダイヤモンドにより、0.4mm/sの速度で引っ掻かれたときのチッピングなどの側方の損傷を示さない強化ガラスから構成される。ここに用いたように、「チッピング」は、スタイラスなどの物体により表面が引っ掻かれたときに、ガラスの表面からガラスの破片が除去または放出されることを称する。ここに用いたように、「チップ」は、ガラス表面の引っ掻き中に取り除かれるガラスの破片、またはチップがそこから除かれる表面の領域のいずれも称し得る。後者の意味では、チップは、典型的に、引っ掻き傷の近傍の凹部として特徴付けられる。ここに記載されたガラス物品は、引っ掻かれたときに、引っ掻き傷の幅wの2倍超、別の実施の形態において、引っ掻き傷の幅wの3倍超の距離dに亘り形成される、引っ掻き軌道(すなわち、ヌープダイヤモンドにより形成された引っ掻き傷)のどちらの側にも側方に延在する領域を超えたチッピングを示さない(すなわち、チップが生成されない、またはガラスがチップを含まない)。言い換えれば、引っ掻きにより生じるチッピングは、引っ掻き軌道の両側で境をなすある領域に制限され、ここで、その領域の幅は、引っ掻きの幅wの2倍以下(ある実施の形態においては、3倍以下)である。ある実施の形態において、ガラスエンクロージャは、ベゼルが存在する場合には、ベゼルから盛り上がっており、ベゼルの上に延在し、それを超えて突出している。ある実施の形態において、ガラスエンクロージャは、約0.1mmから約2.0mmまでの範囲の厚さを有する。別の実施の形態において、ガラスエンクロージャは、約0.1mmから約2.3mmまでの範囲の厚さを有し、他の実施の形態において、ガラスエンクロージャは、約5.0mmまでの厚さを有する。
【0021】
引っ掻き抵抗性すなわちガラスエンクロージャの引っ掻きに対する応答が図2aに示されている。図2aに示されたガラスは、66モル%のSiO2、10.3モル%のAl23、0.6モル%のB23、14モル%のNa2O、2.45モル%のK2O、および0.21モル%のSnO2の組成を有し、比率(Al23+B23)/Σ(改質剤)モル%が0.66であるアルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。このガラスは、8時間に亘る410℃での溶融KNO3塩浴中の浸漬によるイオン交換によって強化された。図2aは、10Nの荷重でヌープダイヤモンドにより0.4mm/sの速度で形成された幅wの引っ掻き傷210を有するガラスの顕微鏡画像である。引っ掻き傷210に沿って多数のチップ220が形成されており、いくつかのチップは、引っ掻き傷210の幅wの2倍(2w)を超える距離dに亘り引っ掻き傷210から延在している。図2aに示されたガラスの挙動とは対照的に、ここに記載されたガラスエンクロージャおよびガラスの引っ掻きに対する応答が、図2bに示されている。図2bは、ここに記載されたアルミノホウケイ酸塩ガラスを代表するあるアルミノホウケイ酸塩ガラス(64モル%のSiO2、14.5モル%のAl23、8モル%のB23、11.5モル%のNa2O、および0.1モル%のSnO2、比率(Al23+B23)/Σ(改質剤)が1.96であり、ここで、Al23、B23、およびNa2O改質剤の濃度はモル%で表されている)の顕微鏡画像である。図2bに示されたガラスは、8時間に亘る410℃での溶融KNO3塩浴中の浸漬によるイオン交換によって強化された。図2bに示されたガラスは、10Nの荷重でヌープダイヤモンドにより形成された幅wの引っ掻き傷210を有する。図2bに示されたアルミノホウケイ酸塩ガラスに形成されたチップ220は、図2aに見られるものよりも著しく小さい。図2bにおいて、チップの形成は、引っ掻き傷210の縁212から距離dまでに限られている。そのようなチッピングが生じる区域または領域の幅dは、2wより著しく小さい。言い換えれば、図2bに示されるチップ220のほとんどは、距離dに亘り、これは、引っ掻き傷210からのおおよその幅w未満である。このガラスは、0.4mm/sの速度で3Nのビッカース荷重により引っ掻いた後のリング・オン・リング(ring on ring)測定により測定して、元の破壊荷重の少なくとも30%、ある実施の形態において、元の破壊荷重の少なくとも50%を維持した。
【0022】
ここに記載されたガラスエンクロージャは、剪断破壊(shear faulting)によるよりもむしろ、主に緻密化によって、少なくとも500gfの圧痕荷重下で圧痕の際に変形する強化ガラスから構成される。このガラスは、変形の際に、表面下の破壊および放射状と中央の亀裂がなく、その結果、典型的なイオン交換可能なガラスよりも損傷に対して抵抗性である。その上、このガラスは、イオン交換により強化したときに、剪断破壊による亀裂発生に対してより抵抗性である。ある実施の形態において、ガラスエンクロージャは、イオン交換ガラスからなり、少なくとも10キログラム重(kgf)のビッカース中央/放射状亀裂発生閾値を有する。第2の実施の形態において、このガラスエンクロージャは、少なくとも約20kgfのビッカース中央/放射状亀裂発生閾値を有し、第3の実施の形態において、このガラスエンクロージャは、少なくとも約30kgfのビッカース中央/放射状亀裂発生閾値を有する。別記しない限り、ビッカース中央/放射状亀裂発生閾値は、室温で50%の相対湿度において中央または放射状亀裂の開始を測定することによって決定される。
【0023】
別の実施の形態において、ここに記載されたガラスエンクロージャは壊れやすくない(non-frangible)。ここに用いたように、「壊れやすくない」という用語は、ガラスエンクロージャおよびこのガラスエンクロージャを構成するガラスが、破損の際に激しい破砕を示さないことを意味する。そのような激しい破砕は、典型的に、被覆、接着層などの抑制物のない状況下で、ガラスエンクロージャからの小さなガラス片および/または粒子の放出または「放り出し(tossing)」による多数の亀裂の分岐により特徴付けられる。より詳しくは、壊れやすい挙動は、強化ガラス物品(例えば、板またはシート)の多数の小片(例えば、1mm以下)への破壊;ガラス物品の単位面積当たりに形成された破片の数;ガラス物品中の初期亀裂からの多数の亀裂の分岐;および元の位置からの規定の距離(例えば、約5cm、または約2インチ)の少なくとも1つの破片の激しい放出;並びに前述の破壊(サイズと密度)、亀裂形成、および放出挙動のいずれの組合せの内の少なくとも1つにより特徴付けられる。ガラスエンクロージャおよびこのガラスエンクロージャを構成するガラスは、上述した基準のいずれも示さない場合、実質的に壊れにくいと考えられる。
【0024】
このガラスエンクロージャを構成する強化ガラスは、従来技術で公知の熱的または化学的いずれのプロセスによって強化しても差し支えない。ある実施の形態において、そのガラスは、ガラスを、そのガラスの歪み点と軟化点との間の温度で加熱し、その後、室温に冷却することによって、熱的に強化することができる。別の実施の形態において、ガラスは、イオン交換によって化学的に強化される。このイオン交換において、ガラスの外面から表面下のある深さ(「層の深さ(depth of layer)」または「DOL」と一般に呼ばれる)まで延在するガラスの層内で、ガラス中のより小さい金属イオンが、同じ原子価のより大きい金属イオンにより置き換えられるすなわち「交換される」。より小さいイオンのより大きいイオンによる置換によって、層内に圧縮応力が生じる。ある実施の形態において、金属イオンは、一価のアルカリ金属イオン(例えば、Na+、K+、Rb+など)であり、イオン交換は、ガラス中のより小さい金属イオン(例えば、Na+イオン)を置換することになっているより大きい金属イオンの少なくとも1種類の溶融塩(例えば、KNO3、K2SO4、KClなど)を含む浴中にガラスを浸漬することによって行われる。あるいは、Ag+、Tl+、Cu+などの他の一価の陽イオンを、ガラス中のアルカリ金属陽イオンと交換しても差し支えない。ガラスを強化するために使用されるイオン交換プロセスとしては、以下に限られないが、1つの浴中の浸漬、または浸漬の間に洗浄および/またはアニール工程を行う同じまたは異なる組成の多数の浴中の浸漬が挙げられる。
【0025】
イオン交換されたガラス中に存在する圧縮応力層の深さ(層の深さ)により、ガラスの表面のまたは表面近くのひびの伝搬が妨げられる。ソーダ石灰ガラスおよびアルカリアルミノケイ酸塩ガラスなどのガラスは、高い剪断帯密度により変形する。そのような挙動は、そのガラスのイオン交換されていないものにおける亀裂の発生と伝搬をもたらすことが知られている。剪断破壊および亀裂発生の例が、図3aおよび3bに示されている。図3aおよび3bは、イオン交換されていないソーダ石灰ケイ酸塩ガラスにおける1キログラム重(kgf)のビッカース圧痕305の、それぞれ、平面図と側面(すなわち、断面)図である。放射状亀裂310がビッカース圧痕305(図3a)および剪断変形区域Aから延在している。側方亀裂317、中央亀裂319、および表面下剪断破壊315が、ガラスの側面図(図3b)に見られる。剪断破壊315は、側方と中央の亀裂317.319の開始部位として働く。
【0026】
イオン交換ガラスの表面層内に生じた圧縮応力は、発生した亀裂の伝搬を防ぐかまたは緩和するが、剪断変形を完全になくしはしない。図4は、400MPaの圧縮応力および13μmの層の深さを有するイオン交換されたソーダ石灰ケイ酸塩ガラスの1kgfビッカース圧痕の断面図である。緩和されているが、変形は、それでも剪断機構により生じ、剪断変形区域Aに見えるように、亀裂を発生させる。この圧縮層は、放射状亀裂310が、剪断変形区域Aの発生部位からずっと遠くに延在するのを防ぐ。曲げ荷重下では、表面下亀裂415が、イオン交換により生じた圧縮応力に勝り、ガラスの中央引張領域に伝搬し、それによって、破損を生じる。
【0027】
ガラスエンクロージャの機械的性質を、現在入手できるイオン交換ガラスのものに勝るように改善するために、より高い損傷抵抗性を有するガラスが必要とされている。したがって、ここに記載されたガラスエンクロージャは、表面下剪断破壊によって変形を示さないが、代わりに、少なくとも500gfの圧痕荷重を受けたときに、緻密化によって圧痕変形を示し、これにより、ひび/亀裂の発生がより難しくなるイオン交換ガラスから構成される。緻密化による変形の例が図5aおよび5bに示されており、これらは、イオン交換により強化されていないアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩(コーニング社(Corning, Inc.)により製造されているEAGLE XG(商標))ガラスにおける1キログラム重(kgf)のビッカース圧痕の、それぞれ、平面図と側面図である。平面図(図5a)は、ビッカース圧痕505から延在する放射状亀裂を示していない。断面図(図5b)から分かるように、ガラスは主に緻密化により変形しており(図5bにおける領域「B」)、剪断破壊がない。組成:64モル%のSiO2、14.5モル%のAl23、8モル%のB23、11.5モル%のNa2O、および0.1モル%のSnO2を有し、ここで、Al23、B23、およびNa2O改質剤の濃度がモル%で表されている、比率(Al23+B23)/Σ(改質剤)が1.96であり、8時間に亘る410℃での溶融KNO3塩浴中の浸漬によるイオン交換により強化された、アルミノホウケイ酸塩ガラスの30kgfのビッカース圧痕の平面図が図6に示されている。最大荷重で、圧子(indenter)の先端が約48μmの深さを有する。ビッカース圧痕605からは放射状亀裂は延在していない。
【0028】
先に記載された緻密化機構は、ガラス構造中の非架橋酸素(NBO)の不在または欠如、ガラスの高モル体積(少なくとも27cm3/モル)、および低いヤング率(約69GPa未満)のためであり得る。ここに記載されたアルミノホウケイ酸塩ガラスにおいて、非架橋酸素を実質的に有さない(無NBO)構造は、Al23およびB23が中間体ガラス形成材であり、アルカリ金属酸化物(例えば、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O)およびアルカリ土類金属酸化物(例えば、MgO、CaO、SrO、BaO)が改質剤である、関係式
【数3】

【0029】
が満たされる組成によって達成される。そのような改質剤は、意図的にまたは積極的にガラス組成物中に含められ、ガラスを形成するために使用されるバッチ配合された材料中に気付かずに存在する不純物を表さない。イオン交換により十分な層の深さおよび圧縮応力を得るために、Al23およびR2O改質剤の濃度がモル%で表されている、0.9<R2O/Al23<1.3であることが好ましい。特定の圧縮応力および圧縮層深さを考えると、式(1)に従い、アルカリ金属(例えば、Li+、Na+、K+)を含有するどのようなイオン交換可能なケイ酸塩ガラスも、イオン交換後には、亀裂の発生と亀裂の伝搬に対して高い抵抗性を有するべきである。イオン交換前に、そのようなアルミノホウケイ酸塩ガラスは、少なくとも500gfのビッカース中央/放射状亀裂発生閾値を有し、ある実施の形態において、そのガラスは、少なくとも1000gfのビッカース中央/放射状亀裂発生閾値を有する。
【0030】
ある実施の形態において、ガラスエンクロージャは、イオン交換されたときに、亀裂発生および伝搬などの損傷に対して抵抗性である強化ガラスから構成される、から実質的になる、またはからなる。このガラスは、ある実施の形態において少なくとも50モル%のSiO2、ある実施の形態において少なくとも58モル%のSiO2、他の実施の形態において少なくとも60モル%のSiO2を含み、Al23、B23、および改質剤の濃度がモル%で表されており、改質剤がアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される、比率(Al23+B23)/Σ(改質剤)>1となるように少なくとも1種類のアルカリ金属改質剤を含有する。ある実施の形態において、(Al23+B23)/Σ(改質剤)≧1.45である。この比率の値が増加するにつれて、ガラスの損傷抵抗性が増加する。その上、比率の増加またはAl23のB23による置換で、ヤング率が減少する。ある実施の形態において、このアルミノホウケイ酸塩ガラスのヤング率は約69GPa未満である。ある実施の形態において、このアルミノホウケイ酸塩ガラスのヤング率は約65GPa未満である。別の実施の形態において、このアルミノホウケイ酸塩ガラスのヤング率は約57GPaから約69GPaまでの範囲にある。別の実施の形態において、ガラスエンクロージャの強化ガラスは、少なくとも約400MPaの圧縮応力および少なくとも約15μm、別の実施の形態において、少なくとも約25μm、さらに別の実施の形態において、少なくとも約30μmの層の深さを有する。
【0031】
ある実施の形態において、ガラスエンクロージャは、例えば、イオン交換により、強化されたイオン交換可能なアルミノホウケイ酸塩ガラスから構成される、から実質的になる、またはからなる。ここに用いたように、「イオン交換可能」は、ガラスが、そのガラスの表面にまたはその近くに位置するイオンを、サイズがそれより大きいかまたは小さい、同じ原子価の陽イオンにより交換できることを意味する。特定の実施の形態において、アルミノホウケイ酸塩ガラスは、50〜72モル%のSiO2、9〜17モル%のAl23、2〜12モル%のB23、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2Oから構成され、から実質的になり、またはからなり、ここで、(Al23+B23)/Σ(改質剤)>1、少なくとも27cm3/モルのモル体積を有する。別の実施の形態において、アルミノホウケイ酸塩ガラスは、60〜72モル%のSiO2、9〜16モル%のAl23、5〜12モル%のB23、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2Oから構成され、から実質的になり、またはからなり、ここで、改質剤の合計濃度に対するAl23およびB23の濃度の比率である(Al23+B23)/Σ(改質剤)は1超であり、少なくとも27cm3/モルのモル体積を有する。先の実施の形態において、改質剤は、アルカリ金属酸化物(例えば、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O)およびアルカリ土類金属酸化物(例えば、MgO、CaO、SrO、BaO)から選択される。ある実施の形態において、前記ガラスは、P25、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、およびZrO2の内の少なくとも1種類を0〜5モル%さらに含む。他の実施の形態において、前記ガラスは、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、KBr、およびSnO2を含む群から選択される清澄剤を少なくとも1種類、0〜2モル%がバッチ配合されている。前記アルミノホウケイ酸塩ガラスは、ある実施の形態において、リチウムを実質的に含まないのに対し、他の実施の形態において、アルミノホウケイ酸塩ガラスは、ヒ素、アンチモン、およびバリウムの内の少なくとも1種類を実質的に含まない。他の実施の形態において、アルミノホウケイ酸塩ガラスは、スロットドロー(slot-drawing)、フュージョンドロー(fusion drawing)、リドロー(re-drawing)などの従来技術において公知のプロセスによって、ダウンドロー可能であり、少なくとも130キロポアズの液相線粘度を有する。
【0032】
ここに記載されたアルミノホウケイ酸塩ガラスの様々な非限定的組成が表1に列記されている。表1は、これらのガラスの組成について測定された性質も含んでいる。亀裂発生閾値は、表面に荷重を印加するビッカース・ダイヤモンド圧子を使用して、ガラスに多数の圧痕(窪み)を生成することによって測定した。この荷重を、窪みの与えた角から延在する中央または放射状の亀裂が、窪みの50%超でガラスの表面に観察されるまで、増加させた。表1に列記したサンプルについての亀裂発生閾値が、ガラスサンプル中のAl23+B23−Na2Oの関数として図7にプロットされている。
【0033】
表1におけるサンプルa、b、cおよびdは、非架橋酸素を公称で含まない組成、すなわち、Al23+B23=Na2O、またはAl23+B23−Na2O=0(すなわち、(Al23+B23)/Σ(改質剤)=1)である組成を有する。これらのサンプル組成物中のNa2O改質剤の存在により生じるNBOを消費するためにB23またはAl23が使用されているか否かにかかわらず、上述したサンプルの全てが低い(すなわち、100〜300gf)亀裂発生閾値を示した。
【0034】
しかしながら、サンプルeおよびfにおいて、アルカリ金属酸化物改質剤の濃度を減少させながら、Al23含有量を増加させることによって、過剰のB23が生成される。サンプルeおよびfについて、(Al23+B23)/Σ(改質剤)>1。これらのサンプルにおいて、亀裂発生閾値は、図7に示されるように、劇的に増加する。詳しくは、サンプルeは、イオン交換により強化する前に、700gfの亀裂発生閾値を示したのに対し、サンプルfは、強化前に1000gfの亀裂発生閾値を示した。
【0035】
ここに記載されたアルミノホウケイ酸塩ガラスの非限定的例が表2に列記されており、これには、ガラスの様々な組成および性質が列記されている。いくつかの組成物(34、35、36、37、38、および39)は、イオン交換されたときに、10kgf未満の亀裂発生閾値を有する。したがって、これらの組成物は、本開示と添付の特許請求の範囲の外にあり、それゆえ、比較例として働く。表2に列記された性質の中に、1×10-7/℃の単位で表された熱膨張係数(CTE)がある。CTEは、温度変化の際に最少の熱応力を発生させる装置を設計するときに、考慮される検討事項の1つである。ドロープロセス中のシートの歪みを最少にするためにダウンドロープロセス(すなわち、フュージョンドローおよびスロットドロー)にとって、より低いCTEを有するガラスが望ましい。液相線温度および対応する液相線粘度(kP(キロポアズ)またはMP(メガポアズ)で表される)は、ガラスをシートまたは他の形状に加熱成形することに関するガラス組成物の適性を示す。ダウンドロープロセスについて、ここに記載されたアルミノホウケイ酸塩ガラスが少なくとも130kPの液相線粘度を有することが望ましい。200P温度は、ガラスが200ポアズの粘度を有する温度であり、ガス状内包物を除去し(清澄)、どのような残りのバッチ材料も溶融するために、製造において典型的に使用されるプロセス温度である。表2における8および15時間のDOLおよびCSと振られている欄は、それぞれ、8および15時間に亘り410℃で100%のKNO3中のイオン交換から生じる圧縮層の深さおよび表面圧縮応力である。
【0036】
ここに記載されたガラスについて所望のイオン交換特性を維持するために、アルカリ金属酸化物改質剤の合計濃度は、Al23の濃度と等しいべきであり、必要とされる任意の過剰の(Al23+B23)は、亀裂発生荷重を増加させるために、B23のみで補うべきである。最適なイオン交換のために、アルミノホウケイ酸塩ガラスにおいて、最大の圧縮応力および層の厚さを達成するために、アルカリ金属酸化物改質剤の合計濃度は、Al23の濃度と等しい、すなわち、(Li2O+Na2O+K2O+Rb2O+Cs2O)=Al23であるべきであり、ガラスの損傷抵抗性を増加させるために過剰なB23が含まれる。しかしながら、過剰のB23含有量は、イオン交換の速度に対して釣り合わせるべきである。深い(例えば、20μm以上)のイオン交換のために、B23濃度は、ある実施の形態において、Al23の濃度未満であるべきである。未溶解バッチまたはガス状内包物などの欠陥の最低レベルの溶融を達成するために、R2O/Al23>1.0、好ましくは1.05≦R2O/Al23≦1.2であることが最良である。この条件のために、R2O−Al23により与えられるNBOが生成されるであろうから、ある実施の形態において、損傷抵抗性を維持するために過剰の改質剤を消費するように、十分なB23が加えられるべきである(すなわち、B23>R2O−Al23)。より好ましくは、B23>2(R2O−Al23)。
【0037】
アルミノホウケイ酸塩ガラスの200P温度(すなわち、典型的な溶融粘度)を低下させ、未溶解および/または未溶融バッチ材料などの欠陥をなくすために、二価陽イオンを添加しても差し支えない。ガラスのイオン交換中に生じる圧縮応力に有益な影響があるので、Mg2+、Zn2+などのより小さい二価陽イオンが好ましい。Ca2+、Sr2+、およびBa2+などのより大きい二価イオンは、イオン交換速度およびイオン交換により生じる圧縮応力を減少させてしまう。同様に、ガラス中のLi2などのより小さい一価陽イオンの存在は、亀裂発生閾値にプラスの影響を有し得るのに対し、K+などのより大きいイオンはそれほど望ましくない。その上、少量のK2Oは、圧縮応力領域の層の深さを増加させられるが、K+などのより大きい一価イオンは、高濃度では、圧縮応力を減少させ、したがって、4%未満に制限されるべきである。
【0038】
ここに記載されたアルミノホウケイ酸塩ガラスは、少なくとも50モル%のSiO2、ある実施の形態において58モル%のSiO2、他の実施の形態において少なくとも60モル%のSiO2を含む。SiO2濃度が、ガラスの安定性および粘度の調節に役割を果たしている。SiO2濃度が高いとガラスの粘度が上昇し、ガラスの溶融が難しくなる。高SiO2含有ガラスの高濃度のために、混合、バッチ材料の溶解、および清澄中の気泡の上昇が妨げられる。高いSiO2濃度には、適切な流動およびガラス品質を維持するために、非常に高い温度が必要である。したがって、ガラスのSiO2濃度は72モル%を超えるべきではない。
【0039】
ガラス中のSiO2濃度が60モル%未満に減少するにつれて、液相線温度が上昇する。50モル%未満のSiO2含有量では、SiO2−Al23−Na2O組成物の液相線温度は、1500℃超の温度に急激に上昇する。液相線温度が上昇するにつれて、ガラスの液相線粘度(液相線温度での溶融ガラスの粘度)が減少する。B23の存在が液相線温度を抑制するのに対し、SiO2含有量は、ガラスが、過剰に高い液相線温度および低い液相線粘度を有するのを防ぐために、50モル%超に維持されるべきである。したがって、液相線粘度が低すぎたり高すぎたりしないようにするために、ここに記載されたガラスのSiO2濃度は、50モル%と72モル%の間、ある実施の形態において58モル%と72モル%の間、他の実施の形態において60モル%と72モル%の間の範囲内にあるべきである。
【0040】
このSiO2濃度は、フッ化水素酸(HF)を除いて、鉱酸に対する化学的耐久性を有するガラスを提供する。したがって、ここに記載されたガラス中のSiO2濃度は、十分な耐久性を提供するために、50モル%超であるべきである。
【表1】

【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【0041】

【実施例】
【0042】
以下の実施例は、ここに記載されたガラスの特徴および利点を示しており、本開示または添付の特許請求の範囲をそれに制限することを決して意図するものではない。
【0043】
この実施例の目的は、イオン交換前の亀裂抵抗性が、ガラスにおけるイオン交換後の亀裂抵抗性を改善することを確認することであった。表1における組成f(64モル%のSiO2、13.5モル%のAl23、9モル%のB23、13.5モル%のNa2O、0.1モル%のSnO2)および1100グラム中(gf)のイオン交換前の亀裂発生閾値を有する亀裂抵抗性アルミノホウケイ酸塩ガラスのサンプルを、層の深さDOLおよび圧縮応力CSを達成するために、8時間に亘り410℃で溶融KNO3塩浴中の浸漬によって、イオン交換した。あるサンプルは、55.8μmのDOLおよび838MPaのCSを有し、別のサンプルは、35.1μmのDOLおよび871MPaのCSを有した。
【0044】
次いで、比較目的のために、300gfのイオン交換前の亀裂発生閾値を有する、コーニング社のGORILLA(商標)ガラス(66.4モル%のSiO2、10.3モル%のAl23、0.60モル%のB23、4.0モル%のNa2O、2.10モル%のK2O、5.76モル%のMgO、0.58モル%のCaO、0.01モル%のZrO2、0.21モル%のSnO2、および0.007モル%のFe23の組成を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラス)のサンプルを、表1に列記された組成fを有するサンプルの圧縮応力および層の深さとぴたりと一致するするようにイオン交換した。あるサンプルは、54μmのDOLおよび751MPaのCSを有し、別のサンプルは、35μmのDOLおよび790MPaのCSを有した。組成fと「GORILLA」ガラスのイオン交換済みサンプルの圧縮応力および層の深さが、表3に列記されている。
【0045】
イオン交換後に、表1の組成fと「GORILLA」ガラスのサンプルの各々について、ビッカース亀裂発生荷重を測定した。イオン交換後の亀裂発生荷重は、ここに先に記載したように、ビッカース・ダイヤモンド圧子を使用して測定し、表3に列記されている。表3に列記された亀裂発生試験の結果は、イオン交換前の亀裂抵抗性がより大きいほど、イオン交換後の亀裂抵抗性が改善されることを示している。「GORILLA」ガラスサンプルは、中央/放射状亀裂系を発生させるために5,000〜7,000gfの荷重が必要であったのに対し、組成fのサンプルは、中央/放射状亀裂系を発生させるために、30,000gf超の荷重、または「GORILLA」ガラスサンプルにおけるそのような亀裂を発生されるのに必要であった荷重の4〜6倍が必要であった。圧痕荷重が、測定した亀裂発生荷重を超えたときに、「GORILLA」ガラスサンプルはいくつかの小片に破砕し、全ての場合、荷重が10,000gfを超えた時点までに破砕が観察された。対照的に、組成fのサンプルは、研究した圧痕荷重(3,000から30,000gfまで)のいずれでも破砕しなかった。
【表3】

【0046】
説明目的のために典型的な実施の形態を述べてきたが、先の説明は、本開示または添付の特許請求の範囲への制限と考えるべきではない。したがって、本開示または添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱せずに、様々な改変、適用、および変更が当業者に想起されるであろう。
【符号の説明】
【0047】
100 装置
105 本体
107 縁
110 カバープレート
120 ベゼル
122 枠
210 引っ掻き傷
【図1(a)】

【図1(b)】

【図2(a)】

【図2(b)】

【図3(a)】

【図3(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも50モル%のSiO2、並びにアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種類の改質剤を含むアルミノホウケイ酸塩ガラスであって、イオン交換可能であり、
【数1】

を示すことを特徴とするアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項2】
イオン交換され、少なくとも10kgfのビッカース中央/放射状亀裂発生閾値を有することを特徴とする請求項1記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項3】
前記イオン交換されたアルミノホウケイ酸塩ガラスが、少なくとも約400MPaの圧縮応力および少なくとも約15μmの層の深さを有することを特徴とする請求項2記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項4】
前記イオン交換されたアルミノホウケイ酸塩ガラスが、少なくとも5Nの荷重でヌープダイヤモンドにより形成された引掻き傷の幅wの2倍超延在する横方向の損傷を含まないことを特徴とする請求項2または3記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項5】
少なくとも500gfの圧痕荷重が印加されたときに、緻密化変形による圧痕変形を示し、表面下剪断破壊を実質的に含まないことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項6】
少なくとも27cm3/モルのモル体積を有することを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項7】
約69MPa未満のヤング率を有することを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項8】
前記アルミノホウケイ酸塩ガラスが、50〜72モル%のSiO2、9〜17モル%のAl23、2〜12モル%のB23、8〜16モル%のNa2O、および0〜4モル%のK2Oを含み、8≦Na2O+K2O≦18であり、該アルミノホウケイ酸塩ガラスが、リチウム、ヒ素、アンチモン、およびバリウムの内の少なくとも1種類を含まないことを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項9】
前記少なくとも1種類の改質剤が少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項10】
電子装置のためのエンクロージャの少なくとも一部分を形成することを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。

【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−502371(P2013−502371A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525732(P2012−525732)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/046185
【国際公開番号】WO2011/022661
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】