説明

予備充電装置を備える表示装置

本発明は、複数の発光素子(1)を有する表示装置であって、前記素子のうちの少なくとも1つが関連コンデンサ(C1)を持つ表示装置に関する。前記表示装置は、前記関連コンデンサ(C1)を少なくとも部分的に充電する予備充電信号を生成する予備充電手段(7、8)を有する。前記予備充電手段(7、8)は、少なくとも、第1予備充電段階の第1予備充電信号と、第2予備充電段階の第2予備充電信号とを有する予備充電信号を生成するよう適応される。前記予備充電信号は、好ましくは、後に電圧予備充電信号が続く電流予備充電信号を有する。組み合わせ予備充電信号は、高速だが正確な予備充電という利点を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光素子を有する表示装置であって、前記素子のうちの少なくとも1つが関連コンデンサを持ち、前記装置が前記関連コンデンサを少なくとも部分的に充電する予備充電信号(pre-charge signal)を生成する予備充電手段を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ますます多くのディスプレイの応用例において、有機発光ディスプレイ又は無機発光ディスプレイなどの発光マトリックスディスプレイが用いられている。発光マトリックスディスプレイの基本装置構造は、基本的に、構造電極(structured electrode)又は陽極、対電極(counter electrode)又は陰極、及び陽極と陰極との間にはさまれた発光層を有する。パッシブマトリックスディスプレイにおいては、陽極は、各々が電流源又は電圧源に接続されるよう適応される、陽極列とも呼ばれる(又は陽極ストリップの方向に依存して陽極行とも呼ばれる)別々の並列の陽極ストリップのセットを有し得る。更に、陰極は、陰極行とも呼ばれる(又は陰極ストリップの方向に依存して陰極列とも呼ばれる)別々の並列の陰極ストリップのセットを有し得る。通常、陰極ストリップの方向は、基本的に、陽極ストリップ又は列に対して垂直である。基本的に、このような陽極と陰極との交点が、前記表示装置の画素又は発光素子を規定し、それ故、前記陽極及び陰極のパターンが画素のマトリックスを規定する。このようなパッシブマトリックスディスプレイの電気図が図1に示されている。発光素子はダイオード1として示されている。このようなパッシブマトリックスディスプレイは、ここでは信号3として示されている連続的なパルスを連続的な電線2に印加することによって電線ごとにアドレス(address)され得る。これらの電線は、図1においては参照符号2によって示されており、ここでは一般的な陰極として表わされている。陰極は列4内の全陽極と共に1つずつ選択される。陽極には、必要とされるグレー値に対応するエネルギの電流(信号5)が供給される。グレー値は、通常、必要とされる条件に従って電流源のオン時間(on-time)又は電流の振幅を設定することによって得られる。
【0003】
発光素子は、電圧又は電流によって駆動され得る。順方向電流が発光素子1に通される電流駆動マトリックスディスプレイは幾つかの利点を持つ。このようなマトリックスディスプレイの電流駆動の主な利点は良好なグレースケール制御である。発光素子1は、基本的に、発光層に順方向電流が通される場合に光を生成し、この電流は前記陽極/陰極パターンによって列4を介して印加される。光は、電子/正孔対が活性領域において再結合し、過剰なエネルギが部分的に光子、即ち光として発せられることから生じる。生成される光子の数(即ち、画素の明るさ)は、活性領域に注入される電子/正孔の数、即ち、画素を通過する電流に依存する。
【0004】
電流駆動の不利な点は、ディスプレイマトリックス装置内に存在する寄生コンデンサを充電するために付加的な予備充電ドライバが必要とされることにある。図2は、パッシブマトリックスディスプレイの等価回路を示している。このディスプレイは電流源6によって電流駆動される。電線又は行の選択は電圧源7から得られる。黒色のダイオード1によって図示されているように、これらのダイオードは、選択された行に低い電圧、例えば接地レベルの電圧を印加することにより電圧源7によって選択され、他の行には、+によって示されている高い電圧が印加され、これは他の行に取り付けられている全てのダイオードを事実上遮断する。黒色のダイオード1は、各々の電流源6によって駆動され、即ち、発光素子1が光を生成する。例えば、ダイオード1などの発光素子が、例えば、表示装置の内部及び外部の接続リード線及び/又は上記のサンドイッチ構造によってもたらされる寄生容量に起因する関連コンデンサC1を持つことはよく知られている。この関連コンデンサは充電される必要がある。更に、表示装置内の陽極構造及び陰極構造並びに接続部から生じる関連抵抗Rが存在し得る。
【0005】
米国特許公報第5,723,950号は、関連静電容量を持つ発光装置のための予備充電ドライバを開示している。発光装置を駆動する方形波電流は、最初、発光装置の関連コンデンサを素早く充電するために鋭い電流パルスと共に印加される。このようなアプローチは口語では電流ブーストと呼ばれ、この表現は本出願においては電流予備充電の同義語として用いられる。
【0006】
しかしながら、電流ブーストは、関連コンデンサを素早く予備充電することには成功するが、幾つかの不利な点を持つ。従来技術による電流ブーストが利用される場合には、これらの不利な点は、とりわけ、適応性のなさ、不正確さ及び/又はコスト効率の悪さに関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、改善された予備充電手段を備える表示装置を提供することにある。本発明は独立項によって規定されている。従属項は有利な実施例を規定している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的は、前記予備充電手段が、少なくとも、第1予備充電段階の第1予備充電信号と、第2予備充電段階の第2予備充電信号とを有する前記予備充電信号を生成するよう適応されることを特徴とする表示装置を提供することによって達成される。前記予備充電段階を幾つかの下位段階(即ち、前記第1予備充電段階、前記第2予備充電段階及び他の予備充電段階)に分割することによって、前記関連コンデンサの予備充電のより高度な適応性が達成され得る。なぜなら、それは、予備充電中に幾つかの異なる予備充電基準を満たす予備充電信号を供給することを可能にするからである。これらの予備充電基準は、結果として生じる信号の正確さ及び/又は関連コンデンサの予備充電が達成される時間を指し得る。
【0009】
本発明は、関連コンデンサが充電されるべきである全ての表示装置に適用されることは分かるであろう。前記電流駆動パッシブマトリックスディスプレイの他にも、小分子又は高分子有機LEDディスプレイ、無機ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ、電界放出ディスプレイ、アクティブアドレスディスプレイ(active-addressed display)及び液晶ディスプレイ(LCD)も、開示されるような予備充電装置の恩恵を受け得る。ここで提案されている方法は、充電電流を制限されたままにしながら高速プリセットが必要とされるディスプレイにおいて有利に用いられ得る。表示画素の寸法は定められる必要がないので、前記方法は、セグメント・ディスプレイ(segmented display)を駆動するのにも用いられ得る。以下では電流駆動パッシブマトリックスディスプレイの例を詳細に説明する。
【0010】
本発明の実施例において、前記予備充電手段は、前記第1予備充電段階の間電流予備充電信号を生成する電流源と、前記第2予備充電段階の間後続電圧予備充電信号(subsequent voltage pre-charge signal)を生成する電圧源とを有する。組み合わせブーストのこの実施例は、前記電流ブーストのアプローチの高速充電が、あまり高速ではないがはるかに正確な後続電圧ブーストと組み合わされる利点を持つ。まず、前記関連コンデンサは、前記発光素子の動作電圧に向けて大雑把に予備充電され、その後、正確に前記動作電圧に近づけ得る予備充電電圧が印加される。前記動作電圧は表示ダイオードを所要の輝度レベルで駆動するのに必要とされる電圧である。更に、後に電圧ブーストによってより正確な予備充電信号が印加されることから、前記電流ブーストは、純粋な電流ブーストと比較してあまり正確である必要がない。それ故、前記電流予備充電信号を印加する手段は、あまり厳しい要求を満たす必要がなく、その結果として、電流ブースト供給源は、前記表示装置においてより容易に、あまりコストをかけずに実施され得る。
【0011】
本発明の実施例において、予備充電電流は制限される。高い予備充電電流は前記表示装置において干渉を引き起こすかもしれず、その結果として、駆動されていない発光素子が光を生成するかもしれない。更に、高い予備充電電流は、前記表示装置において、図2において抵抗Rとして描かれている寄生抵抗の両端子間の大きな電圧降下を引き起こすかもしれない。前記予備充電電流の制限は、好ましくは、電流源を用いることによって達成され、前記電流源は、動作中素子のマトリックスにおいて発光素子を選択するよう適応される電圧源に接続され得る。後者の装置は、前記予備充電電流の自動飽和(automatic saturation)及び前記表示装置における容易な実施という利点を供給する。前記電流は、適切な予備充電電流を得るために選択され得る抵抗又は抵抗の組み合わせによっても制限され得る。他の例において又は付加的に、例えばコイルなどの別の電流制限素子が用いられ得ることは分かるであろう。
【0012】
本発明の実施例において、前記予備充電手段は、前記第1予備充電段階の間第1抵抗を介して電圧予備充電信号を生成し、前記第2予備充電段階の間第2抵抗を介して後続電圧予備充電信号を生成するために電圧源を有する。このようなアプローチは、単独の電圧ブーストの不利な点を減らすかもしれず、前記表示装置において非常に容易に実施され得る。もはや正確な電流源は必要とされないことから、このアプローチもまた非常にコスト効率が良い。
【0013】
本発明の実施例において、前記予備充電手段は、少なくとも1つの発光素子の前記動作電圧を得るよう適応され、前記第2予備充電段階の間前記動作電圧に従って予備充電電圧信号を生成するよう適応される。この実施例は、前記関連コンデンサの静電容量の変化及び前記発光素子の材料の変化に対する自動適応が達成されるという利点を供給する。変化は、前記素子の経年変化によるもの、及び/又は前記有機材料が異なるロットに対してわずかに異なる特性を持ち得ることによるもの、及び/又は層厚のばらつきによるものであり得る。好ましくは、前記動作電圧は、前記発光素子の定常状態において、即ち、前記素子が駆動される期間の最後付近で得られる。更に、純粋な電流予備充電方式の場合のようにあらゆる輝度レベルのために前記予備充電電流の振幅及び時間を設定する必要性がない。更に、特に、低いグレーレベルにおいて、一様な明るさが得られる。なぜなら、これらの低いグレーレベルを生成するのに必要とされる電荷の量は、前記関連コンデンサを充電する電荷と比較して少ないからである。
【0014】
本発明は、上記のような前記予備充電信号及び前記予備充電手段に関する特徴を有するエレクトロルミネセントマトリックス予備充電装置(electroluminescent matrix pre-charging arrangement)にも関する。
【0015】
本発明は、このような表示装置及び/又は予備充電装置を有する電子装置にも関する。このような電子装置は、例えば、モニタなどの装置であってもよく、また、移動体電話又はPDAなどの携帯用装置であってもよい。多重セグメント・ディスプレイもまた、とりわけ、様々なセグメントの寸法又は材料が異なる場合に、本発明に基づいて有利に駆動される。
【0016】
米国特許公報第US 6,369,786 B1号は、しきい値電圧まで電圧ブーストが印加される表示素子のマトリックスを開示している。しかしながら、先立つ電流ブーストも前記動作電圧までの電圧ブーストも開示されていない。
【0017】
以下に添付図面を参照して本発明のこれら及び他の特徴をより詳細に説明し、明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施例の適切な理解のために、まず、電流ブースト及び電圧ブーストの概念を簡単に記載する。
【0019】
図3Aは、以下でLED1と呼ばれる単一の発光ダイオード1を示しており、LED1は、図1に示されているようなパッシブマトリックスディスプレイの一部である。LED1は、電流源6によって電流駆動され、パッシブマトリックスにおいて電圧源7によって選択され得る。LED1と直接的に関連する静電容量C1が、充電されるべき列4内のLED1の全関連コンデンサを表わす静電容量Cと共に示されている。関連コンデンサC1及びCを予備充電するために電流ブースト供給源8が設けられる。更に、この回路は、LED1を電流源6、電圧源7及び電流ブースト供給源8に接続するためのスイッチS1、S2、S3、S4及びS5を示している。
【0020】
図3Bにおいては、電流ブースト方式が図3Aに関して示されている。示されているグラフは、時間tの関数として図3Aに示されている電流I及び点Xにおける電圧Vを表わしている。一番下のグラフはLED1によって発せられる光Lを指している。LED1は時間t=tにパッシブマトリックスディスプレイにおいて光を生成するよう要求されると仮定する。関連コンデンサC1及びCは、駆動電流IがLED1を流れる前に充電されることから、これらの関連コンデンサを充電するためには駆動電流に先立つ電流が必要とされる。この電流は、典型的にはブースト電流Iとして供給される。このブースト電流Iは、tの前の適当な時間において、例えばt=0とt=tとの間にブースト電流供給源8から得られる。ブースト電流Iは、典型的には、電流源6からのLED1を駆動するための駆動電流Iより著しく高い。
【0021】
t=0において、スイッチS2、S3及びS4は開いているが、S1及びS5は閉じられる。この状況においては、LED1は選択されず、電流ブーストIは関連コンデンサC1及びCを充電し得る。ブースト電流Iは、電流振幅及び時間をプログラムすることによって設定され得る最大許容電流でなければならない。このようにして、LED1の両端の電圧Vは、動作電圧の近くに選ばれ得る特定の電圧レベルへ素早くブーストされ得る。ブーストすることによって生成されるLED1の両端の最終電圧は電流振幅及び時間をプログラムすることによって到達されるので、関連コンデンサにおける如何なる変化によっても最適でないブーストがもたらされ得る。この変化は、例えば、LEDのサンドイッチ構造における層厚のばらつき、材料の経年変化、又は相互接続リード線の特性によってもたらされ得る。最終電圧は、ブースト電流Iのタイミング及び振幅にも依存する。このため、この最終電圧は、あまり正確に規定されず、それどころか動作電圧を超えるかもしれない、即ち、オーバシュートが生じるかもしれない。
【0022】
t=tにおいて、スイッチS1が開けられ、即ち、パッシブマトリックスディスプレイにおいてLED1が選択される。更に、電流源6によって駆動電流Iを用いてLED1を駆動するために、S4及びS5が開けられる一方で、S2及びS3が閉じられる。図3Bに一例として示されているように、t=tにおけるダイオードの両端の電圧Vは、その時にはまだ動作電圧に到達しておらず、それ故、LED1から生成される光Lがまだ所要レベルLにないので、正確ではない。幾らかの初期オーバシュート(図示せず)も存在し得る。
【0023】
結論として、電流ブーストは、高速だが不正確な、パッシブマトリックスディスプレイの関連コンデンサを予備充電する方法を供給する。
【0024】
図4Aには電圧ブースト方式が示されている。図3Aに示されている電流ブースト方式のための構成要素と同等の構成要素は同一の参照符号によって示されている。この例において、電圧ブースト方式は、スイッチS6を用いて、パッシブマトリックスディスプレイのLED1を選択するためだけでなく、電圧ブーストのためにも電圧源7を利用する。
【0025】
図4Bは、図4Aに示されている回路によって実行されるべき電圧ブースト方式を示している。点Xにおける全電荷が取り除かれており、クロストークに関連する画素コンテンツ(pixel content)が生じないことを保証するために、スイッチS4は時間t=0の直前に閉じられてもよく、その後、S4は開けられる。
【0026】
時間t=0(S1及びS6が閉じられる際)に、電圧源7の電圧がLED1に印加され、これは、理論的には無限に高い電流Iをもたらす。電圧ブーストの結果として、時間t=tの前にLED1の両端の最終電圧が正確に得られる。時間t=tにおいてS2及びS3が閉じられ、図4Bにおいて見られ得るように、LED1から発せられる光Lは時間t=t以降所要レベルLを持つ。
【0027】
電圧ブーストされるシステムにおいては、最終電圧は、電圧源7、関連コンデンサC1、C及びそれらの相互接続部によって形成される電流ループ内の直列抵抗の値と無関係に、LED1の両端の電圧Vの所要値によって決定される。直列抵抗は電流を制限する。電圧源は理想電圧源ではなく、パッシブマトリックス表示装置の電極及びこれらの電極との接続部からもたらされる他の寄生的な列及び行の抵抗が存在する。この抵抗は、例えばRC時定数の約3倍というように、関連コンデンサC1、Cが適切に充電されるまでの最短充電時間を設定する。抵抗が大きい可能性があるので、この結果は著しい時間遅延であり得る。斯くして、電圧ブースト方式においては、t=tにおいて得られる電圧は正確であるが、時間的に不利な点がある。
【0028】
結論として、電圧ブーストは、正確だが遅い、パッシブマトリックスディスプレイの関連コンデンサを予備充電する方法を供給し、大きな初期電流が流れ得る。
【0029】
図5Aは、本発明の第1実施例によるブースト・駆動回路(boosting and driving circuit)を示している。図5Aにおいて、図3A及び図4Aに示されている構成要素と同一の構成要素は同一の参照符号によって示されている。
【0030】
電流源6は、このLED1を駆動するためにスイッチS3を介してLED1の陽極に接続され得る。陽極は、更に、スイッチS4を介して接地電位に接続され得る。(低オーム)電圧源7は、パッシブマトリックスディスプレイにおいてLED1を選択するためにスイッチS1を介してLED1の陰極に電位を供給するよう適応される。S1が閉じられる場合には、LED1は、選択されず、光を生成しないであろう。LED1の陰極は、更に、スイッチS2を介して接地電位に接続され得る。更に、LED1は、LED1と並列に関連コンデンサC1を持つ。更に、同じ陽極列4内のn個の他の発光素子の関連コンデンサ及び電線の寄生容量を表わす関連コンデンサCがLED1と並列に存在する。電流ブースト供給源8は、スイッチS5を介してLED1の陽極に接続され得る。電流源6及び電流ブースト供給源8は供給電圧Vによって供給される。更に、電圧源7はスイッチS6を介してLED1の陽極に接続され得る。最後に、電圧源7は、リード線9及び検出ユニット10を介して、点Xの電位、即ち、S2が閉じられる場合にLED1の両端に印加される電圧を検出又は測定することを可能にされる。
【0031】
図5Bには、本発明による第1実施例の動作を図示するためにブースト・駆動方式が示されている。
【0032】
時間t=0において、スイッチS1及びS5が閉じられ、即ち、パッシブマトリックスディスプレイにおいてLED1は選択されず、関連コンデンサC1及びCを充電するために第1予備充電信号としてブースト電流Iが電流ブースト供給源8を介して印加される。Iの制限は、表示装置においてクロストークが起こるのを防止する一方で、関連コンデンサを充電するのに十分な電荷を供給する必要条件によって設定される。この第1段階の間、LED1の両端の電圧は、大雑把に、素早く、LED1の動作電圧の近くのレベルに持って行かれる。
【0033】
この電圧に到達する場合に、時間t=tにおいてスイッチS2及びS6を閉じて第2ブースト段階が開始され、ここで、第2予備充電信号として後続電圧ブーストが印加される。この第2段階の間にLED1の両端の電圧は正確に動作電圧に持って行かれる。LED1の定常状態、即ち、電圧源7による電線の選択の終了時の状態において、供給される電圧は、好ましくは動作電圧と等しい。この第2段階の間、LED1の両端の電圧を動作電圧のレベルに持って行くのに非常に小さな電流しか必要とされない。LED1の両端の電圧は、接続部9を介して検出又は測定され、電圧源7にフィードバックされ得る。LED電圧Vの検出ユニット10は、大雑把な電流ブーストによってもたらされる第1予備充電段階の間のダイオードの両端の電圧のオーバシュートが、図5Bにおいて点線によって図示されているように第2予備充電段階において補正されることを可能にする。
【0034】
時間t=tにおいて、スイッチS2及びS3が閉じられ、LED1は、駆動電流Iを受け取り、必要とされる量の光Lを発する準備が整っている。好ましくは、スイッチS1を開け、スイッチS2を閉じることによってLED1が選択される前に全ての関連コンデンサC1及びCが完全に充電される。例えば第1予備充電段階と第2予備充電段階との間の移行時にスイッチS1を開けることによってLED1を選択するような他のスイッチングシーケンスも可能である。
【0035】
結論として、電流ブーストの概念と、後続電圧ブーストの概念とを組み合わせることによって、両方の概念の利点が得られ得る、即ち、クロストークが起こるのを防止するよう最大充電電流が制限される一方で、高速且つ正確なブースト方式が得られ得る。更に、後でより正確な予備充電信号が電圧ブーストの形態で印加されることから、電流ブーストは純粋な電流ブーストと比較してあまり正確である必要がない。それ故、電流予備充電信号を印加する回路はあまり厳しい要求を満たす必要がなく、その結果、電流ブースト供給源は、表示装置においてより容易に、あまりコストをかけずに実施され得る。
【0036】
図6Aには本発明の第2実施例が示されている。図5Aにおいては、電流ブースト供給源8は供給電圧Vから高電位を供給されていた。図6Aに示されている組み合わせブースト回路は、リード線11が電流ブースト供給源8を電圧源7に接続していること以外は図5Aに示されている回路と等しい。この構成はパッシブマトリックスディスプレイを駆動する集積回路において容易に実施され得る。この構成の別の利点は、最大ブースト電流が予め正確にプログラムされる必要がないことにある。
【0037】
電圧源7の電圧を正確に適応するために検出ユニット10が用いられてもよい。
【0038】
動作中、図6Bに表示されているように、時間t=0において開始する第1予備充電段階の間、スイッチS1及びS5を閉じることによって電流ブースト供給源8からブースト電流Iが印加される。この電流が関連コンデンサC1及びCを充電するにつれて、LED1の両端の電圧Vは増大する。点Xの電位が電圧源7から供給される電位に近づく場合、電流ブースト供給源8はもはや初期ブースト電流Iを供給することが出来ない。これは、図6Bにおいて時間tが時間tに近づくと電流Iが減少することから分かり得る。
【0039】
時間t=tにおいて、電流Iが急速に減少し、第2段階が開始される。この第2段階においては、スイッチS6が閉じ、それによって電圧源7からLED1に後続電圧ブーストを印加する。前記電圧は時間t=t前に正確に動作電圧に持って行かれる。
【0040】
時間t=tにおいて、LED1を動作させるためにスイッチS2及びS3が閉じられる。
【0041】
上記の実施例においては、電流ブースト供給源8からブースト電流を供給することによってブースト電流Iの制限が達成された。しかしながら、ブースト電流の制限は電圧源と組み合わせて1つ以上の抵抗を用いることによっても達成され得る。このような実施例は図7Aに示されている。この実施例においては、2つの抵抗R1及びR2が用いられている。R1は、R2より著しく大きい抵抗値を持つ。同様により多くの抵抗器又は抵抗器の組み合わせが用いられ得ることは分かるであろう。抵抗器はスイッチS7及び/又はS8によって選択され得る。更に、スイッチS7及びS8又はコイルに固有の抵抗などの他の構成要素からの抵抗もまたもたらされ得ることは分かるであろう。抵抗の配列を設けることは、最大許容電流よりほんの少し小さいブースト電流を印加するための適応性を高める。
【0042】
図7Bは、図7Aに示されている構成の動作を図示している。
【0043】
時間t=0において、スイッチS1及びS7を閉じることによって第1予備充電段階が開始される。電圧源7からの電圧が抵抗R1を介してLED1に印加される。表示装置内を流れる電流は、R1のために適切な値を用いることによって制限され得る。
【0044】
時間t=tにおいて、スイッチS8を閉じることによって抵抗R2が用いられ、第2予備充電段階が開始される。S7は閉じられたままであってもよいことに注意されたい。なぜならこれは全抵抗をR2未満に低減させるからである。ここでは時間t=tの近くでそうであるように、好ましくは、第1段階における電流Iが急速に減少している間にこの第2段階に入られる。
【0045】
時間t=tにおいて、LED1を動作させるためにスイッチS2及びS3が閉じられる。
【0046】
図7Aの実施例においては、抵抗R1及びR2を介して2つの電圧ブースト段階が用いられる。図7Aに示されているブースト・駆動回路の利点は、正確な電流源が必要とされず、その結果として、非常にコスト効率の良い回路が得られることにある。この場合、関連コンデンサの高速充電のための、電流の減少に伴って、より低い抵抗が選択され、その結果として、第2放電段階の間より高い電流が得られる高速電圧ブーストが得られる。このようにして、充電の速度は、抵抗器R1及びR2の選択によって決定される。例えば適応性を高めるためにより多くの抵抗器又はスイッチ部が付加されてもよい。
【0047】
本発明の教示する目的のために、表示装置、予備充電装置及びこのような表示装置を有する電子装置の好ましい実施例を上に記載した。
【0048】
上記の実施例は、本発明を説明するものであって、本発明を限定するものではなく、当業者は添付されている特許請求の範囲から外れない多くの別の実施例を設計することが出来るであろうことに注意されたい。特許請求の範囲において、括弧内に配置されている如何なる参照符号も特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「有する」という用語は特許請求の範囲内に列挙されている素子又はステップ以外の素子又はステップの存在を除外しない。素子の単数形表記はこのような素子の複数の存在を除外しない。幾つかの手段を列挙している装置クレームにおいては、これらの手段の幾つかはハードウェアの同一アイテムによって実施され得る。ただ単に或る方策が互いに異なる従属項において列挙されているということは、これらの方策の組み合わせが有利に用いられ得ないことを示さない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一般的な陰極の概念におけるパッシブマトリックス有機LEDディスプレイを示す。
【図2】図1のパッシブマトリックスディスプレイの一部の等価回路を示す。
【図3A】LEDディスプレイのための従来の電流ブーストのアプローチを図示する。
【図3B】LEDディスプレイのための従来の電流ブーストのアプローチを図示する。
【図4A】LEDディスプレイのための従来の電圧ブーストのアプローチを図示する。
【図4B】LEDディスプレイのための従来の電圧ブーストのアプローチを図示する。
【図5A】組み合わされた電流及び電圧のブーストの本発明による第1実施例を示す。
【図5B】組み合わされた電流及び電圧のブーストの本発明による第1実施例を示す。
【図6A】組み合わされた電流及び電圧のブーストの本発明による第2実施例を示す。
【図6B】組み合わされた電流及び電圧のブーストの本発明による第2実施例を示す。
【図7A】2段階の電圧ブーストの本発明による第3実施例を示す。
【図7B】2段階の電圧ブーストの本発明による第3実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を有する表示装置であって、前記素子のうちの少なくとも1つが関連コンデンサを持ち、前記装置が前記関連コンデンサを少なくとも部分的に充電する予備充電信号を生成する予備充電手段を有し、前記予備充電信号が、少なくとも、第1予備充電段階の第1予備充電信号と、第2予備充電段階の第2予備充電信号とを有する表示装置。
【請求項2】
前記予備充電手段が、前記第1予備充電段階の間前記第1予備充電信号として予備充電電流を生成する電流源と、前記第2予備充電段階の間前記第2予備充電信号として後続予備充電電圧を生成する電圧源とを有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
動作中前記予備充電電流を制限する電流制限手段が設けられることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記電流制限手段が前記電流源であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記電流制限手段が、前記予備充電電流を制限するように配設される少なくとも1つの抵抗器を有することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
動作中、前記電圧源が、前記発光素子のうちの少なくとも1つを選択し、前記電流源が、前記予備充電電流を制限するよう前記電圧源に接続されることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記予備充電手段が、前記第1予備充電段階の間前記第1予備充電信号として予備充電電圧を生成し、前記第2予備充電段階の間前記第2予備充電信号として後続予備充電電圧を生成するために電圧源を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示装置が、前記予備充電電圧と前記後続予備充電電圧とを生成するために抵抗を選択するための手段を有することを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
少なくとも1つの発光素子の動作電圧を得るために検出ユニットが設けられ、前記電圧源が前記動作電圧に基づいて前記後続予備充電電圧を生成することを特徴とする請求項2又は7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記動作電圧が前記発光素子の定常状態に前記検出ユニットによって得られることを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
表示装置の少なくとも1つの発光素子と関連する少なくとも1つのコンデンサを予備充電する予備充電装置であって、少なくとも、第1予備充電段階の第1予備充電信号と、第2予備充電段階の第2予備充電信号とを有する予備充電信号を生成する予備充電装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−506680(P2006−506680A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552976(P2004−552976)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004999
【国際公開番号】WO2004/047065
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】