説明

予備加熱原料を用いたカーボンブラックの作製方法、およびそのための装置

約300℃超の温度である高温原料を用いて、付着汚染制御を行いながらカーボンブラックを作製するための方法を提供する。これらの方法に従ってカーボンブラックを作製するための装置も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、先行出願である2010年2月19日出願の米国特許仮出願第61/306,092号の利益を、米国特許法第119条(e)の下で請求するものである。
【0002】
本発明は、付着汚染を制御した予備加熱原料を用いたカーボンブラックの作製方法に関する。本発明はまた、付着汚染を制御した予備加熱原料を用いたカーボンブラック作製のための装置にも関する。本発明はまた、本発明のプロセスから得られたカーボンブラックにも関する。
【背景技術】
【0003】
カーボンブラックは、例えばインク組成物や塗料などの顔料として、ゴム組成物およびプラスチック組成物の配合および調製における充填剤および補強顔料として、ならびにその他の様々な用途のために、広く用いられている。カーボンブラックは、一般に、炉型の反応器中、炭化水素原料を高温の燃焼ガスと反応させて微粒子状カーボンブラックを含有する燃焼生成物を生成させることによって作製される。カーボンブラックに関する文献中では、燃焼ガスと炭化水素原料との間のこの反応は、一般に、熱分解と称される。
【0004】
カーボンブラックを作製するための様々な方法が一般的に公知である。Kester et al.に与えられた米国特許第3,401,020号、またはPollockに与えられた米国特許第2,785,964号に示されるものなどの、1つのタイプのカーボンブラック炉型反応器では、炭化水素質燃料などの燃料、および空気などの酸化剤が、第一のゾーンへ注入され、反応を起こして高温の燃焼ガスを形成する。気体、蒸気、または液体のいずれかの形態である炭化水素質原料も、第一のゾーンへ注入され、そこで、炭化水素質原料の反応が開始される。その中で反応を起こしている得られた燃焼ガス混合物は、次に、反応ゾーンへと送られ、そこで、カーボンブラック形成反応が完了する。別のタイプのカーボンブラック炉型反応器では、液体または気体の燃料が、第一のゾーンにて空気などの酸化剤と反応され、高温の燃焼ガスを形成する。このような高温の燃焼ガスは、第一のゾーンから、反応器を通って下流方向へ、反応ゾーンおよびそれ以降へと送られる。カーボンブラックを作製するために、炭化水素質原料が、1つ以上の地点にてこの高温の燃焼ガス流の経路中へ注入される。一般に、炭化水素質原料は、炭化水素油または天然ガスである。第一の(または燃焼)ゾーンおよび反応ゾーンは、燃焼ゾーンもしくは反応ゾーンよりも小さい断面積であるチョークまたは直径が絞られたゾーンによって分割されていてよい。原料は、直径が絞られたゾーンの上流、その下流、および/またはその中の高温燃焼ガス経路中へ注入されてよい。炭化水素原料は、燃焼ガス流内部から、および/または燃焼ガス流外部から、噴霧および/または非噴霧形態で導入されてよい。このタイプのカーボンブラック炉型反応器は、例えば、Morgan et al.に与えられた米国再発行特許第28,974号、およびJordan et al.に与えられた米国特許第3,922,335号に示されている。
【0005】
一般的に公知である反応器およびプロセスにおいて、高温燃焼ガスは、燃焼ガス流中に注入された炭化水素質原料の反応を起こすのに十分な温度である。上記で示したKester et al.に与えられた米国特許第3,401,020号などの1つのタイプの反応器では、原料は、1つ以上地点にて、燃焼ガスが形成されつつある同じゾーンへ注入される。他のタイプの反応器またはプロセスでは、原料の注入は、燃焼ガス流が形成された後に、1つ以上の地点にて行われる。反応が発生している原料と燃焼ガスとの混合物は、本出願全体を通して、以降「反応流」と称する場合がある。反応器の反応ゾーンにおける反応流の滞留時間は、所望されるカーボンブラックの形成を可能とするに十分なものである。いずれのタイプの反応器においても、高温燃焼ガス流が、反応器を通して下流へ流れることから、反応は、原料と燃焼ガスとの混合物が反応ゾーンを通過する際に発生する。所望される特性を有するカーボンブラックの形成後、反応流の温度は、反応が停止されるような温度まで低下され、カーボンブラック生成物を回収することができる。
【0006】
Jordan et al.に対する米国特許第3,922,335号;Caspersonに対する同第4,826,669号;Morganに対する同第6,348,181号;およびGreenに対する同第6,926,877号などのその他の特許も、原料温度を含むカーボンブラック作製のためのプロセスを示している。米国特許第4,826,669号に示されるものなどの反応器へ入る地点での典型的な原料温度は、例えば、250°Fから500°F(121℃から260℃)の範囲であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本研究者らは、カーボンブラック作製における炭化水素質原料の温度が、反応器への投入地点またはその地点前にて約300℃に近づくかまたはそれを超える場合、原料の供給ラインおよび設備における熱誘導による付着汚染が、破壊的なレベルとなるリスクが高まることを見出した。さらに、本発明者らは、カーボンブラック作製のための本発明の方法および機構が開発されるまで、そのような高温原料に耐えることができるカーボンブラック作製のための方法およびシステムはこれまでに開発されておらず、また高温原料の運転を用いることの考え得る利益も十分に認識されておらず、また達成可能でもなかったものと考える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の特徴は、カーボンブラック作製における原料の予備加熱温度の上昇を、その上昇した原料温度での熱誘導による原料ラインの付着汚染を制御しながら行うことである。
【0009】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の記述に部分的に示され、およびその記述から部分的に明らかであるか、または本発明の実践によって習得し得る。本発明の目的およびその他の利点は、その記述および添付の請求項において特に指摘される要素および組み合わせによって実現され、達成されるであろう。
【0010】
本明細書にて具体化され概略的に記述されるように、これらのおよびその他の利点を達成するために、ならびに本発明の目的に従って、本発明は、一部、カーボンブラック生成原料を約300℃超に予備加熱して、その温度範囲の予備加熱したカーボンブラック生成原料を提供することを含む、カーボンブラックを作製するための方法に関する。原料は、少なくとも450℃、もしくは約360℃から約850℃までの温度へ、または300℃を超えるその他の温度へ加熱してよい。予備加熱したカーボンブラック生成原料は、少なくとも1つの原料供給ラインにより、反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給してよい。予備加熱したカーボンブラック生成原料は、反応器への少なくとも1つの導入地点を介して導入されて、1もしくは複数の加熱ガス流と組み合わされ、反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成する。反応流中のカーボンブラックは、回収のために冷却してよい。本発明の方法は、上昇された原料温度での原料供給ラインにおける熱誘導による付着汚染のリスクを軽減するための1つ以上の手法を含む。これらの手法により、原料供給ラインまたは原料供給ラインを維持するためのラインの内壁での、付着物形成の最小限化(例:コークス付着(coke laydown)の低減)、表面付着堆積物の除去(例:コークス除去の向上)、または両者の組み合わせを、反応器への予備加熱原料の輸送を行いながら操作可能である条件にて行うことができる。これらの付着汚染制御の手法は、以下の1つ以上(またはいずれかの組合せ)を含んでいてよい:
− カーボンブラック生成原料を、少なくとも約0.2m/秒の速度(または、例えば、少なくとも約1m/秒、もしくは少なくとも約1.1m/秒、もしくは少なくとも約1.6m/秒、もしくは少なくとも約2m/秒、もしくは約0.2m/秒よりも速いその他の速度)にて、カーボンブラック生成原料を加熱する少なくとも1つのヒーターを通してフィードし、予備加熱を行うこと。
− カーボンブラック生成原料を、カーボンブラック生成原料を予備加熱する少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約10バール超の圧力(または、例えば、約20バール超、もしくは約30バール超、もしくは約40バール超、もしくは約20から約180バール、もしくは約30から約180バール、もしくは約10バール超のその他の圧力)まで加圧すること。
− 予備加熱のための少なくとも1つのヒーター中のカーボンブラック生成原料、および反応器へ導入される前の原料供給ライン中の予備加熱されたカーボンブラック生成原料の合計の原料滞留時間を、約120分未満(または、例えば、約1秒から約120分、もしくは約1から約60分、もしくは約120分未満のその他の滞留時間)とすること。
− 原料の予備加熱を、約10kW/m2超の(管内部表面の)平均熱流束(または、例えば、約20kW/m2超、もしくは約20から約200kW/m2、もしくは約10kW/m2超のその他の平均熱流束)にて運転される少なくとも1つのヒーターで行うこと。
− 原料供給ラインの原料接触内壁上に、炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である表面を提供すること。
− 原料供給ラインを通して、炭素に対する酸化剤を含む少なくとも1つのパージガス(例:スチーム、空気、酸素、CO2)またはそのいずれかの組み合わせを定期的にフィードすること。
【0011】
本発明によって提供される付着汚染制御は、高反応温度の反応器から発生する熱によって原料を加熱することにより、原料の予備加熱を少なくとも部分的に達成することを可能とすることができる。本発明によって実行可能となった原料予備加熱の条件および設計により、例えばエネルギー回収の改善、原料コストの節約、カーボンブラック量の増加、二酸化炭素排出量の削減、SOxおよび/もしくはNOx排出量の削減、高い原料温度条件での工業的に有用である持続時間にわたるカーボンブラックの安定もしくは連続的な生産、またはこれらの組み合わせ、などの利点および利益を得ることができる。本発明のプロセスは、ここで述べるこれらの環境上の利点の1つ以上に起因して、従来のプロセスと比較して「より環境にやさしい(greener)」プロセスであると考えることができる。
【0012】
本発明はまた、上述のものなどの方法を実施するための装置にも関する。装置は、加熱ガス流と少なくとも1つの高温カーボンブラック生成原料とを組み合わせて、反応器中にカーボンブラックが形成される反応流を形成するための少なくとも1つの反応器を含む。また、カーボンブラック生成原料を反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給して、原料を加熱ガス流と組み合わせるための少なくとも1つの付着汚染制御原料供給ライン、および少なくとも1つの原料供給ラインにて供給されたカーボンブラック生成原料を約300℃超の温度まで予備加熱するように操作可能である少なくとも1つの原料ヒーターも含まれる。装置はさらに、少なくとも1つのポンプも含み、それは、a)原料が約300℃超の温度まで予備加熱される前に、カーボンブラック生成原料を約10バール超の圧力まで加圧するように操作可能であるか、またはb)カーボンブラック生成原料を予備加熱する少なくとも1つの原料ヒーターを通る原料の速度を、少なくとも約0.2m/秒とするためのものであるか、またはc)これらの両方である。反応流中のカーボンブラックを冷却するための冷却器(quencher)が含まれていてよい。反応器は、約300℃超の温度まで予備加熱された原料が反応器へ導入される前の、少なくとも1つの原料ヒーターおよび少なくとも1つの原料供給ライン中での原料滞留時間が、約120分未満となるように操作可能である。原料予備加熱の少なくとも一部が、装置上にて達成可能であり、例えば、反応器によりまたは反応器中にて発生される発熱での原料の直接または間接的な加熱による。装置は、例えば、反応器内の反応流中に配置された、反応器の加熱壁と接触して配置された、反応器のテールガスと接触して配置された、反応器内に位置する熱交換機から受ける加熱流体との熱交換を行うように反応器の外部に配置された、または1つ以上の原料供給ラインを用いたこれらの配置のいずれかの組み合わせによって配置された原料ヒーターを有していてよい。原料ヒーターは、テールガス(同じおよび/もしくは異なるカーボンブラック反応器から)、もしくはいずれかの炭化水素系燃料を燃料とする1つ以上のヒーターであってよく、および/または電気ヒーターであってもよい。
【0013】
本明細書の目的のために、「供給ライン」または「少なくとも1つの原料供給ライン」は、導管、パイプ、熱交換器配管、熱交換器チャネル、もしくは液体原料もしくは気体原料、またはこれらの組み合わせを輸送するのに適するその他の構造のいずれであってもよく、それを通して、原料が予備加熱温度にて反応器へと運搬される。「供給ライン」は、いかなる直径および/または長さであってもよい。例えば、原料は、熱交換器の配管またはコイルを通過する間に300℃の温度まで予備加熱され、次に熱交換器から別の配管を介して反応器へと供給される場合、「少なくとも1つの供給ライン」は、原料温度が300℃に到達した熱交換器内部の配管に沿った位置と熱交換器配管の排出端部との間に伸びる熱交換器配管の一部を含み、また、予備加熱原料が通って反応器へ到達する熱交換器後の配管も含むことになる。
【0014】
原料に関連するコーキングに関する「制御」とは、1もしくは複数の予防工程なしに発生するコーキングのレベルを少なくとも低減(または予防または遅延)することを意味する。
【0015】
前述の一般的な記述および以下の詳細な記述はいずれも、単に例示および説明のためのものであり、請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図するものであることは理解されたい。
【0016】
本出願に組み込まれ、その一部を成すものである添付の図面は、本発明の態様を図示し、記述内容と合わせて、本発明の原理の説明に資するものである。図中に用いられた類似の符号は、類似の特徴を指すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明のプロセスに用いてカーボンブラックを作製することができる、1つのタイプの炉型カーボンブラック反応器の一部の概略図である。このカーボンブラック反応器は、本発明に用いることができる反応器の単なる実例である。
【0018】
【図2】図2は、本発明のプロセスに用いてカーボンブラックを作製することができる、別のタイプの炉型カーボンブラック反応器の一部の概略図である。このカーボンブラック反応器は、本発明に用いることができる反応器の単なる実例である。
【0019】
【図3】図3は、本発明のプロセスに用いてカーボンブラックを作製することができる、さらに別のタイプの炉型カーボンブラック反応器の一部の概略図である。このカーボンブラック反応器は、本発明に用いることができる反応器の単なる実例である。
【0020】
【図4】図4は、本発明のプロセスに用いてカーボンブラックを作製することができる、さらなるタイプの炉型カーボンブラック反応器の一部の概略図である。このカーボンブラック反応器は、本発明に用いることができる反応器の単なる実例である。
【0021】
【図5】図5は、本発明のプロセスに用いてカーボンブラックを作製することができるプロセススキームの概略図である。このカーボンブラック反応器スキームは、実施例で用いられるが、本発明に用いることができる反応器の単なる実例である。
【0022】
【図6】図6は、実施例で述べるモデルにおける原料節約の算出に用いられた原料温度(℃)に対する原料熱容量(kJ/kg・℃)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、カーボンブラックの作製において、原料の付着汚染の問題によって妨害されることなく、約300℃超に上昇させた原料の予備加熱温度を用いることに関する。本発明は、工業的スケールでのカーボンブラックの生産、またはその他のスケールでの生産に適用可能であり得る。
【0024】
本発明は、一部、カーボンブラックの作製方法に関する。この方法は、カーボンブラック反応器へ加熱ガス流を導入することを含んでよい。この方法はさらに、300℃未満または275℃未満など(例:40℃から274℃、50℃から270℃、70℃から250℃、60℃から200℃、70℃から150℃など)、達成すべき予備加熱温度未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、少なくとも1つのヒーター(例:少なくとも2つのヒーター、少なくとも3つのヒーターなどであり、ここで、ヒーターは、互いに同一であっても異なっていてもよい)へ供給することを含む。少なくとも1つのヒーターへ入る原料の温度は、目標とする予備加熱温度または温度範囲よりも低い。予備加熱前の原料は、所望される場合、少なくとも約0.2m/秒(例:0.2m/秒から4m/秒および1.1から3m/秒など、少なくとも約0.4m/秒、少なくとも約0.6m/秒、少なくとも約0.8m/秒、少なくとも約1m/秒、少なくとも約1.1m/秒、少なくとも約1.6m/秒)の第一の速度で送られてよい。他の処理条件が、1もしくは複数のヒーターおよび反応器への供給ライン中での付着汚染ならびに/またはコーキングを制御するように選択される限りにおいて、その他の速度を用いてもよい。
【0025】
本方法は、少なくとも1つのヒーター中の少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、約300℃超(例:300℃から850℃、または360℃から800℃、400℃から750℃、および450℃から700℃など、少なくとも350℃、少なくとも360℃、少なくとも400℃、少なくとも450℃、少なくとも500℃)の第二の温度まで予備加熱して、予備加熱カーボンブラック生成原料を提供することを含み、ここで、(a)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し、ここで、速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出される。そのような高温の原料の速度を測定することは非常に困難であり得ることから、本発明の目的のために、本明細書に挙げる速度は、このような特定の測定条件に基づくものである。実際のヒーター中に存在する最小の直径または最小の断面積がどのようなものであれ、本発明の目的のために、この最小断面積を用いて、本明細書に挙げる速度が決定される。多くのヒーターは、ヒーター全体を通して同じ直径を有するが、1もしくは複数のヒーター中に複数の直径または断面積が存在する場合、この条件が提供される。速度は、最小断面積に基づく。原料ヒーターを通しての実際の速度は、一般に、60℃、1気圧で測定された速度よりも速くなり得る。
【0026】
方法において、カーボンブラック生成原料は、ヒーター中での第一の原料滞留時間が、約120分未満(例:1秒から119分、5秒から115分、10秒から110分、30秒から100分、1分から60分、5分から30分など、100分未満、80分未満、60分未満、40分未満、30分未満、20分未満、10分未満)であり得る。例えば、図を参照すると、第一の原料滞留時間は、例えば、原料が、図1ではヒーター19内、図2ではヒーター22内にて費やす時間のことである。
【0027】
本方法は、予備加熱カーボンブラック生成原料を、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点(例:少なくとも1または2または3または4つの原料導入地点)へ供給することを含んでよく、ここで、予備加熱カーボンブラック生成原料は、1もしくは複数のヒーターを出てからカーボンブラック反応器への導入地点直前までで測定された第二の原料滞留時間が、約120分未満(例:1秒から119分、5秒から115分、10秒から110分、30秒から100分、1分から60分、5分から30分など、100分未満、80分未満、60分未満、40分未満、30分未満、20分未満、10分未満)である。第一の原料滞留時間および第二の原料滞留時間は合わせて、好ましくは、120分以下(例:1秒から119分、5秒から115分、10秒から110分、30秒から100分、1分から60分、5分から30分など、100分未満、80分未満、60分未満、40分未満、30分未満、20分未満、10分未満)である。例えば、図を参照すると、第二の原料滞留時間は、例えば、原料が、図1ではヒーター19、または図2ではヒーター22を出てから、図1および図2にて導入地点16として示される反応器への導入地点までの時間のことである。第一の原料滞留時間および第二の原料滞留時間を合わせたものは、総原料滞留時間となる。
【0028】
本方法は、少なくとも1つの導入地点を通してカーボンブラック反応器へ送られる予備加熱カーボンブラック生成原料を加熱ガス流と組み合わせ、カーボンブラック反応器中でカーボンブラックが形成される反応流を形成することを含んでよい。
【0029】
本方法は、反応流中のカーボンブラックを冷却することを含んでよい。カーボンブラックの製造において従来から行われるその他の冷却後工程を、本発明の方法で用いてよい。
【0030】
所望に応じて、ヒーターへの原料ラインがヒーターを通る供給ラインとほぼ同じ断面積である場合は、カーボンブラック生成原料の1もしくは複数のヒーター中での速度は、1もしくは複数のヒーターへの入口地点での第一の速度とほぼ同じかそれよりも速くてよい(例:1%から200%速い、または20%から100%速いなど、少なくとも1%速い、少なくとも2%速い、少なくとも3%速い、少なくとも5%速い、少なくとも7%速い、少なくとも10%速い、少なくとも100%速い、少なくとも200%速い)。
【0031】
本発明の方法は、1もしくは複数のカーボンブラック生成原料を加圧することを含んでよい。本方法は、カーボンブラック生成原料の予備加熱が、少なくとも1つのヒーター中またはカーボンブラック反応器への供給前での蒸気膜の形成を回避するように、1もしくは複数のカーボンブラック生成原料を加圧すること、またはそのために圧力を用いることを含んでよい。本発明の方法は、例えば、カーボンブラック生成原料を予備加熱する少なくとも1つのヒーターへ入る前に約10バール超の圧力を有するように、1もしくは複数のカーボンブラック生成原料を加圧することを含んでよい。この圧力は、10バールから180バール以上、15バールから150バール、20バールから125バール、25バールから100バールなど、少なくとも15バール、少なくとも20バール、少なくとも30バール、少なくとも40バールであってよい。
【0032】
本発明において、カーボンブラックを作製するための方法は、カーボンブラック反応器中へ加熱ガス流を導入することを含んでよい。この方法は、さらに、300℃未満または275℃未満など(例:40℃から274℃、50℃から270℃、70℃から250℃、60℃から200℃、70℃から150℃など)、目標とする予備加熱原料温度未満である第一の温度を有するカーボンブラック生成原料を、10バール超である第一の圧力にて、1もしくは複数のヒーターへ供給することを含む。この圧力は、10バールから180バール以上、15バールから150バール、20バールから125バール、25バールから100バールなど、少なくとも15バール、少なくとも20バール、少なくとも30バール、少なくとも40バールであってよい。
【0033】
本方法は、1もしくは複数のヒーター(例:少なくとも2つのヒーター、少なくとも3つのヒーターなどであり、ここで、ヒーターは、互いに同一であっても異なっていてもよい)中の少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、約300℃超(例:300℃から850℃、または360℃から800℃、400℃から750℃、450℃から700℃など、少なくとも350℃、少なくとも360℃、少なくとも400℃、少なくとも450℃、少なくとも500℃)の第二の温度まで予備加熱して、予備加熱カーボンブラック生成原料を提供することを含んでよく、ここで、(a)カーボンブラック生成原料は、少なくとも1つのヒーター中にて、第一の圧力よりも低いかほぼ同じである(例:1%から75%低い、または3%から20%低いなど、少なくとも1%低い、少なくとも2%低い、少なくとも3%低い、少なくとも5%低い、少なくとも7%低い、少なくとも10%低い、少なくとも15%低い、少なくとも20%低い)第二の圧力を有し、ならびに(b)カーボンブラック生成原料は、ヒーター中にて、約120分未満(例:1秒から119分、5秒から115分、10秒から110分、30秒から100分、1分から60分、5分から30分など、100分未満、80分未満、60分未満、40分未満、30分未満、20分未満、10分未満)である第一の原料滞留時間を有する。
【0034】
本方法は、予備加熱カーボンブラック生成原料を、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給することを含んでよく、ここで、予備加熱カーボンブラック生成原料は、約120分未満(例:1秒から119分、5秒から115分、10秒から110分、30秒から100分、1分から60分、5分から30分など、100分未満、80分未満、60分未満、40分未満、30分未満、20分未満、10分未満)である、少なくとも1つのヒーターを出てからカーボンブラック反応器への導入地点までの第二の原料滞留時間を有し;ならびにここで、第一の原料滞留時間および第二の原料滞留時間は合わせて、120分以下(例:1秒から119分、5秒から115分、10秒から110分、30秒から100分、1分から60分、5分から30分など、100分未満、80分未満、60分未満、40分未満、30分未満、20分未満、10分未満)である。
【0035】
本方法は、予備加熱カーボンブラック生成原料を、カーボンブラック反応器への1もしくは複数の導入地点を通して加熱ガス流と組み合わせ、カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成することを含んでよい。本方法は、反応流中のカーボンブラックを冷却することを含んでよい。
【0036】
本発明は、カーボンブラック反応器中へ加熱ガス流を導入することを含む、カーボンブラックを作製するための方法に関連し得る。この方法は、さらに、300℃未満または275℃未満など(例:40℃から274℃、50℃から270℃、70℃から250℃、60℃から200℃、70℃から150℃など)、目標とする予備加熱原料温度未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、10バール超である第一の圧力にて、少なくとも1つのヒーター(例:少なくとも2つのヒーター、少なくとも3つのヒーターなどであり、ここで、ヒーターは、互いに同一であっても異なっていてもよい)へ供給することを含む。所望に応じて、ヒーターへ入る速度は、少なくとも約0.2m/秒(例:0.2m/秒から2m/秒、0.4から1.8m/秒など、少なくとも約0.4m/秒、少なくとも約0.6m/秒、少なくとも約0.8m/秒、少なくとも約1m/秒、少なくとも約1.1m/秒、少なくとも約1.6m/秒)である第一の速度であってよい。
【0037】
本方法は、1もしくは複数のヒーター中のカーボンブラック生成原料を、約300℃超(例:300℃から850℃、または360℃から800℃、400℃から750℃、450℃から700℃など、少なくとも350℃、少なくとも360℃、少なくとも400℃、少なくとも450℃、少なくとも500℃)である第二の温度まで予備加熱して、予備加熱カーボンブラック生成原料を提供することを含み、ここで、(a)カーボンブラック生成原料は、1もしくは複数のヒーター中にて、少なくとも0.2m/秒である速度を有し、ここで、速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度および少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最小断面積に基づいて算出されるものであり、ならびに(b)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、1もしくは複数のヒーター中にて、第一の圧力よりも低いかほぼ同じである(例:1%から25%低い、または3%から20%低いなど、少なくとも1%低い、少なくとも2%低い、少なくとも3%低い、少なくとも5%低い、少なくとも7%低い、少なくとも10%低い、少なくとも15%低い、少なくとも20%低い)第二の圧力を有し、ここで、圧力は、第一の圧力および第二の圧力の際に原料が通過する断面積が同一であるとする仮定に基づいて算出することができる(ただし、実際の運転では、断面積は同一であっても異なっていてもよい)。この決定方法は、必須ではないが、適切に圧力を比較する目的で用いることができる。
【0038】
本方法は、予備加熱カーボンブラック生成原料を、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給すること、および少なくとも予備加熱カーボンブラック生成原料をカーボンブラック反応器への1もしくは複数の導入地点を通して加熱ガス流と組み合わせ、カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成すること、を含んでよい。本方法は、反応流中のカーボンブラックを冷却することを含んでよい。
【0039】
本発明において、いずれの方法の場合も、記載した目標とする予備加熱温度は、カーボンブラック反応器へ導入される前の原料の平均温度であることが好ましい。原料の記載した予備加熱温度は、カーボンブラック反応器へ導入される前の原料の最高温度または原料の最低温度であってよい。
【0040】
本発明において、いずれの方法の場合も、記載した目標とする圧力は、原料の平均圧力であることが好ましい。原料の記載した圧力は、原料の最高圧力または原料の最低圧力であってよい。
【0041】
本発明において、いずれの方法の場合も、記載した目標とする速度は、原料の平均速度であることが好ましい。原料の記載した速度は、原料の最高速度または原料の最低速度であってよい。
【0042】
本発明において、いずれの方法の場合も、カーボンブラック生成原料は、デカント油、コールタール生成物、エチレンクラッカー残渣、アスファルテン含有油、もしくは比重が約0.9から約1.5以上(0.9から1.3または1から1.2など)であるいずれかの液体炭化水素、またはこれらのいずれかの組み合わせであってよいか、またはそれらを含んでよい。カーボンブラック生成原料は、160℃から約500℃、または200℃から約450℃、または215℃から約400℃など、約160℃から約600℃の初期沸点を有していてよい。
【0043】
予備加熱は、いかなる数の方法で行なってもよく、これを達成するための手法に制限を課すことは意図していない。予備加熱は、少なくとも1つのヒーター(例:1、2、3、または4つ以上)で行ってよい。少なくとも1つのヒーターの熱源は、いかなる熱源であってもよく、1つ以上のカーボンブラック反応器からの熱、電熱、プラズマ熱、テールガスからの熱、テールガスの燃焼からの熱、燃料、および/もしくはその他の工業的プロセスからの熱、および/もしくはその他の形態の熱、ならびに/またはこれらのいずれかの組み合わせなどである。予備加熱は、少なくとも1つのヒーターが、原料を、反応器へ導入するために目標とする予備加熱温度まで部分的または完全に加熱するように行ってよい。1つのヒーターによって、部分的もしくは完全な予備加熱を達成してよく、または2つ以上のヒーターを連続してもしくはその他の配列で用いて、予備加熱(完全もしくは部分的)を達成してもよい。少なくとも1つのヒーターによって部分的な予備加熱が達成される場合、残りの予備加熱は、追加のもしくは第二の熱源、またはさらなるヒーターによって行われ、最終的に目標とする予備加熱温度が得られる。
【0044】
例えば、少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の予備加熱は、熱交換器を有する少なくとも1つのヒーターでカーボンブラック生成原料を加熱することを含んでよいか、またはそれによって達成されてよい。熱交換器は、約10kW/m2超(約10kW/m2超または約20kW/m2超または約30kW/m2超または約40kW/m2超など、約10kW/m2から約150kW/m2など)の平均熱流束で運転してよい。
【0045】
所望される場合、予備加熱の少なくとも一部(または完全な予備加熱)は、予備加熱原料を受けるカーボンブラック反応器または別の1もしくは複数のカーボンブラック反応器またはこれらの両方によって発生される熱によって少なくとも部分的に(または完全に)提供される熱を有する少なくとも1つのヒーターで行ってよい。少なくとも1つのヒーターは、予備加熱原料を受けるカーボンブラック反応器または異なる1もしくは複数のカーボンブラック反応器またはこれらの両方の少なくとも一部と熱交換状態であってよい。例えば、少なくとも1つのヒーターは、例えば冷却器の下流のカーボンブラック反応器中の反応流と接触してよく、ここで、少なくとも1つのヒーターは、その第一の面(例:外壁)が反応流によって加熱され、その逆の面(例:内壁)がカーボンブラック生成原料と接触している壁を持つ熱交換器を有していてよい。所望される場合、少なくとも1つのヒーターは、カーボンブラック反応器中の反応流と熱交換を行う熱交換器を含んでよく、ここで、熱交換器を通流する流動性熱キャリアは、加熱され、熱キャリアは、反応器の外部に、熱キャリアからカーボンブラック生成原料へ熱を伝達するように操作可能に配置された少なくとも1つのヒーターを通過する。少なくとも1つのヒーターは、少なくとも部分的に(または完全に)、カーボンブラック反応器または異なる1もしくは複数のカーボンブラック反応器またはこれらの両方からのカーボンブラックテールガスを熱源として(例:テールガスからの熱、またはテールガスの燃焼によって発生する熱)、カーボンブラック生成原料を加熱してよい。予備加熱は、1つ以上のプラズマヒーターまたはその他のヒーターまたは熱源を用いて、部分的または完全に達成してよい。
【0046】
加熱ガス流の反応器への導入は、プラズマヒーター中にてプラズマ加熱可能ガス流をプラズマ加熱して、加熱ガス流の少なくとも一部を提供することを含んでよい。
【0047】
予備加熱カーボンブラック生成原料を受けるために、カーボンブラックプラズマ反応器を用いてよい。予備加熱原料、および所望に応じて予備加熱キャリアガス(反応性を制御するために所望に応じてO2を含めてよいN2など)を用いることで、反応器での加熱方法を、非燃焼型とし、反応体の間接的予備加熱の使用、およびカーボンブラック形成に要するプロセス温度へのプラズマ加熱を組み合わせてよい。キャリアガスは、従来のエアヒーター技術および/または原料の予備加熱用として本明細書で述べるヒーター設定の1つを用いて予備加熱してよい。所望される場合、類似の設定を、キャリアガスのために用いてよい。この方法により、プラズマ加熱単独と比較して電気消費量が低減され、原料コストの低下、ならびにCO2排出量および/または水消費量の削減が可能となる。
【0048】
本発明において、少なくとも1つのヒーターのカーボンブラック生成原料と接触する壁および/または予備加熱カーボンブラック生成原料を1もしくは複数のカーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインの内壁の一部分または全体に、非触媒性表面を用いてよい。表面は、炭化水素の分解(例:熱分解)または重合に対して非触媒性であってよい。
【0049】
本発明において、供給は、1もしくは複数のカーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインを通しての予備加熱カーボンブラック生成原料のフィードを含んでよいか、またはフィードであってよく、本方法は、所望に応じて、少なくとも1つのカーボンブラック生成原料供給ラインを通して、炭素に対する酸化剤であってよい1もしくは複数のパージガスを定期的にフィードすることをさらに含んでよい。原料を予備加熱する少なくとも1つのヒーターから出る原料供給ラインは、少なくとも1つのヒーターへ原料をフィードする供給ラインと同一かまたは異なる断面積(例:直径)を有していてよい(例:より小さいまたは大きい断面積を有してよい)。
【0050】
本発明において、供給は、1もしくは複数のカーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインを通しての予備加熱カーボンブラック生成原料のフィードを含んでよく、本方法は、カーボンブラック生成原料の少なくとも部分的な(または完全な)フラッシングと共に(例:例えば圧力の低下によって達成される原料の蒸発)予備加熱カーボンブラック生成原料をカーボンブラック反応器へ注入することを含んでよい。
【0051】
本発明により、本明細書で述べる1つ以上の洗浄または付着汚染防止工程を用いることによって、少なくとも約12時間にわたって(例:少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも1週間、2週間、1ヶ月、またはそれ以上)反応器中でカーボンブラックが連続的に形成されるように、予備加熱カーボンブラック生成原料および加熱ガス流をカーボンブラック反応器中で組み合わせることができる。
【0052】
本研究者らは、カーボンブラック作製において約300℃を超える温度まで加熱された炭化水素質原料が、原料供給ラインおよび/または原料を予備加熱する1もしくは複数のヒーターの有機物付着汚染(例:コーキングおよび/または重合)のリスクが高いことを認識してきた。原料供給ラインは、その内部表面が有機物付着汚染を起こしやすいものであり得るスチールパイプまたはその他の金属構造であり得る。付着汚染は、検査されずに放置されると、原料供給ラインの流量の著しい低下、そして最終的にはパイプおよび/または反応器インジェクターの閉塞を引き起こす可能性がある。
【0053】
本発明の開発において、付着汚染は、カーボンブラック作製において高温の原料を用いることに対する主たる技術的障害であることが確認された。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、高い原料温度のカーボンブラック原料における有機物付着汚染は、少なくとも2つの付着汚染機構、膜沸騰およびアスファルテン誘発コーキング、に起因して引き起こされる可能性がある。膜沸騰による付着汚染では、原料が蒸発し、熱伝達を阻止し得る蒸気膜を形成すると考えられ(すなわち、臨界熱流束)、ここで、蒸気膜は、過熱され、気相熱分解反応でのコークスの形成を引き起こす。アスファルテンは、原油に通常存在する成分であり、種々の濃度で様々なカーボンブラック原料へも少なくとも部分的に持ち込まれ、これは、高温での使用(例:>300℃)にて付着汚染のリスクを生ずる。アスファルテン誘発コーキングでは、原料中のアスファルテンが、液相熱分解を起こし得ると考えられ、ここで、アスファルテンは、熱分解温度に曝露された場合に、熱的に不安定化されてラジカルの形態となり、組み合わされて高分子量の不溶性コークスを形成する。高い原料温度は、例えば、原料中の長鎖分子の分解を引き起こし、重合して付着汚染となる反応性の高い化合物を形成し得る。検査されずに放置されると、より高い原料温度は、原料中のアスファルテンの凝集を引き起こし、それを原料ヒーターおよび供給ライン表面に析出させる傾向を有し得る。炭化水素の鉄またはニッケル触媒熱分解反応によって引き起こされ得る触媒コーキングなどのその他の有機物付着汚染機構は、原料供給ライン材料に依存して、高温原料の運転によって促進され得る。原料の共役オレフィンの重合(例えば、管の内表面上にて、鉄、ニッケルなどの金属によって促進される)も、原料化学に依存して、コーキングの潜在的な原因であると考えられる。上述のものなどの不溶性コークスまたはその他の有機付着汚染物は、カーボンブラック生産スキーム中で発生させた場合、原料供給ラインおよび反応器インジェクターの内壁上に原料から析出し、凝集してラインを閉塞し、それによってメンテナンスおよび/または補修のためにカーボンブラック生産を中断させることになる。本発明は、付着汚染防止手法を高温原料の運転と組み合わせ、そうでなければ安定で持続的なカーボンブラック生産が阻止されてしまう原料ラインのそのような熱誘発付着汚染のリスクを軽減する。
【0054】
本発明によって明らかにされるように、コーキングの兆候は、原料の予備加熱の過程でヒーター出口の圧力が、ヒーター入口の圧力と比較して急速に圧力低下する場合に発生する。通常、ヒーター入口の圧力をヒーターから出る原料の圧力と比較した場合、ライン中の原料の摩擦に起因して、通常の圧力低下は存在する。しかし、本発明の開発において見られたように、急激な圧力低下(runaway pressure drop)は、コーキングの可能性が非常に高いか、それが発生する兆候である。より詳細には、定常運転状態となった後、原料が所望される速度/パラメータにてヒーター中を流れている場合、ヒーターから出る原料に対して一定である、または相当に一定である圧力が確立され、上述のように、この圧力は、通常、原料との摩擦力に起因して、ヒーター入口圧力よりも低い。しかし、蒸気膜が発生し、および/またはコーキングの発生が始まると、ヒーター出口から出る原料に対するヒーター出口圧力に、急速または急激な圧力低下が発生する。定常運転となった後、圧力低下における2%以上の変化が、蒸気膜が形成中であること、およびこれがコーキングを引き起こすことになることの兆候であり得る。2%から20%以上など、2%以上、3%以上、5%以上、7%以上、10%以上、15%以上、20%以上の急激な圧力低下が、蒸気膜が形成中であること、およびこれがほぼ確実にコーキングを引き起こすことになるということの兆候である。より具体的な例として、ヒーターへ入る原料に対してヒーター入口圧力Xを有していてよく、定常運転に到達した後、ヒーター出口圧力(すなわち、ヒーターから出る原料の圧力)は、Xから(0.8)Xの圧力を有していてよく、非コーキング運転の間は、この圧力は、定常運転の間、このより低い圧力に本質的に維持される。カーボンブラック製造プロセスのパラメータが変更された場合、当然、パラメータの変化に起因して、圧力もやはり変化する可能性がある。しかし、この例では、定常運転に到達しており、従って、ヒーターから出る圧力は、本質的にほとんど変動なく維持されることになる(±0%から1.9%)。定常運転の間、ヒーターから出る原料の圧力(またはカーボンブラック反応器へ入る前の圧力)が、上記で示した低下パーセントなどの2%超の低下を起こす場合、これは、急激な圧力低下ということになり、このことは、原料ライン中で蒸気が形成されつつあること、およびその結果として非常に高い確率でコーキングが発生することを意味する。本発明の方法は、蒸気膜の形成を回避し(例:伝達を阻止する蒸気膜の形成の回避)、および/または急激な圧力低下を回避するカーボンブラック作製方法を提供するものであり、蒸気膜形成の回避が明らかに示すことは、本明細書で示されるように、急激な圧力低下の回避である。さらなる例として、定常運転時の急激な圧力低下は、2%以上の圧力変化であってよく、これは、15秒から1時間、または30秒から30分、または1分から10分の時間枠で発生してよく、本発明の方法によってこれが回避される。
【0055】
本発明のカーボンブラック製造に適用される付着汚染制御の方法により、原料供給ラインの内壁上へのコークスまたはその他の付着汚染物の付着速度の低下もしくは付着の予防、堆積されたコークスもしくはその他の付着汚染物の除去、またはこれらの両方が可能である。約300℃超まで加熱された原料を運んでいる原料供給ライン中の付着汚染の速度低下または付着の予防は、以下の手法の1つ以上によって可能である:より高い原料圧力の使用、より高い原料速度の使用、原料ヒーターの熱流束容量(heat flux capacity)の低下、非触媒性材料の表面層による原料供給ライン(原料ヒーター内のものも含む)のライニング、高温セクションにおける原料の滞留時間の短縮、またはこれらの手法のいずれかの組み合わせ。示したように、原料供給ラインからのコークスの除去を、本発明における付着汚染制御のための別の、または追加の手法として用いてよい。コークス堆積物は、それが供給ライン中で発生した場合、例えば、炭素に対する酸化剤などのパージガスもしくは流体で原料ラインを定期的にパージすることによって除去してよい。原料ラインは、コークス除去のために、スポーリングまたは機械的な洗浄を行ってよい。
【0056】
用いられるこれらの付着汚染防止手法のいずれの組み合わせの場合も、目的は、原料供給ライン中で発生する正味の付着汚染の速度を最小限に抑えることであってよい(すなわち、コークス付着の速度が、実施されるいずれのデコーキング(コークス除去)の速度よりも遅い)。予備加熱カーボンブラック生成原料は、反応器へ連続して導入され、例えば少なくとも約12時間、または少なくとも18時間、または少なくとも約24時間、または少なくとも約30時間、またはそれ以上の時間(例:12時間から8ヶ月以上、12時間から6ヶ月、12時間から3ヶ月、20時間から1ヶ月)にわたって、中断することなく安定した形で(例:付着汚染が原料供給ラインを閉塞することなく)反応器中にてカーボンブラックを形成することができる。例で示されるモデルに基づくものなどの本発明のプロセスにおける原料コスト節約の推計は、従来の原料温度(300℃未満)と比較した場合に、原料付着汚染のない安定な運転モードにおいて、原料が500℃に予備加熱される場合は10%超であり、原料が700℃に予備加熱される場合は20%超である。さらに、本発明による利益がさらに2つ存在する。1つは、熱分解プロセスにおける予備形成シードによる収率上昇の機構である。収率上昇の第二の機構は、周囲ガスを冷却することのない、カーボンブラック反応器中の原料のフラッシュ自己蒸発によるものである。また、本発明の付着汚染防止の方法は、不経済であり得る、および/またはカーボンブラック処理または生成物と非適合性であり得る化学添加剤も必要としない。
【0057】
示したように、原料は、本発明の付着汚染制御手法を用いることで、約300℃超の温度、または500℃を超えるその他の温度まで加熱することができる。原料温度は、本発明による発展により、例えば、少なくとも310℃、少なくとも350℃、少なくとも375℃、少なくとも400℃、少なくとも425℃、少なくとも約450℃、または少なくとも約500℃、または少なくとも約550℃、または少なくとも約600℃、または少なくとも約650℃、または少なくとも約700℃、または少なくとも約750℃、または少なくとも約800℃、少なくとも850℃、または約305℃から約850℃、または約350℃から約850℃、または約450℃から約750℃、または約450℃から約700℃、または約500℃から約750℃、または約500℃から約700℃であってよい。この原料温度は、原料の予備加熱に用いられる1もしくは複数のヒーターから出た直後の、および/またはカーボンブラック反応器へ導入される直前のカーボンブラック形成原料の温度である。この意味での原料温度は、原料温度が約300℃を超える値まで上昇された地点から、原料が反応器へ導入される供給ラインの排出端部までの、原料供給ラインに沿った1つ以上の地点で測定または検出してよい。この原料供給ラインは、原料温度が約300℃を超える値まで上昇された地点およびそれ以降であって、原料ヒーターから反応器まで伸びる追加の供給ライン部分へ輸送される前までである原料ヒーター内のいかなる長さの配管も含む。所望される場合は、予備加熱原料温度は、予備加熱原料供給ライン中の絶対最小値が301℃以上であってよく、および/または所望される場合は、予備加熱原料供給ライン中の温度の最大変動は、原料供給ラインに沿うすべての地点を考慮して、例えば、±20%、または±10%、または±5%、または±2.5%、または±1%、または±0.5%であってよい。これらの示された原料温度は、本明細書で示される種々の付着汚染制御プロセス変数と組み合わせて用いてよい。
【0058】
示された原料速度を用いた付着汚染制御は、少なくとも部分的に、原料を予備加熱するヒーターまで、および/またはヒーターを通して、および/または反応器への原料供給ラインを通して、この速度で1もしくは複数の原料をフィードすることを含んでよい。速度は、例えば、少なくとも約0.2m/秒、または少なくとも約0.5m/秒、または少なくとも約1m/秒、または少なくとも約1.6m/秒、または少なくとも約2m/秒、または少なくとも約3m/秒、または約0.2m/秒から約10m/秒、または約1m/秒から約7m/秒、または約1.5m/秒から約3m/秒、または約2m/秒から約6m/秒、または約3m/秒から約5m/秒であってよい。原料速度は、パイプまたはその他の供給ライン構造の縦軸に対する線速度である。原料速度(第一の速度)は、原料を予備加熱するヒーターへ導入される地点で測定される。1もしくは複数のヒーターを通しての、および/または1もしくは複数のヒーターを出た後の原料速度は、第一の速度と同一であっても、または異なっていてもよく、例えば、それより速くてよい(例:1%から300%速い、または50%から200%速いなど、少なくとも1%速い、少なくとも2%速い、少なくとも3%速い、少なくとも5%速い、少なくとも7%速い、少なくとも10%速い、少なくとも100%速い、少なくとも200%速い)。速度の測定または算出は、60℃、1気圧で測定される原料密度に基づき、および測定される原料ライン中に存在する最小断面積に基づいて行われる。この原料供給ラインは、原料温度が約300℃を超える値まで上昇された地点および/またはそれ以降であって、原料ヒーターから反応器まで伸びる追加の供給ライン部分へ輸送される前までである原料ヒーター内のいかなる長さの配管も含んでよい。例えば、原料速度は、原料供給ライン中の絶対最小値が0.2m/秒以上であってよく、および/または所望される場合は、原料供給ライン中の原料速度の最大変動は、原料供給ラインに沿うすべての地点を考慮して、例えば、±20%、または±10%、または±5%、または±1%、または±0.5%であってよい。
【0059】
原料の加圧を用いた付着汚染制御は、少なくとも部分的に、カーボンブラック生成原料を、例えば約10バール超、または約20バール超、または約30バール超、または約40バール超、または約50バール超、または約10から約180バール、または約20から約180バール、または約40から約180バール、または約50から約180バール、またそれ以上の圧力まで加圧することを含んでよい。本明細書における原料圧力は、絶対圧力として与えられる。圧力(第一の圧力)は、予備加熱のためにヒーターへ導入される前の地点で測定された圧力である。原料を予備加熱する1もしくは複数のヒーターを通しての圧力、および/またはその後反応器への1もしくは複数の導入地点までの圧力は、第一の圧力と同一であっても、または異なっていてもよく、第一の圧力よりも低いなどである(例:1%から25%低い、または3%から20%低いなど、少なくとも1%低い、少なくとも2%低い、少なくとも3%低い、少なくとも5%低い、少なくとも7%低い、少なくとも10%低い、少なくとも15%低い、少なくとも20%低い)。ゲージ圧力測定値は、本明細書で示される範囲と比較を行うために、公知の方法によって絶対値へ調節されるべきである。原料圧力は、原料温度が約300℃を超える値まで上昇された地点から、原料が反応器へ導入される供給ラインの排出端部までの、原料供給ラインに沿った1つ以上の地点で測定または検出してよい。この原料供給ラインは、原料温度が約300℃を超える値まで上昇された地点およびそれ以降であって、原料ヒーターから反応器まで伸びる追加の供給ライン部分へ輸送される前までである原料ヒーター内のいかなる長さの配管も含んでよい。圧力は、付着汚染制御のための原料温度と直接同じ傾向を有していてよい。例えば、10バールの原料圧力は、原料温度300℃での付着汚染の制御に適切であり得るが、他の事項がすべて同じで原料温度が500℃まで上昇される場合、20バール以上などの10バール超の高い圧力が同じレベルの付着汚染制御を提供するのにより有用であり得る。
【0060】
短い総原料滞留時間を用いた付着汚染制御を用いることができる。総原料滞留時間は、予備加熱のための少なくとも1つのヒーター中で費やされる合計時間であってよく、予備加熱カーボンブラック生成原料が反応器へ導入される前に費やされる時間を含む。総滞留時間は、例えば、約120分未満、または約90分未満、または約60分未満、または約45分未満、または約30分未満、または15分未満、または10分未満、または5分未満、または4分未満、または3分未満、または2分未満、または1分未満、または30秒未満、または15秒未満、または約1/60分から約120分、または約0.5分から約120分、または約1分から約90分、または約2分から約60分、または約3分から約45分、または約4分から約30分、または5から30分、または5から40分、または10から30分、または約5分から約15分であってよい。滞留時間は、平均値、または最大値、または最小値であってよい。原料滞留時間は、原料温度が約300℃を超える値まで上昇された地点から、原料が反応器へ導入される地点までで測定されてよい。滞留時間は、原料温度と逆の傾向を有していてよい。例えば、約120分までの原料滞留時間は、310℃の原料温度にて付着汚染の問題なしに許容され得るが、他の事項がすべて同じで原料温度が500℃まで上昇される場合、同じレベルの付着汚染制御を提供するためには、好ましくは、滞留時間は120分未満まで短縮され得る。
【0061】
例えば原料ヒーター中での原料の予備加熱の過程での付着汚染制御は、例えば、約10kW/m2超、または約20kW/m2超、または約30kW/m2超、または約50kW/m2超、または約100kW/m2超、または約10kW/m2から約150kW/m2(もしくはそれ以上)、または約20から約150kW/m2、または約30から約100kW/m2、または約40から約75kW/m2、または約50から約70kW/m2である平均熱流束で運転されるヒーターの使用を含んでよい。より高い熱流束での運転を付着汚染制御対策として考えることができるのは、より高い熱流束の結果として、カーボンブラック生成原料の加熱が早まり、および/または目標とする予備加熱温度に到達するのに要する時間が短縮されることからヒーター中の滞留時間を短くすることができるからである。
【0062】
原料供給ラインの原料と接触する内壁上に、少なくとも部分的に、炭化水素の分解(例:熱分解)および/または重合に対する非触媒性表面を用いる付着汚染制御は、例えば、セラミックライニング(例:シリカ、アルミナ、酸化クロム)などの保護ライニングの1層以上を含んでよい。
【0063】
原料供給ラインを通してのパージガスの定期的なオンラインフィードを用いた付着汚染制御は、炭素に対する酸化剤(例:CO2、酸素、スチーム、スチームと空気との混合物)を、原料供給ライン中へ、アクセス可能地点または原料ラインに沿った地点にて注入することを含んでよい。パージガスは、150℃以上または300℃を超える温度にて、いずれの液体原料送液手段からも下流である地点にて導入してよい。パージラインを通してのスチーム速度は、例えば、少なくとも約6m/秒であってよい。パージによって原料のすべてが反応器中へ直ちに送り出されるように、原料のいかなるデッドレッグ部(deadlegs)も除去してよい。パージガスは、300℃を超えるプロセス温度に曝露されるすべての供給ラインが処理されることをさらに確実にするために、原料ヒーターの上流へ導入してよい。
【0064】
示したように、原料ラインからのコークスの除去による付着汚染制御は、例えば、スポーリングまたは機械的なかき取りを含んでよい。例えば、スポーリングは、コークスが皮膜形成したオンラインパイプを冷却し、それにより、パイプのサイズが冷却の間に収縮するに従ってパイプ内部に堆積したコークスの少なくとも一部が剥がれ落ちるか、またはそうでなければパイプ内壁から離れるようにすることを含んでよい。緩んだコークスは、パイプから水で洗い流すことができ、スポーリングを行ったパイプは、再度使用できる状態となる。スポーリングの間、原料は、スポーリングされるパイプから、装置上に提供される反応器への1もしくは複数の別のオンラインフィードラインを通しての経路へバルブの使用などによって変更してよい。洗浄されると、スポーリングされたパイプは、再度使用できる状態となる。堆積したコークスを原料パイプから洗い出す別の方法は、機械的かき取り機をパイプを通して移動させ、パイプの内部からコークスを機械的に除去することを含んでよい。機械的かき取りの間、原料は、装置上に提供される反応器への1もしくは複数の別のオンラインフィードラインを通しての経路へバルブの使用などによって変更してよく、その間、洗浄のためにオフラインとされたパイプは、一時的に使用不可となる。スポーリングおよび/または機械的かき取りは、用いられる場合、原料供給ライン上にて定期的に行ってよい。
【0065】
本発明を用いた付着汚染制御によって高温にて処理可能であるカーボンブラック生成原料は、一般に、カーボンブラックの作製に有用であるいずれの液体炭化水素または原料油を含んでいてもよい。適切な液体原料としては、例えば、不飽和炭化水素、飽和炭化水素、オレフィン、芳香族、ならびにケロセン、ナフタレン、テルペン、エチレンタール、コールタール、クラッカー残渣、および芳香族循環油などのその他の炭化水素、またはこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。原料の種類は、付着汚染挙動に影響を与え得る。異なる原料の種類間および/またはある原料の種類内にて化学反応は様々であり得る。経験および研究室での実験に基づいて、例えば、デカント油、コーカー油、コールタール、およびエチレンクラッカー残渣は、すべて約300℃を超える種々の温度にて付着汚染を起こし得る。例えば、エチレンクラッカー残渣(ECR)は、アスファルテンの含有量が比較的高い場合がある。その他の種類の原料も、アスファルテンを含有し、および/またはその他の付着汚染機構を起こし易い化学的性質を有し得る。
【0066】
原料のアスファルテン含有量は、原料の総重量に基づいて、例えば、0重量%から約30重量%、または少なくとも約0.5重量%、または少なくとも約1重量%、または少なくとも約2重量%、または少なくとも約3重量%、または約1重量%から約10重量%、または約2重量%から約7.5重量%、または約2.5重量%から約5重量%であってよい。原料の初期沸点は、例えば、約160℃から約500℃、または約180℃から約450℃、または約200℃から約400℃、または約225℃から約350℃であってよい。初期沸点とは、(原料の)第一の原料成分が蒸発する温度を意味する。原料は、約380℃から約800℃、または約400℃から約500℃、または約425℃から約475℃、または約440℃から約460℃を例とする中間沸点を有していてよい。中間沸点とは、原料成分の50%が蒸発した温度を意味する。原料は、約600℃から約900℃、または約625℃から約725℃、または約650℃から約700℃、または約670℃から約690℃を例とする最終沸点を有していてよい。最終沸点とは、原料成分の100%が蒸発した温度を意味する。原料の選択および化学的性質に応じて、その他の初期、中間、および/または最終沸点も適用され得る。
【0067】
付着汚染制御プロセスの変数の組み合わせの代表的な範囲を表1に示す。
【表1】

(1)反応器前の予備加熱原料
(2)60℃、1気圧の試験条件に基づくヒーターを通して
(3)ヒーター前
【0068】
上述の、および本明細書で提供されるその他の指針を考慮して、予備加熱原料の供給ラインに付着汚染制御を提供するためのプロセス変数の適切な組み合わせは、当業者であれば容易に決定することができる。
【0069】
本発明の方法は、本明細書で述べるものなどの適応および改変を行った炉型カーボンブラック反応器と共に用いることができる。本発明の方法は、例えば、「多段型(staged)」とも称されるモジュール型の炉型カーボンブラック反応器で実施してよい。本発明を実施するために適応または改変を行うことができる多段型の炉型反応器は、例えば、その全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,922,335号;同第4,383,973号;同第5,190,739号;同第5,877,250号;同第5,904,762号;同第6,153,684号;同第6,156,837号;同第6,403,695号;および同第6,485,693B1号に示される。本発明によって提供される付着汚染制御は、所望される場合、原料の予備加熱の少なくとも一部が、炉型反応器の1つ以上の位置から炉型反応器によって発生される熱で原料を加熱することによって達成可能とされるものであってよい。この利点は、いくつかの図を参照する以下の考察で説明される。
【0070】
本発明はまた、カーボンブラックを作製するための装置にも関する。その装置またはシステムは:
加熱ガス流と少なくとも1つのカーボンブラック生成原料とを組み合わせて、反応器中にカーボンブラックが形成される反応流を形成するための反応器;
カーボンブラック生成原料を反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給して、原料を加熱ガス流と組み合わせるための少なくとも1つの原料供給ライン;
少なくとも1つの原料供給ラインにて供給されたカーボンブラック生成原料を少なくとも約300℃の温度まで予備加熱するように操作可能である少なくとも1つの原料ヒーター;
原料が少なくとも約300℃まで予備加熱される前に、カーボンブラック生成原料を約10バール超の圧力まで加圧するように操作可能であり、および原料ヒーター中の原料の速度を、少なくとも約0.2m/秒とするためであり、またはこれらの両方である少なくとも1つのポンプ;ならびに、
反応流中のカーボンブラックを冷却するための冷却器、
を含む。
【0071】
装置は、少なくとも約300℃まで予備加熱された原料が反応器へ導入される前の、少なくとも1つの原料ヒーターおよび少なくとも1つの原料供給ライン中での原料滞留時間が、約120分未満となるように操作可能である。
【0072】
少なくとも1つの原料ヒーターは、上述の通りであってよく、および約10kW/m2超の平均熱流束にてカーボンブラック生成原料を加熱するように操作可能である熱交換器であってよいか、またはそれを含んでよい。
【0073】
少なくとも1つの原料ヒーターは、反応流によって接触可能であるように反応器内に配置されて、原料を少なくとも370℃など少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能であってよい。少なくとも1つの原料ヒーターは、原料を少なくとも370℃など少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、反応器の少なくとも一部と(直接または間接的に)接触するように配置されてよい。少なくとも1つの原料ヒーターは、冷却器の下流の反応器内に配置された熱交換器であってよいか、またはそれを含んでよく、ここで、熱交換器は、その第一の側が、反応流によって加熱されるように適合され、その逆の側が、原料が少なくとも1つの原料供給ラインへ供給される前に原料と接触するように適合された壁を含み、ここで、原料は、熱交換器中にて少なくとも370℃など少なくとも300℃の温度へ加熱可能である。装置は、反応器内に反応流と接触可能であるように配置された流動性熱キャリアのための少なくとも1つの熱交換器を含んでよく、少なくとも1つの原料ヒーターは、反応器の外部にあって、熱交換器から出た流動性熱キャリアの熱を原料ヒーター中の原料と交換して原料を少なくとも370℃など少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である。少なくとも1つの原料ヒーターは、反応器(予備加熱原料を受ける反応器または異なる反応器)のテールガス流からの熱を交換して原料を少なくとも370℃など少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能であってよい。装置は、プラズマ加熱可能ガス流を加熱して加熱ガス流の少なくとも一部を提供するように操作可能であるプラズマヒーターを含んでよい。装置は、原料ヒーターの原料が接触する壁、および/または少なくとも1つの原料供給ラインの原料が接触する内壁の一部もしくはすべてに、非触媒性表面を含んでよく、ここで、表面は、炭化水素の熱分解または重合に対して非触媒性である。装置は、原料ヒーターの原料が接触する壁、および/または少なくとも1つの原料供給ラインの原料が接触する内壁に、非触媒性セラミックライニングを含んでよい。装置は、少なくとも1つの原料供給ラインをパージガスで定期的にパージするように操作可能である、炭素に対する酸化剤などの少なくとも1つのパージガス源、および少なくとも1つの原料供給ライン上の少なくとも1つのパージガス導入地点を含んでよい。反応器は、原料と加熱ガス流とを組み合わせて、少なくとも約12時間、反応器中にてカーボンブラックを連続的に形成するように操作可能であってよい。
【0074】
例として、図1は、本発明のプロセスに用いてカーボンブラックを作製することができる1つのタイプの炉型カーボンブラック反応器の一部を示し、ここで、予備加熱の少なくとも一部は、反応器中の反応流でカーボンブラック生成原料を加熱し、原料を約300℃超の温度まで加熱することを含む。示した付着汚染制御手法の1つ以上が、図1に示すプロセススキームに適用され、そのような予備加熱原料の使用を補助している。
【0075】
図1を参照すると、本発明のカーボンブラックは、燃焼ゾーン10を有する炉型カーボンブラック反応器2で作製することができ、これは、所望に応じて有していてよい直径が絞られたゾーン11、1もしくは複数の原料注入ゾーン12、および1もしくは複数の反応ゾーン13を有している。反応ゾーン13に続いて第一の冷却ゾーン14が存在する。用いてよいこれらの種々のゾーンの有用な直径および長さは、参照により組み込まれる上述の特許を参照して選択することができる。カーボンブラックの作製のため、高温燃焼ガスが、空気、酸素、または空気および酸素の混合物などの適切な酸化剤と液体または気体の燃料とを反応させることにより、燃焼ゾーン10で生成される。高温燃焼ガスを生成させるための燃焼ゾーン10での酸化剤流との反応に用いるのに適する燃料としては、容易に燃焼可能であるガス、蒸気、および/または液体流のいずれもが挙げられ、天然ガス、水素、一酸化炭素、メタン、アセチレン、アルコール、またはケロセンなどである。しかし、一般的には、炭素含有成分の含有量が高い燃料、特に炭化水素を用いることが好ましい。本発明のカーボンブラックの作製に用いられる空気の天然ガスに対する化学量論比は、約0.6:1から無限大、または約1:1(化学量論的比率)から無限大であってよい。高温燃焼ガスの生成を促進するために、酸化剤流を予備加熱してよい。高温燃焼ガス流は、ゾーン10および11からゾーン12および13、そして14へ、下流方向へ流れる。高温燃焼ガスの流れる方向は、図1中に矢印で示される。カーボンブラック生成原料15は、ゾーン12に位置する地点16にて導入される。原料の導入は、1もしくは複数のプローブを通して、地点16にてゾーン12の壁に配置された複数の開口部を通して内向きへ放射状に、またはこれら2つの組み合わせで行ってよい。原料の導入は、ゾーン11、12、および/または13のいずれかの場所にあるバーナーを通して軸方向に挿入された1もしくは複数のプローブを通して、軸方向に、または放射状に行ってよい(スティンガー運転(stinger operation))。反応条件下にて容易に揮発可能であり得るカーボンブラック生成炭化水素原料の種類として本発明での使用に適切するものとしては、これまでに示した原料が挙げられる。反応器/バーナー先端部は、高い原料温度では侵食をより受け易い可能性がある。例えば、STELLITE(登録商標)6金属合金などの材料を、先端部の寿命を延長するために用いてよい。
【0076】
図1に示されるように、カーボンブラック生成原料15は、反応器2に導入される前に、約300℃超の温度まで予備加熱される。予備加熱カーボンブラック生成原料は、少なくとも1つの原料供給ライン17にて、反応器2への少なくとも1つの原料導入地点16へ供給される。導入されると、原料は、反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成するために、加熱ガス流と組み合わされる。反応流中のカーボンブラックは、1つ以上のゾーン中にて冷却されてよい。例えば、冷却ゾーン14の冷却位置18において、水を含んでよい冷却流体が注入され、これを用いて、カーボンブラック生成原料の熱分解を完全にもしくは本質的に完全に停止するか、または熱分解を停止させずに原料を部分的にのみ冷却し、続いて第二の冷却を用いて(図示せず)カーボンブラック生成原料の熱分解を停止してよい。
【0077】
図1にさらに示されるように、原料ヒーターは、熱交換器19(HXR)を含んでよく、これは、その第一の側が、反応流によって加熱され、その逆の側が、原料が少なくとも1つの原料供給ラインへ供給される前に原料と接触する、公知の熱交換器設計で用いられるようなヒーター壁(図示せず)を有していてよい。示したように、原料は、熱交換器中にて約300℃超の温度まで加熱される。冷却器の下流に配列されるように示されているが、ヒーターが反応器内にてより高い冷却前温度での耐性を有し、運転が可能である構造を有する限りにおいて、原料熱交換器は、反応流中、冷却器の上流に位置していてよい。原料ヒーターは、原料を約300℃超の温度へ加熱するために、例えばコイルもしくは内部に収容された配管として、ならびに または反応器の1もしくは複数の加熱壁に対しておよび接触して、反応器の少なくとも一部と物理的に接触するように配列してよい。図1には示していないが、熱交換器は、所望に応じて、原料を中間温度(例:250℃超、または50℃から350℃、または目的とする予備加熱温度より低いその他の温度)まで加熱してよく、または300℃超の予備加熱温度を得るために用いてよく、続いて、さらなる熱交換器または反応器の外部もしくは内部のヒーターを用いて、最終予備加熱温度まで加熱してよい。
【0078】
反応器内の反応流は、冷却時、例えば約600℃から約2000℃、または約800℃から約1800℃、または約1000℃から約1500℃、または炉型反応器中で発生される極度の発熱反応を反映するその他の高温である温度を有してよい。本発明は、原料供給ライン中において付着汚染の問題が発生することなく、反応器中の反応によって発生された高い発熱と原料の熱交換を行うことができる。本発明は、従って、相当に低い原料温度で操作される従来のカーボンブラック生産と比較して、エネルギー回収の改善、および原料コストの節約を実行可能とすることができる。
【0079】
図1にさらに示されるように、少なくとも1つのポンプ20を、原料温度を300℃超の値まで上昇させるために用いられる原料ヒーター19から上流の原料ライン上に、インラインで設置してよい。ポンプを用いて、原料を、原料ヒーターへ入る前に加圧することができる。この方法により、原料温度が高い値まで高められる時点で原料が既に加圧されていることが可能であり、その温度では、そうではなく、加圧またはその他の示した付着汚染制御手法を行わない場合、原料供給ラインでの付着汚染の問題が発生してしまう可能性がある。通常、原料は、通常の運転条件下にて、例えば熱交換器設計および運転モードに応じて、原料ヒーターを通過する間に圧力低下を起こし得ることから(例:0から約20バールの圧力低下)、特に予め目標とされた値の範囲内に原料圧力を維持することが必要である場合、付着汚染制御対策として原料に適用される加圧はいずれも、原料熱交換器で発生し得る、または発生することが予想され得るいずれかの圧力低下、ならびに供給ラインパイプまたは予備加熱原料の反応器への輸送に用いられるその他の導管で発生するか、または発生することが予想され得るその他のいずれかの圧力低下を埋め合わせるはずである。図1および本明細書のその他の図には、図示を簡略化するために、単一の原料供給ラインおよび反応器上の原料注入地点のみが図示されているが、示した付着汚染制御を適用してもよい複数の原料供給ラインおよび反応器上の原料注入地点を用いてよいことは理解される。
【0080】
高温燃焼ガスおよびカーボンブラック生成原料の混合物が冷却された後、冷却されたガスは、下流へ向けて、カーボンブラックが回収されるいずれかの従来の冷却および分離工程へ送られる。カーボンブラックのガス流からの分離は、沈澱器、サイクロン分離器、またはバグフィルターなどの従来のデバイスによって容易に達成することができる。反応を完全に停止して最終カーボンブラック生成物を形成することに関して、カーボンブラック生成原料導入の下流における反応停止のためのいずれの従来のプロセスを用いてもよく、それは当業者に公知である。例えば、水またはその他の適切な流体であってよい冷却流体を注入して、化学反応を停止してよい。
【0081】
図2は、本発明のプロセスに用いてカーボンブラックを作製することができる、別のタイプの炉型カーボンブラック反応器の一部を示すものであり、ここで、予備加熱の少なくとも一部は、熱交換器21を反応器中の反応流と接触させることを含み、ここで、熱交換器を通して流れるスチームまたは窒素などの流動性熱媒体またはキャリア28は、反応器中で加熱され、次に加熱されたスチーム(例:過熱スチーム)は、熱交換器および反応器を通過、排出され、反応器の外部に配置された別の原料ヒーター22を通して輸送され、これは、原料を370℃以上など約300℃超の温度へ加熱するために原料ヒーター中の原料と熱交換するように操作可能である。
【0082】
図3は、本発明のプロセスに用いてカーボンブラックを作製することができる、別のタイプの炉型カーボンブラック反応器の一部を示すものであり、ここで、予備加熱の少なくとも一部は、原料ヒーター23を、反応器から出たテールガスと接触させて、原料ヒーター中の原料を約300℃超の温度へ(または、少なくとも部分的に目的の温度へ)加熱することを含む。
【0083】
図4は、本発明のプロセスに用いることができる、別のタイプの炉型カーボンブラック反応器を示すものであり、ここで、加熱ガス流は、少なくとも部分的にまたは完全に、プラズマヒーター25を用いて少なくとも部分的にまたは完全に加熱された加熱ガス24をさらに含む。ガスのプラズマ加熱は、例えば、当業者に公知の方法に従って行ってよい。例えば、その全ての開示事項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,486,674号に示されるものなどのプラズマトーチを用いてよく、その全ての開示事項が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,101,639号および同第3,288,696号に示されるプラズマ加熱を参照してよい。
【0084】
図4にさらに示されるように、原料は、反応器中の熱交換器26にて反応流と熱交換した熱媒体(例:スチーム)によって間接的に加熱してよく、または、別の選択肢として、原料は、点線で示されるように、反応器中の熱交換器26にて直接加熱してもよい。
【0085】
本発明のこのような種々のプロセススキームにおいて、反応器の内部または外部にある、原料の予備加熱に用いられる熱交換器の設計は、シェルアンドチューブ、シェルアンドコイル、プレートアンドフレームなどの従来の熱交換器の設計のいずれを有していてもよい。熱交換機がインラインコイルの構成を有する場合、例えばインラインコイルの腐食/侵食の問題を防止するために、スケジュール80パイプおよびL字管を用いてよい。また、インラインコイルの配管を構築する際に一定の管間ピッチを用いてよく、およびコイルは、燃焼排ガスヘッダーの全断面を用いてよい。インラインコイルの熱伝達係数は、種々のグレードおよびプラントに応じて大きく変動し得る。
【0086】
また、記載のプロセススキームおよび方法における原料のいずれも、従来のカーボンブラックの作製に一般的に用いられる追加の物質または組成物を含有してよい。本発明の方法は、周期律表の少なくとも1つのIA族および/もしくはIIA族元素(またはこれらのイオン)であるか、またはそれを含有する少なくとも1つの物質を導入することをさらに含んでよい。少なくとも1つのIA族および/またはIIA族元素(またはこれらのイオン)を含有する物質は、少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する。例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、もしくはラジウム、またはこれらの組み合わせが挙げられる。これらの成分の1つ以上のいずれの混合物も、物質中に存在してよい。物質は、固体、溶液、分散物、気体、またはこれらのいずれの組み合わせであってもよい。同じかもしくは異なるIA族および/またはIIA族金属(またはこれらのイオン)を有する2つ以上の物質を用いてよい。複数の物質が用いられる場合、物質の添加は、一緒に、別々に、順次に、または異なる反応位置で行ってよい。本発明の目的のために、物質は、金属(または金属イオン)自体、これらの元素の1つ以上を含有する塩を含むこれらの元素の1つ以上を含有する化合物、などであってよい。物質は、カーボンブラック生成物を形成中である反応へ、金属または金属イオンを導入する能力を有し得る。本発明の目的のために、少なくとも1つのIA族および/またはIIA族金属(またはこれらのイオン)を含有する物質は、使用される場合、反応器中へいずれの時点で導入してもよく、例えば、完全冷却の前である。例えば、物質の添加は、完全冷却の前のいずれの時点で行ってもよく、第一の反応段階におけるカーボンブラック生成原料の導入前;第一の反応段階におけるカーボンブラック生成原料の導入の間;第一の反応段階におけるカーボンブラック生成原料の導入後;いずれかの第二のカーボンブラック生成原料の導入の前、間、もしくは直後;または、第二のカーボンブラック生成原料の導入後であるが完全冷却の前であるいずれかの工程、を含む。物質を2つ以上の時点で導入することを用いてもよい。
【0087】
IA族および/またはIIA族金属(またはこれらのイオン)を含有する物質の量は、用いられる場合、カーボンブラック生成物を形成することができる限りにおいて、いかなる量であってもよい。物質は、最終的に形成されるカーボンブラック生成物中に200ppm以上のIA族元素もしくはイオンおよび/またはIIA族元素(もしくはそのイオン)が存在するような量で添加してよい。その他の量としては、約200ppmから約20000ppm以上が挙げられ、その他の範囲は、約500ppmから約20000ppm、または約1000ppmから約20000ppm、または約5000ppmから約20000ppm、または約10000ppmから約20000ppm、または約300ppmから約5000ppm、または約500ppmから約3000ppm、または約750ppmから約1500ppmの、形成されるカーボンブラック生成物中に存在するIA族および/またはIIA族元素(またはこれらのイオン)であってよい。これらのレベルは、金属イオン濃度に関するものであってよい。形成されるカーボンブラック生成物中に存在するIA族および/またはIIA族元素(またはこれらのイオン)のこれらの量は、1つの元素、または2つ以上のIA族および/もしくはIIA族元素(またはこれらのイオン)に関するものであってよく、従って、形成されるカーボンブラック生成物中に存在するIA族および/またはIIA族元素(またはこれらのイオン)を合わせた量ということになる。従って、これらの量は、IA族元素/イオンまたはIIA族元素/イオンの含有量単独に対して適用され得る。物質の添加は、いかなる形で行ってもよい。物質の添加は、カーボンブラック生成原料の導入と同じ方法で行ってよい。物質は、気体、液体、固体、またはこれらのいずれかの組み合わせとして添加してよい。物質は、1つの地点または複数の地点で添加してよく、単一の流れとして、または複数の流れとして添加してよい。物質は、その導入の前または導入の間に、原料、燃料、および/または酸化剤と混合してよい。
【0088】
例えばカリウムなどの少なくとも1つのIA族および/またはIIA族元素(またはこれらのイオン)を含有する物質を原料へ導入することができる1つの方法は、その物質を原料中へ組み込むことによる。別の方法では、物質は、反応器中へ伸びる注入棒(injection wand)の使用によるなど、原料とは別に反応器中へ導入される。例えば、カリウム溶液を高温の原料へ添加することは、カリウムフラッシングなどに起因して先端部が閉塞するリスクを生じ得る。カリウムイオン、またはその他のIA族および/もしくはIIA族金属(またはこれらのイオン)をバーナー中の注入棒を用いて注入することにより、このリスクを軽減することができる。また、標準的な開口部よりも大きい開口部を有する反応器へのカリウム その他のIA族および/もしくはIIA族金属(またはこれらのイオン)の導入に注入棒を用いることでも、閉塞のリスクを低減するか、または運転中に注入棒を洗浄することが可能となる。高カリウムイオングレードのカーボンブラックを作製する場合にバーナーライナーの損傷リスクを低減するため、原料温度は、カリウムイオンを油中へ注入することができるように、依然として>300℃の範囲内ではあるがより低い値に低下させる必要があり得る。>300℃の原料予備加熱に関して、カリウムの別の選択肢としての油溶性の形態を用いてよく、OMグループ(OM Group)からの物質CATALYST(登録商標)460HFなどであり、これは、原料中へ直接注入することができる。物質CATALYST(登録商標)460HFは、原料に可溶性であるカリウムの有機塩であり(ネオデカン酸カリウム)、従って、水溶液の場合と同様のフラッシング問題のリスクを起こしにくいはずである。従って、高温原料と付着汚染防止の方法との組み合わせに基づく本発明のプロセススキームは、構造制御添加剤(structure control additives)(例:カリウムまたはその他のアルカリ金属/イオン源)などのインプロセスカーボンブラック調節剤の使用と適合性を有するように適応させることができる。
【0089】
本発明によって実行可能となった原料予備加熱の条件および設計により、例えばエネルギー回収の改善、原料コストの節約、カーボンブラックの増加、二酸化炭素排出量の削減、高い原料温度条件での工業的に有用である持続時間にわたるカーボンブラックの安定もしくは連続的な生産、またはこれらの組み合わせ、などの利点および利益を得ることができる。原料の予備加熱を300℃超まで上げることにより、一定の生産条件下にて、質量率基準での硫黄およびNOxの排出レベルの削減を期待し得る。カーボンブラック1kgあたりの排出率は、すべての運転条件下にて低減されることが期待される。排出濃度は、選択される特定の運転条件に応じて異なる。
【0090】
これまでに示した利益および利点に加えて、原料予備加熱による考え得るその他の利益を、本発明に従って実現することができる。熱分解プロセスにおける予備形成シードの結果として、収率上昇の機構を得ることができる。特定の理論に束縛されるものではないが、原料は、予備加熱段階の過程で、ポリ芳香族炭化水素(PAH)の脱水素反応、および非芳香族基の引き抜きを起こし得る。脱水素されたPAHは、元の物質よりも速くシードを形成すると考えられる。実施例において、高圧力が脱水素速度を制御することが示された。本明細書で詳述するように、圧力、滞留時間、および/または温度の制御によって、大型のPAH分子形成を制御することができ、このことが、カーボンブラックシード生成のための制御機構を提供し得る可能性がある。示したように、高温原料熱分解の欠点は、コーキングおよびグリット形成の可能性であり、これらは、高い原料温度条件を適切な付着汚染制御手法と組み合わせた本発明において軽減または予防される。収率上昇の第二の機構は、例えば、周囲ガスの冷却を行わない、カーボンブラック反応器中の予備加熱原料のフラッシュ蒸発によるものであり得る。原料のフラッシュ蒸発により、原料噴霧化のためのバーナー燃焼排ガスの使用が不要となる。カーボンブラック反応器の大気圧に近い圧力中に注入される場合、300℃を超える温度まで予備加熱された原料は、自己蒸発してバーナー燃焼排ガスと混合するのに十分な内部エネルギーを有し得る。
【0091】
いかなるタイプのASTMグレード(例:N100からN1000)またはその他のグレードのカーボンブラックも、本発明によって作製することができる。本発明のプロセスによって作製されたカーボンブラックは、高い予備加熱原料温度および/または本明細書で述べるその他のプロセスパラメータを用いることにより、1つ以上の独特の性質(または有益な性質)および/またはパラメータを有し得る。本発明の方法および装置構成によって作製されたカーボンブラックは、従来の量またはそれより少ない量を用いて、従来のカーボンブラックが用いられるいかなる最終用途にも用いることができ、例えば、インク、顔料、プラスチック製品、封止剤、接着剤、コーティング、弾性製品、トナー、燃料電池、タイヤもしくはその部品、成型部品、電子部品、ケーブル、ワイヤ、またはこれらの一部分などである。
【0092】
本発明により達成可能である1つの利点は、従来の方法で作製されたカーボンブラックと形態および/またはその他のパラメータが同じである市販可能なカーボンブラックの形成である。本発明により、本発明のプロセスを用いることで、形態および/またはその他のパラメータが同じである市販可能なカーボンブラックを作製することができる。所望に応じて、本発明で達成可能である1つの利点は、PAH量が非常に低下されたカーボンブラックの形成であってよい。カーボンブラック中のPAH量が低下されることによってカーボンブラックの性能が変化することはなく、一般的に、高PAH量は、種々の理由によって望ましくない。本発明により、同じ反応器条件および原料を用いた従来の方法によって作製された選択されたカーボンブラック(ただし、原料をカーボンブラック反応器へ供給する前の300℃超の温度までの原料予備加熱は行わない)と同じ形態または本質的に同じ形態(すなわち、OAN、COANなどの1つ以上の形態特性において形態値の変動が±5%以内である)を有する選択されたカーボンブラックを作製することができる。本発明の選択されたカーボンブラックのPAHレベルは、同じ形態を有するが、カーボンブラックを形成するためのカーボンブラック反応器へ入る前の300℃超へのカーボンブラック生成原料の予備加熱を行わずに、同じ反応器条件および原料を用いて作製された選択されたカーボンブラックと比較した場合に、ppmレベルに基づいて10%から50%、20%から50%、または30%から100%以上、重量基準のppmで低減することができる。さらに、カーボンブラックのPAHレベルは、3つの分子量(MW)区分:高MW PAH(重量平均MW250超);中MW PAH(重量平均MW200から250);および低MW PAH(重量平均MW250未満)、に分けることができる。本発明は、高MWおよび/または中MW PAHの量の1つ以上を、同じ形態を有するが、カーボンブラックを形成するためのカーボンブラック反応器へ入る前の300℃超へのカーボンブラック生成原料の予備加熱を行わずに、同じ反応器条件および原料を用いて作製されたカーボンブラックと比較した場合に、ppmレベルに基づいて10%から50%、20%から50%、または30%から100%以上低減することができる。さらに、本発明は、同じ形態を有するが、カーボンブラックを形成するためのカーボンブラック反応器へ入る前の300℃超へのカーボンブラック生成原料の予備加熱を行わずに、同じ反応器条件および原料を用いて作製された選択されたカーボンブラックと比較した場合に、選択されたカーボンブラックの全PAH量からの高MW PAH(最も望ましくないものと考えられる)のパーセントを大きく低減することができる。全PAH量からの高MW PAHのパーセントは、同じ形態を有するが、カーボンブラックを形成するためのカーボンブラック反応器へ入る前の300℃超へのカーボンブラック生成原料の予備加熱を行わずに、同じ反応器条件および原料を用いて作製された選択されたカーボンブラックと比較した場合に、選択されたカーボンブラックに対するppmレベルに基づいて10%から50%、20%から50%、または30%から100%以上低減することができる。上記の特定は、カーボンブラックを形成するためのカーボンブラック反応器へ入る前の300℃超へのカーボンブラック生成原料の予備加熱を行わないが、それ以外は同じ反応器条件および原料を用いて作製された選択されたカーボンブラックに対して、本発明を用いて作製された選択されたカーボンブラックを比較する実験に基づいて行われた。これは、本発明によって達成可能である重要な利点である。
【0093】
本発明は、いかなる順序でもよく、および/またはいかなる組み合わせでもよい、以下の態様/実施形態/特徴を含む:
1.本発明は、カーボンブラックを作製するための方法に関し、その方法は:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入すること;
少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を少なくとも1つのヒーターへ供給すること;
予備加熱カーボンブラック生成原料を提供するための、前記少なくとも1つのヒーター中の前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の約300℃超である第二の温度までの予備加熱であって、ここで、(a)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し、速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出され、ならびに(b)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱;
前記予備加熱カーボンブラック生成原料の、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点への供給であって、ここで、前記予備加熱カーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への導入地点直前までの第二の原料滞留時間を有し;ならびにここで、前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて120分以下である、供給;
前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱カーボンブラック生成原料を加熱ガス流と組み合わせ、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成すること;ならびに、
反応流中のカーボンブラックを回収(例:冷却)すること、
を含む。
2.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約10バール超の圧力を有するように加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
3.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約20バール超の圧力を有するように加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
4.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約20バールから約180バールの圧力まで加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
5.前記速度が、少なくとも約1m/秒である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
6.前記速度が、少なくとも約1.6m/秒である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
7.前記カーボンブラック生成原料が、デカント油、コールタール生成物、エチレンクラッカー残渣、アスファルテン含有油、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
8.前記カーボンブラック生成原料が、約160℃から約500℃の初期沸点を有する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
9.少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の前記予備加熱が、約10kW/m2超の平均熱流束で運転される熱交換器を有する前記ヒーター中の前記カーボンブラック生成原料を加熱することを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
10.前記予備加熱の少なくとも一部が、前記カーボンブラック反応器、またはその他のカーボンブラック反応器、またはその両方によって発生される熱によって少なくとも部分的に提供される熱を有する前記少なくとも1つのヒーター中で行われる、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
11.前記第一の滞留時間および前記第二の滞留時間が、合わせて60分未満である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
12.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器の少なくとも一部と熱交換状態にある、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
13.前記少なくとも1つのヒーターが、冷却器の下流の前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と接触し、前記少なくとも1つのヒーターが、その第一の側が、前記反応流によって加熱され、その逆の側が、前記カーボンブラック生成原料と接触する壁を有する熱交換器を含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
14.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と熱交換する熱交換器を含み、熱交換器中を流れる流動性熱キャリアは、加熱され、加熱された流動性熱キャリアが、反応器の外部に配置されて、流動性熱キャリアの熱を原料と交換して前記カーボンブラック生成原料を加熱するよう操作可能である前記少なくとも1つのヒーター中を通る、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
15.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器、または異なるカーボンブラック反応器、またはその両方からのカーボンブラックテールガスを少なくとも部分的に熱源として、カーボンブラック生成原料を加熱する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
16.加熱ガス流の導入が、プラズマ加熱可能ガス流をプラズマヒーター中にてプラズマ加熱し、加熱ガス流の少なくとも一部を提供することを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
17.前記少なくとも1つのヒーターのカーボンブラック生成原料と接触する壁および前記予備加熱カーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインの内壁に、非触媒性表面を提供することをさらに含み、ここで、表面は、炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
18.前記供給が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通しての前記予備加熱カーボンブラック生成原料のフィードを含み、および前記方法が、少なくとも1つのカーボンブラック生成原料供給ラインを通して、炭素に対する酸化剤を含むパージガスを定期的にフィードすることをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
19.前記供給が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通しての前記予備加熱カーボンブラック生成原料のフィードを含み、および前記方法が、カーボンブラック生成原料の少なくとも部分的なフラッシングと共に予備加熱カーボンブラック生成原料をカーボンブラック反応器へ注入することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
20.少なくとも約12時間にわたって、反応器中でカーボンブラックが連続的に形成されるように、予備加熱カーボンブラック生成原料および加熱ガス流をカーボンブラック反応器中で組み合わせることをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
21.カーボンブラックを作製するための方法であって、その方法は:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入すること;
360℃未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を少なくとも1つのヒーターへ供給すること;
予備加熱カーボンブラック生成原料を提供するための、前記少なくとも1つのヒーター中の前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の約360℃から約850℃である第二の温度までの予備加熱であって、ここで、(a)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し、速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出され、ならびに(b)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱;
前記予備加熱カーボンブラック生成原料の、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点への供給であって、ここで、前記予備加熱カーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への導入地点直前までの第二の原料滞留時間を有し;ならびにここで、前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて約10秒から約120分である、供給;
前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱カーボンブラック生成原料を加熱ガス流と組み合わせ、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成すること;ならびに、
反応流中のカーボンブラックを回収(例:冷却)すること、
を含む、方法。
22.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約20バール超の圧力を有するように加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
23.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約30バール超の圧力を有するように加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
24.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約30バールから約180バールの圧力まで加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
25.前記速度が、少なくとも約1m/秒である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
26.前記速度が、少なくとも約1.6m/秒である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
27.前記カーボンブラック生成原料が、デカント油、コールタール生成物、エチレンクラッカー残渣、アスファルテン含有油、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
28.前記カーボンブラック生成原料が、約160℃から約500℃の初期沸点を有する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
29.少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の前記予備加熱が、約20kW/m2超の平均熱流束で運転される熱交換器を有する前記ヒーター中の前記カーボンブラック生成原料を加熱することを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
30.前記予備加熱の少なくとも一部が、前記カーボンブラック反応器、またはその他のカーボンブラック反応器、またはその両方によって発生される熱によって少なくとも部分的に提供される熱を有する前記少なくとも1つのヒーター中で行われる、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
31.前記第一の滞留時間および前記第二の滞留時間が、合わせて60分未満である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
32.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器の少なくとも一部と熱交換状態にある、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
33.前記少なくとも1つのヒーターが、冷却器の下流の前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と接触し、前記少なくとも1つのヒーターが、その第一の側が、前記反応流によって加熱され、その逆の側が、前記カーボンブラック生成原料の前に前記カーボンブラック生成原料と接触する壁を有する熱交換器を含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
34.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と熱交換する熱交換器を含み、熱交換器中を流れる流動性熱キャリアは、加熱され、加熱された流動性熱キャリアが、反応器の外部に配置されて、流動性熱キャリアの熱を原料と交換して前記カーボンブラック生成原料を加熱するよう操作可能である前記少なくとも1つのヒーター中を通る、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
35.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器、または異なるカーボンブラック反応器、またはその両方からのカーボンブラックテールガスを少なくとも部分的に熱源として、カーボンブラック生成原料を加熱する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
36.加熱ガス流の導入が、プラズマ加熱可能ガス流をプラズマヒーター中にてプラズマ加熱し、加熱ガス流の少なくとも一部を提供することを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
37.前記少なくとも1つのヒーターのカーボンブラック生成原料と接触する壁および前記予備加熱カーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインの内壁に、非触媒性表面を提供することをさらに含み、ここで、表面は、炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
38.前記供給が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通しての前記予備加熱カーボンブラック生成原料のフィードを含み、および前記方法が、少なくとも1つのカーボンブラック生成原料供給ラインを通して、炭素に対する酸化剤を含むパージガスを定期的にフィードすることをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
39.前記供給が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通しての前記予備加熱カーボンブラック生成原料のフィードを含み、および前記方法が、カーボンブラック生成原料の少なくとも部分的なフラッシングと共に予備加熱カーボンブラック生成原料をカーボンブラック反応器へ注入することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
40.少なくとも約12時間にわたって、反応器中でカーボンブラックが連続的に形成されるように、予備加熱カーボンブラック生成原料および加熱ガス流をカーボンブラック反応器中で組み合わせることをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
41.カーボンブラックを作製するための方法であって、その方法は:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入すること;
450℃未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を少なくとも1つのヒーターへ供給すること;
予備加熱カーボンブラック生成原料を提供するための、前記少なくとも1つのヒーター中の前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の約450℃超である第二の温度までの予備加熱であって、ここで、(a)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し、速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出され、ならびに(b)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、10秒から約120分である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱;
前記予備加熱カーボンブラック生成原料の、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点への供給であって、ここで、前記予備加熱カーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への導入地点直前までの第二の原料滞留時間を有し;ならびにここで、前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて120分以下である、供給;
前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱カーボンブラック生成原料を加熱ガス流と組み合わせ、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成すること;ならびに、
反応流中のカーボンブラックを回収(例:冷却)すること、
を含む、方法。
42.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約20バールから約180バールの圧力を有するように加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
43.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約30バールから約180バールの圧力を有するように加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
44.前記カーボンブラック生成原料を、前記少なくとも1つのヒーターへ入る前に、約40バールから約180バールの圧力まで加圧することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
45.前記速度が、少なくとも約1m/秒である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
46.前記速度が、少なくとも約1.6m/秒である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
47.前記カーボンブラック生成原料が、デカント油、コールタール生成物、エチレンクラッカー残渣、アスファルテン含有油、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
48.前記カーボンブラック生成原料が、約160℃から約500℃の初期沸点を有する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
49.少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の前記予備加熱が、約20kW/m2から約150kW/m2の平均熱流束で運転される熱交換器を有する前記ヒーター中の前記カーボンブラック生成原料を加熱することを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
50.前記予備加熱の少なくとも一部が、前記カーボンブラック反応器、またはその他のカーボンブラック反応器、またはその両方によって発生される熱によって少なくとも部分的に提供される熱を有する前記少なくとも1つのヒーター中で行われる、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
51.前記第一の滞留時間および前記第二の滞留時間が、合わせて60分未満である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
52.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器の少なくとも一部と熱交換状態にある、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
53.前記少なくとも1つのヒーターが、冷却器の下流の前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と接触し、前記少なくとも1つのヒーターが、その第一の側が、前記反応流によって加熱され、その逆の側が、前記カーボンブラック生成原料の前に前記カーボンブラック生成原料と接触する壁を有する熱交換器を含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
54.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と熱交換する熱交換器を含み、熱交換器中を流れる流動性熱キャリアは、加熱され、加熱された流動性熱キャリアが、反応器の外部に配置されて、流動性熱キャリアの熱を原料と交換して前記カーボンブラック生成原料を加熱するよう操作可能である前記少なくとも1つのヒーター中を通る、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
55.前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器、または異なるカーボンブラック反応器、またはその両方からのカーボンブラックテールガスを少なくとも部分的に熱源として、カーボンブラック生成原料を加熱する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
56.加熱ガス流の導入が、プラズマ加熱可能ガス流をプラズマヒーター中にてプラズマ加熱し、加熱ガス流の少なくとも一部を提供することを含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
57.前記少なくとも1つのヒーターのカーボンブラック生成原料と接触する壁および前記予備加熱カーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインの内壁に、非触媒性表面を提供することをさらに含み、ここで、表面は、炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
58.前記供給が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通しての前記予備加熱カーボンブラック生成原料のフィードを含み、および前記方法が、少なくとも1つのカーボンブラック生成原料供給ラインを通して、炭素に対する酸化剤を含むパージガスを定期的にフィードすることをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
59.前記供給が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通しての前記予備加熱カーボンブラック生成原料のフィードを含み、および前記方法が、カーボンブラック生成原料の少なくとも部分的なフラッシングと共に予備加熱カーボンブラック生成原料をカーボンブラック反応器へ注入することをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
60.少なくとも約12時間にわたって、反応器中でカーボンブラックが連続的に形成されるように、予備加熱カーボンブラック生成原料および加熱ガス流をカーボンブラック反応器中で組み合わせることをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
61.カーボンブラックを作製するための方法であって、その方法は:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入すること;
300℃未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、10バール超である第一の圧力にて少なくとも1つのヒーターへ供給すること;
予備加熱カーボンブラック生成原料を提供するための、前記少なくとも1つのヒーター中の前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の約300℃超である第二の温度までの予備加熱であって、ここで、(a)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーター中にて、第一の圧力および第二の圧力の際に原料が通過する断面積が同一であるとする仮定に基づいて算出される、前記第一の圧力よりも低いかほぼ同じである第二の圧力を有し、ならびに(b)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱;
前記予備加熱カーボンブラック生成原料の、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点への供給であって、ここで、前記予備加熱カーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への導入地点直前までの第二の原料滞留時間を有し;ならびにここで、前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて120分以下である、供給;
前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱カーボンブラック生成原料を加熱ガス流と組み合わせ、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成すること;ならびに、
反応流中のカーボンブラックを回収(例:冷却)すること、
を含む、方法。
62.カーボンブラックを作製するための方法であって、その方法は:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入すること;
300℃未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、10バール超である第一の圧力にて少なくとも1つのヒーターへ供給すること;
予備加熱カーボンブラック生成原料を提供するための、前記少なくとも1つのヒーター中の前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の約300℃超である第二の温度までの予備加熱であって、ここで、(a)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、i)前記少なくとも1つのヒーター中にて、前記第一の圧力よりも低いかほぼ同じである第二の圧力を有し、ならびにii)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し、速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出され、ここで、i)は、第一の圧力および第二の圧力の際に原料が通過する断面積が同一であることに基づいて算出される、予備加熱;
前記予備加熱カーボンブラック生成原料を、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給すること;
前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱カーボンブラック生成原料を加熱ガス流と組み合わせ、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成すること;ならびに、
反応流中のカーボンブラックを回収(例:冷却)すること、
を含む、方法。
63.カーボンブラックを作製するための装置であって、その装置は:
反応器であって、加熱ガス流と少なくとも1つのカーボンブラック生成原料とを組み合わせて、反応器中にカーボンブラックが形成される反応流を形成するための、反応器;
カーボンブラック生成原料を反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給して、原料を加熱ガス流と組み合わせるための少なくとも1つの原料供給ライン;
少なくとも1つの原料供給ラインにて供給されたカーボンブラック生成原料を、少なくとも約300℃の温度まで予備加熱するように操作可能である少なくとも1つの原料ヒーター;
原料が少なくとも約300℃まで予備加熱される前に、カーボンブラック生成原料を約10バール超の圧力まで加圧するように操作可能であり、および少なくとも1つの原料ヒーター中に供給される原料の原料速度を、少なくとも0.2m/秒とするためである少なくとも1つのポンプであって、ここで、速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出される、ポンプ;ならびに、
所望に応じて含んでいてよい、反応流中のカーボンブラックを冷却するための冷却器、
を含み;
ここで、前記装置は、少なくとも約300℃まで予備加熱された原料が反応器へ導入される前の、少なくとも1つの原料ヒーターおよび少なくとも1つの原料供給ライン中での原料滞留時間が、約120分未満となるようにさらに操作可能である、装置。
64.少なくとも1つの原料ヒーターが、約10kW/m2超の平均熱流束にてカーボンブラック生成原料を加熱するように操作可能である熱交換器を含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
65.少なくとも1つの原料ヒーターが、反応流によって接触可能であるように反応器内に配置され、原料を少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
66.少なくとも1つの原料ヒーターが、反応器の少なくとも一部と接触して配置され、原料を少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
67.少なくとも1つの原料ヒーターが、冷却器の下流の反応器内に配置された熱交換器を含み、ここで、前記熱交換器は、その第一の側が、反応流によって加熱されるように適合され、その逆の側が、原料が少なくとも1つの原料供給ラインへ供給される前に原料と接触するように適合された壁を含み、ここで、原料は、熱交換器中にて少なくとも300℃の温度へ加熱可能である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
68.反応器内に反応流と接触可能であるように配置された流動性熱キャリアのための熱交換器をさらに含み、および少なくとも1つの原料ヒーターが、反応器の外部にあって、熱交換器から出た流動性熱キャリアの熱を原料ヒーター中の原料と交換して原料を少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
69.少なくとも1つの原料ヒーターが、反応器のテールガス流からの熱を交換して原料を少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
70.プラズマ加熱可能ガス流を加熱して加熱ガス流の少なくとも一部を提供するように操作可能であるプラズマヒーターをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
71.原料ヒーターの原料が接触する壁、および少なくとも1つの原料供給ラインの原料が接触する内壁に、非触媒性表面をさらに含み、ここで、表面は、炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
72.原料ヒーターの原料が接触する壁、および少なくとも1つの原料供給ラインの原料が接触する内壁に、非触媒性セラミックライニングをさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
73.少なくとも1つの原料供給ラインをパージガスで定期的にパージするように操作可能である、炭素に対する酸化剤を含む少なくとも1つのパージガス源、および少なくとも1つの原料供給ライン上の少なくとも1つのパージガス導入地点をさらに含む、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
74.前記反応器が、原料と加熱ガス流とを組み合わせて、少なくとも約12時間、反応器中にてカーボンブラックを連続的に形成するように操作可能である、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の装置。
75.前記予備加熱が、前記少なくとも1つのヒーター中、および/または前記カーボンブラック反応器への前記供給の前にて、蒸気膜の形成を回避する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
76.前記予備加熱および/または前記供給が、定常状態での運転条件に基づいて、急激な圧力低下を起こさない、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法。
77.前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載の方法によって形成されるカーボンブラック。
78.前記カーボンブラックが、原料の予備加熱を行わない方法で作製された同じ形態を有するカーボンブラックと比較して、少なくとも10%少ない量のPAHを有する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載のカーボンブラック。
79.前記カーボンブラックが、予備加熱を行わない方法で作製された同じ形態を有するカーボンブラックと比較して、全PAH量に基づいて少なくとも10%少ない高MW PAH量の割合を有する、前述のまたは以下のいずれかの実施形態/特徴/態様に記載のカーボンブラック。
80.カーボンブラックを作製するための方法であって、その方法は:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入すること;
少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を少なくとも1つのヒーターへ供給すること;
予備加熱カーボンブラック生成原料を提供するための、前記少なくとも1つのヒーター中の前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の約300℃超である第二の温度までの予備加熱であって、ここで、(a)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し、速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出され、ならびに(b)少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱;
前記予備加熱カーボンブラック生成原料の、カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点への供給であって、ここで、前記予備加熱カーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への導入地点直前までの第二の原料滞留時間を有し;ならびにここで、前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて120分以下であり;ここで、前記予備加熱は、前記少なくとも1つのヒーター中、または前記カーボンブラック反応器への前記供給の前にて、蒸気膜の形成を回避するのに十分な圧力で行われる、供給;
前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱カーボンブラック生成原料を加熱ガス流と組み合わせ、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成すること;ならびに、
反応流中のカーボンブラックを回収(例:冷却)すること、
を含む。
【0094】
本発明は、文章および/または段落中に示される、上記および/または以下の、このような種々の特徴または実施形態のいずれの組み合わせも含んでよい。本明細書で開示される特徴のいずれの組み合わせも、本発明の一部分であると見なされるものであり、組み合わせ可能である特徴に関して限定されることを意図していない。
【0095】
本発明は、本発明の代表例であることを意図するものである以下の実施例によってさらに明らかにされる。
【実施例】
【0096】
実施例1
本発明の示した付着汚染制御手法によって500℃および700℃にて安定で持続的な運転が可能であるカーボンブラック作製スキームにおいて、原料温度215℃、500℃、および700℃を用いた2つのグレードのカーボンブラック(AおよびB)に対して、コンピュータモデル化を用いた原料コスト節約の可能性の推計を行った。プロセススキームのモデル化には、Aspen Plusコンピュータモデル化プログラムを用い、業界で許容される慣行に従う質量およびエネルギーバランスならびに反応化学についての方法、ならびに仮定を用いた。このモデル化に用いたモデルプロセスのフローダイアグラムは、図5に示すものに類似している。図5は、グレードAおよび原料予備加熱温度500℃に対するプロセススキームを示し、この一般的なプロセスレイアウトは、これ以外にも、その他のモデル化された原料温度とグレードの組み合わせに適用される。図5に詳細に示されるプロセススキームは、全般的に、図1に示されるプロセススキームと類似している。図5に示されるように、原料は、第一の冷却および第二の冷却位置の間にて、カーボンブラック反応器のスモークの熱を用いて加熱される。計算に用いた原料の熱容量を図6に示す。原料は、非反応性であると仮定し;熱分解反応の吸熱性の影響は、原料の熱容量に含まれない。原料の予備加熱温度500℃および700℃の2つのケースについてモデル化を行い、グレードAおよびBについてベースラインケース(215℃の予備加熱)と比較した。
【0097】
このモデル化に用いたグレードAおよびBに適用可能である液体カーボン生成原料は、デカント油およびデカント油/コールタール混合物であった。グレードAおよびBの液体原料は、以下の組成を有していた:
【0098】
グレードA デカント油:
高位発熱量[J/kg]:39,524,446
元素分析[質量%]:
灰分 0
炭素 88.68
水素 6.92
窒素 0.31
塩素 0
硫黄 3.86
酸素 0.23
【0099】
グレードB デカント油/コールタール:
流速[kg/時間]:3,562
生成熱[J/kg]:50,692
高位発熱量[J/kg]:39,878,687
元素分析[質量%]:
灰分 0
炭素 88.62
水素 7.40
窒素 0.31
塩素 0
硫黄 3.44
酸素 0.23
コールタール[質量%]:30.0
【0100】
表2〜7は、予備加熱温度500℃および700℃の各温度におけるカーボンブラックの各グレードについて、モデル化の計算に用いた生データを示す。モデル化の計算結果も、これらの表に示す。
【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【0107】
結果から示されるように、より低い従来の原料温度215℃での処理と比較して、原料が500℃まで予備加熱される場合は10%超、原料が700℃まで予備加熱される場合は20%超の原料コストの節約を、原料の付着汚染のない安定なモードで得ることができる。表7中の「CB収率」および他のいくつかのデータは、従来の原料温度215℃をベースライン(100%)として用い、より高い温度で予備加熱された原料をこのベースラインと比較している。示されるように、本発明の付着汚染制御手法により、工業的スケールでの運転を含め、このような高い原料温度での運転が可能となる。表7において、反応器エネルギー効率(REE)は、原料(FS)およびバーナー燃料および電気エネルギーの熱量を含むまとめたエネルギーインプットに対する生成された物質の熱量の比として定義され、REE = (HHV‐CB)/(HHV‐原料 + HHV‐天然ガス + kWh/kg‐CB電気エネルギー)、である。表7において、バーナー化学量論性は、バーナーの化学量論的空気流(バーナー燃料の完全な燃焼に要する空気流)に対するバーナー空気流のパーセントとして定義される。
【0108】
このモデルで示される利点は、N100からN1000などのいずれかのASTMグレードなど、いずれのカーボンブラックによっても達成されるであろう。モデル化は、同じ利点を示すであろう。
【0109】
実施例2
これらの例では、9回の試験運転を行い、以下でさらに説明する種々の原料サンプルを用いたカーボンブラック生成原料の70℃からおよそ500℃への加熱の例を示す。種々の運転パラメータを表8に示し、さらに、用いた原料の種類も表8に示し、原料の詳細は表9に示す。表8から分かるように、本発明に従うことで、カーボンブラック生成原料は、500℃以上のオーダーの温度まで予備加熱することができ、それでも、カーボンブラックを良好に連続的に作製することができる。試験番号2〜5、8、および9で形成されたカーボンブラックについて、カーボンブラックの分析を行い、これらのカーボンブラックは、形態、純度などに基づいて、カーボンブラックとして商業的な使用が許容されることが明らかとなった。本発明で作製されたカーボンブラックの1つの利点は、カーボンブラックのPAHレベルが、同じ形態を有する従来のカーボンブラックよりも約50%少ないPAH(ppmレベルで)のオーダーであることが明らかとなった。従って、本発明の1つのさらなる利点は、PAH量が非常に低減された商業的に許容されるカーボンブラックを形成することができることである。PAHの測定は、本技術分野で理解されるPAH‐20の測定に基づいて行った。
【0110】
表8において以下にさらに示されるように、「急激な圧力低下」の欄の記載は、蒸気膜および/またはコーキングが形成していたか、もしくは形成するところであったか、またはそうでなかったかを示している。「なし」と記載される場合、これは、急激な圧力低下が検出されなかったことを意味し、実際、ヒーターラインまたは供給ラインにコークス形成および蒸気膜形成を起こすことなく商業的に許容されるカーボンブラックが作製されたことから、この試験運転は成功と見なされた。急激な圧力低下の欄の記載が「あり」の場合、これは、カーボンブラックの製造中に定常運転条件からの急速な圧力低下があったことを示すものであり、これは、蒸気膜形成が発生しており、装置のコーキングが不可避であることを明らかに示すものであった。実際、この理解を確認するための試験番号1において、急激な圧力低下が試験番号1で見られており、最終的には、原料ヒーターの部品を分析すると、ヒーター中のフィードラインにコーキングが目視で検出され、急激な圧力低下はコーキング形成が不可避であることを示すものであることが確認された。
【0111】
試験例2〜5、8、および9は、高温の原料を用いてカーボンブラックを作製し、さらに蒸気膜およびコーキングの形成を回避し、商業的に許容されるカーボンブラック製品につなげることができることを明らかに示している。
【0112】
急激な圧力低下が確認され、試験番号1ではコーキングが発生した、本発明を用いることによる試験例1、6、および7において、これらの試験運転は、ヒーター入口圧力の調節もしくはヒーター入口圧力の上昇、および/または油入口速度の上昇、および/またはヒーター中滞留時間の短縮によって、急激な圧力低下を、従って、蒸気膜および/またはコーキングの形成を回避するように調節することが可能である。ヒーター入口圧力を、例えば10%以上上昇させることにより、これは、カーボンブラック生成原料の予備加熱の間にヒーター中にて蒸気が形成されることを回避する効果を有する。本質的に、ヒーター入口圧力の調節(通常は圧力の上昇)、油入口速度の上昇、および/または滞留時間の短縮のいずれの組み合わせによっても、蒸気形成の低減および/または蒸気形成の排除が可能であり、従って急激な圧力低下を回避することができる。
【0113】
以下の例の中で、例2〜5、8、および9について、従来の原料温度215℃を用いて作製されたカーボンブラックをベースライン(100%)として比較し、より高い温度で予備加熱した原料をこのベースラインと比較した場合に、カーボンブラック収率(重量%による)の改善が得られた。これらの例では、4%から8%の(重量%による)カーボンブラック収率の改善が見られた。さらに、本発明の例は、従来の原料温度215℃を用いて作製されたカーボンブラックをベースライン(100%)として比較し、より高い温度で予備加熱した原料に対して使用されたエネルギーをこのベースラインと比較した場合に、7%から11%のエネルギーの節約が得られた。従って、本発明は、カーボンブラックのより高い収率を提供し、それを行うために使用されるエネルギーを低減するものであり、これは、従来のプロセスよりも優れており、予想外でもある。
【表8】

* コーキングの存在を確認
** ヒーター/反応器への損傷を回避するために実験をすぐに中止
【表9】

【0114】
出願者らは、本開示で引用されるすべての参考文献の全内容を特に組み込むものである。さらに、量、濃度、またはその他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または上側の好ましい値と下側の好ましい値のリストのいずれかとして与えられる場合、範囲が別々に開示されるかどうかに関わらず、これは、範囲のいずれの上限または上側の好ましい値、および範囲のいずれの下限または下側の好ましい値のいずれの対から形成される範囲もそのすべてを具体的に開示するものとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書にて挙げられる場合、特に断りのない限り、その範囲は、その端点、ならびにその範囲内のすべての整数および分数を含むことを意図している。範囲が定められる場合、本発明の範囲は、その示された具体的な数値に限定されることを意図していない。
【0115】
本発明のその他の実施形態は、本明細書の考察、および本明細書で開示される本発明の実践から、当業者には明らかであろう。本明細書および例は、単なる例示として見なされるものであり、本発明の実際の範囲および趣旨は、以下の請求項およびその均等物によって示されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを作製するための方法であって:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入する工程;
少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を少なくとも1つのヒーターへ供給する工程;
予備加熱したカーボンブラック生成原料を提供するために、前記少なくとも1つのヒーター中で前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、約300℃超である第二の温度に予備加熱する工程であって、(a)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し(速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出される)、ならびに(b)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱工程;
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を、前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点に供給する工程であって、前記予備加熱したカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への前記導入地点直前までに約120分未満である第二の原料滞留時間を有し、且つ前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて120分以下であり、前記予備加熱工程により、前記少なくとも1つのヒーター中にて、または前記カーボンブラック反応器への前記供給の前に、蒸気膜が形成されることが回避される、供給工程;
前記カーボンブラック反応器への前記少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記加熱ガス流と組み合わせて、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成する工程;ならびに、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約10バール超の圧力を有するように前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約20バール超の圧力を有するように前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約20バールから約180バールの圧力に前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記速度が、少なくとも約1m/秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記速度が、少なくとも約1.6m/秒である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カーボンブラック生成原料が、デカント油、コールタール生成物、エチレンクラッカー残渣、アスファルテン含有油、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カーボンブラック生成原料が、約160℃から約500℃の初期沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の前記予備加熱工程が、約10kW/m2超の平均熱流束で運転される熱交換器を備えた前記ヒーター中で、前記カーボンブラック生成原料を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記予備加熱工程の少なくとも一部が、前記カーボンブラック反応器、またはその他のカーボンブラック反応器、またはその両方によって発生される熱によって少なくとも部分的に提供される熱を有する前記少なくとも1つのヒーター中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の滞留時間および前記第二の滞留時間が、合わせて60分未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器の少なくとも一部と熱交換状態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのヒーターが、冷却器の下流の前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と接触し、前記少なくとも1つのヒーターが、その第一の側が、前記反応流によって加熱され、その逆の側が、前記カーボンブラック生成原料と接触する壁を有する熱交換器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と熱交換する熱交換器を含み、前記熱交換器中を流れる流動性熱キャリアが加熱され、前記加熱された流動性熱キャリアが、前記反応器の外部に配置され且つ前記流動性熱キャリアの熱を前記原料と交換して前記カーボンブラック生成原料を加熱するよう操作可能である前記少なくとも1つのヒーター中を通る、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器、または異なるカーボンブラック反応器、またはその両方からのカーボンブラックテールガスを少なくとも部分的に熱源として、前記カーボンブラック生成原料を加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱ガス流の導入工程が、プラズマ加熱可能ガス流をプラズマヒーター中にてプラズマ加熱し、前記加熱ガス流の少なくとも一部を提供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのヒーターのカーボンブラック生成原料と接触する壁および前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインの内壁に、非触媒性表面を提供することをさらに含み、前記表面が炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記供給工程が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通して前記予備加熱したカーボンブラック生成原料をフィードすることを含み、および前記方法が、前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の供給ラインを通して、炭素に対する酸化剤を含むパージガスを定期的にフィードすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記供給工程が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通して前記予備加熱したカーボンブラック生成原料をフィードすることを含み、および前記方法が、前記カーボンブラック生成原料の少なくとも部分的なフラッシングと共に前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ注入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料および前記加熱ガス流を前記カーボンブラック反応器中で組み合わせて、少なくとも約12時間にわたって、前記反応器中でカーボンブラックを連続的に形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
カーボンブラックを作製するための方法であって:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入する工程;
360℃未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を少なくとも1つのヒーターへ供給する工程;
予備加熱したカーボンブラック生成原料を提供するために、前記少なくとも1つのヒーター中で前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を約360℃から約850℃の第二の温度に予備加熱する工程であって、(a)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し(速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出される)、ならびに(b)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱工程;
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を、前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点に供給する工程であって、前記予備加熱したカーボンブラック生成原料は、前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への前記導入地点直前までに約120分未満である第二の原料滞留時間を有し、且つ前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて約10秒から約120分であり、前記予備加熱工程により、前記少なくとも1つのヒーター中にて、または前記カーボンブラック反応器への前記供給の前に、蒸気膜が形成されることが回避される、供給工程;
前記カーボンブラック反応器への前記少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記加熱ガス流と組み合わせて、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成する工程;ならびに、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収する工程、
を含む、方法。
【請求項22】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約20バール超の圧力を有するように前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約30バール超の圧力を有するように前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約30バールから約180バールの圧力に前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記速度が、少なくとも約1m/秒である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記速度が、少なくとも約1.6m/秒である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記カーボンブラック生成原料が、デカント油、コールタール生成物、エチレンクラッカー残渣、アスファルテン含有油、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記カーボンブラック生成原料が、約160℃から約500℃の初期沸点を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の前記予備加熱工程が、約20kW/m2超の平均熱流束で運転される熱交換器を備えた前記ヒーター中で、前記カーボンブラック生成原料を加熱することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記予備加熱工程の少なくとも一部が、前記カーボンブラック反応器、またはその他のカーボンブラック反応器、またはその両方によって発生される熱によって少なくとも部分的に提供される熱を有する前記少なくとも1つのヒーター中で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記第一の滞留時間および前記第二の滞留時間が、合わせて60分未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器の少なくとも一部と熱交換状態にある、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つのヒーターが、冷却器の下流の前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と接触し、前記少なくとも1つのヒーターが、その第一の側が、前記反応流によって加熱され、その逆の側が、前記カーボンブラック生成原料の前に前記カーボンブラック生成原料と接触する壁を有する熱交換器を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と熱交換する熱交換器を含み、前記熱交換器中を流れる流動性熱キャリアが加熱され、前記加熱された流動性熱キャリアが、前記反応器の外部に配置され且つ前記流動性熱キャリアの熱を前記原料と交換して前記カーボンブラック生成原料を加熱するよう操作可能である前記少なくとも1つのヒーター中を通る、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器、または異なるカーボンブラック反応器、またはその両方からのカーボンブラックテールガスを少なくとも部分的に熱源として、前記カーボンブラック生成原料を加熱する、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記加熱ガス流の導入工程が、プラズマ加熱可能ガス流をプラズマヒーター中にてプラズマ加熱し、前記加熱ガス流の少なくとも一部を提供することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つのヒーターのカーボンブラック生成原料と接触する壁および前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインの内壁に、非触媒性表面を提供することをさらに含み、前記表面が炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記供給工程が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通して前記予備加熱カーボンブラック生成原料をフィードすることを含み、および前記方法が、前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の供給ラインを通して、炭素に対する酸化剤を含むパージガスを定期的にフィードすることをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
前記供給工程が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通して前記予備加熱したカーボンブラック生成原料をフィードすることを含み、および前記方法が、前記カーボンブラック生成原料の少なくとも部分的なフラッシングと共に前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ注入することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料および前記加熱ガス流を前記カーボンブラック反応器中で組み合わせて、少なくとも約12時間にわたって、前記反応器中でカーボンブラックを連続的に形成することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
カーボンブラックを作製するための方法であって:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入する工程;
450℃未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を少なくとも1つのヒーターへ供給する工程;
予備加熱したカーボンブラック生成原料を提供するために、前記少なくとも1つのヒーター中で前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を約450℃超である第二の温度に予備加熱する工程であって、(a)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料が、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し(速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出される)、ならびに(b)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、10秒から約120分である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱工程;
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を、前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点に供給する工程であって、前記予備加熱したカーボンブラック生成原料が、前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への前記導入地点直前までに約120分未満である第二の原料滞留時間を有し、且つ前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて120分以下であり、前記予備加熱工程により、前記少なくとも1つのヒーター中にて、または前記カーボンブラック反応器への前記供給の前に、蒸気膜が形成されることが回避される、供給工程;
前記カーボンブラック反応器への前記少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記加熱ガス流と組み合わせて、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成する工程;ならびに、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収する工程、
を含む、方法。
【請求項42】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約20バールから約180バールの圧力を有するように前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約30バールから約180バールの圧力を有するように前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記カーボンブラック生成原料が前記少なくとも1つのヒーターに入る前に、約40バールから約180バールの圧力に前記カーボンブラック生成原料を加圧することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記速度が、少なくとも約1m/秒である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記速度が、少なくとも約1.6m/秒である、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記カーボンブラック生成原料が、デカント油、コールタール生成物、エチレンクラッカー残渣、アスファルテン含有油、またはこれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記カーボンブラック生成原料が、約160℃から約500℃の初期沸点を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の前記予備加熱工程が、約20kW/m2から約150kW/m2の平均熱流束で運転される熱交換器を備えた前記ヒーター中で、前記カーボンブラック生成原料を加熱することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記予備加熱工程の少なくとも一部が、前記カーボンブラック反応器、またはその他のカーボンブラック反応器、またはその両方によって発生される熱によって少なくとも部分的に提供される熱を有する前記少なくとも1つのヒーター中で行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記第一の滞留時間および前記第二の滞留時間が、合わせて60分未満である、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器の少なくとも一部と熱交換状態にある、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つのヒーターが、冷却器の下流の前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と接触し、前記少なくとも1つのヒーターが、その第一の側が、前記反応流によって加熱され、その逆の側が、前記カーボンブラック生成原料の前に前記カーボンブラック生成原料と接触する壁を有する熱交換器を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器中の前記反応流と熱交換する熱交換器を含み、前記熱交換器中を流れる流動性熱キャリアが加熱され、前記加熱された流動性熱キャリアが、前記反応器の外部に配置され且つ前記流動性熱キャリアの熱を前記原料と交換して前記カーボンブラック生成原料を加熱するよう操作可能である前記少なくとも1つのヒーター中を通る、請求項41に記載の方法。
【請求項55】
前記少なくとも1つのヒーターが、前記カーボンブラック反応器、または異なるカーボンブラック反応器、またはその両方からのカーボンブラックテールガスを少なくとも部分的に熱源として、前記カーボンブラック生成原料を加熱する、請求項41に記載の方法。
【請求項56】
前記加熱ガス流の導入工程が、プラズマ加熱可能ガス流をプラズマヒーター中にてプラズマ加熱し、前記加熱ガス流の少なくとも一部を提供することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つのヒーターのカーボンブラック生成原料と接触する壁および前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ供給する少なくとも1つの原料供給ラインの内壁に、非触媒性表面を提供することをさらに含み、前記表面が炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である、請求項41に記載の方法。
【請求項58】
前記供給工程が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通して前記予備加熱したカーボンブラック生成原料をフィードすることを含み、および前記方法が、前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料の供給ラインを通して、炭素に対する酸化剤を含むパージガスを定期的にフィードすることをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項59】
前記供給工程が、前記カーボンブラック反応器へ供給を行う少なくとも1つの原料供給ラインを通して前記予備加熱カーボンブラック生成原料をフィードすることを含み、および前記方法が、前記カーボンブラック生成原料の少なくとも部分的なフラッシングと共に前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記カーボンブラック反応器へ注入することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項60】
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料および前記加熱ガス流を前記カーボンブラック反応器中で組み合わせて、少なくとも約12時間にわたって、前記反応器中でカーボンブラックを連続的に形成することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項61】
カーボンブラックを作製するための方法であって:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入する工程;
300℃未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、10バール超である第一の圧力にて少なくとも1つのヒーターへ供給する工程;
予備加熱したカーボンブラック生成原料を提供するために、前記少なくとも1つのヒーター中で前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を約300℃超である第二の温度に予備加熱する工程であって、(a)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料が、前記少なくとも1つのヒーター中にて、前記第一の圧力よりも低いかほぼ同じである第二の圧力を有し(前記圧力は、第一の圧力および第二の圧力の際に原料が通過する断面積が同一であるとする仮定に基づいて算出される)、ならびに(b)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料は、約120分未満である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱工程;
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を、前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点に供給する工程であって、前記予備加熱したカーボンブラック生成原料が、前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への前記導入地点直前までに約120分未満である第二の原料滞留時間を有し、且つ前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて120分以下であり、前記予備加熱工程により、前記少なくとも1つのヒーター中にて、または前記カーボンブラック反応器への前記供給の前に、蒸気膜が形成されることが回避される、供給工程;
前記カーボンブラック反応器への前記少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記加熱ガス流と組み合わせて、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成する工程;ならびに、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収する工程、
を含む、方法。
【請求項62】
カーボンブラックを作製するための方法であって:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入する工程;
300℃未満である第一の温度を有する少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を、10バール超である第一の圧力にて少なくとも1つのヒーターへ供給する工程;
予備加熱したカーボンブラック生成原料を提供するために、前記少なくとも1つのヒーター中で前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を約300℃超である第二の温度に予備加熱する工程であって、(a)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料が、i)前記少なくとも1つのヒーター中にて、前記第一の圧力よりも低いかほぼ同じである第二の圧力を有し、ならびにii)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料が、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し(速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出される)、i)は、第一の圧力および第二の圧力の際に原料が通過する断面積が同一であることに基づいて算出される、予備加熱工程;
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を、前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給する工程であって、前記予備加熱工程により、前記少なくとも1つのヒーター中にて、または前記カーボンブラック反応器への前記供給の前に、蒸気膜が形成されることが回避される、供給工程;
前記カーボンブラック反応器への前記少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記加熱ガス流と組み合わせて、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成する工程;ならびに、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収する工程、
を含む、方法。
【請求項63】
カーボンブラックを作製するための装置であって:
反応器であって、加熱ガス流と少なくとも1つのカーボンブラック生成原料とを組み合わせて、前記反応器中でカーボンブラックが形成される反応流を形成するための、反応器;
前記カーボンブラック生成原料を、前記反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給して、前記原料を前記加熱ガス流と組み合わせるための少なくとも1つの原料供給ライン;
前記少なくとも1つの原料供給ラインに供給される前記カーボンブラック生成原料を、少なくとも約300℃の温度に予備加熱するように操作可能である少なくとも1つの原料ヒーター;
前記原料が少なくとも約300℃に予備加熱される前に、前記カーボンブラック生成原料を約10バール超の圧力に加圧するように操作可能であり、且つ前記少なくとも1つの原料ヒーター中に供給される前記原料の原料速度を、少なくとも0.2m/秒とするための少なくとも1つのポンプ(速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出される);ならびに、
前記反応流中の前記カーボンブラックを冷却するための冷却器、
を含み;
前記装置が、少なくとも約300℃に予備加熱された前記原料が前記反応器へ導入される前の、前記少なくとも1つの原料ヒーターおよび前記少なくとも1つの原料供給ライン中での原料滞留時間が、約120分未満となるようにさらに操作可能である、装置。
【請求項64】
前記少なくとも1つの原料ヒーターが、約10kW/m2超の平均熱流束にて前記カーボンブラック生成原料を加熱するように操作可能である熱交換器を含む、請求項63に記載の装置。
【請求項65】
前記少なくとも1つの原料ヒーターが、前記反応流によって接触可能であるように前記反応器内に配置され、前記原料を少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、請求項63に記載の装置。
【請求項66】
前記少なくとも1つの原料ヒーターが、前記反応器の少なくとも一部と接触して配置され、前記原料を少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、請求項63に記載の装置。
【請求項67】
前記少なくとも1つの原料ヒーターが、前記冷却器の下流の前記反応器内に配置された熱交換器を含み、前記熱交換器は、その第一の側が、前記反応流によって加熱されるように適合され、その逆の側が、前記原料が前記少なくとも1つの原料供給ラインへ供給される前に原料と接触するように適合された壁を含み、前記原料が、前記熱交換器中にて少なくとも300℃の温度へ加熱可能である、請求項63に記載の装置。
【請求項68】
前記反応器内に前記反応流と接触可能であるように配置された流動性熱キャリアのための熱交換器をさらに含み、および前記少なくとも1つの原料ヒーターが、前記反応器の外部にあって、且つ前記熱交換器から出た前記流動性熱キャリアの熱を前記原料ヒーター中の前記原料と交換して前記原料を少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、請求項63に記載の装置。
【請求項69】
前記少なくとも1つの原料ヒーターが、前記反応器のテールガス流からの熱を交換して、前記原料を少なくとも300℃の温度へ加熱するように操作可能である、請求項63に記載の装置。
【請求項70】
プラズマ加熱可能ガス流を加熱して前記加熱ガス流の少なくとも一部を提供するように操作可能であるプラズマヒーターをさらに含む、請求項63に記載の装置。
【請求項71】
前記原料ヒーターの原料が接触する壁、および前記少なくとも1つの原料供給ラインの原料が接触する内壁に、非触媒性表面をさらに含み、前記表面が炭化水素の分解または重合に対して非触媒性である、請求項63に記載の装置。
【請求項72】
前記原料ヒーターの原料が接触する壁、および前記少なくとも1つの原料供給ラインの原料が接触する内壁に、非触媒性セラミックライニングをさらに含む、請求項63に記載の装置。
【請求項73】
前記少なくとも1つの原料供給ラインをパージガスで定期的にパージするように操作可能である、炭素に対する酸化剤を含む少なくとも1つのパージガス源および前記少なくとも1つの原料供給ライン上の少なくとも1つのパージガス導入地点をさらに含む、請求項63に記載の装置。
【請求項74】
前記反応器が、原料と加熱ガス流とを組み合わせて、少なくとも約12時間、前記反応器中にてカーボンブラックを連続的に形成するように操作可能である、請求項63に記載の装置。
【請求項75】
前記予備加熱工程および前記供給工程が、定常状態での運転条件に基づいて、急激な圧力低下を起こさない、請求項1〜62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
請求項1〜62のいずれか一項に記載の方法によって形成されたカーボンブラック。
【請求項77】
前記カーボンブラックが、前記予備加熱工程を含まない方法で作製された同じ形態を有するカーボンブラックと比較して、少なくとも10%少ない量のPAHを有する、請求項76に記載のカーボンブラック。
【請求項78】
前記カーボンブラックが、前記予備加熱工程を含まない方法で作製された同じ形態を有するカーボンブラックと比較して、全PAH量に基づいて少なくとも10%少ない高MW PAH量の割合を有する、請求項76に記載のカーボンブラック。
【請求項79】
カーボンブラックを作製するための方法であって:
加熱ガス流をカーボンブラック反応器中へ導入する工程;
少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を少なくとも1つのヒーターへ供給する工程;
予備加熱したカーボンブラック生成原料を提供するために、前記少なくとも1つのヒーター中で前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料を約300℃超である第二の温度に予備加熱する工程であって、(a)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料が、前記少なくとも1つのヒーター中にて少なくとも0.2m/秒である速度を有し(速度は、60℃、1気圧で測定された原料密度、および前記少なくとも1つのヒーター中に存在する原料ラインの最も小さい断面積に基づいて算出される)、ならびに(b)前記少なくとも1つのカーボンブラック生成原料が、約120分未満である前記ヒーター中の第一の原料滞留時間を有する、予備加熱工程;
前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を、前記カーボンブラック反応器への少なくとも1つの原料導入地点へ供給する工程であって、前記予備加熱したカーボンブラック生成原料が、前記少なくとも1つのヒーターを出てから前記カーボンブラック反応器への前記導入地点直前までに約120分未満である第二の原料滞留時間を有し、且つ前記第一の原料滞留時間と前記第二の原料滞留時間とは、合わせて120分以下であり、前記予備加熱が、前記少なくとも1つのヒーター中にて、または前記カーボンブラック反応器への前記供給の前にて、蒸気膜の形成を回避するのに十分な圧力で行われる、供給工程;
前記カーボンブラック反応器への前記少なくとも1つの導入地点を通して、少なくとも前記予備加熱したカーボンブラック生成原料を前記加熱ガス流と組み合わせて、前記カーボンブラック反応器中にてカーボンブラックが形成される反応流を形成する工程;ならびに、
前記反応流中の前記カーボンブラックを回収する工程、
を含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−520382(P2013−520382A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553941(P2012−553941)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/024295
【国際公開番号】WO2011/103015
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】