説明

予測関数を用いる焦点調節装置

【課題】予測関数による迅速な予測焦点調節が可能で、意図した位置で且つピントが十分合った写真を容易に撮れる様にする焦点調節装置を提供する。
【解決手段】焦点調節装置は、デフォーカス量検出手段100,101と記憶手段100aと予測関数算出手段100と予測関数記憶手段100aを有する。デフォーカス量検出手段は、撮影レンズ201の結像位置と撮影動作を行うべき撮影レンズの像面位置との差に係るデフォーカス量を検出する。記憶手段は、デフォーカス量と撮影レンズの結像位置から求められる像面位置及びデフォーカス量の検出時刻の組を記憶する。予測関数算出手段は、複数組の像面位置と検出時刻から予測関数を算出する。撮影時に、デフォーカス量に基づき焦点調節を行うと共に、被写体に応じて選択される予測関数で求められる前記焦点調節後の所定時間での像面位置の変化量に基づき焦点調節を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過去複数回に亘って取得した像面位置とその検出時刻の組のデータから将来の像面位置を予測する機能を有するカメラなどに用いられる焦点調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交換レンズ式一眼レフカメラ等のカメラシステムにおいて、次の様な位相差方式のオートフォーカス(AF)技術が知られている。該技術では、撮影レンズの異なる射出瞳領域を通過した被写体からの光束を一対のラインセンサ上に結像させ、被写体像を光電変換して得られた一対の像信号の相対位置変位量である像ズレ量を求める。そして、この像ズレ量より被写体像のデフォーカス量を検出し、これに基づいて撮影レンズの駆動を行う。この技術に関連して、静止する被写体のみならず、移動する被写体にレンズ駆動を追従させる予測AFモードを備えるカメラが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に開示の方法では、過去2点又は3点のデフォーカス量及びレンズ駆動量から、被写体の像面位置を算出し、像面位置と時間との関係を近似的に表す予測関数を求める(1次式、2次式など)。そして、この予測関数を用いて、デフォーカス量検出点から所定時間後の像面位置を予測し、撮影レンズをその位置まで駆動させる。
【0003】
一方、ホームポジションと呼ばれる機能を備えたカメラが商品化されている。これは、或る操作部材を操作するだけで、予め記憶された位置まで撮影レンズを駆動させる機能である(特許文献2参照)。特許文献2のカメラでは、このホームポジションを複数記憶して、所定の操作部材が操作されると、記憶された位置まで撮影レンズを駆動させて撮影し、再度、特定の操作部材が操作されると次の位置へ撮影レンズを駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-107224号公報
【特許文献2】特開平8-122863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方式では、予測関数を算出するまでに数点のデータ(デフォーカス量とこれの測定時刻)が必要である。データが揃って予測関数が算出される以前の時点で撮影を行うと、ピントが十分合っていない写真が撮影されてしまう可能性がある。この点について、図6を用いて具体的に説明する。図6(a)において、300は自動車で、301は撮影者である。撮影者301は自動車300を或るコーナーで撮影しようとしている。自動車300は撮影者301に対して最初は向かって来るが(A区間)、途中からは遠ざかって行く(B区間)。この動きを、カメラの像面位置の変化で示したのが図6(b)である。図6(b)で、縦軸は像面位置を示し、横軸は時間tを示す。図6(b)に示す様に自動車300が向かって来る間はA区間の如く像面位置は変化し、自動車が遠ざかって行く間はB区間の様に像面位置が変化する。上記特許文献1に記載の様に、予測関数(像面位置に対応した近似二次関数)を算出するまでは、A´区間でピントが合わない写真が撮影されてしまう可能性がある(この間、予測に必要なデータを測定するため)。また、自動車300の向きが変わった最初の区間B´でも、ピントが合わない写真が撮影されてしまう可能性がある(向きが変わったので、A区間と同一の予測関数は使用できない)。
【0006】
特許文献2の技術によれば、複数のホームポジションを記憶しておくことで、撮影レンズを瞬時に記憶位置まで移動して撮影を行うことが可能となる。そのため、たとえ被写体が動態であっても、撮影レンズが移動した位置に被写体が来た瞬間に撮影を行うことで、ピントが合った写真を撮影できる。よって、ピントが合っていない写真を撮影してしまう可能性を低減できる。しかし、特許文献2のカメラの場合、ホームポジションという或る決まった位置でしか撮影することができない。これを回避するためにはホームポジションの登録をやり直せばよいが、やり直している間に決定的なシャッターチャンスを逃してしまう可能性がある。また、撮影レンズが移動した位置に被写体が来た瞬間に撮影を行う必要がある。しかしながら、カメラにはレリーズタイムラグという時間が存在し、このタイムラグを考慮して撮影を行う必要があるため、撮影に一定レベル以上のスキルが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明の焦点調節装置は、デフォーカス量検出手段と記憶手段と予測関数算出手段と予測関数記憶手段を有する。デフォーカス量検出手段は、撮影レンズの結像位置と撮影動作を行うべき撮影レンズの像面位置との差に係る情報であるデフォーカス量を検出する。記憶手段は、前記デフォーカス量と撮影レンズの結像位置とから求められる像面位置及び前記デフォーカス量の検出時刻の組を複数記憶するための手段である。予測関数算出手段は、前記記憶手段により記憶された複数組の像面位置と検出時刻から、像面位置の時間変化を表す予測関数を算出する。予測関数記憶手段は、前記予測関数検出手段により算出された予測関数を複数記憶するための手段である。そして、撮影時に、前記デフォーカス量に基づき焦点調節を行うと共に、被写体に応じて選択される予測関数を用いて求められる前記焦点調節後の所定時間における像面位置の変化量に基づき焦点調節を行って像面位置を目標位置にもたらす。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、予め用意した複数の予測関数を選択的に用いて将来の像面位置の変化を予測する予測焦点調節が可能となる。よって、予測関数により撮影が迅速に可能となり、ピントが合っていないなどの意図しない写真を減らすことができ、決定的なシャッターチャンスを逃すことの少ない予測AF可能なカメラなどを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係る交換レンズ式デジタル一眼レフカメラの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係る交換レンズ式デジタル一眼レフカメラの外観前面と外観背面を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係るカメラにおける予測関数算出の動作制御を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の実施例1に係るカメラにおける撮影処理と予測演算の動作制御を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の実施例2に係るカメラにおける撮影処理と予測演算の動作制御を示すフローチャート図である。
【図6】従来例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を説明する。本発明において重要な点は、撮影時に、デフォーカス量に基づき焦点調節を行うと共に、複数の予測関数の中から被写体に応じて選択される予測関数を用いて前記焦点調節後に更なる焦点調節を行って像面位置を目標位置にもたらすことである。この考え方に基づき、本発明の基本的な構成は上記の如き構成を備える。予測関数の選択は、予測関数選択手段を用いて手動で実行することもできるし(後述の実施例1参照)、移動方向検出手段の算出結果に基づき自動的に実行することもできる(後述の実施例2参照)。前記更なる焦点調節は、撮影時に検出されたデフォーカス量と撮影レンズの位置とにより決定される像面位置及びレリーズタイムラグに基づき、予測関数を用いて求められる像面位置の変化量に基づき行うことができる(後述の実施例参照)。レリーズタイムラグは、例えば、予測絞り駆動時間とミラーアップ時間のうちの長い方の時間である。
【0011】
(実施例1)
以下、図面を参照して本発明の焦点調節装置の実施例を備える交換レンズ式デジタル一眼レフカメラを説明する。図1は、図2に示すカメラにおいて交換レンズが装着された状態の電気的構成を示すブロック図である。図2(a)はカメラ前方より見た斜視図、図2(b)はカメラ背面側より見た斜視図である。実施例1に係るカメラは、カメラ本体1と交換レンズとしての撮影レンズユニット200(図1のみに示す)とから構成される。撮影レンズユニット200はカメラ本体1のマウント2に着脱自在となっている。本実施例では、撮影レンズユニット200とカメラ本体1とは別体で構成され、図2(a)に示すマウント接点21を介して電気的に接続される。しかし、撮影レンズユニット200とカメラ本体1とを一体に構成することも可能である。
【0012】
図2(a)に示す様に、カメラ本体1には、撮影時に使用者がカメラ本体1を安定して握り易い様に前方に突出したグリップ部1aが設けられている。4は、撮影レンズユニット200を取り外す際に押し込むレンズロック解除釦である。正面より見てカメラ上部左方には、撮影開始の起動スイッチとしてのシャッタボタン7と、撮影時の動作モードに応じてシャッタスピードやレンズ絞り値を設定するメイン操作ダイヤル8と、カメラの各動作モードを示すLCD表示パネル9がある。シャッタボタン7は、第1ストロークでスイッチSW1(第1スイッチ7a)がオンし、次の第2ストロークにてスイッチSW2(第2スイッチ7b)がオンする構成となっている。第1スイッチ7aのオンによりカメラは焦点検出、撮影レンズユニット200内に配置された撮影レンズ201のピント合わせ(焦点調節)等の撮影準備動作を行う。そして、第2スイッチ7bのオンにより、被写体輝度の測光等を行い、その後、撮像素子の出力に基づいて被写体像の画像データの取り込みを行う撮影動作を実行する。カメラ本体1の上部右よりには、撮影モード設定ダイヤル14が配置されている。
【0013】
図2(b)に示す様に、カメラ背面には、光軸中心の上方にファインダー接眼窓18が設けられ、更にカメラ背面中央には画像表示可能なカラー液晶モニタ19が設けられている。カラー液晶モニタ19の横に配置されたサブ操作ダイヤル20は、メイン操作ダイヤル8の機能の補助的役割を担い、例えば、カメラのAEモードでは自動露出装置で算出された適正露出値に対する露出補正量を設定するために使用される。或いは、シャッタスピードとレンズ絞り値の各々を使用者の意志によって設定するマニュアルモードにおいて、メイン操作ダイヤル8でシャッタスピードを設定し、サブ操作ダイヤル20でレンズ絞り値を設定する。また、このサブ操作ダイヤル20は、カラー液晶モニタ19に表示される撮影済み画像の表示選択手段としても用いられる。43は、本デジタル一眼レフカメラの全ての動作を禁止するメインスイッチである。44は、カメラ本体1内に記憶された第1の予測関数(詳細は後述)を呼び出すための第1予測関数呼び出しボタンで、45は第2の予測関数を呼び出すための第2予測関数呼び出しボタンである。本実施例では、第1及び第2の予測関数呼び出しボタン44,45が予測関数選択手段を構成する。
【0014】
図1のブロック図は、撮影レンズユニット200が装着された状態を示している。なお、図1と図2において、同一のものには同一番号を付している。図1において、202はレンズMPU(マイクロプロセッシングユニット)、203は、撮影レンズ201の相対的な位置を下記レンズ駆動ユニットのパルス信号としてカメラ本体1に出力するレンズ位置出力ユニットである。ここで、撮影レンズ201は結像機能を有し、従って、レンズ位置出力ユニット203は、撮影レンズ201の結像位置に対応する情報を検出しカメラ本体1に出力する機能を有する。204は、モータ等で撮影レンズ201を駆動するためのレンズ駆動ユニット、205は、絞り206を駆動するための絞り駆動ユニットである。レンズ位置出力ユニット203は、現在の撮影レンズ201の位置(結像位置)での相対的な繰り出し量を測定することができる。具体的には、レンズ位置出力ユニット203のエンコーダーが、レンズ可動部による光学的変化(フォトインタラプタなどにより検出される)を電位変化として出力し、これをレンズMPU202がカウントすることで測定される。
【0015】
レンズMPU202は、絞り駆動予測時間テーブル202aを内蔵しており、設定絞り値の絞り駆動を行ったときの予測される絞りの駆動時間を記憶している。レンズMPU202は、予測される絞りの駆動時間をこのテーブル202aから検索する。そして、検索した予測される絞り駆動時間をマウント接点21を介してカメラMPU100へ通信する。これにより、設定絞り値(目標絞り値)に合わせるために絞り駆動を行ったときの予測される絞り駆動時間をカメラMPU100が取得できる。ここで、後述するメインミラー13のミラーアップ時間は、予め測定し、カメラ本体1側にて記憶しておくことができる。一方、絞り駆動に要する時間は撮影レンズとしての交換レンズごとに異なるため、カメラ本体1側で取得するのは簡単ではない。一つの方法としては、過去にその交換レンズで実際に絞ったときの絞り駆動に要した時間をカメラ本体1側で記憶しておく方法である。しかし、初めてその交換レンズを付けたときには絞り駆動時間を決定できない。また、カメラ本体側の記憶容量も有限であるため、全ての交換レンズの各絞り値に対応する絞りに要する時間(絞り駆動時間)を記憶するのも容易ではない。そこで、上述の様に、予測される絞りの駆動時間をテーブル202aに記憶しておき、カメラMPU100へ送信する様にしている。
【0016】
レンズMPU202、レンズ位置出力ユニット203、レンズ駆動ユニット204、絞り駆動ユニット205、撮影レンズ201、絞り206等によって交換式の撮影レンズユニット200が構成される。そして、この交換式の撮影レンズユニット200は、図1の点線で示す様にマウント2を介して接続され、カメラ本体1と着脱可能である。
【0017】
次に、カメラ本体1側について説明する。101は、カメラ本体1に装着された撮影レンズ200を通過した光からデフォーカス量に対応する情報を後述の様に検出するデフォーカス量検出ユニットである。100はカメラMPUであり、マウント接点21(図2(a)に図示)の信号線を介してレンズMPU202と相互通信可能である。また、カメラMPU100は、後述するA/D変換ユニットを内蔵している。更に、タイマを内蔵しており、時刻や時間の測定を行できる。また、カメラMPU100はメモリ100a(記憶手段に相当する)を内蔵しており、後述する予測関数を算出するのに必要な像面位置とその検出時刻の組を複数記憶することができる。
【0018】
102はスイッチセンス回路であり、各スイッチの操作状態に応じて各部を制御する。7aは、レリーズボタン7の第1ストロークによりオンするスイッチSW1(第1スイッチ)である。7bは、レリーズボタン7の第2ストロークによりオンするスイッチSW2(第2スイッチ)である。第1スイッチ7aがオンされると、レリーズ操作が開始される。また、メイン操作ダイヤル8、サブ操作ダイヤル20、撮影モード設定ダイヤル14、メインスイッチ43、第1予測関数呼び出しボタン44、第2予測関数呼び出しボタン45が接続されていて、各スイッチの状態をカメラMPU100へ送信する。
【0019】
焦点が被写体からどの位ずれているかという量である自動焦点調節に必要なデフォーカス量は、デフォーカス量検出ユニット101からの出力によって計算される。具体的には、撮影レンズユニット200の光軸を挟んだ異なる2領域を通過する被写体光束から形成される2つの像のずれ量から計算される。これら2像の光束はハーフミラーとなっているメインミラー13を通過し、その後ろにあるサブミラー60で反射され、不図示の二次結像光学系によって検出ユニット101に導かれる。検出ユニット101はライン状の光電変換素子からなっており、この素子上に形成された被写体像を電位変化として出力する。カメラMPU100は、これら2像の信号を、内蔵したA/D変換ユニットで数値変化として読み出し、これに相関演算を施すことで像ずれ量を計算し、デフォーカス量を求める。カメラMPU100とデフォーカス量検出ユニット101とで、デフォーカス量検出手段を構成している。その他、カメラ本体1側には、ピント板15、ペンタミラー16、撮像素子17、ファインダー接眼窓18等が具備されている。
【0020】
次に、本実施例に係るカメラの動作について、図3と図4のフローチャートを用いて説明する。まず、図3のフローチャートを用いて予測関数の算出について説明する。本実施例では、予め予測関数を算出し、記憶する必要があるが、例えばレースなどで車を撮影する場合などは同じ場所を周回するので予め予測関数の算出及び記憶動作を行っておけばよい。図3において、ステップ#201より予測関数算出制御を開始する。ここでは、図6のA区間(自動車300が撮影者301に向かって来るシーン)での予測関数を求めるとする。ステップ#202で第1スイッチ7aがオンされたか否かを検出する。そして、オンされたと検出された時はステップ#203へ移行する。また、オンされていない時はステップ#202の動作を繰り返す。
【0021】
ステップ#203では、デフォーカス量検出手段により得られたデフォーカス量から、像面位置とその検出時刻の算出を行う。デフォーカス量検出ユニット101に具備される光電変換素子は、像信号が得られるまでに或る程度の電荷の蓄積時間が必要となる。そのため、蓄積開始時刻と蓄積終了時刻の中点をデフォーカス量の検出時刻とし、レンズMPU100と通信して得られる相対的な撮影レンズ201の位置にこのデフォーカス量を加えて被写体の像面位置の予測値を算出する。この被写体が結像するであろう像面位置の予測値をもって、結像位置予測を行う。デフォーカス量の検出時刻はそのまま像面位置の検出時刻となるので、像面位置とその検出時刻の組を次のステップ#204で、カメラMPU100内のメモリ100aに記憶する。記憶するメモリのデータ構造はキュー(queue:待ち行列)となっており、予め定められたデータの個数までは順に格納されるが、それ以降のデータは最も古いデータの上に最新のデータが上書きされる。本実施例では、最大3組までのデータを格納できるものとする。その後、ステップ#205へ進み、カメラMPU100のメモリに記憶されたデータ数により将来の像面位置の予測が可能かどうかを判定する。本実施例では、将来の像面位置を予測する関数を、レリーズタイムラグに係る時間変数をtとして、tの2次関数「y(t)=α+βt+γt」としている。決定しなければならない未知の係数はα,β,γの3つであるため、最低3組の複数組のデータがあれば予測関数を求めるのに十分である。
【0022】
上記判定の結果、データ数が十分でない場合はステップ#202へ戻って、既に説明した動作を繰り返す。ステップ#205でデータ数が十分と判別された場合は、ステップ#206へ移行する。ステップ#206で、予測関数算出手段に相当するカメラMPU100はメモリ100aに記憶されているデータから時間tの2次関数「y(t)=α+βt+γt…(1)」を算出する。2次関数y(t)の詳細な算出方法は、上記特許文献1(特開平1-107224号公報)等に記載されている如く、公知である。ステップ#206にて、像面位置の時間変化を表す予測関数が算出されるとステップ#207へ移行し、予測関数y(t)…(1)を第1予測関数呼び出しボタン44と関連付けてメモリ100a(予測関数記憶手段に相当する)に記憶する。これで一連の予測関数検出制御は終了する。
【0023】
次に同様の動作を繰り返して、B区間での予測関数y(t)…(2)を算出して第2予測関数呼び出しボタン45と関連付けてメモリ100aに記憶する(第1予測関数呼び出しボタンには既に記憶されている)。この様に予測関数が既に記憶された上記一眼レフカメラにおける実際の撮影動作について、図4(a)のフローチャートを用いて説明する。ステップ#101にて第1スイッチ7aがオンされたか否かを検出する。オンされたと検出されると、ステップ#102へ移行する。ステップ#102では、デフォーカス量検出を行うルーチンを実行する。デフォーカス量の検出が終了すると、次のステップ#103にて、第1及び第2の予測関数呼び出しボタン44,45のどちらが操作されたかを判別する。第1予測関数呼び出しボタン44が操作されたと判別されると、ステップ#104へ移行して、メモリ100aに記憶された予測関数y(t)…(1)を呼び出しステップ#106へ移行する。
【0024】
ステップ#103に戻って、第2予測関数呼び出しボタン45が操作されたと判別されると、ステップ#105へ移行して、メモリ100aに記憶されたy(t)…(2)を呼び出しステップ#106へ移行する。ステップ#106では、第2スイッチ7bがオンされているか否かを判定する。判定の結果、第2スイッチ7bがオンされていればステップ#107へ進み、撮影のための一連の動作を開始する。ステップ#107にて、メインミラー13をアップ(撮影光路外へ退避)させる。そして、レンズMPU202へ、メイン操作ダイヤル8やサブ操作ダイヤル20により既に設定された絞り値を通信することで、カメラMPU100は設定絞り値に対応する予測される絞りの駆動時間を取得し、絞り206の絞り込みを行う。
【0025】
ステップ#108では、予測制御を行うルーチンを実行する。このルーチンについて図4(b)のフローチャートを用いて説明する。ステップ#108にて予測演算サブルーチンがコールされると、ステップ#302にて、ステップ#107で取得した予測絞り駆動時間とカメラMPU100内のメモリ100aに記憶されているミラーアップ時間とを比較する。この結果、予測絞り駆動時間の方が長い場合にはステップ#303へ移行する。そして、ステップ#303で、予測手段に相当するカメラMPU100は、絞り駆動時間をレリーズタイムラグとして用い、ステップ#103〜ステップ#105で決定している第1予測関数又は第2予測関数により像面位置を予測する。この予測像面位置に基づいてレンズ駆動量を算出する。つまり、露光時の像面位置を予測する。ここで、上記デフォーカス量を加味した該量検出時の像面位置(第2スイッチ7bのオン時には第1スイッチ7aのオンによる焦点調節動作で既に達している)がレリーズタイムラグ後にどこに来るかを予測関数で求めて、予測像面位置を算出する。この様に、撮影時に検出されたデフォーカス量と撮影レンズの位置とにより決定される像面位置及び所定時間であるレリーズタイムラグに基づき、予測関数を用いて像面位置の変化量を求め、像面位置の目標位置を算出する。一方、ステップ#302にてミラーアップ時間の方が長いと分かった場合には、ステップ#304へ移行する。そして、ステップ#304にて、カメラMPU100は、このミラーアップ時間をレリーズタイムラグとして用い、ステップ#103〜ステップ#105にて決定している第1予測関数又は第2予測関数により像面位置を予測し、レンズ駆動量を算出する。この様にレンズ駆動量の算出が終了すると、予測演算サブルーチンは終了する。
【0026】
図4(a)に戻って、ステップ#108の予測演算サブルーチンが終了するとステップ#109へ移行し、上記目標位置である予測像面位置を実現すべく焦点調節のための撮影レンズ201の駆動を開始する。撮影レンズ201の駆動が終了すると、ステップ#110へ移行する。ステップ#110では、不図示のシャッター駆動ユニットを作動させて露光動作を行い、その後、ステップ#111においてメインミラー13をダウンさせる。こうして、一連の撮影動作が終了する。
【0027】
本実施例によれば、以上説明した様に予め記憶された予測関数を選択的に呼び出してレリーズタイムラグにおけるレンズ駆動量を算出するので、予測関数が算出されるまでの時間が必要ない。従って、被写体が動態であっても、始めから十分にピントの合った写真を撮影することが可能となる。
【0028】
(実施例2)
本発明の実施例2に係る交換レンズ式デジタル一眼レフカメラについて説明する。基本的な構成は実施例1のカメラと同じである。更に、予測関数を算出する方法も、図3を用いて説明したものと同じである。従って、主に異なる点を説明する。
【0029】
図5を用いて、実施例2の動作を説明する。ステップ#401にて第1スイッチ7aがオンされたか否かを検出する。オンされたと検出されると、ステップ#402へ移行する。ステップ#402及びステップ#403では、実施例1のステップ#203及びステップ#204と同様な動作が実行される。その後、ステップ#404へ進み、カメラMPU100のメモリに記憶されたデータ数により被写体の移動方向が算出可能か否かを判定する。ここでは、単純に移動方向が分かればよいので、一次式が算出可能であればよい。つまり、2点のデータが揃えばよいので、短い時間で検出が可能である。そして、2点のデータが揃ったらステップ#405へ移行し、まだ、データが足りないときにはステップ#402へ移行し既に説明した動作を繰り返す。ステップ#405において、ステップ#404で記憶されたデータから移動方向検出手段に相当するカメラMPU100は一次式の傾きを判別する。傾きがプラスと判別された場合は(図6(b)の像面位置が右肩上がりの場合なので、自動車300が近づく方向、つまり、図3で算出した第1予測関数の方向である。)、ステップ#406へ移行して予測関数y(t)…(1)を呼び出す。一方、ステップ#405で、カメラMPU100によって、一次式の傾きがマイナスと判別された場合は、ステップ#407へ移行して予測関数y(t)…(2)を呼び出す。この場合は、図6(b)の像面位置が右肩下がりなので、自動車300が遠ざかる方向、つまり、図3で算出した第2予測関数の方向である。本実施例では、こうして、デフォーカス量検出手段で検出されるデフォーカス量と撮影レンズの駆動方向から被写体の移動する方向を算出する移動方向検出手段により、撮影時に、予測関数が自動的に選択される。
【0030】
ここまでに、デフォーカス量検出を行うルーチンが実行され、第1スイッチ7aのオンによるAF動作は既に完了している。その後のステップ#408〜409は、図4(a)のステップ#106〜107と同じである。ステップ#410において、予測制御を行うルーチンを実行する。このルーチンは図5(b)のフローチャートに示されている。ここでのステップ#501〜504、図4(b)のフローチャートのものと同じである。
【0031】
図5(a)に戻って、ステップ#410の予測演算サブルーチンが終了するとステップ#411へ移行する。ステップ#411〜ステップ#413も、実施例1で説明したステップ#109〜ステップ#111と同じである。
【0032】
本実施例によっても、実施例1と同様な効果が奏される。更に、本実施例では、一次式を算出して、その式(傾き)から予測関数を選択するので、ユーザーによる煩わしい操作が必要ない。また、一次式を算出すればよいので、極短い時間でこの演算が終了し、シャッターチャンスを逃す可能性も低い。
【符号の説明】
【0033】
1:カメラ本体、100:カメラMPU(デフォーカス量検出手段、予測関数算出手段)、100a:メモリ(記憶手段、予測関数記憶手段)、101:デフォーカス量検出ユニット(デフォーカス量検出手段)、201:撮影レンズ、202:レンズMPU、203:結像位置出力ユニット、204:レンズ駆動ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズの結像位置と撮影動作を行うべき撮影レンズの像面位置との差に係る情報であるデフォーカス量を検出するデフォーカス量検出手段と、
前記デフォーカス量と撮影レンズの結像位置とから求められる像面位置及び前記デフォーカス量の検出時刻の組を複数記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段により記憶された複数組の像面位置と検出時刻から、像面位置の時間変化を表す予測関数を算出する予測関数算出手段と、
前記予測関数検出手段により算出された予測関数を複数記憶するための予測関数記憶手段と、を有し、
撮影時に、前記デフォーカス量に基づき焦点調節を行うと共に、被写体に応じて選択される予測関数を用いて求められる前記焦点調節後の所定時間における像面位置の変化量に基づき焦点調節を行って像面位置を目標位置にもたらすことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項2】
撮影時に、手動により予測関数を選択するための予測関数選択手段を有することを特徴とする請求項1に記載の焦点調節装置。
【請求項3】
前記デフォーカス量検出手段により検出されるデフォーカス量と撮影レンズの駆動方向から被写体の移動する方向を算出する移動方向検出手段を有し、
撮影時に、前記移動方向検出手段の算出結果から予測関数を自動的に選択することを特徴とする請求項1に記載の焦点調節装置。
【請求項4】
撮影時に、その時に検出されたデフォーカス量と撮影レンズの位置とにより決定される像面位置及び前記所定時間であるレリーズタイムラグに基づき、予測関数を用いて前記像面位置の変化量を求めることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の焦点調節装置。
【請求項5】
前記レリーズタイムラグは、予測絞り駆動時間とミラーアップ時間のうちの長い方の時間であることを特徴とする請求項4に記載の焦点調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−59384(P2011−59384A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209135(P2009−209135)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】