事故的誤用および不法転用を防止するための耐破砕性錠剤
薬物常用目的で転用されやすい有効成分の長時間放出を可能とする、水不溶性マトリックス錠剤であって、上記有効成分が、pH非依存性、水不溶性遅延ポリマー、無機賦形剤およびその混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の賦形剤からなる打錠マトリックス内に分散され、少なくとも4MPaの耐破砕性を示す、水不溶性マトリックス錠剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、顕著に高い耐破砕性を有する不溶性マトリックス錠剤に関する。
【0002】
通常の条件下で崩壊不能であり、破砕性が無く、水性媒体に不溶であるマトリックス錠剤は、破砕、溶解および注射による、または破砕および吸入による物質の常習的な乱用を減少させ、さらには防止することができることから、向精神薬のリザーバーとして特に注目される。
【0003】
本発明はまた、上記錠剤を得る方法、および徐放、経口投与における、有効成分、特に向精神性有効成分の使用に関する。
【0004】
徐放性オピエート、特にオキシコドンを含有する錠剤に関しては、事故的誤用事件としていくつかの局面が想定される。第一に、それは投与条件に留意できないことから起こり得る。飲み込むことが意図されている錠剤が偶然に患者によって噛み砕かれるということも起こり得る。その構造が有効成分の放出の遅延を意図したものである錠剤が完全または部分的に崩壊した結果は危険であり、患者にとって致命的でありさえすることが分かるであろう(過剰用量は過剰摂取につながる)。これが、薬剤オキシコンチン(登録商標)LPとともに供給されている説明書に「この錠剤は噛まないで丸ごと飲み込まなければならない」と特記している理由である。
【0005】
また、徐放性オキシコドンをはじめとする薬剤の事故的誤用も、患者が同時に、または短時間内に多量のアルコールとともに薬剤を服用した場合に見られている。
【0006】
徐放型のヒドロモルフォンでは、胃におけるアルコールの存在が、有効成分の徐放のためにデザインされた賦形剤層を損ない、多量の有効成分の生体への放出(「過量放出(dose-dumping」)に至ることが実際に観察されており、これもまた危険な過剰摂取の原因である。
【0007】
例えば、オキシコンチン(登録商標)LPとともに供給されている説明書によれば、禁忌の一覧に、この薬剤とともにアルコールを摂取することは避けるべきであるとされている。
【0008】
同様に、米国では、FDA(食品医薬品局)がオキシコンチン(登録商標)処置を受ける患者に処置中はアルコール飲料を摂取しないように厳しい警告を発している(特に、http://www.fda.gov/cder/drug/infopage/オキシコンチン/オキシコンチン-qa.htm参照)。
【0009】
従って、簡単で快適な投与経路(経口経路)を維持しつつ、この種の事故的誤用を防止して患者の安全性を高める実質的な必要性がある。
【0010】
1990年にフランスの医薬市場において、当初は注射用形態で充填されていたオピエート薬の代替治療薬が舌下錠の形態(Temgesic(登録商標))で出されて以来、薬物常用による、ある種の向精神薬の乱用現象の増加が見られる。
【0011】
故意の誤用または不法使用(またはより通常には「薬物乱用」)という用語は、常習目的でのある種の医薬品の使用、特に、ある種の向精神薬または麻薬、例えば、重篤な疼痛治療またはオピエート薬の常習の治療を意図したオピオイドまたはそれらの誘導体の使用を称するために用いる。
【0012】
経口経路を通常意図する徐放性有効成分の非経口/鼻腔経路による乱用は、薬物常用者に、最初の処方物中に存在する全有効成分の即時的、蓄積的向精神作用を達成する機会を与える。
【0013】
例えば、薬物常用者の代替治療としてTemgesic(登録商標)の名称で製剤として初期に販売された強力なオピオイド鎮痛薬であるブプレノルフィンについての特定の場合には、販売された治療薬の25%〜30%が非経口または鼻腔経路による乱用を招くと推測される。同じことが、何千人ものオピオイド薬物常用者のうち数十人に代替治療として公式に用いられたSubutex(登録商標)と呼ばれる製剤(Schering Ploughにより製造された高用量ブプレノルフィンを含む舌下錠)にも当てはまり、消費者の34%が注射により、またおよそ30%が鼻腔経路によりこの薬物を乱用すると推測される。
【0014】
薬物乱用の現象は、重篤な疼痛の治療を意図した製剤、例えば、硫酸モルヒネ(Skenan(登録商標))およびオキシコドン(Moscontin(登録商標)、オキシコンチン(登録商標)LP)または中程度の疼痛の治療を意図した製剤(Neocodion(登録商標))でも見られる。これらの徐放性形態は、長時間疼痛を制限することを意図した多量のオピオイドを含有しており、その乱用によりモルヒネ誘導体の大量の放出を生じる。
【0015】
薬物乱用はまた、他種の治療薬剤、特にベンゾジアゼピン(Rohypnol(登録商標))に、また、程度は低いがある種の神経治療薬(Artane(登録商標)抗パーキンソン薬)にも影響を及ぼす。
【0016】
結果として、これらの治療薬または代替治療は、単に処方による取り組みが可能な場合(その用量は1日に錠剤10錠にまでなり得る)では、非経口投与(注射)および鼻腔投与(吸入)という、2つの主要な乱用形式の対象となる。
【0017】
注射による乱用に関しては、目的の有効成分を含有する錠剤またはカプセルは、薬物常習に利用できる可能性のあるいずれかの手段、特に、乳鉢またはライターを用いて、さらには単に錠剤を咀嚼またはかみ砕くことによって微粉末とされる。得られた粗粉末は、その医薬形にもともと存在する賦形剤を必ず含み、次にこれを少量の液体(数ミリリットル)に溶解させるのであるが、場合によってはこれを予め加熱し、かつ/または塩基形態で存在するある種の有効成分(ブラウンヘロイン、モルヒネ塩基)に対して酸を加える。得られた液体は次に、例えばシガレットフィルターを用い、血流中に大きな粒子が入らないように大まかに濾過した後、静脈経路により注射される。
【0018】
この場合、放出を遅延させる賦形剤がもはや存在しないことから、有効成分は血流中で即利用可能となり、薬物常用者が求める即時精神作用が生じる。
【0019】
また、吸入による乱用も、その有効成分を鼻内粘膜の微小血管に接近可能とするに十分な微粉末が得られるまで、その医薬形を破砕することからなる。この場合にも、経口投与用に設計された徐放性賦形剤の作用は全く無効となり、期待される即時の精神作用が達成され得ることになる。
【0020】
薬物乱用にはまた、賦形剤、および未精製の破砕残渣、不十分なまたは粗悪な濾過物および無菌でないものを注射しまたは吸入することに直接関連した多くの健康リスクも伴う。最近の研究では、いくつかの不正操作錠剤がシリンジ内で直接溶解され、その後、事前の濾過無く、注射される場合があり、この実践が肺塞栓による多くの死亡の直接的原因となっていることが報告されている。さらにまた、破砕残渣への非滅菌液体形態の酸(レモンジュース)の添加も、明らかに細菌または真菌病原体の伝染(カンジダ症)の原因となっている。
【0021】
従って、これらの実践により、非経口注射それ自体に関連するウイルスおよび細菌の伝染および皮膚科の合併症(膿瘍、壊死)のただでさえ高いリスクは、上昇することになる。また、Subutex(登録商標)錠剤の注射に関しては、錠剤処方物中のコーンスターチの存在がこの賦形剤による浮腫の発生に原因となり、ひと度注射すると、リンパおよび静脈系に蓄積し、下肢のむくみを生じさせる。
【0022】
これらの問題を制限するため、1つのアプローチは、有効成分と、非経口経路により処方物が摂取される際に向精神作用を制限しうる薬剤とを、1つの同じ医薬形に組み合わせることから構成される。
【0023】
これは例えば、米国特許第3,966,940号および同第3,773,955号に最初に記載されている、メタドンとナロキソンとを組み合わせた処方物の場合である。
【0024】
この乱用抑止処方物はブプレノルフィンの特定の場合に再現された。例えば、欧州特許EP0185472は、モルホン受容体において競合拮抗薬として働く有効量のナロキソンも含有するブプレノルフィンの経口処方物を記載している。ナロキソンは経口経路で極めてわずかなバイオアベラビリティーしか持たないので、その医薬品が通常経口投与される限り、ブプレノルフィンの鎮痛作用を妨げることがほとんどない。他方、非経口経路により乱用を受けた場合には、ナロキソンは完全に利用可能となり、ブプレノルフィンの鎮痛作用を阻害する。しかしながら、この種の化学的組合せでは、この経口医薬形は破砕可能、かつ、水性媒体中で可溶であるままである。
【0025】
また、ナルトレキソン(naltrexone)とブプレノルフィン(buprenorphine)を組み合わせた1つの舌下処方物も欧州特許EP0319243に記載されている。この組合せでは、特に、オピオイドに対してのナルトレキソンの拮抗薬作用を高めることができ、しかも、この組成物が非経口経路によって乱用されたとしても、消費者に非多幸感的な鎮痛感覚をもたらす。従って、この種の処方物が薬物常用者の興味をそそることはほとんどなく、薬物乱用の現象の抑制に寄与する。しかしながら、このアプローチは、二つの有効成分の併用手段として必ずしも採用されるものではなく、製造コストおよび医薬品の価格の上昇を招く。
【0026】
さらに、オピオイド剤と拮抗薬との組み合わせのアプローチを用いて、特許出願US2003/0143269には、オピオイド剤と拮抗薬が別に分散されている医薬形態であって、拮抗薬は、通常の経口経路で摂取された場合には放出されないようにコンパートメント内で「隔離」されているものが開示されている。一方で、製品が破砕、構造の損傷によって不正操作されると、二つの有効成分は混合し、向精神性効果を追求することは阻まれる。
【0027】
このアプローチにおいて、上記医薬形態は、乱用に対して優れた役割を果たす。しかしながら、ここでもまた、二つの化学物質の混合が必要であり、製造工程は複雑となり、製造コストも高くなる。
【0028】
また、特許出願US2003/0068392には、オピオイド剤が拮抗薬と組み合わせられているだけでなく、閉じられたコンパートメント内に隔離された刺激剤とも組み合わせられている医薬形態が記載されている。この医薬形態に不正操作をすると、必然的に刺激物の放出がもたらされる。従って、この形態は3つの有効薬剤の組合せと、コンパートメント化された領域の作出とを必要とし、その製造が複雑となり、錠剤などの医薬形態よりもコストが高くなる。
【0029】
他の会社は、オピオイドまたは乱用の対象となり得る物質が拮抗薬と組み合わせられていない医薬系を開発している。例えば、特許出願US2005/0281748は、その有効薬剤と1以上の脂肪酸との間で塩を形成させることにより、目的のオピオイド剤がその親油性を高めるよう改良されている経口投与医薬形態の製造を報告している。
【0030】
この医薬形は、経口経路によって服用された場合、消化管の酵素はこれらの脂肪酸群を徐々に分解し、それらの分解につれ、また、分解の際に有効成分を放出するので、有効成分の徐放性を可能とする。
【0031】
他方、この医薬形態が物理的に不正操作されると、不溶性層でコーティングされた有効成分の微粒子が放出され、水性媒体中での有効成分の即時放出が防止される。該処方物は、有効成分の化学的変換を必要とする。
【0032】
特許出願US2003/0118641には、有効オピオイド成分が親水性ポリマーマトリックスおよび陽イオン樹脂と組み合わせられている、徐放性を有するオピオイドの経口投与形態が記載されている。この樹脂は有効成分と反対の電荷を持っているので、この成分とポリマーマトリックス内で結合し、その抽出を妨げる。
【0033】
上記医薬形態によれば、通常入手可能な溶媒(湯、アルコール、酢、過酸化水素など)を用いたとしても、上記有効化合物を、生体における徐放性を担う賦形剤から分離することはできなくなる。
【0034】
数社が、ゲルを含有する医薬系を開発している。例えば、Pain Therapeutics Inc.およびDurectは、経口または非経口経路を介して投与可能な生分解性ゲルであって、高い粘度を有する薬剤:スクロースアセテートイソブチレート(SAIB)からなるものを用いている。このゲルによれば、オピオイド剤オキシコドンの徐放が可能となる。米国特許第5,747,058号および同第6,413,536号の対象であるこの種のゲルは、これを含有するカプセルが変質または破砕されても、12〜24時間の期間にわたって有効成分を制御放出する能力を維持する。これらの医薬形態における主要な関心は、オキシコドンがそのゲル担体から抽出できず、また、これら処方物(現在第III相臨床試験下のORADUR(登録商標)およびSABER(登録商標)技術を用いたRemoxy(登録商標)製品)の極めて高い粘度のために非経口経路で注射できない、ということにある。
【0035】
上記ゲルはまた、アルコールまたは酸の存在下でオキシコドンの抽出に抵抗する能力を有し、有効成分はこのゲル化剤により形成されたネットワークに捕捉されたままとなる。
【0036】
これらのゲル含有医薬形態は複雑な処方物であり、第一に、工業レベルでは高粘度の液体の使用を必要とするので取扱いが制限され、第二に、錠剤の場合にはないパッケージングに関する主要な制限(バイアルの瓶の使用)を必要とする。
【0037】
極めて硬度の高いマトリックス錠剤を製造する手段も知られている。欧州特許EP0974355には、例えばHPMCなどの従来のポリマー結合剤の存在下、サッカライド種の少なくとも1つの添加剤と混合された水溶性ビタミンを造粒することにより得られた錠剤が記載されている。生体における水溶性ビタミンの即時放出を意図した上記錠剤は、20〜30kp/cm2(キロポンド/cm2)程度の高い硬強度を有し、これはおよそ1.96〜2.94MPaの硬度値に相当する。これらの錠剤は、比較的堅く、90%を超える水溶性ビタミンおよびこれも水溶性である賦形剤(HPMC、糖類)からなるが、体内で急速に崩壊する(崩壊時間は10〜15分の範囲)。上記錠剤は第一に有効成分の徐放性に全く不適であり、第二に水性媒体に容易に溶けるので、それらは乱用される可能性のある物質のための医薬形態として不適合となる。
【0038】
欧州特許EP0933079には、1MPa(1N/mm2)前後から10MPaまで変動する耐破砕性を有するマトリックス錠剤が記載されている。上記錠剤は直接打錠可能な処理済みデンプン粉末から得られている。しかしながら、これらの錠剤は、水性媒体中でおよそ6〜7分程度の比較的短い崩壊時間を有するので、有効成分の急速な放出を意図したものである。これらの錠剤は、この場合にもまた、水性媒体中での急速なその崩壊のために、乱用をされやすく、長時間にわたる放出が意図される有効成分の送達のために使用することができない。
【0039】
欧州特許EP0997143には、極めて高い硬度(1.1MPa、すなわち、11kp/cm2前後)を有し、破砕性が1%未満である両凸(bi-convex)マトリックス錠剤であって、打錠可能で崩壊可能な炭水化物(一般にマンニトール)と結合剤とから主に構成されるマトリックスを打錠した後に得られるものの製造が報告されている。上記チュアブル(chewable)錠は、固体状態で極めて高い硬度を有していたとしても、口内でごく短時間の後に水性媒体中に溶解可能であり、従って、有効成分を体内に急速に放出する。
【0040】
体内での有効成分の徐放を意図し、また高い硬度も有するマトリックス錠剤の製造は米国特許第6,592,901号に報告されている。この文献では、良好な打錠特性を有し、特定の等級のエチルセルロース(セルロースの非イオン性エチルエーテル、Aqualon(登録商標)として販売)を含有する錠剤が得られており、この錠剤はpH依存性で、置換度が高く、粘度が低い。従って、このようにして得られた錠剤の耐破砕性は10〜20kp(キロポンド)程度であり、錠剤の大きさにスケールダウンすれば、1.4〜2.8MPa前後に相当する。また、この特定等級のエチルセルロースは水不溶性であり、液体の拡散、従って、体内での有効成分の放出を制限する。このモデルから得られた錠剤は、24時間後に放出される有効成分が80%未満という放出プロフィールを示すので、この有効成分の放出はゆっくりと行われる。
【0041】
また、極めて強い耐破砕性を有するマトリックス錠剤が、Pontier et al. (Pontier et al. Journal of European Ceramic Society, 22 (2002))に記載されている。特に、その筆者らは、リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系の無機賦形剤を用い、直接打錠によって極めて硬いマトリックス錠剤を得ることができることを示している。例えば、リン酸三カルシウム粉末から、予め造粒した後、300MPa程度の打錠力下で打錠して、耐破砕性(引張強度)が6.5MPaに達し得る錠剤を得ることができる。しかしながら、この製品は、このような錠剤の長時間にわたって1種類以上の有効成分を放出する能力についても、このような医薬構造の水性媒体中に完全な状態に留まる能力についてもなんら情報を与えていない。
【0042】
C. Pontier (2001年9月25日に提出された“Les phosphates de calcium apatitiques en conpression. De la chimie aux qualites d’usage “These de l’Universite de Paris XI)によるリン酸カルシウムアパタイトに関する論文研究は、打錠後、リン酸カルシウム(特に、ヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウム)を含有し、7MPaに達し得る高い耐破砕性を有するマトリックス錠剤を得ることができることを示している。
【0043】
上記錠剤はまた、マトリックス孔からの顆粒拡散により長時間にわたって水性媒体中にテオフィリンを放出する能力を有する(8時間で60%の有効成分が放出される)。しかしながら、この製品からは、錠剤の、水性媒体中に完全な状態で留まる能力、そして、液体媒体中で破砕することによる乱用を防止する能力についてのいずれの結論も引き出すことができない。
【0044】
特許出願US2005/0031546は、常用を起こし得る1種類以上の有効成分と、少なくとも500Nの引張強度を必ず有する少なくとも1種類の合成または天然ポリマーとを含有する乱用抑止医薬形態に関する。具体的に記載されている唯一のポリマーは、所望によりキサンタンガムと複合する分子量7,000,000のエチレンポリオキシドである。
【0045】
これらの錠剤は、加熱工程により、または加熱工程とともに、または加熱工程の後に行われる打錠工程を含む方法を用いて製造することができる。よって、この加熱工程は所望の硬度を得るために必要である。この工程は、たとえ短時間であっても、第一に、熱感受性有効成分には適用できず、第二に、特殊な装置の使用と余分なエネルギー消費を必要とし、プロセスのコストを引き上げる方向へ寄与する。
【0046】
よって、向精神作用を有する有効成分の安全な投与を可能とし、かつ、それは長時間にわたって放出される医薬形態、すなわち、その破砕と溶解の双方を極めて困難にするか、または不能にしさえする医薬構造を有し、さらには、その徐放性を担う薬剤からの有効成分の抽出および分離を防ぐ医薬形態の開発がまさに必要とされている。さらに、この医薬形態は、極めて簡易、すなわち、迅速で低コストの製造方法を用いて製造可能であることが必要である。
【0047】
本出願者は、期せずして、徐放性マトリックス錠剤の形態に簡易に製造され、不溶性でありかつ顕著に硬質の新規な固形経口医薬処方物を見出した。この錠剤を用いれば、事故的誤用の現象を防止すること、および薬物乱用の現象を抑制、さらにはなくすことも可能である。
【0048】
よって、本発明の主題は、1以上の有効成分を生体へ長時間にわたって、好ましくは12時間を超える期間、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって放出することを可能とし、かつ打錠マトリックス内に分散した、薬物乱用の対象となり得る少なくとも1つの有効成分を含んでなる水不溶性マトリックス錠剤であって、マトリックスが、徐放性、pH非依存性、水不溶性のポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含んでなり、賦形剤の量および打錠条件が、錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択されるものである。
【0049】
有利には、上記打錠条件では、実際の打錠前または打錠中のいずれかにおいて、打錠される混合物または打錠手段の加熱を必ずしも必要としない。
【0050】
好ましくは、本発明による錠剤は、それらが含む有効成分、特にオピオイド薬を24時間にわたって放出し得る医薬形態を製造するために使用され、これによりこれらの有効成分の1日1回での服用が可能となる。
【0051】
本発明において、故意の誤用または薬物乱用とは、医薬形態の意図的な変質を表すために用いる。特に、薬物乱用の概念は、錠剤を粉末にまで変形した後、この粉末を吸入するか、または非経口注射のために少量の液体に溶かすことに関する。
【0052】
マトリックス錠剤とは、錠剤の核から周辺に向かってその内部構造が均質かつ同一である錠剤を表すために用いる。よって、本発明による錠剤は、粉末または顆粒形態の有効成分と、徐放性、水不溶性、pH依存性ポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含む打錠マトリックスとから構成される。
【0053】
本発明において、打錠マトリックス(compression matrix)とは、錠剤の結合に関与するあらゆる賦形剤を表すために用いる。上記打錠マトリックスは水不溶性であるとともに、媒体のpHに対して変わらない有効成分の緩徐放出を担う、ある種の透過性(親水性マトリックス)または多孔質ネットワーク(不活性マトリックス)を有する。
【0054】
本明細書において「打錠混合物」とは、錠剤形態へと打錠される前の錠剤のあらゆる構成要素(有効成分(造粒されているかどうかは問わない)、および打錠マトリックスの構成要素)を表すために用いる。
【0055】
本明細書において、耐破砕性および硬度の概念は双方とも、錠剤を特徴付けるために用いられる。硬度は、直径打錠試験(diametral compression test)における錠剤の引張強度を特徴付ける。円形錠剤を、一方は固定され、他方は可動である2つの顎器(jaws)の間に挟む。硬度は、この可動顎器によってかけられた、錠剤をほぼ二等分に破断する力に相当する。それはニュートン(N)またはキロニュートン(kN)で表される(欧州薬局方:参照:01/2005:20908参照)。
【0056】
耐破砕性は、硬度の測定から推定される。これはその力に曝された錠剤の表面積を考慮に入れ、パスカル(Pa)またはメガパスカル(MPa)で表される単位表面積当たりの強度に相当するパラメーターであり、1MPaは1ニュートン/mm2に相当する。耐破砕性は、異なる表面積を有する錠剤の挙動を比較するために特に着目されるパラメーターであるが、これは錠剤サイズのパラメーターに依存する必要がないためである。その計算式は下記の通りである(”Determination of tablet strength by the diametral-compression test”. Fell, J.T.; Newton, J.M. J. Pharm. Sci., 59 (5) : 688-691 (1970)参照):
【0057】
【数1】
(式中、
Rdは、直径錠剤破断負荷(MPa)であり、
Fは、錠剤の硬度(N)であり、
Dは、錠剤の直径(mm)であり、
Hは、錠剤の厚さ(mm)である)。
【0058】
本明細書において「徐放性」ポリマーという表現は、その溶解媒体中への有効成分の放出を制御するために製薬業界で慣用されるポリマーを表すために用いる。本明細書において使用される徐放性ポリマーは水不溶性であり、このことは、周囲の媒体への有効成分の放出が、ポリマーの腐食または緩徐崩壊を伴わない、もっぱら単純な拡散現象によって起こることを意味する。これらのポリマーは、周囲の媒体に相対して、そのポリマーマトリックスからの有効成分の緩徐拡散を担うある種の透過性を効果的に有する。従って、このポリマーの透過性が低下するほど、有効成分の拡散がよりよく持続する。
【0059】
本発明において、pH非依存性ポリマーという表現は、透過性ネットワークまたはマトリックスを形成し得るポリマーを表すために用い、この透過性は周囲の媒体のpHにより影響を受けない。
【0060】
本発明による錠剤は顕著に高い硬度を有する錠剤である(以下、「超硬質錠剤」と呼ぶ)。それらの構造は、それらの破砕が通常の家庭内の技術では想定しえないものであり、水性媒体中、さらには酸性媒体中でさえ、それらの溶解は実質的に不可能である。
【0061】
このような極端な硬度はまた破砕性がほとんど伴わないか、または全く伴わず、このことは、これらの錠剤が例えば向精神薬などの薬物乱用の対象となり得る有効成分に対して選択される医薬形態であることを意味する。この極めて低い破砕性または非破砕性により、これらの錠剤は、慣例技術または家庭内技術(スプーン、乳鉢、ライター)を用いては実質的に非破壊性となる。
【0062】
本発明による錠剤はまた、水性媒体中で、低pH(pH<3)であっても実質的に不溶性である。これらの特徴はそれらの錠剤の非経口経路による投与を困難にする。
【0063】
本発明による錠剤はまたアルコール媒体中でも不溶であり、このことはこれらの錠剤は、アルコールが摂取されるとしても服用可能であり、それにより事故的誤用を回避することを意味する。
【0064】
さらに、本発明による錠剤は、それらの極端に堅い耐用性のある外部構造にもかかわらず、マトリックス中に含まれる有効成分の徐放を可能とする。従って、本発明による錠剤は、8時間を超える期間、好ましくは12時間を超える期間、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって生体へ有効成分の放出を可能とする。
【0065】
有利には、本発明による錠剤は1日1回投与されるオピオイド薬の医薬形態を製造するために使用される。
【0066】
さらに、経口使用に関して認可された既知の徐放性賦形剤と、有効成分を含有する顆粒の混合物からなる、本発明による錠剤のマトリックス構造は極めて単純であり、実際の打錠前または打錠中のいずれにも打錠手段および/または打錠される混合物を加熱する必要なく、単に混合物の打錠行程を必要とするだけであるので、その容易な工業生産が可能となる。
【0067】
有利には、本発明による錠剤の打錠マトリックスは、錠剤の総重量の50〜98重量%、さらに有利には錠剤の総重量の85〜95重量%に相当する。
【0068】
本発明による錠剤のマトリックス組成物中で単独または混合物として使用可能な賦形剤は、有機種であってよく、すなわちセルロース誘導体、特に、微晶質セルロース(例えば、商標アビセル(Avicel)(登録商標)として販売)およびエチルセルロース(例えば、商標Aqualon(登録商標)として販売)、不溶性、pH非依存性メタクリル酸系のポリマー、特に、Eudragit(登録商標)等級のRL12.5、RL PO & RL 100 & RS 12.5、RS POおよびRS 100、ポリビニルアルコール誘導体、乳酸およびグリコール酸(PLGA)のポリマー(polymers of lactic and glycolic acids(PLGA))、デンプン、ワックス、ポリビニルアセテート誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、ならびにポリマー混合物、例えば、微晶質セルロースと[ポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(80:20)]との混合物(商標コリドンSR(登録商標)として販売)、および微晶質セルロースと[ポリ(エチルアクリレート/メチルメタクリレート/トリメチルアモニオエチル(amonioethyl))メタクリレートクロリド)(1:2:0.2)]との混合物からなる群に属する。
【0069】
有利には、本発明における徐放性、水不溶性、pH非依存性のポリマーは、セルロース誘導体、微晶質セルロースと[ポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(80:20)]との混合物(商標コリドンSR(登録商標)として販売)および微晶質セルロースと[ポリ(エチルアクリレート/メチルメタクリレート/トリメチルアモニオエチル(amonioethyl)メタクリレートクロリド)(1:2:0.2)]との混合物からなる群に属する。
【0070】
また、打錠マトリックスにおける賦形剤は無機種のものであってもよく、それらはすなわちリン酸カルシウム(特に、リン酸二カルシウムまたはリン酸三カルシウム)、アルミニウムとケイ素ケイ酸(aluminium and silicon silicates)、および炭酸マグネシウムからなる群に属する。
【0071】
本発明による錠剤における打錠マトリックスは、有利には、上述の数種の賦形剤の混合物からなる。それは微晶質セルロースなどの有機ポリマーおよびビニル誘導体の種々の割合での混合物、または有機ポリマー+カルシウムとケイ素ケイ酸(calcium and silicon silicates)などの無機誘導体+微晶質セルロースの種々の割合での混合物であってもよい。
【0072】
本発明による錠剤における打錠マトリックス中に存在する賦形剤は、有利にはマトリックスの総重量の40〜100重量%、有利にはマトリックスの総重量の50〜90重量%に相当する。
【0073】
本発明の有利な実施形態によれば、打錠マトリックスは2種類のポリマーの(1:1)混合物からなり、有利には微晶質セルロースと混合物[80:20までの割合のポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(商標コリドンSR(登録商標)として販売)]との(1:1)混合物、または微晶質セルロースと[(1:2:0.2)の割合のポリエチルアクリレート/メチルメタクリレート/トリメチルアモニオエチル(amonioethyl)メタクリレートクロリド]との混合物からなる。有利には、これらの2種類のポリマーはそれぞれ、打錠マトリックスの総重量の40%程度に相当する。
【0074】
打錠マトリックスは有利には、打錠マトリックスの賦形剤の他、打錠工程の遂行を促進することを意図した1種類以上の賦形剤(例えば、コロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)またはステアリン酸カルシウムなどの抗凝集剤(anti-adherent agents))、または打錠時に錠剤の結合を促進することを意図した1種類以上の賦形剤(この目的で慣用される結合剤、特に、デンプン、セルロース誘導体、または増量剤、滑沢剤、可塑剤、充填剤、または甘味剤、または着色剤など)を含む。
【0075】
これらの賦形剤は存在する場合には、通常、打錠マトリックスの総重量の0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の間の割合まで使用される。
【0076】
打錠マトリックスはまた、以下の物質(a)〜(f)の少なくとも1つまたはその混合物を含んでいてもよい:
a)鼻道および/または咽頭管(pharyngeal tracts)を刺激する物質、
b)錠剤が最少量の水に溶解される際にゲルの形成をもたらす増粘剤、
c)薬物乱用の対象となり得る有効成分の拮抗薬
d)催吐物質、
e)忌避剤(adversive agent)としての着色剤、
f)苦味物質。
【0077】
有効成分が天然または合成オピエート誘導体である場合、拮抗薬は有利にはナロキソン(naloxone)、ナルトレキソン(naltrexone)、ナルメフェン(nalmefene)、ナリド(nalid)、ナルメキソン(nalmexone)、ナロルフィン(nalorphine)およびナルフィン(naluphine)からなる群から選択され、これらの種々の化合物はそれぞれ薬学上許容される形態、特に、塩基もしくは塩であるか、または溶媒和形態であるかのいずれかである。これらの拮抗薬は慣用される用量で、特に、1錠当たり0.5〜100mgまでの割合で存在する。
【0078】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、拮抗薬はナロキソンまたはその薬学上許容される塩の1つである。
【0079】
よって、本発明による錠剤は、薬物乱用を与え得る有効成分のリザーバーとして特に注目されており、8時間を超える期間、好ましくは12時間を超える期間、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって生体に放出されることが意図される。
【0080】
本発明による錠剤中に含まれる有効成分は、当業者に知られているいずれの形態で存在してもよく、特には粉末、結晶または顆粒形態で存在することができる。
【0081】
本発明による錠剤は1種類以上の有効成分を含んでもよく、種別は問わない。有利には、有効成分は、生体に制御放出される、すなわち、少なくとも8時間、好ましくは12時間超える、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって放出されることを意図して選択される。
好ましくは、本発明による錠剤は1日1回医薬投与形態を製造するために使用される。
【0082】
特に、本発明による錠剤は、薬物乱用を生じうる有効成分、および/またはより一般には、医薬形態の不正操作によって起こる生体へのその急速放出または即時放出が消費者にとって危険または致命的であり得る有効成分の徐放に十分適合している。
【0083】
よって、本発明による錠剤は好ましくは、向精神薬系の属する有効成分、すなわち、刺激作用、精神安定作用または幻覚作用により精神に作用し得る有効成分の徐放に用いられる。
【0084】
よって、本発明下で使用可能な有効成分は好ましくは、天然物であれ合成品であれ、コデイン、ナルセイン(narceine)、ノスカピン(noscapine)およびそれらの塩など、アヘンの誘導体および/またはアルカロイドである。
【0085】
本発明において使用可能な有効成分はまた、モルヒネ、その誘導体およびそれらの塩、特に、フォルコダイン(pholcodine)、ナロルフィン(nalorphine)、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロモルフォンなどのモルヒネン類(morphinenes)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、デキストロメトルファン(dextromethorphane)、ナルブフィン(nalbufine)、ナルトレキソン(naltrexone)、ナロキソン(naloxone)、ナルメフェン(nalmefene)、ヒドロコドン(hydrocodone)、オキシモルフォン(oxymorphone)およびオキシコドン(oxycodone)などのモルヒナン類(morphinanes)、および一般には、モルヒネの総ての類似体、フェンタニル(fentanyl)、トラマドール(tramadol)、アポモルヒネ(apomorphine)およびエトルフィン(etorphine)などの総てのモルヒネ鎮痛薬からなる群に属す。
【0086】
本発明はまた、天然物であれ合成品であれ、コカインまたはヘロインなどの向精神作用を有するアルカロイド誘導体に関する。
【0087】
さらに、本発明はまた、オピエート薬の常用癖を治療するという治療目的に、および/または薬物乱用の対象に特になりやすい例えばメタドンおよびブプレノルフィンなど代替および依存脱却治療(disintoxication treatment)として、現在使用されている物質に関する。
【0088】
一般に、本発明はまた、現在薬物乱用の対象となっている医薬品の他のあらゆる治療薬種、特に、神経弛緩薬(neuroleptics)、精神安定剤、催眠薬、鎮痛薬、抗不安薬、特にベンゾジアゼピン種のものも考慮することができる。
【0089】
本発明による錠剤中の有効成分は、錠剤の総重量の5〜70重量%の間であり得る。有利には、これらの有効成分は、錠剤の総重量10〜50重量%であり得る。これらの有効成分は打錠される混合物に直接加えることもできるし、担体にコーティングすることもできるし(微顆粒を得るため)、あるいは湿式造粒または乾式造粒することもできる(顆粒を得るため)。
【0090】
有効成分が微顆粒の形態である場合には、これらの微顆粒は、「ニュートラルコア」または「シュガースフェア」の名称で販売されているセルロースまたは糖とデンプンとの混合物を含有する既製のマイクロスフェアなどの製薬上中性の担体に有効成分を付着させる(コーティングする)ことによって便宜に得ることができ、あるいはそれらは例えばラクトースなどの他の賦形剤の顆粒であってもよい。
【0091】
有効成分の付着(コーティング)方法は当業者に公知の常法であり、付着される有効成分の種別、量および脆弱性に関して様々であり得る。よって、付着(コーティング)は、中性担体の表面に有効成分の溶液または懸濁液を噴霧することによって、または結合剤溶液で予め湿らせた担体の表面に粉末形態の有効成分を噴霧することによって行うことができる。
【0092】
有効成分の顆粒はまた、一般には少なくとも1種類の結合剤および所望により湿潤剤の存在下、当業者に周知の技術(により、目的の有効成分の乾式造粒または湿式造粒によって得ることができる。
【0093】
このようにして得られた顆粒を打錠マトリックスの賦形剤と混合し、次に、この混合物を打錠する。
【0094】
本発明による錠剤の優れた硬度は、打錠される混合物(打錠マトリックスおよび有効成分)および/または打錠手段(プレス)のいずれにも、打錠前または打錠中に加熱を施す必要なく、得ることができる。
【0095】
有利には、目的の有効成分を含有する顆粒は良好な打錠が得られる直径を有し、すなわち、一般には100〜600μmの間である。
【0096】
本発明の別の実施形態によれば、粒径が許す限り、有効成分を賦形剤と直接混合して打錠マトリックスを形成し、その後、この混合物を直接打錠する。
【0097】
さらに、本発明の別の可能な実施形態は、有効成分と打錠マトリックスの賦形剤とを混合した後、この混合物を乾式造粒または湿式造粒して直接、打錠可能な顆粒を得ることからなる。
【0098】
本発明による錠剤は、高い硬度の錠剤が得られる限り、いずれの形状および大きさであってもよい。有利には、錠剤の総表面積は150mm2未満である。
よって、本発明は、低用量または高用量のいずれの有効成分を含む錠剤の製造にも好適である。
【0099】
本発明の特定の実施形態によれば、錠剤の外側をフィルムコーティングすることができ、このコーティングの必要性および意図する機能に関してどのように適用すればよいかは当業者ならば分かるであろう。
【0100】
例えば、もし例えば胃の媒体の低pHに感受性のある不安定な有効成分であれば、外側のフィルムコーティングは有効成分を保護する目的で適用することができ、この場合には、胃耐性コーティングという用語が用いられる。
【0101】
また、外側のコーティングはマトリックスからの有効成分の拡散をさらに遅延させるためにも適用することができる。この目的で、種々の等級のエチルセルロースが使用可能であり、またはメタクリルポリマー(methacrylic polymers)も当業者によく知られている。
【0102】
さらに、外側のコーティングは、錠剤の外観(テクスチャー、色)および/または嗜好性(味/口あたり)を改良するために使用することができる。特に、必要に応じて有効成分の味をマスキングするために、当業者に周知のセルロース誘導体またはアクリル系誘導体などの賦形剤を使用することができる。
【0103】
よって、上記コーティングは、単独または上記に挙げた種々の機能のために混合物で用いられ、当業者に公知の種々のタイプの1以上の賦形剤の混合物からなり得る。
コーティングに用いられる賦形剤は当業者に公知の方法で、目的の機能を得るために必要な量で適用される。
【0104】
これらの賦形剤は、例えば有孔パンまたは流動床にて、溶媒中のコーティング剤の溶液または懸濁液を噴霧することによる常法で錠剤表面に適用することができる。
【0105】
本発明はまた、本発明による錠剤を製造する方法に関する。この方法は、
有効成分を打錠マトリックスの賦形剤とを混合し、
所望により造粒を行い、
該混合物を該錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択された条件下で打錠し、
所望により錠剤をコーティングすること
を含んでなる。
【0106】
錠剤のコーティングポリマーが徐放性ポリマーである場合、本発明によるコーティング錠剤に対し、有利には、その物理的および化学的安定性を保証するためにコーティングポリマーの硬化を施すことができる。この工程は有効成分の融解温度以下に制御した温度条件下、コーティングポリマーに応じて、相対湿度率50〜99%で1分〜数分の間持続し得る制御された時間で行う。この工程はオーブンまたはパンで行うことができる。
【0107】
有効成分は打錠マトリックスに直接混合することもできるし、あるいは予め調製した顆粒または微顆粒の形態で混合することもできる。この造粒工程は製造される錠剤の均一な耐性を改良する。好ましくは、顆粒に関しては湿式造粒(水性または有機性)が用いられ、また、微顆粒に関しては、有効成分は、中性担体上に溶液または懸濁液を噴霧コーティングすることにより付着させる。
【0108】
打錠は、プレコンプレッションステーションを備えた回転打錠機で行う。打錠パラメーターは、得られる錠剤の硬度が本発明に適合するように選択しなければならない。しかしながら、本発明による錠剤で見られる優れた硬度を達成する目的で、被打錠混合物または打錠手段に対して、打錠前および/または打錠中のいずれにも加熱を行う必要はない。適用される打錠力は10kN〜160kNの間、有利には30kN〜80kNの間である。それらはパンチ材料に適合し、したがって、工業生産速度で使用可能である一方、その引張強度が4MPaより大きい、好ましくは6MPaより大きい錠剤が得られるように選択する。
【実施例】
【0109】
以下に示されている実施例1〜10および図1〜14は、本発明の説明を意図するものであって、その範囲を何ら限定しない。
【0110】
実施例1:オキシコドンHC1と4.87%HPMCの造粒により得られた顆粒を含有し、かつ、2種類の賦形剤[微晶質セルロースと(PVA/ポビドン80:20)]との(1:1)混合物からなる打錠マトリックスを含有する錠剤の製造
1.錠剤の製造
1.1.オキシコドン顆粒の製造
有効成分(オキシコドンHCl、バッチ番号DV000165;McFarlan Smith,England)および結合剤として働くヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC等級Pharmacoat(登録商標)606,Brenntag)の湿式造粒により顆粒を得る。造粒は流動床(GCPG−1,Wurster,Glatt,Germany)にて、粉末形態の有効成分に結合剤(HPMC)の溶液をボトムスプレーすることによって行う。
【0111】
オキシコドンを流動床に加え、維持する。結合剤溶液を、凝集して顆粒を形成する粉末に噴霧する。蒸発とその後の最終乾燥により水を段階的に除去する。オーブン内での最終乾燥(60℃で16時間)を行い、許容される最終水分含量(6%未満)を得る。
HPMCとオキシコドンの割合を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
造粒工程のパラメーターを表2に示す。第1相は最初の175gの溶液の噴霧に相当し、第2相は残りの185gの噴霧に相当する。
【0114】
【表2】
【0115】
流動床工程後に得られた顆粒は表3に示される特性を有する。
【表3】
【0116】
1.2.打錠マトリックスの製造
微晶質セルロース(アビセル(登録商標)PH102,EMC)と沈殿シリカ(シロイド)(Syloid)(登録商標)244,Keyser & Me Kay)のプレミックスチャーをキュービックミキサー(AR 401,Erweka)にて40rpmで2分間形成させる。ポリビニルアセテート/ポビドン(80:20)の混合物(コリドン(登録商標)SR,BASF)と工程1.1に記載した通り製造したオキシコドン顆粒を前記プレミックスチャーに加え、キュービックミキサーにて40rpmで15分間ホモジナイゼーションを行う。さらに、打錠中の固着と摩擦を制限することを意図した滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム,Quimdis)を前記混合物に混合パラメーター:40rpmにて5分を用いて加える。
オキシコドン顆粒の使用量はオキシコドン40mgを含有する錠剤を製造するという観点で決定する。
【0117】
各賦形剤の割合を表4にまとめる。
【0118】
【表4】
【0119】
1.3.打錠
前記工程で得られた最終混合物の打錠工程は、打錠機(PR−12,Sviac)にて、楕円パンチ11mm×5mmを用いて打錠力35kNで行う。打錠は、通常、打錠される混合物または打錠手段が実際の打錠前またはその工程中のいずれにも加熱を受けることなく行われる。
【0120】
得られた錠剤の特性を表5にまとめる。平均値は20錠について算出した平均に相当する。
【表5】
【0121】
実施例1に従って得られた錠剤は、打錠前または打錠中にマトリックス成分または打錠機を加熱する必要なく、6Mpaという非常に高い耐破砕性を有し、破砕性は無かった。
【0122】
1.4.実施例1に従って得られた錠剤の溶解プロフィール
実施例1に従って得られた錠剤は、それらを事実上崩壊不能とする硬度および破砕性を有するが、このことはそれらが破砕によるその乱用を制限し得る医薬媒体の優れた候補であることを意味する。
【0123】
さらに、本出願者は、これらの錠剤が、たとえ酸であっても水性媒体中に事実上不溶であること、すなわち、溶解試験(24時間)の完了時に、これらの錠剤が、pH6.8の緩衝媒体中およびpH1.2の酸性媒体中の双方で、容器の底にそのまま留まっていることを明らかにした。
【0124】
2.溶解法
実施例1で得られた錠剤の溶解の測定をpH6.8に緩衝させた(リン酸一カリウム/リン酸二ナトリウム)溶解媒体900mL中で、回転パドル法を用い、パドル回転速度100rpmで行う(米国薬局方USP24に従うII型パドル装置)。
【0125】
この溶解媒体をUV検出によるクロマトグラフィー(HPLC)によって連続的に分析する。各サンプルについて、測定は少なくとも3つの容器で行う。
【0126】
溶解試験の結果を図1にまとめる。
予期しないことに、本発明による錠剤は、たとえそれらが不溶であってもやはりそれらが含有する有効成分を長時間、すなわち、8時間を超える期間、好ましくは12時間を超える期間、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって放出する能力を有する。
【0127】
よって、上記錠剤は、「1日1回」型、すなわち、1日に1回の投与を必要とするだけの医薬形態において、特に注目される。
【0128】
実施例2:オキシコドンおよび6.46%HPMCを造粒することにより得られる顆粒を含有し、かつ、2種類の賦形剤(微晶質セルロースとPVA/ポビドン80:20)の(1:1)混合物からなる打錠マトリックスを含有する錠剤の製造
この実施例では、本出願者は、錠剤の溶解プロフィールに対する、造粒工程中に用いる結合剤の量の影響を調べることを意図した。
【0129】
造粒については、今回は結合剤(HPMC,Pharmacoat(登録商標)606)の量が顆粒の総重量の6.46重量%であること以外は、実施例1に関して錠剤を製造するために記載された工程と同一である。これらの顆粒の組成を表6にまとめる。
【0130】
【表6】
【0131】
次に、同じ質および量の配合物を用い、実施例1とまったく同じパラメーターに従って混合および打錠を行う。
【0132】
実施例2に従って得られた錠剤の特性を表7にまとめる。平均値は10錠または20錠について算出した平均である。
【0133】
【表7】
【0134】
実施例2に従って得られた錠剤は6Mpaに相当する非常に強い耐破砕性を示し、破砕性はなかった。このような硬度を得るために、打錠前または打錠中に加熱は必要なかった。
【0135】
次に、これらの錠剤の溶解プロフィールを実施例1に記載の通り検討した。このプロフィールを図2に示す。
結合剤の使用量は24時間にわたって放出速度にほとんど影響を及ぼさない。
【0136】
実施例3:実施例2に従って得られたものにアクアコート(登録商標)ECD−30(エチルセルロース)を用いた外側のフィルムコーティングを施した錠剤
この実施例では、実施例2に従って得られたオキシコドン錠剤に適用された外側のフィルムコーティングの影響の評価を行う。この場合もまた、実際の打錠前であれ打錠中であれ、打錠される混合物または打錠手段のいずれにも加熱をしなかった。
【0137】
1.錠剤の製造
1.1.下地コーティング
実施例2で得られた錠剤に、実際のポリマーでコーティングする前に下地コーティング工程を適用する。
この下地コーティングは錠剤の表面状態の改質を意図したものである。それはHPMC(Pharmacoat(登録商標)603)、消泡剤(シメチコン(Simethicone),Dow Corning)、滑沢剤(微粉タルク,Luzenac(Univar))および静電気防止剤(シロイド 244,Keyser & McKay)の混合物からなり、HPMCは未コーティング錠剤の総重量よりも3%多い重量に相当する。各賦形剤の割合を表8に示す。
【0138】
【表8】
【0139】
この下地コーティングは有孔パン(Trislot)にて常法で行う。
このコーティング法のパラメーターを表9にまとめる。
【表9】
【0140】
1.2.コーティング
事前に下地コーティングした錠剤の実際のコーティングを有孔パン(Trislot)で行う。
【0141】
コーティングはエチルセルロース(アクアコート(登録商標)ECD−30,FMC)の水性分散系を用いて行うが、このエチルセルロースの割合はコーティング済み錠剤の総重量の2.87重量%に相当する。種々の賦形剤の割合を表10に示す。この場合もまた、錠剤の加熱は、下地コーティングまたは実際のコーティングの適用前にも適用中にも特に行わなかった。
【0142】
【表10】
【0143】
このコーティング法のパラメーターを表11にもう一度示す。
【表11】
【0144】
1.3.硬化
これは、フィルムコーティングを安定化させるため、60℃で24時間、コーティング後、有孔パンで行う。
【0145】
錠剤の硬度を高め、通常の方法(ライターまたはスプーン)、また、通常とは言えないがより効果的な方法(例えば、乳鉢、プライヤーまたはハンマー)による破砕を防止するため、これらの錠剤に40℃、湿度75%で長期間(3か月)の硬化を行う。
【0146】
このようにして硬化された錠剤の硬度は500Nを超え、これは7.4MPaを超える耐破砕性に相当する。これらの条件下でも有効成分の放出は維持され、図3に示すように、24時間で90%を超える有効成分が放出される。
【0147】
実施例4:コーティング済みアルコール耐性かつpH非依存性オキシコドン錠剤
コーティング済み徐放性40mgオキシコドン錠剤を製造する(技術バッチ番号XCOX5111)。
実施例1と同様に、まず、オキシコドンを、水および結合剤(HPMC606)の存在下、流動通気床(GPCG1)にて造粒する。
【0148】
4.1.錠剤の製造
4.1.1.打錠マトリックスの製造
微晶質セルロース(アビセル(登録商標)PH102,FMC)と沈殿シリカ(シロイド(登録商標)244,Keyser & Me Kay)とのプレミックスチャーを、キュービックミキサー(AR 401,Erweka)にて40rpmで2分間形成させる。ポリビニルアセテート/ポビドン混合物(80:20)(コリドン(登録商標)SR,BASF)およびオキシコドン顆粒を前記プレミックスチャーに加え、キュービックミキサーにて40rpmで15分間ホモジナイゼーションを行う。さらに、固着と打錠摩擦を制限することを意図した滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム,Quimdis)を前記混合物に混合パラメーター:40rpmにて3分に従って加える。
顆粒の使用量は、オキシコドン40mgを含有する錠剤を製造するように決定する。
【0149】
各賦形剤の割合を下表12にまとめる。
【0150】
【表12】
【0151】
4.1.2.打錠
先の工程で得られた最終混合物の打錠工程は、打錠機(PR−12,Sviac)にて、楕円パンチ(大きさは下表に示されている)を用い、打錠力35kNで行う。
打錠は、実際の打錠前であれ打錠中であれ、打錠される混合物または打錠手段のいずれに対しても加熱を行うことなく常法で行われる。
【0152】
この工程の後に得られたオキシコドン40mgを含有する錠剤は以下の表13に示される特性を有する。
【0153】
【表13】
よって、本発明による錠剤は5MPaを超える非常に高い耐破砕性を有することが確認される。
【0154】
20、40および80mg用量を含有する他の錠剤は異なる方法を用いて製造され、これらのオキシコドン顆粒は高剪断性造粒機で製造される。打錠される混合物は実施例1および2に記載のように製造される。これらの錠剤をSVIAC PR12回転打錠機にて、製造用量に応じて種々の大きさの楕円パンチを用い、10〜15kN程度の打錠力下で打錠する。
【0155】
それらの物理特性を下表14に示す。
【0156】
【表14】
【0157】
このようにして製造された錠剤は総て、本方法中それらの硬度および耐性を高めるために錠剤成分または打錠手段を加熱することに要する時間が全くなくても、それらの大きさにかかわらず、6Mpaを超える優れた耐破砕性を有する。
【0158】
打錠後、40mgの有効成分を含有する「裸の」錠剤を、次に、それらの生体への放出プロフィールを遅延させることを意図した被覆剤でコーティングする。
【0159】
4.1.3.コーティング
錠剤のコーティングは有孔パン(Trislot)で行う。
コーティングには、エチルセルロース(アクアコート(登録商標)ECD−30,FMC)の水性分散系を用い、このエチルセルロースの割合は、コーティング済み錠剤の総重量の2.87重量%に相当する。
コーティングフィルムの硬化は60℃のオーブンで24時間行う。
【0160】
種々の賦形剤と得られたコーティング済み錠剤の一般配合物の割合を下表15に示す。
【表15】
【0161】
用量20、40、80および160mgを含有する他の未コーティング錠剤もまた、上記の方法に従ってコーティングする。
【0162】
コーティング後に見られるそれらの物理特性を下表16に示す。
【表16】
このようにして製造された錠剤は総て、それらの大きさにかかわらず、6Mpaを超える優れた耐破砕性を有する。
【0163】
2.溶解媒体中、アルコールの存在する場合と存在しない場合の溶解曲線
実施例4.3に従って製造されたコーティングした40mg錠剤を2つの条件下で溶解試験する。
a)エタノールを含まない0.1N HCl媒体
b)40%エタノールを含む0.1N HCl媒体
【0164】
溶解条件は次の通り:回転パドル法、パドル回転速度:100rpm、媒体量:900mL、1容器につき1錠。オキシコドンを225nm UV分光光度法によりアッセイする。
【0165】
溶解試験の結果を図4に示す。
溶解媒体中におけるアルコールの存在にかかわらず、本発明による錠剤は徐放性溶解プロフィールを維持することが分かる。
【0166】
3.pHに関する溶解曲線
pH依存性、すなわち、溶解媒体のpH値に関わらず一定の放出プロフィールに維持する能力に関しても、本実施例において上記の通り製造した40mg錠剤を試験した。
【0167】
2つの試験条件を用いた:
pH6.8の溶解媒体
pH1.2の溶解媒体。
【0168】
得られた溶解プロフィールを図5に示す。
溶解媒体の酸度に関わらず、本発明による錠剤は一定の徐放性プロフィールを維持することが確認される。
よって、これらの錠剤はpH非依存性であり、それらが、長時間にわたって放出される有効成分種の送達体として使用しうる限り、特定の利点を付与すると考えることができる。
【0169】
4.3.安定性試験
4.3.1.保存安定性
上記の方法に従って得られたオキシコドン40mgを含有するコーティング錠剤について、保存に対する反応を調べるために安定性を検討する。
【0170】
2種類のパック:a)Al/Alアルミニウムブリスターパック、およびb)乾燥剤の存在下のHDPE瓶(高密度ポリエチレン)中、施行ICH標準に従った加速安定性条件(45℃;湿度75%)下、6か月保存する。
【0171】
保存期間後の錠剤の特性を下表17にまとめる。
【表17】
【0172】
4.3.2.保存期間後に得られた溶解プロフィール
これらの溶解プロフィールは以下の条件:回転パドル法、パドル回転速度:100rpm、溶解媒体の容量:900mL、pH6.8下で得られたものである。
【0173】
これらを図6および7に示す。
有効成分の量は時間が経っても維持されるだけでなく、6か月保存した後も有効成分の放出プロフィールと錠剤の最大硬度が維持されていることが分かる。
よって、本発明による錠剤は安定であり、pHにも、溶解媒体中のアルコールの存在(多量の存在であっても)にも依存しない溶解プロフィールを示す。
【0174】
4.4.臨床試験
この実施例で製造された40mg錠剤を、錠剤を受容した患者のオキシコドンの血漿プロフィールを調べるため、in vivoで試験する。
【0175】
健常で絶食した12人の男性および女性志願者を2群に分けて臨床試験(アルゴリズム、カナダ、番号 OXY/24018/001)を行った。処置を行わない中間期(ウォッシュアウト期間)の後、2種類の処置(本発明による錠剤および参照品)が各群において連続的に行われた。
【0176】
この試験に用いた参照品は、1日2回服用する徐放性オキシコドン錠剤(これも40mg用量を含有)オキシコンチン(登録商標)であった(バッチ番号121777、有効期限2007年4月、Purdue)。
【0177】
得られたオキシコドン血漿プロフィールを図8に示す。これらのパラメーターは以下の表18および19で併せてグループ化されている。
【0178】
【表18】
【0179】
【表19】
【0180】
よって、得られた血漿プロフィールは、Cmaxの低下にかかわらず、有効成分のバイオアベラビリティーに損失がないことを示す。
【0181】
結果として、本発明によるオキシコドンを含有するこれらのマトリックス錠剤は、そのCmaxの比が、同用量を含有する持続放出錠剤オキシコンチン(登録商標)の投与後に見られるCmaxに対して0.7を超えないヒトにおける1日1回投与後の血漿プロフィールを示す。
【0182】
また、本発明によるオキシコドンを含有するこれらのマトリックス錠剤は、その錠剤で見られるAUC∞の比が、同用量を含有する持続放出錠剤オキシコンチン(登録商標)で見られるAUC∞値に対して80〜125%の生物学的同等性の範囲にあるヒトにおける1日1回投与後の血漿プロフィールを有する。
【0183】
これらの結果は、まさにオキシコドンが参照品と同様に生体によく吸収されることを意味するので特に有利であるが、本発明による錠剤においてはその最大濃度は35%前後まで低下することから、高い血漿濃度で見られる悪影響のリスクに実質的な軽減をもたらす。
【0184】
実施例5:オキシコドンおよびナロキソン錠剤
5.1.錠剤の製造
本発明による錠剤は2つの有効成分、すなわち、オキシコドンとナロキソンとを組み合わせることにより製造される。
【0185】
ナロキソンはオピエート拮抗薬であり、錠剤が注射による投与で不正操作される場合にオキシコドンの活性を阻害する。錠剤が通常の方法(経口経路)で服用される場合には、ナロキソンは経口経路により摂取された際に急速に代謝されるので、その拮抗作用を発揮しない。ここで用いるオキシコドン/ナロキソン塩基の比は4:1である。
【0186】
これらの錠剤は実施例4と同様にして製造される(高剪断性造粒機でオキシコドンを造粒)。それらは打錠前、打錠中または打錠後のいずれにおいても加熱処理を受けない。
【0187】
このようにして製造した錠剤(バッチXCOX5731)の一般配合を下表20にまとめる。
【表20】
【0188】
打錠後、錠剤は、下表21に示される物理特性を有する。
【表21】
【0189】
本発明によれば、2つの有効成分、特に、1つはオピオイド薬、1つは拮抗薬であって静脈経路により投与された場合にオピオイド薬の作用を遮断する拮抗薬、を含有し得る非常に高い耐破砕性を有する錠剤を製造することができることが確認される。
【0190】
5.2.溶解プロフィール
溶解試験は、以下の条件II型パドル装置/100rpm/媒体pH6.8/溶解媒体の容量:900mL/225nmにおける連続UV分光法によるアッセイ/容器の幅:10mm下で前記実施例と同様に行う。
【0191】
プロフィールを図8に示す。
これらの超硬質錠剤は徐放性プロフィール(有効成分の90%が12時間後に放出)を示すことが分かる。
【0192】
実施例6:無機誘導体を含有する錠剤
6.1.錠剤の製造
この試験の目的は、打錠マトリックスの主成分として無機賦形剤を用いる本発明による錠剤を製造することである。
【0193】
オキシコドンと、前記実施例で用いたコリドンSR(登録商標)およびアビセルPH102(登録商標)タイプの賦形剤の代わりにリン酸二カルシウム二水和物(エンコンプレス(登録商標))とを含有する錠剤を製造する。
【0194】
製造方法は実施例1に記載したものと同一である(オキシコドンを造粒した後、打錠混合物の粉末賦形剤と物理的に混合する)。
【0195】
20mg用量を含有するこれらの錠剤(バッチXCOX5723)の一般的な製造配合を下表22に示す。
【表22】
【0196】
得られた混合物を実施例1と同様に打錠する。
打錠後の錠剤の物理特性を下表23に示す。
【表23】
【0197】
ここでもまた、得られた耐破砕性は、混合物または打錠手段の加熱がなくとも、十分4MPaを超えることが確認される。
【0198】
6.2.溶解プロフィール
このようにして得られた錠剤を次に、溶解媒体中に入れる。
溶解条件は次の通りである:II型パドル装置;パドル回転速度:100rpm;媒体pH6.8;溶解媒体の容量:900ml;225nmにおける連続UV;容器10mm。
【0199】
結果を図9に示す。
無機賦形剤を用いて得られた本発明による錠剤は比較的長時間にわたってオキシコドンを放出することができることが分かる。
【0200】
実施例8:薬物乱用試験
8.1.破砕試験
この実施例の目的は、参照オキシコドン品(オキシコンチン(登録商標))の錠剤に比べて、崩壊または破砕し、本発明のオキシコドン錠剤から所望により粉末を得ることが困難であるかどうかを調べることである。
【0201】
この工程を実施するために4つの手段を選択し、難度が増す順番に並べた。
・ナイフ(Opinel(登録商標)ポケットナイフタイプ)
・コーヒースプーン
・コンビネーションプライヤー
・ガラス乳鉢と乳棒(実験ガラス器具)
【0202】
破砕難度の評価を錠剤硬度に関して行った。
供試したオキシコドン錠剤の物理特性を表24に示す。
【0203】
【表24】
参照錠剤の耐破砕性は、本発明による錠剤よりも3.3倍低い。
【0204】
プライヤーを用いると、参照品でも本発明による錠剤でも錠剤を粗く破砕することができた(1〜2mm片)。
両場合とも、プライヤーを用いた粗破砕後、実験用乳鉢を用いて微粉末を得ることができた。しかしながら、本発明の完全な錠剤に対しては乳鉢を用いても破砕することができなかった。
【0205】
用いた手段に対する、各錠剤種で見られた破砕難度を下表25にまとめる。
【表25】
【0206】
参照品オキシコンチン(登録商標)は、用いる手段によらず、かなり容易に破砕することができる。その硬度は低いので、小片となる傾向がある。
【0207】
他方、本発明による錠剤はコンビネーションプライヤーでしか破砕することができず、ナイフでは切断することはできるが、破砕はできない。切断後、その小片は乳鉢ですりつぶすことができる。
【0208】
8.2.溶解試験
完全な錠剤に比べての溶解プロフィールに対する切断および破砕の影響を分析するため、ナイフで半分に切断した錠剤とプライヤーで粗く破砕した錠剤に対して溶解試験を行う。この試験は実施例4に従って製造したバッチXCOX5726およびオキシコンチン(登録商標)参照品で行う。
【0209】
溶解方法は次の通りである:連続溶解、溶解媒体pH6.8、1容器当たり媒体900ml、回転パドル法、パドル回転速度:100rpm、用量:1容器当たり有効成分40mg、容器の厚さ:10mm;UV分光法による測定(波長λ=225nm)。読み取りは最初の1時間は5分ごと、その後、24時間まで15分ごとに行う。
【0210】
pH6.8媒体における溶解で得られた結果を下表26および図11に示す。
【表26】
【0211】
pH6.8媒体において、参照品の溶解プロフィールは、裸の錠剤、すなわち、徐放性コーティング無しの錠剤を対象としたものに近いが、本発明による錠剤(「QD」)のプロフィールは徐放性錠剤を対象としたものに近いことが確認される。
【0212】
錠剤を半分に切断した場合は溶解が加速され、この加速は、両種の錠剤とも、錠剤を小片に切断すると高まり、有効成分は経口経路による吸収に対してより急速に利用可能となる。
しかしながら、本発明による錠剤、破砕した「QD」錠剤中のオキシコドンのプロフィールは徐放性プロフィールを維持する。
【0213】
8.3.有効成分の抽出に関する評価
供試錠剤はまた、注射のためのそれらの有効成分の抽出に関しても評価する。
本出願者は、汚染されたシリンジの交換による病原体の伝染を防ぐ目的で、薬局で入手可能ないわゆるSteribox(登録商標)を用いて薬物常用をデザインした。
【0214】
Steribox(登録商標)は、
・1mlシリンジ2本、
・5mlの注射製剤用水2用量、
・カップ、いわゆるStericup(登録商標)2個、
・フィルター2枚
を含む。
【0215】
参照品および本発明による錠剤からのオキシコドンの抽出は各バッチに対して次のようにして行う:
・完全な錠剤に対して2回試験、
・プライヤーで粗く破砕した錠剤に対して2回試験、
・プライヤーの後、乳鉢と乳棒で破砕した本発明による錠剤に対して2回試験、および
・直接乳鉢で破砕した参照錠剤に対して2回試験。
供試した抽出媒体は、Steribox(登録商標)とともに供給されている水の最大利用量(2ml)である。
【0216】
抽出に用いた操作方法は、Steribox(登録商標)とともに供給されている説明書に記載されているものである。
1−調製したサンプル(そのまま、粗く破砕または粉砕)をカップに入れる。
2−計量ピペットを用いて2mlの水を加える。
3−シリンジのプランジャーを用いて2分間混合する。
4−カップの内容物をライターで1分間加熱する。
5−加熱後、残りの容量を確認する:残りの容量は1.7ml。
6−この溶液を、Steribox(登録商標)に入っている無菌フィルターを予めシリンジに入れたものを用いて濾過する。必要であれば、カップの溶液をシリンジに入れるためにピペットを用いる。
7−有効成分20mg/100mlの理論濃度が得られるように濾液を水で希釈する。
8−参照品と試験品に関して抽出溶媒を水に替えて分析を行う。
これらの各試験に関して得られた内容物の結果および抽出収率を下表27にまとめる。
【0217】
【表27】
【0218】
抽出収率は、用いた錠剤にかかわらず、完全な錠剤では低いことが分かる。
しかしながら、抽出収率は総ての試験でオキシコンチン(登録商標)に関してより高い。特に、本発明による錠剤を粗く破砕した際には、同じ条件下で用いた参照品よりも、放出する有効成分は5分の1近く低い。
【0219】
これらの結果から、静脈内経路による乱用は本発明によるオキシコドン「QD」錠剤よりもオキシコンチン(登録商標)でより容易に達成され得ることが示される。
【0220】
オキシコンチン(登録商標)の良好な抽出を得るのに必要とされるのはプライヤーだけであるが、本発明によるオキシコドン「QD」錠剤の場合には、効果的な破砕を達成し、それにより抽出収率を高めるにはさらなる手段が必要とされる。よって、本発明による錠剤は、オピオイド成分の薬物乱用を抑止するのに特に有効である。
【0221】
実施例9:ヒドロモルフォンのマイクロ錠剤
9.1.錠剤の製造
この実施例では、疼痛治療に用いられる、従って薬物乱用の対象となる強力な鎮痛作用を有するモルヒネに由来するアルカロイドであるヒドロモルフォンを含有する、極めて硬い非コーティング錠剤が本発明に従って製造される。
3mg用量のヒドロモルフォンを含有する3mm径のマイクロ錠剤が製造される。
【0222】
9.1.1.成分の製造
錠剤の組成を下表28にまとめる。
【表28】
【0223】
9.1.2.打錠
ヒドロモルフォンをまず、大きな粒子および他の凝集塊を除去することを意図したスクリーニング工程後、賦形剤と混合し、打錠混合物(アビセルPH102、コリドン(登録商標)SRおよびシリカ)を形成する。混合は通常のブレンダー(Vブレンダー)にて20分間、乾式工程を用いる。次に、粉末ステアリン酸マグネシウムをこの混合物に加え、全体を再び2〜5分間混合する。得られた最終混合物の打錠は、6ステーションSviac RT6回転打錠機にて、3mm径の超深凹パンチを用いた混合物の直接打錠により得られる。適用打錠力は17.8KNである。
【0224】
得られた錠剤の特性を下表29に示す。
【表29】
【0225】
得られる錠剤の硬度は108Nを超え、すなわち、6.8MPaを超える耐破砕性であり、破砕性は無い。
【0226】
9.1.3.溶解プロフィール
この方法で製造された錠剤の溶解プロフィールを、3つの条件下で12時間UV分光法により測定する。
a)0.1N HCl媒体中、アルコール不含
b)0.1N HCl媒体中、20%アルコール含有
c)0.1N HCl媒体中、40%アルコール含有。
溶解条件は次の通りである。II型パドル装置;パドル回転速度:100rpm;溶解媒体の容量:500ml;37℃;フィルター45μm;サンプリング時間5、15、30、45、60、120、180および240分での自動サンプリング;1.0cmセルを用い、280nmにおいてUV分析;各容器にヒドロモルフォン10錠を入れる(30mg/容器に相当)。
【0227】
溶解結果を図12に示す。
総ての場合において、本発明による錠剤は、溶解媒体中のエタノールの存在によって改質されない徐放性プロフィールを示すことが分かる。
【0228】
よって、本発明のヒドロモルフォン錠剤は優れた耐破砕性と良好なアルコール耐性の双方を有する。従ってそれらは、事故的誤用または薬物乱用の対象となり得る有効成分にとって十分好適である。
【0229】
実施例10:硫酸モルヒネの錠剤
この実施例では、硫酸モルヒネを含有する超硬質、非コーティング錠剤を製造し、溶解媒体中に存在するアルコールに対するそれらの耐性と、商標Avinza(登録商標)として市販されている硫酸モルヒネ処方物の耐性とを比較する。本発明による錠剤は用量30mgを含有する。
【0230】
10.1.1.処方物
まず、硫酸モルヒネの微顆粒を、大きさ500〜600μmの中性粒子を結合剤:HPMCを用いてコーティングすることにより製造する。
【0231】
次に、これらの微顆粒を乳鉢で粉砕して、均一な混合を可能とする微細な粒径を得る。その後、これらの粉砕物を打錠賦形剤と混合し、本発明による超硬質錠剤の製造に使用し得る混合物を得る。各賦形剤の種類および割合を表30にまとめる。
【0232】
【表30】
【0233】
10.1.2.打錠
得られた最終混合物の打錠は、10mm径の円形パンチおよび打錠力26.1kNを用い、打錠機(PR−12、Sviac)にて行う。
【0234】
このようにして得られた錠剤の特性を下表31に示す。
【表31】
【0235】
得られた錠剤の硬度は343Nを超え、すなわち、5.9MPaを超える耐破砕性であり、破砕性は無い。
【0236】
10.1.3.溶解プロフィール
本発明に従って製造された錠剤の溶解プロフィールを、3つの条件下でpH6.8にて12時間UV分光法により測定する。
a)媒体中、アルコール不含
b)媒体中、20%アルコール含有
c)媒体中、40%アルコール含有。
【0237】
溶解条件は次の通りである。回転パドル装置;溶解媒体の容量:500mL;パドル回転速度=100rpm;容器当たり30mg錠1個。
【0238】
溶解結果を図13に示す。
総ての場合において、本発明による錠剤は、溶解媒体中のエタノールの存在によって影響を受けない徐放性プロフィールを有することが分かる。従って、これらの錠剤はアルコールに対して大きな耐性を有し、他の市販の徐放性硫酸モルヒネ錠剤に優る本発明による錠剤の明白な優位性を付与する。
【0239】
本発明に従って製造された錠剤、および市販の硫酸モルヒネ錠剤(Avinza(登録商標))に対して比較溶解試験を行った。用いた溶解方法は、溶解媒体が0.1N HCl媒体であること以外は前記のものと同様であった。2つの条件を試験した:20%エタノールの存在下での0.1N HCl媒体(A)および40%エタノールの存在下での0.1N HCl媒体(B)。
【0240】
溶解結果を図14に示す。
市販品は極めて急速な溶解プロフィールを示し、徐放型ではない。さらに、媒体中に存在するアルコールの量とともに溶解速度が高まることから、アルコール耐性が低い。
他方、本発明による錠剤の溶解速度は媒体中のアルコールの存在によって改質されない。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】リン酸バッファー媒体pH6.8(リン酸一カリウム/リン酸二ナトリウム)における、実施例1に従って得られた非フィルムコーティング40mgオキシコドンHCl錠の溶解プロフィールを示す。
【図2】pH6.8における、実施例2に従って得られた非フィルムコーティング40mgオキシコドンHCl錠剤の溶解プロフィールを示す。
【図3】リン酸バッファー媒体pH6.8(リン酸一カリウム/リン酸二ナトリウム)における、エチルセルロースEC30D層でフィルムコーティングされ、実施例3の条件下で硬化を行った実施例2の錠剤の溶解プロフィールを示す。
【図4】エタノールフリー0.1N HCl媒体中、および40%エタノール含有0.1N HCl媒体中での、実施例4に従って評価されるような、本発明によるオキシコドンマトリックス錠剤の溶解プロフィールの比較を示す。
【図5】実施例4に記載の操作方式による、pHの異なる(1.2および6.8)2つの異なる媒体中における、本発明によるオキシコドンマトリックス錠剤の溶解プロフィールを示す。
【図6】実施例4の条件下で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月および6ヶ月の加速安定性条件下、alu/aluブリスターパック中、保存期間後の本発明の40mgオキシコドン錠剤の24時間溶解プロフィールを示す。
【図7】1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月の加速安定性条件下、乾燥剤の入ったHDPE瓶中、保存期間の後の本発明の20mgオキシコドン錠剤の24時間溶解プロフィールを示す。
【図8】実施例4による、本発明の40mgオキシコドン錠剤および参照品オキシコンチン(登録商標)の40mgオキシコドン錠剤についての1日1回投与後のオキシコドンの血漿プロフィールを示す。
【図9】実施例5による、オキシコドンおよびナロキソンの超硬質、非コーティング錠剤の、pH6.8における24時間溶解プロフィールを示す。
【図10】20mgオキシコドンを含有する非コーティング、超硬質錠剤の、pH6.8における10時間溶解プロフィールを示す。
【図11】完全な錠剤、半分に切断した錠剤または砕いた錠剤(「錠剤片」)に関して、本発明による錠剤(「QD」)および参照品オキシコンチン(登録商標)錠剤(ref)で見られた、pH6.8における溶解プロフィールを示す。
【図12】実施例9による、水性媒体(0.1N HCl)中のヒドロモルフォン微顆粒の溶解プロフィールであって、エタノール不含、20%エタノールの存在下、および40%エタノールの存在下の3つの溶解条件下4時間の溶解プロフィールを示す。
【図13】実施例10による、エタノール不含でpH6.8、20%エタノールの存在下でpH6.8、および40%エタノールの存在下でpH6.8の溶解媒体中、12時間の硫酸モルヒネ微顆粒の溶解プロフィールを示す。
【図14】実施例10による、A)0.1N HCl媒体中20%エタノール、またはB)0.1N HCl媒体中40%エタノールの存在下での、本発明による硫酸モルヒネの超硬質錠剤と市販の硫酸モルヒネ錠剤(Avinza(登録商標))との間の比較溶解試験を示す。
【発明の背景】
【0001】
本発明は、顕著に高い耐破砕性を有する不溶性マトリックス錠剤に関する。
【0002】
通常の条件下で崩壊不能であり、破砕性が無く、水性媒体に不溶であるマトリックス錠剤は、破砕、溶解および注射による、または破砕および吸入による物質の常習的な乱用を減少させ、さらには防止することができることから、向精神薬のリザーバーとして特に注目される。
【0003】
本発明はまた、上記錠剤を得る方法、および徐放、経口投与における、有効成分、特に向精神性有効成分の使用に関する。
【0004】
徐放性オピエート、特にオキシコドンを含有する錠剤に関しては、事故的誤用事件としていくつかの局面が想定される。第一に、それは投与条件に留意できないことから起こり得る。飲み込むことが意図されている錠剤が偶然に患者によって噛み砕かれるということも起こり得る。その構造が有効成分の放出の遅延を意図したものである錠剤が完全または部分的に崩壊した結果は危険であり、患者にとって致命的でありさえすることが分かるであろう(過剰用量は過剰摂取につながる)。これが、薬剤オキシコンチン(登録商標)LPとともに供給されている説明書に「この錠剤は噛まないで丸ごと飲み込まなければならない」と特記している理由である。
【0005】
また、徐放性オキシコドンをはじめとする薬剤の事故的誤用も、患者が同時に、または短時間内に多量のアルコールとともに薬剤を服用した場合に見られている。
【0006】
徐放型のヒドロモルフォンでは、胃におけるアルコールの存在が、有効成分の徐放のためにデザインされた賦形剤層を損ない、多量の有効成分の生体への放出(「過量放出(dose-dumping」)に至ることが実際に観察されており、これもまた危険な過剰摂取の原因である。
【0007】
例えば、オキシコンチン(登録商標)LPとともに供給されている説明書によれば、禁忌の一覧に、この薬剤とともにアルコールを摂取することは避けるべきであるとされている。
【0008】
同様に、米国では、FDA(食品医薬品局)がオキシコンチン(登録商標)処置を受ける患者に処置中はアルコール飲料を摂取しないように厳しい警告を発している(特に、http://www.fda.gov/cder/drug/infopage/オキシコンチン/オキシコンチン-qa.htm参照)。
【0009】
従って、簡単で快適な投与経路(経口経路)を維持しつつ、この種の事故的誤用を防止して患者の安全性を高める実質的な必要性がある。
【0010】
1990年にフランスの医薬市場において、当初は注射用形態で充填されていたオピエート薬の代替治療薬が舌下錠の形態(Temgesic(登録商標))で出されて以来、薬物常用による、ある種の向精神薬の乱用現象の増加が見られる。
【0011】
故意の誤用または不法使用(またはより通常には「薬物乱用」)という用語は、常習目的でのある種の医薬品の使用、特に、ある種の向精神薬または麻薬、例えば、重篤な疼痛治療またはオピエート薬の常習の治療を意図したオピオイドまたはそれらの誘導体の使用を称するために用いる。
【0012】
経口経路を通常意図する徐放性有効成分の非経口/鼻腔経路による乱用は、薬物常用者に、最初の処方物中に存在する全有効成分の即時的、蓄積的向精神作用を達成する機会を与える。
【0013】
例えば、薬物常用者の代替治療としてTemgesic(登録商標)の名称で製剤として初期に販売された強力なオピオイド鎮痛薬であるブプレノルフィンについての特定の場合には、販売された治療薬の25%〜30%が非経口または鼻腔経路による乱用を招くと推測される。同じことが、何千人ものオピオイド薬物常用者のうち数十人に代替治療として公式に用いられたSubutex(登録商標)と呼ばれる製剤(Schering Ploughにより製造された高用量ブプレノルフィンを含む舌下錠)にも当てはまり、消費者の34%が注射により、またおよそ30%が鼻腔経路によりこの薬物を乱用すると推測される。
【0014】
薬物乱用の現象は、重篤な疼痛の治療を意図した製剤、例えば、硫酸モルヒネ(Skenan(登録商標))およびオキシコドン(Moscontin(登録商標)、オキシコンチン(登録商標)LP)または中程度の疼痛の治療を意図した製剤(Neocodion(登録商標))でも見られる。これらの徐放性形態は、長時間疼痛を制限することを意図した多量のオピオイドを含有しており、その乱用によりモルヒネ誘導体の大量の放出を生じる。
【0015】
薬物乱用はまた、他種の治療薬剤、特にベンゾジアゼピン(Rohypnol(登録商標))に、また、程度は低いがある種の神経治療薬(Artane(登録商標)抗パーキンソン薬)にも影響を及ぼす。
【0016】
結果として、これらの治療薬または代替治療は、単に処方による取り組みが可能な場合(その用量は1日に錠剤10錠にまでなり得る)では、非経口投与(注射)および鼻腔投与(吸入)という、2つの主要な乱用形式の対象となる。
【0017】
注射による乱用に関しては、目的の有効成分を含有する錠剤またはカプセルは、薬物常習に利用できる可能性のあるいずれかの手段、特に、乳鉢またはライターを用いて、さらには単に錠剤を咀嚼またはかみ砕くことによって微粉末とされる。得られた粗粉末は、その医薬形にもともと存在する賦形剤を必ず含み、次にこれを少量の液体(数ミリリットル)に溶解させるのであるが、場合によってはこれを予め加熱し、かつ/または塩基形態で存在するある種の有効成分(ブラウンヘロイン、モルヒネ塩基)に対して酸を加える。得られた液体は次に、例えばシガレットフィルターを用い、血流中に大きな粒子が入らないように大まかに濾過した後、静脈経路により注射される。
【0018】
この場合、放出を遅延させる賦形剤がもはや存在しないことから、有効成分は血流中で即利用可能となり、薬物常用者が求める即時精神作用が生じる。
【0019】
また、吸入による乱用も、その有効成分を鼻内粘膜の微小血管に接近可能とするに十分な微粉末が得られるまで、その医薬形を破砕することからなる。この場合にも、経口投与用に設計された徐放性賦形剤の作用は全く無効となり、期待される即時の精神作用が達成され得ることになる。
【0020】
薬物乱用にはまた、賦形剤、および未精製の破砕残渣、不十分なまたは粗悪な濾過物および無菌でないものを注射しまたは吸入することに直接関連した多くの健康リスクも伴う。最近の研究では、いくつかの不正操作錠剤がシリンジ内で直接溶解され、その後、事前の濾過無く、注射される場合があり、この実践が肺塞栓による多くの死亡の直接的原因となっていることが報告されている。さらにまた、破砕残渣への非滅菌液体形態の酸(レモンジュース)の添加も、明らかに細菌または真菌病原体の伝染(カンジダ症)の原因となっている。
【0021】
従って、これらの実践により、非経口注射それ自体に関連するウイルスおよび細菌の伝染および皮膚科の合併症(膿瘍、壊死)のただでさえ高いリスクは、上昇することになる。また、Subutex(登録商標)錠剤の注射に関しては、錠剤処方物中のコーンスターチの存在がこの賦形剤による浮腫の発生に原因となり、ひと度注射すると、リンパおよび静脈系に蓄積し、下肢のむくみを生じさせる。
【0022】
これらの問題を制限するため、1つのアプローチは、有効成分と、非経口経路により処方物が摂取される際に向精神作用を制限しうる薬剤とを、1つの同じ医薬形に組み合わせることから構成される。
【0023】
これは例えば、米国特許第3,966,940号および同第3,773,955号に最初に記載されている、メタドンとナロキソンとを組み合わせた処方物の場合である。
【0024】
この乱用抑止処方物はブプレノルフィンの特定の場合に再現された。例えば、欧州特許EP0185472は、モルホン受容体において競合拮抗薬として働く有効量のナロキソンも含有するブプレノルフィンの経口処方物を記載している。ナロキソンは経口経路で極めてわずかなバイオアベラビリティーしか持たないので、その医薬品が通常経口投与される限り、ブプレノルフィンの鎮痛作用を妨げることがほとんどない。他方、非経口経路により乱用を受けた場合には、ナロキソンは完全に利用可能となり、ブプレノルフィンの鎮痛作用を阻害する。しかしながら、この種の化学的組合せでは、この経口医薬形は破砕可能、かつ、水性媒体中で可溶であるままである。
【0025】
また、ナルトレキソン(naltrexone)とブプレノルフィン(buprenorphine)を組み合わせた1つの舌下処方物も欧州特許EP0319243に記載されている。この組合せでは、特に、オピオイドに対してのナルトレキソンの拮抗薬作用を高めることができ、しかも、この組成物が非経口経路によって乱用されたとしても、消費者に非多幸感的な鎮痛感覚をもたらす。従って、この種の処方物が薬物常用者の興味をそそることはほとんどなく、薬物乱用の現象の抑制に寄与する。しかしながら、このアプローチは、二つの有効成分の併用手段として必ずしも採用されるものではなく、製造コストおよび医薬品の価格の上昇を招く。
【0026】
さらに、オピオイド剤と拮抗薬との組み合わせのアプローチを用いて、特許出願US2003/0143269には、オピオイド剤と拮抗薬が別に分散されている医薬形態であって、拮抗薬は、通常の経口経路で摂取された場合には放出されないようにコンパートメント内で「隔離」されているものが開示されている。一方で、製品が破砕、構造の損傷によって不正操作されると、二つの有効成分は混合し、向精神性効果を追求することは阻まれる。
【0027】
このアプローチにおいて、上記医薬形態は、乱用に対して優れた役割を果たす。しかしながら、ここでもまた、二つの化学物質の混合が必要であり、製造工程は複雑となり、製造コストも高くなる。
【0028】
また、特許出願US2003/0068392には、オピオイド剤が拮抗薬と組み合わせられているだけでなく、閉じられたコンパートメント内に隔離された刺激剤とも組み合わせられている医薬形態が記載されている。この医薬形態に不正操作をすると、必然的に刺激物の放出がもたらされる。従って、この形態は3つの有効薬剤の組合せと、コンパートメント化された領域の作出とを必要とし、その製造が複雑となり、錠剤などの医薬形態よりもコストが高くなる。
【0029】
他の会社は、オピオイドまたは乱用の対象となり得る物質が拮抗薬と組み合わせられていない医薬系を開発している。例えば、特許出願US2005/0281748は、その有効薬剤と1以上の脂肪酸との間で塩を形成させることにより、目的のオピオイド剤がその親油性を高めるよう改良されている経口投与医薬形態の製造を報告している。
【0030】
この医薬形は、経口経路によって服用された場合、消化管の酵素はこれらの脂肪酸群を徐々に分解し、それらの分解につれ、また、分解の際に有効成分を放出するので、有効成分の徐放性を可能とする。
【0031】
他方、この医薬形態が物理的に不正操作されると、不溶性層でコーティングされた有効成分の微粒子が放出され、水性媒体中での有効成分の即時放出が防止される。該処方物は、有効成分の化学的変換を必要とする。
【0032】
特許出願US2003/0118641には、有効オピオイド成分が親水性ポリマーマトリックスおよび陽イオン樹脂と組み合わせられている、徐放性を有するオピオイドの経口投与形態が記載されている。この樹脂は有効成分と反対の電荷を持っているので、この成分とポリマーマトリックス内で結合し、その抽出を妨げる。
【0033】
上記医薬形態によれば、通常入手可能な溶媒(湯、アルコール、酢、過酸化水素など)を用いたとしても、上記有効化合物を、生体における徐放性を担う賦形剤から分離することはできなくなる。
【0034】
数社が、ゲルを含有する医薬系を開発している。例えば、Pain Therapeutics Inc.およびDurectは、経口または非経口経路を介して投与可能な生分解性ゲルであって、高い粘度を有する薬剤:スクロースアセテートイソブチレート(SAIB)からなるものを用いている。このゲルによれば、オピオイド剤オキシコドンの徐放が可能となる。米国特許第5,747,058号および同第6,413,536号の対象であるこの種のゲルは、これを含有するカプセルが変質または破砕されても、12〜24時間の期間にわたって有効成分を制御放出する能力を維持する。これらの医薬形態における主要な関心は、オキシコドンがそのゲル担体から抽出できず、また、これら処方物(現在第III相臨床試験下のORADUR(登録商標)およびSABER(登録商標)技術を用いたRemoxy(登録商標)製品)の極めて高い粘度のために非経口経路で注射できない、ということにある。
【0035】
上記ゲルはまた、アルコールまたは酸の存在下でオキシコドンの抽出に抵抗する能力を有し、有効成分はこのゲル化剤により形成されたネットワークに捕捉されたままとなる。
【0036】
これらのゲル含有医薬形態は複雑な処方物であり、第一に、工業レベルでは高粘度の液体の使用を必要とするので取扱いが制限され、第二に、錠剤の場合にはないパッケージングに関する主要な制限(バイアルの瓶の使用)を必要とする。
【0037】
極めて硬度の高いマトリックス錠剤を製造する手段も知られている。欧州特許EP0974355には、例えばHPMCなどの従来のポリマー結合剤の存在下、サッカライド種の少なくとも1つの添加剤と混合された水溶性ビタミンを造粒することにより得られた錠剤が記載されている。生体における水溶性ビタミンの即時放出を意図した上記錠剤は、20〜30kp/cm2(キロポンド/cm2)程度の高い硬強度を有し、これはおよそ1.96〜2.94MPaの硬度値に相当する。これらの錠剤は、比較的堅く、90%を超える水溶性ビタミンおよびこれも水溶性である賦形剤(HPMC、糖類)からなるが、体内で急速に崩壊する(崩壊時間は10〜15分の範囲)。上記錠剤は第一に有効成分の徐放性に全く不適であり、第二に水性媒体に容易に溶けるので、それらは乱用される可能性のある物質のための医薬形態として不適合となる。
【0038】
欧州特許EP0933079には、1MPa(1N/mm2)前後から10MPaまで変動する耐破砕性を有するマトリックス錠剤が記載されている。上記錠剤は直接打錠可能な処理済みデンプン粉末から得られている。しかしながら、これらの錠剤は、水性媒体中でおよそ6〜7分程度の比較的短い崩壊時間を有するので、有効成分の急速な放出を意図したものである。これらの錠剤は、この場合にもまた、水性媒体中での急速なその崩壊のために、乱用をされやすく、長時間にわたる放出が意図される有効成分の送達のために使用することができない。
【0039】
欧州特許EP0997143には、極めて高い硬度(1.1MPa、すなわち、11kp/cm2前後)を有し、破砕性が1%未満である両凸(bi-convex)マトリックス錠剤であって、打錠可能で崩壊可能な炭水化物(一般にマンニトール)と結合剤とから主に構成されるマトリックスを打錠した後に得られるものの製造が報告されている。上記チュアブル(chewable)錠は、固体状態で極めて高い硬度を有していたとしても、口内でごく短時間の後に水性媒体中に溶解可能であり、従って、有効成分を体内に急速に放出する。
【0040】
体内での有効成分の徐放を意図し、また高い硬度も有するマトリックス錠剤の製造は米国特許第6,592,901号に報告されている。この文献では、良好な打錠特性を有し、特定の等級のエチルセルロース(セルロースの非イオン性エチルエーテル、Aqualon(登録商標)として販売)を含有する錠剤が得られており、この錠剤はpH依存性で、置換度が高く、粘度が低い。従って、このようにして得られた錠剤の耐破砕性は10〜20kp(キロポンド)程度であり、錠剤の大きさにスケールダウンすれば、1.4〜2.8MPa前後に相当する。また、この特定等級のエチルセルロースは水不溶性であり、液体の拡散、従って、体内での有効成分の放出を制限する。このモデルから得られた錠剤は、24時間後に放出される有効成分が80%未満という放出プロフィールを示すので、この有効成分の放出はゆっくりと行われる。
【0041】
また、極めて強い耐破砕性を有するマトリックス錠剤が、Pontier et al. (Pontier et al. Journal of European Ceramic Society, 22 (2002))に記載されている。特に、その筆者らは、リン酸三カルシウムまたはヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系の無機賦形剤を用い、直接打錠によって極めて硬いマトリックス錠剤を得ることができることを示している。例えば、リン酸三カルシウム粉末から、予め造粒した後、300MPa程度の打錠力下で打錠して、耐破砕性(引張強度)が6.5MPaに達し得る錠剤を得ることができる。しかしながら、この製品は、このような錠剤の長時間にわたって1種類以上の有効成分を放出する能力についても、このような医薬構造の水性媒体中に完全な状態に留まる能力についてもなんら情報を与えていない。
【0042】
C. Pontier (2001年9月25日に提出された“Les phosphates de calcium apatitiques en conpression. De la chimie aux qualites d’usage “These de l’Universite de Paris XI)によるリン酸カルシウムアパタイトに関する論文研究は、打錠後、リン酸カルシウム(特に、ヒドロキシアパタイトおよびリン酸三カルシウム)を含有し、7MPaに達し得る高い耐破砕性を有するマトリックス錠剤を得ることができることを示している。
【0043】
上記錠剤はまた、マトリックス孔からの顆粒拡散により長時間にわたって水性媒体中にテオフィリンを放出する能力を有する(8時間で60%の有効成分が放出される)。しかしながら、この製品からは、錠剤の、水性媒体中に完全な状態で留まる能力、そして、液体媒体中で破砕することによる乱用を防止する能力についてのいずれの結論も引き出すことができない。
【0044】
特許出願US2005/0031546は、常用を起こし得る1種類以上の有効成分と、少なくとも500Nの引張強度を必ず有する少なくとも1種類の合成または天然ポリマーとを含有する乱用抑止医薬形態に関する。具体的に記載されている唯一のポリマーは、所望によりキサンタンガムと複合する分子量7,000,000のエチレンポリオキシドである。
【0045】
これらの錠剤は、加熱工程により、または加熱工程とともに、または加熱工程の後に行われる打錠工程を含む方法を用いて製造することができる。よって、この加熱工程は所望の硬度を得るために必要である。この工程は、たとえ短時間であっても、第一に、熱感受性有効成分には適用できず、第二に、特殊な装置の使用と余分なエネルギー消費を必要とし、プロセスのコストを引き上げる方向へ寄与する。
【0046】
よって、向精神作用を有する有効成分の安全な投与を可能とし、かつ、それは長時間にわたって放出される医薬形態、すなわち、その破砕と溶解の双方を極めて困難にするか、または不能にしさえする医薬構造を有し、さらには、その徐放性を担う薬剤からの有効成分の抽出および分離を防ぐ医薬形態の開発がまさに必要とされている。さらに、この医薬形態は、極めて簡易、すなわち、迅速で低コストの製造方法を用いて製造可能であることが必要である。
【0047】
本出願者は、期せずして、徐放性マトリックス錠剤の形態に簡易に製造され、不溶性でありかつ顕著に硬質の新規な固形経口医薬処方物を見出した。この錠剤を用いれば、事故的誤用の現象を防止すること、および薬物乱用の現象を抑制、さらにはなくすことも可能である。
【0048】
よって、本発明の主題は、1以上の有効成分を生体へ長時間にわたって、好ましくは12時間を超える期間、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって放出することを可能とし、かつ打錠マトリックス内に分散した、薬物乱用の対象となり得る少なくとも1つの有効成分を含んでなる水不溶性マトリックス錠剤であって、マトリックスが、徐放性、pH非依存性、水不溶性のポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含んでなり、賦形剤の量および打錠条件が、錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択されるものである。
【0049】
有利には、上記打錠条件では、実際の打錠前または打錠中のいずれかにおいて、打錠される混合物または打錠手段の加熱を必ずしも必要としない。
【0050】
好ましくは、本発明による錠剤は、それらが含む有効成分、特にオピオイド薬を24時間にわたって放出し得る医薬形態を製造するために使用され、これによりこれらの有効成分の1日1回での服用が可能となる。
【0051】
本発明において、故意の誤用または薬物乱用とは、医薬形態の意図的な変質を表すために用いる。特に、薬物乱用の概念は、錠剤を粉末にまで変形した後、この粉末を吸入するか、または非経口注射のために少量の液体に溶かすことに関する。
【0052】
マトリックス錠剤とは、錠剤の核から周辺に向かってその内部構造が均質かつ同一である錠剤を表すために用いる。よって、本発明による錠剤は、粉末または顆粒形態の有効成分と、徐放性、水不溶性、pH依存性ポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含む打錠マトリックスとから構成される。
【0053】
本発明において、打錠マトリックス(compression matrix)とは、錠剤の結合に関与するあらゆる賦形剤を表すために用いる。上記打錠マトリックスは水不溶性であるとともに、媒体のpHに対して変わらない有効成分の緩徐放出を担う、ある種の透過性(親水性マトリックス)または多孔質ネットワーク(不活性マトリックス)を有する。
【0054】
本明細書において「打錠混合物」とは、錠剤形態へと打錠される前の錠剤のあらゆる構成要素(有効成分(造粒されているかどうかは問わない)、および打錠マトリックスの構成要素)を表すために用いる。
【0055】
本明細書において、耐破砕性および硬度の概念は双方とも、錠剤を特徴付けるために用いられる。硬度は、直径打錠試験(diametral compression test)における錠剤の引張強度を特徴付ける。円形錠剤を、一方は固定され、他方は可動である2つの顎器(jaws)の間に挟む。硬度は、この可動顎器によってかけられた、錠剤をほぼ二等分に破断する力に相当する。それはニュートン(N)またはキロニュートン(kN)で表される(欧州薬局方:参照:01/2005:20908参照)。
【0056】
耐破砕性は、硬度の測定から推定される。これはその力に曝された錠剤の表面積を考慮に入れ、パスカル(Pa)またはメガパスカル(MPa)で表される単位表面積当たりの強度に相当するパラメーターであり、1MPaは1ニュートン/mm2に相当する。耐破砕性は、異なる表面積を有する錠剤の挙動を比較するために特に着目されるパラメーターであるが、これは錠剤サイズのパラメーターに依存する必要がないためである。その計算式は下記の通りである(”Determination of tablet strength by the diametral-compression test”. Fell, J.T.; Newton, J.M. J. Pharm. Sci., 59 (5) : 688-691 (1970)参照):
【0057】
【数1】
(式中、
Rdは、直径錠剤破断負荷(MPa)であり、
Fは、錠剤の硬度(N)であり、
Dは、錠剤の直径(mm)であり、
Hは、錠剤の厚さ(mm)である)。
【0058】
本明細書において「徐放性」ポリマーという表現は、その溶解媒体中への有効成分の放出を制御するために製薬業界で慣用されるポリマーを表すために用いる。本明細書において使用される徐放性ポリマーは水不溶性であり、このことは、周囲の媒体への有効成分の放出が、ポリマーの腐食または緩徐崩壊を伴わない、もっぱら単純な拡散現象によって起こることを意味する。これらのポリマーは、周囲の媒体に相対して、そのポリマーマトリックスからの有効成分の緩徐拡散を担うある種の透過性を効果的に有する。従って、このポリマーの透過性が低下するほど、有効成分の拡散がよりよく持続する。
【0059】
本発明において、pH非依存性ポリマーという表現は、透過性ネットワークまたはマトリックスを形成し得るポリマーを表すために用い、この透過性は周囲の媒体のpHにより影響を受けない。
【0060】
本発明による錠剤は顕著に高い硬度を有する錠剤である(以下、「超硬質錠剤」と呼ぶ)。それらの構造は、それらの破砕が通常の家庭内の技術では想定しえないものであり、水性媒体中、さらには酸性媒体中でさえ、それらの溶解は実質的に不可能である。
【0061】
このような極端な硬度はまた破砕性がほとんど伴わないか、または全く伴わず、このことは、これらの錠剤が例えば向精神薬などの薬物乱用の対象となり得る有効成分に対して選択される医薬形態であることを意味する。この極めて低い破砕性または非破砕性により、これらの錠剤は、慣例技術または家庭内技術(スプーン、乳鉢、ライター)を用いては実質的に非破壊性となる。
【0062】
本発明による錠剤はまた、水性媒体中で、低pH(pH<3)であっても実質的に不溶性である。これらの特徴はそれらの錠剤の非経口経路による投与を困難にする。
【0063】
本発明による錠剤はまたアルコール媒体中でも不溶であり、このことはこれらの錠剤は、アルコールが摂取されるとしても服用可能であり、それにより事故的誤用を回避することを意味する。
【0064】
さらに、本発明による錠剤は、それらの極端に堅い耐用性のある外部構造にもかかわらず、マトリックス中に含まれる有効成分の徐放を可能とする。従って、本発明による錠剤は、8時間を超える期間、好ましくは12時間を超える期間、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって生体へ有効成分の放出を可能とする。
【0065】
有利には、本発明による錠剤は1日1回投与されるオピオイド薬の医薬形態を製造するために使用される。
【0066】
さらに、経口使用に関して認可された既知の徐放性賦形剤と、有効成分を含有する顆粒の混合物からなる、本発明による錠剤のマトリックス構造は極めて単純であり、実際の打錠前または打錠中のいずれにも打錠手段および/または打錠される混合物を加熱する必要なく、単に混合物の打錠行程を必要とするだけであるので、その容易な工業生産が可能となる。
【0067】
有利には、本発明による錠剤の打錠マトリックスは、錠剤の総重量の50〜98重量%、さらに有利には錠剤の総重量の85〜95重量%に相当する。
【0068】
本発明による錠剤のマトリックス組成物中で単独または混合物として使用可能な賦形剤は、有機種であってよく、すなわちセルロース誘導体、特に、微晶質セルロース(例えば、商標アビセル(Avicel)(登録商標)として販売)およびエチルセルロース(例えば、商標Aqualon(登録商標)として販売)、不溶性、pH非依存性メタクリル酸系のポリマー、特に、Eudragit(登録商標)等級のRL12.5、RL PO & RL 100 & RS 12.5、RS POおよびRS 100、ポリビニルアルコール誘導体、乳酸およびグリコール酸(PLGA)のポリマー(polymers of lactic and glycolic acids(PLGA))、デンプン、ワックス、ポリビニルアセテート誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、ならびにポリマー混合物、例えば、微晶質セルロースと[ポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(80:20)]との混合物(商標コリドンSR(登録商標)として販売)、および微晶質セルロースと[ポリ(エチルアクリレート/メチルメタクリレート/トリメチルアモニオエチル(amonioethyl))メタクリレートクロリド)(1:2:0.2)]との混合物からなる群に属する。
【0069】
有利には、本発明における徐放性、水不溶性、pH非依存性のポリマーは、セルロース誘導体、微晶質セルロースと[ポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(80:20)]との混合物(商標コリドンSR(登録商標)として販売)および微晶質セルロースと[ポリ(エチルアクリレート/メチルメタクリレート/トリメチルアモニオエチル(amonioethyl)メタクリレートクロリド)(1:2:0.2)]との混合物からなる群に属する。
【0070】
また、打錠マトリックスにおける賦形剤は無機種のものであってもよく、それらはすなわちリン酸カルシウム(特に、リン酸二カルシウムまたはリン酸三カルシウム)、アルミニウムとケイ素ケイ酸(aluminium and silicon silicates)、および炭酸マグネシウムからなる群に属する。
【0071】
本発明による錠剤における打錠マトリックスは、有利には、上述の数種の賦形剤の混合物からなる。それは微晶質セルロースなどの有機ポリマーおよびビニル誘導体の種々の割合での混合物、または有機ポリマー+カルシウムとケイ素ケイ酸(calcium and silicon silicates)などの無機誘導体+微晶質セルロースの種々の割合での混合物であってもよい。
【0072】
本発明による錠剤における打錠マトリックス中に存在する賦形剤は、有利にはマトリックスの総重量の40〜100重量%、有利にはマトリックスの総重量の50〜90重量%に相当する。
【0073】
本発明の有利な実施形態によれば、打錠マトリックスは2種類のポリマーの(1:1)混合物からなり、有利には微晶質セルロースと混合物[80:20までの割合のポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(商標コリドンSR(登録商標)として販売)]との(1:1)混合物、または微晶質セルロースと[(1:2:0.2)の割合のポリエチルアクリレート/メチルメタクリレート/トリメチルアモニオエチル(amonioethyl)メタクリレートクロリド]との混合物からなる。有利には、これらの2種類のポリマーはそれぞれ、打錠マトリックスの総重量の40%程度に相当する。
【0074】
打錠マトリックスは有利には、打錠マトリックスの賦形剤の他、打錠工程の遂行を促進することを意図した1種類以上の賦形剤(例えば、コロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)またはステアリン酸カルシウムなどの抗凝集剤(anti-adherent agents))、または打錠時に錠剤の結合を促進することを意図した1種類以上の賦形剤(この目的で慣用される結合剤、特に、デンプン、セルロース誘導体、または増量剤、滑沢剤、可塑剤、充填剤、または甘味剤、または着色剤など)を含む。
【0075】
これらの賦形剤は存在する場合には、通常、打錠マトリックスの総重量の0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の間の割合まで使用される。
【0076】
打錠マトリックスはまた、以下の物質(a)〜(f)の少なくとも1つまたはその混合物を含んでいてもよい:
a)鼻道および/または咽頭管(pharyngeal tracts)を刺激する物質、
b)錠剤が最少量の水に溶解される際にゲルの形成をもたらす増粘剤、
c)薬物乱用の対象となり得る有効成分の拮抗薬
d)催吐物質、
e)忌避剤(adversive agent)としての着色剤、
f)苦味物質。
【0077】
有効成分が天然または合成オピエート誘導体である場合、拮抗薬は有利にはナロキソン(naloxone)、ナルトレキソン(naltrexone)、ナルメフェン(nalmefene)、ナリド(nalid)、ナルメキソン(nalmexone)、ナロルフィン(nalorphine)およびナルフィン(naluphine)からなる群から選択され、これらの種々の化合物はそれぞれ薬学上許容される形態、特に、塩基もしくは塩であるか、または溶媒和形態であるかのいずれかである。これらの拮抗薬は慣用される用量で、特に、1錠当たり0.5〜100mgまでの割合で存在する。
【0078】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、拮抗薬はナロキソンまたはその薬学上許容される塩の1つである。
【0079】
よって、本発明による錠剤は、薬物乱用を与え得る有効成分のリザーバーとして特に注目されており、8時間を超える期間、好ましくは12時間を超える期間、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって生体に放出されることが意図される。
【0080】
本発明による錠剤中に含まれる有効成分は、当業者に知られているいずれの形態で存在してもよく、特には粉末、結晶または顆粒形態で存在することができる。
【0081】
本発明による錠剤は1種類以上の有効成分を含んでもよく、種別は問わない。有利には、有効成分は、生体に制御放出される、すなわち、少なくとも8時間、好ましくは12時間超える、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって放出されることを意図して選択される。
好ましくは、本発明による錠剤は1日1回医薬投与形態を製造するために使用される。
【0082】
特に、本発明による錠剤は、薬物乱用を生じうる有効成分、および/またはより一般には、医薬形態の不正操作によって起こる生体へのその急速放出または即時放出が消費者にとって危険または致命的であり得る有効成分の徐放に十分適合している。
【0083】
よって、本発明による錠剤は好ましくは、向精神薬系の属する有効成分、すなわち、刺激作用、精神安定作用または幻覚作用により精神に作用し得る有効成分の徐放に用いられる。
【0084】
よって、本発明下で使用可能な有効成分は好ましくは、天然物であれ合成品であれ、コデイン、ナルセイン(narceine)、ノスカピン(noscapine)およびそれらの塩など、アヘンの誘導体および/またはアルカロイドである。
【0085】
本発明において使用可能な有効成分はまた、モルヒネ、その誘導体およびそれらの塩、特に、フォルコダイン(pholcodine)、ナロルフィン(nalorphine)、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロモルフォンなどのモルヒネン類(morphinenes)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、デキストロメトルファン(dextromethorphane)、ナルブフィン(nalbufine)、ナルトレキソン(naltrexone)、ナロキソン(naloxone)、ナルメフェン(nalmefene)、ヒドロコドン(hydrocodone)、オキシモルフォン(oxymorphone)およびオキシコドン(oxycodone)などのモルヒナン類(morphinanes)、および一般には、モルヒネの総ての類似体、フェンタニル(fentanyl)、トラマドール(tramadol)、アポモルヒネ(apomorphine)およびエトルフィン(etorphine)などの総てのモルヒネ鎮痛薬からなる群に属す。
【0086】
本発明はまた、天然物であれ合成品であれ、コカインまたはヘロインなどの向精神作用を有するアルカロイド誘導体に関する。
【0087】
さらに、本発明はまた、オピエート薬の常用癖を治療するという治療目的に、および/または薬物乱用の対象に特になりやすい例えばメタドンおよびブプレノルフィンなど代替および依存脱却治療(disintoxication treatment)として、現在使用されている物質に関する。
【0088】
一般に、本発明はまた、現在薬物乱用の対象となっている医薬品の他のあらゆる治療薬種、特に、神経弛緩薬(neuroleptics)、精神安定剤、催眠薬、鎮痛薬、抗不安薬、特にベンゾジアゼピン種のものも考慮することができる。
【0089】
本発明による錠剤中の有効成分は、錠剤の総重量の5〜70重量%の間であり得る。有利には、これらの有効成分は、錠剤の総重量10〜50重量%であり得る。これらの有効成分は打錠される混合物に直接加えることもできるし、担体にコーティングすることもできるし(微顆粒を得るため)、あるいは湿式造粒または乾式造粒することもできる(顆粒を得るため)。
【0090】
有効成分が微顆粒の形態である場合には、これらの微顆粒は、「ニュートラルコア」または「シュガースフェア」の名称で販売されているセルロースまたは糖とデンプンとの混合物を含有する既製のマイクロスフェアなどの製薬上中性の担体に有効成分を付着させる(コーティングする)ことによって便宜に得ることができ、あるいはそれらは例えばラクトースなどの他の賦形剤の顆粒であってもよい。
【0091】
有効成分の付着(コーティング)方法は当業者に公知の常法であり、付着される有効成分の種別、量および脆弱性に関して様々であり得る。よって、付着(コーティング)は、中性担体の表面に有効成分の溶液または懸濁液を噴霧することによって、または結合剤溶液で予め湿らせた担体の表面に粉末形態の有効成分を噴霧することによって行うことができる。
【0092】
有効成分の顆粒はまた、一般には少なくとも1種類の結合剤および所望により湿潤剤の存在下、当業者に周知の技術(により、目的の有効成分の乾式造粒または湿式造粒によって得ることができる。
【0093】
このようにして得られた顆粒を打錠マトリックスの賦形剤と混合し、次に、この混合物を打錠する。
【0094】
本発明による錠剤の優れた硬度は、打錠される混合物(打錠マトリックスおよび有効成分)および/または打錠手段(プレス)のいずれにも、打錠前または打錠中に加熱を施す必要なく、得ることができる。
【0095】
有利には、目的の有効成分を含有する顆粒は良好な打錠が得られる直径を有し、すなわち、一般には100〜600μmの間である。
【0096】
本発明の別の実施形態によれば、粒径が許す限り、有効成分を賦形剤と直接混合して打錠マトリックスを形成し、その後、この混合物を直接打錠する。
【0097】
さらに、本発明の別の可能な実施形態は、有効成分と打錠マトリックスの賦形剤とを混合した後、この混合物を乾式造粒または湿式造粒して直接、打錠可能な顆粒を得ることからなる。
【0098】
本発明による錠剤は、高い硬度の錠剤が得られる限り、いずれの形状および大きさであってもよい。有利には、錠剤の総表面積は150mm2未満である。
よって、本発明は、低用量または高用量のいずれの有効成分を含む錠剤の製造にも好適である。
【0099】
本発明の特定の実施形態によれば、錠剤の外側をフィルムコーティングすることができ、このコーティングの必要性および意図する機能に関してどのように適用すればよいかは当業者ならば分かるであろう。
【0100】
例えば、もし例えば胃の媒体の低pHに感受性のある不安定な有効成分であれば、外側のフィルムコーティングは有効成分を保護する目的で適用することができ、この場合には、胃耐性コーティングという用語が用いられる。
【0101】
また、外側のコーティングはマトリックスからの有効成分の拡散をさらに遅延させるためにも適用することができる。この目的で、種々の等級のエチルセルロースが使用可能であり、またはメタクリルポリマー(methacrylic polymers)も当業者によく知られている。
【0102】
さらに、外側のコーティングは、錠剤の外観(テクスチャー、色)および/または嗜好性(味/口あたり)を改良するために使用することができる。特に、必要に応じて有効成分の味をマスキングするために、当業者に周知のセルロース誘導体またはアクリル系誘導体などの賦形剤を使用することができる。
【0103】
よって、上記コーティングは、単独または上記に挙げた種々の機能のために混合物で用いられ、当業者に公知の種々のタイプの1以上の賦形剤の混合物からなり得る。
コーティングに用いられる賦形剤は当業者に公知の方法で、目的の機能を得るために必要な量で適用される。
【0104】
これらの賦形剤は、例えば有孔パンまたは流動床にて、溶媒中のコーティング剤の溶液または懸濁液を噴霧することによる常法で錠剤表面に適用することができる。
【0105】
本発明はまた、本発明による錠剤を製造する方法に関する。この方法は、
有効成分を打錠マトリックスの賦形剤とを混合し、
所望により造粒を行い、
該混合物を該錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択された条件下で打錠し、
所望により錠剤をコーティングすること
を含んでなる。
【0106】
錠剤のコーティングポリマーが徐放性ポリマーである場合、本発明によるコーティング錠剤に対し、有利には、その物理的および化学的安定性を保証するためにコーティングポリマーの硬化を施すことができる。この工程は有効成分の融解温度以下に制御した温度条件下、コーティングポリマーに応じて、相対湿度率50〜99%で1分〜数分の間持続し得る制御された時間で行う。この工程はオーブンまたはパンで行うことができる。
【0107】
有効成分は打錠マトリックスに直接混合することもできるし、あるいは予め調製した顆粒または微顆粒の形態で混合することもできる。この造粒工程は製造される錠剤の均一な耐性を改良する。好ましくは、顆粒に関しては湿式造粒(水性または有機性)が用いられ、また、微顆粒に関しては、有効成分は、中性担体上に溶液または懸濁液を噴霧コーティングすることにより付着させる。
【0108】
打錠は、プレコンプレッションステーションを備えた回転打錠機で行う。打錠パラメーターは、得られる錠剤の硬度が本発明に適合するように選択しなければならない。しかしながら、本発明による錠剤で見られる優れた硬度を達成する目的で、被打錠混合物または打錠手段に対して、打錠前および/または打錠中のいずれにも加熱を行う必要はない。適用される打錠力は10kN〜160kNの間、有利には30kN〜80kNの間である。それらはパンチ材料に適合し、したがって、工業生産速度で使用可能である一方、その引張強度が4MPaより大きい、好ましくは6MPaより大きい錠剤が得られるように選択する。
【実施例】
【0109】
以下に示されている実施例1〜10および図1〜14は、本発明の説明を意図するものであって、その範囲を何ら限定しない。
【0110】
実施例1:オキシコドンHC1と4.87%HPMCの造粒により得られた顆粒を含有し、かつ、2種類の賦形剤[微晶質セルロースと(PVA/ポビドン80:20)]との(1:1)混合物からなる打錠マトリックスを含有する錠剤の製造
1.錠剤の製造
1.1.オキシコドン顆粒の製造
有効成分(オキシコドンHCl、バッチ番号DV000165;McFarlan Smith,England)および結合剤として働くヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC等級Pharmacoat(登録商標)606,Brenntag)の湿式造粒により顆粒を得る。造粒は流動床(GCPG−1,Wurster,Glatt,Germany)にて、粉末形態の有効成分に結合剤(HPMC)の溶液をボトムスプレーすることによって行う。
【0111】
オキシコドンを流動床に加え、維持する。結合剤溶液を、凝集して顆粒を形成する粉末に噴霧する。蒸発とその後の最終乾燥により水を段階的に除去する。オーブン内での最終乾燥(60℃で16時間)を行い、許容される最終水分含量(6%未満)を得る。
HPMCとオキシコドンの割合を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
造粒工程のパラメーターを表2に示す。第1相は最初の175gの溶液の噴霧に相当し、第2相は残りの185gの噴霧に相当する。
【0114】
【表2】
【0115】
流動床工程後に得られた顆粒は表3に示される特性を有する。
【表3】
【0116】
1.2.打錠マトリックスの製造
微晶質セルロース(アビセル(登録商標)PH102,EMC)と沈殿シリカ(シロイド)(Syloid)(登録商標)244,Keyser & Me Kay)のプレミックスチャーをキュービックミキサー(AR 401,Erweka)にて40rpmで2分間形成させる。ポリビニルアセテート/ポビドン(80:20)の混合物(コリドン(登録商標)SR,BASF)と工程1.1に記載した通り製造したオキシコドン顆粒を前記プレミックスチャーに加え、キュービックミキサーにて40rpmで15分間ホモジナイゼーションを行う。さらに、打錠中の固着と摩擦を制限することを意図した滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム,Quimdis)を前記混合物に混合パラメーター:40rpmにて5分を用いて加える。
オキシコドン顆粒の使用量はオキシコドン40mgを含有する錠剤を製造するという観点で決定する。
【0117】
各賦形剤の割合を表4にまとめる。
【0118】
【表4】
【0119】
1.3.打錠
前記工程で得られた最終混合物の打錠工程は、打錠機(PR−12,Sviac)にて、楕円パンチ11mm×5mmを用いて打錠力35kNで行う。打錠は、通常、打錠される混合物または打錠手段が実際の打錠前またはその工程中のいずれにも加熱を受けることなく行われる。
【0120】
得られた錠剤の特性を表5にまとめる。平均値は20錠について算出した平均に相当する。
【表5】
【0121】
実施例1に従って得られた錠剤は、打錠前または打錠中にマトリックス成分または打錠機を加熱する必要なく、6Mpaという非常に高い耐破砕性を有し、破砕性は無かった。
【0122】
1.4.実施例1に従って得られた錠剤の溶解プロフィール
実施例1に従って得られた錠剤は、それらを事実上崩壊不能とする硬度および破砕性を有するが、このことはそれらが破砕によるその乱用を制限し得る医薬媒体の優れた候補であることを意味する。
【0123】
さらに、本出願者は、これらの錠剤が、たとえ酸であっても水性媒体中に事実上不溶であること、すなわち、溶解試験(24時間)の完了時に、これらの錠剤が、pH6.8の緩衝媒体中およびpH1.2の酸性媒体中の双方で、容器の底にそのまま留まっていることを明らかにした。
【0124】
2.溶解法
実施例1で得られた錠剤の溶解の測定をpH6.8に緩衝させた(リン酸一カリウム/リン酸二ナトリウム)溶解媒体900mL中で、回転パドル法を用い、パドル回転速度100rpmで行う(米国薬局方USP24に従うII型パドル装置)。
【0125】
この溶解媒体をUV検出によるクロマトグラフィー(HPLC)によって連続的に分析する。各サンプルについて、測定は少なくとも3つの容器で行う。
【0126】
溶解試験の結果を図1にまとめる。
予期しないことに、本発明による錠剤は、たとえそれらが不溶であってもやはりそれらが含有する有効成分を長時間、すなわち、8時間を超える期間、好ましくは12時間を超える期間、さらに好ましくは20時間を超える期間にわたって放出する能力を有する。
【0127】
よって、上記錠剤は、「1日1回」型、すなわち、1日に1回の投与を必要とするだけの医薬形態において、特に注目される。
【0128】
実施例2:オキシコドンおよび6.46%HPMCを造粒することにより得られる顆粒を含有し、かつ、2種類の賦形剤(微晶質セルロースとPVA/ポビドン80:20)の(1:1)混合物からなる打錠マトリックスを含有する錠剤の製造
この実施例では、本出願者は、錠剤の溶解プロフィールに対する、造粒工程中に用いる結合剤の量の影響を調べることを意図した。
【0129】
造粒については、今回は結合剤(HPMC,Pharmacoat(登録商標)606)の量が顆粒の総重量の6.46重量%であること以外は、実施例1に関して錠剤を製造するために記載された工程と同一である。これらの顆粒の組成を表6にまとめる。
【0130】
【表6】
【0131】
次に、同じ質および量の配合物を用い、実施例1とまったく同じパラメーターに従って混合および打錠を行う。
【0132】
実施例2に従って得られた錠剤の特性を表7にまとめる。平均値は10錠または20錠について算出した平均である。
【0133】
【表7】
【0134】
実施例2に従って得られた錠剤は6Mpaに相当する非常に強い耐破砕性を示し、破砕性はなかった。このような硬度を得るために、打錠前または打錠中に加熱は必要なかった。
【0135】
次に、これらの錠剤の溶解プロフィールを実施例1に記載の通り検討した。このプロフィールを図2に示す。
結合剤の使用量は24時間にわたって放出速度にほとんど影響を及ぼさない。
【0136】
実施例3:実施例2に従って得られたものにアクアコート(登録商標)ECD−30(エチルセルロース)を用いた外側のフィルムコーティングを施した錠剤
この実施例では、実施例2に従って得られたオキシコドン錠剤に適用された外側のフィルムコーティングの影響の評価を行う。この場合もまた、実際の打錠前であれ打錠中であれ、打錠される混合物または打錠手段のいずれにも加熱をしなかった。
【0137】
1.錠剤の製造
1.1.下地コーティング
実施例2で得られた錠剤に、実際のポリマーでコーティングする前に下地コーティング工程を適用する。
この下地コーティングは錠剤の表面状態の改質を意図したものである。それはHPMC(Pharmacoat(登録商標)603)、消泡剤(シメチコン(Simethicone),Dow Corning)、滑沢剤(微粉タルク,Luzenac(Univar))および静電気防止剤(シロイド 244,Keyser & McKay)の混合物からなり、HPMCは未コーティング錠剤の総重量よりも3%多い重量に相当する。各賦形剤の割合を表8に示す。
【0138】
【表8】
【0139】
この下地コーティングは有孔パン(Trislot)にて常法で行う。
このコーティング法のパラメーターを表9にまとめる。
【表9】
【0140】
1.2.コーティング
事前に下地コーティングした錠剤の実際のコーティングを有孔パン(Trislot)で行う。
【0141】
コーティングはエチルセルロース(アクアコート(登録商標)ECD−30,FMC)の水性分散系を用いて行うが、このエチルセルロースの割合はコーティング済み錠剤の総重量の2.87重量%に相当する。種々の賦形剤の割合を表10に示す。この場合もまた、錠剤の加熱は、下地コーティングまたは実際のコーティングの適用前にも適用中にも特に行わなかった。
【0142】
【表10】
【0143】
このコーティング法のパラメーターを表11にもう一度示す。
【表11】
【0144】
1.3.硬化
これは、フィルムコーティングを安定化させるため、60℃で24時間、コーティング後、有孔パンで行う。
【0145】
錠剤の硬度を高め、通常の方法(ライターまたはスプーン)、また、通常とは言えないがより効果的な方法(例えば、乳鉢、プライヤーまたはハンマー)による破砕を防止するため、これらの錠剤に40℃、湿度75%で長期間(3か月)の硬化を行う。
【0146】
このようにして硬化された錠剤の硬度は500Nを超え、これは7.4MPaを超える耐破砕性に相当する。これらの条件下でも有効成分の放出は維持され、図3に示すように、24時間で90%を超える有効成分が放出される。
【0147】
実施例4:コーティング済みアルコール耐性かつpH非依存性オキシコドン錠剤
コーティング済み徐放性40mgオキシコドン錠剤を製造する(技術バッチ番号XCOX5111)。
実施例1と同様に、まず、オキシコドンを、水および結合剤(HPMC606)の存在下、流動通気床(GPCG1)にて造粒する。
【0148】
4.1.錠剤の製造
4.1.1.打錠マトリックスの製造
微晶質セルロース(アビセル(登録商標)PH102,FMC)と沈殿シリカ(シロイド(登録商標)244,Keyser & Me Kay)とのプレミックスチャーを、キュービックミキサー(AR 401,Erweka)にて40rpmで2分間形成させる。ポリビニルアセテート/ポビドン混合物(80:20)(コリドン(登録商標)SR,BASF)およびオキシコドン顆粒を前記プレミックスチャーに加え、キュービックミキサーにて40rpmで15分間ホモジナイゼーションを行う。さらに、固着と打錠摩擦を制限することを意図した滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム,Quimdis)を前記混合物に混合パラメーター:40rpmにて3分に従って加える。
顆粒の使用量は、オキシコドン40mgを含有する錠剤を製造するように決定する。
【0149】
各賦形剤の割合を下表12にまとめる。
【0150】
【表12】
【0151】
4.1.2.打錠
先の工程で得られた最終混合物の打錠工程は、打錠機(PR−12,Sviac)にて、楕円パンチ(大きさは下表に示されている)を用い、打錠力35kNで行う。
打錠は、実際の打錠前であれ打錠中であれ、打錠される混合物または打錠手段のいずれに対しても加熱を行うことなく常法で行われる。
【0152】
この工程の後に得られたオキシコドン40mgを含有する錠剤は以下の表13に示される特性を有する。
【0153】
【表13】
よって、本発明による錠剤は5MPaを超える非常に高い耐破砕性を有することが確認される。
【0154】
20、40および80mg用量を含有する他の錠剤は異なる方法を用いて製造され、これらのオキシコドン顆粒は高剪断性造粒機で製造される。打錠される混合物は実施例1および2に記載のように製造される。これらの錠剤をSVIAC PR12回転打錠機にて、製造用量に応じて種々の大きさの楕円パンチを用い、10〜15kN程度の打錠力下で打錠する。
【0155】
それらの物理特性を下表14に示す。
【0156】
【表14】
【0157】
このようにして製造された錠剤は総て、本方法中それらの硬度および耐性を高めるために錠剤成分または打錠手段を加熱することに要する時間が全くなくても、それらの大きさにかかわらず、6Mpaを超える優れた耐破砕性を有する。
【0158】
打錠後、40mgの有効成分を含有する「裸の」錠剤を、次に、それらの生体への放出プロフィールを遅延させることを意図した被覆剤でコーティングする。
【0159】
4.1.3.コーティング
錠剤のコーティングは有孔パン(Trislot)で行う。
コーティングには、エチルセルロース(アクアコート(登録商標)ECD−30,FMC)の水性分散系を用い、このエチルセルロースの割合は、コーティング済み錠剤の総重量の2.87重量%に相当する。
コーティングフィルムの硬化は60℃のオーブンで24時間行う。
【0160】
種々の賦形剤と得られたコーティング済み錠剤の一般配合物の割合を下表15に示す。
【表15】
【0161】
用量20、40、80および160mgを含有する他の未コーティング錠剤もまた、上記の方法に従ってコーティングする。
【0162】
コーティング後に見られるそれらの物理特性を下表16に示す。
【表16】
このようにして製造された錠剤は総て、それらの大きさにかかわらず、6Mpaを超える優れた耐破砕性を有する。
【0163】
2.溶解媒体中、アルコールの存在する場合と存在しない場合の溶解曲線
実施例4.3に従って製造されたコーティングした40mg錠剤を2つの条件下で溶解試験する。
a)エタノールを含まない0.1N HCl媒体
b)40%エタノールを含む0.1N HCl媒体
【0164】
溶解条件は次の通り:回転パドル法、パドル回転速度:100rpm、媒体量:900mL、1容器につき1錠。オキシコドンを225nm UV分光光度法によりアッセイする。
【0165】
溶解試験の結果を図4に示す。
溶解媒体中におけるアルコールの存在にかかわらず、本発明による錠剤は徐放性溶解プロフィールを維持することが分かる。
【0166】
3.pHに関する溶解曲線
pH依存性、すなわち、溶解媒体のpH値に関わらず一定の放出プロフィールに維持する能力に関しても、本実施例において上記の通り製造した40mg錠剤を試験した。
【0167】
2つの試験条件を用いた:
pH6.8の溶解媒体
pH1.2の溶解媒体。
【0168】
得られた溶解プロフィールを図5に示す。
溶解媒体の酸度に関わらず、本発明による錠剤は一定の徐放性プロフィールを維持することが確認される。
よって、これらの錠剤はpH非依存性であり、それらが、長時間にわたって放出される有効成分種の送達体として使用しうる限り、特定の利点を付与すると考えることができる。
【0169】
4.3.安定性試験
4.3.1.保存安定性
上記の方法に従って得られたオキシコドン40mgを含有するコーティング錠剤について、保存に対する反応を調べるために安定性を検討する。
【0170】
2種類のパック:a)Al/Alアルミニウムブリスターパック、およびb)乾燥剤の存在下のHDPE瓶(高密度ポリエチレン)中、施行ICH標準に従った加速安定性条件(45℃;湿度75%)下、6か月保存する。
【0171】
保存期間後の錠剤の特性を下表17にまとめる。
【表17】
【0172】
4.3.2.保存期間後に得られた溶解プロフィール
これらの溶解プロフィールは以下の条件:回転パドル法、パドル回転速度:100rpm、溶解媒体の容量:900mL、pH6.8下で得られたものである。
【0173】
これらを図6および7に示す。
有効成分の量は時間が経っても維持されるだけでなく、6か月保存した後も有効成分の放出プロフィールと錠剤の最大硬度が維持されていることが分かる。
よって、本発明による錠剤は安定であり、pHにも、溶解媒体中のアルコールの存在(多量の存在であっても)にも依存しない溶解プロフィールを示す。
【0174】
4.4.臨床試験
この実施例で製造された40mg錠剤を、錠剤を受容した患者のオキシコドンの血漿プロフィールを調べるため、in vivoで試験する。
【0175】
健常で絶食した12人の男性および女性志願者を2群に分けて臨床試験(アルゴリズム、カナダ、番号 OXY/24018/001)を行った。処置を行わない中間期(ウォッシュアウト期間)の後、2種類の処置(本発明による錠剤および参照品)が各群において連続的に行われた。
【0176】
この試験に用いた参照品は、1日2回服用する徐放性オキシコドン錠剤(これも40mg用量を含有)オキシコンチン(登録商標)であった(バッチ番号121777、有効期限2007年4月、Purdue)。
【0177】
得られたオキシコドン血漿プロフィールを図8に示す。これらのパラメーターは以下の表18および19で併せてグループ化されている。
【0178】
【表18】
【0179】
【表19】
【0180】
よって、得られた血漿プロフィールは、Cmaxの低下にかかわらず、有効成分のバイオアベラビリティーに損失がないことを示す。
【0181】
結果として、本発明によるオキシコドンを含有するこれらのマトリックス錠剤は、そのCmaxの比が、同用量を含有する持続放出錠剤オキシコンチン(登録商標)の投与後に見られるCmaxに対して0.7を超えないヒトにおける1日1回投与後の血漿プロフィールを示す。
【0182】
また、本発明によるオキシコドンを含有するこれらのマトリックス錠剤は、その錠剤で見られるAUC∞の比が、同用量を含有する持続放出錠剤オキシコンチン(登録商標)で見られるAUC∞値に対して80〜125%の生物学的同等性の範囲にあるヒトにおける1日1回投与後の血漿プロフィールを有する。
【0183】
これらの結果は、まさにオキシコドンが参照品と同様に生体によく吸収されることを意味するので特に有利であるが、本発明による錠剤においてはその最大濃度は35%前後まで低下することから、高い血漿濃度で見られる悪影響のリスクに実質的な軽減をもたらす。
【0184】
実施例5:オキシコドンおよびナロキソン錠剤
5.1.錠剤の製造
本発明による錠剤は2つの有効成分、すなわち、オキシコドンとナロキソンとを組み合わせることにより製造される。
【0185】
ナロキソンはオピエート拮抗薬であり、錠剤が注射による投与で不正操作される場合にオキシコドンの活性を阻害する。錠剤が通常の方法(経口経路)で服用される場合には、ナロキソンは経口経路により摂取された際に急速に代謝されるので、その拮抗作用を発揮しない。ここで用いるオキシコドン/ナロキソン塩基の比は4:1である。
【0186】
これらの錠剤は実施例4と同様にして製造される(高剪断性造粒機でオキシコドンを造粒)。それらは打錠前、打錠中または打錠後のいずれにおいても加熱処理を受けない。
【0187】
このようにして製造した錠剤(バッチXCOX5731)の一般配合を下表20にまとめる。
【表20】
【0188】
打錠後、錠剤は、下表21に示される物理特性を有する。
【表21】
【0189】
本発明によれば、2つの有効成分、特に、1つはオピオイド薬、1つは拮抗薬であって静脈経路により投与された場合にオピオイド薬の作用を遮断する拮抗薬、を含有し得る非常に高い耐破砕性を有する錠剤を製造することができることが確認される。
【0190】
5.2.溶解プロフィール
溶解試験は、以下の条件II型パドル装置/100rpm/媒体pH6.8/溶解媒体の容量:900mL/225nmにおける連続UV分光法によるアッセイ/容器の幅:10mm下で前記実施例と同様に行う。
【0191】
プロフィールを図8に示す。
これらの超硬質錠剤は徐放性プロフィール(有効成分の90%が12時間後に放出)を示すことが分かる。
【0192】
実施例6:無機誘導体を含有する錠剤
6.1.錠剤の製造
この試験の目的は、打錠マトリックスの主成分として無機賦形剤を用いる本発明による錠剤を製造することである。
【0193】
オキシコドンと、前記実施例で用いたコリドンSR(登録商標)およびアビセルPH102(登録商標)タイプの賦形剤の代わりにリン酸二カルシウム二水和物(エンコンプレス(登録商標))とを含有する錠剤を製造する。
【0194】
製造方法は実施例1に記載したものと同一である(オキシコドンを造粒した後、打錠混合物の粉末賦形剤と物理的に混合する)。
【0195】
20mg用量を含有するこれらの錠剤(バッチXCOX5723)の一般的な製造配合を下表22に示す。
【表22】
【0196】
得られた混合物を実施例1と同様に打錠する。
打錠後の錠剤の物理特性を下表23に示す。
【表23】
【0197】
ここでもまた、得られた耐破砕性は、混合物または打錠手段の加熱がなくとも、十分4MPaを超えることが確認される。
【0198】
6.2.溶解プロフィール
このようにして得られた錠剤を次に、溶解媒体中に入れる。
溶解条件は次の通りである:II型パドル装置;パドル回転速度:100rpm;媒体pH6.8;溶解媒体の容量:900ml;225nmにおける連続UV;容器10mm。
【0199】
結果を図9に示す。
無機賦形剤を用いて得られた本発明による錠剤は比較的長時間にわたってオキシコドンを放出することができることが分かる。
【0200】
実施例8:薬物乱用試験
8.1.破砕試験
この実施例の目的は、参照オキシコドン品(オキシコンチン(登録商標))の錠剤に比べて、崩壊または破砕し、本発明のオキシコドン錠剤から所望により粉末を得ることが困難であるかどうかを調べることである。
【0201】
この工程を実施するために4つの手段を選択し、難度が増す順番に並べた。
・ナイフ(Opinel(登録商標)ポケットナイフタイプ)
・コーヒースプーン
・コンビネーションプライヤー
・ガラス乳鉢と乳棒(実験ガラス器具)
【0202】
破砕難度の評価を錠剤硬度に関して行った。
供試したオキシコドン錠剤の物理特性を表24に示す。
【0203】
【表24】
参照錠剤の耐破砕性は、本発明による錠剤よりも3.3倍低い。
【0204】
プライヤーを用いると、参照品でも本発明による錠剤でも錠剤を粗く破砕することができた(1〜2mm片)。
両場合とも、プライヤーを用いた粗破砕後、実験用乳鉢を用いて微粉末を得ることができた。しかしながら、本発明の完全な錠剤に対しては乳鉢を用いても破砕することができなかった。
【0205】
用いた手段に対する、各錠剤種で見られた破砕難度を下表25にまとめる。
【表25】
【0206】
参照品オキシコンチン(登録商標)は、用いる手段によらず、かなり容易に破砕することができる。その硬度は低いので、小片となる傾向がある。
【0207】
他方、本発明による錠剤はコンビネーションプライヤーでしか破砕することができず、ナイフでは切断することはできるが、破砕はできない。切断後、その小片は乳鉢ですりつぶすことができる。
【0208】
8.2.溶解試験
完全な錠剤に比べての溶解プロフィールに対する切断および破砕の影響を分析するため、ナイフで半分に切断した錠剤とプライヤーで粗く破砕した錠剤に対して溶解試験を行う。この試験は実施例4に従って製造したバッチXCOX5726およびオキシコンチン(登録商標)参照品で行う。
【0209】
溶解方法は次の通りである:連続溶解、溶解媒体pH6.8、1容器当たり媒体900ml、回転パドル法、パドル回転速度:100rpm、用量:1容器当たり有効成分40mg、容器の厚さ:10mm;UV分光法による測定(波長λ=225nm)。読み取りは最初の1時間は5分ごと、その後、24時間まで15分ごとに行う。
【0210】
pH6.8媒体における溶解で得られた結果を下表26および図11に示す。
【表26】
【0211】
pH6.8媒体において、参照品の溶解プロフィールは、裸の錠剤、すなわち、徐放性コーティング無しの錠剤を対象としたものに近いが、本発明による錠剤(「QD」)のプロフィールは徐放性錠剤を対象としたものに近いことが確認される。
【0212】
錠剤を半分に切断した場合は溶解が加速され、この加速は、両種の錠剤とも、錠剤を小片に切断すると高まり、有効成分は経口経路による吸収に対してより急速に利用可能となる。
しかしながら、本発明による錠剤、破砕した「QD」錠剤中のオキシコドンのプロフィールは徐放性プロフィールを維持する。
【0213】
8.3.有効成分の抽出に関する評価
供試錠剤はまた、注射のためのそれらの有効成分の抽出に関しても評価する。
本出願者は、汚染されたシリンジの交換による病原体の伝染を防ぐ目的で、薬局で入手可能ないわゆるSteribox(登録商標)を用いて薬物常用をデザインした。
【0214】
Steribox(登録商標)は、
・1mlシリンジ2本、
・5mlの注射製剤用水2用量、
・カップ、いわゆるStericup(登録商標)2個、
・フィルター2枚
を含む。
【0215】
参照品および本発明による錠剤からのオキシコドンの抽出は各バッチに対して次のようにして行う:
・完全な錠剤に対して2回試験、
・プライヤーで粗く破砕した錠剤に対して2回試験、
・プライヤーの後、乳鉢と乳棒で破砕した本発明による錠剤に対して2回試験、および
・直接乳鉢で破砕した参照錠剤に対して2回試験。
供試した抽出媒体は、Steribox(登録商標)とともに供給されている水の最大利用量(2ml)である。
【0216】
抽出に用いた操作方法は、Steribox(登録商標)とともに供給されている説明書に記載されているものである。
1−調製したサンプル(そのまま、粗く破砕または粉砕)をカップに入れる。
2−計量ピペットを用いて2mlの水を加える。
3−シリンジのプランジャーを用いて2分間混合する。
4−カップの内容物をライターで1分間加熱する。
5−加熱後、残りの容量を確認する:残りの容量は1.7ml。
6−この溶液を、Steribox(登録商標)に入っている無菌フィルターを予めシリンジに入れたものを用いて濾過する。必要であれば、カップの溶液をシリンジに入れるためにピペットを用いる。
7−有効成分20mg/100mlの理論濃度が得られるように濾液を水で希釈する。
8−参照品と試験品に関して抽出溶媒を水に替えて分析を行う。
これらの各試験に関して得られた内容物の結果および抽出収率を下表27にまとめる。
【0217】
【表27】
【0218】
抽出収率は、用いた錠剤にかかわらず、完全な錠剤では低いことが分かる。
しかしながら、抽出収率は総ての試験でオキシコンチン(登録商標)に関してより高い。特に、本発明による錠剤を粗く破砕した際には、同じ条件下で用いた参照品よりも、放出する有効成分は5分の1近く低い。
【0219】
これらの結果から、静脈内経路による乱用は本発明によるオキシコドン「QD」錠剤よりもオキシコンチン(登録商標)でより容易に達成され得ることが示される。
【0220】
オキシコンチン(登録商標)の良好な抽出を得るのに必要とされるのはプライヤーだけであるが、本発明によるオキシコドン「QD」錠剤の場合には、効果的な破砕を達成し、それにより抽出収率を高めるにはさらなる手段が必要とされる。よって、本発明による錠剤は、オピオイド成分の薬物乱用を抑止するのに特に有効である。
【0221】
実施例9:ヒドロモルフォンのマイクロ錠剤
9.1.錠剤の製造
この実施例では、疼痛治療に用いられる、従って薬物乱用の対象となる強力な鎮痛作用を有するモルヒネに由来するアルカロイドであるヒドロモルフォンを含有する、極めて硬い非コーティング錠剤が本発明に従って製造される。
3mg用量のヒドロモルフォンを含有する3mm径のマイクロ錠剤が製造される。
【0222】
9.1.1.成分の製造
錠剤の組成を下表28にまとめる。
【表28】
【0223】
9.1.2.打錠
ヒドロモルフォンをまず、大きな粒子および他の凝集塊を除去することを意図したスクリーニング工程後、賦形剤と混合し、打錠混合物(アビセルPH102、コリドン(登録商標)SRおよびシリカ)を形成する。混合は通常のブレンダー(Vブレンダー)にて20分間、乾式工程を用いる。次に、粉末ステアリン酸マグネシウムをこの混合物に加え、全体を再び2〜5分間混合する。得られた最終混合物の打錠は、6ステーションSviac RT6回転打錠機にて、3mm径の超深凹パンチを用いた混合物の直接打錠により得られる。適用打錠力は17.8KNである。
【0224】
得られた錠剤の特性を下表29に示す。
【表29】
【0225】
得られる錠剤の硬度は108Nを超え、すなわち、6.8MPaを超える耐破砕性であり、破砕性は無い。
【0226】
9.1.3.溶解プロフィール
この方法で製造された錠剤の溶解プロフィールを、3つの条件下で12時間UV分光法により測定する。
a)0.1N HCl媒体中、アルコール不含
b)0.1N HCl媒体中、20%アルコール含有
c)0.1N HCl媒体中、40%アルコール含有。
溶解条件は次の通りである。II型パドル装置;パドル回転速度:100rpm;溶解媒体の容量:500ml;37℃;フィルター45μm;サンプリング時間5、15、30、45、60、120、180および240分での自動サンプリング;1.0cmセルを用い、280nmにおいてUV分析;各容器にヒドロモルフォン10錠を入れる(30mg/容器に相当)。
【0227】
溶解結果を図12に示す。
総ての場合において、本発明による錠剤は、溶解媒体中のエタノールの存在によって改質されない徐放性プロフィールを示すことが分かる。
【0228】
よって、本発明のヒドロモルフォン錠剤は優れた耐破砕性と良好なアルコール耐性の双方を有する。従ってそれらは、事故的誤用または薬物乱用の対象となり得る有効成分にとって十分好適である。
【0229】
実施例10:硫酸モルヒネの錠剤
この実施例では、硫酸モルヒネを含有する超硬質、非コーティング錠剤を製造し、溶解媒体中に存在するアルコールに対するそれらの耐性と、商標Avinza(登録商標)として市販されている硫酸モルヒネ処方物の耐性とを比較する。本発明による錠剤は用量30mgを含有する。
【0230】
10.1.1.処方物
まず、硫酸モルヒネの微顆粒を、大きさ500〜600μmの中性粒子を結合剤:HPMCを用いてコーティングすることにより製造する。
【0231】
次に、これらの微顆粒を乳鉢で粉砕して、均一な混合を可能とする微細な粒径を得る。その後、これらの粉砕物を打錠賦形剤と混合し、本発明による超硬質錠剤の製造に使用し得る混合物を得る。各賦形剤の種類および割合を表30にまとめる。
【0232】
【表30】
【0233】
10.1.2.打錠
得られた最終混合物の打錠は、10mm径の円形パンチおよび打錠力26.1kNを用い、打錠機(PR−12、Sviac)にて行う。
【0234】
このようにして得られた錠剤の特性を下表31に示す。
【表31】
【0235】
得られた錠剤の硬度は343Nを超え、すなわち、5.9MPaを超える耐破砕性であり、破砕性は無い。
【0236】
10.1.3.溶解プロフィール
本発明に従って製造された錠剤の溶解プロフィールを、3つの条件下でpH6.8にて12時間UV分光法により測定する。
a)媒体中、アルコール不含
b)媒体中、20%アルコール含有
c)媒体中、40%アルコール含有。
【0237】
溶解条件は次の通りである。回転パドル装置;溶解媒体の容量:500mL;パドル回転速度=100rpm;容器当たり30mg錠1個。
【0238】
溶解結果を図13に示す。
総ての場合において、本発明による錠剤は、溶解媒体中のエタノールの存在によって影響を受けない徐放性プロフィールを有することが分かる。従って、これらの錠剤はアルコールに対して大きな耐性を有し、他の市販の徐放性硫酸モルヒネ錠剤に優る本発明による錠剤の明白な優位性を付与する。
【0239】
本発明に従って製造された錠剤、および市販の硫酸モルヒネ錠剤(Avinza(登録商標))に対して比較溶解試験を行った。用いた溶解方法は、溶解媒体が0.1N HCl媒体であること以外は前記のものと同様であった。2つの条件を試験した:20%エタノールの存在下での0.1N HCl媒体(A)および40%エタノールの存在下での0.1N HCl媒体(B)。
【0240】
溶解結果を図14に示す。
市販品は極めて急速な溶解プロフィールを示し、徐放型ではない。さらに、媒体中に存在するアルコールの量とともに溶解速度が高まることから、アルコール耐性が低い。
他方、本発明による錠剤の溶解速度は媒体中のアルコールの存在によって改質されない。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】リン酸バッファー媒体pH6.8(リン酸一カリウム/リン酸二ナトリウム)における、実施例1に従って得られた非フィルムコーティング40mgオキシコドンHCl錠の溶解プロフィールを示す。
【図2】pH6.8における、実施例2に従って得られた非フィルムコーティング40mgオキシコドンHCl錠剤の溶解プロフィールを示す。
【図3】リン酸バッファー媒体pH6.8(リン酸一カリウム/リン酸二ナトリウム)における、エチルセルロースEC30D層でフィルムコーティングされ、実施例3の条件下で硬化を行った実施例2の錠剤の溶解プロフィールを示す。
【図4】エタノールフリー0.1N HCl媒体中、および40%エタノール含有0.1N HCl媒体中での、実施例4に従って評価されるような、本発明によるオキシコドンマトリックス錠剤の溶解プロフィールの比較を示す。
【図5】実施例4に記載の操作方式による、pHの異なる(1.2および6.8)2つの異なる媒体中における、本発明によるオキシコドンマトリックス錠剤の溶解プロフィールを示す。
【図6】実施例4の条件下で1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月および6ヶ月の加速安定性条件下、alu/aluブリスターパック中、保存期間後の本発明の40mgオキシコドン錠剤の24時間溶解プロフィールを示す。
【図7】1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月の加速安定性条件下、乾燥剤の入ったHDPE瓶中、保存期間の後の本発明の20mgオキシコドン錠剤の24時間溶解プロフィールを示す。
【図8】実施例4による、本発明の40mgオキシコドン錠剤および参照品オキシコンチン(登録商標)の40mgオキシコドン錠剤についての1日1回投与後のオキシコドンの血漿プロフィールを示す。
【図9】実施例5による、オキシコドンおよびナロキソンの超硬質、非コーティング錠剤の、pH6.8における24時間溶解プロフィールを示す。
【図10】20mgオキシコドンを含有する非コーティング、超硬質錠剤の、pH6.8における10時間溶解プロフィールを示す。
【図11】完全な錠剤、半分に切断した錠剤または砕いた錠剤(「錠剤片」)に関して、本発明による錠剤(「QD」)および参照品オキシコンチン(登録商標)錠剤(ref)で見られた、pH6.8における溶解プロフィールを示す。
【図12】実施例9による、水性媒体(0.1N HCl)中のヒドロモルフォン微顆粒の溶解プロフィールであって、エタノール不含、20%エタノールの存在下、および40%エタノールの存在下の3つの溶解条件下4時間の溶解プロフィールを示す。
【図13】実施例10による、エタノール不含でpH6.8、20%エタノールの存在下でpH6.8、および40%エタノールの存在下でpH6.8の溶解媒体中、12時間の硫酸モルヒネ微顆粒の溶解プロフィールを示す。
【図14】実施例10による、A)0.1N HCl媒体中20%エタノール、またはB)0.1N HCl媒体中40%エタノールの存在下での、本発明による硫酸モルヒネの超硬質錠剤と市販の硫酸モルヒネ錠剤(Avinza(登録商標))との間の比較溶解試験を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長時間にわたり1以上の有効成分を生体に放出することを可能とし、かつ打錠マトリックス内に分散した、薬物乱用の対象となり得る少なくとも1つの有効成分を含んでなる水不溶性マトリックス錠剤であって、前記マトリックスが、徐放性、pH非依存性、水不溶性のポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含んでなり、賦形剤の量および打錠条件が、錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択されるものである、水不溶性マトリックス錠剤。
【請求項2】
実際の打錠前または打錠中において、打錠される混合物および打錠手段がいずれも加熱を受けない、請求項1に記載のマトリックス錠剤。
【請求項3】
前記打錠マトリックスが、前記錠剤の総重量の50〜98重量%、有利には85〜95%に相当する、請求項1および2のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項4】
前記打錠マトリックスが、徐放性、pH非依存性、水不溶性のポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物から選択される少なくとも2つの賦形剤の混合物を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項5】
前記徐放性、pH非依存性、水不溶性のポリマーが、セルロース誘導体、水不溶性メタクリル酸、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアセテート誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、乳酸およびグリコール酸のポリマー、デンプン、ワックスおよびそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項6】
前記無機賦形剤が、リン酸カルシウム、アルミニウムとケイ素ケイ酸、炭酸マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項7】
前記ポリマーが、微晶質セルロースと[ポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(80:20)]との混合物、および微晶質セルロースと[ポリ(エチルアクリレート/メチルメタクリレート/トリメチルアモニオエチル(amonioethyl)メタクリレートクロリド)(1:2:0.2)]との混合物からなる群から選択されるものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項8】
前記有効成分が、向精神薬、神経弛緩薬、精神安定剤、催眠薬、鎮痛薬および抗不安薬からなる群から選択されるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項9】
前記有効成分が、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、トラマドール、メタドン、コデイン、フェンタニルおよびブプレノルフィン、それらの塩およびそれらの薬学上許容される誘導体からなる群に属するものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項10】
前記打錠マトリックスがまた、抗凝集剤、打錠時に錠剤の結合を改良し得る薬剤、増量剤、滑沢剤、可塑剤、充填剤、甘味剤および着色剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬学上許容される賦形剤を含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項11】
前記打錠マトリックスがまた、以下の物質(a)〜(f)の少なくとも1以上またはその混合物を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤:
a)鼻道および/または咽頭管を刺激する物質、
b)錠剤が最少量の水に溶解する際にゲルの形成をもたらす増粘剤、
c)催吐物質、
d)忌避着色剤、
e)苦味物質、
f)薬物乱用の対象となり得る有効成分の拮抗薬 。
【請求項12】
薬物乱用の対象となり得る前記有効成分の拮抗薬が、ナロキソンもしくはナルトレキソンまたはそれらの薬学上許容される塩の1つである、請求項11に記載のマトリックス錠剤。
【請求項13】
外被を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項14】
前記外被が、有利にはエチルセルロース誘導体およびメタクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの徐放性ポリマーからなる、請求項13に記載のマトリックス錠剤。
【請求項15】
前記マトリックスが、粗晶質セルロースと[ポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(80:20)]の(1:1)の割合までの混合物からなり、薬物乱用の対象となり得る前記有効成分が、鎮痛薬の群に属するものである、請求項1〜14のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項16】
エチルセルロースからなる外被を有する、請求項15に記載のマトリックス錠剤。
【請求項17】
12時間を超える時間にわたって薬物乱用の対象となり得る有効成分を放出し得る、請求項1〜16のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項18】
20時間を超える時間にわたって薬物乱用の対象となり得る有効成分を放出し得る、請求項1〜17のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項19】
前記錠剤の投与後に見られるCmaxの比が、同用量を含有する持続放出錠剤オキシコンチン(OxyContin)(登録商標)の投与後に見られるCmax値に対して0.7を超えないヒトにおける1日1回投与後の血漿プロフィールを有し、オキシコドンを含んでなる、請求項15に記載のマトリックス錠剤。
【請求項20】
前記錠剤で見られるAUO∞値の比が、同用量を含有する持続放出錠剤オキシコンチン(登録商標)で見られるAUO∞値に対して80〜125%の間にあるヒトにおける1日1回投与後の血漿プロフィールを有し、オキシコドンを含んでなる、請求項1〜19のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項21】
1日1回投与可能である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤を製造する方法であって、
有効成分と打錠マトリックスの賦形剤とを混合し、
所望により造粒を行い、
該混合物を、錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択された条件下で打錠すること
を含んでなる、方法。
【請求項23】
前記打錠が、打錠混合物または打錠手段が実際の打錠前または打錠中に加熱を受けずに行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マトリックス錠剤をコーティングすることも含んでなる、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
外側の前記コーティングを硬化することも含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
有効成分の事故的誤用を防止すること、および/または薬物乱用を抑止することを意図した、薬物乱用の対象となり得る有効成分の持続的投与における、請求項1〜21のいずれか一項に記載の錠剤の形態である医薬組成物の使用。
【請求項1】
長時間にわたり1以上の有効成分を生体に放出することを可能とし、かつ打錠マトリックス内に分散した、薬物乱用の対象となり得る少なくとも1つの有効成分を含んでなる水不溶性マトリックス錠剤であって、前記マトリックスが、徐放性、pH非依存性、水不溶性のポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含んでなり、賦形剤の量および打錠条件が、錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択されるものである、水不溶性マトリックス錠剤。
【請求項2】
実際の打錠前または打錠中において、打錠される混合物および打錠手段がいずれも加熱を受けない、請求項1に記載のマトリックス錠剤。
【請求項3】
前記打錠マトリックスが、前記錠剤の総重量の50〜98重量%、有利には85〜95%に相当する、請求項1および2のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項4】
前記打錠マトリックスが、徐放性、pH非依存性、水不溶性のポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物から選択される少なくとも2つの賦形剤の混合物を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項5】
前記徐放性、pH非依存性、水不溶性のポリマーが、セルロース誘導体、水不溶性メタクリル酸、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアセテート誘導体、ポリビニルピロリドン誘導体、乳酸およびグリコール酸のポリマー、デンプン、ワックスおよびそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項6】
前記無機賦形剤が、リン酸カルシウム、アルミニウムとケイ素ケイ酸、炭酸マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項7】
前記ポリマーが、微晶質セルロースと[ポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(80:20)]との混合物、および微晶質セルロースと[ポリ(エチルアクリレート/メチルメタクリレート/トリメチルアモニオエチル(amonioethyl)メタクリレートクロリド)(1:2:0.2)]との混合物からなる群から選択されるものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項8】
前記有効成分が、向精神薬、神経弛緩薬、精神安定剤、催眠薬、鎮痛薬および抗不安薬からなる群から選択されるものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項9】
前記有効成分が、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、トラマドール、メタドン、コデイン、フェンタニルおよびブプレノルフィン、それらの塩およびそれらの薬学上許容される誘導体からなる群に属するものである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項10】
前記打錠マトリックスがまた、抗凝集剤、打錠時に錠剤の結合を改良し得る薬剤、増量剤、滑沢剤、可塑剤、充填剤、甘味剤および着色剤からなる群から選択される少なくとも1つの薬学上許容される賦形剤を含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項11】
前記打錠マトリックスがまた、以下の物質(a)〜(f)の少なくとも1以上またはその混合物を含んでなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤:
a)鼻道および/または咽頭管を刺激する物質、
b)錠剤が最少量の水に溶解する際にゲルの形成をもたらす増粘剤、
c)催吐物質、
d)忌避着色剤、
e)苦味物質、
f)薬物乱用の対象となり得る有効成分の拮抗薬 。
【請求項12】
薬物乱用の対象となり得る前記有効成分の拮抗薬が、ナロキソンもしくはナルトレキソンまたはそれらの薬学上許容される塩の1つである、請求項11に記載のマトリックス錠剤。
【請求項13】
外被を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項14】
前記外被が、有利にはエチルセルロース誘導体およびメタクリルポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの徐放性ポリマーからなる、請求項13に記載のマトリックス錠剤。
【請求項15】
前記マトリックスが、粗晶質セルロースと[ポリビニルアセテート/ポリビニルピロリドン(80:20)]の(1:1)の割合までの混合物からなり、薬物乱用の対象となり得る前記有効成分が、鎮痛薬の群に属するものである、請求項1〜14のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項16】
エチルセルロースからなる外被を有する、請求項15に記載のマトリックス錠剤。
【請求項17】
12時間を超える時間にわたって薬物乱用の対象となり得る有効成分を放出し得る、請求項1〜16のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項18】
20時間を超える時間にわたって薬物乱用の対象となり得る有効成分を放出し得る、請求項1〜17のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項19】
前記錠剤の投与後に見られるCmaxの比が、同用量を含有する持続放出錠剤オキシコンチン(OxyContin)(登録商標)の投与後に見られるCmax値に対して0.7を超えないヒトにおける1日1回投与後の血漿プロフィールを有し、オキシコドンを含んでなる、請求項15に記載のマトリックス錠剤。
【請求項20】
前記錠剤で見られるAUO∞値の比が、同用量を含有する持続放出錠剤オキシコンチン(登録商標)で見られるAUO∞値に対して80〜125%の間にあるヒトにおける1日1回投与後の血漿プロフィールを有し、オキシコドンを含んでなる、請求項1〜19のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤。
【請求項21】
1日1回投与可能である、請求項1〜20のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか一項に記載のマトリックス錠剤を製造する方法であって、
有効成分と打錠マトリックスの賦形剤とを混合し、
所望により造粒を行い、
該混合物を、錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択された条件下で打錠すること
を含んでなる、方法。
【請求項23】
前記打錠が、打錠混合物または打錠手段が実際の打錠前または打錠中に加熱を受けずに行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記マトリックス錠剤をコーティングすることも含んでなる、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
外側の前記コーティングを硬化することも含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
有効成分の事故的誤用を防止すること、および/または薬物乱用を抑止することを意図した、薬物乱用の対象となり得る有効成分の持続的投与における、請求項1〜21のいずれか一項に記載の錠剤の形態である医薬組成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−528328(P2009−528328A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556787(P2008−556787)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051967
【国際公開番号】WO2007/099152
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(502423510)
【氏名又は名称原語表記】ETHYPHARM
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051967
【国際公開番号】WO2007/099152
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(502423510)
【氏名又は名称原語表記】ETHYPHARM
【Fターム(参考)】
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