説明

二光子吸収材料とその用途

【課題】二光子吸収断面積の大きな有機材料、即ち、高感度な二光子吸収有機材料を提供すること。また、二光子吸収断面積が大きい本発明の二光子吸収材料を少なくとも有し、記録を書き換えできない方式で行なう光記録材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とする二光子吸収ポリマー。


(式中、ArおよびArは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な二光子吸収材料に関するものであり、特に、高い二光子吸収断面積を有するポリ(トリアリールアミン)に関する。また、該新規な二光子吸収材料を含む三次元光記録媒体、光造形装置、光制限装置、二光子励起蛍光検出装置などの用途に応用される。
【背景技術】
【0002】
二光子吸収材料に関する従来例として、特許文献1〜5開示のものがある。
また、三次元(多層)光記録媒体(材料)に関する従来例として、特許文献6〜11開示のものがある。
また、光造形技術に関する従来例として、特許文献12開示のものがある。
また、光機能素子に関する従来例として、特許文献13〜16開示のものがある。
また、二光子特性を利用した光検出に関する従来例として、特許文献17〜21開示のものがある。
また、我々は、別に二光子吸収材料に関する技術を開発し提案(特許文献22〜30)している。
【0003】
二光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レヴィッチ、ユージーン、ポリス他、特許文献6:特表2001−524245号公報、パベル、ユージエン他、特許文献7:特表2000−512061号公報)、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特許文献8:特表2001−522119号公報、アルセノフ、ヴラディミール他、特許文献9:特表2001−508221号公報)等が提案されているが、いずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許文献に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、河田聡、川田善正、特許文献10:特開平6−28672号公報、河田聡、川田善正他、特許文献11:特開平6−118306号公報には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−213434号公報
【特許文献2】特開2005−82507号公報
【特許文献3】特開2004−168690号公報
【特許文献4】特開2005−325087号公報
【特許文献5】特表2005−529913号公報
【特許文献6】特表2001−524245号公報
【特許文献7】特表2000−512061号公報
【特許文献8】特表2001−522119号公報
【特許文献9】特表2001−508221号公報
【特許文献10】特開平6−28672号公報
【特許文献11】特開平6−118306号公報
【特許文献12】特開2005−134873号公報
【特許文献13】特開2004−277416号公報
【特許文献14】特開平11−167036号公報
【特許文献15】特開2005−257741号公報
【特許文献16】特開平8−320422号公報
【特許文献17】特開平9−230246号公報
【特許文献18】特開平10−142507号公報
【特許文献19】特開2005−165212号公報
【特許文献20】特開2005−123513号公報
【特許文献21】特開2005−132763号公報
【特許文献22】特願2006−73792号明細書
【特許文献23】特願2006−67089号明細書
【特許文献24】特願2006−67067号明細書
【特許文献25】特願2006−70305号明細書
【特許文献26】特願2006−74156号明細書
【特許文献27】特願2006−250292号明細書
【特許文献28】特願2006−354063号明細書
【特許文献29】特願2007−56886号明細書
【特許文献30】特表2007−227353号公報
【非特許文献1】Jean-Luc Bredas et al Science,281,1653 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二光子吸収現象を利用すると、空間分解能に優れた種々のデバイスへの応用展開が可能となるが、現時点で利用可能な二光子吸収材料は、その二光子遷移効率が非常に低いため、二光子吸収を誘起するために極めて大きな電界を出力する励起光源を用いる必要があった。そのため、実用性に優れる二光子遷移効率の高い二光子吸収材料の開発が強く求められていた。
すなわち、本発明の目的は、二光子吸収断面積の大きな有機材料、即ち、高感度な二光子吸収有機材料を提供することである。
また、二光子吸収断面積が大きい本発明の二光子吸収材料を少なくとも有し、記録を書き換えできない方式で行なう光記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のアリールアミン誘導体により上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、上記課題は、以下の本発明によって解決される。
(1)「下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とする二光子吸収ポリマー;
【0007】
【化1】

(式中、ArおよびArは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)」、
(2)「前記第(1)項に記載の二光子吸収ポリマーが、特に下記一般式(II)で表わされることを特徴とする二光子吸収ポリマー;
【0008】
【化2】

(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、uおよびvは、それぞれ0から4までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)」、
(3)「前記第(2)項に記載の二光子吸収ポリマーが、特に下記一般式(III)で表わされることを特徴とする二光子吸収ポリマー;
【0009】
【化3】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、uおよびvは、それぞれ0から4までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、wは0から5までの整数を表わし、nは1以上の整数を表わす。)」、
(4)「下記一般式(IV)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料;
【0010】
【化4】

(式中、ArおよびArは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)」、
(5)「前記第(4)項に記載の二光子吸収材料が、特に下記一般式(V)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料;
【0011】
【化5】

(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、uおよびvは、それぞれ0から4までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)」、
(6)「前記第(5)項に記載の二光子吸収材料が、特に下記一般式(VI)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料;
【0012】
【化6】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、uおよびvは、それぞれ0から4までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、wは0から5までの整数を表わし、nは1以上の整数を表わす。)」、
(7)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光記録材料」、
(8)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光造形材料」、
(9)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光制限材料」、
(10)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする二光子励起蛍光材料」、
(11)「平面上に形成され、該平面に対し水平、及び垂直方向に記録再生が可能な三次元光記録媒体において、前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料が、光記録が行なわれる記録層の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする三次元光記録媒体」、
(12)「光硬化性樹脂に光を照射して造形を行なう光造形装置において、前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記光硬化性樹脂の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光造形装置」、
(13)「透過光強度を制限する素子を備えた光制限装置において、前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記素子の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光制限装置」、
(14)「光の進路を制限する素子を備えた光制限装置において、前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記素子の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光制限装置」、
(15)「試料中の被分析物に前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の二光子吸収材料を選択的に担持させ、前記二光子吸収材料を検出することによって、被分析物を検出することを特徴とする二光子励起蛍光検出装置」。
これらにより、効率良く二光子を吸収する有機材料を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、二光子吸収断面積の大きな有機材料、即ち、高感度な二光子吸収有機材料を提供できる。また、本発明の新規な二光子吸収材料を利用すれば、三次元的な光記録、光造形、光検出といった各種デバイスの光感度を飛躍的に改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の二光子吸収材料とは、非共鳴領域の波長において分子を励起することが可能な材料であって、このとき励起に用いた光子の2倍のエネルギー準位に、実励起状態が存在する材料のことである。
また、二光子吸収現象とは、三次の非線形光学効果の一種であって、このように分子が二つのフォトンを同時に吸収して、基底状態から励起状態へ遷移する現象のことをいう。
このような二光子同時吸収の遷移効率は、通常の色素材料で見られる一光子吸収の遷移効率と比べると極端に低く、現在汎用されている半導体レーザー程度の弱い光強度では、観測することができない。
二光子吸収が起きるためには、ピーク光強度(最大発光波長における光強度)が極めて大きい、モード同期式超短(フェムト秒程度)パルスレーザーのような、瞬間的に大きな光子密度を有す光を用いる必要がある。
このような現象は古くから知られていたが、近年になってJean-Luc Bredas等が1998年に分子構造とメカニズムの関係を解明して以来(Science,281,1653 (1998):非特許文献1)、二光子遷移効率の高い二光子吸材料の研究が盛んに行なわれるようになった。
【0015】
二光子吸収の遷移効率は印加する光電場の二乗に比例する(二光子吸収の二乗特性)。このため、レーザーを照射すると、スポット中心部の電界強度の大きい場所でのみ二光子吸収が起こり、電界強度の低いスポット周辺部では二光子吸収が起こらないという現象が起こる。
すなわち、三次元空間においては、レンズで集光された電界強度の大きい焦点付近にのみ二光子吸収が起こり、電界強度が小さい焦点から外れた領域では二光子吸収が起こらないため、印加された光電場の一乗に比例して吸収が起こる一光子吸収に比べると、二光子吸収材料は極めて高い空間分解能を有するという特徴がある。
【0016】
これまで、高効率の二光子吸収材料としては、多くの無機材料が見出されてきた。
ところが無機材料においては、所望の特性を得ることの最適化や、構造や形態の最適化といったいわゆる分子設計が困難なため、実用性には難がある。一方、有機材料は無機材料と比べると、分子設計による構造最適化が可能で、その他の物性のコントロールも容易なため、実用面において優れている。
従来の有機系二光子吸収材料としては、ローダミン、クマリンなどの色素化合物、ジチエノチオフェン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体などの化合物が知られている。しかしながら、分子あたりの二光子吸収断面積(二光子遷移効率を表わす一つの指標であり、1GM=1×10-50cm4・s・photon-1である)は、フェムト秒パルスレーザーを用いても200GM未満と小さく、実用性に乏しかった。
【0017】
一方、このような二光子吸収材料の特徴である極めて高い空間分解能を利用した記録媒体の所定の位置に二光子吸収によるスペクトル変化、屈折率変化または偏光変化を生じさせ、データの記録を行なう光記録媒体の研究も報告されている。二光子吸収現象を利用する光記録は、従来の一光子吸収現象を利用する光記録方法と比べて、記録/再生領域を理論的に小さくすることができるため、超解像記録を実現することも可能である。またその他、このような二光子吸収材料の特徴を利用した光造形材料としての用途、光制限材料としての用途、及び二光子励起蛍光材料への応用も検討されている。
【0018】
二光子励起蛍光材料の応用としては、照射光の光源として、二光子吸収材料の有す線形吸収帯が存在する波長領域よりも長波長の近赤外領域の短パルスレーザーを用いると、照射した光が焦点領域以外の場所で吸収されたり、散乱されたりする損失を最大限に抑えることができるため、生体組織内の二光子像影を行なったり、フォトダイナミックセラピー(PDT)に応用するといった研究例が、数多く報告されている。
【0019】
<二光子吸収材料の特徴>
以下に本発明のアリールアミン重合体の製造方法について説明する。
本発明のアリールアミン重合体の製造方法は、例えば、アリールハロゲン化物とアリールホウ素化合物を用いたSuzuki coupling(Synthetic Communications 11(7),513-519(1981), Chem. Rev. 95 2457-2483(1995), WO99/20675、前記特許文献1の特開2005−21434号公報記載のポリマー合成法、参照。)、アリールハロゲンとアリールスズ化合物を用いたStille Couplingなどのクロスカップリング反応などが好ましい。
アリールハロゲン化物のハロゲン原子としては、反応性の観点からヨウ素化物または臭素化物が好ましい。
アリールホウ素化合物としては、アリールボロン酸またはアリールボロン酸エステルが用いられるが、アリールボロン酸エステルは、アリールボロン酸のように三無水物(ボロキシン)を生成しないこと、また、結晶性が高く、精製が容易であることからより好ましい。
【0020】
アリールボロン酸エステルの合成方法としては、
(i)アリールボロン酸とアルキルジオールを無水有機溶媒中にて加熱反応(Polymer 38(5),1221-1226(1997)、Chem,Mater.13,1540-1544(2001)参照。)、
(ii)アリールハロゲン化物のハロゲン部位をメタル化した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応(Macromolecules 30,7686-7691(1997), Macromolecules 32, 3306-3313(1999), Macromolecules 37, 4087-4098 (2004)参照。)、
(iii)アリールハロゲンのグリニャール試薬を調製した後に、アルコキシボロンエステルを加える反応、さらには、
(iv)アリールハロゲン化物とビス(ピナコラト)ジボロンやビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロンをパラジウム触媒下にて加熱する反応(J.Org. Chem.60(23),7508-7519(1995)参照。)、
によって得られる。
【0021】
パラジウム触媒としてはPd(PPh、PdCl(PPh、Pd(OAc)、PdClまたは、パラジウムカーボンに配位子として別途トリフェニルホスフィンを加える、など種々の触媒を用いることができるが、最も汎用的にはPd(PPhが用いられる。本反応には塩基が必ず必要であるが、NaCO、NaHCO、KCOなどの比較的弱い塩基が良好な結果を与える。立体障害等の影響を受ける場合には、Ba(OH)やKPOなどの強塩基が有効である。その他苛性ソーダ、苛性カリ、金属アルコシド等、例えばカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシドなども用いることができる。また、反応をよりスムーズに進行させるために相間移動触媒を用いてもよく、好ましくは、テトラアルキルハロゲン化アンモニウム、テトラアルキル硫酸水素アンモニウム、またはテトラアルキル水酸化アンモニウムであり、好ましい例としては、テトラ−n−ブチルハロゲン化アンモニウム、ベンジルトリエチルハロゲン化アンモニウム、または、トリカプリルイルメチル塩化アンモニウムである。反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のアルコールおよびエーテル系、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系の他、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。
【0022】
上記重合反応の反応温度は、用いるモノマーの反応性、また反応溶媒によって適宜設定されるが、溶媒の沸点以下に抑えることが好ましい。上記重合反応における反応時間は、用いるモノマーの反応性、または、望まれる重合体の分子量などにおいて適宜設定することができ、2〜50時間が好適であり、さらには、4〜24時間がより好ましい。また、これらの重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤、または末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応系に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って本発明における重合体の末端には、停止剤に基づく基が結合してもよい。分子量調節剤、末端封止剤としては、フェニルボロン酸、ブロモベンゼン、ヨウ化ベンゼン等、反応活性基を1個有する化合物が挙げられる。本発明の重合体の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等、成膜性が悪化して実用性が乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用上問題になる。
【0023】
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、重合反応活性基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また複数併用してもよい。
以上のようにして得られた本発明の重合体は、重合に使用した塩基、未反応モノマー、末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
【0024】
以下に、このようにして得られる一般式(I)〜(III)の具体例を示す。またこれらは本発明のアリールアミン単量体(IV)〜(VI)についても同様に適用される。
前記一般式(I)及び(VI)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基Arとしては単環基、多環基(縮合多環基、非縮合多環基)の何れでもよく、例えばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。
前記一般式(I)及び(IV)における置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基Ar、Arとしては、一例として上記の置換又は無置換の芳香族炭化水素基の二価基が挙げられる。またこれら環状構造を有する基(Ar、ArおよびAr)は、次の(a)〜(f)に示すような種々の置換基を有していてもよい。
【0025】
(a)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(b)炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基。これらはさらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基で置換されていてもよい。
(c)アリールオキシ基。アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これらは、ハロゲン原子を置換基として含有しても良く、炭素数1〜25の直鎖または分岐鎖の、アルキル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基を含有していても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
(d)アルキルチオ基又はアリールチオ基。アルキルチオ基又はアリールチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(e)アルキル置換アミノ基。具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。
(f)アシル基。アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0026】
これらの置換基は、その置換基を構成する炭素の数を増やすことで、本発明のアリールアミンの溶媒への溶解性を上げることができる。溶解性を向上させると、例えば塗工溶媒の選択肢、溶液調製時の温度範囲、並びに溶媒の乾燥時の温度範囲及び圧力範囲を拡大することができ、これらプロセッシビリティーの高さにより、結果的に高純度で均一性の高い高品質な薄膜またはバルクを得ることが可能となる。この場合スピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディスペンス法、スプレー塗工等の公知の成膜方法を用いることができ、このような方法によってクラックがなく、強度、靭性、耐久性等に優れた良好な薄膜またはバルクを作製することができる。一方、炭素数が多すぎても二光子吸収効率が低下してしまうため、溶解性を損なわない範囲で適切に置換基を選択する必要がある。この場合好適な例としては、炭素数が1〜25のアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基が挙げられ、これらは同一のものを複数導入しても、異なるものを複数導入してもよい。またこれらのアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基はさらにハロゲン原子、シアノ基、アリール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基または、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルチオ基で置換されたアリール基を含有していてもよい。アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、3,7 −ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、アルコキシ基、アルキルチオ基としては上記アルキル基の結合位に酸素原子または硫黄原子を挿入し、それぞれアルコキシ基またはアルキルチオ基としたものが挙げられる。
【0027】
また、請求項4〜6記載の単量体は、それに対応する請求項1〜3の重合体と比較して、他の樹脂と混合する場合、相溶性をあまり考慮しなくて良いというメリットがあり、従って他の樹脂と混合しやすく、加工性に優れるという利点がある。また、重合体に比べると溶媒への溶解度が大きいため、高濃度溶液を調整することも可能になる。
上記、効率良く二光子を吸収する請求項1及至6のいずれかに記載された本発明のアリールアミンを、(i)平面上に形成され、該平面に対し水平、及び垂直方向に記録再生が可能な三次元光記録媒体、または(ii)光硬化性樹脂に光を照射して造形を行なう光造形装置、または(iii)入射光の透過光強度や進路を変更する光制限装置、または(iv)光照射により試料中の被分析物を検出する光検出方法、のそれぞれにおいて利用することで、高感度でかつ三次元的な高分解能を有する新規デバイスを提供することができる。これらは本発明の請求項7及至15の事項であって、以下にその詳細を記す。
【0028】
<三次元光記録媒体への応用>
インターネットやイントラネットなどのネットワークの拡大、1920×1080(垂直×水平)ドットの画像情報量をもつハイビジョンTVの普及、更にHDTV(HighDefinition Television)の放映が間近にひかえた今日、データのアーカイブ用途として民生では50GB以上、好ましくは100GB以上の記録媒体が要求されている。また、コンピューターや放送映像等のバックアップ用途としては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速でかつ安価に記録可能な記録媒体が求められている。
そのような状況の中、究極の高密度、大容量記録媒体として注目される三次元光記録媒体は、入射光に対し垂直及び水平方向に記録/再生が可能な記録媒体であって、膜厚方向に何十、何百層もの記録層を重ねたり、或いは厚膜とすることで、光入射方向に対し何重にも記録再生が可能なため、CD、DVDのような従来の二次元記録媒体に比べ何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録の可能性を秘めた記録媒体であると云われている。
前記のように、二光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レヴィッチ、ユージーン、ポリス他、特許文献6:特表2001−524245号公報、パベル、ユージエン他、特許文献7:特表2000−512061号公報)、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特許文献8:特表2001−522119号公報、アルセノフ、ヴラディミール他、特許文献9:特表2001−508221号公報)等が提案されているが、いずれも具体的な二光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている二光子吸収化合物の例も二光子吸収効率の極めて小さい二光子吸収化合物を用いている。さらに、これらの特許文献に用いているフォトクロミック化合物は可逆材料であるため、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率または吸収率)または発光強度の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する二光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、河田聡、川田善正、特許文献10:特開平6−28672号公報、河田聡、川田善正他、特許文献11:特開平6−118306号公報には、屈折率変調により三次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、二光子吸収三次元光記録材料を用いた方法についての記載はない。
【0029】
非共鳴二光子吸収を利用し、レーザー焦点(記録)部と非焦点(非記録)部を書き換えできない方式で変調できれば、極めて高い空間分解能で、三次元空間の任意の場所に記録を行なうことができ、究極の高密度記録媒体とされる三次元光記録媒体を実現することができる。また不可逆材料を用いることで非破壊読み出しが可能となり、良好な保存特性を維持できるため、より実用的である。しかし、現時点で利用可能な二光子吸収材料はその二光子遷移効率が低いため、記録に用いる光源として非常に高出力の光源が必要となり、また更には感度が低いことから、その分記録時間が長くかかってしまう欠点があった。実用的な三次元光記録媒体を実現するためには高速記録は不可欠であり、高速記録が可能な高感度な光記録材料が強く望まれていた。
【0030】
本発明の光記録材料は、スピンコーター、ロールコーターまたはバーコーターなどを用いる事で、基板上に直接塗布することも、あるいはフィルムとしてキャストし、ついで通常の方法により基板にラミネートすることもできる。ここで「基板」とは、任意の天然又は合成支持体、好適には柔軟性又は剛性フィルム、シートまたは板の形態で存在できるものを意味する。溶液調製や塗工時に使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することもでき、蒸発除去には加熱や減圧を用いても良い。基板として好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、樹脂下塗り型ポリエチレンテレフタレート、火炎又は静電気放電処理されたポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ガラス等である。また、この基板にはあらかじめ、トラッキング用の案内溝やアドレス情報が付与されたものであっても良い。
【0031】
さらにこの二光子吸収光記録材料の上に、酸素遮断や層間クロストーク防止のための保護層(中間層)を形成してもよい。保護層(中間層)は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートまたはセロファンフィルムなどのプラスチック製のフィルムまたは板を静電的な密着、押し出し機を使った積層等により貼合わせるか、前記ポリマーの溶液を塗布してもよい。また、ガラス板を貼合わせてもよい。但し、このような保護層(中間層)は設けなくても、二光子吸収材料の特性から三次元記録は可能である。
また更には、保護層と記録材料の間および/または基板と記録材料の間に、気密性を高めるための粘着剤または液状物質を存在させることもできる。さらに記録材料間の保護層(中間層)にあらかじめトラッキング用の案内溝やアドレス情報を付与しても良い。
【0032】
図1に、本発明の二光子吸収材料を光記録材料として利用する三次元光記録媒体の一例(a)と、その記録装置(b)の一例を示した。但し本発明は、これらの実施形態により何ら限定されず、三次元記録(平面及び膜厚方向に記録)が可能な構造であれば、他にどのような構造であっても構わない。
図1(a)は平らな支持体(基板:11a)に、本発明の二光子吸収材料からなる記録層(13a)と、クロストーク防止用の中間層(14a)(保護層)を交互に50層積層させた三次元光記録媒体の例である。記録層の厚さは0.01〜0.5μm、中間層の厚さは0.1〜5μmが好ましく、この構造であれば今日普及しているCDやDVDと同じサイズで、テラバイト級の大容量の光記録媒体を実現することができる。
【0033】
情報の三次元的な記録は、光源(11b)から発生した光(15a)を本発明のアリールアミンからなる二光子吸収材料を含む記録層(13a)中の所望の箇所に焦点を結ばせることで行なわれる。光源には単一ビームが使用され、この場合フェムト秒オーダーの超短パルス光を利用することができる。ビット単位、深さ方向単位の記録方法以外に、面光源を利用する並行記録方法も高転送レートを実現することから好ましい。
またここでは図示されていないが、記録媒体(図1a)において中間層の存在しないバルク状の記録媒体を作製し、ホログラム記録のようにページデータを一括記録することで、高転送レートを実現することも可能である。
【0034】
再生は、記録時よりも強度の弱いレーザー光を記録部と未記録部に照射し、それらの発光強度変化、或いは反射率変化を検出器(13b)で検出することで行なう。再生光には、データ記録に使用するビームとは異なる波長、或いは低出力の同波長の光を用いることもできる。記録と同様再生においても、ビット単位/ページ単位の再生がいずれにおいても可能であり、面光源や二次元検出器等を利用する並行記録/再生は、転送レートの高速化に有効である。
なお、本発明に従って同様に形成される光記録媒体の形態としては、カード状、プレート状、テープ状、ドラム状等も考えられる。
【0035】
<光造形材料、光造形装置としての応用>
光造形用二光子光硬化性樹脂とは、光を照射することにより二光子重合反応を起こし、液体から固体へと変化する特性を持った樹脂のことである。主成分はオリゴマーと反応性希釈剤からなる樹脂成分と光重合開始剤(必要に応じ光増感材料を含む)である。オリゴマーは重合度が2〜20程度の重合体であり、末端に多数の反応基を持つ。さらに、粘度、硬化性等を調整するため、反応性希釈剤が加えられている。光を照射すると、重合開始剤または光増感材料が二光子吸収し、重合開始剤から直接または光増感材料を介して反応種が発生し、オリゴマー、反応性希釈剤の反応基に反応して重合が開始される。その後、これらの間で連鎖的重合反応を起し三次元架橋が形成され、短時間のうちに三次元網目構造を持つ固体樹脂へと変化する。
光硬化性樹脂は光硬化インキ、光接着剤、積層式立体造形などの分野で使用されており、様々な特性を持つ樹脂が開発されている。特に、積層式立体造形においては反応性が良好であること、硬化時の堆積収縮が小さいこと、硬化後の機械特性が優れることが重要になっている。
本発明の二光子吸収材料は、このような要求を満たす、二光子吸収重合開始剤または二光子吸収光増感材料として用いることができる。本発明の二光子吸収材料は従来に比べ二光子吸収感度が高いため高速造形が可能となり、また二光子吸収現象を利用するため、微細で三次元的な造形を実現することができる。
【0036】
本発明においては、光増感材料として利用する本発明の二光子吸収材料を紫外線硬化樹脂等に分散させて感光物固体を形成し、この感光物固体の所望の個所に光照射を行なうことで、照射光の焦点付近のみに硬化反応を起こさせ、超精密三次元造形物を形成する。
図2は、本発明の二光子吸収材料を用いて光造形を行なう場合の光造形装置の一例である。
光源(21)からのパルスレーザー光を可動形式のミラー(22)及び集光レンズ(23)を介し本発明の二光子吸収材料(24)に集光すると、集光点近傍のみに光子密度の高い領域が形成される。このとき、ビームの各断面を通過するフォトンの総数は一定のため、焦点面内でビームを二次元的に走査した場合、各断面における光強度の総和は一定である。しかしながら、二光子吸収の発生確率は光強度の二乗に比例するため、光強度の大きい集光点近傍にのみ二光子吸収の発生の高い領域が形成される。集光点は可動形式のミラー(22)や可動ステージ(25)(ガルバノミラー及びZステージ)を制御することで光硬化樹脂液内において自由に変化させることができるため、任意の位置にナノメートルオーダーの精度で樹脂を局所的に硬化することができ、所望の三次元加工物を容易に形成することができる。
【0037】
また、このように作製される造形物の一例として、図3には光導波路を挙げた。
近年、大容量アーカイブ用途の記録媒体が求められる一方で、ユビキタスネットワークの実現に向けた光ファイバ通信の開発による情報伝送の高速化及び大容量化も求められている。その一つに、WDM(波長多重通信)と呼ばれる波長の異なる光の不干渉性を利用した大容量伝送技術が知られているが、そのWDMにおいては、特定の波長の光信号を合波或いは分波する素子が不可欠であり、そのための素子として光導波路が用いられている。光導波路においては、素子内部に、ある特定の屈折率分布などを形成させることで、電気回路中を電子が流れるように光信号をその分布に沿って導くことができる。このような波長による屈折率変化を利用する光導波路構造は、図2に示す光造形装置を用い、本発明の二光子吸収材料を含む薄膜、または本発明の二光子吸収材料を光硬化性樹脂等に分散させた固体物を光造形することで形成することができる。
【0038】
本発明における光造形を理解するのに有益な公知文献として特開2005−134873号公報が挙げられる。これによるとパルスレーザー光を感光性高分子膜の表面にマスクを介さず干渉露光させている。レーザー光は、感光性高分子膜の感光性機能を発揮させる波長成分をもった光からなり、感光性高分子の種類、または感光性高分子の感光性機能を有する基又は部位に応じて選択されている。
また光導波路に関する公知文献としては、特開平08−320422号公報に光屈折率材料に光を照射して形成される光導波路をはじめ、特開2004−277416号公報、特開平11−167036号公報、特開2005−257741号公報等で開示されている。
【0039】
このような従来に比べ、本発明の二光子吸収材料を利用した光造形物の特徴は以下のようである。即ち、
(1)回折限界をこえる加工分解能
二光子吸収の光強度に対する非線形性によって、焦点以外の領域では光硬化性樹脂が硬化しない。このため照射光の回折限界を超えた加工分解能を実現できる。
(2)超高速造形
本発明の二光子吸収材料を用いて加工される造形物においては、従来に比べ、二光子吸収感度が高いため、ビームのスキャン速度を速くすることができる。
(3)三次元加工性
光硬化性樹脂は、二光子吸収を誘起する近赤外光に対して透明である。したがって焦点光を樹脂の内部へ深く集光した場合でも、内部硬化が可能である。従来のSIHでは、ビームを深く集光した場合、光吸収によって集光点の光強度が小さくなり、内部硬化が困難になる問題点が、本発明ではこうした問題点を確実に解決することができる。
(4)高い歩留り
従来法では樹脂の粘性や表面張力によって造形物が破損、変形するという問題があったが、本手法では、樹脂の内部で造形を行なうためこうした問題が解消される。
(5)大量生産への適用
超高速造形を利用することによって、短時間に、連続的に多数個の部品あるいは可動機構の製造が可能である。
【0040】
<光制限材料、光制限装置としての応用>
光通信や光情報処理では、情報等の信号を光で搬送するためには変調、スイッチング等の光制御が必要になる。この種の光制御には、電気信号を用いた電気−光制御方法が従来採用されている。しかし電気−光制御方法は、電気回路のようなCR時定数による帯域制限、素子自体の応答速度や電気信号と光信号との間の速度の不釣合いで処理速度(>10ps)が制限されることなどの制約があり、光の利点である広帯域性や高速性を十分に生かすためには、光信号によって光信号を制御する光−光制御技術が非常に重要になってくる。この要求に応えるものとして本発明の二光子吸収材料を加工して作製した光学素子は、光を照射することで引き起こされる透過率や屈折率、吸収係数などの光学的変化を利用し、電子回路技術を用いずに光の強度や周波数を直接光で変調することで、光通信、光交換、光コンピューター、光インターコネクション等における高速光スイッチなどに応用することが可能である。
二光子吸収による光学特性変化を利用する本発明の光制限素子は、通常の半導体材料により形成される光制限素子や、一光子励起によるものに比べ、応答速度にはるかに優れた素子(<1ps)を提供することができ、また高感度ゆえに、S/N比の高い信号特性に優れた光制限素子を提供することができる。
【0041】
従来の一光子吸収や、過飽和吸収を利用した光制限素子の例としては、例えばスペクトルホール バーニング、励起子吸収、サブバンド間遷移、量子閉じ込めシャタルク効果などが挙げられるが、これらの素子には、超高速応答を得るのが難しい、素子作製(組成、構造)が複雑、対応波長域が狭い、偏波依存性が大きい系が多い、といった問題点がある。
一方、二光子吸収の非線形性を利用した光制限素子においては、超高速応答性に優れる、素子作製(組成、構造)が容易、対応波長域が広くは波長選択制が広い、偏波依存性がないといった利点がある。
【0042】
図4は、特定波長の制御光により本発明の二光子吸収材料を二光子励起することで、一光子励起し得る波長の信号光をスイッチングする素子を示したものである。
制御光(41)及び信号光(42)から入射したレーザー光は、集光装置(43)(レンズ、凹面鏡など)により集光され、制御光(41)の強度が極めて強い場合のみ、保護層で挟持された本発明の二光子吸収材料からなる光学フィルター(44)内で吸収され、一光子励起波長の透過率が変化する。制御光(42)の強度がない場合または、弱い場合はそのまま通過し、コリメート装置(45)(レンズ、凹面鏡など)により迷光を除去するカラーフィルター(46)等を通して出射側にある光検出器(47)において検出される。即ち、このように二光子吸収の非線形性に伴う透過率の変化を利用することで、信号光を制御光の強弱で処理する高速応答の光スイッチングが可能となる。
【0043】
図5は、本発明の二光子吸収材料を、信号光と制御光により二光子励起させ、全光スイッチングする光制御素子の動作例である。
制御光及び信号光は、集光装置により二光子吸収材料を主構成要素とする光制限素子に集光され、制御光がoffの場合は信号光がそのまま出力され、制御光がonの場合は信号光と共に二光子吸収され出力は無くなる。制御光のon/offにより、信号光の光スイッチが可能となる。
【0044】
更に図5は、本発明の二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、出力光の光路をスイッチングする光制御素子の一例である。
制御光及び信号光から入射したレーザー光は、集光装置により二光子吸収材料を主構成要素とする光導波路の分岐路部位に集光され、制御光の強度が極めて強い場合のみ光導波路の分岐路部位により吸収され、その部位の屈折率が変化する。二光子吸収による光導波路の分岐路部位の屈折率変化、信号光の光導波路の屈折率、および出力光の光導波路の屈折率を調整することにより出力光の光路を切り替えることができる。二光子吸収の非線形性に伴う屈折率の変化を利用することにより、例えば光導波路において、光路のスイッチングを行なうことが可能となる。
【0045】
本発明における光制限素子を理解するのに有益な公知文献として、光屈折率材料に光を照射して形成される光導波路(特開平8−320422号公報)をはじめ、特開2004−277416号公報、特開平11−167036号公報、特開2005−257741号公報等で開示されているが、本発明の二光子吸収材料を利用した光機能素子は、通常の半導体材料により形成される素子や材料の一光子励起を利用する素子と比べて、応答速度にはるかに優れ、かつ高感度で、S/N比が高いといった優れた信号特性も備えている。
【0046】
<二光子励起蛍光検出方法への応用>
二光子励起蛍光検出法とは、二光子蛍光材料を結合させて標識した被分析物を含む試料に、近赤外のパルスレーザーを集光しながら走査し、被分析物が二光子励起されたときに発生する蛍光を検出することで三次元的に像を得る検出方法のことである。図7にそのような光検出デバイスの一例として、二光子励起蛍光顕微鏡を示した。
図7の装置は、近赤外域波長のサブピコ秒単色コヒーレントパルスを発生する光源(71)から、レーザー光を発生させ、ダイクロイックミラー(72)を経て、集光装置(73)により集光し、本発明の二光子吸収材料を結合させた被分析物を含む試料(74)中で焦点を結ばせることより、二光子蛍光を発生させる。試料上でレーザー光を操作し、各場所の蛍光強度を光検出器(76)で検出し、蛍光強度と得られた位置情報とをコンピューター上でプロットすることで、三次元蛍光像を得ることができる。この場合、該顕微鏡には所望の集光位置をレーザービームで走査するための走査機構が備えられており、例えばステージ(75)に置かれた試料を移動させても良く、また或いは可動ミラー(ガルバノミラーなど)を用いてレーザービームを走査しても良い。
このような構成をとる二光子励起蛍光顕微鏡は光軸方向に高分解能の像を得ることができるが、共焦点ピンホール板を用いることで、面内、光軸方向共にさらに分解能をあげることができる。
【0047】
このように用いられる二光子蛍光材料は、被分析物の染色、または被分析物に分散させることで使用することができ、工業用途のみならず、生体細胞等の三次元画像マイクロイメージングにも用いることができる。また生体適合性のポリマーと混合することで光線力学的治療法(PDT)における光感受性材料として用いることも可能である。
【0048】
本発明における二光子励起蛍光顕微鏡を理解するのに有益な公知文献として特開平9−230246号公報が挙げられる。たとえば走査型蛍光顕微鏡は、所望の大きさに拡大されたコリメート光を発するレーザー照射光学系と、複数の集光素子が形成された基板とを備え、該集光素子の集光位置が対物レンズ系の像位置に一致するように配され、かつ、前記の集光素子が形成された基板と対物レンズ系との間に、長波長を透過し短波長を反射するビームスプリッタが配され、標本面で多光子吸収による蛍光を発生させることを特徴とするものである。
このような構成により、多光子吸収そのものの非線形効果を利用して、光軸方向の高分解能を得ることができる。加えて、共焦点ピンホール板を用いれば、さらなる高分解能(面内、光軸方向共)が得られる。
【0049】
本発明の二光子吸収材料を含む二光子励起蛍光材料は、従来の二光子励起蛍光材料に比較し、大きな二光子吸収断面積を有しているので、低濃度で高い二光子吸収(発光)特性を発揮する。従って、本発明によれば、材料に照射する光の強度を上げる必要がないため、材料の劣化、破壊を抑制することができ、材料中の他成分の特性に対する悪影響も低下させることができる。特に生体へ適用をする場合においては、照射する光の強度を下げることができるため、生体へのダメージを低減することができる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
【0051】
(実施例1)
以下の合成法に従って、本発明のポリ(トリアリールアミン)誘導体を合成した。
50ml三つ口フラスコに、下記構造のジボロンエステル体0.938g(1.5mmol)、下記構造のジブロモ体0.861g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.8mg(0.032mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム10.0mg(0.0087mmol)、トルエン9mlを加え、アルゴンガス置換した後、2M−炭酸ナトリウム水溶液を3.5ml加え、6時間還流したのち、停止反応として、まずフェニルボロン酸80mg(0.66mmol)を加え4時間還流し、次いでブロモベンゼン150mg(0.96mmol)を加え4時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることにより粗ポリマーを得た。得られたポリマーをクロロホルム溶液とし、イオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、ポリマーをテトラヒドロフラン溶液とし、メタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。
このときの収量は0.925g、収率は79%であり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は35000、重量平均分子量は94000であった。
また元素分析値(計算値)は、C:76.244%(76.39%)、H:7.73%(7.56%)、N:1.92%(1.78%)、S:11.95%(12.23%)であった。図8に、赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を示す。
このようにして合成した二光子吸収材料(下記式)のテトラハイドロフラン溶液を作製し、後述する二光子吸収断面積(σ’)の測定方法に従って作製した溶液の評価を行なった。測定した二光子吸収スペクトルとσ’の評価結果はそれぞれ図11及び表1に示した。
【0052】
【化7】

【0053】
(実施例2)
以下の合成法に従って、本発明のポリ(トリアリールアミン)誘導体を合成した。
50ml三つ口フラスコに、下記構造のジボロンエステル体0.938g(1.5mmol)、下記構造のジブロモ体1.237g(1.5mmol)、相間移動触媒として、Aliquat336(アルドリッチ社製)12.5mg(0.031mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム10.0mg(0.0087mmol)、トルエン9mlを加え、アルゴンガス置換した後、2M−炭酸ナトリウム水溶液を3.5ml加え、4時間還流したのち、停止反応として、まずフェニルボロン酸80mg(0.66mmol)を加え4時間還流し、次いでブロモベンゼン150mg(0.96mmol)を加え4時間還流した。その後、反応溶液を室温に戻した後、有機層をメタノール/水の混合溶媒中に滴下し再沈殿させることにより粗ポリマーを得た。得られたポリマーをクロロホルム溶液とし、イオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、ポリマーをテトラヒドロフラン溶液とし、メタノール中に滴下し再沈殿することによりポリマーを精製した。
このときの収量は1.10g、収率71%であり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は41400、重量平均分子量は116400であった。
また元素分析値(計算値)は、C:76.43%(76.47%)、H:8.46%(8.26%)、N:1.51%(1.35%)、S:12.23%(12.37%)であった。図9に赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を示す。
このようにして合成した二光子吸収材料(下記式)のテトラハイドロフラン溶液を作製し、後述する二光子吸収断面積(σ’)の測定方法に従って作製した溶液の評価を行なった。測定した二光子吸収スペクトルとσ’の評価結果はそれぞれ図12及び表1に示した。
【0054】
【化8】

【0055】
(実施例3)
以下の合成方法に従って、下記式に示すトリアリールアミン誘導体のテトラハイドロフラン溶液を作製した。作製した溶液を後述する二光子吸収断面積の測定方法に従って評価を行ない、その評価結果を表1に示した。
【0056】
【化9】

【0057】
(実施例4)
実施例1の場合と同様に、以下の合成方法に従って、下記式に示すトリアリールアミン誘導体を合成し、そのテトラハイドロフラン溶液(0.0025%濃度)を作製した。作製した溶液を後述する二光子吸収断面積の測定方法に従って評価を行ない、その評価結果を表1に示した。
【0058】
【化10】

【0059】
(比較例1)
従来材料の例として、以下に示すジアリルエテン誘導体のテトラハイドロフラン溶液を作製し、同様にして二光子吸収断面積を測定した。評価結果を表1に示した。
【0060】
【化11】

【0061】
(比較例2)
大きな二光子吸収断面積を有する材料例として、以下のスチリル誘導体についても同様にして評価を行なった。
【0062】
【化12】

【0063】
【表1】

【0064】
[二光子吸収断面積の評価方法]
測定システム概略図を図10に示す。
測定光源:フェムト秒チタンサファイアレーザ
波長:720〜920nm
パルス幅:100fs
繰り返し周波数:80MHz
測定光パワー:500mW
測定方法:Zスキャン法
キュベット内径:1mm
集光レンズ:f=75mm
集光径:40μm
集光されている光路部分に試料溶液を充填した石英セルを置き、その位置を光路に沿って移動させることによりZ−scan測定を実施した。
透過率を測定し、その結果から理論式(1)により非線形吸収係数を求めた。
T=[ln(1+Iβ)]/Iβ・・・・(1)
(上記式中、Tは透過率(%)、Iは励起光密度[GW/cm]、Lは試料セル長[cm]、βは非線形吸収係数[cm/GW]を示す。)
この非線形吸収係数βから、下記式(2)により二光子吸収断面積σを求めた。
(σの単位は1GM=1×10−50cm・s・photon−1である。)
σ=1000×hνβ/NCβ・・・・(2)
(上記式中、hはプランク定数[J・s]、νは入射レーザ光の振動数[s−1]、Nはアボガドロ数、Cは溶液濃度[mol/L]を示す。)
【0065】
<評価結果>
いずれの実施例においても、比較例に示した従来材料と比べ、大きな二光子吸収断面積を有す高効率二光子吸収材料であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の二光子吸収材料を光記録材料として利用する三次元光記録媒体(a)、及びその記録装置(b)の一例を示す図である。
【図2】本発明の二光子吸収材料を用いて光造形を行なう場合の光造形装置の一例を示す図である。
【図3】光造形装置により作製される造形物の一例としての光導波路を示す図である。
【図4】本発明の二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、一光子励起し得る波長の信号光を光スイッチングする光制御素子の一例を示す図である。
【図5】本発明の二光子吸収材料を、信号光と制御光により二光子励起させる全光スイッチングする光制御素子の動作例を示す図である。
【図6】本発明の二光子吸収材料を、二光子励起し得る波長の制御光により二光子励起させることによって、出力光の光路を光スイッチングする光制御素子の一例を示す図である。
【図7】二光子励起蛍光顕微鏡の一例を示す図である。
【図8】実施例1の赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を示す図である。
【図9】実施例2の赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を示す図である。
【図10】本発明で用いられる測定システムの概略図である。
【図11】実施例1の二光子吸収スペクトルを示す図である。
【図12】実施例2の二光子吸収スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
(図1について)
11a 基板(支持体)
11b 光源
12a 基板(支持体)
12b 光源
13a 記録層
13b 検出器
14a 中間層(保護層)
14b ピンホール
15a 光
(図2について)
21 光源
22 可動形式のミラー
23 集光レンズ
24 二光子吸収材料
25 可動ステージ
(図4について)
41 制御光
42 信号光
43 集光装置
44 光学フィルター
45 コリメート装置
46 カラーフィルター
47 検出器
(図7について)
71 光源
72 ダイクロイックミラー
73 集光装置
74 試料
75 ステージ
76 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表わされる繰り返し単位を有することを特徴とする二光子吸収ポリマー。
【化1】

(式中、ArおよびArは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)
【請求項2】
請求項1に記載の二光子吸収ポリマーが、特に下記一般式(II)で表わされることを特徴とする二光子吸収ポリマー。
【化2】

(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、uおよびvは、それぞれ0から4までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)
【請求項3】
請求項2に記載の二光子吸収ポリマーが、特に下記一般式(III)で表わされることを特徴とする二光子吸収ポリマー。
【化3】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、uおよびvは、それぞれ0から4までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、wは0から5までの整数を表わし、nは1以上の整数を表わす。)
【請求項4】
下記一般式(IV)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料。
【化4】

(式中、ArおよびArは、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)
【請求項5】
請求項4に記載の二光子吸収材料が、特に下記一般式(V)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料。
【化5】

(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基の2価基であり、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、uおよびvは、それぞれ0から4までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、nは1以上の整数を表わす。)
【請求項6】
請求項5に記載の二光子吸収材料が、特に下記一般式(VI)で表わされることを特徴とする二光子吸収材料。
【化6】

(式中、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、または置換もしくは無置換のアルキルチオ基から選択された基を表わし、同一でも別異でもよく、x、yおよびzは、それぞれ0から2までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、uおよびvは、それぞれ0から4までの整数を表わし、同一でも別異でもよく、wは0から5までの整数を表わし、nは1以上の整数を表わす。)
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光記録材料。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光造形材料。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする光制限材料。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を含むことを特徴とする二光子励起蛍光材料。
【請求項11】
平面上に形成され、該平面に対し水平、及び垂直方向に記録再生が可能な三次元光記録媒体において、請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料が、光記録が行なわれる記録層の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする三次元光記録媒体。
【請求項12】
光硬化性樹脂に光を照射して造形を行なう光造形装置において、請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記光硬化性樹脂の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光造形装置。
【請求項13】
透過光強度を制限する素子を備えた光制限装置において、請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記素子の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光制限装置。
【請求項14】
光の進路を制限する素子を備えた光制限装置において、請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料が、前記素子の少なくとも一部として含まれていることを特徴とする光制限装置。
【請求項15】
試料中の被分析物に請求項1乃至6のいずれかに記載の二光子吸収材料を選択的に担持させ、前記二光子吸収材料を検出することによって、被分析物を検出することを特徴とする二光子励起蛍光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−181086(P2009−181086A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22391(P2008−22391)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】