説明

二峰側鎖分布LOFIを含む潤滑油組成物

【課題】改良された流動性、特に低温流動性を有する潤滑油組成物を提供することである。
【解決手段】潤滑油組成物が開示される。その潤滑油組成物は、(a) APIグループIIIベースストック、(b) 一種以上の半結晶性粘度調整剤、及び(c) 下記の要件:(1) 分布が12.4個から14.4個までの範囲の平均炭素数を有するC8からC18までの範囲の側鎖を含み、(2) 側鎖分布が主としてC12から構成される二峰性分布の下部及び主としてC16、C18又はこれらの組み合わせから構成される分布の上部を有して二峰であり、(3) 分布の上部の合計モル%が分布の下部のそれより小さい必要があり、かつ(4) 側鎖のC12の量が全側鎖分布の少なくとも40モル%である必要があること、を満足する側鎖分布を有する一種以上のLOFIから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された流動性を有する潤滑油組成物、特に改良された低温流動性を示す米国石油協会(API)グループIIIベースストック(base stock)を含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油組成物は種々の用途、例えば、自動車用途、工業用途等に使用される。潤滑油組成物は典型的にはベースストック及び一種以上の添加剤から配合される。
潤滑油組成物中の使用のための種々の添加剤が当業界で公知である。このような添加剤の例として、潤滑油流動性改良剤(LOFI)、粘度調整剤(viscosity modifier)(VM)等が挙げられるが、これらに限定されない。
自動車製造業者及び政府当局は潤滑油について新しい、一層厳格な性能要件を導入してきた。例は油揮発性及び燃料効率についての要件である。これらの変化は潤滑油中に使用される一種以上のベースストックの選択をそれらが過去にあったよりも極めて重要なものにしてきた。それらの低粘度及び低揮発性のために、APIグループIIIベースストックは次世代の潤滑油組成物のために選択されるベースストックとなってきた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は(a)APIグループIIIベースストック、(b)半結晶性粘度調整剤、及び(c)或る種の要件を満足する側鎖分布を有する一種以上のLOFIを含む改良された低温流動性能特性を有する潤滑油組成物を提供する。
非限定実施態様において、本発明は、(a) APIグループIIIベースストック、(b)半結晶性粘度調整剤、及び(c) 側鎖分布(side-chain distribution)を有する一種以上のLOFIであって、該側鎖分布が、下記の要件:(1) 分布が12.4個から14.4個までの範囲の平均炭素数を有するC8からC18までの範囲の側鎖を含み、(2) 側鎖分布が主としてC12から構成される二峰性分布の下部及び主としてC16、C18又はこれらの組み合わせから構成される分布の上部を有して二峰であり、(3) 分布の上部の合計モル%が分布の下部のそれより小さい必要があり、かつ(4) 側鎖のC12の量が全側鎖分布の少なくとも40モル%である必要があること、を満足する前記側鎖分布を有する一種以上のLOFI、を含む潤滑油組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
特に示されない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用される、成分の量、反応条件、寸法、物理的特性、加工パラメーター等を表す全ての数値は、あらゆる場合に“約”という用語により修飾されると理解されるべきである。それ故、その逆に示されない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲に示される数値は、本発明により得られることが探求される所望の性質に応じて変化してもよい。少なくとも、特許請求の範囲の均等物の教義の適用を制限する試みとしてではなく、夫々の数値は報告された有意なアラビア数字の数に鑑みて、かつ通常の丸め技術を適用することにより少なくとも解釈されるべきである。更に、本明細書に開示された全ての範囲は、最初の範囲の値及び最後の範囲の値並びにその中に包含されるありとあらゆるサブレンジ(subrange)を含むと理解されるべきである。例えば、“1〜10”と記述された範囲は、1の最小値と10の最大値の間の(そして最小値と最大値を含む)ありとあらゆるサブレンジ、即ち、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わる全てのサブレンジ、例えば、5.5〜10を含むと考えられるべきである。以下の記載における米国特許もしくは特許書類又は文献のあらゆる言及はまた参照によってその書類を本明細書に含み、その全てが含まれると理解されるべきである。
本明細書に使用される、以下の用語は以下に記載されるように定義される。
“ポリマー”という用語は単一モノマーの重合のみから誘導されたポリマーに限定されると特に明記されない限りコポリマーを含み、また分岐ポリマーだけでなく、直鎖ポリマーを含む。
【0005】
“コポリマー”という用語は2種の化学的に異なるモノマーの重合反応から得られるポリマーを表す。エチレンアルファオレフィンコポリマーに関して、このようなコポリマーは必要により少量(例えば、ゼロ重量%より大きいが、10重量%未満)の非共役ポリエンを含んでもよいことが理解され、その場合、そのコポリマーは時折ターポリマーと称される。エチレンアルファオレフィンに関して、エチレンと少なくとも一種のその他のアルファ-オレフィンのコポリマー及びターポリマーの両方が含まれることが理解される。
“平均炭素数”という用語はモル分率により重みを付けられた平均炭素数を表す。
“潤滑油流動性改良剤”(LOFI)という用語は改良された低温取扱、ポンプ輸送能、及び/又は流動点、ミニ-ロータリー粘度計(MRV)、及び走査ブルックフィールド粘度計の如き試験により測定される乗用車運転性(vehicle operability)を付与するような方法で潤滑油(又は略してリューブ(lube))中のワックス結晶のサイズ、数、及び成長を改質する全ての添加剤を包含する。潤滑油流動性改良剤の大半はポリマーもしくはコポリマーであり、又はポリマーもしくはコポリマーを含む。これらのポリマーは一般に側鎖、主鎖又はこれらの混合物である。
“ベースオイル”という用語は添加剤を含まない精製液体を表し、潤滑油ブレンド中の成分として使用される。
“ベースストック”という用語はベースオイルのブレンド、混合物、又は同様のものを表す。
ベースストックの種々の“グループ”、例えば、APIグループIIIベースストックが本明細書に言及される。これらのグループ分類は米国特許第6,475,963号(これは参考として本明細書に含まれる)に含まれる表に従って米国石油協会(API)により確立されている。
“二峰”という用語は二つの特有のピーク(又はモード)を有する炭素鎖長頻度分布を表し、夫々のピークは隣接炭素鎖長よりも高いモル%を有する炭素鎖長(又は連続の偶数の炭素に関して隣接する炭素鎖長)である。二峰炭素鎖長頻度分布は“分布の下部”及び“分布の上部”を有する。
【0006】
“分布の下部”という用語は低炭素鎖長及び低モル%の隣接炭素鎖長(連続の偶数の鎖長に関して)を有するモードを含む二峰性分布の部分を表す。分布の下部中の最高炭素鎖長はC14である。
“分布の上部”という用語は高炭素鎖長及び低モル%の隣接炭素鎖長を有するモードを含む二峰性分布の部分を表す。分布の上部中の最低炭素鎖長はC16である。
“主として”という用語は組成物、化合物等の中に存在する一成分の量が成分ごとの基準で存在するあらゆるその他の成分の量よりも多いことを意味する。
本発明は(a)グループIIIベースストック、(b)半結晶性粘度調整剤、及び(c)或る種の規格を満足する一種以上のLOFIを含む潤滑油組成物である。
本発明によれば、潤滑油組成物は、APIグループIIIベースストックを含む。APIにより定義されたグループIIIベースストックは変更可能な(open-ended)粘度指数を有する。本発明の非限定実施態様において、ベースストックの粘度指数は120より大きい。本発明の別の非限定実施態様において、ベースストックは120以上かつ200以下の粘度指数を有する。好適な、市販のグループIIIベースストックとして、エクソンモービル(ファウレイ、U.K.)から市販されているベースストックのビソム銘柄(Visom brand);SKコーポレーション(ウルサン、韓国)から市販されているベースストックのユバセ銘柄(Yubase brand);コノコフィリップス(ウェストレーク、LA(米国))から市販されているベースストックのウルトラS銘柄(Ultra-S brand);及びネスト(ポルボオ、フィンランド)から市販されているベースストックのネクスベース銘柄(Nexbase brand)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の非限定実施態様において、ベースストックは合成軽油(gas-to-liquids(“GTL”))方法を使用してつくられる。GTLは天然ガス又はその他のガス状炭化水素を長鎖炭化水素に変換するのに使用される精製方法である。例えば、GTLはメタンに富むガスを直接変換又はフィッシャートロプッシュ方法を使用する中間体としての合成ガスにより液体燃料に変換するのに使用し得る。当業界で公知であるように、異性化触媒がGTLとともに使用されてグループIIIベースストックをつくることができる。
【0007】
本発明によれば、潤滑油組成物は、半結晶性粘度調整剤を含む。典型的には、半結晶性粘度調整剤は当業界で公知であるような一種以上の高分子量炭化水素ポリマーを含む。好適な炭化水素ポリマーの例として、3個から30個まで、例えば、3個から8個までの炭素原子を有する少なくとも一種の付加的なアルファオレフィンモノマー(これは直鎖又は分岐であってもよい)と共重合されたエチレンのコポリマーが挙げられる。必要により、低濃度、例えば、約10重量%未満の、非共役ジエンが存在し得る。非限定実施態様において、これらのコポリマーはエチレン及びプロピレンを含むものである。本発明に適したエチレンコポリマーとして、テーパーコポリマー(tapered copolymer)又はブロックコポリマー(ターポリマー、テトラポリマー等を含む)だけでなく、当業界で公知であるコポリマー鎖内及びこれらの中に制御された組成の均質性及び/又は不均質性(heterogeneity)を有するものが挙げられる。このようなコポリマーが“レオロジー改質剤としてのポリマー(Polymers as Rheology Modifiers)” D.N. Schulz及びJ.E. Glass編集, American Chemical Society, ワシントンD.C., 1991中のG. VerStrate, M.J. Struglinski著“潤滑油粘度調整剤としてのポリマー”;15章(Chapter 15)に記載されている。上記文献が許される程度に参考として本明細書に含まれる。
本発明の非限定実施態様において、半結晶性粘度調整剤はエチレン及びC3〜C18アルファ-オレフィンを含む油溶性ポリマーであり、そのポリマーは下記のパラメーターの組み合わせを特徴とする:(a)60〜80モル%の範囲内の平均エチレン含量(前記ポリマーは45℃でノルマルデカンに不溶性である1.3重量%以下のポリマーフラクションを含む)、(b)25%未満の結晶性の程度、(c)4.0未満の重量平均分子量/数平均分子量の比、及び(d)10,000〜200,000ダルトンの範囲内の粘度平均分子量。米国特許第3,551,336号(これは本明細書に参考として含まれる)を参照のこと。
本発明の別の非限定実施態様において、半結晶性粘度調整剤はエチレン及び少なくとも一種のその他のアルファ-オレフィンモノマーのセグメントコポリマーであり、夫々のコポリマーが分子内で不均質(heterogeneous)であり、かつ分子間で均質であり、コポリマーの鎖の少なくとも10%を構成する、コポリマーの少なくとも一つのセグメントが、結晶化可能なセグメントである。米国特許第4,804,794号(これは参考として含まれる)を参照のこと。
【0008】
本発明の非限定実施態様において、半結晶性粘度調整剤は非晶性(amorphous)粘度調整剤と組み合わせて含まれる。これの例は50-95モル%のエチレン含量を有するエチレンとC3〜C18アルファ-オレフィンの第一コポリマー及び5-80モル%のエチレン含量を有するエチレンとC3〜C18高級アルファ-オレフィンの第二コポリマーを含む油溶性ポリマー組成物であり、第一コポリマーのエチレン含量は第二ポリマーのエチレン含量より少なくとも5モル%大きい。米国特許第3,697,429号(これは参考として本明細書に含まれる)を参照のこと。
本発明の非限定実施態様において、半結晶性粘度調整剤はゲル透過クロマトグラフィーにより測定して20,000〜500,000ダルトン、例えば、25,000〜400,000ダルトン又は30,000〜300,000ダルトンの範囲の数平均分子量を有する。
半結晶性粘度調整剤はポリマーの0.05〜5重量%の範囲の量で潤滑油組成物中に存在し得る。
本発明によれば、潤滑油組成物は下記の要件を満足する側鎖分布を有する一種以上のLOFIを含む:
(1) 存在する夫々の側鎖が、12.4個から14.4個まで、例えば、12.8個から14.0個まで又は13.0個から13.8個までの平均炭素数を有する8個から18個までの炭素原子から構成される炭素鎖を含み、
(2) 側鎖分布が、主としてC12から構成される二峰性分布の下部及び主としてC16、C18又はこれらの組み合わせから構成される分布(即ち、高炭素数モードを有する分布)の上部を有して二峰であり、
(3) 分布の上部の合計モル%が、分布の下部のそれより小さい必要があり、かつ
(4) 側鎖のC12の量が、全側鎖分布の少なくとも40モル%、例えば、少なくとも50モル%又は少なくとも60モル%である必要がある。
【0009】
二峰性分布の必須成分が(a)C12及びC16又は(b)C12、C16及びC18の混合物から構成される非限定実施態様において、C14の量は全側鎖分布の20モル%未満、例えば、10モル%未満である必要がある。
本発明の非限定実施態様において、側鎖はC8からC18までの範囲の偶数の炭素数セグメント、即ち、C8、C10、C12、C14、C16、C18を含む。
非限定実施態様において、LOFIはジアルキルフマレート-酢酸ビニルコポリマーである。ジアルキルフマレート-酢酸ビニルコポリマーは8個から18個までの範囲の炭素数を有し、12.4個から14.4個まで、例えば、12.8個から14.0個まで、又は13.0個から13.8個までの平均炭素数を有するアルコールの混合物から生成し得る。そのコポリマーは側鎖としてメチレンセグメントを有する側鎖コポリマーである。
これらのLOFIはアルコールの混合物から誘導されたペンダントエステル基を含むことができ、そのアルコール残基は反復メチレン単位として特徴づけられ、これらは一般にゲル透過クロマトグラフィーにより測定して50,000〜350,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する油溶性、又は分散性の、ポリマー組成物である。
本発明の非限定実施態様において、ジアルキルフマレート-酢酸ビニルコポリマーは0.3から1.5まで、例えば、0.3から1.0まで又は0.45から0.7までの範囲の比粘度を有する。別の非限定実施態様において、ジアルキルフマレート-酢酸ビニルコポリマーは50,000〜350,000ダルトン、例えば、50,000〜200,000ダルトン又は75,000〜120,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。
【0010】
別の非限定実施態様において、LOFIはポリ(アルキルメタクリレート)ポリマーを含む。そのポリ(アルキルメタクリレート)ポリマーは実質的にアルキルメタクリレート(a1)及び一種以上のモノマー(a2)からなるコポリマー(A)を含む。米国特許第5,891,831号(これは参考として本明細書に含まれる)を参照のこと。
コポリマー(A)を構成するアルキルメタクリレート(a1)の量は一般にコポリマー(A)の重量に対し30〜99.99重量%であってもよい。
アルキルメタクリレート(a1)は一般に1〜18個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を有するメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート)を含んでもよい。これらのうち、アルキル部分が8〜18個の炭素原子を有するアルキルメタクリレートが好ましい。
モノマー(a2)は共役ジエン、アセチレン、置換アセチレン、アルキルビニルエーテル及びアルキルアリルエーテルからなる群から選ばれる一種以上である。コポリマー(A)を構成するモノマー(a2)の量は一般にコポリマー(A)の重量に対し0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%であってもよい。
更に別の非限定実施態様において、LOFIはポリ(アルキルアクリレート)ポリマーを含む。そのポリ(アルキルアクリレート)ポリマーは分散基を有するアクリレート又はアルキルアクリレートコポリマー誘導体である。米国特許第6,869,919号(これは参考として本明細書に含まれる)を参照のこと。
別の非限定実施態様において、LOFIはポリ(スチレン-ジアルキルマレエート)ポリマーを含む。米国特許4,564,438号(これは参考として本明細書に含まれる)を参照のこと。
潤滑油組成物中のLOFI及び一種以上のその他の成分(ベースストックを除く)が“添加剤”と称される。
【0011】
非限定実施態様において、LOFIは、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定して、50,000〜350,000ダルトン、例えば、80,000〜200,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。
別の非限定実施態様において、LOFIは0.3から1.0まで、例えば、0.4から0.8までの範囲の比粘度を有する。
LOFIは0.005〜1.0重量%、例えば、0.05〜0.5重量%の範囲の量で潤滑油組成物中に存在し得る。
本発明の潤滑油組成物は更に一種以上の任意成分:腐食防止剤、酸化防止剤、摩擦改質剤(friction modifier)、分散剤、消泡剤、耐磨耗剤、清浄剤、錆防止剤等を含み得る。
非限定実施態様において、本発明の潤滑油組成物は腐食防止剤を含む。腐食防止剤(また耐腐食剤として知られている)は、潤滑油組成物により接触される金属部分の劣化を軽減する。腐食防止剤の例示はリン硫化炭化水素及び、好ましくはアルキル化フェノール又はアルキル化フェノールチオエステルの存在下、そしてまた好ましくは二酸化炭素の存在下のリン硫化炭化水素とアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物の反応により得られた生成物である。リン硫化炭化水素は好適な炭化水素、例えば、テルペン、C2〜C6オレフィンポリマー、例えば、ポリイソブチレンの重質石油留分を150°F〜600°F(66℃〜316℃)の範囲の温度で0.5〜15時間にわたって5〜30重量%のリンの硫化物と反応させることにより調製される。リン硫化炭化水素の中和は米国特許第1,969,324号に教示された様式で行なわれてもよい。
【0012】
非限定実施態様において、本発明の潤滑油組成物は酸化防止剤を含み得る。酸化防止剤は鉱油が使用中に劣化する傾向を軽減し、その劣化は酸化の生成物、例えば、スラッジ及び金属表面上のワニスのような付着物、並びに増粘により証明し得る。このような酸化防止剤として、好ましくはC5〜C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、例えば、ノニルフェノール硫化カルシウム、t-オクチルフェニル硫化バリウム、ジオクチルフェニルアミン、フェニルアルファナフチルアミン、リン硫化炭化水素又は硫化炭化水素等が挙げられる。
非限定実施態様において、本発明の潤滑油は摩擦改質剤を含む。摩擦改質剤は適当な摩擦特性を潤滑油組成物、例えば、オートマチックトランスミッション液に付与するのに利用できる。好適な摩擦改質剤の代表例が脂肪酸エステル及びアミドを開示する米国特許第3,933,659号、ポリイソブテニル無水コハク酸-アミノアルカノールのモリブデン錯体を記載する米国特許第4,176,074号、二量体化脂肪酸のグリセロールエステルを開示する米国特許第4,105,571号、アルカンホスホン酸塩を開示する米国特許第3,779,928号、ホスホネートとオレアミドの反応生成物を開示する米国特許第3,778,375号、S-カルボキシアルキレンヒドロカルビルスクシンイミド、S-カルボキシアルキレンヒドロカルビルスクシナム酸及びこれらの混合物を開示する米国特許第3,852,205号、N-(ヒドロキシアルキル)アルケニル-スクシナム酸又はスクシンイミドを開示する米国特許第3,879,306号、ジ-(低級アルキル)ホスファイト及びエポキシドの反応生成物を開示する米国特許第3,932,290号、並びにリン硫化N-(ヒドロキシアルキル)アルケニルスクシンイミドのアルキレンオキサイド付加物を開示する米国特許第4,028,258号に見られる。好ましい摩擦改質剤として、ヒドロカルビル置換コハク酸又は酸無水物のコハク酸エステル、又はこれらの金属塩及び米国特許第4,344,853号に記載されたようなチオビスアルカノールだけでなく、種々のモリブデン化合物が挙げられる。
非限定実施態様において、本発明の潤滑油組成物は分散剤を含む。分散剤は油に不溶性又は実質的に不溶性である使用中の酸化から得られる化合物を液体中に懸濁して維持し、こうしてスラッジ凝集及び金属部分上の沈殿又は付着を防止する。好適な分散剤として、高分子量アルキルスクシネート、油溶性ポリイソブチレン無水コハク酸とエチレンアミン、例えば、テトラエチレンペンタミンの反応生成物及びこれらのホウ酸塩が挙げられる。
非限定実施態様において、本発明の潤滑油組成物は発泡制御を与えるための成分を含む。発泡制御はポリシロキサン型の消泡剤、例えば、シリコーン油及びポリジメチルシロキサンにより与えられる。
【0013】
非限定実施態様において、本発明の潤滑油組成物は耐磨耗剤を含む。耐磨耗剤は、それらの名称が意味するように、金属部分の磨耗を軽減する。通常の耐磨耗剤の代表は亜鉛ジアルキルジチオホスフェート及び亜鉛ジアリールジチオホスフェートである。
非限定実施態様において、本発明の潤滑油組成物は清浄剤及び金属錆防止剤を含む。清浄剤及び金属錆防止剤として、スルホン酸の金属塩、アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、アルキルサリチレート、ナフテネート並びにその他の油溶性のモノカルボン酸及びジカルボン酸が挙げられる。高度に塩基性の(即ち、過塩基化された)金属塩、例えば、高度に塩基性のアルカリ土類金属スルホン酸塩(特にCa塩及びMg塩)が清浄剤として頻繁に使用される。このような材料の代表例、及びそれらの調製方法が、1985年7月11日に最初に出願された出願に基づく米国特許第6,127,321号に見られる。
本発明の潤滑油組成物は当業界で公知である方法及び技術を使用してつくられる。本発明の潤滑油組成物は典型的には個々の成分をベースストックにブレンドすることによりつくられる。例えば、成分が添加剤を室温又は高温で所望の濃度のレベルで分散、又は溶解することによりベースストックに直接添加し得る。
【実施例】
【0014】
本発明が下記の非限定実施例により説明される。実施例では、潤滑油組成物がグループIIIベースストック(ユバセベースストック)、半結晶性粘度調整剤(シェブロン・オロニト社からのパラトン8451)、及びLOFI(これは以下に記載されるように調製された)を含んでいた。夫々の潤滑油組成物は異なるLOFIを含んでいた。例えば、例1の潤滑油組成物はLOFI 1を含み、例2の潤滑油組成物はLOFI 2を含み、以下同様である。
最初に表1に示された炭素原子の分布を有するアルコールのブレンドを使用して5種のジアルキルフマレートモノマー(ジアルキルフマレートモノマー1-5)をつくることにより、5種のLOFI(LOFI 1-5)を調製した。表1中のアルコール1を使用してジアルキルフマレートモノマー1を調製し、表1中のアルコール2を使用してジアルキルフマレートモノマー2を調製し、以下同様である。フマル酸232g、特定のアルコールブレンド824g、及びファスカット4100(Fascat 4100)(登録商標)0.2gをディーン-スターク装置を備えた丸底フラスコに添加した。そのスラリーを窒素の流れの下で撹拌し、220℃に徐々に加熱した。そのエステル化反応をディーン-スタークトラップ中に集められた水の量を測定することにより監視した。水の発生が停止した時(典型的には4〜6時間)、ジアルキルフマレートモノマーを反応器からデカントし、中和価(2.0mg KOH/g)及びケン化価(223mg KOH/g)について分析した。ジアルキルフマレートモノマー1-5をこの方法で生成した。
次いで以下に記載されるようにジアルキルフマレートモノマー(上記工程で生成された)からジアルキルフマレート-酢酸ビニルコポリマーをつくることによりLOFIを調製した。ジアルキルフマレートモノマー1を使用してジアルキルフマレート酢酸ビニルコポリマー1を調製し、ジアルキルフマレートモノマー2を使用してジアルキルフマレート酢酸ビニルコポリマー2を調製し、以下同様に調製した。ジアルキルフマレートモノマー(ジアルキルフマレートモノマー1-5)150gをパール(Parr)(登録商標)銘柄の、300cm3ステンレス鋼反応器に添加した。反応器をシールし、50℃に加熱し、10分間にわたって窒素でフラッシした。次いで脱酸素化酢酸ビニル26.5gをジアルキルフマレートモノマーを含むパール(登録商標)反応器に注入した。その混合物を15分間撹拌し、その後に100℃の反応温度に加熱した。tert-ブチルペルオクトエート0.26gをソネボーン製ブランドール(登録商標)ホワイト鉱油2.0gに溶解し、次いでその混合物に注入した。その混合物を5〜8時間撹拌して重合反応を完結させた。次いでそのコポリマーを反応器から丸底フラスコに注入し、ロータリーエバポレーターで揮発物をストリッピングした。ジアルキルフマレート酢酸ビニルコポリマー1-5をこの方法で生成した。
ジアルキルフマレート酢酸ビニルコポリマー1-5を当業界で知られているようにグループIIIベースストック(ユバセベースストック)及び半結晶性粘度調整剤(シェブロン・オロニト社からのパラトン8451)とブレンドして例1-5のSAE 5W-30潤滑油組成物を生成した。
下記の表1に、組成情報を例1-5に関するLOFI側鎖について提示する。
【0015】
【表1】

【0016】
先に述べたように、本発明のLOFIの側鎖は或る種の要件を満足する必要がある。種々の要件が下記の表2にリストされる。上記の様式でつくられた種々の例示の潤滑油組成物(例1-5)について、“v”はLOFIが要件を満足する場合にボックス中に現れ、“X”はLOFIが要件を満足しない場合にボックス中に現れる。
【0017】
【表2】

【0018】
見られるように、例1-3の潤滑油組成物中のLOFIは要件の全てを満足し、本発明により含まれる。例4及び5の潤滑油組成物中のLOFIは要件の全てを満足せず、本発明の範囲外である。
例1-5の潤滑油組成物をASTM D 4684に従ってMRVポンプ輸送能試験にかけた。試験の結果を表3に示す。
【0019】
【表3】

【0020】
--は降伏応力及び粘度が試験されなかったことを意味する。
MRVポンプ輸送能試験に合格するために、潤滑油組成物は60,000mPa・s以下の粘度及び35Pa未満の降伏応力を示す必要がある。0.50%の処理率では、例1及び3のみがMRVポンプ輸送能試験に合格した。0.20%の処理率では、例1-3のみがMRVポンプ輸送能試験に合格する。先に述べたように、例1-3は本発明により含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) APIグループIIIベースストック、
(b) 一種以上の半結晶性粘度調整剤、及び
(c) 側鎖分布を有する一種以上のLOFIであって、該側鎖分布が、下記の要件:
(1) 分布が、12.4個から14.4個までの範囲の平均炭素数を有するC8からC18までの範囲の側鎖を含み、
(2) 側鎖分布が、主としてC12から構成される二峰性分布の下部及び主としてC16、C18又はこれらの組み合わせから構成される該分布の上部を有して二峰であり、
(3) 分布の上部の合計モル%が、分布の下部のそれより小さい必要があり、かつ
(4) 側鎖のC12の量が、全側鎖分布の少なくとも40モル%である必要があること
を満足する、前記側鎖分布を有する一種以上のLOFI
を含むことを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
半結晶性粘度調整剤が非晶性粘度調整剤を含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
LOFIがジアルキルフマレート-酢酸ビニルコポリマーである、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
分布が、12.8個から14.0個までの範囲の平均炭素数を有するC8からC18までの範囲の側鎖を含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
半結晶性粘度調整剤が、3個から30個までの炭素原子を有する少なくとも一種の付加的なアルファオレフィンモノマーと共重合されたエチレンのコポリマーを含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
半結晶性粘度調整剤が、少量の一種以上の非共役ジエンを含むエチレンアルファオレフィンコポリマーを含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
LOFIが、ポリ(アルキルメタクリレート)ポリマーを含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
LOFIが、ポリ(アルキルアクリレート)ポリマーを含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
LOFIが、ポリ(スチレン-ジアルキルマレエート)を含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
LOFIが、0.3から1.0までの範囲の比粘度を有する、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
LOFIが、潤滑油組成物の合計重量を基準として、0.005重量%から1.0重量%までの範囲の量で存在する、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
下記の成分:腐食防止剤、酸化防止剤、摩擦改質剤、分散剤の一種以上を更に含む、請求項1記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2009−138195(P2009−138195A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308406(P2008−308406)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】