説明

二方向プレテンション部材の製造方法

【課題】二方向プレテンション部材を直列配置で複数個同時に製造する場合において、安価な製造設備で所期のプレストレス導入を容易に行えるようにする。
【解決手段】複数本の縦方向PC鋼材102と複数本の横方向PC鋼材104とがコンクリート部材106内に配置されてなる二方向プレテンション部材100を、縦方向の複数箇所で複数個同時に製造する。その際、縦方向および横方向の鉛直断面形状がいずれも略U字形に設定された縦長の製作ベッド10を用いて縦方向および横方向のプレストレス導入を行い、製作ベッド自体でPC鋼材緊張時の反力を受けるようにする。これにより、従来のような長尺の水平反力アンカを備えた反力装置を不要とし、二方向プレテンション部材100の製造設備のコスト低減を図る。また、PC鋼材の緊張力の管理を容易化して、所期のプレストレス導入を容易に可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、二方向プレテンション部材を直列配置で複数個同時に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二方向プレテンション部材は、縦方向に延びる複数本の縦方向PC鋼材と、これら縦方向PC鋼材と交差するようにして横方向に延びる複数本の横方向PC鋼材とが、コンクリート部材内に配置された構成となっている。
【0003】
「特許文献1」の図4には、このような二方向プレテンション部材を、縦方向の複数箇所で複数個同時に製造する方法が記載されている。
【0004】
すなわち、この「特許文献1」の図4に記載された製造方法においては、複数のコンクリート部材の打設位置を縦方向に直列に配置するとともに、これら複数箇所の打設位置の周囲の地盤に複数の反力装置を設置した状態で、各打設位置の横方向両側に位置する反力装置に複数の横方向PC鋼材を定着し、ジャッキを用いてこれら横方向PC鋼材の緊張および緊張解除を行うことにより、各コンクリート部材に対して横方向のプレストレスを導入するとともに、複数箇所の打設位置の縦方向両端部に位置する反力装置に複数の縦方向PC鋼材を定着して、ジャッキを用いてこれら縦方向PC鋼材の緊張および緊張解除を行うことにより、複数のコンクリート部材に対して縦方向のプレストレスを導入するようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−47233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記「特許文献1」に記載された製造方法においては、複数箇所の打設位置の周囲の地盤に複数の反力装置を設置した状態で、二方向のプレストレス導入を行うようになっているので、各反力装置として長尺の水平反力アンカを備えた構成としておくことが必要となり、その製造設備が高価なものとなってしまう、という問題がある。また、このような反力装置を用いた方法では、PC鋼材の緊張力の管理が難しく、所期のプレストレス導入を行うことが容易でない、という問題もある。
【0007】
特に、二方向プレテンション部材を製造するサイトの地盤が軟弱地盤である場合には、反力装置の固定設置を行うこと自体が困難となってしまう、という問題がある。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、二方向プレテンション部材を直列配置で複数個同時に製造する場合において、安価な製造設備で所期のプレストレス導入を容易に行うことができる二方向プレテンション部材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、自碇式の製作ベッドを用いて二方向のプレストレス導入を行うようにすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る二方向プレテンション部材の製造方法は、
縦方向に延びる複数本の縦方向PC鋼材と、これら縦方向PC鋼材と交差するようにして横方向に延びる複数本の横方向PC鋼材とが、コンクリート部材内に配置されてなる二方向プレテンション部材を、縦方向の複数箇所で複数個同時に製造する方法において、
縦方向および横方向の鉛直断面形状がいずれも略U字形に設定された縦長の製作ベッドを用い、
上記製作ベッドにおける一方の側壁に上記各横方向PC鋼材の一端部を定着した状態で、上記製作ベッドにおける他方の側壁に設置したジャッキを用いて上記各横方向PC鋼材の緊張および緊張解除を行うことにより、上記両側壁間において打設される各コンクリート部材に対して横方向のプレストレスを導入するとともに、
上記製作ベッドにおける一方の端部壁に上記各縦方向PC鋼材の一端部を定着した状態で、上記製作ベッドにおける他方の端部壁に設置したジャッキを用いて上記各縦方向PC鋼材の緊張および緊張解除を行うことにより、上記両端部壁間において打設される複数のコンクリート部材に対して縦方向のプレストレスを一括して導入する、ことを特徴とするものである。
【0011】
上記「縦方向の複数箇所」の具体的な数は特に限定されるものではない。
【0012】
上記「複数本の縦方向PC鋼材」および「複数本の横方向PC鋼材」の具体的な配置や本数は、特に限定されるものではない。
【0013】
上記「製作ベッド」は、縦方向および横方向の鉛直断面形状がいずれも略U字形に設定された縦長のものであれば、その具体的な形状は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
上記構成に示すように、本願発明に係る二方向プレテンション部材の製造方法においては、複数本の縦方向PC鋼材と複数本の横方向PC鋼材とがコンクリート部材内に配置されてなる二方向プレテンション部材を、縦方向の複数箇所で複数個同時に製造するようになっているが、その際、縦方向および横方向の鉛直断面形状がいずれも略U字形に設定された縦長の製作ベッドを用い、この製作ベッドにおける一方の側壁に各横方向PC鋼材の一端部を定着した状態で、該製作ベッドにおける他方の側壁に設置したジャッキを用いて各横方向PC鋼材の緊張および緊張解除を行うことにより、両側壁間において打設される各コンクリート部材に対して横方向のプレストレスを導入するとともに、上記製作ベッドにおける一方の端部壁に各縦方向PC鋼材の一端部を定着した状態で、該製作ベッドにおける他方の端部壁に設置したジャッキを用いて各縦方向PC鋼材の緊張および緊張解除を行うことにより、両端部壁間において打設される複数のコンクリート部材に対して縦方向のプレストレスを一括して導入するようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0015】
すなわち、製作ベッド自体でPC鋼材緊張時の反力を受けることが可能な自碇式の製作ベッドを用いて、二方向のプレストレス導入を行うようになっているので、従来のような長尺の水平反力アンカを備えた反力装置が不要となり、このため二方向プレテンション部材の製造設備のコスト低減を図ることができ、また、PC鋼材の緊張力の管理が容易となるので、所期のプレストレス導入を行うことが容易に可能となる。
【0016】
このように本願発明によれば、二方向プレテンション部材を直列配置で複数個同時に製造する場合において、安価な製造設備で所期のプレストレス導入を容易に行うことができる。
【0017】
特に本願発明においては、自碇式の製作ベッドを用いて二方向のプレストレス導入を行うようになっているので、二方向プレテンション部材を製造するサイトの地盤がたとえ軟弱地盤であっても、何ら支障なく二方向プレテンション部材の製造を行うことができる。その際、この製作ベッドは、二方向プレテンション部材の製造用として、横方向にある程度の幅を有する構成となっているので、設置地盤に対して水平に配置することが容易に可能となる。
【0018】
上記構成において、製作ベッドとして、その両端部壁と両側壁とが連続的に形成された箱形の製作ベッドを用いるようにすれば、これら各端部壁および各側壁の壁厚をある程度薄くしてもPC鋼材緊張時の反力を受けるようにすることができる。
【0019】
上記構成において、製作ベッドを、その設置地盤に対して所定量埋設しておくようにすれば、これを設置地盤により確実に弾性支持されるようにすることが可能となり、これにより製作ベッドの設置状態に起因して該製作ベッドに無用な曲げモーメントが発生してしまうのを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本願発明の一実施形態に係る二方向プレテンション部材の製造方法に用いられる製作ベッド10を、所定の付属装置が装着された状態で示す図であって、同図(a)が平面図、同図(b)が側断面図である。
【0022】
同図に示すように、この製作ベッド10は、鉄筋コンクリート製であって、平面視において細長矩形状の外形形状を有しており、その縦方向(長尺方向)の長さは100m程度、その横方向の長さは13m程度の値に設定されている。この製作ベッド10は、自碇式の製作ベッドとして構成されており、平坦な地盤2に設置された状態で使用されるようになっている。なお、本実施形態においては、地盤2が軟弱地盤であり、この地盤2に対して所定量(具体的には0.8m程度)沈み込むようにして製作ベッド10が設置されている状態を示している。
【0023】
この製作ベッド10は、底面壁10Aと、この底面壁10Aの横方向の両端縁部において上方へ立ち上がる1対の側壁10B、10Cと、底面壁10Aの縦方向の両端縁部において上方へ立ち上がる1対の端部壁10D、10Eとで構成されており、その縦方向および横方向の鉛直断面形状はいずれも略U字形に設定されている。その際、この製作ベッド10は、その両端部壁10D、10Eと両側壁10B、10Cとが連続的に形成された箱形の製作ベッドとして構成されており、その内側に縦長矩形状の作業用空間が形成されるようになっている。
【0024】
本実施形態において製造の対象となる二方向プレテンション部材100は、縦方向に延びる38本(19本ずつ上下2段)の縦方向PC鋼材102と、これら縦方向PC鋼材と交差するようにして横方向に延びる22本の横方向PC鋼材104とが、コンクリート部材106内に配置されてなる横長矩形状のコンクリートスラブであって、製作ベッド10の作業用空間内における縦方向の21箇所で、21個同時に製造されるようになっている。
【0025】
これら21個の二方向プレテンション部材100を製造する工程において、これら各二方向プレテンション部材100に対して、横方向のプレストレスと縦方向のプレストレスとが導入されるようになっている。これら二方向のプレストレス導入は、次のようにして行われるようになっている。
【0026】
すなわち、一方の側壁10Bに各横方向PC鋼材104の一端部を定着した状態で、他方の側壁10Cに設置した各1対のジャッキ50を用いて、22本の横方向PC鋼材104の緊張および緊張解除を行うことにより、両側壁10B、10C間において打設される各コンクリート部材106に対して、横方向のプレストレスが導入されるようになっている。
【0027】
また、一方の端部壁10Dに、各縦方向PC鋼材102の一端部を定着した状態で、他方の端部壁10Eに設置した各1対のジャッキ30を用いて38本の縦方向PC鋼材102の緊張および緊張解除を行うことにより、両端部壁10D、10E間において打設される21個のコンクリート部材106に対して、縦方向のプレストレスが一括して導入されるようになっている。
【0028】
図2、3、4および5は、図1のII部詳細図、III 部詳細図、IV部詳細図およびV部詳細図である。また、図6は、図1のVI-VI 線断面詳細図である。
【0029】
これらの図にも示すように、この製作ベッド10の底面壁10Aは、その壁厚が1.2m程度の値に設定されており、この底面壁10Aの下面は、その全域にわたって平面状に形成されている。
【0030】
そして、この製作ベッド10の各側壁10B、10Cは、その壁厚が1.2m程度の値に設定されており、その高さは、底面壁10Aの下面から2.2m程度の値に設定されている。これら各側壁10B、10Cの内側面には、その下端部に傾斜角45°程度のハンチ部10Ba、10Caが形成されている。
【0031】
また、この製作ベッド10の各端部壁10D、10Eは、その壁厚が該端部壁10D、10Eの上端面において2.2m程度の値に設定されており、その高さは、各側壁10B、10Cの高さと同じ値に設定されている。これら各端部壁10D、10Eの内側面は、傾斜角45°程度の傾斜面10Da、10Eaとして形成されている。
【0032】
その際、一方の端部壁10Dには、38本の縦方向PC鋼材102を挿通させるための38本の挿通孔(図示せず)が、横方向に所定間隔をおいて上下2段配置で縦方向に貫通するようにして形成されている。
【0033】
また、他方の端部壁10Eには、プレテンション導入装置20が装着されている。このプレテンション導入装置20は、端部壁10Eの内側近傍に配置された定着用ブロック22と、端部壁10Eの外側近傍に配置された受け梁24と、これら定着用ブロック22、端部壁10Eおよび受け梁24を縦方向に貫通するようにして上下2段で配置され、両端部が定着用ブロック22および受け梁24に各々ナット28で固定された2対のテンションロッド26と、端部壁10Eと受け梁24との間に設置された1対のジャッキ30とを備えた構成となっている。その際、定着用ブロック22には、38本の縦方向PC鋼材102を挿通させるための38本の挿通孔(図示せず)が、横方向に所定間隔をおいて上下2段配置で縦方向に貫通するようにして形成されている。
【0034】
同様に、一方の側壁10Bには、上記21箇所の各々に対応する位置に、22本の横方向PC鋼材104を挿通させるための22本の挿通孔(図示せず)が、縦方向に所定間隔をおいて横方向に貫通するようにして形成されている。
【0035】
また、他方の側壁10Cには、縦方向に等間隔をおいて21箇所にプレテンション導入装置40が装着されている。このプレテンション導入装置40は、側壁10Cの内側近傍に配置された定着用ブロック42と、側壁10Cの外側近傍に配置された受け梁44と、これら定着用ブロック42、側壁10Cおよび受け梁44を横方向に貫通するように配置され、両端部が定着用ブロック42および受け梁44に各々ナット48で固定された2対のテンションロッド46と、側壁10Cと受け梁44との間に設置された1対のジャッキ50とを備えた構成となっている。その際、各定着用ブロック42には、22本の横方向PC鋼材104を挿通させるための22本の挿通孔(図示せず)が、縦方向に所定間隔をおいて横方向に貫通するようにして形成されている。
【0036】
次に、二方向プレテンション部材100の製造工程について説明する。
【0037】
まず、製作ベッド10における縦長の作業用空間の21箇所に、コンクリート部材106の形状に対応する型枠(図示せず)を設置し、38本の縦方向PC鋼材102を上下2段で横方向に等間隔をおいて配置するとともに、各箇所において22本の横方向PC鋼材104を、上段に位置する縦方向PC鋼材102の上方近傍において縦方向に等間隔をおいて配置する。
【0038】
各縦方向PC鋼材102は、その一端部を、一方の端部壁10Dに形成された挿通孔に挿通させた状態で、該端部壁10Dの外面において定着具32で定着するとともに、その他端部を、定着用ブロック22に形成された挿通孔に挿通させた状態で、該定着用ブロック22における縦方向外側の端面において定着具32で定着する。そして、他方の端部壁10Eと受け梁24との間に設置された1対のジャッキ30により、受け梁24を縦方向外側へ移動させ、これに伴い、テンションロッド26を介して定着用ブロック22を縦方向外側へ移動させ、これにより38本の縦方向PC鋼材102を一括して緊張する。
【0039】
一方、各横方向PC鋼材104は、その一端部を、一方の側壁10Bに形成された挿通孔に挿通させた状態で、該側壁10Bの外面において定着具52で定着するとともに、その他端部を、定着用ブロック42に形成された挿通孔に挿通させた状態で、該定着用ブロック42における横方向外側の端面において定着具52で定着する。そして、他方の側壁10Cと受け梁44との間に設置された1対のジャッキ50により、受け梁44を横方向外側へ移動させ、これに伴い、テンションロッド46を介して定着用ブロック42を横方向外側へ移動させ、これにより各二方向プレテンション部材100用の22本の横方向PC鋼材104を一括して緊張する。この作業は、21箇所のプレテンション導入装置40毎に個別に行う。
【0040】
次に、上記21箇所の各々に設置された型枠内にコンクリートを打設し、所定時間養生する。
【0041】
その後、各プレテンション導入装置40において、その1対のジャッキ50による22本の横方向PC鋼材104の緊張を一括して解除する。その際、この緊張解除による各二方向プレテンション部材100の変位を最小限に抑えるため、この緊張解除は、各プレテンション導入装置40毎に順次少しずつ行うようにする。この緊張解除が完了した後、プレテンション導入装置20において、その1対のジャッキ30による38本の縦方向PC鋼材102の緊張を一括して解除する。
【0042】
最後に、各縦方向PC鋼材102および各横方向PC鋼材104における各型枠からの突出部分を切り落とした後、これら各型枠から二方向プレテンション部材100を取り出す。
【0043】
以上詳述したように、本実施形態においては、38本の縦方向PC鋼材102と22本の横方向PC鋼材104とがコンクリート部材106内に配置されてなる二方向プレテンション部材100を、縦方向の21箇所で21個同時に製造するようになっているが、その際、縦方向および横方向の鉛直断面形状がいずれも略U字形に設定された縦長の製作ベッド10を用い、この製作ベッド10における一方の側壁10Bに各横方向PC鋼材104の一端部を定着した状態で、該製作ベッド10における他方の側壁10Cに設置したジャッキ50を用いて各横方向PC鋼材104の緊張および緊張解除を行うことにより、両側壁10B、10C間において打設される各コンクリート部材106に対して横方向のプレストレスを導入するとともに、製作ベッド10における一方の端部壁10Dに各縦方向PC鋼材102の一端部を定着した状態で、該製作ベッド10における他方の端部壁10Eに設置したジャッキ30を用いて各縦方向PC鋼材102の緊張および緊張解除を行うことにより、両端部壁10D、10E間において打設される21個のコンクリート部材106に対して縦方向のプレストレスを一括して導入するようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0044】
すなわち、自碇式の製作ベッド10を用いて二方向のプレストレス導入を行うようになっているので、従来のような長尺の水平反力アンカを備えた反力装置が不要となり、このため二方向プレテンション部材100の製造設備のコスト低減を図ることができ、また、各縦方向PC鋼材102および各横方向PC鋼材104の緊張力の管理が容易となるので、所期のプレストレス導入を行うことが容易に可能となる。
【0045】
このように本実施形態によれば、二方向プレテンション部材100を直列配置で複数個同時に製造する場合において、安価な製造設備で所期のプレストレス導入を容易に行うことができる。
【0046】
特に本実施形態においては、自碇式の製作ベッド10を用いて二方向のプレストレス導入を行うようになっているので、二方向プレテンション部材100を製造するサイトの地盤2が軟弱地盤であるにもかかわらず、何ら支障なく二方向プレテンション部材100の製造を行うことができる。その際、この製作ベッド10は、二方向プレテンション部材100の製造用として、横方向にある程度の幅を有する構成となっているので、地盤2に対して水平に配置することが容易に可能となる。
【0047】
また本実施形態においては、製作ベッド10として、その両端部壁10D、10Eと両側壁10B、10Cとが連続的に形成された箱形の製作ベッドを用いるようになっているので、これら各端部壁10D、10Eおよび各側壁10B、10Cの壁厚が比較的薄く形成されているにもかかわらず、各縦方向PC鋼材102および各横方向PC鋼材104を緊張する際の反力を受けるようにすることができる。
【0048】
さらに本実施形態においては、製作ベッド10が、その地盤2に対して所定量埋設された半地下式ベッドの状態で用いられているので、この製作ベッド10を地盤2により確実に弾性支持されるようにすることができる。そしてこれにより、製作ベッド10の設置状態に起因して該製作ベッド10に無用な曲げモーメントが発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0049】
ところで、上記実施形態においては、製作ベッド10として鉄筋コンクリート製の製作ベッドを用いるようにしたが、PC鋼材で適宜補強された鉄筋コンクリート製の製作ベッド等を用いるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、その製造対象となる二方向プレテンション部材100が横長矩形状のコンクリートスラブであるものとして説明したが、これ以外の形状を有する部材である場合においても、上記実施形態の製造方法を採用することにより上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本願発明の一実施形態に係る二方向プレテンション部材の製造方法に用いられる製作ベッドを、所定の付属装置が装着された状態で示す図であって、同図(a)が平面図、同図(b)が側断面図
【図2】図1のII部詳細図
【図3】図1のIII 部詳細図
【図4】図1のIV部詳細図
【図5】図1のV部詳細図
【図6】図1のVI-VI 線断面詳細図
【符号の説明】
【0053】
2 地盤
10 製作ベッド
10A 底面壁
10B、10C 側壁
10Ba、10Ca ハンチ部
10D、10E 端部壁
10Da、10Ea 傾斜面
20、40 プレテンション導入装置
22、42 定着用ブロック
24、44 受け梁
26、46 テンションロッド
28、48 ナット
30、50 ジャッキ
32、52 定着具
100 二方向プレテンション部材
102 縦方向PC鋼材
104 横方向PC鋼材
106 コンクリート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に延びる複数本の縦方向PC鋼材と、これら縦方向PC鋼材と交差するようにして横方向に延びる複数本の横方向PC鋼材とが、コンクリート部材内に配置されてなる二方向プレテンション部材を、縦方向の複数箇所で複数個同時に製造する方法において、
縦方向および横方向の鉛直断面形状がいずれも略U字形に設定された縦長の製作ベッドを用い、
上記製作ベッドにおける一方の側壁に上記各横方向PC鋼材の一端部を定着した状態で、上記製作ベッドにおける他方の側壁に設置したジャッキを用いて上記各横方向PC鋼材の緊張および緊張解除を行うことにより、上記両側壁間において打設される各コンクリート部材に対して横方向のプレストレスを導入するとともに、
上記製作ベッドにおける一方の端部壁に上記各縦方向PC鋼材の一端部を定着した状態で、上記製作ベッドにおける他方の端部壁に設置したジャッキを用いて上記各縦方向PC鋼材の緊張および緊張解除を行うことにより、上記両端部壁間において打設される複数のコンクリート部材に対して縦方向のプレストレスを一括して導入する、ことを特徴とする二方向プレテンション部材の製造方法。
【請求項2】
上記製作ベッドとして、上記両端部壁と上記両側壁とが連続的に形成された箱形の製作ベッドを用いる、ことを特徴とする請求項1記載の二方向プレテンション部材の製造方法。
【請求項3】
上記製作ベッドを、該製作ベッドが設置される地盤に対して所定量埋設しておく、ことを特徴とする請求項1または2記載の二方向プレテンション部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−245506(P2007−245506A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71418(P2006−71418)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】