説明

二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法

【課題】二次空気供給量を絞る場合でも未燃物質を効果的に燃焼させる。
【解決手段】二次燃焼室に互いに対向する前壁と仕切り壁とに、上下流方向に上下2段に配置した上段ノズルと下段ノズルから2系統で二次空気の流速を操作する。低熱量域で、下段ノズルの二次空気の流速を、低流速域と高流速域の間で変化させるとともに、上段ノズルの二次空気の流速を最低流速域と低流速域の間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減するA工程と、中熱量域で、下段ノズルの二次空気の流速を高流速域で略一定に保持するとともに、上段ノズルの二次空気の流速を低流速域と高流速域の間で変化させて中熱量域の高域限で上段ノズルと下段ノズルの流速が同一として二次空気供給量を増減するB工程と、上段ノズルと下段ノズルの二次空気の流速を同一割合で変化させて二次空気供給量を増減するC工程とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ式焼却炉や廃棄物溶融炉、電気式溶融炉などにおいて、一次燃焼室の下流側に配置された二次燃焼室に、二次空気を供給して未燃物質を二次燃焼させる二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を焼却処理する際に発生する燃焼ガスには、ダイオキシンなどの有害未燃物質が含まれており、この有害未燃物質を低減する方法として、二次燃焼室に二次燃焼用の二次空気を吹き込むことで、完全燃焼させる方法がある。この方法では、二次空気と燃焼ガスとの混合状態が未燃物質の低減効果を大きく左右する。
【0003】
たとえば特許文献1には、ストーカ式焼却炉において、二次空気供給ノズルを上下複数段に配置し、排ガス計測手段により検出された排ガスのCO濃度が高くなった場合に、下段側の二次空気供給ノズルを開放したり、二次空気を二次空気流量の実測値に基づいてPID制御を行い、二次空気ダンパを介して二次空気供給ノズル群に二次空気流量を分配制御する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2002−195534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ごみの処理量や発熱量が減少すると、炉内温度維持のために、二次空気の供給量を絞る必要がある。この場合、二次空気流の燃焼ガスへの貫通力と混合効果とが低下するため、二次燃焼室で未燃物質を完全燃焼させるためには、二次空気を効果的に吹き込むことが重要となる。
【0005】
特許文献1では、炉出口の排ガス中のNOxとCOの排ガス検出手段を設けて、COが増加した場合に、下段側の二次空気供給ノズルを開放する旨の記載があるが、二次空気供給量を絞る場合の二次空気の供給方法について、具体的に開示されていない。
【0006】
本発明は上記問題点を解決して、被焼却物の発熱量と投入量とによる供給熱量の変動に対応して二次空気量を制御するに際し、二次空気供給量を絞る場合であっても、未燃物質を効果的に燃焼させることができる二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1記載の発明は、一次燃焼室から流入される燃焼ガス流の下流側に設置された二次燃焼室で、互いに対向する前壁と仕切り壁とに、二次空気を吹き込む複数の上段噴出口および複数の下段噴出口を上下流方向に2段に配置した焼却炉における二次空気の吹き込み方法であって、被焼却物の発熱量と投入量により求められる供給熱量の増減に対応して、同一平面内に配置された前壁の上段噴出口と仕切り壁の上段噴出口から吹き込む二次空気の流速と、同一平面内に配置された前壁の下段噴出口と仕切り壁の下段噴出口から吹き込む二次空気の流速との2系統を操作して、二次空気供給量を制御し、低熱量域で、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を低流速域と高流速域の間で所定の割合で変化させるとともに、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を最低流速域と前記低流速域の間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減するA工程と、中熱量域で、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を前記高流速域で略一定に保持するとともに、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を、前記低流速域と前記高流速域の間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減し、さらに当該中熱量域の高域限で上段噴出口の流速と下段噴出口の流速を同一にするB工程とを具備し、前記最低流速域を10m/秒未満の流速とし、前記低流速域を10m/秒以上、25m/秒未満の流速とし、前記高流速域を30m/秒以上、55m/秒未満の流速としたものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、高熱量域で、両壁の上段噴出口および下段噴出口から同一の流速で吹き込まれる二次空気の流速を、高流速域から最高流速域の間で同一の割合で増加させて二次空気供給量を増加するC工程を行い、前記最高流速域を55m/秒以上の流速としたものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、前壁および仕切り壁では平面視でそれぞれ同一位置に配置され、かつ前壁と仕切り壁で互いに対抗する位置からずれて配置された上段噴出口および下段噴出口を使用したものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、一次燃焼室から流入される燃焼ガス流の下流側に設置された二次燃焼室で、互いに対向する前壁と仕切り壁に、二次空気を吹き込む複数の下段噴出口を前壁と仕切り壁とに設置するとともに、下段噴出口より下流側で二次空気を吹き込む複数の上段噴出口を前壁および仕切り壁の一方に設置した焼却炉における二次空気吹き込み方法であって、被焼却物の発熱量と投入量から求められる供給熱量に対応して、同一平面上に配置された前壁と仕切り壁の下段噴出口から吹き込まれる二次空気の流速と、上段噴出口から吹き込まれる二次空気の流速の2系統で操作して、二次空気供給量を制御し、低熱量域で、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を高流速域内で所定の割合で変化させるとともに、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を最低流速域と低流速域との間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減するD工程と、中熱量域で、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を前記高流速域内に略一定に保持するとともに、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を、前記低流速域と前記高流速域の間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減し、さらに当該中熱量域の高域限で上段噴出口の流速と下段噴出口の流速を同一にするE工程とを具備し、前記最低流速域を10m/秒未満の流速とし、前記低流速域を10m/秒以上、25m/秒未満の流速とし、(中流速域を25m/秒以上、30m/秒未満の流速とし)、前記高流速域を30m/秒以上、55m/秒未満の流速としたものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の構成において、高熱量域で、上段噴出口および下段噴出口から同一の流速で吹き込まれる二次空気の流速を、高流速域から最高流速域まで同一割合で増加させて二次空気供給量を増加するF工程を行い、前記最高流速域を55m/秒以上の流速としたものである。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項4または5記載の構成において、前壁と仕切り壁とに互いに対抗する位置から位置ずれしてそれぞれ配置された複数の下段噴出口を使用し、平面視で下段噴出口に対応して左右両端側に配置された上段噴出口を使用したものである。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の構成において、下段噴出口および上段噴出口から二次空気を水平方向から下向き30°の範囲で選択して吹き込むものである。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の構成において、同一口径の下段噴出口と上段噴出口とを使用し、軸心間の上下段距離が口径の2倍以上で10倍以下に配置された下段噴出口と上段噴出口とを使用するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、被焼却物の供給熱量に対応して、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速と上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を2系統で制御し、低熱量域でA工程を行い、中熱量域でB工程を行う。
【0016】
すなわち、被焼却物が低質で供給熱量が低い低熱量域でA工程を行い、主に、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を、低流速域から高流速域まで大きい割合で増減して二次空気をできるだけ高速で吹き込むことにより、流入する燃焼ガスを効果的に攪拌し、ついで上段噴出口から吹き込む二次空気により、下段噴出口から吹き込まれる二次空気と共に二次空気流を効果的に分断して混合攪拌し、二次空気供給量が少なくても、燃焼ガスと二次空気との混合攪拌効果を促進して未燃物質を燃焼させCOを低減することができる。また複雑な制御を不要にできる。
【0017】
また被焼却物が基準質で供給熱量が中程度の中熱量域でB工程を行い、流入する燃焼ガスに最初に吹き込まれる下段噴出口の二次空気の流速を、高流速域で略一定に保持することで二次空気による燃焼ガスの攪拌効果を維持しつつ、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を低流速域から高流速域の間で増減して二次空気供給量を調整することにより、燃焼ガスの分断効果と混合攪拌効果とを促進して未燃物質を燃焼させCOを低減することができる。また複雑な制御を不要にできる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、被焼却物が良質で供給熱量が高い高熱量域でC工程を行い、流入する燃焼ガスに対して、下段噴出口と上段噴出口から同一の流速で吹き込まれる高速の二次空気の流速を、同一割合で増減して吹き込むことにより、大量の燃焼ガスを効果的に混合攪拌を促進して未燃物質の燃焼させ、COを効果的に低減することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、上下段噴出口を平面視で同一位置に配置することにより、低速の二次空気による燃焼ガスの分断効果を促進し、さらに前壁と仕切り壁の上下段噴出口と仕切り壁の上下段噴出口とを互いに位置ずれさせることにより、燃焼ガスと二次空気とを効果的に混合攪拌させることができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、被焼却物の供給熱量に対応して、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速と、上段噴出口から吹き込まれる二次空気の流速の2系統で制御し、低熱量域でD工程を行い、中熱量域でE工程を行う。
【0021】
すなわち、被焼却物が低質で供給熱量が低い低熱量域でD工程を行い、主に、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を、中流速域と高流速域の間で増減してできるだけ高速で吹き込むことにより、流入する燃焼ガスを効果的に攪拌し、ついで上段噴出口から吹き込む二次空気により二次空気流を効果的に分断して攪拌し、二次空気供給量が少なくても、燃焼ガスと二次空気との混合攪拌効果を促進して未燃物質を燃焼させCOを低減することができる。また複雑な制御を不要にできる。
【0022】
また被焼却物が基準質で供給熱量が中程度の中熱量域でD工程を行い、流入する燃焼ガスに最初に吹き込まれる下段噴出口の二次空気の流速を、高流速域で略一定に保持することで二次空気による燃焼ガスの攪拌効果を維持しつつ、上段噴出口からの二次空気の流速を低流速域から高流速域の間で大きい割合で増減して吹き込んで二次空気供給量を調整することにより、燃焼ガスの分断効果と混合攪拌効果とを促進し未燃物質を燃焼させてCOを低減することができる。また複雑な制御を不要にできる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、被焼却物が良質で供給熱量が高い高熱量域でF工程を行い、流入する燃焼ガスに対して、下段噴出口と上段噴出口から同一の流速で吹き込まれる高速の二次空気の流速を、同一割合で増減して吹き込むことにより、大量の燃焼ガスを効果的に混合攪拌して未燃物質の燃焼を促進させ、COを効果的に低減することができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、前壁と仕切り壁の上下段噴出口と仕切り壁の上下段噴出口とを互いに位置ずれさせることにより、燃焼ガスと二次空気とを効果的に混合攪拌させることができる。また平面視で下段噴出口に対応して左右両端側に配置された上段噴出口を同一位置に配置することにより、低速の二次空気による燃焼ガスと側壁との分断効果を促進することができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、下段噴出口および上段噴出口から二次空気を、水平方向から下向き30°の範囲で選択して吹き込むことにより、二次空気流による燃焼ガスの滞留時間を調整して混合攪拌を効果的に行うことができ、未燃物質の燃焼を促進させることができる。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、下段噴出口の軸心と上段噴出口の軸心との上下段距離を、噴出口の口径の2倍以上で10倍以下とすることにより、上下段噴出口から吹き込まれる二次空気流が、上下流方向に所定の幅を持って燃焼ガス流に作用し、低速であっても燃焼ガスを分断して効果的に混合攪拌することができる。したがって、下段噴出口と上段噴出口をその口径の2倍未満で配置した場合のように、上下段噴出口から吹き込まれる二次空気流が互いに重り合い、独立したノズルの二次空気流と変わらなくなって混合攪拌効果が低下することがなく、また下段噴出口と上段噴出口とをノズル口径の10倍を越えて配置した場合のように、上下段噴出口から吹き込まれる二次空気流が互いに独立してしまい、混合攪拌作用が低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
本発明に係るストーカ式ごみ焼却炉の二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法の実施の形態1を図1〜図3に基づいて説明する。
【0028】
(ごみ焼却炉の構成)
図1に示すように、この二次燃焼室21は、たとえばごみ焼却炉において、一次燃焼室15の上部に設けられるものである。このごみ焼却炉の定格処理量は、たとえば495t/dayであって、炉本体11の前部には、被焼却物であるごみ(被焼却物)を所定量ずつ一次燃焼室15に供給するごみ供給口12が設けられており、一次燃焼室15では、底部に設置されたストーカ13上で、ごみ供給口12から供給されたごみが前部から後部に送られつつ乾燥、燃焼され、炉本体11の後部に設けられた灰排出口14から、燃焼後の焼却灰や焼却残滓が排出される。この一次燃焼室15には、ストーカ13の下部に設けられた複数の風箱(図示せず)から一次燃焼空気が吹き込まれてごみが燃焼される。
【0029】
一次燃焼室15の上方で燃焼ガス流の下流側に設置された二次燃焼室21は、下部にごみ供給口12が設けられた前壁21Fと、この前壁21Fに所定の奥行き:D1をあけて対面される仕切り壁21Rと、前壁21Fと仕切り壁21Rの左右側縁をそれぞれ連結する左右の側壁21Sとで、平面視が矩形断面に形成されている。
【0030】
この二次燃焼室21は、たとえば前壁21F、仕切り壁21R間の奥行き:D1≒6.2m、左右の側壁21S間の横幅:W1≒7.1m、高さ:H1≒15.0mに形成されているが、一般的にストーカ式ごみ焼却炉の二次燃焼室21は、炉本体11の処理量に対応して、奥行き:D1=2.5〜7.0m、横幅:W1=2.5〜8.0m、高さ:H1=8.0〜16.0mに形成されている。
【0031】
この二次燃焼室21内の燃焼ガス中に二次空気を吹き込む二次空気ノズルは、二次燃焼室21の上流端(入口)近傍にそれぞれ設置されており、前壁21Fに配置された左右一対の前壁下段ノズル(下段噴出口)22Fと、前壁下段ノズル22Fに上下段距離:Hn1(Hn)をあけて上方の前壁21Fに配置された左右一対の前壁上段ノズル(上段噴出口)23Fと、前壁下段ノズル22Fと同一水平面上で仕切り壁21Rに配置された3本の仕切り壁下段ノズル(下段噴出口)22Rと、前壁上段ノズル23Fと同一水平面上で仕切り壁21Rに配置された3本の仕切り壁上段ノズル(上段噴出口)23Rとで構成されている。
【0032】
各二次空気ノズルは、前壁下段ノズル22Fおよび前壁上段ノズル23F(以下、前壁上下段ノズル23F,22Fという)が平面視において同一位置に配置され、また仕切り壁下段ノズル22Rおよび仕切り壁下段ノズル23R(以下、仕切り壁上下段ノズル23R,22Rという)が平面視において同一位置に配置されている。また、前壁上下段ノズル23F,22Fと、仕切り壁上下段ノズル23R,22Rは、それぞれ対向する位置から位置ずれした千鳥位置(互い違い位置)に配置されている。さらに、仕切り壁上下段ノズル23R,22Rのうち、左右の側壁21Sに接近して両側に配置されたものは、側壁21Sからの離間距離:Ls1=300mm以内に配置されている。実施の形態1では、たとえば離間距離:Ls1≒約235mmである。これにより、側壁21Sに沿って流れた二次空気流が前壁21Fに衝突して中心側への旋回流を良好に形成することができ、旋回流により燃焼ガスを良好に混合攪拌して、未燃物質の燃焼を促進させることができる。
【0033】
さらにまた、各二次空気ノズルが互いに同一の口径:d1(d)に設定され、また前壁下段ノズル22Fおよび仕切り壁下段ノズル22R(以下、下段ノズル22F,22Rという)と、前壁上段ノズル23Fおよび仕切り上段ノズル23R(以下、上段ノズル23F,23Rという)の軸心間の上下段距離:Hn1が、ノズル口径:d1の2倍以上で10倍以下(Hn1=2×d1〜10×d1)の範囲に設定されている。ここで、上下段距離:Hn1がノズル口径:d1の2倍未満では、上下に隣接する前壁上下段ノズル23F,22Fおよび仕切り壁上下段ノズル22R,23Rから吹き込む二次空気流が互いに重なり合い、独立したノズルの二次空気流と変わらなくなって、燃焼ガスの分断効果および混合攪拌効果が低下するからであり、上下段距離:Hn1がノズル口径:d1の10倍を越えると、前壁上下段ノズル23F,22Fと仕切り壁上下段ノズル23R,22Rから吹き込む二次空気流が完全に独立してしまい、燃焼ガス流を左右に分断して効果的に混合攪拌する作用を奏しないからである。ここで、たとえばノズル口径:d1=155mm、上下段距離:Hn1=500mmである。
【0034】
また、各下段ノズル22F,22Rおよび上段ノズル23F,23Rは、二次空気の吹き込み方向が水平方向の0°から下向き30°の範囲で選択的に設定されている。吹き込み方向が水平方向の0°である場合には、二次空気流の貫通力を大きくして大量の燃焼ガスを効果的に混合することができ、吹き込み方向が下向き30°である場合には、燃焼ガスの滞留時間を長くして未燃物質を効果的に燃焼させることができる。
【0035】
そして、これら下段ノズル22F,22Rおよび上段ノズル23F,23Rは、ごみ焼却炉の定格処理量に対応して、本数や口径、配置を決定し、さらに吹き込み方向や上下段距離:Hn1、離間距離:Ls1が決定される。このごみ焼却炉の定格処理量は、たとえば495t/dayである。
【0036】
なお、前壁上下段ノズル23F,22Fを有する前壁21Fの配置と、仕切り壁上下段ノズル23R,22Rを有する仕切り壁21Rの配置とを入れ替えてもよい。
また、図1(d)に示すように、仕切り壁21Rの上流部(二次燃焼室21の入口)に所定量膨出されて前壁21Fまでの距離を短縮するノーズ部Nを設け、ノーズ部Nの頂部近傍に仕切り壁上下段ノズル23R,22Rを設けることにより、未燃物質の燃焼をさらに促進することができる。これは、二次燃焼室21では、仕切り壁上下段ノズル23R,22Rから前壁21Fまでの距離が短いほうが二次空気の貫通、分断効果および混合攪拌効果が高いからである。
【0037】
二次空気供給ユニットは、図2に示すように、エアブロアユニット31に接続された主エア供給管32が、下段エア供給管33Dと上段エア供給管33Uに分岐されている。そして下段エア供給管33Dには電動式の下段ノズル流速制御弁(エアダンパー)34Dが介在されるとともに、上段エア供給管33Uには電動式の上段ノズル流速制御弁(エアダンパー)34Uが介在されている。そして下段エア供給管33Dが下段分配管33Df,33Drに分岐され、また上段エア供給管33Uが上段分配管33Uf,33Urに分岐される。さらに、下段分配管33Df,33Drが複数の分岐管を介して各下段ノズル22F,22Rにそれぞれ接続され、これら各分岐管に下段流量調整弁35Df,35Drがそれぞれ介在される。また上段分配管33Uf,33Urが複数の分岐管を介して各上段ノズル23F,23Rに接続され、これら各分岐管に上段流量調整弁35Uf,35Urがそれぞれ介在される。これら上下段流量調整弁35Uf,35Ur,35Df,35Drは流路抵抗が考慮されて各下段ノズル22F,22Rおよび各上段ノズル23F,23Rから吹き込む二次空気の流速が同一になるように調整される。
【0038】
またこのごみ焼却炉には、ごみの発熱量とごみ投入量から供給熱量を求め、二次空気供給量を演算する燃焼制御装置36が設けられており、この燃焼制御装置36では、求めた二次空気供給量に基づいて、エアブロアユニット31により供給される二次空気の供給量を制御し、さらに下段ノズル流速制御弁34Dおよび上段ノズル流速制御弁34Uを操作して、下段ノズル22F,22Rと上段ノズル23F,23Rから吹き込まれる二次空気の流速をそれぞれ制御する。
【0039】
(二次空気の吹き込み方法)
上記構成の二次燃焼室21における二次空気の吹き込み方法を図3を参照して説明する。
【0040】
このグラフに示す供給熱量の領域は、点b未満を低熱量域とし、点bから点cを中熱量域とし、点c以上を高熱量域としている。また点bにおける二次空気供給量は21870mN/hであり、点cにおける二次空気供給量は32810mN/hである。また、このグラフに示す二次空気の流速域は、10m/秒未満を最低流速域とし、10m/秒以上で25m/秒未満を低流速域とし、(25m/秒以上、30m/秒未満を中流速域とし)、30m/秒以上で55m/秒未満を高流速域とし、55m/秒以上を最高流速域としている。
【0041】
点cは、中熱量域の高域限で、下段ノズル22F,22Rおよび上段ノズル23F,23Rから吹き込まれる二次空気が同一の流速である。供給熱量が増加する場合には、C工程を行って二次空気供給量を増加させ、供給熱量が減少する場合には、B工程を行って二次空気供給量を減少させる。
【0042】
点c〜dに示すC工程は、ごみが高質で供給熱量が高い高熱量域で実施するもので、供給熱量の増加に対応して、下段ノズル22F,22Rおよび上段ノズル23F,23Rから吹き込む二次空気の流速を高流速域から最高流速域まで同一割合で増速して二次空気供給量を増加させる。
【0043】
点c〜bに示すB工程は、ごみが基準質で供給熱量が中程度の中熱量域で実施するもので、供給熱量の減少に対応して、下段ノズル22F,22Rから吹き込む二次空気の流速を高流速域で略一定に保持しつつ、上段ノズル23F,23Rから吹き込む二次空気の流速を、高流速域から低流速域まで所定の割合で減速して二次空気供給量を減少させる。
【0044】
また点bにおいて、ごみの発熱量と投入量が減少して供給熱量が減少する場合には、A工程を行って二次空気供給量を減少させる。
点b〜aに示すA工程は、ごみが低質で供給熱量が低い低熱量域で実施するもので、供給熱量の減少に対応して、下段ノズル22F,22Rからの二次空気の流速を高流速域から低流速域までの(3)に対して、上段ノズル23F,23Rから供給する二次空気の流速を低流速域から最低流速域までの(1)の割合(3:1)で減速して二次空気供給量を減少させる。
【0045】
また、各点間における供給熱量の逆の増減もそれぞれの工程を行う。
(シミュレーションによるCOの低減効果)
上記構成と図7に示す比較例について、ごみ質の3つの条件(高質:H、基準質:M、低質:Lで示す、2桁の数値は一次空気比×10)と、一次空気比0.8〜1.1の範囲の運転において、シミュレーションによりCOの低減効果を比較したものを表1に示す。
【0046】
【表1】

表1によれば、図7に示す比較例に比べて、本発明では、二次燃焼室21の出口のCO濃度を十分に減少させることができることが判明した。なお、図7に示す比較例は、二次燃焼室FRの上流端(入口)近傍に、前壁FWに4本の二次空気ノズルOFAを配置し、仕切り壁21RWに5本の二次空気ノズルORAを、二次空気ノズルOFAにそれぞれ対向する位置から位置ずれした千鳥位置に配置し、口径150mmの二次空気ノズルOFA,ORAを1段で合計9本を設置したものである。
【0047】
(実施の形態1の効果)
上記実施の形態1によれば、供給熱量に対応して二次燃焼室21に吹き込む二次空気の流速を操作し二次空気供給量を増減する時に、下段ノズル22F,22Rと上段ノズル23F,23Rの2系統で、A工程およびB工程を行うことにより、二次空気供給量を容易に制御することができるとともに、二次空気供給量が少ない低熱量域および中熱量域であっても、燃焼ガスに含まれる未燃物質を効果的に燃焼してCOを低減することができる。
【0048】
すなわち、ごみが低質で供給熱量が低い低熱量域でA工程を行い、主に、下段ノズル22F,22Rから吹き込む二次空気の流速を、低流速域から高流速域まで大きい割合で増減し、流入する燃焼ガスに対して、最初に吹き込む二次空気をできるだけ高速として効果的に攪拌し、さらに上段ノズル23F,23Rから吹き込む二次空気の流速を、最低流速域と低流速域の間で増減する。たとえば下段ノズル22F,22Rと上段ノズル23F,23Rを3:1の割合で増減して二次空気供給量を制御することで、二次空気の流速が低速であっても、燃焼ガスと二次空気とを効果的に混合攪拌して未燃物質の燃焼を促進させ、COを低減することができる。
【0049】
また、ごみが基準質で供給熱量が中程度の中熱量域でB工程を行い、流入する燃焼ガスに対して、最初に吹き込まれる下段ノズル22F,22Rからの二次空気の流速を高流速域で略一定に保持することにより、燃焼ガスを安定して効果的に攪拌混合しつつ、上段ノズル23F,23Rから吹き込む二次空気の流速を、低流速域と高流速域との間で大きい割合で増減して二次空気供給量を調整することにより、燃焼ガスと二次空気とを効果的に混合攪拌して未燃物質の燃焼を促進し、COを低減することができる。
【0050】
さらに、ごみが良質で供給熱量が高い高熱量域でC工程を行い、流入する燃焼ガスに対して、下段ノズル22F,22Rと上段ノズル23F,23Rから同一流速で吹き込む二次空気の流速を、高流速域から最高流速域の間で同一割合で増減して二次空気供給量を調整することにより、大量の燃焼ガスを効果的に混合攪拌して未燃物質の燃焼を促進させ、COを効果的に低減することができる。
【0051】
さらにまた、下段ノズル22F,22Rと上段ノズル23F,23Rとを平面視で同一位置に配置するとともに、前壁上下段ノズル23F,22Fと仕切り壁上下段ノズル23R,22Rとを互いに位置ずれさせることにより、燃焼ガス流と二次空気とを効果的に混合攪拌して未燃物質の燃焼を促進させることができる。
【0052】
また、下段ノズル22F,22Rと上段ノズル23F,23Rとの上下段距離:Hn1をノズル口径:d1の2倍以上で10倍以下としたので、下段ノズル22F,22Rと上段ノズル23F,23Rから吹き込まれる二次空気を上下段距離にわたる帯流として作用させ、燃焼ガスを効果的に分断および貫通させて混合攪拌効果を向上することができる。
【0053】
さらに、下段ノズル22F,22Rおよび上段ノズル23F,23Rからの二次空気の吹き込み方向を、水平方向0°から下向き30°の範囲で選択することにより、燃焼ガスに対する貫通、分断効果と滞留時間とを最適に調整することができ、未燃物質の燃焼を促進させることができる。
【0054】
さらにまた、左右の側壁21Sに接近して配置された仕切り壁上下段ノズル23R,22Rと側壁21Sとの離間距離:Ls1=300mm以内に配置したので、前壁21Fとの衝突により中心側への旋回流を良好に形成することができ、旋回流により混合攪拌を促進することができる。
【0055】
[実施の形態2]
本発明に係るストーカ式ごみ焼却炉における二次燃焼室の吹き込み方法の実施の形態2を図4〜図6に基づいて説明する。なお、実施の形態1と同一部材には、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、このストーカ式焼却炉の定格処理量は、120t/dayであって、二次燃焼室41は、前壁41F、仕切り壁41R間の奥行き:D2≒3.0m、左右の側壁41S間の横幅:W2≒2.8m、高さ:H2≒10.0mにそれぞれ形成されている。
【0057】
二次燃焼室41内に燃焼ガス中に二次空気を吹き込む二次空気ノズルは、二次燃焼室41の上流端(入口)近傍にそれぞれ設置されており、前壁41Fに配置された左右一対の前壁下段ノズル(下段噴出口)42Fと、これら前壁下段ノズル42Fと同一水平面上で仕切り壁41Rに配置された3本の仕切り壁下段ノズル(下段噴出口)42Rと、仕切り壁41Rで仕切り壁下段ノズル42Rの上方に上下段距離:Hn2(Hn)をあけて配置された左右一対の仕切り壁上段ノズル(上段噴出口、以下、上段ノズルという)43Rとで構成されている。
【0058】
前壁下段ノズル42Fおよび仕切り壁下段ノズル42R(以下、下段ノズル42F,42Rという)は、それぞれ対向する位置から位置ずれした千鳥位置(互い違い位置)に配置されている。また仕切り壁41Rにおいて、仕切り壁下段ノズル42Rおよび上段ノズル43R(以下、上下段ノズル43R,42Rという)のうち、外側で側壁41Sに接近して配置された上下段ノズル43R,42Rが、平面視において同一位置に配置され、また側壁41Sからの離間距離:Ls2=300mm以内に配置される。これにより、側壁41Sに沿って流れた二次空気流が前壁41Fに衝突して中心側への旋回流を良好に形成することができ、旋回流により燃焼ガスを良好に混合攪拌して、未燃物質の燃焼を促進させることができる。この実施の形態2では、離間距離:Ls2≒145mmである。
【0059】
さらにまた、各下段ノズル42F,42Rおよび上段ノズル43Rが同一の口径:d2(d)に設定され、上下段ノズル43R,42Rの上下段距離:Hn2は、ノズル口径:d2の2倍以上で、10倍以下(Hn2=2×d2〜10×d2)の範囲に設定されている。これは、これら上下段距離:Hn2が、ノズル口径:d2の2倍未満では、上下に隣接する上下段ノズル43R,42Rから吹き込む二次空気流が互いに重なり合い、独立したノズルの二次空気流と変わらなくなって、燃焼ガスの分断効果および混合攪拌効果が低下するからであり、ノズル離間距離:Hn2がノズル口径:d2の10倍を越えると、上下段ノズル43R,42Rから吹き込む二次空気流が互いに独立してしまい、燃焼ガス流を左右に分断して効果的に混合攪拌する作用を奏しないからである。ここで、上下段距離:Hn2=500mmである。
【0060】
また、各下段ノズル42F,42Rおよび上段ノズル43Rは、二次空気の吹き込み方向が水平方向0°から下向き30°の範囲で選択的に設定されている。吹き込み方向が水平方向の0°である場合には、二次空気流の貫通力を大きくして大量の燃焼ガスを効果的に混合することができ、吹き込み方向が下向き30°である場合には、燃焼ガスの滞留時間を長くして未燃物質を効果的に燃焼させることができる。
【0061】
ごみ焼却炉の定格処理量に対応して、各下段ノズル42F,42Rおよび上段ノズル43Rの数量や口径、配置を決定し、さらに吹き込み方向や上下段距離:Hn2、離間距離:Ls2が決定される。このごみ焼却炉の定格処理量は、たとえば120t/dayである。
【0062】
なお、下段ノズル42Fを有する前壁41Fの配置と、上下段ノズル43R,42Rを有する仕切り壁41Rの配置とを入れ替えてもよい。
また仕切り壁41Rの上流部(二次燃焼室41の入口)に所定量膨出されて前壁41Fまでの距離を短縮するノーズ部を設け、このノーズ部の頂部近傍に上下段ノズル43R,42Rを設けてもよい。
【0063】
二次空気供給ユニットは、図5に示すように、エアブロアユニット51に接続された主エア供給供給管52が下段エア供給管53Dと上段エア供給管53Uとに分岐され、下段エア供給管53Dに電動式の下段ノズル流速制御弁(エアダンパー)54Dが介在されるとともに、上段エア供給管53Uに電動式の上段ノズル流速制御弁(エアダンパー)54Uが介在されている。そして、下段エア供給管53Dが下段分配管53Df,53Drに分岐され、これら下段分配管53Df,53Drが複数の分岐管を介して各下段ノズル42F,42Rにそれぞれ接続されている。そして、これら分岐管に下段流量調整弁55Df,53Drがそれぞれ介在されている。また上段エア供給管53Urが複数の分岐管を介して各上段ノズル43Rに接続され、そしてこれら分岐管に上段流量調整弁55Urがそれぞれ介在されている。これら上下段流量調整弁55Ur,55Df,55Drは各管路の流路抵抗が考慮されて各下段ノズル42F,42Rと各上段ノズル43Rから吹き込む二次空気の流速が同一となるように調整される。
【0064】
また、このごみ焼却炉には、ごみの発熱量とごみ投入量から供給熱量を求め、二次空気供給量を演算する燃焼制御装置56が設けられており、この燃焼制御装置56では、求めた二次空気供給量に基づいて、エアブロアユニット51から供給される二次空気供給量を制御し、さらに下段ノズル流速制御弁54Dおよび上段ノズル流速制御弁54Uをそれぞれ操作して、下段ノズル42F,42Rおよび上段ノズル43Rから吹き込まれる二次空気の流速をそれぞれ制御する。
【0065】
(二次空気の吹き込み方法)
上記構成の二次燃焼室41における二次空気の吹き込み方法を図6を参照して説明する。
【0066】
このグラフにおける供給熱量の領域は、点f未満を低熱量域とし、点fから点gまでを中熱量域、点g以上を高熱量域としている。また点fにおける二次空気供給量は4220mN/hであり、また点gにおける二次空気供給量は5170mN/hである。また、このグラフに示す二次空気の流速域は、10m/秒未満を最低流速域とし、10m/秒以上で25m/秒未満を低流速域とし、(25m/秒以上、30m/秒未満を中流速域をとし)、30m/秒以上で55m/秒未満を高流速域をとし、55m/秒以上を最高流速域としている。
【0067】
点gは、中熱量域の高域限で、下段ノズル42F,42Rおよび上段ノズル43Rから吹き込まれる二次空気の流速が同一である。供給熱量の増加に対応して、F工程を行って二次空気供給量を増加させ、供給熱量が減少する場合には、E工程を行って二次空気供給量を減少させる。
【0068】
点g〜hに示すF工程は、ごみが高質で供給熱量が高い高供給域で実施するもので、供給熱量の増加に対応して、下段ノズル42F,42Rおよび上段ノズル43Rから吹き込む二次空気の流速を高流速域から最高流速域まで同一の割合で増速して二次空気供給量を増加させる。
【0069】
点g〜fに示すE工程は、ごみが基準質で供給熱量が中程度の中熱量域で実施するもので、供給熱量の減少に対応して、下段ノズル42F,42Rから吹き込む二次空気の流速を高流速域で略一定に保持しつつ(図6では、少し下降勾配で表されている)、上段ノズル43Rから吹き込む二次空気の流速を、高流速域から低流速域まで所定の割合で減速して二次空気供給量を減少させる。
【0070】
また点fにおいて、ごみの発熱量と投入量が減少して供給熱量がさらに減少する場合には、D工程を行って二次空気供給量を減少させる。
点f〜eに示すD工程は、ごみが低質で供給熱量が低い低熱量域で実施するもので、供給熱量の減少に対応して、下段ノズル42F,42Rから吹き込む二次空気の流速を高流速域内で所定の割合で減速させるとともに、上段ノズル43Rから吹き込む二次空気の流速を低流速域から最低速域まで所定の割合で減速して二次空気供給量を減少させる。
【0071】
また、各点間における供給熱量の逆の増減もそれぞれの工程を行う。
(シミュレーションによるCOの低減効果)
上記構成と図8に示す比較例について、ごみ質の3つの条件(高質:H、基準質:M、低質:Lで示す、2桁の数値は一次空気比×10)と、一次空気比0.8〜1.1の範囲の運転において、シミュレーションによりCOの低減効果を比較したものを表2に示す。
【0072】
【表2】

表2によれば、図8に示す比較システムに比べて、二次燃焼室41の出口のCO濃度を十分に減少させることができることが判明した。なお、図8に示す比較システムは、二次燃焼室FRの前壁FWに3本の二次空気ノズルOFBを配置し、仕切り壁41Rのノーズ部Nに4本の二次空気ノズルORBを、二次空気ノズルOFBにそれぞれ対向する位置から位置ずれした千鳥位置で、かつ上下段距離:δ=750mmだけ下位に配置し、二次空気ノズルOFBによる二次空気の吹き込み方向は、仕切り壁側下方にθ°=20°で傾斜して吹き込むように構成し、口径78mmの二次空気ノズルOFB,ORBを1段で合計7本配置した構造である。
【0073】
(実施の形態2の効果)
上記実施の形態2によれば、供給熱量に対応して二次燃焼室41に吹き込む二次空気の流速を操作し二次空気供給量を増減する時に、下段ノズル42F,42Rと上段ノズル43Rとの2系統で、D工程およびE工程を行うことにより、二次空気供給量を容易に制御することができるとともに、二次空気供給量が少ない低熱量域および中熱量域であっても、燃焼ガスに含まれる未燃物質を効果的に燃焼してCOを低減することができる。
【0074】
すなわち、ごみが低質で供給熱量が低い低熱量域でD工程を行い、主に、下段ノズル42F,42Rから吹き込む二次空気の流速を高流速域内で増減し、流入する燃焼ガスに対して、最初に吹き込まれる二次空気をできるだけ高速として効果的に攪拌し、さらに上段ノズル43Rから吹き込む二次空気の流速を最低流速域と低流速域の間で増減し、かつ下段ノズル42F,42Rよりも低速で吹き込むことにより、二次空気の流速が低速であっても、燃焼ガスと二次空気とを効果的に混合攪拌して未燃物質の燃焼を促進させ、COを低減することができる。
【0075】
また、ごみが基準質で供給熱量が中程度の中熱量域でB工程を行い、流入する燃焼ガスに対して、最初に吹き込まれる下段ノズル42F,42Rの二次空気の流速を、高流速域で略一定に保持することにより、燃焼ガスを安定して効果的に混合攪拌しつつ、上段ノズル43Rから吹き込む二次空気の流速を、低流速域と高流速域との間で大きい割合で増減し二次空気供給量を制御することにより、燃焼ガスと二次空気とを効果的に混合攪拌して未燃物質の燃焼を促進させ、COを低減することができる。
【0076】
さらに、ごみが良質で供給熱量が高い高熱量域でF工程を行い、流入する燃焼ガスに対して、下段ノズル42F,42Rと上段ノズル43Rから同一流速で吹き込む二次空気の流速を高流速域と最高流速域の間で同一割合で増減して二次空気供給量を調整することにより、大量の燃焼ガスを効果的に混合攪拌して燃焼を促進させ、COを効果的に低減することができる。
【0077】
さらにまた、下段ノズル42F,42Rおよび上段ノズル43Rからの二次空気を水平方向から下向き30°の範囲で選択することにより、燃焼ガスに対する貫通、分断効果と滞留時間とを最適に調整することができ、未燃物質の燃焼を促進させることができる。
【0078】
また、両外側の上下段ノズル43R,42Rとの上下段距離:Hn2を、ノズル口径:d2の2〜10倍とすることで、両外側の上下段ノズル43R,42Rから吹き込まれる二次空気が上下段距離にわたる帯流として作用させ、燃焼ガスを効果的に分断および貫通させて混合攪拌効果を向上することができる。
【0079】
さらにまた、左右の側壁41Sに接近して配置された両側の上下段ノズル43R,42Rと側壁41Sとの離間距離:Ls=300mm以内に配置したので、これにより、側壁41Sに沿って流れた二次空気流が前壁41Fに衝突して中心側への旋回流を良好に形成することができ、旋回流により燃焼ガスを良好に混合攪拌して、未燃物質の燃焼を促進させることができる。
【0080】
なお、実施の形態1および2では、ストーカ式焼却炉について説明したが、廃棄物溶融炉、電気式溶融炉などの二次燃焼室への二次空気の吹き込み方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法を実施するストーカ式ごみ焼却炉の実施の形態1を示し、(a)は概略縦断面図、(b)は下段ノズルを示す横断面図、(c)は上段ノズルを示す横断面図、(d)はノーズ部を設けた場合の部分縦断面図である。
【図2】二次空気供給ユニットを説明する斜視図である。
【図3】二次空気の吹き込み方法を示し、二次空気供給量と二次空気流速の関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係る二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法を実施するストーカ式ごみ焼却炉の実施の形態2を示し、(a)は概略縦断面図、(b)は下段ノズルを示す横断面図、(c)は上段ノズルを示す横断面図である。
【図5】二次空気供給ユニットを説明する斜視図である。
【図6】二次空気の吹き込み方法を示し、二次空気供給量と二次空気流速の関係を示すグラフである。
【図7】実施の形態1の比較例のごみ焼却炉を示し、(a)は縦断面図、(b)は二次空気ノズルを示す横断面図である。
【図8】実施の形態2の比較例のごみ焼却炉を示し、(a)は縦断面図、(b)は二次空気ノズルを示す横断面図である。
【符号の説明】
【0082】
11 炉本体
12 ごみ供給口
13 ストーカ
14 灰排出口
15 一次燃焼室
21 二次燃焼室
21F,41F 前壁
21R,41R 仕切り壁
21S,41S 側壁
22F,42F 前壁下段ノズル
22R,42R 仕切り壁下段ノズル
23F 前壁上段ノズル
23R,43R 仕切り壁上段ノズル
31,51 エアブロアユニット
34D,54D 下段ノズル流速制御弁
34U,54U 上段ノズル流速制御弁
36,56 燃焼制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次燃焼室から流入される燃焼ガス流の下流側に設置された二次燃焼室で、互いに対向する前壁と仕切り壁とに、二次空気を吹き込む複数の上段噴出口および複数の下段噴出口を上下流方向に2段に配置した焼却炉における二次空気の吹き込み方法であって、
被焼却物の発熱量と投入量により求められる供給熱量の増減に対応して、同一平面内に配置された前壁の上段噴出口と仕切り壁の上段噴出口から吹き込む二次空気の流速と、同一平面内に配置された前壁の下段噴出口と仕切り壁の下段噴出口から吹き込む二次空気の流速との2系統を操作して、二次空気供給量を制御し、
低熱量域で、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を低流速域と高流速域の間で所定の割合で変化させるとともに、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を最低流速域と前記低流速域の間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減するA工程と、
中熱量域で、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を前記高流速域で略一定に保持するとともに、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を、前記低流速域と前記高流速域の間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減し、さらに当該中熱量域の高域限で上段噴出口の流速と下段噴出口の流速を同一にするB工程とを具備し、
前記最低流速域を10m/秒未満の流速とし、
前記低流速域を10m/秒以上、25m/秒未満の流速とし、
前記高流速域を30m/秒以上、55m/秒未満の流速とした
ことを特徴とする二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法。
【請求項2】
高熱量域で、両壁の上段噴出口および下段噴出口から同一の流速で吹き込まれる二次空気の流速を、高流速域から最高流速域の間で同一の割合で増加させて二次空気供給量を増加するC工程を行い、
前記最高流速域を55m/秒以上の流速とした
ことを特徴とする請求項1記載の二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法。
【請求項3】
前壁および仕切り壁では平面視でそれぞれ同一位置に配置され、かつ前壁と仕切り壁で互いに対抗する位置からずれて配置された上段噴出口および下段噴出口を使用した
ことを特徴とする請求項1または2記載の二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法。
【請求項4】
一次燃焼室から流入される燃焼ガス流の下流側に設置された二次燃焼室で、互いに対向する前壁と仕切り壁に、二次空気を吹き込む複数の下段噴出口を前壁と仕切り壁とに設置するとともに、下段噴出口より下流側で二次空気を吹き込む複数の上段噴出口を前壁および仕切り壁の一方に設置した焼却炉における二次空気吹き込み方法であって、
被焼却物の発熱量と投入量から求められる供給熱量に対応して、同一平面上に配置された前壁と仕切り壁の下段噴出口から吹き込まれる二次空気の流速と、上段噴出口から吹き込まれる二次空気の流速の2系統で操作して、二次空気供給量を制御し、
低熱量域で、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を高流速域内で所定の割合で変化させるとともに、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を最低流速域と低流速域との間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減するD工程と、
中熱量域で、下段噴出口から吹き込む二次空気の流速を前記高流速域内に略一定に保持するとともに、上段噴出口から吹き込む二次空気の流速を、前記低流速域と前記高流速域の間で所定の割合で変化させて二次空気供給量を増減し、さらに当該中熱量域の高域限で上段噴出口の流速と下段噴出口の流速を同一にするE工程とを具備し、
前記最低流速域を10m/秒未満の流速とし、
前記低流速域を10m/秒以上、25m/秒未満の流速とし、
前記高流速域を30m/秒以上、55m/秒未満の流速とした
ことを特徴とする二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法。
【請求項5】
高熱量域で、上段噴出口および下段噴出口から同一の流速で吹き込まれる二次空気の流速を、高流速域から最高流速域まで同一割合で増加させて二次空気供給量を増加するF工程を行い、
前記最高流速域を55m/秒以上の流速とした
ことを特徴とする請求項4記載の二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法。
【請求項6】
前壁と仕切り壁とに互いに対抗する位置から位置ずれしてそれぞれ配置された複数の下段噴出口を使用し、
平面視で下段噴出口に対応して左右両端側に配置された上段噴出口を使用した
ことを特徴とする請求項4または5記載の二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法。
【請求項7】
下段噴出口および上段噴出口から二次空気を水平方向から下向き30°の範囲で選択して吹き込む
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法。
【請求項8】
同一口径の下段噴出口と上段噴出口とを使用し、
軸心間の上下段距離が口径の2倍以上で10倍以下に配置された下段噴出口と上段噴出口とを使用する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の二次燃焼室における二次空気の吹き込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−236388(P2009−236388A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82281(P2008−82281)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】