説明

二次監視レーダ応答信号受信装置及び二次監視レーダ応答信号受信方法

【課題】簡易的に航空機の位置を特定することが可能な二次監視レーダ応答信号受信装置及び二次監視レーダ応答信号受信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】高度と応答信号が受信された際の仰角とから航空機との直線距離を算出し、直線距離と応答信号が受信された際の方位角とからX軸及びY軸における航空機との距離を算出する3次元位置演算部43を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタロゲータから航空機のトランスポンダに送信された質問信号に対する応答信号を受信する二次監視レーダ応答信号受信装置及び二次監視レーダ応答信号受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制に使用される航空機監視用レーダは、一次監視レーダ(PSR:Primary Surveillance Radar)と二次監視レーダ(SSR:Secondary Surveillance Radar)とに大別される。
【0003】
上記のPSRは、地上から電波を発し、これの反射波を受信処理することにより航空機の位置情報を取得するものである。
【0004】
一方、SSRは、航空機に搭載されたトランスポンダに質問信号を送信し、これに対する応答信号を受信することにより航空機に関する各種情報を得るものである。
【0005】
なお、このSSRは、得ようとする情報の種別によりモードA、モードC、モードSに分類され、モードAは航空機の識別情報を得るためのものであり、モードCは高度情報を得るためのものであり、モードSは各航空機に付与されたID(24ビットアドレス)による個別選択呼び出し機能を有し、上記の情報(識別情報及び高度情報)に加えて進路情報や速度情報等を得ることができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、上記のSSRには、質問信号の送信を行わず、他の地上局から送信された質問信号に対する応答信号を受信する受動型(パッシブ)SSRも存在する。この受動型SSRは、物理的にオフセットされた受信機を多数備え、これらの受信機への応答信号の到達時刻を記録し、その差分と受信機の位置関係とから航空機の位置を特定する(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】橋田芳男、大友恒、久慈義則「航空管制用二次監視レーダ−SSRモードS」、東芝レビューVol.59 No.2(2004)、p58-61
【特許文献1】米国特許第6094169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の受動型SSRにおいては、離隔して配置された複数の受信機を必要とし、また、応答信号の到達時間差を求めるには高精度な時刻同期を必要とするため、装置の複雑化且つ大型化してしまう。
【0008】
上記の事情に鑑み本発明は、簡易的に航空機の位置を特定することが可能な二次監視レーダ応答信号受信装置及び二次監視レーダ応答信号受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、インタロゲータから航空機のトランスポンダに送信された質問信号に対する応答信号を受信し、応答信号の到来方向を検知可能に構成された複数本のアンテナと、受信された応答信号から航空機の高度を得る手段と、高度と応答信号が受信された際の仰角とから航空機との直線距離を算出する手段と、直線距離と応答信号が受信された際の方位角とからX軸及びY軸における航空機との距離を算出する手段とを有することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、インタロゲータから航空機のトランスポンダに送信された質問信号に対する応答信号を、応答信号の到来方向を検知可能に構成された複数本のアンテナにより受信する工程と、受信された応答信号から航空機の高度を得る工程と、高度と応答信号が受信された際の仰角とから航空機との直線距離を算出する工程と、直線距離と応答信号が受信された際の方位角とからX軸及びY軸における航空機との距離を算出する工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
受信された応答信号から得られた高度と、応答信号が受信された際の仰角とから航空機との直線距離を算出し、直線距離と応答信号が受信された際の方位角とからX軸及びY軸における航空機との距離を算出するため、電波を発することなく簡易的に航空機の位置を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を提示しつつ本発明の二次監視レーダ応答信号受信装置及び二次監視レーダ応答信号受信方法について説明する。
なお、以下の実施例は、あくまでも本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素又は全要素を含んだ各種の実施例を採用することが可能であるが、これらの実施例も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付与し、これに関する反復説明は省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1に係る受動型モードSレーダ装置(二次監視レーダ応答信号受信装置)1と、SSR(二次監視レーダ)システム5の構成図である。このSSRシステム5は、航空機6に搭載される送受信部9及び信号処理部10からなるトランスポンダ7と、アンテナ8と、地上に設置されるインタロゲータ11及び水平方向に360°回転可能に構成されたアンテナ12とからなる。
【0014】
質問信号(モードS質問信号)13は、インタロゲータ11により送信され、これを受信したトランスポンダ7は、質問信号13に対する応答信号(モードS応答信号)14を送信し、この応答信号14は、アンテナ12及びインタロゲータ11により受信され、航空機6の位置、高度等が特定される。
【0015】
本発明の一実施例に係る受動型モードSレーダ装置1は、上記のインタロゲータ11の設置場所とは異なる地点で応答信号14を受信し、これに基づいて航空機6の位置・高度等を特定するためのものであり、4個のアンテナ2a、2b、2c及び2dと、アンテナ2を介して応答信号14を受信する受信部3と、航空機6の位置等を特定するにあたっての信号処理を行う1個の信号処理部4とを有する。なお、以降の説明においては、適宜、上記のアンテナ2a、2b、2c及び2dを“アンテナ2”と総称する。
【0016】
図2は、上記の信号処理部4の構成図である。この信号処理部4は、ID(24ビットアドレス)・高度解読部41、受信方向計測部42、次元位置演算部43、情報生成部44、表示部45、記録部46からなる。
【0017】
ID・高度解読部41は、航空機6に付与された識別用ID(24ビットアドレス)と、この航空機6の高度とを解読する。
【0018】
受信方向計測部42は、応答信号14が複数のアンテナ2に受信された際、この到来方向(仰角及び方位角)を計測する。なお、この方位角及び仰角の定義は図4(c)に示すとおりである。
【0019】
3次元位置演算部43は、ID・高度解読部の解読結果と、受信方向計測部42の測定結果とに基づいて、航空機6の3次元位置(X、Y、Z軸上の位置、)を演算する。
【0020】
情報生成部44は、3次元位置演算部43の演算結果に基づいて、航空機6のID、3次元位置を含む航空機情報を生成する。
【0021】
表示部45は、情報生成部44により生成された航空機情報を表示する。
【0022】
記録部46は、情報生成部44により生成された航空機情報を記録する。
【0023】
図3は、上記の信号処理部4の動作を示す図である。
まず、複数のアンテナ2により応答信号14が受信されると(ステップS1)、ID・高度解読部41によりIDが解読され(ステップS2)、これとともに応答信号14に高度に関する情報が含まれているか否かが判定される(ステップS3)。
【0024】
応答信号14に高度に関する情報が含まれている場合(ステップS3:YES)、受信方向計測部42により方位角が検出され(ステップS4)、これとともに仰角が検出される(ステップS5)。また。ID・高度解読部41により高度に関する情報が解読され、航空機6の高度が求められる(ステップS6)。
【0025】
なお、応答信号14に高度に関する情報が含まれていない場合(ステップS3:NO)は、該当する応答信号が受信されるまで上記の動作が反復実行される。
【0026】
次に、図4(a)に示すように、3次元位置演算部43により、仰角及び高度から、X軸(あるいはY軸)、Z軸における航空機6との直線距離が算出され(ステップS7)、図4(b)に示すように、方位角及び仰角から、X、Y軸における航空機6の位置及び距離が算出される(ステップS8)。
【0027】
次に、3次元位置演算部43により、複数のアンテナ2の位置に基づいて、地理に対応した航空機6のグローバル位置、つまり、緯度、経度、高度により表される3次元位置が算出される(ステップS9)。
【0028】
次に、上記のID及びグローバル位置を含む航空機情報が情報生成部44により生成され(ステップS9)、これが記録・表示される(ステップS10)。
【0029】
上記の処理において航空機6の高度、方位角及び仰角をより正確に求めるためには、アンテナ2を以下に示す位置関係で配置することが望ましい。以下、図5(a)及び(b)を参照しつつ、その詳細について説明する。なお、図5(a)は、アンテナ2の上面図であり、図5(b)は、アンテナ2の側面図である。
【0030】
本実施例においては、図5(a)に示すように、アンテナ2a、アンテナ2b、アンテナ2cを、これらを結ぶ線が三角形をなすように配置し、アンテナ2dをその中心に配置し、さらに、図5(b)に示すように、アンテナ2dを他のアンテナより高い位置に配置する。
【0031】
なお、航空機6の高度、方位角及び仰角をより正確に求めるためのアンテナの位置関係は上記の場合に限定されず、他にも複数種類存在する。以下、その一例について説明する。
【実施例2】
【0032】
図6は、本発明の実施例2に係るアンテナ2の配置を示す図(上面図)である。なお、図6(a)は、アンテナ2の上面図であり、図6(b)は、アンテナ2の側面図である。
【0033】
本実施例においては、図6(b)に示すように、アンテナ2a、アンテナ2bを高低差をつけて配置し、さらに、図6(a)に示すように、アンテナ2a(2b)、アンテナ2c、アンテナ2dを、これらを結ぶ線が正三角形をなすように配置する。
【0034】
なお、上記の実施例1及び2においては、アンテナ2が4本である場合を示したが、これに限定されない。
【0035】
また、上記の実施例1及び2に示した装置等を用いる二次監視レーダ応答信号受信方法も本発明の範囲に含まれる。
【0036】
以上のとおり、本発明においては、応答信号の到達時間差ではなく、応答信号が到来した際の仰角、方位角及び高度から航空機の位置を特定する。また、航空機の位置特定を行うための信号処理部は1個のみであり、複数の受信機と、これらの間での時刻同期を必要としない。したがって、装置を単純化且つ小型化でき、また、電波を発することなく簡易的に航空機の位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】二次監視レーダシステムならびに本発明の実施例1に係る受動型モードSレーダ装置の構成図である。
【図2】図1の信号処理部の詳細を示す図である。
【図3】図2の信号処理部の動作を示す図である。
【図4】図2の処理部による距離算出処理を説明するための図である。
【図5】図1のアンテナの配置を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係るアンテナの配置を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…受動型モードSレーダ装置、2…アンテナ、3…受信部、4…信号処理部、5…SSR(二次監視レーダ)システム、6…航空機、7…トランスポンダ、8…アンテナ、9…送受信部、10…信号処理部、11…インタロゲータ、12…アンテナ、41…ID・高度解読部、42…受信方向計測部、43…3次元位置演算部、44…情報生成部、45…表示部、46…記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インタロゲータから航空機のトランスポンダに送信された質問信号に対する応答信号を受信し、当該応答信号の到来方向を検知可能に構成された複数本のアンテナと、
受信された応答信号から前記航空機の高度を得る手段と、
前記高度と前記応答信号が受信された際の仰角とから前記航空機との直線距離を算出する手段と、
前記直線距離と前記応答信号が受信された際の方位角とからX軸及びY軸における前記航空機との距離を算出する手段と
を有することを特徴とする二次監視レーダ応答信号受信装置。
【請求項2】
インタロゲータから航空機のトランスポンダに送信された質問信号に対する応答信号を、当該応答信号の到来方向を検知可能に構成された複数本のアンテナにより受信する工程と、
受信された応答信号から前記航空機の高度を得る工程と、
前記高度と前記応答信号が受信された際の仰角とから前記航空機との直線距離を算出する工程と、
前記直線距離と前記応答信号が受信された際の方位角とからX軸及びY軸における前記航空機との距離を算出する工程と
を有することを特徴とする二次監視レーダ応答信号受信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−10629(P2007−10629A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195304(P2005−195304)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】