説明

二次空気供給装置

【課題】二次空気の供給通路に対する排気ガスの逆流を好適に抑制することのできる二次空気供給装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気通路2に接続された二次空気の供給通路4に二次空気を供給するエアポンプ5と、二次空気の供給通路4途中にあってこの供給される二次空気の流通を制御する制御弁6と、これらエアポンプ5および制御弁6の作動を制御する制御部7とを備えて二次空気供給装置を構成する。そして、制御部7は、内燃機関の排気系への二次空気の供給停止に際し、制御弁6を開弁状態に維持したまま所定の時間だけエアポンプ5の駆動を停止したのち、同エアポンプ5を一時的に駆動させて制御弁6を閉弁制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の排気系に二次空気を供給する二次空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、暖機運転中など内燃機関が冷えた状態にあるときには、触媒コンバータよりも上流の排気ガス中に空気(二次空気)を供給することにより、排気ガスを再燃焼(酸化反応)させて浄化したり、その再燃焼の熱で触媒コンバータの活性化を促すなどの処理が行われている。
【0003】
このような二次空気の供給を制御する二次空気供給装置は通常、内燃機関の排気通路に接続された二次空気の供給通路、この供給通路に二次空気を供給するエアポンプ、そして上記排気通路との境界部にあってこの供給される二次空気の流通を制御する制御弁を備えている。そして、こうした二次空気供給装置にあって、所定の条件に基づいて二次空気を供給した後、二次空気の供給を停止する際には、例えば特許文献1に記載の装置のように、エアポンプの駆動停止後に制御弁を閉じるようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−79534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した二次空気供給装置にあって、エアポンプの停止直後に上記制御弁を閉じると、エアポンプの慣性力により供給通路内を遅れて圧送されてくる二次空気が閉弁途中にある制御弁の流路を通ることになるため、笛のような異音が生じることがある。そのため、こうした慣性力により遅れて圧送されてくる二次空気がなくなるまでの所定時間経過後、すなわちエアポンプの停止後から所定時間経過後に上記制御弁を閉弁することが望ましい。しかしこの場合、制御弁の閉弁直前には、二次空気の供給通路内の圧力が内燃機関の排気通路内の圧力とほぼ等しくなることから、このような圧力バランスのもとで制御弁を閉じると、供給通路内の圧力が排気通路内の圧力に対して一時的に負圧になることが発明者によって確認されている。そしてこのように、供給通路内の圧力が排気通路内の圧力に対して相対的に負圧になると、排気通路から供給通路へ排気ガスの逆流が起こり、制御弁のシール部分に排気ガス中に含まれる凝縮水が付着して凍結し、制御弁が固着するなどの虞がある。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次空気の供給通路に対する排気ガスの逆流を好適に抑制することのできる二次空気供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路に接続された二次空気の供給通路に二次空気を供給するエアポンプと、前記二次空気の供給通路途中にあって前記供給される二次空気の流通を制御する制御弁と、これらエアポンプおよび制御弁の作動を制御する制御手段とを備える二次空気供給装置において、前記制御手段は、内燃機関の排気系への二次空気の供給停止に際し、前記制御弁を開弁状態に維持したまま所定の時間だけ前記エアポンプの駆動を停止したのち、同エアポンプを一時的に駆動させて前記制御弁を閉弁制御することを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、エアポンプの一時的な駆動によって、制御弁の閉弁時に制御弁よりもエアポンプ側の供給通路内に相対的な負圧が生じることを抑え、排気ガスが制御弁よりもエアポンプ側に逆流することを抑制することができるようになる。また、所定の時間だけエアポンプの駆動を停止したのちにエアポンプの一時的な駆動を行うことで、制御弁の閉弁時に笛のような異音が生じることも抑制することができるようになる。なお、エアポンプを停止する所定の時間とは、供給通路内の制御弁よりもエアポンプ側の圧力と制御弁よりも排気通路側の圧力とが均衡状態もしくは均衡状態に近い状態となるために要する時間である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の二次空気供給装置において、前記制御弁の閉弁制御に先立つ前記エアポンプの一時的な駆動が、前記二次空気の供給通路に対する排気の逆流を防ぎ得る条件のもとに実行されることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、エアポンプの一時的な駆動を適切に制御して、排気ガスが制御弁よりもエアポンプ側に逆流することをより的確に抑制することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の二次空気供給装置において、前記二次空気の供給通路に対する排気の逆流を防ぎ得る条件が時間情報として駆動時間マップに登録されており、このマップから読み出される時間情報に対応する時間だけ前記エアポンプの一時的な駆動が行われることを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、圧力センサ等を要しない簡易な構成によって、排気ガスが制御弁よりもエアポンプ側に逆流することを抑制することができるようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の二次空気供給装置において、前記駆動時間マップに登録された時間情報は、
a.内燃機関の回転数が高いほど長い時間に、かつ
b.内燃機関が搭載された車両のバッテリ電圧が高いほど短い時間に、
なる傾向にて設定されていることを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、内燃機関の負荷、すなわち回転数が供給通路内の制御弁よりも排気通路側の圧力に及ぼす影響、およびエアポンプの駆動能力、すなわちバッテリ電圧が供給通路内の制御弁よりもエアポンプ側の圧力に及ぼす影響を適切に加味して、エアポンプの一時的な駆動をより適切に行うことができるようになる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の二次空気供給装置において、前記二次空気の供給通路の前記エアポンプと前記制御弁との間の圧力を測定する第1の圧力センサと、同供給通路の前記制御弁よりも下流側の圧力を測定する第2の圧力センサとを備え、前記二次空気の供給通路に対する排気の逆流を防ぎ得る条件は、それら第1の圧力センサおよび第2の圧力センサによる測定圧力の差圧に基づき前記排気の逆流の発生の有無を判断し得る閾値として設定されており、前記差圧がこの閾値を超えるまで前記エアポンプの一時的な駆動が行われることを要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、2つのセンサを用いた差圧を測定することで、エアポンプを一時的に駆動する時間をその都度の実情に応じて的確に判断することができるようになる。したがって、排気ガスの逆流についても、これをより好適に抑制することができるようになる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次空気供給装置において、前記制御弁を開弁状態に維持したまま前記エアポンプの駆動を停止する所定の時間は、時間情報として停止時間マップに登録されており、該マップから読み出される時間情報に対応する時間だけ前記エアポンプの駆動が停止されることを要旨とする。
【0019】
上記構成によっても、圧力センサ等を要しない簡易な構成によって、エアポンプの駆動を停止する時間を判断することができるようになる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記停止時間マップに登録された時間情報は、内燃機関の負荷、すなわち回転数が高いほど長い時間になる傾向にて設定されていることを要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、内燃機関の回転数が供給通路内の制御弁よりも排気通路側の圧力に及ぼす影響を適切に加味して、エアポンプの駆動を停止する時間をより適切に判断することが可能となる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次空気供給装置において、前記二次空気の供給通路の前記エアポンプと前記制御弁との間の圧力を測定する第1の圧力センサと、同供給通路の前記制御弁よりも下流側の圧力を測定する第2の圧力センサとを備え、前記制御弁を開弁状態に維持したまま前記エアポンプの駆動を停止する所定の時間は、それら第1の圧力センサおよび第2の圧力センサによる測定圧力の差圧に基づいた閾値として設定されており、前記差圧がこの閾値以下になるまで前記エアポンプの駆動が停止されることを要旨とする。
【0023】
上記構成によれば、2つのセンサを用いた差圧を測定することで、エアポンプの駆動を停止する時間をその都度の実情に応じて的確に判断することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明にかかる二次空気供給装置の第1の実施の形態について、同二次空気供給装置と共にその適用対象となる内燃機関の構成を模式的に示すブロック図。
【図2】第1の実施の形態の二次空気供給装置による二次空気供給の制御手順を示すフローチャート。
【図3】閾値tPaと閾値tPbの関係を模式的に示すグラフ。
【図4】(a)〜(c)は、第1の実施の形態の二次空気供給装置による主に二次空気の供給停止時の動作態様を示すタイミングチャート。
【図5】この発明にかかる二次空気供給装置の第2の実施の形態について、同二次空気供給装置と共にその適用対象となる内燃機関の構成を模式的に示すブロック図。
【図6】第2の実施の形態の二次空気供給装置による二次空気供給の制御手順を示すフローチャート。
【図7】(a)は、マップ演算される内燃機関の回転数と時間Taあるいは時間Tbとの関係を示すグラフ。(b)は、同じくマップ演算されるバッテリ電圧と時間Tbとの関係を示すグラフ。
【図8】(a)〜(c)は、第2の実施の形態の二次空気供給装置による主に二次空気の供給停止時の動作態様を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
以下、この発明にかかる二次空気供給装置の第1の実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0026】
まず、この実施の形態にかかる二次空気供給装置が二次空気を供給する内燃機関の排気系、および二次空気供給装置の構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、内燃機関では、シリンダー内の燃焼室1において燃料と空気の混合気の燃焼が行われ、その排気ガスが排気通路2へ排出される。排気ガスは排気通路2を通って触媒コンバータ3で浄化された後、外部へ排出される。
【0028】
一方、排気通路2には、排気ガスに二次空気を供給するための通路である供給通路4が接続されている。この供給通路4には、当該通路4に二次空気を供給するエアポンプ5が設けられているとともに、その通路途中には、エアポンプ5から供給される二次空気の流通を制御する制御弁6が設けられている。そして、制御部7がこれらエアポンプ5と制御弁6の作動を制御することによって、所定の条件のもとに排気ガスに二次空気を供給する。なお、この実施の形態において、制御部7は、マイクロコンピュータを備えて内燃機関の運転の制御等も並行して行う電子制御装置(ECU)からなっている。
【0029】
また一方、この実施の形態では、上記供給通路4内に、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力P1を測定するポンプ側圧力センサ8と、制御弁6よりも排気通路2側の圧力P2を測定する排気側圧力センサ9とが設けられている。そして、これらポンプ側圧力センサ8および排気側圧力センサ9の出力は共に制御部7に取り込まれ、特に二次空気の供給を停止する際に、同制御部7によって参照される。
【0030】
次に、この実施の形態の二次空気供給装置の制御手順として、主に二次空気の供給停止処理を中心とした処理手順について、図2を参照して説明する。
【0031】
図2に示すルーチンは、内燃機関の運転中に制御部7を通じて行われる処理であり、まず、ステップS11においては、内燃機関の運転状態が二次空気を供給すべき領域であるか否かが判断される。そして、二次空気の供給が必要であると判断されると(例えば暖機運転中)、ステップS12に進み、所定の条件に基づいた通常の二次空気供給制御が行われる。
【0032】
こうした二次空気供給制御の実行に際しては、ステップS13で二次空気の供給終了条件を満たすか否かが常時監視され、二次空気の供給終了条件が満たされると(例えば暖機運転終了)、ステップS14〜ステップS18に示す二次空気の供給停止処理に移行する。
【0033】
この二次空気の供給停止処理では、まず、ステップS14で、エアポンプ5の駆動が停止される。そして、ステップS15で、ポンプ側圧力センサ8と排気側圧力センサ9の出力から、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力P1と制御弁6よりも排気通路2側の圧力P2との差圧ΔP(=P1−P2)が閾値tPa以下であるかどうかが判断される。なお、この実施の形態において、閾値tPaは、図3に示すように、ポンプ側圧力P1と排気側圧力P2が平衡状態となる値(ΔP=0)と、その差圧ΔPのもとで制御弁6を閉じたときの前述した相対的な負圧による排気ガスの逆流の発生の有無を判断し得る値である閾値tPbとの間に設定されている。
【0034】
このステップS15の処理において、差圧ΔPが上記閾値tPaを超えると判断される場合には、時間の経過に伴ってポンプ側圧力P1が下がり、差圧ΔPが閾値tPa以下になるまで待つ。その後、同ステップS15の処理として、差圧ΔPが上記閾値tPa以下になったことが判断されると、ステップS16へ進み、エアポンプ5の駆動(再駆動)が開始される。
【0035】
こうしてエアポンプ5が駆動(再駆動)されると、ステップS17で、同様にポンプ側圧力センサ8と排気側圧力センサ9の出力から、今度は差圧ΔPが閾値tPbを超えるかどうかが判断される。なお、この実施の形態において、閾値tPbは、前述のように、そして図3に示すように、その差圧ΔPのもとで制御弁6を閉じたときの排気ガスの逆流の発生の有無を判断し得る閾値として設定されている。すなわち、差圧ΔPが閾値tPbを超える値であれば、その差圧ΔPのもとで制御弁6を閉弁しても排気ガスの逆流は起こらない。
【0036】
こうした条件のもと、ステップS17の処理において、差圧ΔPが閾値tPb以下であると判断される場合には、エアポンプ5の駆動状態を維持する。すなわち、時間の経過に伴ってポンプ側圧力P1が上がり、差圧ΔPが閾値tPbを超えるまで待つ。その後、同ステップS17の処理として、差圧ΔPが上記閾値tPbを超えたことが判断されると、ステップS18へ進み、エアポンプ5の駆動を停止するとともに制御弁6を閉弁する。これによって二次空気の供給停止処理は終了し、内燃機関が再び二次空気供給が必要とされる運転領域となるまで待機する。
【0037】
次に、図4を参照しつつ、この実施の形態の二次空気供給装置の主に上述した供給停止時の動作についてさらに詳述する。
【0038】
いま、図4(a)に示すように、排気ガスへの二次空気の供給中であるとするときに供給終了条件が満たされ、時刻t11に、エアポンプ5の駆動停止指令が発せられたとする。このとき、エアポンプ5の駆動信号がオフ(OFF)となっても、供給通路4にはエアポンプ5の慣性力により二次空気が供給されるため、図4(c)に示されるように、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力P1はすぐには下がらず、徐々に低下していく。そして、その後のポンプ側圧力P1の低下により、ポンプ側圧力P1と排気側圧力P2の差圧ΔPが閾値tPa以下となる時刻t12で、図4(a)に示すように、エアポンプ5を再び駆動すべく駆動信号がオン(ON)とされる。これにより、供給通路4内の圧力も、図4(c)に示すように、低下傾向にあったものが一時的に高まるようになる。その後、ポンプ側圧力P1と排気側圧力P2の差圧ΔPが閾値tPbを超えた時刻t13で、図4(a)に示すように、エアポンプ5の再駆動が停止されるとともに、図4(b)に示すように、制御弁6が閉弁される。
【0039】
なお、図4(c)に示す排気側圧力P2は内燃機関の機関負荷により変動するため、二次空気の供給が行われる運転領域において予測される機関負荷による変動幅を考慮したうえで、上記閾値tPaおよび閾値tPbを設定することとなる。あるいは、その時々の機関負荷に応じて、閾値tPaおよび閾値tPbを変更するようにしてもよい。
【0040】
このように、エアポンプ5を一時的に駆動させて制御弁6を閉弁する制御を行うことにより、制御弁6の閉弁時には、ポンプ側圧力P1と排気側圧力P2との差圧ΔPが上記閾値tPbを超えるようになる。このため、図4(c)に領域Aとして示すような現象、すなわちポンプ側圧力P1が排気側圧力P2に対して相対的に負圧になるような現象は生じない。したがって、排気ガスが制御弁6からエアポンプ側に逆流することを抑制することができるようになる。
【0041】
またこのとき、差圧ΔPが一旦閾値tPa以下に低下してから、エアポンプ5を再駆動して差圧ΔPを閾値tPbまで上げるようにしている。エアポンプ5の特性上、その駆動初期にはポンプ側圧力P1は緩やかに上昇することから、このような制御を行えば、差圧ΔPが必要以上に上昇して制御弁6の閉弁時に前述した笛のような異音が生じることもなくなる。
【0042】
以上説明したように、この実施の形態にかかる二次空気供給装置によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
【0043】
(1)内燃機関の排気系への二次空気の供給停止に際し、制御弁6を開弁状態に維持したまま所定の時間だけエアポンプ5の駆動を停止したのち、同エアポンプ5を一時的に駆動させて制御弁6を閉弁制御するようにした。これにより、制御弁6の閉弁時に供給通路4内に負圧が生じることを抑えることができ、ひいては排気ガスが制御弁6よりもエアポンプ5側に逆流することを抑制することができる。すなわち、排気ガスの逆流により、制御弁6に排気ガス中に含まれる凝縮水が付着して凍結し、制御弁6が固着する等の不都合の発生を未然に抑制することができる。また、所定の時間だけエアポンプ5の駆動を停止したのちにエアポンプ5の一時的な駆動を行うことで、制御弁6の閉弁時に笛のような異音が生じることも同時に抑制することができる。
【0044】
(2)エアポンプ5の一時的な駆動を、二次空気の供給通路4に対する排気ガスの逆流を防ぎ得る条件のもと実行するようにした。より詳しくは、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力を測定するポンプ側圧力センサ8と、制御弁6よりも下流側の圧力を測定する排気側圧力センサ9とによる測定圧力の差圧ΔPが、排気の逆流を判断し得る逆流閾値として設定された閾値tPbを超えるまでエアポンプ5の一時的な駆動を行うようにした。このように、2つのセンサを用いて差圧ΔPを測定するようにしたことで、エアポンプ5を一時的に駆動する期間を的確に判断することができ、ひいては排気ガスの逆流をより好適に抑制することができる。
【0045】
(3)制御弁6を開弁状態に維持したままエアポンプ5の駆動を停止するにあたり、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力を測定するポンプ側圧力センサ8と、制御弁6よりも下流側の圧力を測定する排気側圧力センサ9とによる測定圧力の差圧ΔPが、閾値tPa以下になるまでエアポンプ5の駆動を停止するようにした。これにより、エアポンプ5の駆動を停止する期間についても、2つのセンサによる差圧ΔPによって適切に管理することができる。
(第2の実施の形態)
次に、この発明にかかる二次空気供給装置の第2の実施の形態を、第1の実施の形態との相違点を中心に、図5〜図8を参照して説明する。なお、この実施の形態にかかる二次空気供給装置も、その基本的な構成は第1の実施の形態と同等であり、図5においても第1の実施の形態と実質的に同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、重複する説明は割愛する。
【0046】
図5に示すように、この実施の形態にかかる二次空気供給装置には、その二次空気の供給通路4に、圧力を測定するためのセンサ等は設けられていない。ただしこれに代えて、制御部7には、ROM等からなる不揮発性の記憶装置に、停止時間マップ7aおよび駆動時間マップ7bといった時間情報マップが記憶されており、二次空気の供給を停止する際には、制御部7によりこれら停止時間マップ7aおよび駆動時間マップ7bが参照される。
【0047】
次に、この実施の形態の二次空気供給制御装置の制御手順として、ここでも主に二次空気の供給停止処理を中心とした処理手順について、図6を参照して説明する。
【0048】
図6に示すルーチンも、内燃機関の運転中に制御部7を通じて行われる処理であり、まず、ステップS21において、内燃機関の運転状態が二次空気を供給すべき領域であると判断されると、ステップS22、ステップS23で二次空気の供給終了条件を満たすか否かが常時監視されつつ、所定の条件に基づいた通常の二次空気供給制御が行われる。そして、二次空気の供給終了条件が満たされたところで、ステップS24〜ステップS28に示す二次空気の供給停止処理に移行する。
【0049】
この二次空気の供給停止処理では、まず、ステップS24で、エアポンプ5の駆動が停止される。そして、ステップS25の処理として、エアポンプ5の停止後、時間Taが経過したか否かが判断される。この時間Taは、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力が、制御弁6よりも排気通路2側の圧力とほぼ等しくなる程度にまで低下するために要する時間である。ここでは、二次空気の供給が行われる運転領域において予測される内燃機関の回転数等をパラメータとした時間情報として制御部7の記憶装置(停止時間マップ7a)に予め記憶されている。なお、この時間Taは、図7(a)に参考までに示すように、内燃機関の回転数が高いほど長くなる時間として設定されている。
【0050】
このステップS25の処理において、時間Taが経過したことが判断されると、ステップS26に進み、エアポンプ5の駆動(再駆動)が開始される。そして、ステップS27の処理として、今度はエアポンプ5の駆動(再駆動)開始後、時間Tbが経過したか否かが判断される。この時間Tbは、エアポンプ5の駆動により、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力が、制御弁6を閉弁したとしても排気ガスの逆流が起こらない圧力になるまでに要する時間である。この時間Tbも、時間情報として制御部7の記憶装置(駆動時間マップ7b)に予め記憶されており、当該ステップの処理に入る都度、制御部7によって読み出され、確認される。なお、この実施の形態において、駆動時間マップ7bは、例えば図7(a),(b)に示すように、内燃機関の回転数と内燃機関が搭載された車両のバッテリ電圧をパラメータとして作成されている。ちなみに、上記時間Tbは、内燃機関の回転数が高いほど、すなわち排気通路2内の圧力が高いほど長い時間に、また、車両のバッテリ電圧が高いほど、すなわちエアポンプ5の圧力を上昇させる能力が高いほど短い時間になる傾向がある。したがって、駆動時間マップ7bにも、このような傾向に基づいて設定された時間情報が登録されており、その時々の運転状態に応じた時間情報が時間Tbとして読み出される。
【0051】
そして、このステップS27の処理において、上記時間Tbが経過したことが判断されると、ステップS28へ進み、エアポンプ5の駆動を停止するとともに制御弁6を閉弁する。これによって二次空気の供給停止処理は終了し、そしてここでも、内燃機関が再び二次空気供給が必要とされる運転領域となるまで待機する。
【0052】
次に、図8を参照しつつ、この実施の形態の二次空気供給装置の主に上述した供給停止時の動作についてさらに詳述する。
【0053】
いま、図8(a)に示すように、排気ガスへの二次空気の供給中であるとするときに供給終了条件が満たされ、時刻t21に、エアポンプ5の駆動停止指令が発せられたとする。このとき、先の第1の実施の形態でも述べたように、エアポンプ5の駆動信号がオフ(OFF)となっても、供給通路4にはエアポンプ5の慣性力により二次空気が供給されるため、図8(c)に示されるように、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力P1はすぐには下がらず、徐々に低下していく。そして、時刻t21から時間Taだけ経過した時刻t22で、図8(a)に示すように、エアポンプ5を再び駆動するべく駆動信号がオン(ON)とされる。この時刻t22の時点では、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力P1は、制御弁6よりも排気通路2側の圧力P2とほぼ等しい圧力まで下がっている。しかし、こうしたエアポンプ5の再駆動により、図8(c)に示すように、低下傾向にあったエアポンプ5と制御弁6との間の圧力P1が一時的に高まるようになる。そして、エアポンプ5を再駆動した時刻t22から時間Tbだけ経過した時刻t23で、図8(a)に示すように、エアポンプ5の再駆動が停止されるとともに、図8(b)に示すように、制御弁6が閉弁される。このとき、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力P1は、制御弁6を閉弁したとしても排気ガスの逆流が起こらないバランスになる圧力まで上がっている。
【0054】
このように、エアポンプ5を一時的に駆動させて制御弁6を閉弁する制御を行うことにより、制御弁6の閉弁時には、ここでも図8(c)に領域Aとして示すような現象、すなわちエアポンプ5と制御弁6との間の圧力が制御弁6よりも排気通路2側の圧力に対して相対的に負圧になるような現象は生じない。したがって、排気ガスが制御弁6からエアポンプ側に逆流することを抑制することができるようになる。
【0055】
またこのとき、時間Taが経過して、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力が制御弁6よりも排気通路2側の圧力とほぼ等しい状態まで下がってから、エアポンプ5を再駆動するようにしている。これも前述のように、エアポンプ5の特性上、その駆動初期にはエアポンプ5と制御弁6との間の圧力は緩やかに上昇することから、このような制御を行えば、制御弁6よりエアポンプ5側の圧力が必要以上に上昇して制御弁6の閉弁時に前述した笛のような異音が生じることもなくなる。
【0056】
以上説明したように、この実施の形態にかかる二次空気供給装置によれば、先の第1の実施の形態の前記(1)の効果に加え、以下のような効果が得られるようになる。
【0057】
(4)エアポンプ5の一時的な駆動に関し、二次空気の供給通路4に対する排気ガスの逆流を防ぎ得る条件を時間情報として駆動時間マップに登録し、このマップから読み出した時間情報に対応する時間Tbだけエアポンプ5の一時的な駆動を行うようにした。これにより、実際の圧力を測定せずとも、すなわち圧力センサを設けない簡易な構成によって、排気ガスが制御弁6よりもエアポンプ5側に逆流することを抑制することができる。
【0058】
(5)制御弁6を開弁状態に維持したままエアポンプ5の駆動を停止する所定の時間を、時間情報として停止時間マップ7aに登録し、該マップから読み出される時間情報に対応する時間Taだけエアポンプ5の駆動を停止するようにした。これにより、圧力センサ等を要しない簡易な構成によって、エアポンプ5の駆動を停止する時間を判断することができる。
(他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態にて実施することもできる。
【0059】
・上記第1の実施の形態では、エアポンプ5を停止する時間およびエアポンプ5を一時的に駆動する時間の両方を、ポンプ側圧力P1と排気側圧力P2を測定してその差圧ΔPに基づき決定した。また、上記第2の実施の形態では、エアポンプ5を停止する時間およびエアポンプ5を一時的に駆動する時間の両方を、制御部7の記憶装置に記憶された情報に基づき決定した。しかし、これらの実施の形態は組み合わせ可能である。すなわち、エアポンプ5を停止する時間を記憶装置に記憶された情報に基づき決定し、エアポンプ5を一時的に駆動する時間をポンプ側圧力P1と排気側圧力P2との差圧ΔPに基づき決定するようにしてもよい。あるいは、エアポンプ5を停止する時間をポンプ側圧力P1と排気側圧力P2との差圧ΔPに基づき決定し、エアポンプ5を一時的に駆動する時間を記憶装置に記憶された情報に基づき決定するようにしてもよい。
【0060】
・上記第2の実施の形態では、時間Tbが時間情報として登録される駆動時間マップ7bを、内燃機関の回転数と内燃機関が搭載された車両のバッテリ電圧をパラメータとして作成するようにしたが、この時間Tbの時間情報を、供給通路4の配管長および配管断面積や、排気量、エアポンプ5の吐出能力によって設定するようにしてもよい。
【0061】
・上記第2の実施の形態では、時間Taを、時間Tbと同様に、時間情報としてマップ(停止時間マップ7a)に登録するようにしたが、この時間Taについては、これを規定値として制御部7の記憶装置に予め記憶するようにしてもよい。
【0062】
・上記第1の実施の形態では、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力を測定するポンプ側圧力センサ8と、制御弁6よりも排気通路2側の圧力を測定する排気側圧力センサ9の2つのセンサを設けて圧力を測定するようにした。しかし、二次空気供給時の運転条件等によって制御弁6よりも排気通路2側の圧力が予測可能であれば、エアポンプ5と制御弁6との間の圧力を測定するポンプ側圧力センサ8の出力のみに基づいてエアポンプ5を停止する時間およびエアポンプ5を一時的に駆動する時間を決定するようにしてもよい。
【0063】
・上記各実施の形態では、エアポンプ5を一時的に駆動したのち、エアポンプ5の駆動を停止するとともに制御弁6を閉弁した。しかし、排気ガスの逆流を防ぎ得る条件を満たす状態になっていれば、エアポンプ5の停止と制御弁6の閉弁を同時に行う必要はない。すなわち、エアポンプ5の駆動を停止する直前もしくは直後に制御弁6を閉弁するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…燃焼室、2…排気通路、3…触媒コンバータ、4…供給通路、5…エアポンプ、6…制御弁、7…制御部、7a…停止時間マップ、7b…駆動時間マップ、8…ポンプ側圧力センサ、9…排気側圧力センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に接続された二次空気の供給通路に二次空気を供給するエアポンプと、前記二次空気の供給通路途中にあって前記供給される二次空気の流通を制御する制御弁と、これらエアポンプおよび制御弁の作動を制御する制御手段とを備える二次空気供給装置において、
前記制御手段は、内燃機関の排気系への二次空気の供給停止に際し、前記制御弁を開弁状態に維持したまま所定の時間だけ前記エアポンプの駆動を停止したのち、同エアポンプを一時的に駆動させて前記制御弁を閉弁制御する
ことを特徴とする二次空気供給装置。
【請求項2】
前記制御弁の閉弁制御に先立つ前記エアポンプの一時的な駆動が、前記二次空気の供給通路に対する排気の逆流を防ぎ得る条件のもとに実行される
請求項1に記載の二次空気供給装置。
【請求項3】
前記二次空気の供給通路に対する排気の逆流を防ぎ得る条件が時間情報として駆動時間マップに登録されており、このマップから読み出される時間情報に対応する時間だけ前記エアポンプの一時的な駆動が行われる
請求項2に記載の二次空気供給装置。
【請求項4】
前記駆動時間マップに登録された時間情報は、
a.内燃機関の回転数が高いほど長い時間に、かつ
b.内燃機関が搭載された車両のバッテリ電圧が高いほど短い時間に、
なる傾向にて設定されている
請求項3に記載の二次空気供給装置。
【請求項5】
前記二次空気の供給通路の前記エアポンプと前記制御弁との間の圧力を測定する第1の圧力センサと、同供給通路の前記制御弁よりも下流側の圧力を測定する第2の圧力センサとを備え、前記二次空気の供給通路に対する排気の逆流を防ぎ得る条件は、それら第1の圧力センサおよび第2の圧力センサによる測定圧力の差圧に基づき前記排気の逆流の発生の有無を判断し得る閾値として設定されており、前記差圧がこの閾値を超えるまで前記エアポンプの一時的な駆動が行われる
請求項2に記載の二次空気供給装置。
【請求項6】
前記制御弁を開弁状態に維持したまま前記エアポンプの駆動を停止する所定の時間は、時間情報として停止時間マップに登録されており、該マップから読み出される時間情報に対応する時間だけ前記エアポンプの駆動が停止される
請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次空気供給装置。
【請求項7】
前記停止時間マップに登録された時間情報は、内燃機関の回転数が高いほど長い時間になる傾向にて設定されている
請求項6に記載の二次空気供給装置。
【請求項8】
前記二次空気の供給通路の前記エアポンプと前記制御弁との間の圧力を測定する第1の圧力センサと、同供給通路の前記制御弁よりも下流側の圧力を測定する第2の圧力センサとを備え、前記制御弁を開弁状態に維持したまま前記エアポンプの駆動を停止する所定の時間は、それら第1の圧力センサおよび第2の圧力センサによる測定圧力の差圧に基づいた閾値として設定されており、前記差圧がこの閾値以下になるまで前記エアポンプの駆動が停止される
請求項1〜5のいずれか一項に記載の二次空気供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−229671(P2012−229671A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99212(P2011−99212)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】