説明

二次電池及び二次電池の製造方法

【課題】電解液の液漏れの発生を確実に防止する。
【解決手段】二次電池1は、筐体2と、その筐体2の内部に設けられ、正極及び負極を有する電極体3と、筐体2に設けられ、電極体3の正極に電気的に接続された正極端子4と、筐体2に設けられ、電極体3の負極に電気的に接続された負極端子5と、筐体2の内部に設けられ、電極体3の正極と正極端子4との電気的な接続及び電極体3の負極と負極端子5との電気的な接続を可能に、電極体3を電解液と共に包み込む袋状の絶縁シート8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次電池及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報端末機器やノート型パーソナルコンピュータなどのポータブル電子機器、さらに、ハイブリッド電気自動車などの車両の普及により、それらの動力電源に用いられる二次電池の需要は増大している。このような二次電池としては、例えば、溶接やカシメなどにより金属缶にキャップを接合した筐体を有する電池やラミネート材を筐体に用いた電池などが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−71730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の溶接やカシメにより金属缶にキャップを接合する場合には、その製造途中に溶接スパッタや粉塵などの金属粉が筺体内に混入することがあるため、完全な絶縁状態を形成することが困難であり、しばしば筐体に電食が生じ、溶接箇所などから液漏れが発生してしまう。
【0005】
また、筐体にラミネート材を用いた場合には、筐体の強度が不足するため、電池固定時などにラミネート材の金属層や樹脂層にクラックが発生することがある。このため、金属層のクラックにより水分透過が生じるとともに、樹脂層のマイクロクラックなどにより絶縁が保てなくなり、金属層の電食が発生して液漏れが生じてしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電解液の液漏れの発生を確実に防止することができる二次電池及び二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る二次電池は、筐体と、筐体の内部に設けられ、正極及び負極を有する電極体と、筐体に設けられ、電極体の正極に電気的に接続された正極端子と、筐体に設けられ、電極体の負極に電気的に接続された負極端子と、筐体の内部に設けられ、電極体の正極と正極端子との電気的な接続及び電極体の負極と負極端子との電気的な接続を可能に、電極体を電解液と共に包み込む袋状の絶縁シートとを備える。
【0008】
実施形態に係る二次電池の製造方法は、蓋体に設けられた正極端子及び負極端子と電極体の正極及び負極とを同極同士で電気的に接続可能に、電極体を絶縁シートにより包み込む工程と、電極体を包み込んだ絶縁シートの周縁をその一部を除いて溶着し、電解液を注入するための注液口を形成しつつ絶縁シートを袋状に形成する工程と、袋状の絶縁シートの内部に注液口から電解液を注入する工程と、電解液が注入された袋状の絶縁シートの注液口を閉じる工程と、注液口が閉じられた袋状の絶縁シートを一端開口の容器本体内に設け、蓋体により容器本体の開口を塞ぎ、容器本体と蓋体とを接合する工程とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の一形態に係る二次電池の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す二次電池の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す二次電池の製造工程を説明するための斜視図である。
【図4】図1に示す二次電池の製造工程を説明するための第1の正面図である。
【図5】図1に示す二次電池の製造工程を説明するための第2の正面図である。
【図6】図1に示す二次電池の変形例1を示す断面図である。
【図7】図1に示す二次電池の変形例2を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る二次電池1は、筐体2と、その筐体2内に設けられた電極体3と、筐体2に設けられた一対の正極端子4及び負極端子5と、電極体3と正極端子4とを電気的に接続する正極リード6と、電極体3と負極端子5とを電気的に接続する負極リード7と、電極体3を電解液と共に収容する袋状の絶縁シート8とを備えている。この二次電池1としては、例えば、リチウムイオン電池などの非水電解質二次電池が挙げられる。
【0012】
筐体2は、扁平な直方体形状の外装容器であり、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属材料により形成されている。この筐体2は、上端(図1中)が開口する一端開口の容器本体2aと、その容器本体2aの開口を塞ぐ矩形板状の蓋体2bとを有しており、その蓋体2bが容器本体2aに溶接されて気密及び液密に形成されている。
【0013】
蓋体2bの中央部には、例えば矩形状の圧力開放弁2b1が設けられている。この圧力開放弁2b1は蓋体2bの一部が約半分程度の厚さに薄くされて形成されており、その薄い部分の上面中央部には刻印が形成されている。圧力開放弁2b1は、異常発生などにより筐体2内にガスが生じ、筐体2の内圧が所定値以上に上昇した場合、開状態となって筐体2内のガスを放出し、筐体2の内圧を下げて二次電池1の破裂などの不具合を防止する。
【0014】
電極体3は、表面が正極活物質により被膜されている正極集電体(正極)と表面が負極活物質により被膜されている負極集電体(負極)とがセパレータを介して巻回されて扁平形状に形成されている。この電極体3における巻回軸方向の両端部の一方が正極集電タブ3aとして機能し、その他方が負極集電タブ3bとして機能する。なお、正極集電体や負極集電体としては、例えば、金属箔などが用いられる。
【0015】
正極端子4は蓋体2bの長手方向の一端部に設けられており、負極端子5はその他端部に設けられている。これらの正極端子4及び負極端子5は、電極体3の巻回軸方向に圧力開閉弁2b1を間にして並んでおり、金属などの導電性を有する材料により形成されている。正極端子4は、蓋体2b及び絶縁シート8を貫通して延伸しており、正極リード6に固着されて電極体3の正極、すなわち正極集電タブ3aに電気的に接続されている。同様に、負極端子5も、蓋体2b及び絶縁シート8を貫通して延伸しており、負極リード7に固着されて電極体3の負極、すなわち負極集電タブ3bに電気的に接続されている。
【0016】
正極端子4と蓋体2bとの間には、樹脂などの絶縁体である第1の枠体4aと、樹脂やガラスなどの絶縁体、例えばガスケットと呼ばれる正極シール材4bとが設けられている(図2参照)。同様に、負極端子5と蓋体2bとの間にも、樹脂などの絶縁体である第2の枠体5aと、合成樹脂やガラスなどの絶縁体、例えばガスケットと呼ばれる負極シール材5bとが設けられている。第1の枠体4a及び第2の枠体5aは蓋体2bの上面に位置し、正極端子4及び負極端子5と筐体2との間を電気的に絶縁している。また、正極シール材4b及び負極シール材5bは、蓋体2bとその蓋体2bとを貫通する正極端子4及び負極端子5との間に位置し、正極端子4及び負極端子5と筐体2との間を気密及び液密にシールすると共に電気的に絶縁している。
【0017】
正極リード6は、金属などの導電性を有する材料により形成されており、電極体3の正極集電タブ3aと正極端子4とを電気的に接続するリード部である。この正極リード6は、筐体2の天井面からその側面に沿って延伸し、正極集電タブ3aを両側から挟み込む形状に形成されている。正極リード6の電極体3側の端部は超音波溶接により電極体3の正極集電タブ3aに固着されている。なお、正極リード6の蓋体2b側の端部には、正極端子穴6aが形成されており、その正極端子穴6aに正極端子4は嵌められて正極リード6に接合されている。
【0018】
負極リード7は、金属などの導電性を有する材料により形成されており、電極体3の負極集電タブ3bと負極端子5とを電気的に接続するリード部である。この負極リード7は、筐体2の天井面からその側面に沿って延伸し、負極集電タブ3bを両側から挟み込む形状に形成されている。負極リード7の電極体3側の端部は超音波溶接により電極体3の負極集電タブ3bに固着されている。なお、負極リード7の蓋体2b側の端部には、負極端子穴7aが形成されており、その負極端子穴7aに負極端子5は嵌められて負極リード7に接合されている。
【0019】
絶縁シート8は、電極体3の正極と正極端子4との電気的な接続及び電極体3の負極と負極端子5との電気的な接続を可能に、電極体3、正極リード6及び負極リード7を電解液と共に包み込む袋状に形成されている。この袋状の絶縁シート8は筐体2の内部に収納されており、その袋状の絶縁シート8内には電解液が注入されている。絶縁シート8としては、絶縁性及び可撓性を有するシートであって、例えば、フィルム状の樹脂シートが用いられる。この樹脂シートの厚さは、例えば、10μm〜0.5mm程度である。
【0020】
この袋状の絶縁シート8は、正極端子4が貫通する正極貫通孔8aと、負極端子5が貫通する負極貫通孔8bとを有しており、正極端子4と正極リード6との接続及び負極端子5と負極リード7との接続を可能にする構造に形成されている。正極端子4は、蓋体2bを貫通して正極貫通孔8aを通り、正極リード6の正極端子穴6aに嵌まっている。同様に、負極端子5も蓋体2bを貫通して負極貫通孔8bを通り、負極リード7の負極端子穴7aに嵌まっている。また、袋状の絶縁シート8は正極シール材4b及び負極シール材5bに溶着されている。これにより、絶縁シート8と正極シール材4bとの間や絶縁シート8と負極シール材5bとの間からの電解液の液漏れを防止することができる。
【0021】
さらに、袋状の絶縁シート8は、その袋体の内圧が所定値以上になると開状態となる開放部8c(図1中のドットパターン)を有している。この開放部8cは、異常発生などにより袋状の絶縁シート8内にガスが生じ、その内圧が所定値以上に上昇した場合、開状態となって袋状の絶縁シート8内のガスを放出し、その内圧を下げて絶縁シート8の破裂などの不具合を防止する。なお、袋状の絶縁シート8内から放出されたガスは筐体2内に溜ることになるが、筐体2の内圧が所定値に達すると、蓋体2bの圧力開放弁2b1が開状態となり、そこから放出される。このとき、袋状の絶縁シート8内に留まっていたガスも、筐体2と絶縁シート8との間を流路として開放部8cから圧力開放弁2b1まで流れて放出される。このようにガス流路が筐体2と絶縁シート8との間に確保されているので、スムーズなガス放出を実現することができる。
【0022】
このような開放部8cは、絶縁シート8を袋状に形成する製造時の溶着力を部分的に弱くすることによって、あるいは、絶縁シート8の一部を薄くすることによって形成されるが、袋状の絶縁シート8の内圧が所定値以上になることに応じて開状態となれば、その構造は特に限定されるものではない。また、ガス流路は確保されているので、開放部8cの位置は、袋状の絶縁シート8のどの位置でも良いが、例えば、ガスの抜け時間短縮のため、蓋体2bの圧力開放弁2b1に対向する位置でも良い。
【0023】
次に、前述の二次電池1の製造工程(製造方法)について説明する。
【0024】
製造工程は、絶縁シート8により電極体3を包む包袋工程と(図3参照)、電極体3を包んで袋状になった絶縁シート8の周縁における注液口11以外の部分を溶着する溶着工程と(図4参照)、溶着後の絶縁シート8内に注液口11から電解液を注入する注液工程と、注液後の絶縁シート8の注液口11を閉じる閉工程と(図5参照)、最後に、筐体2を組んで溶接を行う接合工程とを有している。この製造工程の流れを順に説明する。
【0025】
まず、図3に示すように、蓋体2bの表面から正極端子4及び負極端子5を蓋体2bに貫通させて取り付ける。このとき、第1の枠体4a及び正極シール材4b、さらに、第2の枠体5a及び負極シール材5b(いずれも図1参照)も設ける。
【0026】
次に、矩形状の絶縁シート8を半分に折り曲げ、その絶縁シート8の正極貫通孔8aに正極端子4の棒部分を通し、負極貫通孔8bに負極端子5の棒部分を通し、蓋体2bの裏面側に絶縁シート8を取り付ける。この状態で、絶縁シート8と正極シール材4b及び負極シール材5bとを溶着する。
【0027】
その後、折り曲げられた絶縁シート8の内側に正極リード6を挿入していき、その正極リード6の正極端子穴6aと絶縁シート8の正極貫通孔8aを通過した正極端子4の棒部分とを嵌め合わせる。同様に、折り曲げられた絶縁シート8の内側に負極リード7を挿入していき、その負極リード7の負極端子穴7aと絶縁シート8の負極貫通孔8bを通過した負極端子5の棒部分とを嵌め合わせ、蓋体2bの裏面側に絶縁シート8を介して正極リード6及び負極リード7を取り付ける。
【0028】
次に、蓋体2bの裏面に取り付けられた正極リード6により電極体3の正極集電タブ3aを挟み込み、さらに、蓋体2bの裏面に取り付けられた負極リード7により電極体3の負極集電タブ3bを挟み込むように、正極リード6及び負極リード7と電極体3とを嵌め合わせる。この状態で、正極リード6の一対の脚部を超音波溶接により正極集電タブ3aに固着し、同様に、負極リード7の一対の脚部を超音波溶接により負極集電タブ3bに固着する。ここで、正極リード6、負極リード7及び電極体3は、折り曲げられた絶縁シート8の内側に位置することになる。
【0029】
その後、図4に示すように、半分に折り曲げられた絶縁シート8の周縁をその一部を除いて溶着し、電解液を注入するための注液口11を形成しつつ絶縁シート8を袋状に形成する。この溶着により袋状になった絶縁シート8は、注液口11に加え、その注液口11の部分を除いて絶縁シート8の周縁に沿って延伸する帯状の溶着部12(図4中のドットパターン)を有することになる。次いで、その袋状の絶縁シート8内に注液口11から電解液を注入する。
【0030】
注液完了後、図5に示すように、絶縁シート8の注液口11を溶着し、注液口11を閉じる。これにより、注液口11が閉じられ、袋状の絶縁シート8は、注液口11の部分も含んで絶縁シート8の周縁に沿って延伸する帯状の溶着部12(図5中のドットパターン)を有することになる。この溶着部12は、溶着により注液口11が閉じられた溶着痕13を有している。この溶着痕13は、注液口11を閉じる際に生じる痕であり、例えば、絶縁シート8を袋状にする溶着と注液口11を閉じる溶着とにより重なる二重痕をその両端に有することになる。この二重痕は、溶融と凝固の工程を二回繰り返した箇所である。なお、前述の注液口11の溶着では、注液口11を溶着して閉じ、その溶着痕13を袋状の絶縁シート8の内圧が所定値以上になると開状態となる開放部8cとしている。
【0031】
次に、前述の袋状の絶縁シート8を容器本体2a内に挿入する前に、袋状の絶縁シート8の溶着部12をラインL1〜L3で折り曲げる。なお、袋状の絶縁シート8の溶着部12をラインL1〜L3で切断しても良いが、折り曲げを行った方が切断片や粉塵などの異物が発生することを防止することができる。ただし、折り曲げを行っても容器本体2a内に挿入することが不可能あるいは困難である場合には、袋状の絶縁シート8の溶着部12をラインL1〜L3で切断する。この場合には、溶着部12は切断痕(ラインL1〜L3で示す端部)を有することなる。
【0032】
その後、溶着部12が折り曲げられた、あるいは、切断された袋状の絶縁シート8(内部に電極体3、正極リード6、負極リード7及び電解液を収容している)を容器本体2a(図1参照)内に挿入しやすいように、電極体3の膨れを抑えるコイルプレスを行う。コイルプレス後、圧縮された袋状の絶縁シート8を容器本体2aの開口からその内部に挿入して設け、同時に、蓋体2bにより容器本体2aの開口を塞ぎ、最後に、容器本体2aと蓋体2bとを溶接する。これにより、図1に示すような二次電池1が完成する。
【0033】
このような製造工程において、容器本体2aと蓋体2bとの溶接を行う場合には、電極体3や電解液などは袋状の絶縁シート8により包み込まれているため、溶接スパッタや粉塵などの金属粉が電極体3や電解液などに混入することを防止することが可能となる。また、袋状の絶縁シート8の注液口11から注液を行い、その注液後に注液口11を溶着するため、通常のように、蓋体2bに注液口を形成する必要も、その注液口を封止するための溶接を行う必要も無くなる。これにより、製造工程を簡略化することができる。さらに、袋状の絶縁シート8により電解液を包み込み、電解液が筐体2に直接接触することを防ぐことが可能となるため、二次電池1の使用時に筐体2にクラックなどが発生しても、筐体2の外に電解液が流出することを防ぐことができ、その結果、電解液による短絡を防ぐことができる。加えて、袋状の絶縁シート8を用いることによって、電極体3の正極集電タブ3aや負極集電タブ3b、正極リード6、負極リード7と、筐体2とを完全な絶縁状態に容易にすることができる。
【0034】
また、通常の注液工程では、筐体2内に電極体3などを収納してから蓋体2bに形成された注液口から電解液を注入するが、このとき、筐体2内の電極体3はコイルプレスにより圧縮された状態で、さらに筐体2から圧力を受けている状態であるため、電極体3への液浸透性が低下してしまう。一方、本実施形態のように、袋状の絶縁シート8に注液を行う場合には、その絶縁シート8内の電極体3は圧縮されておらず、さらに、外部からの圧力を受けない状態であり、この状態で注液を行うことが可能である。このため、電極体3への液浸透性が通常の注液工程に比べ向上するので、短時間での注液を実現することができる。また、注液終了後に、電極体3の膨れを抑えるコイルプレスを行うことも可能であり、筐体2への電極体3の挿入性を向上させることもできる。
【0035】
また、前述の袋状の絶縁シート8を容器本体2a内に挿入する前に、その袋状の絶縁シート8内の電極体3に対し、充電及び放電を繰り返すエージング(ならし運転)を行うことが可能である。この場合には、電極体3、正極リード6、負極リード7及び電解液を内蔵している袋状の絶縁シート8(図5参照)を他の密閉容器内に入れ、その密閉容器内でエージングを行う。この密閉容器は、水分透過を防ぐ金属性の容器である。この容器以外でも、密閉容器内に水分吸着剤を入れることで、袋状の絶縁シート8への水分影響を防止することも可能である。これは、袋状の絶縁シート8を乾燥状態で筐体2内に入れる必要があるためである。例えば、水滴などの水分を有する袋状の絶縁シート8をそのまま筐体2内に収容すると、筐体2内に水分が混入し、その水分影響による不具合が発生してしまう。
【0036】
なお、エージングが行われると、そのエージングにより袋状の絶縁シート8の内部に多少ではあるがガスが発生する。このガスを絶縁シート8内から抜くガス抜きを行う際には、絶縁シート8の一部分に穴あけや一部切断により、その内部に発生したガスを放出するための放出口を形成してガス抜きを行い、その後、熱溶着や超音波溶着により放出口を封止する再封止を行う。この場合には、袋状の絶縁シート8は、図5に示すように、ガス抜きのために開けられた放出口が封止された封止痕14を有することになる。このときの穴あけや一部切断の度合いを調整することで、その封止痕14を開放部8cとして機能させることも可能である。なお、前述の袋状の絶縁シート8を容器本体2a内に挿入する前にエージングを行うことによって、通常の電池完成後にエージングを行う場合に比べ、エージングにより発生したガスを容易に取り除くことができる。
【0037】
以上説明したように、前述の実施形態によれば、電極体3を電解液と共に包み込む袋状の絶縁シート8を設けることによって、電極体3や電解液などが袋状の絶縁シート8により包まれて筐体2内に収納されることになる。これにより、製造途中で溶接スパッタや粉塵などの金属粉が電極体3や電解液などに混入することが防止され、完全な絶縁状態を形成することが可能となるので、筐体2の電食を抑止し、電解液の液漏れの発生を確実に防止することができる。さらに、袋状の絶縁シート8により電解液を収容することで、電解液が筐体2に直接接触することが防止されるので、筐体2にクラックなどが発生しても、筐体2の外に電解液が流出することを確実に防ぐことができる。また、袋状の絶縁シート8は筐体2内に収納され、その筐体2により保護されているので、絶縁シート8の破損を抑止することが可能となり、さらに、その破損が発生しても筐体2が存在するため、電解液の液漏れの発生をより確実に防止することができる。
【0038】
また、袋状の絶縁シート8は、正極シール材4b及び負極シール材5bに溶着されている。これにより、絶縁シート8と正極シール材4bとの間や絶縁シート8と負極シール材5bとの間からの電解液の液漏れを防止することができる。さらに、製造工程途中で、絶縁シート8を正極シール材4b及び負極シール材5bに溶着することによって、絶縁シート8が蓋体2bと一体となるため、絶縁シート8の取り扱いが容易となり、その後の工程作業を行いやすくすることができる。
【0039】
また、袋状の絶縁シート8は、その内圧が所定値以上になると開状態となる開放部8cを有している。これにより、開放部8cは、異常発生などにより袋状の絶縁シート8内にガスが生じ、その袋状の絶縁シート8の内圧が所定値以上に上昇した場合、開状態となって袋状の絶縁シート8内のガスを放出するので、その絶縁シート8の内圧を下げて絶縁シート8の破裂などの不具合を防止することができる。
【0040】
また、袋状の絶縁シート8は、その周縁に沿って延伸する帯状の溶着部12を有しており、この溶着部12がその延伸方向に沿って折り曲げられ、筐体2内に設けられている。この折り曲げにより袋状の絶縁シート8は小さくなるため、その袋状の絶縁シート8を筐体2内に容易に収納することができる。さらに、筐体2内に袋状の絶縁シート8を収納するため不要な部分を切断した場合に比べ、切断片や粉塵などの異物が発生することを防止することができる。
【0041】
ただし、折り曲げを行っても筐体2内に収納することが不可能あるいは困難である場合には、溶着部12をその延伸方向に沿って切断する。これにより、溶着部12はその延伸方向に沿って延びる切断痕(ラインL1〜L3で示す端部)を有することになる。その結果、筐体2内に袋状の絶縁シート8を確実にまた容易に収納することができる。
【0042】
また、袋状の絶縁シート8は、電解液を注入するための注液口11が溶着により閉じられた溶着痕13を有している。この溶着痕13は注液口11が溶着により閉じられたことを示す痕である。この溶着痕13により注液口11を確実に閉じることが可能となるので、電解液の液漏れの発生を確実に防止することができる。
【0043】
また、袋状の絶縁シート8は、その内部に発生したガスを放出するための放出口が封止された封止痕14を有している。この封止痕14は、ガス抜きのために開けられた放出口が封止されたことを示す痕である。したがって、エージングなどで袋状の絶縁シート8内に発生したガスを放出口から確実に抜くことができ、その後、封止痕14によりガス抜き用の放出口を確実に閉じることが可能となるので、電解液の液漏れの発生を確実に防止することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0045】
例えば、前述の実施形態では、正極シール材4b及び負極シール材5bに絶縁シート8を溶着しているが、これに限るものではなく、変形例1として、図6に示すように、正極シール材4b及び負極シール材5bと絶縁シート8とを一体に形成するようにしても良い。この場合には、絶縁シート8は、正極端子4と蓋体2bとの間を封止する正極シール部21と、負極端子5と蓋体2bとの間を封止する負極シール部22とを有することになる。このような一体成形により部品点数の削減及び工程作業の簡略化を実現することができる。
【0046】
また、前述の実施形態では、袋状の絶縁シート8の周縁に注液口11を形成しているが、これに限るものではなく、変形例2として、図7に示すように、袋状の絶縁シート8の一部を突出させてその部分に注液口11を形成するようにしても良い。この場合には、袋状の絶縁シート8は、注液口11を有する突出部31を有することになる。この突出部31は、例えば、袋状の絶縁シート8の角部から突出している。このような突出部31の注液口11から注液を行った後には、突出部31の先端部31aを溶着する。この先端部31aが矩形状の溶着部となる。この状態でエージングを行い、その後、突出部31を上に向け、ラインL4で切断して放出口を形成し、エージングにより袋状の絶縁シート8内に発生したガスを抜く。このガス抜き後には、放出口を塞ぐため、突出部31の根元部31bを溶着する。この根元部31bが矩形状の溶着部となる。なお、このときの溶着力を調整することで、根元部31bを開放部8cとしても機能させることが可能である。このような突出部31を設けることによって、電解液の注液作業、さらに、ガス抜き及び封止作業を容易に行うことができる。
【0047】
また、前述の実施形態では、正極シール材4bと負極シール材5bとを別体として設けているが、これに限るものではなく、例えば、それらを有する樹脂プレートとして一体に形成するようにしても良い。この場合には、樹脂プレートは筐体2の蓋体2bと絶縁シート8との間に存在することになり、絶縁シート8は樹脂プレートの裏面に溶着されることになる。この一体成形により部品点数の削減及び工程作業の簡略化を実現することができる。
【0048】
なお、前述の実施形態に係る製造工程において注液口11を閉じる工程では、注液口11を溶着して閉じ、袋状の絶縁シート8の内圧が所定値以上になると開状態となる開放部8cとする。また、前述の実施形態に係る製造工程は、注液口11が閉じられた袋状の絶縁シート8を容器本体2a内に設ける前に、注液口11が閉じられた袋状の絶縁シート8の周縁に沿って延伸する帯状の溶着部12をその延伸方向に沿って折り曲げる工程、あるいは、注液口11が閉じられた袋状の絶縁シート8を容器本体2a内に設ける前に、注液口11が閉じられた袋状の絶縁シート8の周縁に沿って延伸する帯状の溶着部12をその延伸方向に沿って切断する工程を有する。また、注液口11が閉じられた袋状の絶縁シート8を容器本体2a内に設ける前に、注液口11が閉じられた袋状の絶縁シート8内の電極体3に対し、充電及び放電を繰り返すならし運転を行う工程、さらに、ならし運転を行った後、袋状の絶縁シート8の一部を開け、袋状の絶縁シート8の内部からガスを放出するための放出口を形成し、そのガスが放出された袋状の絶縁シート8の放出口を封止する工程を有する。
【符号の説明】
【0049】
1…二次電池、2…筐体、3…電極体、4…正極端子、4b…正極シール材、5…負極端子、5b…負極シール材、8…絶縁シート、8c…開放部、11…注液口、12…溶着部、13…溶着痕、21…正極シール部、22…負極シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、正極及び負極を有する電極体と、
前記筐体に設けられ、前記電極体の正極に電気的に接続された正極端子と、
前記筐体に設けられ、前記電極体の負極に電気的に接続された負極端子と、
前記筐体の内部に設けられ、前記電極体の正極と前記正極端子との電気的な接続及び前記電極体の負極と前記負極端子との電気的な接続を可能に、前記電極体を電解液と共に包み込む袋状の絶縁シートと、
を備えることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記正極端子と前記筐体との間を封止する正極シール材と、
前記負極端子と前記筐体との間を封止する負極シール材と、
を備え、
前記絶縁シートは前記正極シール材及び前記負極シール材に溶着されていることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記絶縁シートは、
前記正極端子と前記筐体との間を封止する正極シール部と、
前記負極端子と前記筐体との間を封止する負極シール部と、
を有していることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
前記絶縁シートは、その周縁に沿って延伸する帯状の溶着部を有しており、前記溶着部がその延伸方向に沿って折り曲げられ、前記筐体の内部に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の二次電池。
【請求項5】
蓋体に設けられた正極端子及び負極端子と電極体の正極及び負極とを同極同士で電気的に接続可能に、前記電極体を絶縁シートにより包み込む工程と、
前記電極体を包み込んだ前記絶縁シートの周縁をその一部を除いて溶着し、電解液を注入するための注液口を形成しつつ前記絶縁シートを袋状に形成する工程と、
前記袋状の絶縁シートの内部に前記注液口から電解液を注入する工程と、
前記電解液が注入された前記袋状の絶縁シートの前記注液口を閉じる工程と、
前記注液口が閉じられた前記袋状の絶縁シートを一端開口の容器本体内に設け、前記蓋体により前記容器本体の開口を塞ぎ、前記容器本体と前記蓋体とを接合する工程と、
を有することを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記電極体を前記絶縁シートにより包み込む前に、前記正極端子と前記蓋体との間を正極シール材により、前記負極端子と前記蓋体との間を負極シール材により封止する工程を有し、
前記電極体を前記絶縁シートにより包み込む工程では、前記絶縁シートを前記正極シール材及び前記負極シール材に溶着することを特徴とする請求項5記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記電極体を前記絶縁シートにより包み込む前に、前記絶縁シートとして、正極シール部及び負極シール部を有する絶縁シートを用い、前記正極端子と前記蓋体との間を前記正極シール部により、前記負極端子と前記蓋体との間を前記負極シール部により封止する工程を有することを特徴とする請求項5記載の二次電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−12428(P2013−12428A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145327(P2011−145327)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】