説明

二次電池装置、二次電池装置の製造方法

【課題】
機械的な方法による電池セルの位置決定では、筐体の設計可能範囲が絞られ、製造誤差などによる各電池セルの大きさの違いが一定以上となる場合は対応することができなかった。本二次電池装置は、各電池セルの大きさの個体差が大きい場合であっても電池セルを筐体への格納を可能とし、より小型かつ耐久性に優れた電池装置を提供する。
【解決手段】
本実施形態の二次電池装置は、筐体と、前記筐体内に収容された複数の電池セルと、前記電池セルと接着する接着剤と、前記筐体は、前記電池セルに対抗する内面と、を備え、
前記電池は、金属を主成分とした外缶をもち、前記筐体は、樹脂を構成分子の主成分とする二次電池装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の二次電池セルを有する二次電池装置、二次電池装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の二次電池セルを有する二次電池装置では、各電池セルの位置を保持するために各電池セルを格納する筐体自体をネジなどで締め付ける事により行われていた。
【0003】
また、複数の二次電池セルを有する二次電池装置において各電池セルを格納する筐体には、剛性を保つため一定以上の厚みのあるアッパーケースとロワーケースとを接続するセンターケースが利用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002―33086
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機械的な方法による電池セルの位置決定では、筐体の設計可能範囲が絞られ、製造誤差などによる各電池セルの大きさの違いが一定以上となる場合は対応することができなかった。
【0006】
そこで、本実施形態の二次電池装置は、各電池セルの大きさの個体差が大きい場合であっても電池セルを筐体への格納を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の二次電池装置は、筐体と、前記筐体内に収容された複数の電池セルと、前記電池セルと接着する接着剤と、前記筐体は、前記電池セルに対抗する内面と、前記内面に形成され前記電池を収容する係合溝と備え、
前記電池は、金属を主成分とした外缶をもち、前記筐体は、樹脂を構成分子の主成分とする二次電池装置。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る二次電池装置を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態に係る二次電池装置の分解斜視図。
【図3】第1の実施形態に係る二次電池装置の長手方向断面図。
【図4】第1の実施形態に係る接着剤のせん断弾性率の温度特性の一例と対数減衰率の温度特性の一例を示す図。
【図5】第1の実施形態に係る接着剤のDSCサーモグラフの一例を示す図。
【図6】第2の実施形態に係る二次電池装置を示す斜視図。
【図7】第2の実施形態に係る二次電池装置の分解斜視図。
【図8】第2の実施形態に係る二次電池装置の長手方向断面図。
【図9】第2の実施形態に係る二次電池装置の変形例を示す斜視図。
【図10】第2の実施形態に係る二次電池装置の変形例の分解斜視図。
【図11】第2の実施形態に係る二次電池装置の長手方向断面図の変形例。
【図12】第2の実施形態に係る二次電池装置の長手方向断面図の変形例。
【図13】第2の実施形態に係る二次電池装置の変形例を示す斜視図。
【図14】第3の実施形態に係る二次電池装置を示す斜視図。
【図15】第3の実施形態に係る二次電池装置の分解斜視図。
【図16】第3の実施形態に係る電池セルの斜視図。
【図17】第3の実施形態に係る二次電池装置の長手方向断面図。
【図18】第3の実施形態に係る二次電池装置の長手方向断面図の変形例。
【図19】第3の実施形態に係る二次電池装置の長手方向断面図の変形例。
【図20】第4の実施形態に係る電池セルの斜視図。
【図21】第4の実施形態に係る電池セルの斜視図。
【図22】第4の実施形態に係る電池セルの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1乃至図5を用いて本実施形態について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る二次電池装置の外観を示す斜視図、図2は、ケース、電池セルを分解して示す二次電池装置の分解斜視図である。
【0012】
図1、図2に示すように、二次電池装置は、ほぼ矩形箱状のケース(筺体)10と、ケース内に収容された複数、例えば、10個の電池セル(二次電池)12と、を備え、組電池として構成されている。
【0013】
ケース10は、上下が開放した矩形枠状のセンターケース14、矩形板状に形成され底壁を構成するロワーケース16、および、矩形板状に形成され天井壁を構成するアッパーケース18の3つの分割部材を有している。そして、ロワーケース16、センターケース14、アッパーケース18をこの順で互いに接合することにより、矩形箱状のケース10が構成されている。ケース10の各構成要素は、それぞれ絶縁性を有する合成樹脂、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)により形成されている。
【0014】
各電池セル12は、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された扁平な略直方体形状の外装容器と、外装容器内に非水電解液と共に収納された電極体と、を備えている。外装容器は、上端が開口した容器本体と、容器本体に溶接され容器本体の開口を閉塞した矩形板状の蓋体とを有し、液密に形成されている。電極体は、例えば、正極板および負極板をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回し、更に、径方向に圧縮することにより、偏平な矩形状に形成されている。
【0015】
容器本体の周囲には、容器の上端部および下端部を除いて、絶縁性のフィルムが巻装されている。このフィルムは、外装容器の膨張を規制するとともに、外装容器と他の電池セル12との短絡、あるいは、外装容器と他の部材との短絡を防止する。
【0016】
図2に示すように、ロワーケース16の内面には、電池セル12の数に対応した数、ここでは、10個の係合溝38が形成されている。各係合溝38は、電池セル12の外装容器の断面形状に対応した細長い矩形状に形成され、ロワーケース16の幅方向に沿って延びている。複数の係合溝38は、ロワーケース16の長手方向に所定の間隔を置いて、1列に並んで設けられている。
【0017】
センターケース14は、矩形枠状に形成され、長手方向に延び互いに対向する一対の側壁と、幅方向に延び互いに対向する他の一対の側壁を有している。
【0018】
図2、図3に示すようにアッパーケース18の内面側には、電池セル12の数に対応した数、ここでは、10個の係合溝54が形成されている。各係合溝54は、電池セル12の外装容器の断面形状に対応した細長い矩形状に形成され、アッパーケース18の幅方向に沿って延びている。複数の係合溝54は、アッパーケース18の長手方向に所定の間隔を置いて、2列に並んで設けられている。
【0019】
アッパーケース18において、各係合溝54の底には、電池セル12の正極端子32aおよび負極端子32bに対応する矩形状の透孔56a、56bが形成され、更に、電池セル12の安全弁に対向する排気孔57が形成されている。
【0020】
上記のように構成されたロワーケース16は、センターケース14の下面側にねじ止めされてセンターケースに固定され、ケース10の底壁を構成している。アッパーケース18は、センターケース14の上面側にねじ止めされてセンターケースに固定され、ケース10の天井壁を構成している。センターケース14は、隙間を置いて対向するロワーケース16とアッパーケース18との間に接合されている。
【0021】
図3に示すように、電池セル12は、セルユニットC毎にケース10の収容室内に収容されている。各電池セル12の下端部は、ロワーケース16の係合溝38に嵌合され、接着剤100によりロワーケース16に固定されている。各電池セル12の上端部、つまり、電極端子が設けられている端部は、アッパーケース18の係合溝54に嵌合され、接着剤100によりアッパーケース18に固定されている。
【0022】
このように係合溝38、54に嵌合させて電池セル間の位置が決まると、隣合う電池セルは、その外装容器30の主面同士、すなわち、外装容器の幅の広い表面同士が所定の隙間を置いて平行に対向した状態で配置される。隣合うセルユニットCも所定の隙間を置いて、平行に対向して配置される。そして、このような隙間を置いて平行に並んだ複数の電池セル12の列が、1列平行に配置される。
【0023】
電池セル12の正極端子32aおよび負極端子32bは、それぞれ透孔56a、56bに挿通され、アッパーケース18の上面側に突出している。そして、各列のセルユニットはバスバー(図示しない)によって連結され、組電池を構成する。
【0024】
本実施形態において、接続金具としてのバスバーは、導電材料、例えば、アルミニウム等からなる金属板を折曲げ成形して形成されている。
【0025】
接着剤100は、図4に示すように、摂氏−40度〜80度にガラス転移点が存在せず、引っ張りせん断強度が1N/mm以上の強度を有する接着剤を用いて電池セルと筐体とを固定する。つまりTemp−Tδにてピークが存在していない。または、図5に示すようにDSCでDDSCピークが存在しない。
【0026】
なお、接着剤として加水分解性珪素含有基を有する有機重合体を用いて硬化する接着剤(代表的には加水分解性シリル基)、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤が耐候性に優れ、好適である。
【0027】
中でも加水分解性珪素含有基を有する有機重合体を用いて硬化する接着剤は通常使用温度範囲で安定なゴム弾性状を維持し、外から加わる振動や衝撃の吸収性に優れるためより好適である。
【0028】
また加水分解性珪素含有基を有する有機重合体を用いて硬化する接着剤は電池セルと外装材の接着においては、その安定なゴム弾性により線膨張係数差によるひずみや冷熱サイクルに対するひずみも吸収できるため、振動、衝撃、冷熱サイクルなどの環境変化耐久性に優れた二次電池装置を提供することができる。
【0029】
さらに加水分解性珪素含有基を有する有機重合体を用いて硬化する接着剤とエポキシ系の接着剤が混合された接着剤はゴム弾性や耐候性を維持したまま接着強度を大きくできるため、より好適である。
【0030】
その他、電池や金属製筐体と接着剤との接着を考慮するとシランカップリング剤が含まれる接着剤が接着強度が大きくなるため好適である。
【0031】
その他、硬化前の接着剤にカルボン酸金属塩、有機スズ化合物、有機アルミニウム、有機ジルコニウム化合物などの有機金属化合物を含むものが接着強度が大きくなるため好適である。
【0032】
(第2の実施形態)
図6乃至図12を用いて本実施形態について説明する。
【0033】
図6は、実施形態に係る二次電池装置の外観を示す斜視図、図7は、ケース、電池セルを分解して示す二次電池装置の分解斜視図である。
【0034】
図6、図7に示すように、二次電池装置は、ほぼ矩形箱状のケース(筺体)10と、ケース内に収容された複数、例えば、10個の電池セル(二次電池)12と、を備え、組電池として構成されている。
【0035】
ケース10は、上下が開放した矩形枠状のセンターケース14、矩形板状に形成され底壁を構成するロワーケース16、および、矩形板状に形成され天井壁を構成するアッパーケース18の3つの分割部材を有している。そして、ロワーケース16、センターケース14、アッパーケース18をこの順で互いに接合することにより、矩形箱状のケース10が構成されている。ケース10の各構成要素は、それぞれ絶縁性を有する合成樹脂、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)により形成されている。
【0036】
各電池セル12は、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された扁平な略直方体形状の外装容器と、外装容器内に非水電解液と共に収納された電極体と、を備えている。外装容器は、上端が開口した容器本体と、容器本体に溶接され容器本体の開口を閉塞した矩形板状の蓋体とを有し、液密に形成されている。電極体は、例えば、正極板および負極板をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回し、更に、径方向に圧縮することにより、偏平な矩形状に形成されている。
【0037】
容器本体の周囲には、容器の上端部および下端部を除いて、絶縁性のフィルムが巻装されている。このフィルムは、外装容器の膨張を規制するとともに、外装容器と他の電池セル12との短絡、あるいは、外装容器と他の部材との短絡を防止する。
【0038】
図6に示すように、ロワーケース16の内面には、電池セル12の数に対応した数、ここでは、10個の係合溝38が形成されている。各係合溝38は、電池セル12の外装容器の断面形状に対応した細長い矩形状に形成され、ロワーケース16の幅方向に沿って延びている。複数の係合溝38は、ロワーケース16の長手方向に所定の間隔を置いて、1列に並んで設けられている。
【0039】
センターケース14は、矩形枠状に形成され、長手方向に延び互いに対向する一対の側壁と、幅方向に延び互いに対向する他の一対の側壁を有している。
【0040】
図7、図8に示すようにアッパーケース18の内面側には、電池セル12の数に対応した数、ここでは、10個の係合溝54が形成されている。各係合溝54は、電池セル12の外装容器の断面形状に対応した細長い矩形状に形成され、アッパーケース18の幅方向に沿って延びている。複数の係合溝54は、アッパーケース18の長手方向に所定の間隔を置いて、2列に並んで設けられている。
【0041】
アッパーケース18において、各係合溝54の底には、電池セル12の正極端子32aおよび負極端子32bに対応する矩形状の透孔56a、56bが形成され、更に、電池セル12の安全弁に対向する排気孔57が形成されている。
【0042】
上記のように構成されたロワーケース16は、センターケース14の下面側にねじ止めされてセンターケースに固定され、ケース10の底壁を構成している。アッパーケース18は、センターケース14の上面側にねじ止めされてセンターケースに固定され、ケース10の天井壁を構成している。センターケース14は、隙間を置いて対向するロワーケース16とアッパーケース18との間に接合されている。
【0043】
図8に示すように、電池セル12は、セルユニットC毎にケース10の収容室内に収容されている。各電池セル12の下端部は、ロワーケース16の係合溝38に嵌合され、接着剤100によりロワーケース16に固定されている。各電池セル12の上端部、つまり、電極端子が設けられている端部は、アッパーケース18の係合溝54に嵌合され、接着剤100によりアッパーケース18に固定されている。
【0044】
このように係合溝38、54に嵌合させて電池セル間の位置が決まると、隣合う電池セルは、その外装容器30の主面同士、すなわち、外装容器の幅の広い表面同士が所定の隙間を置いて平行に対向した状態で配置される。隣合うセルユニットCも所定の隙間を置いて、平行に対向して配置される。そして、このような隙間を置いて平行に並んだ複数の電池セル12の列が、1列平行に配置される。
【0045】
電池セル12の正極端子32aおよび負極端子32bは、それぞれ透孔56a、56bに挿通され、アッパーケース18の上面側に突出している。そして、各列のセルユニットはバスバー(図示しない)によって連結され、組電池を構成する。
【0046】
本実施形態において、接続金具としてのバスバーは、導電材料、例えば、アルミニウム等からなる金属板を折曲げ成形して形成されている。
【0047】
接着剤100は、電池セルに対して2箇所以上に分けて塗布して利用する。例えば、図8、図10、図11、図12に示すように電池セル12を筐体10に設置した場合のアッパーケースとロワーケース側に分けて塗布する。他に図13に示すように電池セル12の対角線の交点を除くように塗布(3か所以上に塗布)してもよい。このようにすることにより電池セルの変形しやすい部分除いた部分で接着剤を利用することで、組電池の強度を上げることができる。
【0048】
また、電池セルの大きさが異なる場合でも電池セルの端子がついている上面の高さあわせが可能となる。
【0049】
また、矩形二次電池の上部と下部に接着剤を塗布することで端子間の距離を一定に保ち、バスバーにかかる荷重を緩和するとともに、膨張による変形を許容することができる。
【0050】
また、接着剤は空気に比べて熱伝導率が大きいため、接着剤で電池間を構造的に繋ぐことで、電池間の熱伝達が促され、筐体内で温度を一様にする効果が得られる。
【0051】
さらに、接着時のみならず万が一接着剤が剥離した後も、緩衝材としての役割を担い、電池セル同士の衝突による破壊の確率を低減することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
図14乃至図19を用いて本実施形態について説明する。
【0053】
図14は、実施形態に係る二次電池装置の外観を示す斜視図、図15は、ケース、電池セルを分解して示す二次電池装置の分解斜視図である。
【0054】
図14、図15に示すように、二次電池装置は、ほぼ矩形箱状のケース(筺体)10と、ケース内に収容された複数、例えば、10個の電池セル(二次電池)12と、を備え、組電池として構成されている。
【0055】
ケース10は、上下が開放した矩形枠状のセンターケース14、矩形板状に形成され底壁を構成するロワーケース16、および、矩形板状に形成され天井壁を構成するアッパーケース18の3つの分割部材を有している。そして、ロワーケース16、センターケース14、アッパーケース18をこの順で互いに接合することにより、矩形箱状のケース10が構成されている。ケース10の各構成要素は、それぞれ絶縁性を有する合成樹脂、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)により形成されている。
【0056】
各電池セル12は、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された扁平な略直方体形状の外装容器と、外装容器内に非水電解液と共に収納された電極体と、を備えている。外装容器は、上端が開口した容器本体と、容器本体に溶接され容器本体の開口を閉塞した矩形板状の蓋体とを有し、液密に形成されている。電極体は、例えば、正極板および負極板をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回し、更に、径方向に圧縮することにより、偏平な矩形状に形成されている。端子面320は、図15に示すように組み立て時にアッパーケースと接触または接着剤100を介して接触する面である。下端面330は、端子面320と対抗しほぼ平行な面でありロワーケース16と直接または接着剤100を介して接触する面である。周囲面340は、電池のいわゆる外缶であって上記端子面と下端面を除く四面である。
【0057】
容器本体の周囲には、容器の上端部および下端部を除いて、絶縁性のフィルムが巻装されている。このフィルムは、外装容器の膨張を規制するとともに、外装容器と他の電池セル12との短絡、あるいは、外装容器と他の部材との短絡を防止する。
【0058】
図15に示すように、ロワーケース16の内面には、電池セル12の数に対応した数、ここでは、10個の係合溝38が形成されている。各係合溝38は、電池セル12の外装容器の断面形状に対応した細長い矩形状に形成され、ロワーケース16の幅方向に沿って延びている。複数の係合溝38は、ロワーケース16の長手方向に所定の間隔を置いて、1列に並んで設けられている。
【0059】
センターケース14は、矩形枠状に形成され、長手方向に延び互いに対向する一対の側壁と、幅方向に延び互いに対向する他の一対の側壁を有している。
【0060】
図15に示すようにアッパーケース18の内面側には、電池セル12の数に対応した数、ここでは、10個の係合溝54が形成されている。各係合溝54は、電池セル12の外装容器の断面形状に対応した細長い矩形状に形成され、アッパーケース18の幅方向に沿って延びている。複数の係合溝54は、アッパーケース18の長手方向に所定の間隔を置いて、2列に並んで設けられている。
【0061】
アッパーケース18において、各係合溝54の底には、電池セル12の正極端子32aおよび負極端子32bに対応する矩形状の透孔56a、56bが形成され、更に、電池セル12の安全弁に対向する排気孔57が形成されている。
【0062】
上記のように構成されたロワーケース16は、センターケース14の下面側にねじ止めされてセンターケースに固定され、ケース10の底壁を構成している。アッパーケース18は、センターケース14の上面側にねじ止めされてセンターケースに固定され、ケース10の天井壁を構成している。センターケース14は、隙間を置いて対向するロワーケース16とアッパーケース18との間に接合されている。
【0063】
図15に示すように、電池セル12は、セルユニットC毎にケース10の収容室内に収容されている。各電池セル12の下端部は、ロワーケース16の係合溝38に嵌合され、接着剤100によりロワーケース16に固定されている。各電池セル12の上端部、つまり、電極端子が設けられている端部は、アッパーケース18の係合溝54に嵌合され、接着剤100によりアッパーケース18に固定されている。
【0064】
このように係合溝38、54に嵌合させて電池セル間の位置が決まると、隣合う電池セルは、その外装容器30の主面同士、すなわち、外装容器の幅の広い表面同士が所定の隙間を置いて平行に対向した状態で配置される。隣合うセルユニットCも所定の隙間を置いて、平行に対向して配置される。そして、このような隙間を置いて平行に並んだ複数の電池セル12の列が、1列平行に配置される。
【0065】
電池セル12の正極端子32aおよび負極端子32bは、それぞれ透孔56a、56bに挿通され、アッパーケース18の上面側に突出している。そして、各列のセルユニットはバスバー(図示しない)によって連結され、組電池を構成する。
【0066】
本実施形態において、接続金具としてのバスバーは、導電材料、例えば、アルミニウム等からなる金属板を折曲げ成形して形成されている。
【0067】
接着剤100は、電池セルに対してアッパーケースとの接続およびロワーケースとの接続箇所の2箇所以上に分けて塗布して利用する。例えば、図17、図18、図19に示している。このよう電池セルを二次電池装置の梁として利用することができ、モジュールに加わる力がケース−接着剤−電池セルとなることで電池モジュール(二次電池装置)全体の強度を保つことができる。これにより、センターケース14の厚みを薄くしても必要強度を確保することができるようになる。
【0068】
例えば、図17に示したようにアッパーケースとは電池セル12の端子面、周囲面に塗布した接着剤を介して、ロワーケースとは下端面と周囲面とに塗布した接着剤を介して接着する。
【0069】
他に、図18に示したように、アッパーケースとは電池セル12の周囲面に塗布した接着剤を介して、ロワーケースとは下端面と周囲面に塗布した接着剤とを介して接着する。このように端子面には接着剤を塗布しない。各電池セル12の端子面と下端面の高さの違いに柔軟に対応することができる。
【0070】
他に、図19に示すように、アッパーケースとは電池セル12の端子面の周囲面側に一部と付した接着剤と、周囲面に塗布した接着剤を介して、ロワーケースとは下端面の周囲面側に一部と付した接着剤と、周囲面に塗布した接着剤とを介して接着する。このように電池セルの角部を固定することに強度を保ちながらも電池セルの変形にも柔軟に対応できる。
【0071】
また、矩形二次電池の上部と下部に接着剤を塗布することで端子間の距離を一定に保ち、バスバーにかかる荷重を緩和するとともに、膨張による変形を許容することができる。
【0072】
また、接着剤は空気に比べて熱伝導率が大きいため、接着剤で電池間を構造的に繋ぐことで、電池間の熱伝達が促され、筐体内で温度を一様にする効果が得られる。
【0073】
さらに、接着時のみならず万が一接着剤が剥離した後も、緩衝材としての役割を担い、電池セル同士の衝突による破壊の確率を低減することができる。
【0074】
このように複数のケース部材(アッパーケースやロワーケースなど)と電池セルをそれぞれ各個に接着剤で固定することにより、電池セル自身をモジュール構造の梁として利用することができ、モジュールに加わる力が、ケースと、接着剤と、セルを伝わりモジュール全体にかかる力を分散することができる。これにより、ケースの肉厚を薄くしてもモジュール全体の強度を保つことができ、長期にわたって構造強度を維持することができる。また、従来と同じ強度とするためにより少ない部材でモジュールの構成をすることができる。
【0075】
(第4の実施形態)
図20乃至図22を用いて本実施形態について説明する。
【0076】
図20、図21、図22は、第4の実施形態に係る電池セルの斜視図である。
【0077】
本実施形態では電池セル12を固定するために、接着剤100の塗布される位置を特定している。なお、本実施形態では電池セル12に接着剤100を塗布しているように記載しているが、図20、図21に記載した位置に接着剤100が電池セル12に塗布されるようにセンターケース14、ロワーケース16、アッパーケース18に塗布してもよい。また、いずれかのケース、電池セル12双方に塗布してもよい。
【0078】
本実施形態の図20では、正極端子32a、負極端子32bを有する端子面320と、下端面330双方に長手方向に沿って2つのラインを形成するように接着剤100を塗布している。下端面330には、さらに短手方向に沿って2つのラインを形成するように接着剤100を塗布している。
【0079】
下端面330に塗布される長手方向と短手方向の接着剤のラインの合計は、端子面320に塗布される接着剤のラインよりも長い。または、下端面330に塗られる接着剤の方が端子面320に塗布される量より多い。
【0080】
本実施形態の図20では、正極端子32a、負極端子32bを有する端子面320と、下端面330双方に長手方向に沿って2つのラインを形成するように接着剤100を塗布している。下端面330には、さらに短手方向に沿って2つのラインを形成するように接着剤100を塗布している。
【0081】
セル12とアッパーケース18、及びセル12とロアケース16を接着剤100を用いて十分な接着力を得るために、端子面320、及び下端面330に接着剤100がどのような形状であっても一定の面積以上塗布される必要がある。
【0082】
図20のように端子面320と下端面330においては、その中心点に対して点対称状の位置、なおかつ中心点からの距離が多く取れるセルの外周部分に塗布している。これよって電池セル12にかかる並進方向・回転方向全方向の力に対してより効果的な保持力を得、より少ない接着面積で電池セルを保持することができる。
【0083】
また端子面320の接着剤については、電池セル12の変形(経時による膨れ等)の際に正極端子32a、負極端子32bの位置ズレを抑えるためにはセルの短手方向ではなく、長手方向の中心部を含む塗布位置としている。これによって電池セルが膨れてしまった場合においても端子の位置ズレが少なくなり、端子接続部への応力集中が軽減でき、電池セルが膨れてしまった場合でも耐衝撃性や耐振動性の低下が少ない電池モジュールを提供することができる。
【0084】
さらに周囲面に接着剤100を塗布してもよい。
【0085】

この他同様の効果を奏する形態として図21に示すように、端子面320と、下端面330双方に接着剤100を長手方向に沿って塗布している。端子面320に塗布された接着剤のラインの方が長く、下端面330に塗布された接着剤のラインの方が短い。また、端子面320に塗布した接着剤は、略線対象に、下端面330に塗布された接着剤は、下端面330の略中心点に対して略点対象に塗布している。
【0086】
また、図22では、端子面320では主に長手方向に接着剤を塗布し、下端面330には主に短手方向に接着剤を塗布している。端面320の長手方向の接着剤の塗布量の方が多く、下端面330の短手方向への接着剤の塗布量の方が少ない。
【0087】
(第1,2,3、4の実施形態の変形例)
第1,2,3、4の実施形態では、ケース10の各構成要素は、それぞれ絶縁性を有する合成樹脂、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)により形成されていると記載したが、これに代えて金属を用いても良い。また、金属に耐腐食性のコーティングや、絶縁コーティングをほどこしたものであってもよい。
【0088】
また、容器本体の周囲には、容器の上端部および下端部を除いて、絶縁性のフィルムが巻装されていると記載したが、この絶縁性のフィルムに代えて、各電池セル12の間に絶縁板(シート)を挟んでいてもよい。この絶縁シートは、直列関係にある電池セルの間には差し込み、並列関係にある電池セルの間については差し込まないなど挿入箇所を適宜選択してもよい。並列関係にある電池セルについては同電位にあるためこのような絶縁シートを挿入することにより絶縁シートの使用量を適切に減らすことができる。
【0089】
また、上記のように構成されたロワーケース16、センターケース14、アッパーケース18とは、ネジ止めされていると記載したが、必ずともネジ止めする必要はない。ロワーケース16、センターケース14、アッパーケース18、電池セル12が接着剤を介して接続されている場合十分な強度が得られるためである。このようにネジを利用しないことにより二次電池装置全体としての体積効率、生産性があがることはいうまでもない。
【0090】
また、本実施形態では、係合溝38に電池セル12の一部を挿入しているが、必ずしも挿入しなくても良いし、係合溝38自体を設けないことも可能である。また、係合溝38の数と、設置する電池セル12の数は必ずしも同じである必要はなく、係合溝が10個に対して電池セルが9個であってもよい。
【0091】
なお、この発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨
を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されて
いる複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施の形態に
示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態にわたる
構成要素を適宜組み合わせてもよい。例えば、セルユニットは、10個に限らず、必要に応じて増減可能である。
【符号の説明】
【0092】
10…ケース(筐体)、12…電池セル、14…センターケース、 16…ロワーケース、18…アッパーケース、32a…正極端子、32b…負極端子、100…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に収容された複数の電池セルと、
前記電池セルと接着する接着剤と、
前記電池は、
金属を主成分とした外缶をもち、
前記筐体は、
樹脂を構成分子の主成分とする
二次電池装置。
【請求項2】
筐体と、
前記筐体内に収容された複数の電池セルと、
前記電池セルと接着する接着剤と、
前記筐体は、前記電池セルに対抗する内面と、前記内面に形成され前記電池を収容する係合溝と備え
前記電池は、
金属を主成分とした外缶をもち、
前記筐体は、
樹脂を構成分子の主成分とする
二次電池装置。
【請求項3】
前記接着剤のガラス転移点は、−40℃以下または80℃以上であり、
前記接着剤の軟化点が、−40℃以下または80℃以上であり、
前記接着剤の引っ張りせん断強度が1N/mm2以上の強度を有する
請求項2記載する二次電池装置。
【請求項4】
筐体と、
前記筐体内に収容された複数の電池セルと、
前記電池セルと前記筐体を接続する接着剤と、
前記筐体は、前記電池セルに対抗する内面と、前記内面に形成され前記電池を収容する係合溝とを備える二次電池装置の製造方法であって、
前記筐体の係合溝に前記電池セルを挿入し、
前記係合溝と前記電池セルを接着剤を用いて固定する
二次電池装置の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤は、
前記接着剤のガラス転移点は、−40℃以下または80℃以上であり、
前記接着剤の軟化点が、−40℃以下または80℃以上であり、
前記接着剤の引っ張りせん断強度が1N/mm2以上の強度を有する
請求項4に記載する二次電池装置の製造方法。
【請求項6】
筐体と、
前記筐体内に収容された複数の電池セルと、
前記電池セルを固定する接着剤と、を備え
前記接着剤は、二箇所以上に分けて前記電池セルと電池セルとを固定する
二次電池装置。
【請求項7】
前記筐体は
電池セルの端子面を保持するアッパーケースと、電池の下端部を支えるロワーケースとを備え、
前記接着剤は、
前記電池セルと前記アッパーケースとを一箇所以上で接続し、
前記電池セルと前記ロワーケースとを前記一箇所と電池セルの中心を挟んで対称となる箇所にて接続する
請求項1に記載する二次電池装置。
【請求項8】
前記筐体は、
前記電池セルに対抗する内面と、前記内面に形成され前記電池を収容する係合溝とを備え
前記接着剤は、
前記係合溝と前記電池セルと他の電池セルを固定する
二次電池装置
【請求項9】
筐体と、
前記筐体内に収容された複数の電池セルと、
前記電池セルと前記筐体を接続する接着剤と、
前記筐体は、電池セルの端子面を保持するアッパーケースと、電池の下端部を支えるロワーケースとを備える二次電池装置の製造方法であって、
前記電池セルに二箇所以上に分けて前記接着剤を塗布し、端子面の高さを同一とし
前記筐体に前記電池セルを挿入する
二次電池装置の製造方法。
【請求項10】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの端子面方向から保持するアッパーケースと、
前記複数の電池セルを下端部方向から支持するロワーケースと、
前記電池セルとアッパーケースまたはロワーケースを接着する接着剤と、を備え
前記電池セルは、前記アッパーケースを前記接着剤を介して支持する
二次電池装置。
【請求項11】
前記接着剤は、
前記電池セルの端子面と、前記電池セルの下端面に塗布され、
前記アッパーケースは、
前記ロワーケースに、前記セルの下端面に塗布された接着剤と前記電池セルと前記セルの端子面に塗布された接着剤を介して支持される
請求項2に記載する二次電池装置。
【請求項12】
前記アッパーケースは、リブを備え
前記接着剤は、
前記電池セルの周囲面と、前記電池セルの下端面に塗布され、
前記アッパーケースは、
前記ロワーケースに、前記電池セルの下端面に塗布された接着剤と前記電池セルと前記セルの周囲面に塗布された接着剤を介して支持される
請求項2に記載する二次電池装置。
二次電池装置。
【請求項13】
前記接着剤は、
前記電池セルの端子面と、前記電池セルの周囲面と、前記電池セルの下端面に塗布され、
前記アッパーケースは、
前記ロワーケースに、前記電池セルの下端面に塗布された接着剤と前記電池セルと前記セルの周囲面に塗布された接着剤を介して支持され、
前記ロワーケースに、前記電池セルの下端面に塗布された接着剤と前記電池セルと前記セルの端子面に塗布された接着剤を介して支持される
請求項2に記載する二次電池装置。
【請求項14】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの端子面方向から保持するアッパーケースと、
前記複数の電池セルを下端部方向から支持するロワーケースと、
前記電池セルとアッパーケースまたはロワーケースを接着する接着剤と、
を備える二次電池装置の製造方法であって、
前記ロワーケースに差込み
前記電池セルに前記接着剤を塗布し、端子面の高さを同一とし
前記筐体に前記電池セルを挿入する
二次電池装置の製造方法。
【請求項15】
複数の電池セルと、
前記複数の電池セルの端子面方向から保持するアッパーケースと、
前記複数の電池セルを下端部方向から支持するロワーケースと、
前記電池セルとアッパーケースまたはロワーケースを接着する接着剤と、
を備える二次電池装置の製造方法であって、
前記アッパーケースおよびまたは前記ロワーケースに接着剤を塗布し
前記電池セル端子面の高さを同一とし前記筐体に前記電池セルを挿入する
二次電池装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−12464(P2013−12464A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92753(P2012−92753)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】