説明

二次電池製造方法

【課題】セパレータのカールを抑制する二次電池製造方法の提供。
【解決手段】巻回可能に支持された巻芯220でセパレータ113を挟んで固定し、巻芯220を回転させながらセパレータ113の間に正極板111と負極板112を挟んで巻回して巻回電極体110を形成し、巻回電極体110から巻芯220を取り除いて、巻回電極体110を角型の電池ケース180に挿入することで角型の二次電池100を形成する二次電池製造方法において、セパレータ113は表面に多孔質層113Bを有し、巻芯220でセパレータ113の端部を挟み、端部を巻回前に加熱する加熱工程と、巻芯220を回転させて正極板111と負極板112を挟み、巻回電極体110を形成する巻回工程と、巻回された巻回電極体110を扁平に潰す扁平化工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に用いる正極及び負極をセパレータに挟んで巻回する技術に関し、詳しくは軸芯を用いてセパレータ、正極、及び負極を巻回した際に軸芯部に固定したセパレータがカールするのを防ぐ技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の駆動力としてモータを用いるケースが増えてきている。これに伴い、車載用の電池もニッケル水素二次電池よりもエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池を用いることが検討されている。そしてリチウムイオン二次電池も、高入出力化や大容量化の要求から様々な検討がなされている。
【0003】
特許文献1には、巻回型電極の製造装置に関する技術が開示されている。これは、回転可能に軸支された巻芯と、巻芯を回転させる回転駆動機構と巻芯の回転で積層、捲装されるセパレートシート及び正極シート及び負極シートをそれぞれガイド走向させるガイドブロックと、巻芯へガイド供給するシートに張力を与える加圧ローラと、巻芯への積層、捲装によって形成された巻回体外周を圧着的に保持する保持ブロックとを有する巻回型電極の製造装置であって、ガイドブロックの少なくとも電極シートが走向摺動する面には、供給側が直線的平坦とし、巻回体に近接する領域を曲面とし、それぞれ形成している。これによって、積層を高緊縛とし高品質とできる巻回型電極を歩留まり良く製造できる製造装置が実現できる。
【0004】
特許文献2には、電池の製造方法に関する技術が開示されている。これは、帯状の正極板と負極板とをセパレータを介して巻芯を用いて渦巻き状に巻回してなる極板群と電解液を有底ケースに収納し、この有底ケースの開口部を封口板により密閉する電池の製造方法であって、巻芯及び巻芯により挟持される極板群の巻き始めのセパレータ部分を少なくとも極板群を巻芯から抜き取る時に60℃以上、セパレータの融点以下の温度で加熱するものである。これによって、極板群の巻芯部に備えられるセパレータの形状を保持することができるので、巻芯を抜いた後の工程で、電極棒の挿入や金属製の中芯の挿入の際に発生するセパレータのズレや損傷を防ぐことができる。これにより正・負極板間が短絡することを抑制出来る効果が得られる。
【0005】
特許文献3には、巻回状電極体を備えた電池の製造方法に関する技術が開示されている。これは、巻回電極体の巻芯跡空間に残存するセパレータを整形棒によって巻芯跡の内周壁に変位させる整形工程において、予め画像認識工程において、巻芯跡空間に残存するセパレータの位置及び膨らみに先端位置を認識するとともに、巻芯跡空間の最大径部に対応する外接円と、外接円と巻芯跡空間に残存するセパレータの間に形成される最大径の内接円を求めておき、整形棒を内接円の中心に挿入した後に外接円の中心に向けて移動させ、次いで、巻芯跡空間に残存するセパレータの膨らみの先端位置に向かって直接的または曲線的に移動させるものである。こうすることで、整形棒を挿入する際にセパレータを潰すことを防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001―332289号公報
【特許文献2】特開2009―193841号公報
【特許文献3】特開2010―55753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に開示される技術で角型の二次電池を製造する場合には、以下に説明する課題があると考えられる。
【0008】
車両に搭載するにあたって、特許文献2及び特許文献3に記載されるような円筒型の二次電池だけではなく、角形の二次電池も用いられる。角型の二次電池は、円筒型とは異なり、直方体の有底ケースに扁平に巻回された巻回電極体を挿入されてなる。しかし、角形の二次電池を製造する場合であっても、製造のし易さから円筒状の巻回電極体を製造した後に、巻回電極体を扁平に潰し、扁平な巻回電極体を角型のケースに挿入するという工程を経て製造される。
【0009】
ところで、非水系二次電池の製造において、高入出力化や大容量化の要求は高く、セパレータの薄膜化、高多孔化されることが望ましい。この方策の1つとしてセパレータにセラミックスを塗布する方法が提案されている。しかしながら、セラミックス等の材料をポリオレフィン等からなるセパレータに塗布すると、熱膨張係数の違いから製造工程においてカールしてしまう問題がある。しかし、特許文献1に記載の技術ではこのような課題については記載がない。また、特許文献2及び特許文献3に記載の技術では、セラミックス層に関する記載はなく、巻回電極体を扁平に潰すことを前提にしていない。
【0010】
よって、特許文献2の技術では、巻芯の端部を加熱することで巻回電極体の巻緩みを防いだり端部がタケノコ状に型崩れしたりすることを防止することが可能であると思われるが、課題が異なるため、セパレータにセラミックス層を設けた場合にもセパレータのカールの抑制に効果があるかどうかは不明である。また、特許文献3に記載の画像認識技術を用いながら、加熱した整形棒を用いてセパレータを変形させているが、カールの解消は困難であると考えられ、巻回電極体の最内周にあるセパレータがカールしたまま巻回電極体を扁平に潰す虞がある。その結果、扁平に潰した巻回電極体には厚みに不均衡な部分が発生し、巻回電極体内の面圧が不均一になったことに起因する電池性能の低下に繋がる虞がある。このため、特許文献1乃至特許文献3の技術を用いても、巻回電極体内の面圧が不均一になることを解消することは困難であると考えられる。
【0011】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、セパレータのカールを抑制することが可能な角型の二次電池製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による二次電池製造方法は以下のような特徴を有する。
【0013】
(1)巻回可能に支持された巻芯でセパレータを挟んで固定し、前記巻芯を回転させながら前記セパレータの間に正極体と負極体を挟んで巻回して巻回電極体を形成し、前記巻回電極体から前記巻芯を取り除いて、前記巻回電極体を角型の缶体に挿入することで角型の二次電池を形成する二次電池製造方法において、前記セパレータは表面に耐熱層を有し、前記巻芯で前記セパレータの端部を挟み、前記端部を巻回前に加熱する加熱工程と、前記巻芯を回転させて正極体と負極体を挟み、前記巻回電極体を形成する巻回工程と、巻回された前記巻回電極体を扁平に潰す扁平化工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
(2)(1)に記載される二次電池製造方法において、前記巻芯に加熱機構が備えられ、前記加熱工程で、前記加熱機構によって前記巻芯を加熱することで前記セパレータに対して60度以上、前記セパレータの融点以下の温度で熱が加えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような特徴を有する本発明の一態様による二次電池製造方法により、以下のような作用、効果が得られる。
【0016】
上記(1)に記載される発明の態様は、巻回可能に支持された巻芯でセパレータを挟んで固定し、巻芯を回転させながらセパレータの間に正極体と負極体を挟んで巻回して巻回電極体を形成し、巻回電極体から巻芯を取り除いて、巻回電極体を角型の缶体に挿入することで角型の二次電池を形成する二次電池製造方法において、セパレータは表面に耐熱層を有し、巻芯でセパレータの端部を挟み、端部を巻回前に加熱する加熱工程と、巻芯を回転させて正極体と負極体を挟み、巻回電極体を形成する巻回工程と、巻回された巻回電極体を扁平に潰す扁平化工程と、を有するものである。
【0017】
二次電池の巻回電極体を製造するにあたり、巻芯でセパレータを挟んで加熱することで、セパレータのカールを防ぐことができる。これは課題に示したように、セパレータはセラミックス粉末などを塗布して多孔体層を形成することで耐熱層を有している。セパレータは樹脂材料であるので、多孔体層を形成するセラミックスと、熱膨張係数が異なり、この熱膨張係数の異なる2つの層があることで、巻回電極体を製造している最中に熱膨張係数の小さい側にカールしてしまうという問題が発生する。
【0018】
しかし、巻芯でセパレータを端部から巻き始める前に、巻芯でセパレータを挟んだ状態でセパレータを加熱することでセパレータの内部応力が解放されてカールを防止できる効果を得ることができる。このため、扁平化工程において円筒状に巻回された巻回電極体を扁平形状に潰した時に、厚みに不均衡な部分が生じることを抑制することができ、結果的に角型の二次電池の性能劣化を防ぐことが可能となる。
【0019】
また、上記(2)に記載される発明の態様は、(1)に記載される二次電池製造方法において、巻芯に加熱機構が備えられ、加熱工程で、加熱機構によって巻芯を加熱することでセパレータに対して60度以上、セパレータの融点以下の温度で熱が加えられるものである。出願人の実験によって、セパレータを60度で10秒程度加熱することで、耐熱層を設けた場合でもセパレータのカールが抑えられることがわかった。60度以上でセパレータの融点以下の温度で一定時間加熱すれば、セパレータのカールが抑えられることが確認され、この結果、セパレータが溶融しない温度での加熱によってセパレータのカールが抑えられ、二次電池の性能劣化を防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の、二次電池の正面図である。
【図2】本実施形態の、二次電池の断面図である。
【図3】本実施形態の、巻回電極体の部分断面図である。
【図4】本実施形態の、巻回装置の模式図である。
【図5】本実施形態の、巻芯でセパレータを挟む際の模式斜視図である。
【図6】比較のために用意した、巻回電極体の斜視図である。
【図7】本実施形態の、巻回電極体の斜視図である。
【図8】本実施形態の、巻芯の温度と加熱時間の関係を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1に、本実施形態の二次電池100の正面図を示す。図2に、二次電池100の断面図を示す。なお、巻回電極体110は模式的に示してあり内周側を省略している。図3に、巻回電極体110の部分断面図を示す。二次電池100は、非水電解質系のリチウムイオン二次電池であり、帯状の正極板111及び負極板112がセパレータ113に挟まれて巻回された巻回電極体110を有し、電池ケース180に納められてなる。
【0023】
正極板111は集電箔111Aとして15μm程度の厚みのアルミニウム箔を用いており、その集電箔111Aの表面に正極活物質111Bが塗布されている。正極活物質111Bはニッケル、コバルト、マンガンを主成分としたものが用いられる。負極板112は集電箔112Aとして10μm程度の厚みの銅箔を用いており、集電箔112Aの表面に負極活物質112Bが塗布されている。負極活物質112Bはグラファイトを主成分としたものが用いられる。
【0024】
セパレータ113は第1セパレータ113aと第2セパレータ113bの2枚が用いられる。セパレータ113はポリオレフィン系の単層セパレータ113Aが用いられ厚みは20μm程度である。セパレータ113の表面の一方にはアルミナ等の耐熱性に優れたセラミックス粉末を用いた無機フィラーであり、多孔質層113Bを形成している。したがって、セパレータ113は単層の単層セパレータ113Aと多孔質層113Bとの2層構造となっている。なお、第1セパレータ113aと第2セパレータ113bは便宜上呼び分けるが同じものである。
【0025】
これら、正極板111、負極板112、セパレータ113が巻回されたものが、巻回電極体110であり、巻回電極体110は電池ケース180に納められている。
【0026】
電池ケース180は、共にアルミニウム製の電池ケース本体181及び封口蓋182を有している。このうち電池ケース本体181は有底矩形箱形のいわゆる角型のケースであり、この角型の電池ケース180と巻回電極体110との間には、図示しない箱状に折り曲げた樹脂製の絶縁フィルムが介在させてある。また、封口蓋182は矩形板状であり、巻回電極体110を挿入した電池ケース本体181の開口を閉塞して、この電池ケース本体181に溶接される。この封口蓋182には、巻回電極体110と接続する正極集電部材191及び負極集電部材192が備えられる。
【0027】
正極集電部材191の先端に位置する正極端子部191A及び負極集電部材192の先端に位置する負極端子部192Aは、封口蓋182を貫通し、蓋表面182aから突出して保持される。正極端子部191A及び負極端子部192Aと封口蓋182との間には、それぞれ絶縁性の樹脂からなる絶縁部材195が介在し、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋182には矩形板状の安全弁197も封着されている。
【0028】
巻回電極体110は電池ケース本体181に納められる際に、図2に示すように扁平に潰されて納められる。巻回電極体110の正極板111は正極集電部材191の一端に接続され、負極板112は負極集電部材192の一端に接続される。
【0029】
巻回電極体110は、図3に示すように外周側から第1セパレータ113a、負極板112、第2セパレータ113b、正極板111と順番に配置されるように複数周巻回されている。正極板111及び負極板112の短手方向には未塗工部が設けられており、未塗工部側が正極集電部材191及び負極集電部材192側に配置されるように巻回されている。そして、セパレータ113は正極板111及び負極板112を切り分けるように配置された上で、巻回電極体110の最外周にセパレータ113が複数周巻回されて形成されている。
【0030】
次に、巻回電極体110を製造する巻回装置200の説明を行う。図4に、巻回装置200の模式図を示す。巻回装置200は、正極供給リール241、負極供給リール243、第1セパレータ供給リール242、第2セパレータ供給リール244を備え、巻芯220が回転することで巻回電極体110を形成する装置である。正極供給リール241には帯状正極211が、正極活物質111Bが塗工された状態で巻かれている。負極供給リール243には帯状負極213が、負極活物質112Bが塗工された状態で巻かれている。なお帯状正極211と正極板111、帯状負極213と負極板112はそれぞれ同一のものであるが、帯状正極211及び帯状負極213は、正極板111及び負極板112の長さよりも長いので、便宜上呼び分けることとしている。
【0031】
また、第1セパレータ供給リール242及び第2セパレータ供給リール244には第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214が、それぞれ多孔質層113Bが塗工された状態で巻かれている。そして、第1帯状セパレータ212は、第1セパレータ113aに、第2帯状セパレータ214は第2セパレータ113bに対応する。第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214も、帯状正極211及び帯状負極213と同様に、巻かれる長さが違っているので便宜的に呼び分けている。
【0032】
巻回装置200には、張力調整機構250、エッジ検出部252、補正機構254、押付部材230が、制御部260と電気的に接続されて備えられている。張力調整機構250はテンションローラ247と、ダンサーローラ248が備えられ、制御部260に接続される揺動検出部264と付勢手段248bによって、揺動軸248a、揺動支持点248c、第1ローラ248d、第2ローラ248e及びテンションローラ247を連携させて、帯状正極211の張力を調整している。また、この張力調整機構250によって帯状正極211の張力をコントロールすることで、第1帯状セパレータ212、帯状負極213及び第2帯状セパレータ214の張力も間接的にコントロールすることが可能となる。
【0033】
エッジ検出部252は巻芯220に巻き取られる帯状正極211の縁部の位置を検出する装置である。補正機構254は巻芯220に巻き取られる帯状正極211の幅方向の位置を補正する機構である。帯状正極211の位置を制御することで、第1帯状セパレータ212、帯状負極213、第2帯状セパレータ214の位置も制御することが可能である。この他に、制御部260に接続される外径検出部262、張力検出部266、設定部281、282、283等や、押付部材230に備えられたローラ232やアクチュエータ234によって、巻回電極体110の巻回が制御される。詳しくは特開2010−55962号公報などを参照されたい。
【0034】
図5に、巻芯220でセパレータ113を挟む際の模式斜視図を示す。巻芯220は接続されるアクチュエータ222によって回転されるが、この巻芯220は、図5に示すように中央で2分割出来る機構となっており、この隙間Sに第1帯状セパレータ212と第2帯状セパレータ214とを挟んで固定する。この後、巻芯220に内蔵されるヒータ221によって第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を所定時間加熱する。加熱温度は第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の隙間Sで挟まれた部分の温度が60度で10秒間保持されるように設定される。温度の管理は巻芯220の内部に用意される温度計223を用いフィードバック制御をして一定に保つように制御される。
【0035】
加熱後、巻芯220をアクチュエータ222によって回転させながら帯状正極211及び帯状負極213を挟んで、巻回電極体110を巻回する。最終的には帯状正極211及び帯状負極213を所定の位置で切断し、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を更に数周巻いて切断し、テープなどを用いて第1帯状セパレータ212又は第2帯状セパレータ214を固定することで、巻回電極体110を形成する。この巻回電極体110を扁平に潰して角型の電池ケース180に封入することで、二次電池100が形成される。
【0036】
本実施形態の二次電池100の製造方法は上記構成であるので、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
【0037】
本実施形態の二次電池100の製造方法の態様は、巻回可能に支持された巻芯220でセパレータ113を挟んで固定し、巻芯220を回転させながらセパレータ113の間に正極板111と負極板112を挟んで巻回して巻回電極体110を形成し、巻回電極体110から巻芯220を取り除いて、巻回電極体110を角型の電池ケース180に挿入することで角型の二次電池100を形成する二次電池製造方法において、セパレータ113は表面に多孔質層113Bを有し、巻芯220でセパレータ113の端部を挟み、端部を巻回前に加熱する加熱工程と、巻芯220を回転させて正極板111と負極板112を挟み、巻回電極体110を形成する巻回工程と、巻回された巻回電極体110を扁平に潰す扁平化工程と、を有するものである。
【0038】
その効果としては、まず、セパレータ113のカールを抑えることが可能である点が挙げられる。図6に、比較のために用意した巻回電極体110の斜視図を示す。図7に、本実施形態の巻回電極体110の斜視図を示す。巻回電極体110の内側にはセパレータ113の巻き始めにあたる端部があり、図6にはカール部120が、図7には中心部121が配置されている。なお、図6及び図7において、セパレータ113が外周側に巻回され正極板111の端部がセパレータ113よりはみ出して巻回されている様子が示されているが、これは正極板111の集電部分となる未塗工部である。負極板112も同様に未塗工部が形成されこれは正極板111とは反対側に突出するように配置されている。
【0039】
巻芯220を2つ割構造として、セパレータ113の端部を挟み込んだ上でヒータ221により加熱することで、図7に示すような中心部121を形成することができ、図6に示したようなカール部120を生じることを防ぐことが出来る。これは、ヒータ221より発する熱によってセパレータ113の内部応力が開放され、かつこの際にセパレータ113が巻芯220に矯正されているので、加熱後も図7のような状態を保つことが可能となる。そして、巻回電極体110を潰す工程では、図7の中心部121を中心に挟む様にして潰すことが望ましい。すなわち、扁平化工程で図7において左右から巻回電極体110を扁平に潰し、上下に長くなるような状態とする。これにより後述する電池ケース180に扁平化した巻回電極体110を挿入した場合において、面圧の不均衡が生じるのを抑制することが可能となる。
【0040】
図8に、巻芯の温度と加熱時間の関係を表した図を示す。巻芯220によるセパレータ113の端部の加熱は、60度で10秒程度と上述しているが、実際には図8に示すように他の条件でもカール部120の発生を抑制できることが確認できている。巻芯220の設定温度を上げれば加熱時間も短時間で済む傾向にあり、セパレータ113に与える熱量に比例していると考えられる。ただし、あまり巻芯220の温度を上げすぎるとセパレータ113が溶融したり、正極板111及び負極板112の品質に影響したりする虞があるため、出来るだけ加熱温度は低温に設定し、加熱時間は短時間になるようにバランスを考えて設定することが望ましい。
【0041】
これは課題に示したようにセパレータ113にセラミックス粉末などを塗布して多孔質層113Bを形成することでセパレータ113の表面に耐熱層を有しているため、セパレータ113とセラミックスという熱膨張係数の違う二つの層ができあがる。このことで、巻回電極体110を製造している最中に熱膨張係数の小さい側にカールしてしまうという問題が生じる虞がある。しかし、巻き始める前にセパレータ113を加熱してやることで内部応力が解放されてカールを防止できる効果を得ることができる。この結果、二次電池100の性能劣化を防ぐことが可能となる。
【0042】
巻回電極体110は、電池ケース180に収められる際に扁平に潰して収める必要があるため、カール部120が発生すると巻回電極体110を扁平に潰しきれずに、電池ケース180の開口部から巻回電極体110が挿入できないというような事態が起きてしまう。あるいは、巻回電極体110を電池ケース180に挿入できた場合であっても、電池ケース180内では巻回電極体110のカール部120を押し潰している部分とそうでない部分で巻回電極体110にかかる面圧に差が出来てしまう。
【0043】
カールを押し潰している部分では設計より厚くなるため電池ケース180との間に強い力がかかり、圧し潰していない部分では設計通りかそれより薄いために力がかからない。このような差がでると、巻回電極体110に添加されている電解液に偏りが生じてしまい、内部でリチウムが析出してしまう虞がある。また、圧力が高いと正極板111と負極板112との距離を適切に保てなくなる虞もある。その結果、圧力がかかっている部分から巻回電極体110の劣化が生じたり、二次電池100の性能を十分に発揮できない状態となったりする。このように、二次電池100の性能や寿命に大きく影響するため、カール部120の発生を抑えることは重要である。
【0044】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
【0045】
例えば、二次電池100の形状に関して電池ケース180の構成や材質等を例示したが、これに限定される必要は無い。また、巻回装置200の構成についても例示しているが、他のシステムを用いて巻回電極体110を形成することを妨げない。更に、正極板111、負極板112、及びセパレータ113の材質等を示しているが、これも限定されるものではない。例えば、正極活物質111Bや負極活物質112Bを変更することを妨げないし、セパレータ113の材質や単層セパレータを複層のセパレータにすることを妨げない。
【符号の説明】
【0046】
100 二次電池
110 巻回電極体
111 正極板
112 負極板
113 セパレータ
113A 単層セパレータ
113B 多孔質層
180 電池ケース
200 巻回装置
211 帯状正極
212 第1帯状セパレータ
213 帯状負極
214 第2帯状セパレータ
220 巻芯
221 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回可能に支持された巻芯でセパレータを挟んで固定し、前記巻芯を回転させながら前記セパレータの間に正極体と負極体を挟んで巻回して巻回電極体を形成し、前記巻回電極体から前記巻芯を取り除いて、前記巻回電極体を角型の缶体に挿入することで角型の二次電池を形成する二次電池製造方法において、
前記セパレータは表面に耐熱層を有し、
前記巻芯で前記セパレータの端部を挟み、前記端部を巻回前に加熱する加熱工程と、
前記巻芯を回転させて正極体と負極体を挟み、前記巻回電極体を形成する巻回工程と、
巻回された前記巻回電極体を扁平に潰す扁平化工程と、を有することを特徴とする二次電池製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載される二次電池製造方法において、
前記巻芯に加熱機構が備えられ、前記加熱工程で、前記加熱機構によって前記巻芯を加熱することで前記セパレータに対して60度以上、前記セパレータの融点以下の温度で熱が加えられることを特徴とする二次電池製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−230870(P2012−230870A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100026(P2011−100026)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】