説明

二次電池負極集電体用電解銅箔及びその製造方法

【課題】高強度を有しながら、微細な単位での膨張収縮の変化に耐えられる伸び性に優れた二次電池負極集電体用電解銅箔及びその製造方法を提供する。
【解決手段】公称応力ひずみ曲線において、引張り強さが45〜70kg/mm2であり、引張り強さの値が破断応力の値よりも大きく、伸び率が5%以上である二次電池負極集電体用電解銅箔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池負極集電体用電解銅箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器の高性能化および多機能化に伴い、リチウムイオン二次電池が多く用いられている。自動車分野においても、車載用リチウムイオン二次電池の開発が進んでいる。これらに用いられるリチウムイオン二次電池の現在の最も大きな課題は高容量化であり、さまざまな取り組みがなされている。リチウムイオン電池は、非水系並びに水系電解液中に、正極及び負極を有し、正極集電体表面上に正極活物質が結着し、負極集電体表面上に負極活物質が結着された構成となっている。
【0003】
このような取り組みの中で、集電体と活物質層とを一体化した負極においても、充放電を繰り返すと、活物質層の激しい膨張および収縮により集電体と活物質層との間に応力がかかり、活物質層の脱落などが生じる場合がある。或いは集電体の破壊が生じてしまい、サイクル特性が低下する場合がある。そこで、集電体の引張り強度を所定値以上とする、或いは集電体の伸びを所定値以上として物理特性を向上させることが報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO01/029912号
【特許文献2】特開2005−135856号公報
【特許文献3】特許第4632272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サイクルに伴う活物質の膨張収縮は微細な単位で行われるため、引張り強度および伸びのような集電体のマクロ的物理特性とサイクル特性との相関のみでは評価が不十分で、これらを制御しても十分に集電体の特性を向上させることができない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、高強度を有しながら、微細な単位での膨張収縮の変化に耐えられる伸び性に優れた二次電池負極集電体用電解銅箔及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者は、電解銅箔製造時の電解液中に添加する添加剤と電解条件を適正な条件に設定して電解銅箔を製造したところ、高強度を有しながら、局部伸びにすぐれた電解銅箔が得られた。そして、得られた電解銅箔の特性を評価するために、公称応力ひずみ曲線を従来の電解銅箔と比較したところ、引張り強さ、伸び率、及び引張強さと破断応力との関係にある特徴点を見いだした。
【0008】
かかる知見を基礎として完成した本発明は一側面において、公称応力ひずみ曲線において、引張り強さが45〜70kg/mm2であり、引張り強さの値が破断応力の値よりも大きく、伸び率が5%以上である二次電池負極集電体用電解銅箔である。
【0009】
本発明に係る二次電池負極集電体用電解銅箔は一実施態様において、破断応力/引張り強さの値の比が90%以上99%以下である。
【0010】
本発明に係る二次電池負極集電体用電解銅箔は更に別の一実施態様において、200℃30分間加熱した後の引張り強さが、常態引張り強さの85%以上である。
【0011】
本発明に係る二次電池負極集電体用電解銅箔は更に別の一実施態様において、電解銅箔の厚みが6〜20μmである。
【0012】
本発明は更に別の一側面において、添加剤としてニカワを2〜5質量ppm加えた硫酸銅電解液を、電解温度60〜65℃、電流密度60〜120A/dm2で電解することにより、上記電解銅箔を製造することを含む二次電池負極集電体用電解銅箔の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高強度を有しながら、微細な単位での膨張収縮の変化に耐えられる伸び性に優れた二次電池負極集電体用電解銅箔及びその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る二次電池負極集電体用電解銅箔の公称応力ひずみ曲線(S−S曲線)の一例を示すグラフである。
【図2】無酸素銅(O材)のS−S曲線(伸銅協会ホームページより)の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る電解銅箔は、強度と伸びの特性を、公称応力ひずみ曲線(S−Sカーブ)を観察した場合に、ある特徴を有している。より具体的には、図1の実施例に示すように、公称応力ひずみ曲線(応力ひずみ線図)における最大応力である引張り強さの値が、破断したときの応力の値を示す破断応力の値よりも大きい値を示している。
【0016】
即ち、本発明の実施の形態に係る電解銅箔の常態引張り強さは、公称応力ひずみ曲線において、引張り強さが45〜70kg/mm2であり、引張り強さの値が破断応力の値よりも大きく、伸び率が5%以上である。破断応力/引張り強さの値の比は、90%以上100%未満であり、より好ましくは92〜99%、更に好ましくは95〜99%である。電解銅箔の伸び率は電解銅箔の厚みによっても異なるが、厚さ10μm程度の電解銅箔であれば、伸び率5%以上、より具体的には5〜10%、更に具体的には5〜8%もの大きな伸び率が得られる。
【0017】
本発明の実施の形態に係る電解銅箔の200℃、30分加熱処理後の引張り強さは常態引張り強さの85%以上であり、この場合においても、引張り強さの値が破断応力の値よりも大きく、伸び率が5%以上である。200℃、30分加熱処理後の電解銅箔の破断応力/引張り強さの値の比は、90%以上100%未満であり、より好ましくは92〜99%、更に好ましくは95〜99%である。200℃、30分加熱処理後の電解銅箔の伸び率は電解銅箔の厚みによっても異なるが、厚さ10μm程度の電解銅箔であれば、伸び率5%以上、より具体的には5〜10%、更に具体的には5〜8%もの大きな伸び率が得られる。
【0018】
本発明において「引張り強さ」とはIPC−TM−650に基づく引張強さ試験をした場合の値を示し、「破断応力」とは試験片が破断した場合の値を示す。本発明において電解銅箔の特性を評価するための「公称応力ひずみ曲線(応力ひずみ線図)」とは、ひずみとそれに対応する応力を表すグラフのことで、材料に一定荷重をかけ、一定速度で引張った際の応力とひずみを、同時にかつ連続的に測定する材料試験で得られたデータを用いて作成することができる。「伸び率」とは、上記試験において試験片が破断した際の変形量を示す。
【0019】
公称応力ひずみ曲線(応力ひずみ線図)は、材料の性質を理解する上での基本となるもので、材料に荷重をかけ、応力とひずみを同時にかつ連続的に測定する材料試験で得られたデータを用いて作成することができる。図2に無酸素銅の一般的な模式的な公称応力ひずみ曲線を示す。材料に対して徐々に荷重を加えていくと、応力が大きくなるにつれ、ひずみも大きくなる。そして、応力は最大応力を示した後、歪みがさらに大きくなっても応力は大きくならず、逆に下がる現象が見られる。これは、材料が伸びていくにつれて材料の一部に断面変形(くびれ)が生じ、試験片の断面積が小さくなるためである。上述した公称応力ひずみ曲線は公称応力と公称ひずみを元に線図を作成したものである。公称応力とは、荷重を変形前の断面積で割った値で、変形が進んで断面積が変化したとしても、変形前の断面積を基準にしたものである。公称ひずみについても変形量を単純に変形前の長さで割った値である。このような断面減少を考慮した「真の応力ひずみ線図」では伸びが大きくなるにつれて応力が上がる傾向になるが、本発明における真の応力ひずみ曲線は、応力は一定の傾向にある。このように、最大応力を示した後、応力が減少しつつ破断にいたる傾向の「公称応力ひずみ曲線」を有する材料は、材料の一部が断面変形(くびれ)を生じながら破断にいたる材料である。
【0020】
一方、これまでの従来の銅箔は、このような傾向にあてはまらない。図1に示すように、公称応力ひずみ曲線において2回微分値が最大値を示した後、応力は一定若しくは徐々に大きくなりながら材料のひずみが大きくなり(または伸びて)破断及び最大応力値(引張り強さ)にいたる。これは、銅箔は厚みが薄く(例えば、20μm以下)、断面変形の影響が少ないからである。例えば、伸びの少ない箔では断面変形する前に破断しやすい部分から破断する一方で、伸びのある箔は、箔全体が均一に伸びているため、断面変形が少なく、一定の伸びを示した後、破断しやすい部分から断面変形せずに破断するものと考えられる。
【0021】
これに対し、本発明の実施の形態に係る電解銅箔によれば、6〜20μmの薄い箔状であるにもかかわらず、図1の実施例に示すように、従来の電解銅箔の傾向とは異なり、最大応力を示した後、応力が減少しつつ破断にいたる傾向の「公称応力ひずみ曲線」を有する電解銅箔であり、高い強度を有しながら大きな伸びを有している。即ち、この傾向は、本発明に係る電解銅箔が、薄い箔状でありながら、最大応力を示した後、局部的に断面変形(局部伸び)を起こして大きな伸びを有し、破断にいたる電解銅箔であることを示している。
【0022】
このように、本発明に係る電解銅箔は高強度で大きな伸びを有し、さらに局部伸びの性質を有する電解銅箔となる。この高強度でありながら伸び性にも優れた本発明に係る電解銅箔の特性は、二次電池負極集電体用電解銅箔として使用する場合において、充放電の際に活物質の大きな体積変化に伴う箔にかかる大きな応力を吸収することに有利な効果を発揮するものである。特に、局部伸びに優れることは、活物質の体積膨張のばらつきを吸収する上で最も優れた特性であると考えられる。
【0023】
この特徴は、本発明の実施の形態に係る電解銅箔が、比較的大きな結晶粒と小さな結晶粒とが適正な割合で混在していることが1つの原因であるものと考えられる。
【0024】
電解銅箔の組織内の粒子形状については、電解銅箔の断面を、電子顕微鏡を用いて観察することにより評価できる。即ち、本発明の実施の形態に係る電解銅箔は、断面における結晶粒子は、アスペクト比が2.0未満である微細粒子とアスペクト比が2.0以上の柱状粒子とに分類でき、柱状粒子の面積の合計が10〜55%、残余が微細粒子である。電解銅箔に存在する微細粒子、すなわちアスペクト比が2.0未満である微細粒子の平均粒径が0.2μm以下あることが望ましい。「アスペクト比」とは、検鏡により電解銅箔の断面を観察した場合に、粒子の最大直径と最小直径との比を表したものである。比較的大きな結晶粒が大きな伸びの発現に寄与し、小さな結晶粒は強度を増加させる役割を担うものである。
【0025】
「柱状粒子の面積」とは、電解銅箔の断面において観察できるアスペクト比2.0以上の柱状粒子の面積を意味する。柱状粒子が少なすぎる場合、すなわち柱状粒子の面積率が10%未満では伸び率が小さくなり、さらに反り量が大きく場合がある。逆に、面積率が55%を超えると逆に微細粒子が相対的に少なくなるので、強度が低下する場合がある。したがって、断面を観察した場合の柱状粒子の面積の合計は断面全体の10〜55%である。
【0026】
平均粒径の下限値は特に制限はない。この微細粒子の平均粒径が大きくなる場合には、強度が低下することと、柱状粒子と微細粒子との差が小さくなることにより「最大応力を示した後、応力が減少する」という特異な公称応力ひずみ曲線が得られなくなる。したがって、微細粒子の平均粒径が0.2μm以下であることは、望ましい形態である。本発明において「平均粒径」とは銅層断面をEBSPで観察し、その観察図を線分法にて評価した場合の平均値を表す。
【0027】
本発明の実施の形態に係る電解銅箔は、上記の特徴を具備することにより、200℃30分間加熱した後の引張り強さが常態引張り強さの85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。これにより、プレス加工性、スリット加工性に優れた電解銅箔が得られる。
【0028】
本発明の実施の形態に係る電解銅箔は、従来の電解銅箔に比べて表面粗さRzが小さく、表面粗さRz2.0μm以下、更には1.8μm以下、更には1.2〜1.7μmである。「表面粗さRz」の値は、JIS−B−0601に基づく粗さ試験により測定した結果を示す。これにより、電解銅箔上に塗布される防錆層等との接着性が高くなり、電解銅箔として良好な製品ハンドリング性が得られる。
【0029】
電解銅箔の厚みは、以下に制限されないが、二次電池負極集電体用電解銅箔として用いる場合には、例えば20μm以下、好ましくは18μm以下、更に好ましくは15μm以下とすれば上記の特性を十分に得ることができる。厚みの下限値も以下に制限されるものではないが、例えば6μm以上である。
【0030】
本発明の実施の形態に係る電解銅箔を製造する場合は、ニカワを2〜5質量ppm添加した硫酸系電解液を使用し、電解温度60〜65℃、電流密度60〜120A/dm2で電解することにより行う。より具体的には、電解槽の中に、直径約3000mm、幅約2500mmのチタン製又はステンレス製の回転ドラムと、ドラムの周囲に3〜10mm程度の極間距離を置いて電極を配置した電解銅箔製造装置を用いて、製造することができる。なお、この装置の例は一例であり、装置の仕様に特に制限はない。
【0031】
電解槽中には、銅濃度:80〜110g/L、硫酸濃度:70〜110g/Lの硫酸系電解液に対して、にかわ濃度:2.0〜10.0質量ppmを添加する。
【0032】
そして、線速:1.5〜5.0m/s、電解液温:60〜65℃、電流密度:60〜120A/dm2に調節し、回転ドラムの表面に銅を析出させ、回転ドラムの表面に析出した銅を剥ぎ取り、連続的に電解銅箔を製造する。上記工程において、電解液温度を60〜65℃とし、電流密度を60〜120A/dm2として電解することが、上記の特性を有する電解銅箔を得るために好適な条件であり、特に電解液温の調整が特徴的である。
【0033】
電解銅箔の表面又は裏面、さらには両面には、防錆処理を行うことが好ましい。防錆処理は、クロム酸化物単独の皮膜処理或いはクロム酸化物と亜鉛/亜鉛酸化物との混合物皮膜処理である。クロム酸化物と亜鉛/亜鉛酸化物との混合物皮膜処理とは、亜鉛塩または酸化亜鉛とクロム酸塩とを含むめっき浴を用いて電気めっきにより亜鉛または酸化亜鉛とクロム酸化物とより成る亜鉛−クロム基混合物の防錆層を被覆する処理である。
【0034】
めっき浴としては、代表的には、K2Cr27、Na2Cr27等の重クロム酸塩やCrO3等の少なくとも一種と水酸化アルカリ並びに酸の混合水溶液が用いられる。また、上記水溶液と水溶性亜鉛塩、例えばZnO 、ZnSO4・7H2Oなど少なくとも一種との混合水溶液も用いることができる。
【0035】
防錆処理前に必要に応じて粗化処理を施すことができる。粗化粒子として、銅、コバルト、ニッケルの1種のめっき又はこれらの2種以上の合金めっきを形成することができる。通常、銅、コバルト、ニッケルの3者の合金めっきにより、粗化粒子を形成する。さらに、二次電池用負極集電体用銅箔は、耐熱性及び耐候(耐食)性を向上させるために、表裏両面の粗化処理面上に、コバルト−ニッケル合金めっき層、亜鉛−ニッケル合金めっき層、クロメート層から選択した一種以上の防錆処理層又は耐熱層及び/又はシランカップリング層を形成することが望ましい。
【0036】
必要に応じ、銅箔と活物質との接着力の改善を主目的として、防錆層上の両面もしくは析出面にシランカップリング剤を塗布するシラン処理が施してもよい。このシラン処理に使用するシランカップリング剤としては、オレフィン系シラン、エポキシ系シラン、アクリル系シラン、アミノ系シラン、メルカプト系シランを挙げることができるが、これらを適宜選択して使用することができる。塗布方法は、シランカップリング剤溶液のスプレーによる吹付け、コーターでの塗布、浸漬、流しかけ等いずれでもよい。
【実施例】
【0037】
以下に本発明の実施例を示すが、以下の実施例に本発明が限定されることを意図するものではない。
【0038】
(実施例1)
電解槽の中に、直径約3133mm、幅2476.5mmのチタン製の回転ドラムと、ドラムの周囲に5mm程度の極間距離を置いて電極を配置した。この電解槽の中に、銅濃度:90g/L、硫酸濃度:80g/L、にかわ濃度:3質量ppmを導入して電解液とした。そして、電解液温:60℃、電流密度:85A/dm2に調節し、回転ドラムの表面に銅を析出させ、回転ドラムの表面に析出した銅を剥ぎ取り、連続的に厚さ10μm、表面粗さRa1.6μmの電解銅箔を製造した。
実施例1の電解銅箔に対して、IPC−TM−650に基づき引張り強さ試験を実施し、引張り強さ、破断応力、伸び率を評価するとともに、公称応力ひずみ曲線を作製した。結果を図1に示す。
実施例1の引張り強さは62.3kg/mm2、破断応力は59.6kg/mm2、伸び率は7%であり、引張り強さの値が破断応力の値よりも大きくなった。
実施例1の電解銅箔の断面をEBSPを用いて観察した結果、アスペクト比が2.0未満の微細粒子と2.0以上の柱状粒子が存在していた。断面全体に対する柱状粒子の面積の合計は31%であった。微細粒子の平均粒径は0.2μmであった。
実施例1の電解銅箔に対し、常態(23℃)の場合と、200℃30分間加熱した後の電解銅箔についてそれぞれIPC−TM−650に基づく引張強さ試験を実施したところ、200℃30分間加熱した後の引張り強さが常態引張り強さの97%であった。
【0039】
(比較例1)
無酸素銅ベースのSn0.07%入りインゴットを熱間圧延により厚さ10mm程度の板とし、その後冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延で10μmの厚みに仕上げる。最終圧延加工度は85〜95%の範囲で実施した。
比較例1の圧延銅箔に対して、実施例1と同様の引張り強さ試験を実施し、引張り強さ、破断応力、伸び率を評価するとともに、公称応力ひずみ曲線を作製した。結果を図1に示す。
【0040】
(比較例2)
電解槽の中に、直径約3133mm、幅2476.5mmのチタン製の回転ドラムと、ドラムの周囲に5mm程度の極間距離を置いて電極を配置した。この電解槽の中に、銅濃度:90g/L、硫酸濃度:80g/L、さらに添加剤ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド:30ppm、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する化合物とアミン化合物とを付加反応させることにより得られる特定骨格を有するアミン化合物:30ppm、塩素イオン:60ppmを導入して電解液とした。そして、電解液温:53℃、電流密度:60A/dm2に調節し、回転ドラムの表面に銅を析出させ、回転ドラムの表面に析出した銅を剥ぎ取り、連続的に厚さ10μmの電解銅箔を製造した。
比較例2の電解銅箔に対して、実施例1と同様の引張り強さ試験を実施し、引張り強さ、破断応力、伸び率を評価するとともに、公称応力ひずみ曲線を作製した。結果を図1に示す。
【0041】
(比較例3)
電解槽の中に、直径約3133mm、幅2476.5mmのチタン製の回転ドラムと、ドラムの周囲に5mm程度の極間距離を置いて電極を配置した。この電解槽の中に、銅濃度:90g/L、硫酸濃度:80g/L、さらに添加剤にかわ:3ppm、塩素イオン:60ppm導入して電解液とした。そして、電解液温:53℃、電流密度:106A/dm2に調節し、回転ドラムの表面に銅を析出させ、回転ドラムの表面に析出した銅を剥ぎ取り、連続的に厚さ10μmの電解銅箔を製造した。
比較例3の電解銅箔に対して、実施例1と同様の引張り強さ試験を実施し、引張り強さ、破断応力、伸び率を評価するとともに、公称応力ひずみ曲線を作製した。結果を図1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公称応力ひずみ曲線において、引張り強さが45〜70kg/mm2であり、引張り強さの値が破断応力の値よりも大きく、伸び率が5%以上である二次電池負極集電体用電解銅箔。
【請求項2】
破断応力/引張り強さの値の比が90%以上99%以下である請求項1に記載の二次電池負極集電体用電解銅箔。
【請求項3】
200℃30分間加熱した後の引張り強さが、常態引張り強さの85%以上である請求項1又は2に記載の二次電池負極集電体用電解銅箔。
【請求項4】
前記電解銅箔の厚みが6〜20μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池負極集電体用電解銅箔。
【請求項5】
添加剤としてニカワを2〜5質量ppm加えた硫酸銅電解液を、電解温度60〜65℃、電流密度60〜120A/dm2で電解することにより、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解銅箔を製造することを含む二次電池負極集電体用電解銅箔の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−212529(P2012−212529A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76629(P2011−76629)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】