説明

二次電池

【課題】電極端子周辺部のシール性能の向上を図った二次電池を提供する。
【解決手段】絶縁シール部材(6)のうち電池セル(2)の外部に突出した電極端子(3)とその絶縁シール部材(6)の四隅に設けた小孔部(8)との中間に位置する領域に脆弱部(20,20')を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の電極端子の周辺構造のシール性能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の二次電池は、例えば車載用としてリチウムイオン電池がモジュール化されており、一つのモジュールは、薄膜状の正極、負極及びセパレータが交互に層状に重ね合わされた電極束をセルケースに入れ電解液とともに密閉して一つの電池セルを形成し、この電池セルを複数個束ねることで構成されている。
例えば、電池セルの上面には電極束から延びる電極端子が突出しており、当該電極端子を取り付けて隣り合う電池セルの電極端子同士をバスバーにより接続して直列接続をなしてリチウムイオン電池をモジュール化する構成が知られている(特許文献1)。
【0003】
ところで、このリチウムイオン電池は水に弱く、水分が電池セル内に入り込んでしまうと電解液の変質を引き起こし電池性能の低下を招くため、電池セル内に水分が入り込まないよう電池セルには高いシール性能が要求されている。
例えば、当該電極端子周辺部が樹脂の絶縁シール部材でシールされ、この絶縁シール部材が電極端子の廻り止めとしても機能するようにして四隅に電池セル上面の突起と嵌合する小孔部を設けた構成のリチウムイオン電池が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−294531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されるようにバスバーで電極端子同士を接続し、さらに電極端子周辺部を上述のように廻り止め機能とともに四隅に小孔部を有した絶縁シール部材でシールするよう構成した場合、バスバーの螺合による締結時に電極端子部に過大入力が入ると絶縁シール部材の四隅に設けた小孔部に応力が集中し、当該小孔部から電極端子或いはその周辺部に渡ってクラックが生じてしまう恐れがある。
【0006】
このようにクラックが電極端子或いはその周辺部にまで成長し、さらにシール部分にまで及んでしまうと、電池セル上面のシール性能は失われてしまい、電池セル内に水分が入り込んで電解液が変質し、電池性能の著しい低下を招くという問題がある。
例えば、電気自動車等で使用する電池パックは、複数の電池セルにより構成されるモジュールを複数並べて直列に接続して構成されているため、不具合の生じた電池セルがひとつでも接続されていると電池パック全体として要求される電力を十分に供給することができず、好ましいことではない。
【0007】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、電極端子周辺部のシール性能の向上を図った二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の二次電池は、電極束及び電解液をセルケースに入れ蓋部材によって密封して電池セルを形成する二次電池において、前記電極束から蓋部材に設けられた貫通孔を貫通して延び前記電池セルの外部に突出し外周に螺刻された電極端子と、前記電極端子の周囲に嵌合されて前記貫通孔の周縁と前記電極端子間の絶縁及びシールを行うとともに、前記蓋部材に形成された廻り止め部と係合する係合部を設けることで該電極端子の廻り止めをする絶縁シール部材とを備え、前記絶縁シール部材の前記電極端子と前記係合部との間の領域に脆弱部を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の二次電池は、請求項1において、前記脆弱部は孔であることを特徴とする。
請求項3記載の二次電池は、請求項1において、前記脆弱部は前記絶縁シール部材を薄肉に形成してなることを特徴とする。
請求項4記載の二次電池は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記脆弱部は前記電極端子と複数の前記係合部との間の領域を延びて長尺に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の二次電池によれば、絶縁シール部材には係合部と電極端子との間に脆弱部が設けられているため、螺刻された電極端子に対して締結部材を螺合させる際に過大な締め付けトルクが入力されたとしても、係合部と脆弱部との間でクラックが生じるだけで電極端子の周囲にまでクラックが延びず電極端子周りのシール性が保持される。
これにより、電池セルのシール性能を良好に保持でき、電池性能の低減を防ぐことができる。
【0011】
請求項2、3記載の二次電池によれば、脆弱部は孔或いは絶縁シール部材を薄肉に形成してなるので、簡単な加工にして係合部から生じるクラックを電極端子のシール部分に到達する前に確実に吸収し阻止することができる。
請求項4記載の二次電池によれば、脆弱部は電極端子と複数の係合部との間の領域を延びて長尺に設けられているので、複数の係合部から生じるクラックが多様な入り方をしても、電極端子のシール部分にクラックが到達する前にクラックを長尺の脆弱部でより確実に吸収し阻止することができる。
【0012】
また、このように長尺の脆弱部を設けるようにすれば、係合部毎に脆弱部を設ける場合と比べて脆弱部の数を少なくでき、脆弱部を容易に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】リチウムイオン電池の平面図である。
【図2】リチウムイオン電池の側面図である。
【図3】リチウムイオン電池を構成する部品の概略図である。
【図4】第一実施例に係る電極端子周辺部の拡大図である。
【図5】第二実施例に係る電極端子周辺部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下の実施例では便宜上図1にある正極端子3a及び負極端子3bがある側を上として説明を行うが、本発明の実施にあたって当該モジュールがどのように載置されるかは任意である。
先ず、第一実施例について説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るリチウムイオン電池の平面図、図2は、リチウムイオン電池の側面図を示す。
リチウムイオン電池1は、薄膜状の正極、負極及びセパレータが交互に層状に重ね合うように巻かれた電極束を電解液とともに絶縁材耐熱樹脂の金属電槽(セルケース)に入れ蓋部材14によって密閉して一つの金属電池ケースに収納した電池セル2により構成され、図示しないものの、当該電池セル2を複数個並べ束ね、隣り合う電池セル2が一定の間隔をあけて配置されるように直列に接続してモジュール化されている。
【0016】
図2でみて電池セル2の上部両端には、正極から延びた正極端子3aと負極から延びた負極端子3bがそれぞれ設けられており、当該正極端子3aは隣り合う電池セル2の負極端子3bと、当該負極端子3bはさらに隣り合う電池セル2の正極端子3aと接続するようにバスバー(図示せず)が配設されている。
電池セル2の上面には、電極端子3から延びて例えば基板を接合するためのセル端子4が設けられている。セル端子4はリベット10により電池セル2の上面に固定されている。
【0017】
導電性の電極端子3a、3b、リベット10及びセル端子4と蓋部材14との間には樹脂製の絶縁シール部材6が配設されている。この絶縁シール部材6の四隅には小孔部(係合部)8が設けられ、一方蓋部材14には対応する突起(廻り止め部)が設けられており、絶縁シール部材6は当該小孔部8を突起に係合させて電池セル2に固定されている。
図3は、電池セル上面のシール部分の概略構成図を示す。
【0018】
同図に示すように、電池セル2の上面に突出している電極端子3はセル端子4と接しており、上述したように、セル端子4は蓋部材14の貫通孔15を貫通するリベット10により電池セル2の上面に固定されている。そして、これら電極端子3、リベット10及びセル端子4と蓋部材14との間に絶縁シール部材6が設けられている。
絶縁シール部材6は外パッキン12及び内パッキン16から構成され、これら外パッキン12及び内パッキン16により上記貫通孔15の周縁とリベット10間ひいては電池セル2の上面がシールされている。また、内パッキン16の下側には集電材18が設けられており、電極束で反応した電気を電極端子3に伝達している。
【0019】
すなわち、外パッキン12の上側に電極端子3が設けられ、電極端子3から延びるセル端子4と集電材18とは絶縁シール部材6を挟んでリベット10により蓋部材14に固定されている。
図4は、第一実施例に係る電極端子周辺部の拡大図を示す。
上述したように、電極端子3から延びるセル端子4は樹脂製の絶縁シール部材6を挟みリベット10で蓋部材14に固定されている。
【0020】
同図に示すように、電極端子3及びリベット10には廻り止め用に平面視六角形状のフランジがそれぞれ形成されており、これら電極端子3及びリベット10の各フランジはそれぞれ絶縁シール部材6に嵌合されている。そして、絶縁シール部材6の四隅には小孔部8が蓋部材14の突起に対応して設けられている。
絶縁シール部材6の小孔部8と電極端子3との間に位置する領域には円形の脆弱部20が設けられている。すなわち、絶縁シール部材6の内側であって小孔部8と電極端子3との中間領域には、各小孔部8と電極端子3とを結ぶ線上に位置して円形の脆弱部20が設けられている。なお、脆弱部20は、例えば絶縁シール部材6に穿設された孔でもよく、或いは絶縁シール部材6を薄肉に形成したものであってもよい。
【0021】
これにより、隣り合う電池セル2の電極端子3同士をバスバーで接続すべくナットを電極端子3に螺合させる際、過大な力が働くと電極端子3に近接する小孔部8に過大な応力が集中し、絶縁シール部材6の内側において小孔部8から電極端子3に向かってクラックが入る場合があるが、ここで生じたクラックは脆弱部20で確実に吸収され、クラックが一気に成長して電極端子3及びリベット10付近まで到達することが防止される。
【0022】
このように、電池セル2の外面に設けられた絶縁シール部材6に過大な締め付け力によりクラックが生じても、脆弱部20を設けたことにより当該クラックがシール部分には及ばないこととなり、電池セル2上面のシール性能が維持され、電池性能の低下防止を図ることができる。
なお、同図に示すように、電極端子3a、3bのリベット10側にも同様に脆弱部20を設けるようにしてもよく、これによりクラックがシール部分に到達することをより一層防止することができる。
【0023】
次に、第二実施例について説明する。
図5は、第二実施例に係る電極端子部周辺の拡大図を示す。
上記第一実施例と同様に、絶縁シール部材6の四隅に設けられた小孔部8と電極端子3との中間に位置する領域には平面視長円形(長尺)の脆弱部20’が設けられている。すなわち、第二実施例では絶縁シール部材6のうち電極端子3の周辺の小孔部8との中間に位置する領域の大部分が脆弱部20’で占められている。
【0024】
これにより、小孔部8に過大な応力が集中し電池セル2の外面において絶縁シール部材6にクラックが生じることがあっても、平面視長円形の脆弱部20’でクラックは吸収されるので、やはりクラックが一気に成長して電極端子3及びリベット10付近まで到達することが防止される。
また、第二実施例に係る平面視長円形で形成される脆弱部20’は、第一実施例に係る複数の円形の脆弱部20に比べ、小孔部8と電極端子3との中間に位置する領域を占める部分が大きいため、複数の小孔部8から生じるクラックの入り方が多様であっても脆弱部20’でクラックを吸収することができ、クラックが一気に電極端子3及びリベット10にまで及んでしまうことをより確実に避けることができる。
【0025】
このように、電池セル2の外面に設けられた絶縁シール部材6にクラックが生じても、脆弱部20’を設けたことによりクラックは一気にシール部分に及ばないこととなり、電池セル2のシール性能が維持され、やはり電池性能の低下防止を図ることができる。
なお、同図に示すように、電極端子3a、3bのリベット10側にも同様に脆弱部20’を設けるようにしてもよく、これによりクラックがシール部分に到達することをより一層防止することができる。
【0026】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、電池要素が層状に巻かれた電池形式のものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、積層などその他の形式の電池に対しても本発明を適用可能である。
【0027】
また、小孔部8は絶縁シール部材6の四隅に設けられているが、絶縁シール部材6の四隅に限定されることなく、廻り止めとして機能すればよい。
また、ここでは絶縁シール部材6に小孔部8を形成し、小孔部8に蓋部材14の突起を係合させるように構成しているが、これとは逆に蓋部材14に小孔部(廻り止め部)を形成するとともに絶縁シール部材6に突起(係合部)を設けるようにしてもよい。
【0028】
また、上記第一実施例では、小孔部8側の電極端子3の周辺部に設けた脆弱部20は2つであったが、脆弱部20の数は3つ以上であってもよく、脆弱部20、20’は絶縁シール部材6の応力が集中する部分と電極端子3及びリベット10との中間に位置する領域に設けられていればよい。
また、上記実施形態では、脆弱部20、20’の形状が円形又は平面視長円形であったが、これらの形状に限定されるわけではなく、脆弱部は絶縁シール部材6の応力が集中する部分と電極端子3及びリベット10との中間に位置する領域を占めるものであれば如何なる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 リチウムイオン電池
2 電池セル
3a、3b 電極端子
4 セル端子6 絶縁シール部材
8 小孔部(係合部)
10 リベット
14 蓋部材
20、20’ 脆弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極束及び電解液をセルケースに入れ蓋部材によって密封して電池セルを形成する二次電池において、
前記電極束から前記蓋部材に設けられた貫通孔を貫通して延び前記電池セルの外部に突出し外周に螺刻された電極端子と、
前記電極端子の周囲に嵌合されて前記貫通孔の周縁と前記電極端子間の絶縁及びシールを行うとともに、前記蓋部材に形成された廻り止め部と係合する係合部を設けることで該電極端子の廻り止めをする絶縁シール部材とを備え、
前記絶縁シール部材の前記電極端子と前記係合部との間の領域に脆弱部を設けたことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記脆弱部は孔であることを特徴とする、請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記脆弱部は前記絶縁シール部材を薄肉に形成してなることを特徴とする、請求項1記載の二次電池。
【請求項4】
前記脆弱部は前記電極端子と複数の前記係合部との間の領域を延びて長尺に設けられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−186630(P2010−186630A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29781(P2009−29781)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】