説明

二次電池

【課題】電池性能を低下させずに、電解質の分解に起因するガスを、適切に吸収可能な二次電池を提供すること。
【解決手段】正極活物質層11および負極活物質層12を、セパレータ20を介して積層してなる二次電池であって、前記正極活物資層11および負極活物質層12の少なくとも一方のセパレータ20と対峙する面と反対側の面に、ガス吸収材を含むガス吸収層13が形成されていることを特徴とする二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質層および負極活物質層を、セパレータを介して積層してなる二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの二次電池においては、初充放電時などに電解質の分解に起因するガスが発生することが知られている。これに対して、正極活物質層および負極活物質層の間に設けられるセパレータとして、基材にガス吸収材を含有させたセパレータを用い、これにより、電解質の分解に起因するガスを吸収させる技術(特許文献1参照)や、正極活物質層と集電体層との間、または負極活物質層と集電体層との間に、ガスを拡散させるための空孔が形成されているガス拡散層を設けて、電解質の分解に起因するガスを電池要素外部へ排出させる技術(特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−146963号公報
【特許文献2】特開2005−353377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基材にガス吸収材を含有させたセパレータを用いた場合には、電解質中のイオンキャリア(リチウムイオン二次電池の場合には、リチウムイオン)が、ガス吸収材に吸着されてしまうため、イオン伝導度が低下してしまい、結果として電池性能が低下してしまうという問題があった。また、正極活物質層と集電体層との間、または負極活物質層と集電体層との間に、ガス拡散層を設ける方法では、電解質の分解に起因するガスを電池要素外部に放出させるものであって、二次電池を覆う外装材の外部に放出させるものではないため、該ガスの影響により、二次電池内部の圧力が上昇してしまい、結果として、電池性能が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電池性能を低下させずに、電解質の分解に起因して発生するガスを、適切に吸収可能な二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、正極活物質層および負極活物質層を、セパレータを介して積層してなる二次電池において、正極活物資層および負極活物質層の少なくとも一方のセパレータと対峙する面と反対側の面に、ガス吸収材を含むガス吸収層を形成することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正極活物質層および負極活物質層の少なくとも一方のセパレータと対峙する面と反対側の面に形成されたガス吸収層により、電解質の分解に起因して発生するガスを吸収させることができるため、イオン伝導度の低下や二次電池内部の圧力上昇に起因する電池特性の低下を防止しながら、電解質の分解に起因するガスを適切に吸収可能な二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態に係る二次電池を示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る二次電池の図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る電極板の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る二次電池を示す斜視図、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。以下においては、本発明を、リチウムイオン二次電池に適用した場合を例示して説明するが、本発明は、リチウムイオン二次電池に特に限定されるものではない。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の二次電池1は、扁平型の本体部2から、正極リード3および負極リード4がそれぞれ引き出されて構成されている。
【0012】
本実施形態の二次電池1は、図2に示すように、電極板10a,10b,10c,10dを、それぞれ、電解質を含有するセパレータ20を介して、積層した構造の電極積層体10を備えてなる。なお、これら電極板およびセパレータの積層数は、図2に示す数に特に限定されず、適宜設定することができる。
【0013】
図2に示すように、電極板10aは、集電体層14と、集電体層14上に形成された活性炭層13と、活性炭層13上に形成された正極活物質層11とからなる。また、電極板10bは、図2に示すように、集電体層14と、集電体層14の両面に形成された一対の活性炭層13と、これら一対の活性炭層13上にそれぞれ形成された正極活物質層11および負極活物質層12とからなる。そして、これら電極板10aと電極板10bとは、電解質を含有するセパレータ20を介して、電極板10aの正極活物質層11と、電極板10bの負極活物質層12とが対峙するように積層されており、これにより、単電池層(発電要素)を形成している。
【0014】
また、電極板10cも、電極板10bと同様の構成を有しており、同様に、電極板10cと上述の電極板10bとは、電解質を含有するセパレータ20を介して、電極板10bの正極活物質層11と、電極板10cの負極活物質層12とが対峙するように積層されており、同様に、単電池層(発電要素)を形成している。
【0015】
さらに、電極板10dは、集電体層14と、集電体層14上に形成された活性炭層13と、活性炭層13上に形成された負極活物質層12とからなる。そして、この電極板10dと上述の電極板10cとは、電解質を含有するセパレータ20を介して、電極板10cの正極活物質層11と、電極板10dの負極活物質層12とが対峙するように積層されており、同様に、単電池層(発電要素)を形成している。
【0016】
また、二次電池1には、上下両端の電極板10a,10dの集電体層14には、それぞれ正極端子板41および負極端子板42を介して、正極リード3および負極リード4が接合されており、これら正極リード3および負極リード4を介して、二次電池1の電力の入出力が可能となっている。
【0017】
さらに、本実施形態の二次電池1では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体10部分が電池外装材50に減圧封入されている。電池外装材50は、アルミニウム層の両面が樹脂層で被覆された三層構造を有する2枚のラミネートシートにより形成されている。そして、図2に示すように、電池外装材50を構成する各ラミネートシートは、電極積層体10を内包する空間を設けるために、中高状に加工されており、減圧下において、2枚のラミネートシートの縁が熱融着等により接着されている。これにより、電極積層体10は、電池外装材50内部に密閉された構成となっている。
【0018】
電極板10a,10b,10c,10dを構成する各集電体層14は、絶縁性高分子に電子伝導性フィラーを充填させた薄膜からなる電子伝導性の層である。集電体層14を、絶縁性高分子に電子伝導性フィラーを充填させた薄膜で形成することにより、集電体層14を、集電体層14の厚み方向における電子伝導性を確保しながら、集電体層14の面内方向における電子伝導性を低いものとすることができる。これにより、二次電池1において、積層方向に短絡が発生した場合でも、短絡発生箇所への電流集中を有効に防止することができ、二次電池1の安全性を向上させることができる。
【0019】
集電体層14を形成するための電子伝導性フィラーとしては、特に限定されず、適宜選択すればよいが、たとえば、カーボンブラック、金属微粒子、導電性セラミックス等を用いることができる。
【0020】
また、集電体層14を形成するための絶縁性高分子としては、特に限定されず、適宜選択すればよいが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの熱可塑性の絶縁性高分子などが挙げられる。
【0021】
正極活物質層11は、正極活物質を含有する。また、正極活物質層11は、正極活物質の他、導電助剤やバインダ、電解質を含有していてもよい。正極活物質としては、遷移金属とリチウムとの複合酸化物を使用できる。具体的には、LiCoOなどのLi・Co系複合酸化物、LiNiOなどのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMnなどのLi・Mn系複合酸化物、LiFeOなどのLi・Fe系複合酸化物などが挙げられる。この他、LiFePOなどの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V、MnO、TiS、MoS、MoOなどの遷移金属酸化物や硫化物;PbO、AgO、NiOOHなどが挙げられる。また、導電助剤としては、たとえば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。さらに、バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0022】
電解質としては、電解液の他、ポリマー骨格中に、電解液を保持させたゲル電解質や、可塑剤を含まない全固体高分子電解質などを使用することができる。
【0023】
電解液は、電解質塩を可塑剤に溶解させたものである。電解質塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩;LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON等の有機酸陰イオン塩;などが挙げられる。また、可塑剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチル;等が挙げられる。
【0024】
ゲル電解質を構成するポリマーとしては、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体などが使用できる。
【0025】
全固体高分子電解質は、上記電解質塩と、イオン伝導性を有する高分子とから構成される。イオン伝導性を有する高分子としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができるが、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)や、これらの共重合体などが挙げられる。また、イオン伝導性を有する高分子は、優れた機械的強度を有するものとするために、架橋構造を形成したものであってもよい。
【0026】
負極活物質層12は、負極活物質を含有する。また、負極活物質層12は、負極活物質の他、導電助剤やバインダ、電解質を含有していてもよい。負極活物質としては、たとえば、カーボン、金属化合物、金属酸化物、Li金属化合物、Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)、ホウ素添加炭素などを用いることができる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用して用いても良い。上記カーボンとしては、例えば、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボンなど、従来公知のカーボン材料が挙げられる。上記金属化合物としては、LiAl、LiZn、LiBi、LiCd、LiSd、LiSi、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C(LiC)等が挙げられる。上記金属酸化物としては、SnO、SnO、GeO、GeO、InO、In、PbO、PbO、Pb、Pb、AgO、AgO、Ag、Sb、Sb、Sb、SiO、ZnO、CoO、NiO、FeO等が挙げられる。Li金属化合物としては、LiFeN、Li2.6Co0.4N、Li2.6Cu0.4N等が挙げられる。Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)としては、LiTi12などLiTiで表されるリチウム−チタン複合酸化物等が挙げられる。上記ホウ素添加炭素としては、ホウ素添加カーボン、ホウ素添加グラファイト等が挙げられる。
また、導電助剤、バインダおよび電解質としては上述したものを用いることができる。
【0027】
セパレータ20は、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、セルロース等から構成される微多孔性膜であり、電解質を含有するものであるセパレータ20に含有される電解質としては、上述したものを用いることができる。なお、電解質として全固体高分子電解質を用いる場合には、全固体高分子電解質をセパレータ20を構成する微多孔性膜に含浸させた構成の他、微多孔性膜を用いず、全固体高分子電解質からなる膜を用い、これをセパレータ20として用いるような構成としてもよい。
【0028】
本実施形態においては、図1に示すように、電極板10aを構成する集電体層14と正極活物質層11との間には、活性炭層13が形成されている。また、同様に、電極板10b,10cを構成する集電体層14と正極活物質層11との間および集電体層14と負極活物質層12との間、さらには、電極板10dを構成する集電体層14と負極活物質層12との間にも、活性炭層13が形成されている。
【0029】
このような活性炭層13は、絶縁性高分子と活性炭粒子とを含む層である。活性炭層13は、二次電池1の初充放電時や繰り返し使用の際に、二次電池1内部でガスが発生した場合に、発生したガスを吸収するガス吸収層として作用する。
【0030】
活性炭粒子としては、ガス吸収材として作用を有し、電解質に対して電気的に安定であり、かつ、導電性を有するものであればよく特に限定されないが、二次電池1内部でガスが発生した場合に、その表面細孔内に発生したガスを吸収できることに加え、二次電池1の充放電に伴い、イオンキャリアであるアルカリ金属イオン(二次電池1がリチウムイオン電池である場合には、リチウムイオン)の吸着または吸蔵、および放出が可能なものであることが望ましい。
【0031】
このような活性炭粒子としては、その平均細孔径が、二次電池1内部でガスが発生した場合に、発生するガスの主成分を構成する二酸化炭素の最小分子直径よりも大きいものが好ましい。平均細孔径が小さすぎると、二次電池1内部でガスが発生した場合における、ガス吸収作用が不十分となる場合がある。
【0032】
活性炭層13を形成するための絶縁性高分子としては、活性炭粒子同士を結着させる作用を有し、これにより、活性炭層13の形状の保持を可能とすることができるものであればよく、特に限定されないが、加熱処理によって可塑化し、流動するような高分子が好ましい。このような高分子としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの熱可塑性の絶縁性高分子などが挙げられる。
【0033】
また、図2に示すように、本実施形態の二次電池1においては、各電極板10a,10b,10c,10dを形成する集電体層14と、セパレータ20との間には、それぞれシール部材30が配置されている。これらシール部材30は、各電極板10a,10b,10c,10dに形成されている正極活物質層11および負極活物質層12の周囲を取り囲むように設けられている。集電体層14と、セパレータ20との間に、シール部材30を配置することにより、電解質としての電解液、ゲル電解質中に含まれる電解液の液漏れを防止することができ、これにより、電極積層体10を構成する各単電池間における液絡の発生を有効に防止することができる。さらには、シール部材30を配置することで、集電体層14同士の接触による短絡を防止することも可能となる。
【0034】
シール部材30としては、集電体層14と、セパレータ20との間をシールできるものであれば何でもよく、特に限定されないが、たとえば、基材の両面に粘着材が塗布されてなる両面テープなどが挙げられる。両面テープを構成する基材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド系合成繊維等の絶縁性樹脂などが挙げられる。また、両面テープを構成する粘着剤としては、合成ゴム、ブチルゴム、合成樹脂、アクリル等の耐溶剤性を有する各種粘着材料などが挙げられる。
【0035】
次いで、上述した構成を有する本実施形態の二次電池1の製造方法について説明する。
【0036】
まず、電極積層体10を形成する電極板10a,10b,10c,10dを作製する。本実施形態においては、各電極板10a,10b,10c,10dの作製方法について、電極板10b,10cを例示して説明する。図3は、電極板10b,10cの構造を示す断面図である。電極板10b,10cは、まず、薄膜状の集電体層14を形成し、次いで、集電体層14の両面に一対の活性炭層13を形成し、一対の活性炭層13のうち一方の面上に正極活物質層11を、他方の面に負極活物質層12を、それぞれ形成することにより、作製される。なお、電極板10a,10dは、それぞれ、一方の活性炭層13および負極活物質層12または正極活物資層11を形成しないこと以外は、電極板10b,10cと同様にして作製することができるため、その説明を省略する。
【0037】
電極板10b,10cを作製に際して、まず、基材となる集電体層14の形成を行う。集電体層14は、電子伝導性フィラーを、溶融した絶縁性高分子に混練分散させ、次いで、得られた混練物を押し出し成形加工により薄膜化させることにより形成することができる。
【0038】
次いで、得られた集電体層14の表面および裏面に、一対の活性炭層13を形成する。活性炭層13は、活性炭粒子を、溶融した絶縁性高分子に混練分散させ、次いで、得られた混練物を用いて、これを、集電体層14の表面および裏面に形成することができる。なお、活性炭層13の形成方法としては特に限定されないが、たとえば、押し出し成形法、圧延法、塗布法など従来公知の方法を用いればよい。
【0039】
次いで、一対の活性炭層13のうち一方の面上に、正極活物質を含む正極用スラリーを塗布し、これを乾燥することにより、正極用スラリー中に含まれる溶媒を除去して、必要に応じて、所望の膜厚になるようにプレスすることにより、正極活物質層11を形成する。
【0040】
正極用スラリーは、正極活物質の他、導電助剤、およびバインダなどが任意で含まれる。例えば、正極用スラリーは、正極活物質を含む溶媒中に、導電助剤およびバインダ等を添加し、ホモミキサー等で攪拌することで得られる。なお、二次電池1に含有される電解質をゲル電解質または全固体高分子電解質とする場合には、これらを形成するための原料ポリマー(プレポリマー)、重合開始剤および電解質塩を、正極用スラリー中にさらに含有させればよい。また、正極用スラリーを調製する際に用いる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、n−ピロリドンなどのスラリー粘度調製用溶媒が挙げられる。
【0041】
次いで、一対の活性炭層13のうち、その面上に正極活物質層11を形成した活性炭層13と反対側の活性炭層13上に、負極活物質を含む正極用スラリーを塗布し、これを乾燥することにより、負極用スラリー中に含まれる溶媒を除去して、必要に応じて、所望の膜厚になるようにプレスすることにより、負極活物質層12を形成する。
【0042】
負極用スラリーは、正極用スラリーと同様に、負極活物質の他、導電助剤、およびバインダなどが任意で含まれる。なお、二次電池1に含有される電解質をゲル電解質または全固体高分子電解質とする場合には、これらを形成するための原料ポリマー(プレポリマー)、重合開始剤および電解質塩を、負極用スラリー中にさらに含有させればよい。
【0043】
また、正極活物質層11および負極活物質層12を形成する際には、まず、先に負極活物質層12を形成し、次いで、正極活物質層11を形成するような構成としてもよい。さらに、正極活物質層11および負極活物資層12をプレスする際には、これらをまとめてプレスするような構成としてもよい。
【0044】
このようにして、電極板10b,10cを作製することができる。また、電極板10a,10dについては、上述したように、一方の活性炭層13および負極活物質層12または正極活物資層11を形成しないこと以外は、同様にして、作製することができる。
【0045】
次いで、上述の通りに作製された電極板10a,10b,10c,10dを用い、これらを、シール部材30およびセパレータ20を介して、積層して積層体を作製した後、これに電解質を含浸させることにより、電極積層体10を作製する。なお、二次電池1に含有される電解質をゲル電解質または全固体高分子電解質とする場合には、これらを形成するための原料ポリマー(プレポリマー)、重合開始剤および電解質塩を含浸させ、次いで、原料ポリマーを重合させることにより、電極積層体10を作製することができる。また、電極積層体10を作製する際には、二次電池1内部に水分等が混入するのを防止する観点から、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0046】
次いで、得られた電極積層体10の両最外層上にそれぞれ、正極端子板41および負極端子板42を接合し、さらに、正極端子板41および負極端子板42に正極リード3および負極リード4を接合する。なお、これらの接合方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0047】
そして、最後に、電極積層体10を、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、正極リード3および負極リード4の一部を二次電池1の外部に取り出した状態で、電池外装材50によって封止することにより、本実施形態の二次電池1は製造される。
【0048】
本実施形態の二次電池1によれば、各電極板10a,10b,10c,10dを形成する正極活物質層11と集電体層14との間、および負極活物質層12と集電体層14との間に、絶縁性高分子と活性炭粒子とを含む活性炭層13が形成されている。そのため、本実施形態によれば、二次電池1の初充放電時や繰り返し使用の際に、二次電池1内部で電解質の分解などに起因するガスが発生した場合においても、この活性炭層13により、二次電池1内部で発生したガスを吸収することができる。特に、本実施形態によれば、このような活性炭層13により、二次電池1内部で発生したガスを吸収するものであるため、電解質のイオン伝導度の低下や二次電池1内部の圧力上昇に起因する電池特性の低下を防止しながら、二次電池1内部で発生したガスの影響を適切に取り除くことができ、これにより、ガス発生による二次電池1の電池性能の低下を有効に防止することができる。
【0049】
加えて、本実施形態の二次電池1によれば、上記活性炭層13は、上記構成を有する活性炭粒子を含むものであるため、活性炭層13は、二次電池1の充放電に伴い、イオンキャリアであるアルカリ金属イオン(二次電池1がリチウムイオン電池である場合には、リチウムイオン)の吸着または吸蔵、および放出を行うことができる。すなわち、正極活物質層11、負極活物質層12に加えて、活性炭層13も、イオンキャリアであるアルカリ金属イオンの吸着または吸蔵、および放出を行うことができるため、これにより、二次電池1の電池容量の向上も可能となる。
【0050】
そして、このような本実施形態の二次電池1は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0052】
たとえば、上述した実施形態においては、二次電池1を、複数の単電池層からなる構成を例示したが、二次電池1を、単一の単電池からなる構成としてもよい。なお、二次電池1を、単一の単電池からなる構成とする場合においては、複数の電極板をセパレータを介して積層してなる積層型の構成としてもよいし、あるいは、一対の電極板(正極電極層を有する電極板、および負極電極層を有する電極板)をセパレータを介して巻回してなる巻回型の構成としてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態においては、活性炭層13を、各電極板10a,10b,10c,10dを形成する正極活物質層11と集電体層14との間、および負極活物質層12と集電体層14との間に、形成するような構成を例示したが、活性炭層13を、正極活物質層11と集電体層14との間、または負極活物質層12と集電体層14との間のいずれか一方にのみ形成するような構成としてもよい。さらには、上述した実施形態においては、活性炭層13を、各電極板10a,10b,10c,10dを形成する正極活物質層11と集電体層14との間、および負極活物質層12と集電体層14との間のうち、全てに形成するような構成を例示したが、少なくとも一部に形成するような構成としてもよい(たとえば、電極板10bおよび電極板10cを形成する正極活物質層11と集電体層14との間、および負極活物質層12と集電体層14との間に、活性炭層13を形成する一方で、電極板10aを形成する正極活物質層11と集電体層14との間、電極板10dを形成する負極活物質層12と集電体層14との間に、活性炭層13を形成しないような構成としてもよい。)。
【符号の説明】
【0054】
1…二次電池
10…電極積層体
10a,10b,10c,10d…電極板
11…正極活物質層
12…負極活物質層
13…活性炭層
14…集電体
20…セパレータ
30…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質層および負極活物質層を、セパレータを介して積層してなる二次電池であって、
前記正極活物資層および負極活物質層の少なくとも一方の、セパレータと対峙する面と反対側の面に、ガス吸収材を含むガス吸収層が形成されていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池において、
前記ガス吸収材は、ガスを吸収可能であり、かつ、アルカリ金属イオンの吸着および/または吸蔵可能な材料であることを特徴とする二次電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二次電池において、
前記ガス吸収材が、活性炭粒子であることを特徴とする二次電池。
【請求項4】
請求項3に記載の二次電池において、
前記ガス吸収層が、前記活性炭粒子とバインダとを含む層であることを特徴とする二次電池。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池において、
前記ガス吸収層は、前記正極活物質層と集電体層との間、および前記負極活物質層と集電体層との間に、それぞれ形成されていることを特徴とする二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−49079(P2011−49079A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197733(P2009−197733)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】