説明

二次電池

【課題】 充放電に伴う二次電池の面圧のバラツキを抑制する。
【解決手段】 二次電池(1)は、充放電を行う発電要素(20)と、円筒形状に形成され、発電要素を収容するケース(10)と、を有する。発電要素は、積層体(25)および軸芯(24)を有する。積層体は、正極板(21)および負極板(22)がセパレータ(23)を挟んで積層されることによって構成されており、充放電に伴う化学反応が行われる反応領域(A)を含んでいる。軸芯には、所定軸の周りに沿って積層体が巻き付けられる。所定軸が延びる方向における反応領域の両端部(B)では、軸芯は、積層体と接触しており、反応領域のうち両端部を除く領域では、軸芯は、積層体から離れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状のケースに発電要素を収容した、いわゆる円筒型の二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒型の電池では、充放電を行う発電要素を、円筒形状のケースに収容している。発電要素は、特許文献1に記載されているように、正極板および負極板がセパレータを挟んで積層されており、正極板、負極板およびセパレータは、軸芯に巻かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−050338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、電池の充放電によっては、電池の一部分における面圧だけが、他の部分における面圧よりも大きく変化してしまうことが分かった。ここで、電池の面圧が上昇するときには、電池が膨張しており、電池の面圧が低下するときには、電池が収縮している。面圧の大きな変化を抑制すれば、電池の劣化を抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明である二次電池は、充放電を行う発電要素と、円筒形状に形成され、発電要素を収容するケースと、を有する。発電要素は、積層体および軸芯を有する。積層体は、正極板および負極板がセパレータを挟んで積層されることによって構成されており、充放電に伴う化学反応が行われる反応領域を含んでいる。軸芯には、所定軸の周りに沿って積層体が巻き付けられる。所定軸が延びる方向における反応領域の両端部では、軸芯は、積層体と接触しており、反応領域のうち両端部を除く領域では、軸芯は、積層体から離れている。
【0006】
反応領域の両端部では、反応領域の他の領域に比べて、二次電池の面圧が変化しやすい。したがって、反応領域の両端部において、軸芯を積層体に接触させて荷重を与えれば、反応領域の両端部における面圧の変化を抑えることができる。これにより、所定軸が延びる方向において、面圧のバラツキを抑制することができ、電池の劣化を抑制することができる。
【0007】
所定軸が延びる方向における発電要素の一端では、正極板の一部が突出して巻かれており、正極板の一部が巻かれた部分は、ケースの一部(正極端子)と電気的に接続されている。所定軸が延びる方向における発電要素の他端では、負極板の一部が突出して巻かれており、負極板の一部が巻かれた部分は、ケースの一部(負極端子)と電気的に接続されている。
【0008】
積層体の一部は、軸芯から離れているため、所定軸の周りで巻かれた積層体の内周面と軸芯との間には、スペースが形成される。このスペースには、電解液を収容しておくことができる。発電要素の外部に電解液が漏れたときには、上記スペースに収容された電解液を発電要素の内部に浸入させることができる。これにより、発電要素に含まれる電解液の量が低減するのを抑制でき、電池特性(例えば、容量維持率)が劣化するのを抑制することができる。
【0009】
軸芯は、所定軸に沿って延びるように構成できる。軸芯には、積層体と接触する接触部と、積層体から離れる非接触部とを設けることができる。接触部の径は、非接触部の径よりも大きくすることができる。一方、複数の軸芯を用いることもできる。具体的には、反応領域の両端部のそれぞれに対して、軸芯を配置することができる。
【0010】
下記式(I)の関係を有することが好ましい。
14≦Wb/Wa×100≦27 ・・・(I)
【0011】
式(I)において、Wbは、反応領域に対して軸芯が接触する領域のうち、所定軸が延びる方向における幅である。Waは、所定軸が延びる方向における反応領域の幅である。式(I)を満たすように幅Wa,Wbを設定することにより、反応領域のうち、面圧のバラツキが大きくなる領域に対して、荷重を与えやすくなる。荷重を与えることにより、面圧のバラツキを抑制して、電池特性の劣化を抑制することができる。
【0012】
発電要素の外周面には、加圧部材を配置することができる。加圧部材は、積層体および軸芯の接触領域に対応した領域に荷重を与えるために用いられる。軸芯を用いることにより、発電要素の内部から荷重を与えることができる。また、加圧部材を用いることにより、発電要素の外部から荷重を与えることができる。
【0013】
20C以上のレートにおいて、二次電池を充電又は放電することがあるときには、本発明を好適に用いることができる。20C以上のレートで、二次電池を充電又は放電するときには、20Cよりも小さいレートで充電又は放電をするときに比べて、面圧のバラツキが大きくなりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電池の外観図である。
【図2】発電要素の外観図である。
【図3】発電要素の一部である積層体の展開図である。
【図4】軸芯の外観図である。
【図5】軸芯の断面図である。
【図6】発電要素の断面図である。
【図7】積層体の断面図である。
【図8】発電要素の断面図である。
【図9】レート1Cの充電における電池の面圧を示す図である。
【図10】レート12Cの充電における電池の面圧を示す図である。
【図11】レート20Cの充電における電池の面圧を示す図である。
【図12】レート32Cの充電における電池の面圧を示す図である。
【図13】レート1Cの放電における電池の面圧を示す図である。
【図14】レート12Cの放電における電池の面圧を示す図である。
【図15】レート20Cの放電における電池の面圧を示す図である。
【図16】レート32Cの放電における電池の面圧を示す図である。
【図17】抵抗増加率の変化を示すグラフである。
【図18】抵抗増加率の変化を示すグラフである。
【図19】容量維持率の変化を示すグラフである。
【図20】実施例1の変形例である発電要素の断面図である。
【図21】実施例1の他の変形例である発電要素の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1である電池について説明する。本実施例で用いられる電池は、いわゆる円筒型電池である。円筒型電池とは、円筒形状のケースに、充放電を行う発電要素を収容した電池である。電池は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池である。
【0017】
図1は、本実施例である電池の外観図である。電池1は、電池ケース10と、電池ケース10に収容される発電要素20とを有する。電池ケース10は、ケース本体11および蓋12を有しており、アルミニウムなどの金属で形成することができる。蓋12は、突起部12を有している。
【0018】
ケース本体11は、円筒状に形成されている。ケース本体11の長手方向(図1の左右方向)における一端は、塞がれており、ケース本体11の長手方向における他端には、開口部が形成されている。ケース本体11の開口部は、蓋12によって塞がれる。ケース本体11および蓋12の接続は、例えば、カシメや溶接によって行うことができる。ケース本体11および蓋12を接続することにより、電池ケース10の内部は、密閉状態となる。
【0019】
蓋12およびケース本体11の接続部分には、樹脂などの絶縁部材が配置されており、蓋12およびケース本体11は、絶縁状態となっている。ケース本体11は、電池1の負極端子として用いられ、蓋12は、電池1の正極端子として用いられる。
【0020】
電池1は、車両に搭載することができる。具体的には、複数の電池1を用いて組電池を構成し、組電池を車両に搭載することができる。組電池は、車両を走行させるための動力源として用いることができる。複数の電池1は、直列に接続したり、並列に接続したりすることができる。複数の電池1を直列に接続すれば、組電池の出力を増加させることができる。複数の電池1を並列に接続すれば、組電池の容量を増加させることができる。
【0021】
組電池から出力された電気エネルギを、モータ・ジェネレータによって運動エネルギに変換すれば、この運動エネルギを用いて車両を走行させることができる。また、車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータ・ジェネレータは、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギに変換することができる。モータ・ジェネレータによって生成された電気エネルギは、回生電力として、組電池に蓄えることができる。
【0022】
図2は、発電要素20の外観図である。図3は、発電要素20の一部を展開した図である。発電要素20は、充放電を行う要素である。
【0023】
発電要素20は、軸芯24を有しており、軸芯24は、一方向(図2の左右方向)に延びている。軸芯24の周りには、図3に示す正極板21、負極板22およびセパレータ23が巻かれている。軸芯24は、中空構造を有しており、貫通孔24aは、軸芯24の長手方向に延びている。
【0024】
正極板21は、集電板21aと、集電板21aの表面に形成された活物質層21bとを有する。活物質層21bは、集電板21aの両面に形成されている。活物質層21bは、集電板21aの一部の領域に形成されており、正極板21の一端では、集電板21aが露出している。活物質層21bは、正極活物質、導電材、バインダーなどを含んでいる。電池1としてリチウムイオン二次電池を用いるときには、例えば、正極活物質として、マンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムを用い、集電板21aとして、アルミニウムを用いることができる。
【0025】
負極板22は、集電板22aと、集電板22aの表面に形成された活物質層22bとを有する。活物質層22bは、集電板22aの両面に形成されている。活物質層22bは、集電板22aの一部の領域に形成されており、負極板22の一端では、集電板22aが露出している。活物質層22bは、負極活物質、導電材、バインダーなどを含んでいる。電池1としてリチウムイオン二次電池を用いるときには、例えば、負極活物質として、カーボンを用い、集電板22aとして、銅を用いることができる。
【0026】
セパレータ23は、正極板21および負極板22の間に配置されている。セパレータ23には、電解液が含まれている。電解液は、正極板21の活物質層21bや、負極板22の活物質層22bにも含まれている。発電要素20は、2つのセパレータ23を有しており、2つのセパレータ23の間には、負極板22が配置されている。
【0027】
図3に示すように、正極板21、負極板22およびセパレータ23を積層して積層体25を構成し、積層体25を軸芯24の周りに巻き付けることにより、発電要素20が構成される。軸芯24の外周面には、セパレータ23が接触している。また、図2に示すように、発電要素20の外周面には、セパレータ23が位置している。軸芯24の長手方向における一端では、正極板21の集電板21aだけが巻かれており、軸芯24の長手方向における他端では、負極板22の集電板22aだけが巻かれている。
【0028】
正極板21の集電板21aだけが巻かれた部分は、リード(不図示)を介して、電池ケース10の蓋12と接続されている。すなわち、正極板21(集電板21a)は、電池1の正極端子として用いられる蓋12と電気的に接続されている。負極板22の集電板22aだけが巻かれた部分は、リード(不図示)を介して、電池ケース10のケース本体11と接続されている。すなわち、負極板22(集電板22a)は、電池1の負極端子として用いられるケース本体11と電気的に接続されている。
【0029】
図4は、軸芯24の外観図であり、図5は、軸芯24の断面図である。軸芯24は、長手方向における両端において、2つの大径部(接触部に相当する)24aを有する。2つの大径部24aの間には、小径部(非接触部に相当する)24bが位置している。大径部24aおよび小径部24bは、一体的に形成されている。大径部24aは、直径D1を有しており、小径部24bは、直径D2を有している。
【0030】
直径D2は、直径D1よりも小さい。直径D1,D2は、例えば、下記式(1)の関係を満たすように設定することができる。
D1:D2=10:8 ・・・(1)
【0031】
図6は、軸芯24の長手方向に沿って発電要素20を切断したときの断面図である。正極板21、負極板22およびセパレータ23の積層体25が、軸芯24に巻き付けられたとき、積層体25の内周面(具体的には、セパレータ23)は、大径部24aの外周面に接触するとともに、小径部24bの外周面から離れている。積層体25の内周面と、小径部24bの外周面との間には、スペースSが形成されている。
【0032】
軸芯24に巻かれた積層体25は、電池1の充放電時に化学反応が行われる領域(反応領域という)Aを含んでいる。反応領域Aは、正極板21の活物質層21bおよび負極板22の活物質層22bがセパレータ23を挟んで互いに向かい合っている領域である。図7は、積層体25の断面図である。図7に示すように、反応領域Aでは、活物質層21bおよび活物質層22bが、セパレータ23を挟んで互いに対向しており、活物質層21bおよび活物質層22bの間で、充放電に伴う化学反応(イオンの移動)が行われる。
【0033】
本実施例では、負極板22の活物質層22bの幅W2が、正極板21の活物質層21bの幅W1よりも狭いため、反応領域Aは、活物質層22bの幅W2によって規定される。すなわち、反応領域Aの幅は、活物質層22bの幅W2と等しくなる。ここでいう幅とは、軸芯24の長手方向における長さである。活物質層21bの幅W1が活物質層22bの幅W2よりも狭いときには、活物質層21bの幅W1によって、反応領域Aが規定される。セパレータ23の幅は、活物質層21b,22bの幅W1,W2よりも広くなっている。
【0034】
本実施例の電池1では、反応領域Aのうち、軸芯24の長手方向における両端部だけに荷重を与えている。積層体25は、緊張させながら軸芯24に巻かれるため、軸芯24の大径部24aと接触する領域において、荷重を受ける。積層体25に荷重を与える領域(拘束領域という)Bについて、具体的に説明する。
【0035】
図8において、軸芯24の長手方向における反応領域Aの幅はWaである。拘束領域Bは、反応領域Aのうち、軸芯24の大径部24aと接触する領域である。大径部24aは、軸芯24の長手方向における両端部に設けられているため、拘束領域Bは、軸芯24の長手方向における反応領域Aの両端にそれぞれ位置する。拘束領域Bの端は、反応領域Aの端と一致している。軸芯24の長手方向における拘束領域Bの幅は、Wbである。
【0036】
本願発明者は、レートが異なる条件で充放電を行いながら、電池1の複数箇所における面圧を測定したら、充放電時のレートが高くなるにつれて、反応領域Aの両端部(拘束領域Bに相当する)において、面圧が大きく変化することが分かった。電池1の面圧とは、発電要素20(積層体25)が膨らんだり、縮んだりするときの圧力である。発電要素20が膨らめば、面圧が上昇し、発電要素20が縮めば、面圧が低下することになる。例えば、圧力センサを発電要素20の測定箇所に配置することにより、面圧を測定することができる。測定箇所は、複数設けられ、複数の測定箇所は、軸芯24の長手方向において互いに異なる位置にある。
【0037】
図9から図12には、レートを変えながら充電を行ったときの電池1の面圧を示している。図9から図12において、縦軸は、電池1の面圧を示し、横軸は、軸芯24の長手方向における積層体25の位置を示している。横軸の一端は、軸芯24の長手方向における発電要素20(積層体25)の一端に相当し、横軸の他端は、軸芯24の長手方向における発電要素20の他端に相当する。図9から図12において、点線は、充電を開始する前の電池1の面圧(0秒時の面圧)を示し、実線は、充電を開始して10秒経過した後の電池1の面圧を示している。
【0038】
図9は、1Cのレートで充電を行ったときの面圧の変化を示し、図10は、12Cのレートで充電を行ったときの面圧の変化を示している。また、図11は、20Cのレートで充電を行ったときの面圧の変化を示し、図12は、32Cのレートで充電を行ったときの面圧の変化を示している。図9から図12に示すように、充電時のレートが高くなるにつれて、反応領域Aの両端(拘束領域Bに相当する)における面圧が、反応領域Aの他の領域よりも高くなる。図9から図12に示す面圧分布から分かるように、充電時のレートが20C以上になると、面圧のバラツキが大きくなりやすい。
【0039】
図13から図16には、レートを変えながら放電を行ったときの電池1の面圧を示している。図13から図16において、縦軸は、電池1の面圧を示し、横軸は、軸芯24の長手方向における積層体25の位置を示している。また、図13から図16において、点線は、放電を開始する前の電池1の面圧(0秒時の面圧)を示し、実線は、放電を開始して10秒経過した後の電池1の面圧を示している。
【0040】
図13は、1Cのレートで放電を行ったときの面圧の変化を示し、図14は、12Cのレートで放電を行ったときの面圧の変化を示している。また、図15は、20Cのレートで放電を行ったときの面圧の変化を示し、図16は、32Cのレートで放電を行ったときの面圧の変化を示している。図13から図16に示すように、放電時のレートが高くなるにつれて、反応領域Aの両端(拘束領域Bに相当する)における面圧が、反応領域Aの他の領域よりも低下している。図13から図16に示す面圧分布から分かるように、放電時のレートが20C以上になると、面圧のバラツキが大きくなりやすい。
【0041】
本実施例では、軸芯24の大径部24aを用いて、拘束領域Bに荷重を与え、拘束領域Bが充放電によって変形(膨張および収縮)するのを抑制するようにしている。積層体25が部分的に変形するのを抑制すれば、積層体25の内部における劣化のバラツキを抑制することができる。特に、20C以上のレートで充電又は放電を行うときには、面圧のバラツキが大きくなりやすいため、20C以上のレートで充電又は放電を行う電池1において、本実施例を好適に用いることができる。
【0042】
拘束領域Bは、下記式(2)に基づいて決定することができる。
【0043】
14≦Wb/Wa×100≦27 ・・・(2)
図8を用いて説明したように、Waは、反応領域Aの幅(軸芯24の長手方向における長さ)を示し、Wbは、各拘束領域Bの幅(軸芯24の長手方向における長さ)を示す。幅Wbは、反応領域Aの両端を基準とした長さである。
【0044】
幅Waを決定すれば、上記式(2)に基づいて幅Wbを決定することができる。幅Wbは、上記式(2)を満たす範囲内において、適宜設定することができる。拘束領域Bは、面圧の変化量が、反応領域Aの他の領域よりも大きい領域を特定するものである。
【0045】
上記式(2)において、幅Wa,Wbの関係が下限値(Wb/Wa×100=14)よりも小さいと、積層体25に対して、荷重を与える領域が不十分となるおそれがある。すなわち、積層体25の膨張および収縮を抑制することに関して、不十分な領域が発生してしまう。また、幅Wa,Wbの関係が、上記式(2)の上限値(Wb/Wa×100=27)よりも大きいと、面圧の変化量が小さい領域にも荷重を与えることになる。
【0046】
図17は、本実施例における電池1の抵抗増加率と、比較例としての電池の抵抗増加率との関係を示す図である。図17の縦軸は抵抗増加率を示し、横軸はサイクル数を示す。抵抗増加率は、初期状態における電池の抵抗値と、充放電を行った後における電池の抵抗値との関係を示す値であり、抵抗値の増加率を示す値である。抵抗増加率が上昇するほど、電池が劣化していることになる。サイクル数は、所定時間の充放電を繰り返して行うときの回数であり、1サイクルにおいて、所定時間の充放電が1回行われる。
【0047】
比較例1,2では、反応領域Aの全体に対して荷重を与えている。本実施例では、拘束領域Bだけに荷重を与えている。図17において、本実施例および比較例1では、30Cのレートで充放電を繰り返している。比較例2では、20Cのレートで充放電を繰り返している。
【0048】
図17に示すように、本実施例では、比較例1,2に比べて、抵抗増加率の上昇を抑制することができ、電池1の劣化を抑制することができる。
【0049】
図18に示すグラフは、拘束領域Bの幅Wbを変更したときの抵抗増加率の変化を示している。図18の縦軸は、抵抗増加率を示し、横軸は、サイクル数を示している。図18に示すグラフは、所定レートで充放電を繰り返したときの測定結果を示している。
【0050】
グラフG11は、反応領域Aの全体に荷重を与えたときの抵抗増加率の変化を示す。グラフG12,G13は、反応領域Aの一部(拘束領域B)に荷重を与えたときの抵抗増加率の変化を示す。グラフG12の試験では、下記式(3)の条件を満たすように、拘束領域Bを設定し、グラフG13の試験では、下記式(4)の条件を満たすように、拘束領域Bを設定している。なお、グラフG11〜G13の試験において、反応領域Aの幅Waは同一である。
【0051】
Wb/Wa×100=35 ・・・(3)
Wb/Wa×100=27 ・・・(4)
【0052】
図18に示すように、グラフG11,G12では、サイクル数が増えるにつれて、抵抗増加率が上昇している。一方、グラフG13では、サイクル数が増えても、抵抗増加率が上昇していない。この試験結果からも分かるように、幅Wa,Wbの関係は、上記式(2)を満たすことが好ましい。
【0053】
本実施例では、図8に示すように、軸芯24の小径部24bと積層体25の内周面との間にスペースSが形成されている。スペースSは、積層体25および軸芯24の大径部24aによって閉ざされたスペースであるため、スペースSに電解液を保持させておくことができる。
【0054】
電池1の充放電時には、積層体25の内部から積層体25の外部に電解液が漏れることもある。特に、発電要素20が膨張および収縮を繰り返すときには、積層体25の外部に電解液が漏れることがある。この場合には、スペースSに溜まっている電解液を積層体25の内部に浸入させることができる。積層体25は、軸芯24に沿って巻かれているため、電解液は、積層体25が巻かれた方向に沿って、積層体25の内部に浸入することができる。積層体25の内部に電解液を補充することにより、積層体25の内部において、電解液が減少してしまうのを抑制することができる。これにより、電解液の減少に伴う電池特性の低下を抑制することができる。
【0055】
図19は、本実施例である電池1と、比較例である電池とを用いて、容量維持率を測定した結果である。本実施例および比較例では、軸芯24の構造が異なっているだけである。すなわち、比較例における軸芯では、本実施例で説明した大径部24aおよび小径部24bが設けられていなく、軸芯の径は、軸芯の長手方向において一定である。
【0056】
容量維持率とは、初期状態にある電池の容量C1と、充放電を行った後の電池の容量C2との比率(C2/C1×100)である。初期状態とは、電池を製造した直後の状態である。図19は、充放電レートを2Cに設定し、電池の充放電を繰り返して行ったときの容量維持率の変化を示す。
【0057】
図19に示すように、本実施例では、比較例と比べて、容量維持率が低下し難くなっている。言い換えれば、本実施例では、比較例と比べて、劣化し難くなっている。本実施例では、上述したように、スペースSに溜まっている電解液を積層体25に浸入させることができるため、図19に示すように、容量維持率が低下し難くなっているものと考えられる。
【0058】
本実施例では、軸芯24が、2つの大径部24aと、1つの小径部24bとで構成されているが、これに限るものではない。すなわち、軸芯24を用いて、拘束領域Bに荷重を与えることができればよい。
【0059】
例えば、本実施例で説明した軸芯24において、小径部24bを省略することができる。すなわち、図20に示すように、2つの大径部24aに相当する一対の軸芯24を用いることができる。2つの軸芯24は、別体として構成されている。2つの軸芯24に対して、積層体25を巻くときには、2つの軸芯24を位置決めしておく必要がある。
【0060】
2つの軸芯24を配置する位置は、本実施例で説明した大径部24aが配置される位置と同様である。また、2つの軸芯24の間には、スペースSが形成されており、スペースSには、電解液を保持させておくことができる。図20に示す構成であっても、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0061】
一方、本実施例では、図8に示すように、大径部24aの幅は、拘束領域Bの幅Wbよりも広くなっているが、大径部24aの幅を、拘束領域Bの幅Wbと等しくすることもできる。すなわち、大径部24aの幅は、拘束領域Bの幅Wbと等しいか、幅Wbよりも広ければよい。また、反応領域Aのうち、拘束領域Bとは異なる領域については、軸芯24が離れていればよく、軸芯24の形状は、適宜設定することができる。
【0062】
上述した実施例で説明した構成に加えて、図21に示す構成を用いることもできる。
【0063】
図21に示す構成では、発電要素20(積層体25)の外周面に沿って、加圧部材26が配置されている。加圧部材26は、軸芯24に巻かれた積層体25の外周面を囲んでおり、拘束領域Bに対応した領域に配置されている。上述した実施例では、軸芯24を用いることにより、積層体25の内周面側から、拘束領域Bに荷重を与えている。図21に示す構成では、加圧部材26を用いることにより、積層体25の外周面側から、拘束領域Bに荷重を与えている。
【0064】
加圧部材26の幅(軸芯24の長手方向における長さ)は、拘束領域Bの幅Wbと等しいか、幅Wbよりも広ければよい。加圧部材26は、積層体25の外周面および電池ケース10の内壁面との間に挟まれ、積層体25の外周面のうち、加圧部材26と接触する領域には、荷重が加わる。積層体25の外周面のうち、加圧部材26と接触していない領域は、電池ケース10の内壁面から離れており、荷重が加わらない。
【0065】
加圧部材26は、積層体25の外周面に配置されるものであればよい。例えば、加圧部材26として、リング状に形成された部材(リング部材という)や、粘着テープなどを用いることができる。リング部材を用いるときには、軸芯24に巻かれた積層体25を、リング部材の内側に挿入すればよい。そして、積層体25に対してリング部材を位置決めすればよい。
【0066】
粘着テープを用いるときには、積層体25を軸芯24に巻いた後に、積層体25の外周面に沿って粘着テープを貼り付ければよい。粘着テープは、積層体25の外周面に沿って一回だけ巻いたり、複数回巻いたりすることができる。加圧部材26は、積層体25に荷重を与えるための厚さが必要になる。したがって、粘着テープを用いるときには、粘着テープの厚さに応じて、粘着テープを巻く回数を適宜設定することができる。
【0067】
図21に示す構成では、積層体25の外周面を囲む位置に、加圧部材26を配置しているが、これに限るものではない。加圧部材26は、積層体25の外周面を囲んでいなくてもよい。すなわち、積層体25の外周面の一部に、加圧部材26が配置されているだけでもよい。
【符号の説明】
【0068】
1:電池 10:電池ケース
11:ケース本体 12:蓋
20:発電要素 21:正極板
22:負極板 21a,22a:集電板
21b,22b:活物質層 23:セパレータ
24:軸芯 24a:大径部(接触部)
24b:小径部(非接触部) 25:積層体
26:加圧部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電を行う発電要素と、
円筒形状に形成され、前記発電要素を収容するケースと、を有し、
前記発電要素は、
正極板および負極板がセパレータを挟んで積層されており、充放電に伴う化学反応が行われる反応領域を含む積層体と、
所定軸の周りに沿って前記積層体が巻き付けられおり、前記所定軸が延びる方向における前記反応領域の両端部で前記積層体と接触するとともに、前記反応領域のうち前記両端部を除く領域で前記積層体から離れている軸芯と、
を有することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記所定軸が延びる方向における前記発電要素の一端では、前記正極板の一部が突出して巻かれており、
前記所定軸が延びる方向における前記発電要素の他端では、前記負極板の一部が突出して巻かれていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記所定軸の周りで巻かれた前記積層体の内周面と前記軸芯とによって囲まれたスペースに、電解液が収容されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記軸芯は、前記所定軸に沿って延びており、前記積層体と接触する接触部と、前記積層体から離れる非接触部とを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項5】
下記式(I)の関係を有する、
14≦Wb/Wa×100≦27 ・・・(I)
ここで、Wbは、前記反応領域に対して前記軸芯が接触する領域のうち、前記所定軸が延びる方向における幅であり、Waは、前記所定軸が延びる方向における前記反応領域の幅である、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項6】
前記発電要素の外周面と接触し、前記積層体および前記軸芯の接触領域に対応した領域に荷重を与える加圧部材を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の二次電池。
【請求項7】
前記二次電池は、20C以上のレートで充電又は放電が行われるリチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の二次電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−38030(P2013−38030A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175443(P2011−175443)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】