説明

二液タイプレジン注型方法及び注型装置

【課題】二液タイプレジンを注型する工程において、高精度な配合比率管理及び注型量の安定化が図れる二液タイプレジン注型方法及び注型装置を提供する。
【解決手段】二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出のショットで混合して注型7し、複数回のショットを行って対象製品9に注型する二液タイプレジン注型方法であって、二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出の各ショットにおける各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を事前に入手することと、注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測19することと、計測結果から得られる混合注型量を基準混合注型量と比較することと、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて各ショットにおける各レジンの吐出量を計算して対象製品における二液タイプレジンの配合割合を算出することを有することを特徴とする二液タイプレジン注型方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液タイプレジンの注型方法及び二液タイプレジンの注型装置に係り、特にモールド変圧器に二液タイプレジンを注型する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二液タイプレジンを使用する場合は、予め主剤と硬化剤の配合比率を確認した後、作業前に個別計量した値の総和を基準とした値とその混合計量値が一致する、若しくは所定の範囲内であるかの確認を手作業により実行して計量管理を行っている(特許文献1参照)。その計量値が所定の許容範囲限界に近づいた場合、混合確認計量の回数を増やすと共に必要に応じては、頻繁に個別配合比率確認計量を行い、補正していた。また、確認計量作業を繰返し行い、補正が不可能であった場合、摩耗によるものと考えられるため、装置吐出部の部品交換を行っていた。
【0003】
従来技術を説明する。図1は、従来の注型方式の構成図を示す。従来の注型方式は、硬化剤1及び主剤2をそれぞれ硬化剤側吐出部3及び主剤側吐出部4を設けた構造にて所定の配合比率となるよう押出し、それぞれの吐出レジンを混合ミキサー部5にて混ぜ合わせ、プラテン10により、搬送されてきた型本体8と巻線コイル部9との隙間に混合された二液タイプレジン7を混合ミキサー5から接続されている先端ノズル部6の位置決めを行った後、型本体8に注ぎ込むことにより、モールドトランスのコイル9の外装部を形成する注型作業を行っている。
【0004】
図2は、配合比を確認するための従来の個別計量方式を示す。本注型方式にて注型作業を開始する前には装置配管詰まりや吐出部の摩耗等の影響により配合比に影響を及ぼすため、確認計量を行う必要がある。この確認計量とは使用する二液タイプレジンである硬化剤1及び主剤2のそれぞれの理論数値及び配合比率を確認した時の混合吐出質量を基準値とし、作業前にこの混合吐出質量基準値と実吐出質量が規定の範囲内であるか確認する作業をいう。装置立上げ初期時や吐出部品の交換など条件が変わった場合はまず、硬化剤1及び主剤2のそれぞれの理論値を計量する。その方法としては次の通りである。二液タイプレジンの注型装置として一般的であるサーボモータによる直線補間制御を利用する吐出装置においては、混合ミキサー部5より当該ホースを硬化剤側個別計量受け容器12及び主剤側個別計量用受け容器13にそれぞれセットし、所定の吐出量を注ぎ込んだ後、サンプリングされた硬化剤14及び主剤15それぞれのレジンを計量する。この時、設定総質量に対しての個別理論値及び配合比率を確認すると共にそれぞれ個別に計量した質量を総和した混合吐出質量としての値を作業する上での基準値としている。
【0005】
また、図3はミキサー混合後の総和を確認するための従来の混合計量方法を示す。作業前の確認計量は通常、注型のためプラテン10により搬送された型本体8と巻線コイル部9の隙間に注ぎ込む前に先端ノズルを6を総和計量用受け容器11の真上の位置6´まで移動させ吐出させた後、混合計量のためサンプリングされた二液タイプレジン7´を受け容器11毎に装置外に取出し、測定器により計量する。この時、予め混合吐出基準値とした質量値とこの実混合吐出質量値を比較し、規定値の許容範囲以内であるか確認した後、範囲内であれば注型作業に移行する。この一連の個別計量作業及び総和計量作業は作業者により手作業で行われており、規定値の許容範囲を監視する必要があるため、特に許容範囲限界に近づいた場合、規定値の許容範囲外にならないように計量の回数を増やし、確認する必要があるため、その監視に時間を要していた。また、規定値の許容範囲の極限値にならないよう吐出量の補正を行う場合もあり、更に変更作業時間及び確認作業を要するため、問題となっている。
【0006】
図4は経時変化により特に摩耗する硬化剤側吐出部ピストン部品を示す説明図である。今回、説明対象としている二液タイプレジンの特徴としては、経時変化により特に硬化剤側が著しく摩耗することに着目できることを前提に説明する。硬化剤側吐出部3において硬化剤側吐出外形部16と吐出部ピストン部3´のクリアランス部である部分に摩耗部17が生じると摩耗により、リークする二液タイプレジン18が発生する。このリーク量は摩耗状態と関係があり、摩耗発生からある程度期間の磨耗量の場合は装置吐出制御部におけるデータ補正により対応が可能であるが、極限値に近づいた場合の摩耗状態としては補正では対応できないため、早期の部品交換を行わなければならない。しかし吐出部における部品交換時期の事前判断が難しく、適正時期の事前交換指示ができないという問題があった。
【特許文献1】特開平6−39857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来方法では、主剤と硬化剤の配合比及び設定した理論値に対するそれぞれの個別計量値を確認した後、個別に計量したそれぞれの値の総和を規定値としているが、装置の磨耗等により規定値に対する吐出データ数値を補正する必要がある場合、人間が判断して行っていたため、定期的に監視する必要があり、調整作業に時間を要していた。また、確認計量作業を繰返し行い、補正が不可能であった場合、摩耗によるものと考えられるため装置吐出部の部品交換を要するが、事前判断が難しく、適正時期の事前交換指示ができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、任意の形状を形成するための型に二液タイプレジンを注型する場合において、型本体重量を常時測定するよう測定器を設置して1ショット毎の重量の変化を測定することを特徴としている。また、二液タイプレジン注型方法において、型本体の重量を1ショット吐出毎に計測し、フィードバックすることにより、設定値と比較することのできる動作ソフト回路を利用し、二液タイプレジン配合比の補正ができることを特徴としている。また、二液タイプレジン注型方法において、型本体の重量を1ショット吐出毎に計測し、設定値と比較することにより二液タイプレジンを使用する製品1台の全体量に対しての注型量の補正ができることを特徴としている。
【0009】
すなわち、本発明は、二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出のショットで混合して注型し、複数回のショットを行って対象製品に注型する二液タイプレジン注型方法であって、二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出の各ショットにおける各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を事前に入手することと、注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測することと、計測結果から得られる混合注型量を前記基準混合注型量と比較することと、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて各ショットにおける各レジンの吐出量を計算して前記対象製品における二液タイプレジンの配合割合を算出することを有する二液タイプレジン注型方法である。
【0010】
また、本発明は、注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測することと、計測結果から得られる混合注型量を前記基準混合注型量と比較することと、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて以後のショットにおける各レジンの吐出量を修正し二液タイプレジン配合比の補正を行うことを有する二液タイプレジン注型方法である。
【0011】
そして、本発明は、注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測することと、計測結果から得られる混合注型量を前記基準混合注型量と比較することと、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて対象製品に使用される二液タイプレジンの注型全体量の補正を行うことを有する二液タイプレジン注型方法である。
【0012】
更に、本発明は、二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出のショットで混合して注型する手段を備え、複数回のショットを行って対象製品に注型する二液タイプレジン注型装置であって、二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出の各ショットにおける各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を記憶する手段と、注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測する手段と、計測結果から得られる混合注型量を前記基準混合注型量と比較する手段と、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて各ショットにおける各レジンの吐出量を計算して前記対象製品における二液タイプレジンの配合割合を算出する手段とを有する二液タイプレジン注型装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二液タイプレジンを注型する場合、1ショット毎の重量変化に対してフィードバック制御を行い、配合比又は1ショット吐出量をほぼ一定にするよう演算処理することにより、配合比を常に理論値に保つことができ、吐出部の磨耗によるリーク減少に対応することができる。これにより、注型される製品は常に一定の配合比及び注型量に近づけることができ、計量管理する監視時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明の二液タイプレジン注型方法及び注型装置の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1を説明する。図5は、本発明の第1の実施例における型本体を計量する測定器を設置した注型部を示す説明図である。本実施例において、プラテン10上に配置された型本体8を使用し、注型時の外形を構成した巻線コイル部品9に先端ノズル部6より混合された二液タイプレジン7を注型する際、予めプラテン10を含めた型本体8全体を測定できるよう測定器19を注型装置内に設置し、ピストンストローク動作にて設定回数の吐出を行っている注型に対して、1ショット毎に混合吐出レジン量を毎回計量を行うこととしている。二液タイプレジン7としては、例えばEPOXYRESIN MT2500AとHARDENER MT2500B(ナガセケムテックス(株)製)を使用する。混合吐出レジン量は、今回の測定値から前回の測定値を引き算することなどの方法で算出する。この毎回計量したデータは測定器19からのデータの流れ方向を示す矢印23のように演算処理するためのシーケンサ20に送信され、予め設定された規定値(基準値)に対する許容範囲の補正領域に達した場合、硬化剤側に処理指令を行う方向を示す矢印24のように硬化剤側ピストン制御部21にデータ変更指令を出す。その補正指示内容の中でも配合比率補正指示を行う場合は、主剤側ピストン制御部22に主剤側に処理指令を行う方向を示す矢印25のように指令を出す。このように、それぞれのピストン制御部21、22に指令を出して常に配合比率を一定にするよう制御することができる。これにより二液タイプレジンを注型する場合、1ショット毎の重量変化に対してフィードバック制御を行い、配合比及び1ショット吐出量を一定にするよう演算処理することにより、配合比を常に理論値に保つことができ、吐出部の磨耗によるリーク減少に対応することができ、注型される製品は常に一定の配合比及び注型量に近づけることが可能となり、計量管理する監視時間を短縮することができる。
【0016】
予め設定された基準値としては、事前に二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出の各ショットにおける各レジンの吐出量及び混合注型量を計測し、それぞれ基準吐出量及び基準混合注型量とする。各ショットにおける基準混合注型量は、各レジンの基準吐出量と対応させる。なお、全てのショットについて計測する代わりに、適当な数のみ計測するとともに、計測しないショットについては、補間法や理論的になどで算出することも可能である。また、一方のレジンの吐出量が各ショットで不変であるときは、他のレジンのみの吐出量について基準値を作成することも可能である。
【0017】
配合比率補正の手順の一例を示すと、計測時のショットの混合注型量を計測して計測混合注型量を得る。次に、各ショットにおける基準吐出量と基準混合注型量を使用し、計測混合注型量の値に近い基準混合注型量を見出すとともに、その基準混合注型量に対応する各レジンの基準吐出量を得、その比が計測時のショットにおける配合比率である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
二液タイプレジンを使用する注型分野においては、吐出部の摩耗によるリーク減少に対応する調整作業に時間を要しているが、いかに信頼性が高く、安価な製品であるか要求される。本発明は、測定データを利用して演算処理することにより、配合比率の自動補正ができる方式であり、その要求に応えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の注型方式の構成図。
【図2】配合比を確認するための従来の個別計量方式を示す説明図。
【図3】ミキサー混合後の総和を確認する従来の計量方法を示す説明図。
【図4】経時変化により特に摩耗する硬化剤側の吐出部ピストン部品のリーク減少を示す説明図。
【図5】実施例における型本体を計量する測定器を設置した注型部を示す説明図。
【符号の説明】
【0020】
1・・・硬化剤、2・・・主剤、3・・・硬化剤側吐出部、3´・・・吐出部ピストン部、4・・・主剤側吐出部、5・・・混合ミキサー部、6・・・先端ノズル部、6´・・・サンプリングのため移動された先端ノズル部、7・・・混合された二液タイプレジン、7´・・・混合後計量のためにサンプリングされた二液タイプレジン、8・・・型本体、9・・・巻線コイル部、10・・・搬送プラテン、11・・・総和計量用受け容器、12・・・硬化剤側個別計量用受け容器、13・・・主剤側個別計量用受け容器、14・・・個別計量のためにサンプリングされた硬化剤、15・・・個別計量のためにサンプリングされた主剤、16・・・硬化剤側吐出外径部、17・・・吐出ピストン部外径摩耗部、18・・・吐出ピストン部摩耗によりリークする二液タイプレジン、19・・・型本体測定器、20・・・演算処理するためのシーケンサ、21・・・硬化剤側ピストン制御部、22・・・主剤側ピストン制御部、23・・・測定器からのデータ流れ方向を示す矢印、24・・・シーケンサから硬化剤側へ処理指令を行う方向を示す矢印、25・・・シーケンサから主剤側へ処理指令を行う方向を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出のショットで混合して注型し、複数回のショットを行って対象製品に注型する二液タイプレジン注型方法であって、
二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出の各ショットにおける各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を事前に入手することと、注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測することと、計測結果から得られる混合注型量を前記基準混合注型量と比較することと、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて各ショットにおける各レジンの吐出量を計算して前記対象製品における二液タイプレジンの配合割合を算出することを有することを特徴とする二液タイプレジン注型方法。
【請求項2】
請求項1記載の二液タイプレジン注型方法において、
注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測することと、計測結果から得られる混合注型量を前記基準混合注型量と比較することと、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて以後のショットにおける各レジンの吐出量を修正し二液タイプレジン配合比の補正を行うことを有することを特徴とする二液タイプレジン注型方法。
【請求項3】
請求項1記載の二液タイプレジン注型方法において、
注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測することと、計測結果から得られる混合注型量を前記基準混合注型量と比較することと、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて対象製品に使用される二液タイプレジンの注型全体量の補正を行うことを有することを特徴とする二液タイプレジン注型方法。
【請求項4】
二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出のショットで混合して注型する手段を備え、複数回のショットを行って対象製品に注型する二液タイプレジン注型装置であって、
二液タイプレジンの各レジンの所定量の吐出の各ショットにおける各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を記憶する手段と、注型中の対象製品の重量を1ショット吐出毎に計測する手段と、計測結果から得られる混合注型量を前記基準混合注型量と比較する手段と、各レジンの基準吐出量及び基準混合注型量を用いて各ショットにおける各レジンの吐出量を計算して前記対象製品における二液タイプレジンの配合割合を算出する手段とを有することを特徴とする二液タイプレジン注型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−181942(P2007−181942A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−434(P2006−434)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】