説明

二液型ポリウレタン系硬化性組成物

【課題】硬化の過程でふくれや亀裂が生じにくく、機械強度に優れ、防水材用塗膜組成物や床材用塗膜組成物等に利用できる二液型ポリウレタン系硬化性組成物を提供する。
【解決手段】イソシアネート基含有化合物を含む主剤と、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)を50〜75質量%、および3核体以上のオルソクロロアニリン骨格多核体を25〜50質量%含有する芳香族ポリアミンを活性水素化合物として含む硬化剤とからなる二液型ポリウレタン系硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二液型ポリウレタン系硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー等のイソシアネート基含有化合物を含む主剤と、ポリアミン等の活性水素化合物を含む硬化剤とを含有する二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、その優れた柔軟性により、塗料、防水材、床材、シーリング材、弾性舗装材等の幅広い用途に用いられている。なかでも、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(以下、MBOCAと記す。)は、イソシアネート基含有化合物との反応性が良好で、常温での可使時間と硬化性に適度なバランスを有し、また、形成された硬化物が耐水性、耐久性、防水性等の機械物性に優れるポリウレタン系硬化性組成物が得られる。このことから、MBOCAを、硬化剤の活性水素化合物として用いた二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、防水材や床材として広く利用されている。
【0003】
例えば、活性水素化合物としてMBOCAを用いた、防水材や床材用途の二液型ポリウレタン系硬化性組成物としては、ポリオキシプロピレンポリオール等のポリオールと、トリレンジイソシアネートとの反応により得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを含む主剤と、ポリオキシプロピレンポリオールとMBOCAとを含有する硬化剤を混合して得られる二液型ポリウレタン系硬化性組成物等が挙げられ、これらが従来から好ましく使用されている。
【0004】
また、下記特許文献1には、特定のビスフェノール基含有ジオールを必須成分として、トリレンジイソシアネートと反応させて得られたイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主成分とする主剤と、MBOCAおよび/またはその変性物を主成分とする硬化剤とを用いた床材用途の二液型ポリウレタン系硬化性組成物について開示されている。
【0005】
更にまた、下記特許文献2には、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを含有する主剤と、MBOCAの75〜95モル%とジエチルトルエンジアミンの25〜5モル%からなる芳香族ポリアミンと、ポリオールと、有機金属触媒とを含有し、芳香族ポリアミンのアミノ基とポリオールの水酸基の当量比が1:1ないし9:1である硬化剤を用いた防水材用途の二液型ポリウレタン系硬化性組成物について開示されている。
【特許文献1】特開2000−7986号公報
【特許文献2】特開2000−7989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MBOCAは常温では固体であり、また、結晶性が高く、可塑剤や溶剤への溶解安定性が悪いため、通常はポリオキシプロピレンポリオール等のポリオール類に溶解させて使用している。上記特許文献1、2においても、ポリオール等に溶解させて用いている。MBOCAの融点は98℃以上と高く、取り扱いが難しいものであり、硬化剤の組成に組み込むためにはMBOCAの溶解工程に多大な手間を要していた。
【0007】
また、MBOCAをポリオール類に溶解させて使用することで、活性水素化合物中のMBOCAの濃度が減少し、MBOCAの特徴であるイソシアネートとの優れた反応性等が損なわれて、硬化速度が低下してしまう。なお、ポリオールはイソシアネートとの反応性が低く、そのため、オクチル酸鉛等の有機金属系の硬化触媒を併用して常温での可使時間と硬化性とのバランスを調整しているが、該バランスの調整は難しいものであった。
【0008】
また、活性水素化合物としてMBOCAを用いた、二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、硬化初期段階における塑性状態が長く続く。そのため、該ポリウレタン系硬化性組成物を塗膜組成物として用いた場合、この塑性状態の間に、熱膨張差等による下地の動きや、下地からの水分の蒸発による押し上げ等によって、ふくれ等が生じることがある。また、壁面や床等の下地(躯体)に塗工しやすくするために、希釈溶剤を更に加えて適度な粘度に調整した場合には、硬化過程において、希釈溶剤等の揮発成分が蒸発し、それによって、表面等に亀裂が生じる問題も有していた。
【0009】
従って本発明の目的は、硬化過程でのふくれや亀裂が生じ難く、形成された硬化物が機械強度に優れ、防水材用塗膜組成物や床材用塗膜組成物等として利用できる二液型ポリウレタン系硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
MBOCAは、オルソクロロアニリンと、ホルムアルデヒドと、必要に応じて少量のアニリンとを縮合させることで得られる縮合生成物(2核体)である。通常はオルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体を10質量%程含んだ混合物(以下、ピュアMBOCAと記す。)として存在し、該ピュアMBOCAがMBOCA原料として使用されている。なお本発明においてオルソクロロアニリン骨格とは、芳香族ポリアミンの分子内の2‐クロロアニリンに由来する部分分子構造を意味する。また、多核体とは、芳香環を複数個有する化合物であることを意味する。
【0011】
本発明者らは、このピュアMBOCAについて種々の検討を行った結果、ピュアMBOCA中のMBOCAの含有量を調整することで、イソシアネートとの反応が良好となり、常温での硬化性に優れ、硬化過程でのふくれや亀裂等の発生を防止でき、MBOCAの取り扱い性を良好にでき、形成された硬化物が機械物性に優れることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明の二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、イソシアネート基含有化合物を含む主剤と、活性水素化合物としてポリアミンを含む硬化剤とからなるポリウレタン系硬化性組成物であって、前記ポリアミンが、前記ポリアミン全体100質量%に対して4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)を50〜75質量%、オルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体を25〜50質量%含有する芳香族ポリアミンであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、防水材用塗膜組成物、または床材用塗膜組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、活性水素化合物として用いる、MBOCAを50〜75質量%、オルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体を25〜50質量%含有する芳香族ポリアミンは、常温で液体であり、容易に可塑剤等に溶解させて用いることができる。そのため、ポリオール等に溶解させて使用する必要がなく、主剤等との混合性に優れる。このため、取り扱い性が良好であり、すなわち、ポリオール類を使用せず、硬化触媒を使用しないため、MBOCAの濃度が減少せず、可使時間が長くでき、イソシアネートとの反応性に優れる。また、硬化速度が速くでき、形成された硬化物は機械物性に優れる。機械物性としては、硬度が高く、亀裂が発生せず、ふくれが発生せず、伸びが良好であり、機械強度に優れる。
【0015】
また、この芳香族ポリアミンは、多核体の含有量が多く高分子量であるため、ピュアMBOCA等の従来のMBOCA原料よりも反応が緩やかであり、また、多官能性であることから、硬化の過程でポリウレタン系硬化性組成物が塑性状態になり難く、ふくれ、亀裂が生じ難い。
【0016】
そして、本発明の二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、該組成物を用いて形成された硬化物が防水性や強度等の機械物性に優れることから、例えば、防水材用塗膜組成物や床材用塗膜組成物として好適に用いることができる。なかでも、可使時間を充分確保できることから、手塗りタイプとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、イソシアネート基含有化合物を含む主剤と、MBOCAを50〜75質量%、およびオルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体を25〜50質量%含有する芳香族ポリアミン(以下、この芳香族ポリアミンを粗MBOCAと記す。)を活性水素化合物として含む硬化剤とを含むものである。
【0018】
以下、各成分について詳しく説明する。
【0019】
本発明の二液型ポリウレタン系硬化性組成物の主剤に用いるイソシアネート基含有化合物は、ポリイソシネートをポリオールによってプレポリマー化したイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーが好ましい。
【0020】
前記ポリイソシアネートとしては、イソシネート基を2個以上有する芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、およびこれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートが挙げられ、このうち芳香族系ポリイソシアネートが硬化物の諸物性に優れる点で好ましい。前記芳香族系ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(通常;クルードMDI)が挙げられる。また、脂肪族系ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)が挙げられる。
【0021】
このようなイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーの原料となるポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂肪族系、変性ポリイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。そして、得られるポリウレタンプレポリマーの粘度、活性水素化合物との反応性、活性水素化合物と反応硬化して得られるポリウレタン系硬化物は機械強度等に優れることから、トリレンジイソシアネートが好ましい。なかでも、可使時間が充分確保できることから、2,4−異性体の含有率が85質量%以上であるトリレンジイソシアネートが好ましく、95質量%以上であるトリレンジイソシアネートがより好ましい。
【0022】
プレポリマー化に用いるポリオールの平均官能基数は、2〜3であることが好ましく、2.0〜2.5であることがより好ましく、2.0〜2.2であることが最も好ましい。平均官能基数が2以上であれば、ポリウレタン系硬化性組成物が高分子量化されやすくなり、ポリウレタン系硬化物の機械強度が充分確保でき、また、3以下であれば、架橋密度が高くなり過ぎず適度にでき、ポリウレタン系硬化物の伸び性能に優れる。
【0023】
プレポリマー化に用いるポリオールの水酸基価は、得られるイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーの粘度、ポリウレタン系硬化物の機械強度、伸び性能等のバランスに優れることから、8〜300mgKOH/gが好ましく、40〜80mgKOH/gがより好ましい。
【0024】
本発明においては、プレポリマー化に用いるポリオールとしては、ポリプロピレングリコールが好ましく、ポリオキシプロピレンジオールとポリオキシプロピレントリオールの混合物であり、そのモル比が、(70〜100)/(30〜0)であるものがより好ましい。
【0025】
主剤に用いるプレポリマーにおけるイソシアネート基末端ポリウレタンのイソシアネート基含有量は、用途により異なり、例えば床材として用いる場合は5〜8質量%が好ましい。5質量%以上であれば、ポリウレタン系硬化物の硬度が高く、床材としての機械強度を発揮でき、また、8質量%以下であれば、活性水素化合物との反応速度が速くなりすぎず、手塗り用に充分な可使時間と、良好な硬化性とを備えることができる。また、防水材として用いる場合は2〜5質量%が好ましい。2質量%以上であれば、防水材としての良好な機械強度を備えることができ、また、5質量%以下であれば、ポリウレタン系硬化物の硬度が硬くなりすぎず、防水材としての充分な伸び性能を備えることができる。
【0026】
本発明の二液型ポリウレタン系硬化性組成物の硬化剤は、活性水素化合物として、粗MBOCAを含むものであり、MBOCAを55〜65質量%、オルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体を35〜45質量%含有する粗MBOCAがより好ましい。
【0027】
オルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体の含有量が25質量%以上であれば、粗MBOCAは常温で液状であり、また、可塑剤にも溶解しやすく硬化剤の成分としてポリオールが不要であり硬化性に優れる。そして、MBOCAに特有の結晶性が大幅に緩和できるため、硬化の過程においてポリウレタン系硬化性組成物が塑性状態になり難く、溶剤を多用してもふくれや亀裂等が生じにくい。また、オルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体の含有量が50質量%以下であれば、粗MBOCAの粘度が高くなりすぎず適度となり、主剤との混和性に優れ、また、イソシアネートとの反応性が良好であることから、良好な硬化性を維持できる。
【0028】
本発明で用いられる粗MBOCAは、オルソクロロアニリンと、ホルムアルデヒドと、必要に応じて少量のアニリンとを縮合させることで得られる縮合生成物において、縮合の割合を変える(縮合度を高くする)ことにより得られる。また、縮合度の低い組成物から減圧蒸留により2核体を留去して、多核体を濃縮しても得られる。
【0029】
本発明の粗MBOCAは常温で液状であり、硬化剤の成分としてポリオールは不要であるが、必要に応じてポリオールを用いても良い。そして、ポリオールは、官能基数、分子量の異なる複数のポリオールを併用しても良い。
【0030】
硬化剤の成分として用いるポリオールとしては、平均官能基数2〜4の開始剤にプロピレンオキシドを反応させて得られたポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。
【0031】
硬化剤として用いるポリオールの平均官能基数としては、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。ポリオールの平均官能基数が2以上であれば、ポリウレタン系硬化性組成物が高分子量化しやすく、ポリウレタン系硬化物の機械強度が充分確保でき、また、3以下であれば、架橋密度が高くなり過ぎず、ポリウレタン系硬化物の伸び性能に優れる。また、ポリオールの平均水酸基価は14〜300mgKOH/gが好ましく、56〜200mgKOH/gがより好ましい。
【0032】
硬化剤におけるポリオールの含有量は、粗MBOCA100質量部に対し、300質量部以下とすることが好ましく、230質量部以下とすることが好ましく、ポリオールを使用しないことが最も好ましい。ポリオールが300質量部以下であれば、主剤と硬化剤との反応性を損なうことがないので、良好な硬化性を維持できる。
【0033】
硬化剤にポリオールを用いた場合、主剤のイソシアネート基の反応を完結させるため、硬化触媒を使用してもよい。
【0034】
硬化触媒としては、特に限定はなく、ウレタン化反応を促進させる公知の触媒を用いることができ、オクチル酸鉛やイミダゾール系のアミン触媒が特に好ましい。なお、これらの硬化触媒は、硬化剤に予め混合させて使用してもよい。
【0035】
硬化剤には、活性水素化合物の他に、充填剤、顔料、安定剤、可塑剤、溶剤から選ばれる添加剤を含有しても良い。
【0036】
充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、カーボン等が挙げられる。
【0037】
顔料としては、酸化クロム、酸化チタン等の無機顔料、およびフタロシアニン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0038】
可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、塩素化パラフィン、石油系可塑剤等が使用できる。また、大豆油脂肪酸(分析例:リノール酸54%、オレイン酸24%、パルミチン酸10%、リノレン酸8%、ステアリン酸4%)、糠油脂肪酸(分析例:リノール酸38%、オレイン酸41%、パルミチン酸17%、ステアリン酸2%、リノレン酸2%)等の脂肪酸のメチルエステルであるモノカルボン酸メチルエステル混合物も可塑剤として使用できる。
【0039】
更に、ポリウレタン樹脂に一般的に使用される酸化防止剤、紫外線吸収剤、脱水剤等の安定剤を配合してもよい。
【0040】
本発明の二液型ポリウレタン系硬化性組成物において、主剤と硬化剤の混合割合は、主剤のイソシアネート基と、硬化剤の活性水素基との当量比(NCO/(NH+OH))が1.0〜1.3となるように混合することが好ましい。
【0041】
そして、主剤と硬化剤との混合質量比は、(主剤/硬化剤)=1/(0.5〜3)が好ましく、1/(1〜2)がより好ましい。
【0042】
上記構成からなる二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、硬化性に優れ、充分な可使時間を保持することができ、更には、硬化初期での塑性状態が改善されているため、ふくれや亀裂が発生し難い。そして、該硬化性組成物を反応硬化させて得られたポリウレタン系硬化物は、保護仕上げ材(トップコート)との接着性に優れ、また、機械強度や伸び性能等に優れ、防水材や床材等の用途に使用できる防水材用塗膜組成物、床材用塗膜組成物等として用いることができる。そして、可使時間を充分確保できることから手塗りタイプとして好適である。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例(例1〜6)、比較例(例7〜10)を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、各例でMBOCAの原料として使用するピュアMBOCAおよび粗MBOCA(1)〜(5)は、下記表1に示す多核体分布を有するものを用いた。多核体分布は、メタノールと水の体積比(メタノール/水)が7/3〜8/2の溶媒を移動層の溶媒として使用し、高速液体クロマトグラフ(High Performance liquid Chromatography)を用いて測定した。また、MBOCA原料とフタル酸ジオクチルを1:1の質量比にて混合した溶液を加熱溶融した混合液を、23℃にて、48時間放置させ、結晶の析出の有無を確認し、各MBOCA原料の可塑剤との相溶性を評価した。これらの結果を表1に併せて記す。
【0044】
なお、このような粗MBOCAは例えば和歌山精化工業(株)から入手することができる。
【0045】
【表1】

【0046】
(例1)
ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;2000)の18.9質量部と、ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;400)の36.1質量部と、トリレンジイソシアネート(2,4−異性体80質量%)の31.2質量部とを反応させ(NCO/OHモル比=1.80)、これにキシレンの13.8質量部を添加して、NCO基含有率を6.7質量%としたイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー組成物を得て、これを主剤とした。
【0047】
粗MBOCA(1)(MBOCA(2核体)含有量70.50質量%)の17.0質量部を、フタル酸ジオクチルの17.0質量部に、80℃で溶解させ、常温まで冷却させた後に、フタル酸ジオクチルの16.6質量部と、炭酸カルシウムの46.3質量部と、顔料ペーストの3.1質量部とを加えて混合し硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/NHモル比=1.25)として混合して組成物1を得た。
【0048】
(例2)
例1と同じイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主剤とした。粗MBOCA(4)(MBOCA(2核体)含有量64.97質量%)の17.0質量部を、フタル酸ジオクチルの17.0質量部に、80℃で溶解させ、常温まで冷却させた後に、フタル酸ジオクチルの16.6質量部と、炭酸カルシウムの46.3質量部と、顔料ペーストの3.1質量部とを加えて混合し硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/NHモル比=1.25)として混合して組成物2を得た。
【0049】
(例3)
例1と同じイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主剤とした。粗MBOCA(2)(MBOCA(2核体)含有量60.13質量%)の17.0質量部を、フタル酸ジオクチルの17.0質量部に、80℃で溶解させ、常温まで冷却した後に、フタル酸ジオクチルの17.2質量部と、炭酸カルシウムの45.7質量部と、顔料ペーストの3.1質量部とを加えて混合し硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/NHモル比=1.25)として混合して組成物3を得た。
【0050】
(例4)
例1と同じイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主剤とした。粗MBOCA(3)(MBOCA(2核体)含有量53.42質量%)の17.0質量部を、フタル酸ジオクチルの17.0質量部に、80℃で溶解させ、常温まで冷却した後に、フタル酸ジオクチルの16.6質量部と、炭酸カルシウムの46.3質量部と、顔料ペーストの3.1質量部とを加えて混合した液を硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/NHモル比=1.25)として混合して組成物4を得た。
【0051】
(例5)
ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;2000)の37.4質量部と、ポリオキシプロピレントリオール(平均分子量;400)の1.6質量部と、ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;400)の18.3質量部と、トリレンジイソシアネート(2,4−異性体80質量%)の25.8質量部とを反応させ(NCO/OHモル比=2.12)、これにフタル酸ジオクチルの8.8質量部と、キシレンの8.1質量部とを添加して、NCO基含有率を6.6質量%としたイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを得て、これを主剤とした。
【0052】
粗MBOCA(4)(MBOCA(2核体)含有量64.97質量%)の14.2質量部を、ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;2000)の26.0質量部に、80℃で溶解させ、常温に冷却した後に、炭酸カルシウムの54.8質量部と、顔料ペーストの3.2質量部と、オクチル酸鉛(鉛含有量24質量%)の0.3質量部と、キシレンの1.5質量部とを加えて混合し硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/(NH+OH)モル比=1.25)として混合して組成物5を得た。
【0053】
(例6)
ポリオキシプロピレントリオール(平均分子量;3000)の8.9質量部と、ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;3000)の80.0質量部と、トリレンジイソシアネート(2,4−異性体80質量%)の11.1質量部とを反応させ(NCO/OHモル比=2.05)、NCO基含有率2.7質量%のイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを得て、これを主剤とした。
【0054】
粗MBOCA(2)(MBOCA(2核体)含有量60.13質量%)の8.2質量部に、フタル酸ジオクチルの28.5質量部と、炭酸カルシウムの60質量部と、顔料ペーストの3質量部と、オクチル酸(鉛含有量24質量%)の0.3質量部とを加えて混合し硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/NHモル比=1.05)として混合して組成物6を得た。
【0055】
(例7)
例1と同じイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマー溶液を主剤とした。ピュアMBOCA(MBOCA(2核体)含有量89.50質量%)の18.0質量部を、フタル酸ジオクチルの32.6質量部に、80℃で溶解させ、常温まで冷却した後に、炭酸カルシウムの46.3質量部と、顔料ペーストの3.1質量部とを加えて混合し硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/NHモル比=1.25)として混合して組成物7を得た。
【0056】
(例8)
例5と同じイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主剤とした。粗MBOCA(5)(MBOCA(2核体)含有量82.89質量%)の13.5質量部を、ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;2000)の25.2質量部に、80℃で溶解させ、常温まで冷却した後に、フタル酸ジオクチルの3.3質量部と、炭酸カルシウムの54.5質量部と、顔料ペーストの3.2質量部と、オクチル酸鉛(鉛含有量24質量%)の0.3質量部とを加えて混合し硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/(NH2+OH)モル比=1.25)として混合して組成物8を得た。
【0057】
(例9)
例6と同じイソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを主剤とした。ピュアMBOCA(MBOCA(2核体)含有量89.50質量%)の5.7質量部に、ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量;2000)の12.5質量部と、フタル酸ジオクチルの18.0質量部と、炭酸カルシウムの60質量部と、顔料ペーストの3質量部と、オクチル酸鉛(鉛含有量24質量%)の0.8質量部とを加えて混合し硬化剤とした。そして、主剤/硬化剤の割合を、質量比で1/1(NCO/(NH2+OH)モル比=1.05)として混合して組成物9を得た。
【0058】
〔性能評価〕
例1〜5、例7〜8の床材、および例6、例9の防水材について、下記の項目の評価を行い、結果を表2に示す。
【0059】
<耐亀裂性>
得られた組成物1〜9に、キシレンを更に加えて下記濃度に希釈し、試験液1〜9を得た。得られた試験液1〜9を、それぞれスレート板上に、2.0kg/mの塗布量にて塗布した後、直ちに60℃の恒温槽に入れ、12時間後の状況(表面の膨れ、亀裂の有無)を目視で評価した。なお、キシレンの希釈量は、該主剤と硬化剤との合計量に対して、0質量%(無希釈)、5質量%、10質量%とした。
【0060】
<歩行可能時間>
得られた組成物1〜9を23℃、相対湿度50%の条件下でスレート板上に2.0kg/mの塗布量にて塗布し、タックがなく、塗布面を歩行してもその跡が残らなくなるまでの時間(歩行可能時間)(単位:時間)を求めた。
【0061】
<可使時間>
23℃、50%RHの実験室にて、例1〜9の主剤と硬化剤とを例1〜9と同様の比率で混合し、混合開始から100Pa・sの粘度に到達する時間(可使時間)(単位:分)を測定した。可使時間が40分以上であれば夏場においても充分、施工できると判断した。
【0062】
<塗膜物性>
JIS A 6021に準じ、塗膜の機械物性(引張り強度(Ts)(単位:N/mm)、引裂き強度(Tr)(単位:N/mm)、および破断時の伸び(E)(単位:%))を測定した。






【0063】
【表2】

【0064】
上記結果より、硬化剤としてオルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体の含有量が25質量%以上の粗MBOCAを使用していない例7、8の床材は、硬化途上で亀裂が生じやすく、また、例1〜5の床材と比べて機械強度に劣るものであった。なかでも、硬化剤としてMBOCAの含有量が89.5質量%のピュアMBOCAを使用した例7は、可塑剤(フタル酸ジオクチル)中にMBOCAが析出してしまい、硬化剤としての使用に適さないものであった。
【0065】
また、防水材の場合も同様であり、MBOCAの含有量が89.5質量%のピュアMBOCAのみを使用した例9の防水材は、ポリオール中にMBOCAが析出しがちであった。また、この硬化剤を用いて得られた例9の防水材は、例6の防水材と比べて機械強度の劣るものであり、また、可使時間も劣るものであった。
【0066】
よって本発明によれば、MBOCAを50〜75質量%、オルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体を25〜50質量%含有する粗MBOCAを、硬化剤の活性水素化合物と共に使用することで、硬化初期におけるポリウレタン系硬化性組成物の塑性状態を改善でき、ふくれや亀裂の発生を防止できる。また、充分な可使時間と、硬化性に優れ、機械強度に優れた、二液型ポリウレタン系硬化性組成物を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の二液型ポリウレタン系硬化性組成物は、例えば、防水材用塗膜組成物、床材用塗膜組成物として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有化合物を含む主剤と、活性水素化合物としてポリアミンを含む硬化剤とからなるポリウレタン系硬化性組成物であって、
前記ポリアミンが、前記ポリアミン全体100質量%に対して4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)を50〜75質量%、オルソクロロアニリン骨格を有する3核体以上の多核体を25〜50質量%含有する芳香族ポリアミンであることを特徴とする二液型ポリウレタン系硬化性組成物。
【請求項2】
前記二液型ポリウレタン系硬化性組成物が、防水材用塗膜組成物、または床材用塗膜組成物である請求項1に記載の二液型ポリウレタン系硬化性組成物。

【公開番号】特開2007−119664(P2007−119664A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315859(P2005−315859)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(593077951)旭硝子ポリウレタン建材株式会社 (12)
【Fターム(参考)】