説明

二置換ハイドロキノンの製造

スルホン酸縮合触媒の存在下で、ハイドロキノンをオレフィン、または反応条件下でオレフィン源として作用する物質とアルキル化することを含む二置換ハイドロキノンの製造方法。好ましいオレフィンは2−メチル−2−ブテン単独またはその異性体の混合物であり、好ましい触媒はメタンスルホン酸であり、反応生成物は2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノンである。触媒量だけの触媒を必要とする。反応生成物は所望の生成物を完全に溶解し、pH緩衝能と還元活性を併せ有する水性媒体で洗浄することによって、後処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗酸化剤として有用な二置換ハイドロキノンの製造に関する。詳細には、これらの抗酸化剤は純度を特徴とし、それは水性抗酸化剤分散液のような特別な用途、および究極的に高分子マトリックス中で必須である。これは、特に材料の変色が明らかな問題を呈する白色または透明な高分子に対して確かである。
【背景技術】
【0002】
技術文献および特許文献から、触媒の存在下でカルボカチオン化学種を形成する試薬による、フェノール類、特にハイドロキノンのような多価フェノール類のアルキル化に影響する多数の例が知られている。
【0003】
そのような転化の技術は文献に見られ、それは1892年にまでも遡る(Koenig,Ber.1892,25,2649)。具体的にはハイドロキノンとイソアミレンのジアルキル化は非常に大量の濃度の高い硫酸の下で行われ、硫酸は溶媒としても作用する。大量の比較的濃度の高い硫酸を用いた類似例は、特許文献、例えば米国特許第2469101号または米国特許第2832808号に示されている。もう一つの古い方法が米国特許第2439421号に記載されている。特殊なアルキルハライドのハイドロキノン、レゾルシノールまたはカテコールによる転化がアルコール中で、非常に大量の塩化亜鉛の存在下で行われている。
【0004】
より最近の技術には、モル量および触媒量での酸ベースの各種触媒の使用が記載されている。これらのすべては、適切な前駆体からそれぞれフェノール化合物および多価フェノール類に反応するカルボカチオンを発生するために有用であるとして引用されており、例えばGB831828では、溶媒としてのトリイソブチレンの存在下で、三フッ化ホウ素、リン酸、水素化ハライド、炭化水素スルホン酸または酸活性化粘土のような触媒の存在下の、フェノール性化合物のオレフィンによるアルキル化が考察されている。
【0005】
比較例は米国特許第4847429号(Eastman Kodak)、米国特許第5208390号(Chevron)、米国特許第6049015号(Rhodia Chimie)またはWO02/055461(Eastman)にも見られる。強酸性樹脂に基づいた極めて不均一な条件下での酸触媒による方法がDD263752(VEB Filmfabrik Wolfen)、日本特許第4103550号および日本特許第4103549号(Konica Corp)およびに日本特許第6157384号および日本特許第6157383号(Fuji Photo Film Co.)に記載されている。
【0006】
アルキル置換フェノール類および多価フェノール類の既存の製造法の多様性のために、そのような物質の合成技術に精通している当業者はベンゼンジオール類のカルボカチオン形成化合物による転化、特にハイドロキノンのイソアミレンによる転化において問題に遭遇することは予期しないであろう。勿論、れわれの目的に関して、われわれは2,5−ジイソアミルハイドロキノンの合成に関する文献に開示されている問題に関して実際的方法を見出している。更に、われわれが焦点を当てた方法は、触媒量だけの酸を特徴とし、したがって、環境問題とその結果の高コストを招く、酸の中和に由来する大量の廃棄物を回避する。
【0007】
驚くべきことに、従来から合成されている物質は、特に水性分散液に導入された場合、変色が起き易い傾向がある。その物質は白色または無色でなく、少なくとも薄いピンクまたは暗褐色に変わる。われわれはこれらの作用は、対応するキノン分子種へのハイドロキノンの酸化によることを見出した。この変色は、例えばこの物質が高品質の高分子物質の製造法に導入された場合、品質の点で大きな不利益を意味する。そのような高分子物質は、非変色性が必須である白色または透明なプラスチックであり得る。
【0008】
上に記載したような変色現象は、しばしば既知の方法内で、且つ既知の触媒を用いる反応中に、導入または形成され、且つ粗生成物の後処理手順の過程中で明らかに効果的に除去されていない不純物によるものである。ハイドロキノンおよび誘導体は比較的容易に脱水素形、即ちキノン誘導体に変換されることが知られている。これは酸化反応によるものである。Nernstによれば、酸化還元反応は環境のpH値によって効率的に影響され得るが、この環境は、われわれの例では、ジヒドロキシベンゼンが曝露される環境である。特別な場合、環境内でのプロトン濃度、即ちpH値のわずかな逸脱が、その結果キノン型の形成を促進する不安定な状態を生じる可能性がある。事実、これらの僅かな逸脱は微量の不純物によって生じる可能性がある。これは特に色相に関して確かである。
【0009】
置換ヒドロキシベンゼンの製造に関する技術文献および特許文献を詳細に検討すると、非常に類似した後処理手順が示されている。例えば、米国特許第2469101号で、発明者は酸を中和するために、アルキル化ジヒドロキシベンゼンを含む有機溶液の重炭酸ナトリウム溶液を用いる単純な洗浄を記載している。
【0010】
もう一つの例(米国特許第2832808号)では、同じ目的を達成するために、固体生成物を水で洗浄し、次いでカリウム溶液で洗浄し、再び十分な水で洗浄する。別法として、生成物を水中にスラリー化し、湿潤剤で処理し、次いで上述の洗浄を行うことが記載されている。従って、GB831828の発明者は、特に硫酸を触媒として用いた場合は、反応混合物をアルカリで中和し、次いで有機層を水で洗浄することを規定している。同様な単純な後処理手順が米国特許第4847429号(水洗浄のみ)、米国特許第5208390号(水性イソプロパノールで洗浄)、米国特許第6049015号(水洗浄のみ、還元剤の存在下で行ってもよい)またはWO02/055461(高温での水洗浄)に見られる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、スルホン酸縮合触媒の存在下で、ハイドロキノンをオレフィン、または反応条件下でオレフィン源として作用する物質でアルキル化することを包含する二置換ハイドロキノンの製造方法であって、pH緩衝能と還元活性を併せ有する水性媒体で洗浄することによって、生成物の完全な溶解下で反応生成物を後処理することを特徴とする製造方法が提供される。
【0012】
本発明は、添加剤として使用でき、あるいはなんら変色を示さずに水性分散液にさえ導入できる、本質的に非変色性の高品質のハイドロキノン類、特に2,5−ジアルキルハイドロキノンの製造に関する。この新しい方法は、均一な条件下でのカルボカチオン形成化合物を用いた芳香族ジヒドロキシ化合物の効率的な酸触媒による転化に基づいている。本発明は、pH緩衝能と還元活性を併せ有する水性媒体で反応混合物を洗浄することによって、生成物の完全な溶解下に生成物を後処理することを要する。先行技術に開示されていない後者の2つの性質の組み合わせが最終生成物および水性分散液の形における色相に関して安定性を保証する。
【0013】
本発明の方法は比較的良好な非変色挙動を有する抗酸化添加剤を提供する。
【0014】
本発明の方法は酸(スルホン酸が最も好ましい)の存在下、ベンゼンジオールとオレフィンまたはtert−アルコールとの反応および特に反応混合物をpH緩衝溶液で後処理することを含む。詳細には、本発明は特別な用途に関して優れた品質に特徴のある2,5−ジアルキルハイドロキノンの製造に焦点を当てる。この品質は、不純物、特に酸の残留物が本発明の特別な後処理によって効率的に取り除かれる場合に限って達成される非変色性によって反映される。
【0015】
合成に関しては、ベンゼンジオール、好ましくはハイドロキノンが、特別な反応条件下でその源として作用するtert−オレフィンまたは適切なアルコールであるカルボカチオンと反応する。
【0016】
オレフィンは3個から12個の炭素原子を有する直鎖、分枝または環状炭化水素が適している。
【0017】
代表的な例は2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,4−ペンタジエン、1−メチル−シクロペンテン、1−メチル−シクロヘキセンおよびイソブチレンから選択されるオレフィンであるが、決してこれらに限定されるものでない。
【0018】
オレフィンが2−メチル−2−ブテン単独またはその異性体との混合物であることが最も好ましい。
【0019】
また、脱水するか、または反応条件下で何らかの方法で除去または再配置して反応性のカルボカチオンを形成するアルコールがtert−ブチル、アミルまたはヘキシルアルコールから適切に選ばれる。
【0020】
本発明の方法は便利に実施され、特に均一な触媒条件下で適している。
【0021】
アルキル化反応には、触媒量だけの触媒が存在することが好ましい。
【0022】
触媒は反応物の0.01重量%から10重量%の量で存在することが更に好ましい。
【0023】
触媒はアルキル、アリールまたはアリールアルキルスルホン酸であってもよい。
【0024】
触媒は、式R−SOH(式中、RはCからCのアルキル、CからCのパーフルオロアルキル、フェニル、トリルまたはクレシルである)を有してもよい。
【0025】
触媒はメタンスルホン酸であることが好ましい。
【0026】
本方法は芳香族または脂肪族溶媒の存在下で便利に行われる。
【0027】
芳香族溶媒はベンゼン、トルエンまたはキシレンまたはその混合物であってもよい。
【0028】
脂肪族溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンまたはその混合物、トリイソブチレンまたは石油エーテルであってもよい。
【0029】
アルキル化反応は35°Cから130°Cの温度、好ましくは55°Cから75°Cの温度で適切に行われる。
【0030】
最も重要なことはpH緩衝能と任意に還元活性を併せ有する水性媒体で洗浄することによって、生成物の完全な溶解下に反応生成物を後処理することである。当然ながら、pH緩衝は塩基領域で行わなければならない。所望の化合物は、固体の生成物の中に包み込まれ得る酸を効果的に中和するために、完全に溶解されていなければならない。このような方法によってのみ、劣化性が取り除かれ、従って非変色性物質が得られる。好ましくない副反応を起こさずに、中和を成功するために塩基の正確な用量が重要である。従って単なるアルカリ性試薬単独では、pHを必要以上に高い値に押し上げ、それによって変色が生じるので、十分に効率的でない。そのような極端なアルカリ性条件はまさに芳香族性ヒドロキシ基の脱プロトン化を促進し、それによって電子の多い部分の酸化を容易にする。従ってNaHPOのような軽度の塩基性試薬が適切である。最も好ましいことは、この化合物の溶液がpH緩衝性(NaHPO+H→NaHPO+Na)を示すことであり、これが極端なpH値の形成を阻害する。例えばNaHPOの4%水性溶液は約9の軽度に塩基性のpH値を与える。還元剤として、NaSOまたは類似物は酸化性不純物を破壊し、酸化された分子種をハイドロキノンの相手方に逆変換するためにそれぞれ用いることができる。
【0031】
本発明の方法は、非変色性が必須である重要な用途のための2,5−ジtert−アミルハイドロキノンの製造に特に適している。
【0032】
以下の実施例では本発明の性質と、それを実施する方法を説明する。
【0033】
(実施例1)
110.1g(1.000モル)のハイドロキノン(HQ)を132.0gのトルエンとともにオートクレーブに入れる。Nでパージした後、3.30g(0.0343モル)のメタンスルホン酸を加え、混合物を60°Cに加熱する。55°Cで開始し、158.5g(2.260モル)のイソアミレンを3.5時間以内に加える。二次反応を65°C−70°Cで3.5時間行い、次いで反応混合物を397.6gのトルエンで希釈する。次いで、約70%の遊離酸を中和するために、25.7g(8%、0.0245モル)のNaHCO溶液を70°Cで7分以内に加える。固形化した生成物内で採取した酸の残留物を効果的に中和し、中間的に形成したキノン分子種を除去するために、4%のNaHPOと1%のNaSOからなる74.1gの水性溶液を攪拌下で23分以内に加える。同時に、生成物の完全な溶解を保証するために、反応混合物を90°Cに加熱する。25分間攪拌後、重い、水性層を先述の温度で排出する。その後、もう一度洗浄するために、上で使用した196.3gの緩衝溶液(II)を同一条件下で加える。排出された水性層のpHは7.6であった。塩の不純物を除去するために、171.3gの脱イオン水を加え、60分攪拌し、次いで水性層を排出する。有機溶液を0°Cまで徐々に冷却し沈殿させる。この温度でろ過し、200gの冷トルエンで洗浄後、回転蒸発器を使用して、生成物を10mbarで最大70°Cで乾燥する。収率:92%(ハイドロキノン(HQ)に関し)


*生成物の異なった試料の場合には、構造/同定は1H−NMRスペクトロスコピーでも確認した。
*試験のために、この物質はpH値9.9を示す、水と添加物に基づく分散液の形の中に後処理した。
【0034】
(実施例2)
30.85kg(280モル)のHQ(写真グレード)をNでパージした後、300lのガラスライニング反応器に入れる。次いで43.2gのトルエンを加え、得られた懸濁液を攪拌しながら約70°Cに加熱する。加熱相の間、0.93kgのメタンスルホン酸(98%以上)[MSA]をゆっくりと添加する。所望の温度に達したならば、44.4kg(630モル)のイソアミレン(異性体の混合物)[IA]を3.5時間以内に添加する。反応を終了するために、IAを添加後、70°Cでさらに3.5時間攪拌を続ける。次いで、反応混合物を約100kgのトルエンでさらに希釈する。NaHPO(4%)とNaSO(1%)の水性溶液を中和/洗浄培地として使用する。
【0035】
先ず、反応混合物を68kgの中和溶液と混合し、80°Cから90°Cで20分間攪拌する。攪拌を停止し、相を分離後(15分)、重い水性層を排出する。約1:1の緩衝系リン酸一水素塩/リン酸二水素塩が形成されるように溶液の量を測定する。約40kgの同一の溶液で、対応した温度でもう一度洗浄する。
【0036】
条件下での洗浄後、約50kgの脱石灰水を使用した温水洗浄を行う。生成したすべての原料物質は記載した処理中、完全に溶解していることが重要である。
【0037】
攪拌しながら、洗浄した有機生成物溶液を0°C−5°Cに冷却する。この温度で、生成物は効率的に結晶化する。このように生成した懸濁液を遠心分離し、結晶生成物を冷トルエンで洗浄する。次いで、真空トレイ乾燥器中55°C/100mbarで乾燥し、生成物(HQに関して)を90%の収率で得る。


*試験のために、この物質はpH値10を示す、水と添加物に基づく分散液中に後処理した。
【0038】
(実施例2.1)pH緩衝溶液を用いず、物質の完全な溶解を行わない比較手順
【0039】
300lの攪拌容器に、60.0kgのHQ、5.65kgのp−トルエンスルホン酸1水和物(p−TSA)および58.1kgのトルエンを窒素のブランケット(blanket)下で入れ、85°Cに加熱する。次いで、この混合物に86.25kgのIAを3.5時間以内に加え、同時に温度を100°Cに加熱する。反応は大気圧で起き、水(p−TTSからの)を共沸蒸留で除去する。反応を終了するために、温度を110°Cに上げながら、反応混合物をさらに1時間攪拌する。次いで、閉じた反応器中で反応混合物を100°C未満に冷却し、濃NaHCO溶液(8%)で開放系条件下(pH=7.0)で中和する。
【0040】
懸濁液に7.50gのトルエンを加え、結晶化のために20°Cに冷却する。遠心分離およびa)トルエン(<25°C)およびb)脱石灰(<30°C)水で洗浄後、湿った生成物(66.0kg)を回転ドラム乾燥器@55°C/60mbarで水分含量<0.05%まで乾燥し、2,5−ジ−イソアミルハイドロキノン61.7kgを得る。物質は僅かにベージュ色を呈する。


*試験のために、この物質はpH値10を示す、水と添加物に基づく分散液中に後処理した。分散液はベージュ色であるが、数日内に強いピンク色になる傾向を示す。
【0041】
(実施例2.2)pH緩衝溶液を用いず、物質の完全な溶解を行わない比較手順
300lの攪拌容器に、59.3kgのHQ、5.55kgのp−TSA、0.75の亜硫酸ナトリウムおよび56.3kgのトルエンを窒素のブランケット(blanket)下で入れ、85°Cに加熱する。次いで、この混合物に84.0kgのIAを4.5時間以内に加え、攪拌しながら、温度を@85°C−90°Cに保つ。反応は大気圧で起き、水(p−TSAからの)を共沸蒸留で除去する。反応を終了するために、閉じた反応システム中で、温度を105°Cに上げながら、さらに3時間の攪拌を続ける。
【0042】
この後、反応混合物を100°C未満に冷却し、開放系@80°Cで35分以内に濃NaHCO溶液(8%)で中和する。この段階でのpHは8である。555gの蟻酸を加えて、2,5−ジ−イソアミル−ハイドロキノンの懸濁液のpHを4に調整し、攪拌しながら、温度を18°Cに下げると結晶化が起きる。
【0043】
遠心分離およびa)トルエン(25°C)および蟻酸を還元剤として用いて脱石灰水で洗浄後、湿った生成物は僅かにピンク色を呈した。
【0044】
95°C/80mbar(絶対)でトレイ乾燥器中で15時間乾燥後、生成物は赤褐色を呈し、下表の分析結果を示す。


生成物は高分子中での抗酸化剤としての使用に適さない。
*試験のために、この物質はpH値10を示す、水と添加物に基づく分散液中に後処理した。
【0045】
(実施例3)
後処理を除いて実施例2に記載した手順。廃水の容量を最小化し、その燐酸塩負荷を減らすために、第一段階で水性NaHCO(約8%)とともに用いたMSAの大部分を中和し、次いで上述の中和溶液を適用することも可能である。これによって、上記のバッチの値は以下の通りになる。
1.洗浄:7.2kgNaHCO溶液(8%)+21kg中和溶液
2.洗浄:55kg中和溶液
3.洗浄:50kg水
結晶化と乾燥で生成物(HQとして)の収率は90%


*試験のために、この物質はpH値10を示す、水と添加物に基づく分散液中に後処理した。
【0046】
(実施例4)
110.1g(1.000モル)のハイドロキノン、330gのトルエンおよび3.30g(0.0343モル)のメタンスルホン酸を温度計、機械攪拌器および還流コンデンサーを備えた二重ガラス反応器に入れる。Nでパージ後、反応混合物を攪拌下110°Cに加熱する。次いで、211.6g(2.400モル)のtert−アミルアルコールを6.5時間内にゆっくりと加える。添加中に形成された水を88°Cから102°Cで共沸蒸留で除去する。二次反応を88°C−98°Cで行い、次いで反応混合物を500gの90°Cのトルエンで希釈する。
【0047】
次いで、中和するために、25.7g(8%、0.0245モル)のNaHCO溶液と4%のNaHPOと1%のNaSOからなる74.1gの緩衝溶液(I)を同じ温度で攪拌下で加える。適切な期間に亘り攪拌後、重い、水性層を上述の温度で排出する。その後、上で使用した緩衝溶液(II)196.3gを加えさらに洗浄する。塩の不純物を除去するために、80°Cで171.3gの脱イオン水を加え、一定時間攪拌を続ける。次いで水性層を排出する。最初ゆっくりと室温まで冷却した後、混合物を5°Cまで冷却する。ろ過し、100gの冷トルエンで洗浄後、1mbarで最大70°Cで乾燥し、207.7gの生成物を得る(ハイドロキノンに関し83%)


*試験のために、この物質はpH値10.2を示す、水と添加物に基づく分散液中に後処理した。
【0048】
(実施例5)
110.1g(1.000モル)のハイドロキノンと330gのトルエンをオートクレーブに入れる。Nでパージ後、3.30g(0.0343モル)のメタンスルホン酸を加える。次いで、反応容器にイソブテンをゆっくり流し、この結果、反応温度が僅かに上昇する。22°Cから35°Cで3時間に亘り127.6g(2.274モル)のアルケンを加えると1.6barの圧を示す。22°Cから31°Cで一夜攪拌を続け、これにより圧が1.2barに下がる。70°Cに加熱することで圧は2.8barに上がるが、4.5時間後に次第に1.5barに下がる。
【0049】
通気後、25.7g(8%、0.0245モル)のNaHCO溶液と74.1gの緩衝溶液(I)を攪拌下で加える。同時に反応混合物を透明になるまで加熱する。106°Cで、重い、水性層を排出する。その後、106°Cから115°Cで、有機層を上で使用した緩衝溶液(II)196.3gで処理する。塩の不純物を除去するために、反応混合物を高温で171.3gの脱イオン水で洗浄する。最初2時間以内に30°Cまで冷却後、さらに0°Cまで冷却する。ろ過し、100gの冷トルエンで洗浄し、3mbarで最大90°Cで乾燥し、113.2gの2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノンを得る(ハイドロキノンに関し50.9%)


*構造/同定はH−NMRスペクトロスコピーでも確認した。
【0050】
上記の実施例から判るように、本発明の製造方法は、有機溶媒の存在下で均一な触媒条件下で合成を速く、且つ効率的に実施するニーズにすばらしく適合した触媒を採用する。本方法の重要な利点は、それが触媒量(0.01重量%から10重量%)だけの触媒を必要とすると言うことである。
【0051】
非変色性の生成物を提供すると言う本発明の更なる利点および重要な特徴は後処理方法である。後処理方法は粗生成物を完全な溶解下で、水性媒体で洗浄することを含む。この水性媒体の特記すべきことはpH緩衝能と還元活性を併せ有することである。この手順は、結晶性反応性生物内に包み込まれている酸の残留物と塩の不純物がそれぞれ中和され、除去されることを特に保証する。例えば2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノンのようなハイドロキノン類は酸化的変質に敏感であることが知られている。これは不純物が存在する場合は、特に「後処理された」物質にも当てはまり、それは例えば局所的なpHの顕著な違いを生じ、その結果ハイドロキノンの対応するキノンへの酸化を加速する結果となる(Nernstの方程式)。これらの不利な点は上述の水性媒体の使用によって解決できる。
【0052】
更に、使用後に中和し、廃棄する必要が生じる大量の腐食性液体媒体の替わりに、再利用できる有機溶媒を使用するために、廃棄水路の大幅な削減が達成できる。
【0053】
本発明の方法によって、特別な非変色用途のための生成物が高収率および高品質で得られる。高品質は固形形状およびpHの増加を特徴とする水性分散液に反映される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸縮合触媒の存在下で、ハイドロキノンをオレフィン、または反応条件下でオレフィン源として作用する物質でアルキル化することを包含する二置換ハイドロキノンの製造方法であって、pH緩衝能と還元活性を併せ有する水性媒体で洗浄することによって、生成物の完全な溶解下に反応生成物を後処理することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
当該ハイドロキノンをtert−オレフィン、または反応条件下でオレフィン源として作用するアルコールと反応させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該オレフィンが3個から12個の炭素原子を有する直鎖、分枝または環状炭水化物である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
当該オレフィンが2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,4−ペンタジエン、1−メチル−シクロペンテン、1−メチル−シクロヘキセンおよびイソブチレンから選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
当該オレフィンが2−メチル−2−ブテン単独またはその異性体の混合物である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
当該アルコールがtert−ブチル、アミルまたはヘキシルアルコールから選択される請求項2に記載の方法。
【請求項7】
均一な触媒反応条件下で行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アルキル化反応において、触媒量だけの触媒が存在する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
当該触媒が反応物の0.01重量%から10重量%の量で存在する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
当該触媒がアルキル、アリールまたはアリールアルキルスルホン酸である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
当該触媒が式R−SOH(式中、RはCからCのアルキル、RはCからCのパーフルオロアルキルまたはRはフェニル、トリルまたはクレシルである)を有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
当該触媒がメタンスルホン酸である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
芳香族または脂肪族溶媒の存在下で行われる請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
当該芳香族溶媒がベンゼン、トルエンまたはキシレンまたはその混合物である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
当該脂肪族溶媒が、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンまたはその混合物、または石油エーテルである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
35°Cから130°Cの範囲の温度で行われる請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
55°Cから75°Cの範囲の温度で行われる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
当該水性媒体がpH緩衝剤としてのNaHPOに基づくものであり、且つNaSOが還元剤である先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
当該生成する二置換ハイドロキノンが2,5−ジ−tert−アミル−ハイドロキノンである請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−501211(P2007−501211A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522407(P2006−522407)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003390
【国際公開番号】WO2005/014568
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(505401252)ケムチュア ヨーロッパ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】