説明

二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法

【課題】 ポリアミド溶融樹脂フィルムのネックインに起因した両端部の厚みの増加による結晶化度の増加を低減することにより、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定的に(延伸工程での破断を低減させて)製造する方法を提供する。
【解決手段】 ダイスから吐出させたポリアミド溶融樹脂フィルムを回転式冷却ロールで冷却固化して得た未延伸ポリアミドフィルムを逐次二軸延伸する二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法において、未延伸ポリアミドフィルムの端部の厚み(端部から10mmの厚み)と中央部の厚みとの比(端部/中央部)を1.5〜2.5にすることを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法に関するものである。更に詳細には、ポリアミド溶融樹脂フィルムのネックインに起因した両端部の厚みの増加による結晶化度の増加を低減することにより、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定的に(延伸工程での破断を低減させて)製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融樹脂フィルムのネックインを低減する方法として、溶融樹脂フィルムが回転式冷却ロールに接した後に押えロールで両端部を押圧する方法(例えば、特許文献1、2参照)、回転式冷却ロール上の溶融樹脂フィルムの両端部近傍に針状電極から発生させた静電気を印加して溶融樹脂フィルムの巾を広げる方法(エッジピニング法)(例えば、特許文献3参照)、ダイス両端部のリップ間隔を中央部のリップ間隔より広げて溶融樹脂フィルムの剛性を大きくして溶融樹脂フィルムの巾収縮を低減する方法(例えば、特許文献4参照)、ダイス直下に設けたプレロールで半溶融状態まで冷却して溶融樹脂フィルムの巾収縮を低減させる方法(例えば、特許文献5参照)、ダイス内でポリエステルの両端に溶融張力が大きい(ネックインしにくい)樹脂を合流させてダイスから吐出させる方法(例えば、特許文献6参照)等が開示されている。
【特許文献1】特開昭61−83017号公報
【特許文献2】特開平8−9653号公報
【特許文献3】特開平11−58498号公報
【特許文献4】特開平9−136343号公報
【特許文献5】特開2001−121647号公報
【特許文献6】特開2004−42616号公報
【0003】
しかしながら、押えロールで両端部を押圧する方法では、冷却固化後の未延伸ポリアミドフィルムの巾が不安定となり、クリップ式横延伸機を用いた横延伸工程でクリップ把持不良に起因した破断が起こりやすいという問題があった。
【0004】
また、エッジピニング法では、溶融樹脂フィルムのピニング部分を凹ませて溶融樹脂フィルムの巾を広げるため、溶融樹脂フィルムの巾が広くなっても厚みが均一な領域がピニング部分の内側になってしまうという問題があった。
【0005】
また、端部のリップ間隔を中央部のリップ間隔より広げる方法では、両端部の厚みが必要以上に厚くなり、ロール式縦延伸機で未延伸ポリアミドフィルムの中央部が不均一延伸になるばかりでなく、比較的結晶化速度が大きいポリアミドでは、両端部の結晶化度が増大しやすく、横延伸工程で縦一軸延伸ポリエステルフィルムの端部付近から破断しやすいという問題があった。
【0006】
また、プレロールを用いる方法では、プレロールと溶融樹脂フィルムの間に随伴空気が巻き込まれやすいため、半溶融樹脂フィルムにピンナーと称する凹みが発生しやすく、この凹みは冷却固化後、さらに、二軸延伸後でも残存するため、外観が悪い二軸延伸ポリアミドフィルムになりやすいという問題があった。
【0007】
また、ダイス内でポリエステルの両端に溶融張力が大きい樹脂を合流させてダイスから吐出させる方法では、得られた未延伸ポリアミドフィルムを安定的に縦延伸することはできるが、横延伸工程では合流界面部分の密着性が不十分なため、界面部分から破断しやすいという問題があった。
【0008】
従って、前記従来の方法はいずれも、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定的に(延伸工程での破断を低減させて)製造する方法として未だ満足されるものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の課題を背景になされたものであって、ポリアミド溶融樹脂フィルムのネックインに起因した両端部の厚みの増加による結晶化度の増加を低減することにより、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定的に(延伸工程での破断を低減させて)製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、
(1)ダイスから吐出させたポリアミド溶融樹脂フィルムを回転式冷却ロールで冷却固化して得た未延伸ポリアミドフィルムを逐次二軸延伸する二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法において、未延伸ポリアミドフィルムの端部の厚み(端部から10mmの厚み)と中央部の厚みとの比(端部/中央部)を1.5〜2.5にすることを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法である。
【0011】
(2)また、本件は、ダイスの端部のリップ間隔(最端部から4〜80mmの位置の平均リップ間隔)とダイスの中央部のリップ間隔との比(端部/中央部)を0.5〜0.9の範囲にする前記(1)に記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法では、ポリアミド溶融樹脂フィルムのネックインに起因した両端部の厚みの増加による結晶化度の増加を低減することにより、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定的に(延伸工程での破断を低減させて)製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の製造方法は、ポリアミド(冷結晶化温度が100℃未満で溶融樹脂フィルムの冷却固化工程及び/又は縦延伸の予熱工程で結晶化しやすい)フィルムの製造方法として好適である。ポリエチレンテレフタレート等の冷結晶化温度が100℃を超えるポリマーでは、溶融樹脂フィルムの両端部の厚みが多少厚くなっても結晶化しにくいため、本発明の効果は顕著には発現しない。
【0014】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法では、未延伸ポリアミドフィルムの端部厚み(端部から10mmの厚み)と中央部の厚みとの比(端部/中央部)を1.5〜2.5にすることが必要である。
未延伸ポリアミドフィルムの端部の厚み(端部から幅方向に10mmの距離の厚み)と中央部の厚みとの比(端部/中央部)1.5未満の場合、未延伸ポリアミドフィルムの幅が不安定となり、その結果、クリップ式横延伸機を用いた横延伸工程でクリップ把持不良に起因した破断が起こりやすくなるため好ましくない。逆に、2.5を超える場合、ロール式縦延伸機で未延伸ポリアミドフィルムの中央部が不均一延伸になるばかりでなく、両端部の結晶化度が増大するため、横延伸工程で縦一軸延伸ポリアミドフィルムの端部付近から破断しやすいため好ましくない。
【0015】
上記未延伸ポリアミドフィルムの端部の厚み(端部から幅方向に10mmの距離の厚み)は、未延伸ポリエステルフィルムの端部から幅方向に10mmの距離の厚みを左右両端部の2点についてマイクロメーターで測定し、その平均値を端部の厚みとする。
上記未延伸ポリアミドフィルムの中央部の厚みは、未延伸ポリエステルフィルムの中央及び100mmピッチで計5点測定し、その平均値を中央部の厚みとする。
【0016】
本発明の製造方法では、未延伸ポリアミドフィルムの端部の厚みと中央部の厚みとの比を1.5〜2.5にする手段として、ダイスの端部のリップ間隔(端部から4〜80mmのリップ間隔)とダイスの中央部のリップ間隔との比(端部/中央部)を0.5〜0.9にすることが好ましい方法である。
上記ダイスの端部のリップ間隔(最端部から4〜80mmのリップ間隔)は、隙間ゲージを用いて、285℃に加熱したダイスの一端から40mmピッチで他端へ向かって測定し、ダイス端部から40mmの位置と80mmの位置の測定値の平均値をダイスの端部のリップ間隔とする。上記ダイスの中央部のリップ間隔は、中央部400mmについて100mmピッチで測定した5点の測定値の平均値を中央部のリップ間隔とする。
【0017】
本発明の製造方法では、未延伸ポリアミドフィルムの端部の厚み(端部から幅方向に10mmの距離の厚み)と中央部の厚みとの比(端部/中央部)を1.5〜2.5にすることが必要であるが、端部から幅方向に10mmの距離から中央部までの厚みのプロフィールは、端部から幅方向に20mmの距離までが端部から幅方向に10mmの距離の厚みの±30%の厚みとし、幅方向80%の中央部分の厚みは中央部の厚みの±20%にし、端部から幅方向に20mm以上の距離から幅方向中央80%の部分までは中央部の厚みとの比が0.8〜2.5となるようにする。例えば、端部側から幅方向中央80%の部分に向かって徐々に厚みを薄くした厚みプロフィールが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法で使用するポリアミド樹脂は単一であっても、複数を混合したものであっても構わない。
かかるポリアミド樹脂の具体例として、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類からの開環重合により得られるポリアミド、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類の重縮合により得られるポリアミド、ジアミンとジカルボン酸とのナイロン塩の重縮合により得られるポリアミド、更には、上記記載の各種ラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンとジカルボン酸とのナイロン塩とを適宜混合したものを共重縮合して得られるポリアミド共重合体等が挙げられる。
【0019】
ジアミンの具体例として、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0020】
ジカルボン酸の具体例として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
本発明の製造方法で使用されるポリアミド樹脂は公知の方法で製造される。例えば、ラクタムを水溶媒の存在下に加圧下で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら重合させる方法により製造される。また、ジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩を水溶媒の存在下に加圧下で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら重合させる方法により製造される。更に、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて常圧下で重縮合する方法によっても製造される。いずれも溶融重合後、更に固相重合により高分子量化した重合体も使用可能である。
【0022】
本発明の製造方法で使用される上記ポリアミド樹脂の好ましい具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミドアミド(ナイロン66)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6T)、及びこれらの混合物等が挙げられる。
ナイロン6は特に好適であるが、ナイロン6にナイロンMXD6を1〜15質量%配合した原料を用いると延伸性が良好となり、製造における破断回数が減るので特に好ましい。
【0023】
本発明の製造方法では、ポリアミド樹脂の相対粘度は1.5以上が好ましく、2.0〜3.0が更に好ましい。
ポリアミド樹脂の相対粘度が1.5未満の場合、ポリアミド樹脂の分子量が低く、縦延伸後に実施する横延伸に置いて破断することがあり好ましくない。
【0024】
本発明の製造方法で使用されるポリアミド樹脂には、その溶融粘度を大幅には変えない範囲で、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、安定剤、染料、顔料、無機質微粒子等の各種添加剤や、他の熱可塑性樹脂等を添加することができる。また、ポリアミド樹脂の溶融粘度を大幅には変えない範囲で、耐屈曲性等を改良するために変性ポリオレフィン、アイオノマー樹脂、エラストマー等を添加することもできる。
【0025】
本発明の製造方法では、必要に応じて、ポリアミド樹脂にリン化合物(例えば、燐酸、次亜燐酸、亜燐酸、又はそれらの金属塩や部分中和塩等)配合してもかまわない。この場合の金属塩の金属として、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0026】
本発明の製造方法では、リップ間隔を前記のように制御したダイスから吐出させたポリ
アミド溶融樹脂フィルムを冷却固化させる際の冷却ロールの温度は、溶融樹脂フィルムを冷却できれば、特に限定しないが、冷却効率を高めることと冷却ロールへの水滴の結露を抑制することを両立させるため10〜40℃が好ましい。
【0027】
本発明の製造方法では、ポリアミド溶融樹脂フィルムを静電密着方法で冷却固化して未延伸ポリアミドフィルムを得ることが好ましい。特にストリーマコロナ放電による静電密着方法が好ましい。
【0028】
本発明の製造方法では、静電密着に使用される電極として、例えば、針状、鋸刃状のように、多数のコロナ放電可能な突起を有するものが挙げられる。また、突起先端の曲率半径は0.005〜0.09mmが好ましく、0.01〜0.07mmが更に好ましい。
突起先端の曲率半径が0.005mmを未満の場合、電極を取り扱う際に先端部が損傷しやすく、その結果、損傷に起因した異常放電が発生しやすいため好ましくない。逆に、0.09mmを超える場合、ポリアミド溶融樹脂フィルムに十分、かつ、均一な電荷を付与し難い。即ち、鈍い先端形状の突起では、ストリーマコロナ放電を行なうのに電圧を高くする必要があり、火花放電が発生しやすくなるため(ストリーマコロナ放電を安定的に発生させることが困難になるため)好ましくない。
【0029】
また、突起の無いタングステン線等を電極として用いた場合は、均一な放電が得られず、ポリアミド溶融樹脂フィルムと冷却ロールの密着力が不十分となり冷却固化フィルムの結晶化度がばらつき、その結果、二軸延伸後の厚みの均一性が低下するため好ましくない。
【0030】
本発明の製造方法で使用される突起の材質として、真鍮、ステンレス鋼、チタン、タングステン、金、銀、銅、銀−タングステン、銀−ニッケル、銀−酸化カドニウム、銀−タングステンカーバイド、銀−グラファイト、銅−タングステン、銅−クロム、銅−ベリリウム等の高導電性素材(比抵抗が5μΩ・cm以下)が挙げられる。比抵抗が5μΩ・cmを越える場合、一時的に特定の突起に高電流が流れてその突起での発熱が大きく高温となり、その突起が溶融摩耗、又は、酸化摩耗しやすいため好ましくない。
【0031】
本発明の製造方法では、電極に直流高圧電源発生装置から正又は負で2〜30KVの直流高電圧を印加することが好ましい。
印加電圧が2KV未満の場合、ストリーマコロナ放電が発生しにくいため好ましくない。逆に、30KVの場合、火花放電が発生しやすくなるため好ましくない。
【0032】
次いで、未延伸ポリアミドフィルム表面を前記の温度に加熱した後、55〜100℃に加熱した低速ロールに供給し、20〜40℃の高速ロールとの間の周速差を利用して2.5〜3.8倍縦方向に延伸して一軸延伸ポリアミドフィルムを得る。
【0033】
この際、延伸温度が55℃未満の場合、ネッキングが生じ、厚みの均一性が低下するため好ましくない。逆に、100℃を超える場合、熱結晶化が進みすぎて次工程の横延伸で破断しやすくなるため好ましくない。また、2.5倍未満の場合、縦方向の配向が不十分となり、厚みの均一性が低下するため好ましくない。逆に、3.8倍を超える場合、配向結晶化が進みすぎて次工程の横延伸で破断しやすくなるため好ましくない。
【0034】
本発明の製造方法では、縦方向の延伸を一段で行っても多段で行ってもかまわない。多段で行う場合、各段階の延伸を60〜110℃で1.1〜2.4倍で実施して合計倍率を2.5〜3.8倍にすることが次工程の横延伸での破断を低減し、得られた二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みを均一化できるため好ましい。
【0035】
次いで、必要に応じて一軸延伸ポリアミドフィルムの片面、若しくは両面に、樹脂塗布層を設ける。この樹脂塗布層の機能として、帯電防止性、易滑性、易接着性等を付与することが挙げられる。
上記樹脂塗布層を設ける方法の具体例として、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールフラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、マイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法及びカーテン・コート法等が挙げられ、これらの方法を単独、又は、組み合わせて行ってもよい。
【0036】
次いで、一軸延伸ポリアミドフィルムをテンターに導き、50℃〜220℃、好ましくは、60〜190℃で3.0倍以上、好ましくは3.5倍以上横方向に延伸した後、150〜220℃、好ましくは、180〜225℃で熱固定して二軸延伸ポリアミドフィルムを得る。この際、熱固定処理工程において、1〜10%緩和処理を行ってもかまわない。
【0037】
横方向の延伸温度が低すぎる場合、破断しやすいため好ましくない。逆に、温度が高すぎると得られたフィルムの厚みの均一性が低下するため好ましくない。また、延伸倍率が3.0倍未満の場合、得られたフィルムの厚みの均一性が低下するため好ましくない。
【0038】
本発明の製造方法では、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚み又は層構成(単層又は多層)は限定しない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0040】
〔評価方法〕
(1)未延伸ポリアミドフィルムの厚み
マイクロメーター(ソニーマニュファクチャリングシステム社製degital Micrometer SONY μ−Mate)を用いて、未延伸ポリエステルフィルムの中央部の厚みを100mmピッチで5点測定し、その平均値を中央部の厚みとした。また、未延伸ポリエステルフィルムの端部から幅方向に10mmの距離の厚みを左右2点測定し、その平均値を端部の厚みとした。
【0041】
(2)ダイスのリップ間隔
隙間ゲージ(トラスコ中山社製テーパーゲージ TG−270A)を用いて、285℃に加熱したダイスの一端から40mmピッチで他端へ向かって測定し、ダイス端部から40mmの位置と80mmの位置の測定値の平均値を端部のリップ間隔とし、中央部400mmについて100mmピッチで測定した5点の測定値の平均値を中央部のリップ間隔とした。
【0042】
(3)二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みの均一性(TV(%))
約2日間連続製膜後にフィルムワインダーで巻き上がったフィルムロール表層から5mをサンプリングし、巾方向に巾40mmの短冊状フィルム片を1mピッチで3点サンプリングして測定サンプルとした。該3個の測定サンプルをアンリツ電気社製の連続厚み計(マイクロメーター:K306C、レコーダー:K310C)を用いて下記の条件で測定して(最大値−最小値)を求め,3個の平均値(ΔT平均)を算出する。次いで、平均厚み(T平均:連続厚み測定後のフィルム片を3枚重ねて一方の端部から50mmのところを基準とし、200mmピッチでダイアルゲージを用いて測定し、その17点の厚みの合計値を51で除した値)を算出する。次いで、TV=(ΔT平均/T平均)×100(%)を算出し、TVが10%以下を実用性ありと評価する。
[連続厚みの測定条件]
フィルムの送り速度:1.5m/分
マイクロメーターのスケール:±5μm
レコーダーのハイカット:5Hz
レコーダーのスケール:±2μm
レコーダーのチャート速度:2.5mm/秒
レコーダーの測定レンジ:×1
【0043】
(4)破断回数
約2日間連続製膜して破断が2回/日以下の場合を実用性ありと判断した。
【0044】
(5)ポリアミド原料の末端基量
アミノ末端基量[AEG]はポリアミド樹脂をフェノール/エタノール溶媒(容積比:4/1)に溶解させ、0.02N塩酸を所定量加えた後、0.02N水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定して求めた。カルボキシル末端基量[CEG]はポリアミド樹脂を180℃のベンジルアルコールに溶解させ、フェノールフタレイン指示薬を加えて0.02Nの水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定して求めた。
【0045】
(6)ポリアミド原料の相対粘度(RV)
96質量%硫酸がオストワルド粘度計の一定区間を通過する時間(T1)と96質量%硫酸にポリアミド樹脂を1質量%になるように溶解調整した硫酸がオストワルド粘度計の一定区間を通過する時間(T2)を測定し、T2/T1より相対粘度を求めた。
【0046】
[実施例1]
ナイロン6のチップ(東洋紡績株式会社製ナイロン6、AEG:45当量/トン、CEG:81当量/トン、RV2.8、平均粒径2.5μmの微粉末合成非晶質シリカを4000ppm、ε−カプロラクタムモノマー2質量%を含有)を100℃で10時間減圧乾燥(133.3Pa)した後、押出機に供給し溶融させ、275℃でTダイス(中央部のリップ間隔:2.0mm、端部のリップ間隔:1.4mm、リップ巾:1.1m)から溶融樹脂膜を吐出し、ストリーマ放電による静電密着方法を用い、表面温度20℃の冷却ロール(直径1.2m)に30m/分で引き取って未延伸ポリアミドフィルムを得た。この際、ダイスリップと回転式冷却ロールとの距離:20mmに設定した。得られた未延伸ポリアミドフィルムの厚みは中央部:0.18mm、端部:0.38mm、端部/中央部の厚み比:2.1)であった。
【0047】
次いで、この未延伸ポリアミドフィルムをロール群よりなる縦延伸機に導き、予熱温度45℃、延伸温度60℃に加熱した後、周速差のあるロール群で長手方向に3.3倍延伸して一軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0048】
次いで、一軸延伸フィルムを横延伸機に導き、端部をクリップで把持して予熱温度110℃、延伸温度110/120/190℃と下流のゾーンほど高温にして4.0倍延伸した。次にその延伸された巾を保ったまま、温度220℃の熱風ゾーンにて熱固定処理を行い、さらに温度150℃の熱風ゾーンにて巾方向に3%の緩和処理後、フィルム両端部をトリミングし、さらにワインダーで巻き取り、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、本実施例の方法は、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定して効率良く製造方法であるといえる。
【0049】
[実施例2]
ダイス端部のリップ間隔を少し広げ、端部の厚みを大きくした実施例として、ダイス端部のリップ間隔:1.7mmにして、未延伸ポリアミドフィルムの厚みを中央部:0.18mm、端部:0.41mm、端部/中央部の厚み比:2.3とした以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、本実施例の方法は、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定して効率良く製造方法であるといえる。
【0050】
[実施例3]
ダイス端部のリップ間隔を少し狭め、端部の厚みを小さくした実施例として、ダイス端部のリップ間隔:1.1mmにして、未延伸ポリアミドフィルムの厚みを中央部:0.18mm、端部:0.32mm、端部/中央部の厚み比:1.8とした以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0051】
[実施例4]
原料として前記のナイロン6のチップ96質量%に対して4質量%のナイロンMXD6(東洋紡績株式会社製ナイロンMXD6、RV2.2)を配合して100℃で10時間減圧乾燥(133.3Pa)した後、実施例1と同様にして、押出機に供給し厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、本実施例の方法は、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定して効率良く製造方法であるといえる。
【0052】
[比較例1]
ダイス端部のリップ間隔を広げ、端部の厚みを上限外れにした例として、ダイス端部のリップ間隔:2.0mm(中央部と同じ間隔)にして、未延伸ポリアミドフィルムの厚みを中央部:0.18mm、端部:0.47mm、端部/中央部の厚み比:2.6とした以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、この方法は、この方法は、縦一軸延伸ポリアミドフィルムの端部付近から破断しやすく、厚みの均一性が悪いため、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として好ましくない。
【0053】
[比較例2]
ダイス端部のリップ間隔を狭め、端部の厚みを薄くした例として、ダイス端部のリップ間隔:0.8mmにして、未延伸ポリアミドフィルムの厚みを中央部:0.18mm、端部:0.25mm、端部/中央部の厚み比:1.4とした以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得ようとしたが、横延伸機のクリップ把持不良による破断が多発した。
表1からわかるように、この方法は、横延伸機のクリップ把持不良による破断が多発するため、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として好ましくない。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法は、ポリアミド溶融樹脂フィルムのネックインに起因した両端部の厚みの増加による結晶化度の増加を低減することにより、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定的に(延伸工程での破断を低減させて)製造できるため、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として極めて有用であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスから吐出させたポリアミドの溶融樹脂フィルムを回転式冷却ロールで冷却固化して得た未延伸ポリアミドフィルムを逐次二軸延伸する二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法において、該未延伸ポリアミドフィルムの端部の厚み(端部から10mmの厚み)と中央部の厚みとの比(端部/中央部)を1.5〜2.5にすることを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
ダイスの端部のリップ間隔(最端部から4〜80mmの位置の平均リップ間隔)とダイスの中央部のリップ間隔との比(端部/中央部)を0.5〜0.9の範囲にする請求項1に記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2009−131983(P2009−131983A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308380(P2007−308380)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】