説明

二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】 基材フィルムの耐加水分解性が優れ、各種部材や上塗り剤に対する接着性に関しても劣化が少なく、例えば太陽電池裏面保護材用フィルムなどに好適に用いることのできるポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 リン元素の含有量が0〜170ppmであり、末端カルボン酸量が26当量/トン以下である二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエーテル骨格としてポリテトラメチレングリコールを有するポリウレタンと、架橋剤とを含有する塗布層を有することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着性を有する二軸配向ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、基材フィルムの耐加水分解性に優れ、高温高湿度環境や屋外での長期使用においてもフィルムの劣化が少なく、かつ、各種部材や上塗り剤に対する接着性の劣化が少なく、太陽電池裏面保護材用フィルムなどに好適なポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池裏面保護材とは、特に日光が照射しない太陽電池裏面側からの水分の浸透を防ぐことを目的とした部材であり、必要とされる物性として、ガスバリア性、耐加水分解性、耐絶縁破壊性などが挙げられる。一般的には当該部材としてガラス板が使用されているが、ガラス板は柔軟性に欠けたり、太陽電池としての総重量が重くなったりするなどの難点があり、軽くて柔軟性もあり、上記必要物性を満たす合成樹脂フィルムによる代替が求められており、その一つとして機械的特性、熱的特性、耐薬品性などに優れるポリエステルフィルムの使用が検討されている。
【0003】
一方、太陽電池モジュールの構造は、例えば実開平6−38264号公報に記載があるように、一般的には、受光側のガラス基板と、裏面側の保護膜との間に、複数の板状太陽電池素子を挟み、内部の隙間に封止樹脂を充填した構造となっている。封止樹脂としては、透明性が高く、耐湿性・柔軟性に優れているという理由で、エチレン−ビニルアセテート共重合体(以下、EVAと略記する)のシートが用いられることが多い。
またEVA以外にも封止樹脂として、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)、エチレン−αオレフィン共重合体なども知られている。
【0004】
太陽電池裏面保護材として用いられるポリエステルフィルムは、これらのEVA等のシートと熱接着させて使用されるが、ポリエステルフィルムの表面は通常は不活性であり、EVA等との接着性に劣る。このため、ポリエステルフィルムとEVA等との接着性を改善するため、表面に易接着層を設けることが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、太陽電池裏面保護材は、屋外で長期間(例えば20年以上)に亘って使用されることが前提のものであり、高温高湿度環境に晒されることもありうる。このとき、ポリエステルフィルムの分子鎖中のエステル結合部位の加水分解が起こり、フィルム自体の機械的特性が経年劣化することが一つの問題として認識されており、もう一つは、EVA等との熱接着性を改善するための易接着層も、高温高湿度環境で同様に経年劣化して、EVA等との接着性を維持できなくなることが懸念されている。
【0006】
他方で、太陽電池はイニシャルコストが高く、石化燃料で発電した電気とのコストを比較すると、その普及には太陽電池の価格を低く抑えることが必要である。このため、太陽電池裏面保護材には、できるだけ汎用の素材を用いることで価格を抑制することも、重要な技術背景として認識すべき事項である。
【0007】
ポリエステルの加水分解は、ポリエステル分子鎖の末端カルボン酸量が高いほど分解が速いことが知られている。よって、特許文献2には、エポキシ化合物を使用することで、分子鎖末端のカルボン酸をエステル化し末端カルボン酸量を低減させることで、耐加水分解性を向上させる技術が開示されている。しかし、エポキシ化合物は、製膜プロセスでの溶融押出工程、または、マテリアルリサイクル工程において、ゲル化を誘発し、異物を発生させる可能性が高く、環境的にも、コスト的にも好ましくない。
【0008】
特許文献3には、ポリカルボジイミドなどのカルボジイミドを添加して末端カルボン酸量を低下させる技術が開示されているが、カルボジイミドはそれ自体熱変成を起こしやすく、反応条件によってポリエステルの着色や物性の低下を誘発することがある。
【0009】
また、ポリエステルの加水分解は、酸性、アルカリ性環境下で促進することが知られている(非特許文献1)。よって、重合反応において好ましくない着色を防止する目的で添加されている安定剤のリン酸、亜リン酸等のリン化合物は、系内を酸性にするため、加水分解性に悪影響を与えると考えられる。
【0010】
この問題を解決するため、特許文献4には、末端カルボン酸を規定量に抑制し、かつ、特定のリン酸エステルを規定量含有させることで、耐加水分解性を向上させる技術が開示されている。しかし、当該技術におけるリン酸エステルは特殊な構造をしているため、リン酸エステルを調整する工程およびコストが必要になる。よって、安価で、かつ、屋外で長期(例えば20年以上)に亘る使用が可能なポリエステルフィルムを提供するには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−175764号公報
【特許文献2】特開平9−227767号公報
【特許文献3】特公昭38−152220号公報
【特許文献4】特開平8―3428号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】湯木和男著 飽和ポリエステル樹脂ハンドブック 廣済堂 1989年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、基材フィルムの耐加水分解性が優れ、各種部材や上塗り剤に対する接着性に関しても劣化が少なく、例えば太陽電池裏面保護材用フィルムなどに好適に用いることのできるポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなる二軸配向ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は、リン元素の含有量が0〜170ppmであり、末端カルボン酸量が26当量/トン以下である二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエーテル骨格としてポリテトラメチレングリコールを有するポリウレタンと、架橋剤とを含有する塗布層を有することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムによれば、フィルム自体の耐加水分解性に優れ、高温高湿度環境や屋外での長期使用においてもフィルムの劣化が少なく、かつ、EVAやPVBなどの各種部材や上塗り剤に対する接着性に関しても同様に劣化が少ないものとなる。しかも透明性に優れており、また、特殊な素材を用いずに汎用な素材で得ることができるため、フィルムの価格を抑えることができる。このため、例えば太陽電池裏面保護材用フィルム、タッチパネル用フィルム、液晶ディスプレイ用部材フィルムで過酷な環境下で使用する用途等に好適であり、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明は、基材となるポリエステルフィルムが高温高湿度環境下でも優れた耐加水分解性を有すると同時に、その上に付与された接着性改良のための塗布層も耐加水分解性を有することで、初めて易接着性フィルムとして耐加水分解性を有するものなる、との思想に基づくものである。基材のポリエステルフィルムか、その上に設けられた塗布層の何れかが、耐加水分解性に劣る場合には、易接着性フィルムの耐加水分解性は、そのどちらか劣る方に強く影響されて、不十分なものとなってしまう。したがって、易接着性フィルムとして耐加水分解性に優れたポリエステルフィルムとするには、基材フィルムと塗布層とが共に耐加水分解性に優れることが、欠くことのできない要素である。この設計思想に基づいて、本発明の基材となるポリエステルフィルムと、塗布層に大別して順次説明する。
【0019】
まず、本発明のフィルムの基材として使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、コストと性能のバランスに優れており、本発明においては、ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが最も好ましい。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムは、後述する蛍光X線分析装置を用いた分析にて検出されるリン元素量が特定範囲にあるものであり、当該リン元素は、通常はリン酸化合物に由来するものであり、ポリエステル製造時に任意成分として添加される。本発明においては、リン元素量は0〜170ppmの範囲である必要があり、好ましくは50〜170ppmの範囲であり、さらに好ましくは50〜150ppmの範囲である。特定量のリン元素を満足することにより、耐加水分解性を高度にフィルムに付与することができる。リン元素量が多すぎると、加水分解が促進することになるため好ましくない。
【0021】
リン酸化合物の例としては、リン酸、亜リン酸あるいはそれらのエステル、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、亜ホスホン酸化合物、亜ホスフィン酸化合物など公知のものが該当し、具体例としては、正リン酸、モノメチルフォスフェート、ジメチルフォスフェート、トリメチルフォスフェート、モノエチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、エチルアシッドホスフェート、モノプロピルフォスフェート、ジプロピルフォスフェート、トリプロピルフォスフェート、モノブチルフォスフェート、ジブチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、モノアミルフォスフェート、ジアミルフォスフェート、トリアミルフォスフェート、モノヘキシルフォスフェート、ジヘキシルフォスフェート、トリヘキシルフォスフェートなどが挙げられる。
【0022】
本発明に用いるポリエステルは、通常ポリエステルの重合でよく用いられるアンチモン、チタン、ゲルマニウムなどの金属化合物重合触媒を用いることができる。ただし、これらの触媒量が多いと、フィルム化のためのポリエステルを溶融させた際に、分解反応起きやすくなり、分子量の低下などにより末端カルボン酸濃度が高くなり、耐加水分解性が劣るようになる。一方で重合触媒量が少な過ぎる場合には、重合反応速度が低下するので、重合時間が長くなって末端カルボン酸濃度が高くなり、結果的に耐加水分解性を悪化させることになる。このため、本発明においては、アンチモンであれば通常50〜400ppm、好ましくは100〜350ppm、チタンであれば通常1〜20ppm、好ましくは2〜15ppm、ゲルマニウムであれば通常3〜50ppm、好ましくは5〜40ppmの範囲とするのがよい。またこれらの重合触媒は、2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。同様の理由で、熱分解や加水分解を抑制するための触媒として働きうる金属化合物をできる限り含まないことが好ましいが、一方でフィルムの生産性を向上する目的で、溶融時の体積固有抵抗値を低くするため、マグネシウム、カルシウム、リチウム、マンガン等の金属を、通常300ppm以下、好ましくは250ppm以下であれば含有させることができる。なお、ここでいう金属化合物には、後述するポリエステル中に配合する粒子は含まない。
【0023】
本発明のフィルム中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム等の粒子が挙げられる。また、特公昭59―5216号公報、特開昭59―217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0024】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0025】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜10μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、フィルムに易滑性を与える効果が不足する。一方、10μmを超える場合には、フィルム生産時に破断が頻発して生産性が低下する場合がある。
【0026】
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、フィルムを構成する全ポリエステルに対し通常0.0003〜1.0重量部、好ましくは0.0005〜0.5重量部の範囲である。
粒子含有量が0.0003重量部未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量部を超えて添加する場合には、後述するように、フィルムの透明性を大きく低下させる傾向となる。
【0027】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後に添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0028】
なお、本発明のポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料を添加することができる。また、耐光性を向上する目的で、ポリエステルに対して0.01〜5重量部の範囲で紫外線吸収剤を含有させることができる。この紫外線吸収剤には、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾオキサジノン系などを挙げることができるが、これらの中でも、特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等が好ましく用いられる。また、これらの紫外線吸収剤は、後述するようにフィルム自体が3層以上の積層構造である場合には、その中間層に添加する方法も好ましく用いることができる。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常20〜250μm、好ましくは25〜200μmの範囲である。
【0030】
本発明において、ポリエステルフィルムの末端カルボン酸量を特定範囲とするため、ポリエステルフィルム中のリン酸化合物の量を前述した範囲にすると同時に、例えば、フィルム製造で、ポリエステルチップの押出加工工程における押出機内でのポリエステルの滞留時間を短くすることなどによって行われる。具体的には、原料投入から溶融シートが吐出し始めるまでの滞留時間として、20分以下、さらには15分以下とすることが好ましい。また、原料として低末端カルボン酸量のポリエステルを用いて製膜することで、末端カルボン酸量が特定範囲のポリエステルフィルムを得てもよい。具体的には、原料ポリエステルの末端カルボン酸量が、トータルとして20当量/トン、さらには15当量/トン以下とすることが好ましい。ポリエステルチップの末端カルボン酸量を低くする方法としては、重合効率を上げる方法や重合速度を速くする方法、分解速度を抑制する方法など従来公知の方法を採用しうる。例えば、重合時間を短くする方法、重合触媒量を増やす方法、高活性の重合触媒を使用する方法、重合温度を低くする方法などによって行われる。また、フィルム製造において、溶融工程を経た再生原料を配合すると末端カルボン酸量が増大するので、本願発明においてはかかる再生原料を配合しないことが好ましく、配合するとしても20重量部以下とすることが好ましい。
【0031】
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0032】
すなわち、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップを混練押出機に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。溶融押出工程においても、条件により末端カルボン酸量が増加するので、本願発明においては、押出工程における押出機内でのポリエステルの滞留時間を短くすること、一軸押出機を使用する場合は原料をあらかじめ水分量が通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥すること、二軸押出機を使用する場合はベント口を設け、通常40ヘクトパスカル以下、好ましくは30ヘクトパスカル以下、さらに好ましくは20ヘクトパスカル以下の減圧を維持すること等の方法を採用することが好ましい。
【0033】
本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、160〜220℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。
【0034】
さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0035】
後述する塗布層をインラインコーティング法により塗布する場合には、縦延伸が終了した時点で、塗布を行い乾燥した後、横延伸を行うことが好ましい。
【0036】
本発明においては、前記のとおり、ポリエステルの溶融押出機を2台または3台以上用いて、いわゆる共押出法により2層または3層以上の積層フィルムとすることができる。
層の構成としては、A原料とB原料とを用いたA/B構成、またはA/B/A構成、さらにC原料を用いてA/B/C構成またはそれ以外の構成のフィルムとすることができる。
【0037】
かくして得られる本発明のフィルムは、フィルムを構成するポリエステルの末端カルボン酸量が26当量/トン以下、好ましくは24当量/トン以下である。末端カルボン酸量が26当量/トンを超えると、ポリエステルの耐加水分解性が劣る。一方、本願発明の耐加水分解性を鑑みると、ポリエステルの末端カルボン酸量の下限はないが、重縮合反応の効率、溶融押出工程での熱分解等の点から通常は10当量/トン程度である。
【0038】
ポリエステルフィルムの耐加水分解性は、フィルム全体に関連する特性であり、本願発明においては、共押出による積層構造を有するフィルムの場合、当該フィルムを構成するポリエステル全体として末端カルボン酸量が前述した範囲であることが必要である。同様に、本願発明において必要とする触媒として含有するリンの含有量は、共押出による積層構造を有するフィルムの場合、当該フィルムを構成するポリエステル全体として含有量が前述の範囲であることが必要である。
【0039】
次に、本発明においてフィルムに設ける塗布層について述べる。
【0040】
本発明の塗布層は、EVAやポリビニルブチラール(PVB)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)、エチレン−αオレフィン共重合体などの各種の太陽電池の封止樹脂の他、ハードコードやプリズム層、拡散層などの各種上塗り剤との間で、加水分解での劣化の少ない接着性を付与するために、ポリエーテル骨格を有するポリウレタンと、架橋剤とを含有することが必要である。
【0041】
ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格を有するポリウレタンとは、ポリカーボネート骨格またはポリエーテル骨格を有する化合物を、各々ポリオールとして使用したものである。なお、ポリカーボネート骨格とポリエーテル骨格とを同時に有していてもよい。
【0042】
塗布層のポリウレタンに用いるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジアルキルカーボネート、エチレンカーボネートあるいはホスゲンとジオールとの反応などで得られる。ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。これらの中でも、1,6−ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールは、工業的に入手し易く、しかも接着性を向上させる点で好ましい。
【0043】
ポリカーボネートポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量で、300〜5000であることが好ましい。
【0044】
塗布層のポリウレタンに用いるポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレンポリオール(ポリエチレングリコールなど)、ポリオキシプロピレンポリオール(ポリプロピレングリコールなど)、ポリオキシブチレンポリオール(ポリテトラメチレングリコールなど)、共重合ポリエーテルポリオール(ポリオキシエチレングリコールとポリオキシプロピレングリコールなどのブロック共重合体やランダム共重合体など)などが挙げられる。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコールが接着性を向上させる点で好ましい。
【0045】
ポリエーテルポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算の数平均分子量で、300〜5000であることが好ましい。
【0046】
上述したポリカーボネートポリオールまたはポリエーテルポリオールを用いたポリウレタンは、その他の汎用ポリオールであるポリエステルポリオールを用いたポリウレタンよりも、加水分解に対する耐性が良好なものとなる。
【0047】
これらのポリカーボネートポリオールまたはポリエーテルポリオールは、1種類だけを単独で用いてもよいが、2種類以上を併用する事も可能である。また前述したように、これらのポリカーボネートポリオールとポリエーテルポリオールとを併用することもできる。
【0048】
塗布層のポリウレタンに用いるポリイソシアネートには、公知の脂肪族、脂環族、芳香族等のポリイソシアネートを挙げることができる。
【0049】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例として、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0050】
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、水添ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0051】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0052】
またこれらのポリイソシアネートは単独で使用してもよいが、2種以上混合して使用することもできる。
【0053】
鎖長延長剤などの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などがある。
【0054】
本発明の塗布層に使用するポリカーボネート構造またはポリエーテル構造を有するポリウレタンは、有機溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ポリウレタンを水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ポリウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ポリウレタン樹脂の骨格中にイオン性基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、接着性に優れており好ましい。
【0055】
また、導入するイオン性基としては、アニオン性基としては、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基等が挙げられ、カチオン性基としては、4級アンモニウム等が挙げられる。例えばアニオン性基としてカルボン酸塩基を例に挙げれば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸、トリメリット酸‐ビス(エチレングリコール)エステルなどのアンモニウム塩や低級アミン塩等を好ましく用いることができる。またカチオン性基の4級アンモニウムについては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミンなどの4級化物を好ましく用いることができる。これらのイオン性基の中でも、カルボン酸塩基であって、かつ、カウンターイオンがアンモニアやトリエチルアミン等の沸点が150℃以下の有機アミンである場合には、後述するオキサゾリン系架橋剤やカルボジイミド系架橋剤との反応性が高く、塗布層の架橋密度を高める点で特に好ましい。
【0056】
ウレタン樹脂にイオン性基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、イオン性基を持つ樹脂を共重合成分として用いたり、ポリオールや鎖延長剤などの一成分としてイオン性基を持つ成分を用いたりすることができる。
【0057】
本発明の塗布層には、上述したポリウレタンの他に、塗布層に耐熱性、耐熱接着性、耐湿性、耐ブロッキング性を付与するために、架橋剤を併用する必要がある。この架橋剤は、水溶性あるいは水分散性であることが好ましく、具体的には、メチロール化あるいはアルコキシメチロール化したメラミン系化合物やベンゾグアナミン系化合物、尿素系化合物、アクリルアミド系化合物の他、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、シランカップリング剤系化合物、チタンカップリング剤系化合物などから選ばれた少なくとも1種類を含有させることが必要である。これらの架橋剤の中でも、オキサゾリン系化合物あるいはカルボジイミド系化合物であって、それ自体がポリマーである架橋剤が、塗布層の耐熱接着性、耐湿性が大きく向上するため、特に好ましい。このようなオキサゾリン系架橋剤は、例えば株式会社日本触媒の商品名エポクロス(登録商標)として、またカルボジイミド系架橋剤は、例えば日清紡ケミカル株式会社の商品名カルボジライト(登録商標)として工業的に入手できる。また、これらの架橋剤の添加量は、塗布層中のポリウレタンに対する重量比で、10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20の割合で使用することが好ましい。
【0058】
本発明の塗布層には、以上述べたポリウレタンと架橋剤成分との合計が、50重量%以上、さらには75重量%以上の量で存在していることが好ましい。これらの樹脂成分以外に、付加的にその他の樹脂を添加することができる。付加的に添加できる樹脂成分としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂などが挙げられる。但し、ポリエステル系樹脂やポリエステルポリウレタン樹脂は、耐加水分解性に劣ることが多く、これらの樹脂は塗布層へ添加しないか、添加してもその添加量を10重量%未満とすることが好ましい。
【0059】
また、本発明では、塗布層のブロッキングの防止や滑り性の付与のために、塗布層中に微粒子を添加する事も可能である。微粒子としては例えば、シリカやアルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を用いることができる。微粒子の大きさは150nm以下、好ましくは100nm以下で、塗布層中の添加量としては、0.5〜10重量%の範囲で選択するのが好ましい。
【0060】
その他、塗布層中に、必要に応じて上記述べた成分以外を含むことができる。例えば、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの添加剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明における塗布層は、前述したように、主として水を媒体とした塗布液としてポリエステルフィルム上に塗工されることが好ましい。塗布されるポリエステルフィルムは、予め二軸延伸されたものでもよいが、塗布した後に少なくとも一方向に延伸され、さらに熱固定をする、いわゆるインラインコーティング法を用いることが好ましい。インラインコーティング法によれば、通常200℃以上の高温でポリエステルフィルムと塗布層が同時に熱固定されるため、塗布層の熱架橋反応が十分に進行すると共に、ポリエステルフィルムとの密着性が向上する。
【0062】
また塗布液は、その分散性や保存安定性の向上、あるいは塗布性や塗布膜特性の改善を目的に、水以外に、通常20重量%以下の量で水との相溶性のある有機溶剤の1種または2種以上を加えることも可能である。
【0063】
基材となるポリエステルフィルムへの塗布液の塗布方法としては、公知の任意の方法が適用できる。具体的には、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、バーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法およびカーテンコート法、ダイコート法などを単独または組み合わせて適用することができる。
【0064】
本発明における塗布層は、その塗工量としては、乾燥・固化された後の、あるいは二軸延伸・熱固定等を施された後の最終的な乾燥皮膜として、0.005〜1.0g/m、さらには0.01〜0.5g/mの範囲とするのが好ましい。この塗工量が0.005g/m未満では、接着性が不十分となる傾向にあり、1.0g/mを超える場合には、もはや接着性は飽和しており、逆にブロッキング等の弊害が発生しやすくなる傾向がある。
【0065】
本発明の塗布層はポリエステルフィルムの片面だけに設けてもよいし、両面に設けてもよい。さらに、上記で説明した塗布層を片面に設けて、反対面にはそれ以外の塗布層を設けることも可能である。
【0066】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上記の塗布層を設けた状態でのフィルムのヘイズ値が10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは8%以下、特に好ましくは5%以下である。下限値は特に限定するものではないが、通常、0.3%程度である。
【0067】
ヘイズ値を10%以下とするためには、基材となるポリエステルフィルム中に添加する粒子や、塗布層中に添加する微粒子の大きさや添加量を調整することで達成できる。この場合、具体的な添加量としては、ポリエステルフィルム中に添加する粒子として1重量%以下、塗布層中に添加する微粒子として10重量%以下とすることが好ましい。
【0068】
本発明の易接着性二軸配向ポリエステルフィルムは、前述したように、基材となるポリエステルフィルムが高温高湿度環境でも優れた耐加水分解性を有すると同時に、その上に付与された接着性改良のための塗布層も耐加水分解性を有するものであるので、このフィルムを用いて、太陽電池裏面保護材用フィルムとして好適に用いることができる。さらにそれに加えて、ガラス素材の代わりに太陽電池の前面に使用できる可能性も有している。その他、例えば高温高湿度下で使用されるタッチパネルや、車載用の液晶ディスプレイなどの表示用部材フィルムとして使用することが可能である。そして、このような用途に適用するためには光の透過性が必要であり、本発明の易接着性二軸配向ポリエステルフィルムは、ヘイズ値が10%以下であることが必要となる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
【0070】
(1)末端カルボン酸量(当量/トン)
いわゆる滴定法によって、末端カルボン酸の量を測定した。すなわちポリエステルをベンジルアルコールに溶解し、フェノールレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノール/ベンジルアルコール溶液で滴定した。フィルムに塗布層が設けてある場合には、この影響を無くすため、研磨剤入りクレンザーを使って塗布層を水で洗い流してから、イオン交換水で十分にすすいで乾燥した後、同様に測定を行った。
【0071】
(2)フィルムヘイズ
JIS K 7136(2000)に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH2000より濁度を測定した。
【0072】
(3)触媒由来元素の定量
蛍光X線分析装置(島津製作所社製型式「XRF−1500」)を用いて、下記表1に示す条件下で、FP法により単枚測定でフィルム中の元素量を求めた。積層フィルムの場合はフィルムを溶融してディスク状に成型して測定することにより、フィルム全体に対する含有量を測定した。また、フィルムに塗布層が設けてある場合には、この影響を無くすため、研磨剤入りクレンザーを使って塗布層を水で洗い流してから、イオン交換水で十分にすすいで乾燥した後、同様に測定を行った。なお、この方法での検出限界は、通常1ppm程度である。
【0073】
【表1】

【0074】
(4)極限粘度
測定試料1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量部)の溶媒に溶解させて濃度c=0.01g/cmの溶液を調製し、30℃にて溶媒との相対粘度ηを測定し、極限粘度[η]を求めた。
【0075】
(5)フィルム伸度耐加水分解性
平山製作所製 パーソナルプレッシャークッカーPC−242HS−Eを用いて、120℃―100%RHの雰囲気にてフィルムを35時間処理した。次いで、23℃×50%RHで24時間調温・調湿した後、フィルムの機械的特性として、製膜方向(MD方向)の破断伸度を測定した。測定には株式会社島津製作所製 万能試験機AUTOGRAPHを使用し、幅15mmのサンプルで、チャック間50mmとして、引張り速度200mm/分の条件で行った。処理前後での破断伸度の保持率(%)を下記の式(1)にて算出し、下記の基準で判断した。
破断伸度保持率=処理後の破断伸度÷処理前の破断伸度×100 …(1)
◎:保持率が80%以上
○:保持率が60〜80%未満
△:保持率が30〜60%未満
×:保持率が30%未満
【0076】
(6)EVAとの接着強度
長手方向がMD方向となるように、長さ300mm、幅25mmのポリエステルフィルムの小片を2本切り取った。一方で長さ50mm、幅25mmであるEVAフィルムの1本の小片を切り取り、2本のポリエステルフィルムの小片の塗布層面でEVAフィルムを挟むように重ねた。これをヒートシール装置(テスター産業株式会社製 TP−701−B)を用いてラミネートした。使用したEVAフィルムは、ドイツ Etimex社製 485.00(標準硬化タイプ、厚み0.5mm)で、ヒートシール条件は、温度150℃、圧力0.13MPaで、20分間の条件を用いた。EVAとの接着強度を測定するため、まず25mmの幅のポリエステルフィルム/EVAフィルムラミネート小片から、長さ300mm、幅15mmのサンプルを切り取る。この15mm幅のポリエステルフィルムの小片のラミネートされていない端部を、引張/曲げ試験機(株式会社島津製作所 EZGraph)の中に取り付ける。引き続き、角度180°、速度100mm/分でこのポリエステルフィルム/EVAフィルムラミネートを分離するために必要な力(接着強度)を10個の試料について測定して、その平均値を下記のように分類にした。
◎:接着強度が50N/15mm幅以上
○:接着強度が30N/15mm幅〜50N/15mm幅未満
△:接着強度が10N/15mm幅〜30N/15mm幅未満
×:接着強度が10N/15mm幅未満
【0077】
(7)EVAとの接着強度耐加水分解性
上記(6)で作成したポリエステルフィルム/EVAフィルムラミネートの25mm幅の試験片を用いて、上記(5)と同様に120℃―100%RHの雰囲気にて35時間の湿熱処理を行った。次いで、23℃×50%RHで24時間調温・調湿した後、サンプルから15mm幅の測定サンプルを切り取り、上記(6)と同様に、ポリエステルフィルム/EVAフィルムラミネートを分離するために必要な力(接着強度)の平均値を求めた。この値と、湿熱処理を行う前の接着強度から、接着強度保持率を次式にて算出し、下記の基準で判断した。
接着強度保持率(%)=(湿熱処理後の接着強度)/(湿熱処理前の接着強度)
◎:保持率が70%以上
○:保持率が50〜70%未満
△:保持率が50%未満
×:ポリエステルフィルム自体の劣化が著しく、破れや損傷が発生する
【0078】
(8)ハードコート層との接着性
塗布層を有するポリエステルフィルムの塗布層面に、日本合成株式会社のUV硬化型ウレタンアクリレート系ハードコート剤商品名紫光(登録商標)を塗布した後、80℃で1分間乾燥し溶剤を除去した。次いで、フィルムを送り速度10m/分で走行させながら、水銀ランプを用いて照射エネルギー120W/cm、照射距離10cmの条件下で紫外線を照射し、厚さ5μmのハードコート層を有するフィルムを得た。このフィルムのハードコート層面に、碁盤目のクロスカット(1mmの升目を100個)を施し、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、剥離面積により下記のように分類した。
◎ :剥離面積が5%未満
○ :剥離面積が5%〜20%未満
△ :剥離面積が20〜50%未満
× :剥離面積が50%以上
××:ポリエステルフィルム自体の劣化が著しく、破れや損傷が発生する
【0079】
(9)ハードコート層との接着耐加水分解性
上記(8)で作成したハードコート層を有するフィルムを、上記(5)と同様に120℃―100%RHの雰囲気にてフィルムを35時間処理した。次いで、23℃×50%RHで24時間調温・調湿した後、上記(8)と同様にして剥離試験を実施して、同じ基準で接着性を比較した。
(10)ポリビニルブチラール(PVB)との接着性
・評価用PVBシートの作成
粉末状のPVB(分子量約11万、ブチラール化度65モル%、水酸基量約34モル%)6重量部、トリ(エチレングリコール)−ビス−2−エチルヘキサノエート(可塑剤)4重量部を45重量部のトルエンと混合し膨潤させた後、45重量部のエタノールを加え溶解させた。この溶液をテフロン(登録商標)製のシャーレに深さ4mmになるように入れ、熱風オーブンにて100℃、1時間乾燥して厚さ約0.4mmのPVBシートを作成した。
・接着性評価
上記PVBシートを幅1cm、長さ10cmに切り出し、2枚の供試フィルムで易接着面が該シートに向くように挟み、ヒートシールテスター(テスター産業(株)製 TP−701)で熱圧着する。条件は以下のとおりである。
圧力:0.13MPa
温度:140℃
時間:3分
一昼夜の放冷後、圧着部分を手で剥離し下記の基準により接着性を判定した。
○ :接着強度が良好(供試フィルムまたはPVBシートが損傷するまたは接着界面で剥離するが強い力がいる)
△ :接着強度が普通(接着界面で剥離するが軽い手応えがある)
× :接着強度が不良(接着界面でほとんど手応えがなく、簡単に剥離する)
××:ポリエステルフィルム自体の劣化が著しく、破れや損傷が発生する
(11)PVBとの接着性耐加水分解性
上記(10)で作成した接着性評価試験サンプルを、ESPEC株式会社製 恒温恒湿槽PR−2KPを用いて、85℃/85%RHの条件で500時間湿熱処理を行った。このサンプルを恒温恒湿槽から取り出した後、一昼夜放冷してから、(10)と同様に接着性の評価を行った。
【0080】
次に以下の例で使用したポリエステル原料について説明する。
<ポリエステル(1)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸カルシウム0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物に三酸化アンチモン0.035部、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.6μmのシリカ粒子0.08重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には40パスカルとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.60に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(1)の極限粘度は0.60、ポリマーの末端カルボン酸量は35当量/トンであった。
【0081】
<ポリエステル(2)の製造法>
ポリエステル(1)を出発原料とし、真空下220℃にて固相重合を行ってポリエステル(2)を得た。ポリエステル(2)の極限粘度は0.74、ポリマーの末端カルボン酸量は9当量/トンであった。
【0082】
<ポリエステル(3)の製造法>
ポリエステル(1)の製造において、エステル交換反応後に正リン酸0.063部(リン元素として0.02部)を添加した後、三酸化アンチモン0.035部、エチレングリコールに分散させた平均粒子径2.6μmのシリカ粒子0.08重量部を加えた以外は同様の方法で、ポリエステル(3)を得た。得られたポリエステル(3)の極限粘度は0.63、ポリマーの末端カルボン酸量は14当量/トンであった。
【0083】
<ポリエステル(4)の製造法>
ポリエステル(3)を出発原料とし、真空下220℃にて固相重合を行ってポリエステル(4)を得た。ポリエステル(4)の極限粘度は0.69、ポリマーの末端カルボン酸量は12当量/トンであった。
【0084】
<塗布剤および塗布剤配合>
塗布層の塗布剤配合は下記表2に示す。なお、表2中の添加量は、全て固形分重量%を表す。用いた塗布剤は下記に示すとおりである。
・U1:数平均分子量約1000のポリテトラメチレングリコールとジメチロールプロピオン酸とイソホロンジイソシアネートからなるポリウレタン(カルボン酸のカウンターイオンがアンモニア)であるポリウレタン水分散体
【0085】
・U2:ヘキサメチレンジオールのポリカーボネートポリオール(数平均分子量約1000)とジメチロールプロピオン酸と水添ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートからなるポリウレタン(カルボン酸のカウンターイオンがトリエチルアミン)である水分散体
【0086】
・U3:芳香族ポリエステルと脂肪族ジイソシアネートとのポリエステルポリウレタン水分散体である、DIC株式会社 商品名ハイドラン(登録商標)AP−40F。
【0087】
・E1:芳香族ポリエステルの水分散体である、DIC株式会社 商品名ファインテック(登録商標)ES−670
・X1:オキサゾリン系水溶性樹脂架橋剤 株式会社日本触媒 商品名エポクロス(登録商標)WS−500
・X2:カルボジイミド系水溶性樹脂架橋剤 日清紡ケミカル株式会社 商品名カルボジライト(登録商標)V−02−L2
・X3:水溶性エポキシ系架橋剤 ナガセケムテックス株式会社 商品名デナコール(登録商標)EX−521
・D1:シリカ微粒子水分散体(平均粒子径60nm)
【0088】
【表2】

【0089】
実施例1:
上記ポリエステル(2)およびポリエステル(4)を4:6の比率で混合したポリエステルを原料とし、ベント付き二軸押出機により、290℃で溶融押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定したキャスティングドラム上で急冷固化させて未延伸シートを得た。この溶融押出での滞留時間は、14分であった。得られたシートをロール延伸法により、縦方向に85℃で3.6倍延伸した。ここで、片面にコロナ放電処理を施した後、その処理面に、上記表2に示した塗布剤1をバーコーターで塗布し、最終的なフィルムでの塗工量が0.02g/mとなるように調整した。この後テンターに導き、100℃で乾燥した後、110℃で横方向に3.9倍延伸し、さらに220℃で熱処理を行った後、200℃で幅方向に4%縮めた。得られたフィルムの厚さは50μmであった。このフィルムの特性および評価結果を下記表3に示す。
【0090】
実施例2:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(2)およびポリエステル(3)を8:2の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。このフィルムの特性および評価結果を表3に示す。
【0091】
実施例3:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(1)、ポリエステル(2)およびポリエステル(4)を2:1:7の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。このフィルムの特性および評価結果を表3に示す。
【0092】
実施例4:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。このフィルムの特性および評価結果を表3に示す。
【0093】
比較例1:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(1)およびポリエステル(4)を1:9の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。このフィルムの特性および評価結果を表3に示す。
【0094】
比較例2:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(1)およびポリエステル(3)を4:6の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。このフィルムの特性および評価結果を表3に示す。
【0095】
比較例3:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(4)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。このフィルムの特性および評価結果を表3に示す。
【0096】
比較例4:
実施例1において、原料を上記ポリエステル(1)およびポリエステル(3)を5:5の比率で混合したポリエステルに変更した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。このフィルムの特性および評価結果を表3に示す。
【0097】
実施例5〜6、参考例1〜2、比較例5〜9:
実施例1において、塗布層に用いる塗布剤を、表2に記載の塗布剤2〜塗布剤10に変更する以外は、実施例1と全て同様の方法でフィルムを得た。このフィルムの特性および評価結果を下記表4に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のフィルムは、例えば、太陽電池裏面保護材用フィルムなどに好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン元素の含有量が0〜170ppmであり、末端カルボン酸量が26当量/トン以下である二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエーテル骨格としてポリテトラメチレングリコールを有するポリウレタンと、架橋剤とを含有する塗布層を有することを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
塗布層の塗工量として、乾燥・固化された後の、または二軸延伸・熱固定等を施された後の最終的な乾燥皮膜として0.005〜1.0g/mである請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量が300〜5000である請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
塗布層中の架橋剤が、オキサゾリン系化合物ポリマーおよび/またはカルボジイミド系化合物ポリマーである請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−82232(P2013−82232A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−15138(P2013−15138)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2010−203907(P2010−203907)の分割
【原出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】