説明

二酸化炭素の施用装置及び施用方法

【課題】温室に二酸化炭素を半永続的に供給可能な二酸化炭素施用装置及び方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素の吸放出を伴う平衡反応を起こす吸放出剤2を容器10内に収容する。準備モードと補充モードを選択的に切り替える。準備モードでは、外気を容器10内に流入させて吸放出剤2と接触させ、外気中の二酸化炭素を吸放出剤2に吸収させる。補充モードでは、吸引手段30にて容器10内のガスを吸引し、容器10の内圧を準備モードのときより低圧にする。これにより、吸放出剤2から二酸化炭素が放出される。この二酸化炭素を含有するガスを吸引して、温室9内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば農業や園芸用の温室内に二酸化炭素を施用する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業や園芸等において、ビニールハウス等の温室で植物を栽培することは周知である。温室内は外界からほぼ隔離された密閉空間にすることができる。しかし、気密性が高いと作物が育つにつれて二酸化炭素濃度が低下し、生育が頭打ちになる。そこで、二酸化炭素ボンベを設置したり、ドライアイスを設けたり、灯油等の化石燃料を燃やしたりすることで、二酸化炭素を人為的に付加(施用)していた。
【0003】
特許文献1では、開放された場所で植物を栽培するために、一対の炭素電極を水に漬けて電圧をかけることで二酸化炭素含有溶液を生成し、この二酸化炭素含有溶液を植物に供給している。
特許文献2では、二酸化炭素ボンベから供給した炭酸ガスと水とで炭酸水を生成し、この炭酸水をハウス内の植物に散布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−84529号公報
【特許文献2】特開2008−199920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の二酸化炭素供給手段は、何れも、二酸化炭素の原料を定期的に補充しない限り、永続的な運転はできなかった。例えば、二酸化炭素ボンベを用いる場合、ボンベ内が空になると二酸化炭素をボンベに補充するかボンベを交換する必要があった。ドライアイスを用いる場合、ドライアイスが気化して消滅すると新たなドライアイスを補充する必要があった。灯油等の化石燃料を燃やす場合、燃料が無くなれば補充する必要があった。特許文献1においては、炭素電極が溶解した場合、交換する必要があると考えられる。
本発明は、上記事情に鑑み、温室に二酸化炭素を原料補充しなくても半永続的に供給可能な二酸化炭素の施用装置及び施用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明に係る二酸化炭素施用装置は、温室に二酸化炭素を補充する二酸化炭素施用装置であって、
二酸化炭素の吸放出を伴う平衡反応を起こす吸放出剤を収容した容器と、
前記容器に接続された吸引手段と、
前記容器に接続又は設置された流入許容手段と、
準備モードと補充モードを選択的に切り替える切り替え手段と、
を備え、前記準備モードでは、前記流入許容手段が外気の前記容器内への流入を許容し、前記補充モードでは、前記吸引手段にて前記容器の内部のガスを吸引して前記容器の内圧を前記準備モードのときより低圧にし、かつ前記吸引したガスを前記温室の内部に供給することを特徴とする。
本発明に係る二酸化炭素施用方法は、温室に二酸化炭素を補充する二酸化炭素施用方法であって、
二酸化炭素の吸放出を伴う平衡反応を起こす吸放出剤を容器内に収容しておき、前記吸放出剤に空気を接触させる準備工程と、吸引手段にて前記容器の内部のガスを吸引して前記容器の内圧を前記準備工程のときより低圧にし、かつ前記吸引したガスを前記温室の内部に供給する補充工程と、を選択的に実行することを特徴とする。
【0007】
一般にこの種の吸放出剤は、二酸化炭素分圧が高くなると二酸化炭素を吸収する方向に平衡が移動し、二酸化炭素分圧が低くなると二酸化炭素を放出する方向に平衡が移動する。
準備モード(準備工程)においては、外気が吸放出剤と接触することで、外気中の二酸化炭素を吸放出剤に吸収させることができる。補充モード(補充工程)においては、容器内を低圧にすることで、吸放出剤から二酸化炭素を放出させることができる。この二酸化炭素を含むガスを吸引手段にて吸引し、温室に供給できる。これによって、温室内の二酸化炭素濃度を上昇させることができ、又は高く維持できる。準備モード(準備工程)と補充モード(補充工程)を反復することによって、吸放出剤が二酸化炭素の吸収と放出を繰り返す。これによって、温室に二酸化炭素を長期間ないしは半永続的に供給することができる。吸放出剤が空気中から二酸化炭素を吸収し、この二酸化炭素を放出するものであるから、空気中の二酸化炭素がいわば二酸化炭素原料であると言える。したがって、二酸化炭素ボンベ、ドライアイス、化石燃料、炭素電極等の特別な二酸化炭素原料を定期的に補充する必要がない。よって、保守、管理が容易であり、かつランニングコストを抑えることができる。
【0008】
前記吸放出剤の含有成分としては、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられる。これらアルカリ金属炭酸水素塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩と平衡して共存する。前記吸放出剤が、カリウム、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩と炭酸塩の平衡共存物であることが好ましく、炭酸水素カリウムと炭酸カリウムの平衡共存物であることがより好ましい。前記吸放出剤が、セスキ炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸リチウム等のアルカリ金属のセスキ炭酸塩を含んでいてもよい。
【0009】
前記吸放出剤が粉状であることが好ましい。これによって、吸放出剤の単位体積当たりの表面積を大きくでき、二酸化炭素の吸放出の効率を高くできる。
また、粉体どうしが部分的に結着し、多孔質の固体をなしていてもよい。これにより、粉体が飛散することがなく、扱いが容易になる。
【0010】
前記二酸化炭素施用装置が、外気を前記容器内に送り込む送気手段を更に備えていることが好ましい。前記準備モード(準備工程)では前記送気手段を駆動する。これによって、容器内に外気を確実に送り込むことができる。したがって、吸放出剤の二酸化炭素吸収反応を確実に起こさせることができる。前記補充モード(補充工程)では前記送気手段を停止することが好ましい。
【0011】
前記流入許容手段が、前記送気手段と前記容器とを接続する送気路に設けられた開閉弁を含むことが好ましい。前記準備モード(準備工程)では前記開閉弁が開くことが好ましい。これによって、容器内への外気送入を許容できる。前記補充モード(補充工程)では前記開閉弁が閉じることが好ましい。これによって、補充モード(補充工程)において外気が送気手段を通って容器内へ流れるのを防止できる。
【0012】
前記流入許容手段が、前記容器の内部を外部に開放する開放路と、前記開放路を開閉又は開度調節する弁とを含むことが好ましい。準備モード(準備工程)では、開放路を開くことで、外気の容器内への流入を許容できる。補充モード(補充工程)では、開放路を閉じることで容器を密閉できる。或いは、補充モード(補充工程)では、開放路の開度を準備モード(準備工程)より小さくする。吸引手段にて容器内のガスを吸引すれば、容器内を準備モード(準備工程)より低圧にできる。
【0013】
前記準備工程(準備モード)では前記容器内を外部に開放又は連通させ、前記補充工程(補充モード)では前記容器を密閉することが好ましい。前記流入許容手段が、前記補充モードでは前記容器内への外気の流入を禁止することが好ましい。例えば前記開放路を閉じることで、前記外気流入を禁止できる。
これによって、吸引手段にて容器内のガスを吸引すれば、容器の内圧を確実に低圧にできる。よって、吸放出剤から二酸化炭素を確実に放出させることができる。この場合、吸引手段として、レシプロ式真空ポンプやスクロール式真空ポンプ等の吸引力(到達真空度)が大きい真空ポンプを用いることが好ましい。
【0014】
前記準備工程(準備モード)では前記容器内を外部に開放又は連通させ、前記補充工程(補充モード)では前記容器内を前記準備工程のときより小さい開度で外部に開放又は連通させることにしてもよい。前記流入許容手段が、前記補充モードでは前記容器内への外気の流入を前記準備モードよりも制限しつつ許容することにしてもよい。
吸引手段にて容器内のガスを吸引すれば、容器の内圧を準備モードより低圧にできる。したがって、吸放出剤から二酸化炭素を放出させることができる。容器内には吸放出剤からの二酸化炭素の他、流入外気も含まれる。したがって、吸引手段の吸引力(到達真空度)が小さくても、容器内の二酸化炭素含有ガスを吸引手段にて確実に吸引でき、温室内に二酸化炭素を補充することができる。この態様に好適な吸引手段として、ダイヤフラム式真空ポンプやベローズ式真空ポンプ等が挙げられる。
【0015】
二酸化炭素施用装置において、前記切り替え手段が、前記温室の内部の二酸化炭素濃度が所定値を上回っているときは前記準備モードを選択し、前記温室の内部の二酸化炭素濃度が前記所定値を下回っているときは、前記補充モードを選択することが好ましい。
二酸化炭素施用方法において、前記温室の内部の二酸化炭素濃度が所定値を上回っているときは、前記準備工程を実行し、前記温室の内部の二酸化炭素濃度が前記所定値を下回ったときは、前記補充工程を実行することが好ましい。
これによって、温室内が高二酸化炭素濃度のとき、外気中の二酸化炭素を吸放出剤に吸収させておくことができる。温室内の二酸化炭素濃度が低下したとき、吸放出剤から二酸化炭素を放出して温室内に供給できる。これによって、温室内の二酸化炭素濃度を所定値以上に維持できる。
また、本システムを2式用意して、それぞれ準備モードと補充モードを交互に行わせ、かつ一方のシステムが補充モードのとき他方のシステムが準備モードになるようにしてもよい。これにより、温室内にCOを間断なく供給できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、温室に二酸化炭素を長期間ないしは半永続的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る二酸化炭素施用装置の回路図である。
【図2】KHCO及びKCOの平衡共存体からなる吸放出剤が平衡状態にあるときの雰囲気ガス中のCO分圧に対するKHCOモル存在率αの計算値を示すグラフであり、実線は、高真空下(CO分圧=HO分圧)での平衡値αであり、二点鎖線は、HO分圧を2123Pa(温度30℃、相対湿度50%の外気中のHO分圧に相当)としたときの平衡値αである。
【図3】本発明の第2実施形態に係る二酸化炭素施用装置の回路図である。
【図4】KHCO及びKCOの平衡共存体からなる吸放出剤が平衡状態にあるときの雰囲気ガス中のCO分圧に対するKHCOモル存在率αの計算値を示すグラフであり、二点鎖線は、HO分圧を2123Pa(温度30℃、相対湿度50%の外気中のHO分圧に相当)としたときの平衡値αであり、実線は、HO分圧がCO分圧より212.3Paだけ大きいときの平衡値αである。
【図5】本発明の第3実施形態に係る二酸化炭素施用装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態を示したものである。ビニールハウス等の温室9(二酸化炭素利用室)内では植物Sが栽培される。植物Sは、特に限定がなく、農作物でもよく、園芸作物でもよい。通常、温室9内のHO分圧(湿度)は、外気のHO分圧(湿度)より高い。通常、外気中のCO濃度は、350ppm〜380ppm程度であり、CO分圧は35Pa〜38Pa程度である。
【0019】
温室9には二酸化炭素施用装置1が装備されている。二酸化炭素施用装置1は、吸放出剤容器10と、送気ポンプ20(送気手段)と、吸引ポンプ30(吸引手段)を含む。これら要素10,20,30は、温室9の外部に配置されている。
【0020】
容器10は、数Pa〜数十Paの真空内圧に対し耐圧性を有し、更に好ましくは大気圧より高圧の内部圧力に対しても耐圧性を有している。容器10の内部に吸放出剤2が収容されている。容器10内が、吸放出剤2の収容室と、流通ガスの拡散室とに仕切られていてもよい。吸放出剤2は、例えば平均粒径が0.1μm〜100μmの粉末の状態になっている。吸放出剤2は、粉末状に限られず、1mm〜1cmの塊の集合体であってもよく、多孔質の塊状又は板状であってもよい。
【0021】
吸放出剤2は、炭酸水素ナトリウム(KHCO)を主成分として含有する。KHCOは、下式の平衡反応を起こし、炭酸ナトリウム(KCO)と共存する。
CO+HO+CO⇔2KHCO (式1)
吸放出剤2の一部はKCOにて構成されている。吸放出剤2は、KHCOとKCOとの平衡共存物である。KHCO及びKCOの平衡反応は、COの吸放出を伴い、更にHOの吸放出をも伴う。吸放出剤2がCOを吸収するとき、同時にHOをも吸収する。吸放出剤2がCOを放出するとき、同時にHOをも放出する。吸放出剤2におけるKHCOとKCOの割合は、吸放出剤2の配置環境のCO分圧、HO分圧、温度、圧力等に応じて変動する。吸放出剤2におけるKHCOとKCOの合計モル数に対するKHCOのモル存在率αは下式で定義される。
【数1】

【0022】
以下、吸放出剤2が外気(空気)中に置かれたときの平衡状態でのKHCOのモル存在率αを、α0と表記する。図2の二点鎖線に示すように、外気温30℃、相対湿度50%の外気中(CO分圧:35Pa〜38Pa)でのKHCOモル存在率の平衡値α0は、略α0=1である。
【0023】
容器10には流入許容手段40が接続されている。流入許容手段40は、装置1の動作モードに応じて外気が容器10内へ流入するのを許容し、或いは禁止する。流入許容手段40は、2つの管路41,42と、2つの電磁開閉弁51,52を含む。容器10の一端部(図1において左)から開放路41が延びている。開放路41の先端部は大気開放されている。開放路41に第1の開閉弁51が設けられている。開閉弁51を開くことで、容器10の内部が、開放路41を介して外部に開放又は連通され、ガスが容器10内から開放路41の開放端へ向けて流れるのが許容される。開閉弁51を閉じると、容器10の内部が密閉される。
【0024】
送気ポンプ20が、送気路42を介して容器10に接続されている。容器10の送気路42との接続部は、容器10の軸方向(長手方向)に開放路41との接続部とは反対側(図1において右)に位置している。送気ポンプ20は、外気を取り込み、送気路42を介して容器10内に送り込む。送気路42に第2の開閉弁52が設けられている。開閉弁52を開くことで、送気ポンプ20による容器10内への外気送入が許容される。開閉弁52を閉じると、上記外気送入が禁止される。
【0025】
吸引ポンプ30は、例えばスクロール式又はレシプロ式の真空ポンプにて構成されている。吸引ポンプ30の吸引ポートが、吸引路61を介して容器10に接続されている。容器10の吸引路61との接続部は、容器10の軸方向(長手方向)に開放路41との接続部とは反対側に位置し、かつ送気路42との接続部と同じ側に位置している。吸引ポンプ30は、吸引路61を介して容器10の内部のガスを吸引する。これによって、容器10の内圧を例えば数Pa〜数十Pa程度の高真空にすることができる。
【0026】
吸引ポンプ30の排気ポートに補充路62が連なっている。補充路62が温室9へ延び、温室9の内部に差し入れられている。補充路62の先端部に補充ノズル63が設けられている。補充ノズル63の先端部が、温室9内に開口している。補充ノズル63は、温室9の天井部に下向きに取り付けられている。吸引ポンプ30は、吸引ポートから吸い込んだガスを排気ポートに吐き出す。このガスが、補充路62を介して補充ノズル63から温室9内に導入される。
【0027】
温室9内には二酸化炭素濃度センサ4が設けられている。二酸化炭素濃度センサ4の検出信号線4aがコントローラ3(制御手段)に接続されている。コントローラ3は、マイクロコンピュータ、入出力インターフェース、ポンプ20,30や弁51,52の駆動回路等を含む。コントローラ3の制御信号線(図示省略)がポンプ20,30や弁51,52に接続されている。コントローラ3のマイクロコンピュータのメモリには、ポンプ20,30や弁51,52を制御するためのプログラムやデータが格納されている。制御データは、例えば、ハウス9内の二酸化炭素濃度の閾値(所定値)のデータを含む。二酸化炭素濃度の閾値は例えば800ppm〜1000ppmである。コントローラ3は、装置1の動作モードを準備モードと補充モードの間で選択的に切り替える切り替え手段を構成している。
【0028】
ポンプ20,30、コントローラ3等の動力源には太陽電池を用いることが好ましい。これによって、商用電源が供給不能な場所でも運転することができる。ポンプ20,30等の動力源として、ディーゼル発電機、商用電源等を用いてもよい。
【0029】
上記のように構成された二酸化炭素施用装置1の動作を説明する。
二酸化炭素施用装置1は、コントローラ3の制御によって、準備モード(準備工程)と補充モード(補充工程)とを選択的に実行する。いま、補充モードから準備モードに切り替えたものとする。このとき、容器10内の吸放出剤2のKHCOモル存在率αは、直前までの補充モードの実行によって十分に小さくなっており、少なくとも大気中の平衡値α0より小さくなっている(α<α0)。この時点で、ハウス9内のCO濃度は所定値(800ppm〜1000ppm)を上回っているものとする。
【0030】
[準備モード(準備工程)]
準備モードでは、流入許容手段40によって外気の容器10内への流入を許容する。具体的には、開閉弁51,52を開く。開放路41を介して容器10の内部を外部に開放又は連通する。吸引ポンプ30は停止しておく。そして、送気ポンプ20を駆動する。送気ポンプ20は、外気(ハウス9の外の空気)を送気路42を介して容器10内に送入する。開閉弁51,52を開状態にすることで上記外気送入を許容できる。
【0031】
容器10内に送り込まれた空気が吸放出剤2に接触する。その後、空気は開放路41から排出される。これによって、容器10の内圧がほぼ大気圧に保たれる。吸放出剤2が大気圧雰囲気に晒される。このとき、吸放出剤2においては、α<α0であるため、KCOがKHCOに変換される向き(式1の右向き)に平衡が移動する。この平衡反応によって、吸放出剤2が空気中のCOを吸収する。
【0032】
やがて、吸放出剤2のKHCOモル存在率αが大気中の平衡値α0に達する。図2の二点鎖線に示すように、例えば外気(CO分圧=35Pa〜38Pa)が温度30℃、相対湿度50%である場合、吸放出剤2のKHCOモル存在率αは、α=α0≒1となる。
【0033】
送気ポンプ20は、準備モードの期間中、継続して駆動してもよく、α=α0になるのに要する時間だけ駆動したら停止することにしてもよい。送気ポンプ20からの総送気流量が所定以上になったとき、送気ポンプ20を停止してもよい。準備モード期間中の送気ポンプ20からの総送気流量は、大気圧換算で少なくとも容器10の内容積以上であることが好ましい。
【0034】
[検出工程]
準備モードと併行して、二酸化炭素濃度センサ4によって、温室9内の雰囲気ガスのCO濃度を検出する。検出結果をコントローラ3に入力する。コントローラ3は、COの検出濃度に基づいて補充モードに切り替えるか否かを判断する。作物Sが炭素同化を活発に行なうと、温室9内のCO濃度が低下する。CO検出濃度が所定値(例えば800ppm〜1000ppm)を下回ったとき、補充モードに切り替える。或いは、CO検出濃度の低下勾配に基づいて補充モードへの切り替えの要否を判断してもよい。
【0035】
[補充モード(補充工程)]
補充モードでは、流入許容手段40が外気の容器10内への流入を禁止する。具体的には、送気ポンプ20を停止し、開閉弁51,52を閉じる。これによって、容器10が密閉される。そして、吸引ポンプ30を駆動し、容器10内のガスを吸引する。したがって、容器10の内圧が準備モード(準備工程)のときより低下する。容器10内は、例えば数十Pa程度〜数百Pa程度の高真空になる。そのため、吸放出剤2において、KHCOがKCOに変換される方向(式1の左方向)に平衡が移動し、吸放出剤2からCOが放出される。
【0036】
この容器10内のCO含有ガスが、吸引路61を経て吸引ポンプ30に吸い込まれる。このCO含有ガスが、補充路62を経て補充ノズル63から温室9内に吹き出される。これによって、COを温室9内に補充できる。よって、温室9内のCO濃度を増大させることができる。
【0037】
補充モードを更に詳述する。補充モードでは、当初、容器10内に在った空気が吸引ポンプ30に吸引されて排気される。吸放出剤2からはCOが放出されるのと同時にHOも放出される(式1)。したがって、容器10内のガス成分は殆どCOとHO(水蒸気)とで占められる。吸放出剤2からのCOとHOの放出モル数は互いに等しい(式1)。したがって、容器10内のCO分圧とHO分圧は互いに略等しく、かつこれらCO分圧とHO分圧の合計が容器10の内圧と略等しい。例えば、吸引ポンプ30によって容器10の内圧を80Paにした場合、CO分圧は40Pa程度になり、HO分圧は40Pa程度になる。したがって、図2の実線に示すように、吸放出剤2の平衡時のKHCOモル存在率αは、α=0.6程度になる。すなわち、吸放出剤2は、α=0.6程度になるまでCOを放出できる。
【0038】
吸引ポンプ30は、容器10内のガス(CO+HO)を吸い込み、略大気圧になるまで圧縮して吐出する。大気圧下では、上記ガス(CO+HO)中のHOの多くが凝縮する。したがって、補充ノズル63から吹き出されるガスの殆どはCOであり、残りが未凝縮のHO(水蒸気)である。よって、高濃度のCOガスをハウス9内に供給できる。凝縮したHOは、水滴となってノズル63から排出される。
【0039】
温室9内のCO濃度がある大きさ(例えば1000ppm以上)になったとき、補充モードを終了する。補充モードの継続時間が所定時間に達したとき、補充モードを終了してもよい。吸放出剤2からのCO放出流量ひいては補充ノズル63からのCO供給流量が低下したとき、補充モードを終了してもよい。吸放出剤2のKHCOモル存在率αが容器10内の真空環境での平衡値(例えばα=0.6程度)に達したとき、補充モードを終了してもよい。
【0040】
補充モードを終了後、準備モードに切り替える。すなわち、吸引ポンプ30を停止し、開閉弁51,52を開き、送気ポンプ20を駆動する。
【0041】
このようにして、二酸化炭素施用装置1によれば、準備モード(準備工程)と補充モード(補充工程)を選択的に実行する。これによって、COを温室9内に長期間にわたって、ないしは半永続的に供給することができる。したがって、温室9内のCO濃度を所定値以上に維持でき、作物Sの生育を促進できる。しかも、二酸化炭素施用装置1によれば、温室9内の加熱を伴わないから夏季の運転に好適である。よって、夏季には、太陽光線の強さと相俟って、作物Sの生育を十分に促進させることができる。
【0042】
吸放出剤2が空気中からCOを吸収し、このCOを放出するものであるから、空気中のCOがいわばCO原料であると言える。したがって、二酸化炭素ボンベ、ドライアイス、化石燃料、炭素電極等の特別なCO原料を定期的に補充する必要がない。よって、保守、管理が容易であり、かつランニングコストを抑えることができる。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態の二酸化炭素施用装置1Aは、吸引ポンプ31として、ダイヤフラム式の真空ポンプを用いている。ダイヤフラム式の真空ポンプは、スクロール式又はレシプロ式の真空ポンプ30より到達真空度が小さい。ダイヤフラム式の真空ポンプの到達真空度は、例えば1000Pa程度である。
【0044】
流入許容手段40は、第1実施形態の開閉弁51に代えて、開放路41を開度調節する弁53を含む。弁53は、全開位置53aと半開位置53bとを有する切換弁にて構成され、開放路41に介在されてる。切換弁53を全開位置53aと半開位置53bとの間で切り替えることによって、開放路41の流通方向及び開度を調節できる。全開位置53aの切換弁53は、開放路41を全開にし、かつ、ガスが開放路41を容器10側から開放路14の開放端へ向けて流通するのを許容する。半開位置53bの切換弁53は、開放路41に絞りを付与することで、開放路41を半開にする。半開位置53bのときの切換弁53の開度は、全開位置53aのときの切換弁53の開度より小さい。かつ、半開位置53bの切換弁53は、ガスが開放路41の開放端から容器10内へ向けて流通するのを許容する。したがって、全開位置53aの切換弁53の流通許容方向と、半開位置53aの切換弁53の流通許容方向とは、互いに逆である。
【0045】
コントローラ3は、ポンプ20,31や弁51,53の駆動回路を含む。コントローラ3の制御信号線(図示省略)がポンプ20,31及び弁51,53に接続されている。コントローラ3は、ポンプ20,31及び弁52,53を操作し、装置1の動作モードを準備モードと補充モードの間で選択的に切り替える。
【0046】
[準備モード(準備工程)]
準備モードでは、切換弁53を全開位置53aにする。これにより、容器10内が開放路51を介して外部に開放される。かつ、開閉弁52を開く。そして、送気ポンプ20を駆動する。ダイヤフラム式吸引ポンプ31は停止する。これによって、第1実施形態と同様に、外気が、送気ポンプ20によって容器10内に送り込まれ、吸放出剤2と接触した後、開放路41から排出される。吸放出剤2と外気が接触することで、外気中のCOが吸放出剤2に吸収される。図4の二点鎖線に示すように、例えば外気(CO分圧=35Pa〜38Pa)が温度30℃、相対湿度50%である場合、吸放出剤2のKHCOモル存在率αは、略α=1に収斂する。
【0047】
[補充モード(補充工程)]
補充モードでは、流入許容手段40が、外気の容器10内への流入を準備モードよりも制限しつつ許容する。すなわち、切換弁53を半開位置53bにする。これによって、容器10内が準備モード(準備工程)のときより小さい開度で外部に開放される。送気ポンプ20は停止し、開閉弁52は閉じる。そして、ダイヤフラム式吸引ポンプ31を駆動する。これによって、容器10の内圧が、準備モードにおけるほぼ大気圧より低圧になる。ただし、容器10の内圧は、第1実施形態の補充モードほどの高真空にはならず、例えば大気圧の数分の1〜数十分の1程度になる。これによって、吸放出剤2において、KHCOがKCOに変換される方向(式1の左方向)に平衡が移動し、吸放出剤2からCOが放出される。同時に、外部の空気が、半開の開放路41を経て容器10内に導入される。この空気に上記吸放出剤2からのCOが混ざる。このCO含有ガスが、吸引路61を経て吸引ポンプ30に吸い込まれる。開放路41から空気を取り込むことによって、ダイヤフラム式吸引ポンプ31の吸引流量を確保できる。CO含有ガスは、吸引ポンプ31から補充路62を経、補充ノズル63から温室9内に吹き出される。これによって、COを温室9内に補充できる。よって、温室9内のCO濃度を増大させることができる。
【0048】
第2実施形態の補充モードを更に具体的に説明する。補充モードでは、ダイヤフラム式吸引ポンプ31によって容器10の内圧を例えば大気圧の1/10すなわち10000Pa程度にする。ダイヤフラム式吸引ポンプ31の到達真空度は1000Pa程度であるから、吸引能力を十分に確保できる。当初、容器10内に在った空気は、吸引ポンプ30にて順次吸引されて排出される。吸引ポンプ31が吸引した分の空気が新たに半開の開放路41から容器10内に導入される。これにより、容器10の内圧が10000Pa程度に維持される。容器10の内圧は大気圧より低いから、吸放出剤2からCOが放出され、同時にHOも放出される(式1)。したがって、容器10内のガスは、開放路41から流入した空気と、吸放出剤2から放出されたCO及びHO(水蒸気)との混合ガスになる。開放路41からの空気が上記混合ガスの大半を占め、その分圧は10000Pa程度である。例えば外気の相対湿度が50%(温度30℃)である場合、10000Paの空気には約212.3PaのHO(水蒸気)が含まれている。これに対し、10000Paの空気中のCOの分圧は3.5Pa〜3.8Pa程度であり、HO分圧と比べるとほとんど無視できる。吸放出剤2からのCOとHOの放出モル数は互いに等しい(式1)。したがって、容器10内の混合ガスにおけるHO分圧はCO分圧より約212.3Paだけ大きいと考えることができる。
【0049】
図4の実線は、HO分圧=CO分圧+212.3Paの雰囲気下における、CO分圧に対する吸放出剤2の平衡状態でのKHCOモル存在率αを示したものである。補充モードの開始時における吸放出剤2のKHCOモル存在率αはα≒1であり、このKHCOモル存在率αがCO及びHOの放出に伴って低下していく。図4の実線に示すように、例えばα=0.9のとき、吸放出剤2は、容器10内の混合ガス中のCO分圧が約40Paになるまで、CO及びHOを放出できる。吸引ポンプ31が、この混合ガスを吸い込み、略大気圧(概略100000Pa)になるまで圧縮する。圧縮後の混合ガス中のCO分圧は約400Paになる。したがって、混合ガスは、外気の10倍以上の濃度のCOを含有する。この高濃度CO含有ガスを補充ノズル63からハウス9内に供給することができる。
【0050】
補充モードを続行することにより、吸放出剤2のKHCOモル存在率αが更に低下していく。図4の実線に示すように、例えばα=0.7のとき、吸放出剤2は、容器10内の混合ガス中のCO分圧が約10Paになるまで、CO及びHOを放出できる。吸引ポンプ31が、この混合ガスを吸い込み、略大気圧(概略100000Pa)になるまで圧縮する。圧縮後の混合ガス中のCO分圧は約100Paになる。したがって、外気の2〜3倍の濃度のCOを含有するガスを補充ノズル63からハウス9内に供給することができる。
【0051】
補充ノズル63からの供給ガス中のCO濃度がある程度まで低下したとき、補充モードを終了し、準備モードに切り替える。すなわち、吸引ポンプ31を停止し、切換弁53を全開位置53aにし、開閉弁52を開き、送気ポンプ20を駆動する。これによって、空気を送気路42から容器10内に送り込んで吸放出剤2と接触させて、空気中のCOを吸放出剤2に吸着させる。これにより、吸放出剤2のKHCOモル存在率αを約α=1になるまで戻すことができる。このようにして、準備モードと補充モードを反復することで、温室9内のCO濃度を高く維持でき、作物Sの生育を促進できる。
【0052】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態を示したものである。第3実施形態の二酸化炭素施用装置1Bは、第1、第2実施形態の送気ポンプ20、送気路42、開閉弁52を備えていない。流入許容手段40が、開放路41と、開放路41を開閉する開閉弁51Bだけで構成されている。開閉弁51Bの開位置における流通許容方向は、第1実施形態の開閉弁51とは逆である。すなわち、開閉弁51Bは、開位置のとき、ガスが開放路41の開放端から容器10側へ流れるのを許容する。補充路62に電磁三方弁54が設けられている。補充路62から三方弁54を介して放出路64が分岐している。放出路64の先端は、温室9の外部に配置され、大気に開放されている。
【0053】
三方弁54は、吸引ポンプ30の排気ポートを、放出路64と補充ノズル63とのうち何れか一方に選択的に接続し、他方から切り離す。詳述すると、三方弁54は、放出位置54aと補充位置54bを含む。三方弁54が放出位置54aのとき、吸引ポンプ30を放出路64に接続し、補充ノズル63から切り離す。三方弁54が補充位置54のとき、吸引ポンプ30を補充ノズル63に接続し、放出路64から切り離す。
【0054】
コントローラ3は、ポンプ30及び弁51B,54の駆動回路を含む。コントローラ3の制御信号線(図示省略)がポンプ30及び弁51B,53に接続されている。コントローラ3は、ポンプ30及び弁51B,54を操作し、装置1の動作モードを準備モードと補充モードの間で選択的に切り替える。
【0055】
[準備モード(準備工程)]
準備モードでは、開閉弁51Bを開く。かつ、三方弁54を放出位置54aに位置させて、吸引ポンプ30を放出路64に接続する。そして、吸引ポンプ30を駆動する。吸引ポンプ30の吸引によって、外部の空気が開放路41を経て容器10内に送り込まれる。(流入許容手段40が、容器10内への外気流入を許容する。)この空気が吸放出剤2と接触することで、空気中のCOが吸放出剤2に吸収される。したがって、空気中のCO濃度が低下する。この低濃度COガスが、吸引路61を経て吸引ポンプ30に吸い込まれ、更に補充路62の三方弁54より上流側部分及び三方弁54を経て、放出路64から大気に放出される。したがって、低濃度COガスが温室9内に供給されることはない。開放路41が全開されているため、容器10内は略大気圧に保たれる。
【0056】
[補充モード(補充工程)]
補充モードでは、開閉弁51Bを閉じる。かつ、三方弁54を補充位置54bに位置させて、吸引ポンプ30を補充ノズル63に接続する。そして、吸引ポンプ30を駆動する。これによって、第1実施形態の補充モードと同様に、容器10の内圧が例えば数十Pa程度〜数百Pa程度まで低下し、吸放出剤2からCOが放出される。このCO含有ガスが、容器10内から吸引路61を経て吸引ポンプ30に吸い込まれ、更に補充路62を経て補充ノズル63から温室9内に吹き出される。これによって、COを温室9内に補充できる。
【0057】
第3実施形態では、1つの吸引ポンプ30によって、準備モードにおける容器10内への外気送入と、補充モードにおける容器10内のガス吸引の両方の操作に対応できる。吸引ポンプ30が、吸引手段としての機能だけでなく、送気手段としての機能をも兼ねる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されず、発明の要旨を変更しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
吸放出剤2は、炭酸水素カリウムと炭酸水素カリウムの平衡共存物に限られず、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)と炭酸ナトリウム(NaCO)の平衡共存物、又は炭酸水素リチウム(LiHCO)と炭酸リチウム(LiCO)の平衡共存物であってもよい。また、吸放出剤2が、セスキ炭酸塩(XCO・XHCO・2HO X=K,Na,Li)を含有していてもよい。吸放出剤2が、二種以上のアルカリ金属の炭酸水素塩と炭酸塩の平衡共存物を含有していてもよい。
【0059】
容器10に開放路41を連ねるのに代えて、容器10に蓋を設置してもよい。流入許容手段40が、容器10に設置された開閉可能又は開度調節可能な蓋であってもよい。準備モードでは蓋を開けることで、外気が容器10の内部に入り込んで吸放出剤2と接触するようにしてもよい。送気手段を省略し、外気が自然対流や拡散等で、開放した容器10内に入り込んで吸放出剤2と接触するようにしてもよい。補充モードでは蓋を閉じ、又は半開にする。
【0060】
開位置での方向制御付き開閉弁51,52,51Bに代えて、方向制御しないストップバルブ等の開閉弁を用いてもよい。
方向制御及び絞り付き切換弁53に代えて、方向制御しない開度調節弁を用いてもよく、方向制御弁と開度調節弁を組み合わせてもよい。
【0061】
送気手段として、送気ポンプ20に代えて、ファン、ブロア、エア噴射ノズル等を用いてもよい。
送気手段として圧送ポンプを用い、前記開放路を閉じて前記容器内を密閉した状態で、外気を圧送ポンプにて容器内に圧縮して送り込んでもよい。準備モードにおいて容器10内を大気圧より高圧にしてもよい。
【0062】
容器10やポンプ20,30が、温室9内に収容されていてもよい。吸引ポンプ30の排気ポートが、温室9の内部に直接連なっていてもよい。補充路62を省略し。吸引ポンプ30の排気ポートが補充ノズル63を兼ねていてもよい。
補充ノズル63の設置位置は、温室9の天井部に限られず、例えば底部でもよい。補充路62を複数に分岐させ、各分岐路の先端部に補充ノズル63を設け、複数の補充ノズル63を温室9の各所に分散させて配置してもよい。
【0063】
複数の実施形態を互いに組み合わせてもよい。例えば、第3実施形態において、吸引手段及び送気手段として、高真空到達度の吸引ポンプ30に代えて、低真空到達度の吸引ポンプ31(図3)を用いてもよい。この場合、開放路41には、開閉弁51bに代えて開度調節弁を設ける。準備モードでは開度調節弁を全開にし、補充モードでは開度調節弁を半開にする。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、例えば農作物や園芸作物を育てる温室への二酸化炭素施用に適用できる。
【符号の説明】
【0065】
S 作物
1,1A,1B 二酸化炭素施用装置
2 吸放出剤
3 コントローラ(切り替え手段)
4 二酸化炭素濃度センサ
4a 検出信号線
9 温室
10 吸放出剤容器
20 送気ポンプ(送気手段)
30 吸引ポンプ(吸引手段)
31 ダイヤフラム式吸引ポンプ(吸引手段)
40 流入許容手段
41 開放路
42 送気路
51,51B 開閉弁(開放路を開閉する弁)
52 送気路の開閉弁
53 切換弁(開放路を開度調節する弁)
53a 全開位置
53b 半開位置
54 三方弁
54a 放出位置
54b 補充位置
61 吸引路
62 補充路
63 補充ノズル
64 放出路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室に二酸化炭素を補充する二酸化炭素施用装置であって、
二酸化炭素の吸放出を伴う平衡反応を起こす吸放出剤を収容した容器と、
前記容器に接続された吸引手段と、
前記容器に接続又は設置された流入許容手段と、
準備モードと補充モードを選択的に切り替える切り替え手段と、
を備え、前記準備モードでは、前記流入許容手段が外気の前記容器内への流入を許容し、前記補充モードでは、前記吸引手段にて前記容器の内部のガスを吸引して前記容器の内圧を前記準備モードのときより低圧にし、かつ前記吸引したガスを前記温室の内部に供給することを特徴とする二酸化炭素施用装置。
【請求項2】
外気を前記容器内に送り込む送気手段を更に備え、前記準備モードでは前記送気手段を駆動し、前記補充モードでは前記送気手段を停止することを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素施用装置。
【請求項3】
前記流入許容手段が、前記容器の内部を外部に開放する開放路と、前記開放路を開閉又は開度調節する弁とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素施用装置。
【請求項4】
前記流入許容手段が、前記補充モードでは前記流入を禁止することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の二酸化炭素施用装置。
【請求項5】
前記流入許容手段が、前記補充モードでは前記流入を前記準備モードよりも制限しつつ許容することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の二酸化炭素施用装置。
【請求項6】
前記切り替え手段が、前記温室の内部の二酸化炭素濃度が所定値を上回っているときは前記準備モードを選択し、前記温室の内部の二酸化炭素濃度が前記所定値を下回っているときは、前記補充モードを選択することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の二酸化炭素施用装置。
【請求項7】
前記吸放出剤が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、セスキ炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、又はセスキ炭酸リチウムを含有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の二酸化炭素施用装置。
【請求項8】
前記吸放出剤が粉状であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の二酸化炭素施用装置。
【請求項9】
温室に二酸化炭素を補充する二酸化炭素施用方法であって、
二酸化炭素の吸放出を伴う平衡反応を起こす吸放出剤を容器内に収容しておき、前記吸放出剤に空気を接触させる準備工程と、吸引手段にて前記容器の内部のガスを吸引して前記容器の内圧を前記準備工程のときより低圧にし、かつ前記吸引したガスを前記温室の内部に供給する補充工程と、を選択的に実行することを特徴とする二酸化炭素施用方法。
【請求項10】
前記準備工程では前記容器内を外部に開放又は連通させ、前記補充工程では前記容器を密閉することを特徴とする請求項9に記載の二酸化炭素施用方法。
【請求項11】
前記準備工程では前記容器内を外部に開放又は連通させ、前記補充工程では前記容器内を前記準備工程のときより小さい開度で外部に開放又は連通させる請求項9に記載の二酸化炭素施用方法。
【請求項12】
前記温室の内部の二酸化炭素濃度が所定値を上回っているときは、前記準備工程を実行し、前記温室の内部の二酸化炭素濃度が前記所定値を下回ったときは、前記補充工程を実行することを特徴とする請求項9〜11の何れか1項に記載の二酸化炭素施用方法。
【請求項13】
前記吸放出剤が、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、セスキ炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、又はセスキ炭酸リチウムを含有することを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載の二酸化炭素施用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−65581(P2012−65581A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212526(P2010−212526)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】