二重床の壁部側端部取り合い構造
【課題】 外観を損ねることなく、上側床部への衝撃による振動の伝播を的確に抑制することのできる二重床の壁部側端部取り合い構造を提供すること。
【解決手段】 壁部200の下部位置に巾木20の設けられる建築物に構築され、下側床部100上に所定の空間を確保して上側床部10の設けられた二重床の壁部側端部の取り合い構造において、上側床部10の壁部側端部10dと壁部200及び巾木20とのそれぞれの間に隙間(「X」及び「Y」)が設けられ、上側床部の端部10dと巾木20との隙間Yの所定位置には、上側床部の端部10dと巾木20の下端面との間に介在し、弾性変形により上側床部10の振動を減衰する減衰材12,14が部分的に配設されている。これにより、上下空間の空気流通が確保され、且つ衝撃振動の減衰作用も確保される。
【解決手段】 壁部200の下部位置に巾木20の設けられる建築物に構築され、下側床部100上に所定の空間を確保して上側床部10の設けられた二重床の壁部側端部の取り合い構造において、上側床部10の壁部側端部10dと壁部200及び巾木20とのそれぞれの間に隙間(「X」及び「Y」)が設けられ、上側床部の端部10dと巾木20との隙間Yの所定位置には、上側床部の端部10dと巾木20の下端面との間に介在し、弾性変形により上側床部10の振動を減衰する減衰材12,14が部分的に配設されている。これにより、上下空間の空気流通が確保され、且つ衝撃振動の減衰作用も確保される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床の壁部側端部取り合い構造、特に、壁部の下部位置に巾木の設置される建造物において設置される乾式遮音二重床(下側床部と上側床部との間に空間の形成された床構造)の上側床部の壁部側端部と壁部との取り合い構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数階層の居住用の建築物において、上下の階層間や隣室への音の伝搬を抑制する1つの手段として、乾式遮音二重床の構造が知られている。この種の二重床構造は、コンクリートスラブとして構築された下側床部の上部に当該下側床部と所定間隔をおいて上側床部構築するものである。
【0003】
図10は、この様な二重床構造の例を示している。図示のように、コンクリートスラブである下側床部100上の複数箇所に所定高さの脚部102を設置し、その脚部102上に上側床部10が設置されている。すなわち、脚部102の高さ分が二重床構造の空間となり、この空間によって形成された空気層が上側床部10からの振動の緩衝材として機能する。また、脚部102は、支柱102aの下端部に防振ゴムなどにて形成された減衰材102bが設置されており、ここで上側床部10からの衝撃を吸収している。
【0004】
また、上側床部10の壁部200側の端部は、壁部200に接触しないように隙間を開けた状態で、壁部200の外表面に対向している。これは、上側床部10に加えられた衝撃が、直接、壁部200に伝搬することのない様にするための構造である。
【0005】
更に、上側床部10の壁側端部の上端部と対応する壁部200の下部位置との間には巾木20が、設置されている。すなわち、巾木20は壁部200の下部位置に固定され、上側床部10の壁部200への取付部分を目隠ししているものである。なお、上側床部10は図示のように、例えば、下側から下地パネル10a、捨て張り合板10b、複合フローリング10cの様な積層構造が取られている。以下の図面に置いては、図面簡略化のために単に一体的に表示している。
【0006】
また、一般に、床からの音の伝達は、通常歩行時の足音や掃除機の音などの軽量の衝撃に基づくもの、更に、椅子から床への飛び降りや大人が強く歩く際に生じる大きな重量の衝撃などに基づくものである。この様な衝撃音に対する遮音性の評価に関しては、JIS A 1418において、軽量衝撃源としてのタッピングマシン、重量衝撃源としてのタイヤ落下などが規格として定められている。上述したような乾式遮音二重床の構造は、主として軽量衝撃源に対する対策として講じられているものであり、床部からの振動が巾木や側壁などの垂直造作部にできるだけ伝搬され ない様にしているものである。
【0007】
図11(A)〜(C)には、二重床構造の上側床部10の端部と壁部200との取り合い構造における、従来からの軽量衝撃源に対する対策の例が示されている。 同図(A)は、上述の図7に示した従来の構造と同様の構造であり、すなわち、上側床部10の壁部200側の端部10dと壁部200との間には隙間が設けられており、上側床部10の端部10dの上側面は巾木20の下端面に接触した状態となっている。
【0008】
同図(B)に示された構造では、上側床部10の壁部200側の端部10dは、壁部200及び巾木20の双方から離反している。すなわち、壁部200の外側面及び巾木20の下端面のそれぞれの間に隙間が確保されている。
【0009】
同図(C)に示された構造は、上記図(B)に記載された構造と同じく、上側床部10の壁部200側の端部10dと、壁部200及び巾木20の双方との間には隙間が設けられている。更に、上側床部10の端部10dの上面と巾木20の下端面との間の隙間を弾性部材にて形成したヒレ部22を設置することで遮蔽している。なお、この図(C)に示された構造と同様の技術は、特許文献1(特開2003−293577)に開示されているものであり、巾木20の下側に生じる隙間を外観上目立たないようにするためであり、また、隙間からゴミ等が浸入することなどを防止せんとしているものである。
【0010】
【特許文献1】特開2003−293577
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記図11(A)の上側床部の壁部側端部取り合い構造の場合、上側床部10の端部10dと壁部200との間には隙間があり、上側床部10から壁部200に直接振動が伝達されることはない。しかしながら、図示のように、上側床部10の端部10dは、巾木20の下端面に接触しており、隙間による外観上の美感の低下やゴミの床内への侵入を防いでいる。しかしながら、上側床部10で生じた例えば、軽量衝撃や重量衝撃による振動は、巾木20を介して壁部200に伝達されることとなる。したがって、壁部200を介しての階下や階上への騒音の伝搬が生じてしまうことが避けられない。
【0012】
次に、図11(B)の上側床部の壁部側端部取り合い構造の場合、上側床部10の端部10dは、壁部200及び巾木20の双方との間に隙間を置いて配置されている。したがって、上記の同図(A)の場合と異なり、上側床部10からの振動は、基本的に巾木20、壁部200の双方に伝達されることがない。また、巾木20の下端面が浮いている状況は、部屋空間と上側床部10の下部空間の空気の移動を可能とし、これにより上側床部10に生じた振動の上記空気の上下の移動による解消、抑制が達成されている。
【0013】
しかしながら、例えば、上側床部10に重量衝撃が加えられた場合、上側床部10の振動が曲げ波として周囲に伝わり、端部10dにおいては、上下に振れる現象が生じる。したがって、上側床部10の端部10dの上面と巾木20の下端面との間の隙間を小さいものとすると、この端部10dの上下の振れにより、巾木20との衝突が生じ、二次振動が発生する。この二次振動が巾木から20から壁部200に伝播され、階下、階上への騒音の伝達状況を生起させてしまう。
【0014】
また、この振動の伝達を防止するため、巾木20と上側床部10の端部10dとの間の隙間を大きく取ると、床内が見えてしまったり、壁の奥が見えるなどで、外観を損ねてしまう。また、巾木20の下側からのゴミなどの床下への侵入を招来してしまう。
【0015】
また、特許文献1に開示された図11(C)の上側床部の壁部側端部取り合い構造の場合、上側床部10の端部10dと巾木20との間の隙間は、ヒレ部22によって遮蔽されているので、巾木20と同じ配色とすることなどによって、外観を損ねることを防止し、ゴミなどの床下への侵入を防ぐことが可能となっている。しかしながら、遮蔽機能を発揮するということは床下の空気層の流通経路を塞ぐことを意味し、空気流通による重量衝撃音の抑制機能が奪われてしまう。
【0016】
本発明は、上記種々の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外観を損ねることなく、上側床部への衝撃による振動の伝播を的確に抑制することのできる二重床の壁部側端部取り合い構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、
壁部の下部位置に巾木の設けられる建築物に構築され、下側床部上に所定の空間を確保して上側床部の設けられた二重床の壁部側端部の取り合い構造において、前記上側床部の前記壁部側端部と前記壁部の壁面及び前記巾木の下端面とのそれぞれの間に隙間が設けられ、前記上側床部の端部と前記巾木の下端面との隙間の所定位置には、前記上側床部の端部と前記巾木の下端面との間に介在し、弾性変形により前記上側床部の振動を減衰する減衰材が部分的に配設されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、まず、上側床部の壁部側端部と壁部の壁面との間には隙間が設けられているので、上側床部の端部から壁部への直接の振動伝達は回避されている。そして、上側床部の壁部側端部と巾木の下端面との間の隙間には減衰材が設けられているが、隙間の全範囲を閉塞するものではなく、所定箇所への部分的な配設である。そして、この減衰材は、上側床部の端部と巾木の下端面との間に介在し、弾性変形することにより上側床部の振動を減衰する。すなわち、上側床部の端部と巾木の下端面との隙間は、全域が塞がれているものではなく、減衰材が設置されていない所では、上側床部と下側床部との間の床下空間とその上部空間との空気流通は確保されている。
【0019】
したがって、この上下空間の空気流通が確保されていることによって、上側床部における衝撃振動の減衰作用を確保することができる。そして、上側床部の壁部側の端部の上下の振れに対しては、減衰材がこれを弾性変形により吸収することができるので、上側床部の端部の振れによる巾木との衝突に基づく二次振動の発生も的確に抑制される。その結果、上側床部の端部と巾木の下端面との間の隙間を可及的に小さくすることも可能となる。したがって、二次振動の防止のために隙間を大きくとることによる外観の悪化を回避することができ、また、ゴミなどの床下への侵入を抑制することができる。
【0020】
請求項2に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項1の構造において、
前記減衰材が、所定間隔を置いて複数箇所に設置されたことを特徴とする。減衰材は、上側床部の端部と巾木の下端面との間の隙間に部分的に配設されるが、本請求項に係る構造では、所定間隔毎に複数箇所に設置されているので、上側床部の端部の上下の振れを均等に抑制すること、すなわち均等な減衰機能を発揮することができると共に、外観の向上を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項1の構造において、
前記減衰材が、弾性部材にて形成されたことを特徴とする。ここで弾性部材とは、ゴムやバネなどの弾性体にて構成された部材を意味し、好適には防振ゴムなどを隙間のサイズ等に適合させて減衰機能を効果的に奏するように形成されるものである。すなわち、この様な弾性部材により構成したことで、減衰材の設置を簡単な作業により行うことができる。
【0022】
請求項4に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項3の構造において、
前記減衰材が、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する所定長さの略直方体の減衰材ピースとして形成されたことを特徴とする。すなわち、減衰材が略直方体の弾性部材としてシンプルな形状となっており、製造容易、且つ上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間への設置作業の容易化も達成されている。
【0023】
請求項5に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項3の構造において、
前記減衰材が、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する本体部と、該本体部の縁部からほぼ直角に延伸した補助部と、を有し、前記減衰材の取り付けが、前記本体部を前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間に設置した状態で、前記補助部が前記上側床部の壁部側端面又は該壁部側端面に対向する壁部に貼着されたことを特徴とする。
【0024】
この構成により、減衰材の取り付けの際の貼着面を大きく取ることができる。したがって、減衰材の取り付け作業の容易化が図られ、予め補助部を貼着することで、床部や壁部の構築にあたって、予め壁部又は上側床部に安定した状態で取り付けておくことができる。
【0025】
請求項6に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項3の構造において、
前記減衰材が、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する本体部と、該本体部の縁部からほぼ直角に延伸した補助部と、を有し、該減衰材の取り付けが、前記本体部を前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間に設置した状態で、前記補助部が前記巾木の下部と前記壁部との間に挟まれた状態となるように行われ、前記巾木は、前記減衰材の補助部を前記壁部との間で挟んだ状態で、上端部のみが壁部に接するように前記壁部に取り付けられることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、請求項5の構造と同じく、予め減衰材を確実に壁部又は巾木の下部の裏面に貼着しておくことができ、減衰材の設置作業が簡易なものとなる。また、巾木はその下端部が減衰材の補助部を介した状態で壁部に取り付けられることとなり、上側床部から減衰材を介して巾木に伝播される振動の壁部への伝播が有効に減衰される。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明に係る二重床の壁部側端部取り合い構造によれば、巾木の下端部と上側床部との間の隙間を大きく取ることなく上側床部から巾木への振動伝達を抑制することができる。これにより、大きな隙間によって巾木下部の部分の外観を損ねることがなく、上側床部への衝撃による発生する振動の壁部への伝播も的確に抑制することができる。
【0028】
また、上側床部の壁部側端部と巾木の下端面との間の隙間には部分的にのみ減衰材が設けられているので、上側床部と下側床部との間の床下空間とその上部空間との空気流通は確保されており、上側床部における衝撃振動の空気流通による減衰作用も維持されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造の適用された二重床構造の部分説明図である。図示のように、下側床部100上に所定間隔を空けて、上側床部10が設置されており、上側床部10の壁部側の端部10dは壁面との間に所定の隙間Xを空けて設置されている。また、上側床部10の端部10dの上面側も巾木20の下端面との間に隙間Yを空けて構成されている。
【0030】
そして、特徴的なことは、上側床部10の上面と巾木20の下端面との間の隙間に等間隔に減衰材12を設置していることである。この減衰材12の配置は、構築物の種類等に応じて適宜設定されるが、好適には隙間の全領域の5分の1以下の範囲で減衰材12が設置される。すなわち、隙間は減衰材によって5分の1以上遮蔽されることがない様に設置されるのが好適である。本実施の形態では、長さ約20mmの緒減衰材12を約450mmのピッチで設置している。
【0031】
図2は、本実施の形態に係る取り合い構造の構成を示す概略断面図であり、図示のように、減衰材12は上側床部10の端部10dと巾木20の下端面の間に挟持された形で設置されている。本実施の形態では上側床部10と巾木20との間の隙間Yは2〜3mmに設定されており、減衰材12の厚さもほぼ2〜3mmに設定されている。また、減衰材12は、製造容易な略直方体形状のシンプルな形状とされており、防振ゴム、低反発性ウレタン、スポンジなどの減衰機能の高い部材にて形成されている。この減衰材12の設置は、予め巾木20の下端面の所定位置に貼着しておき、その状態で、巾木20や上側床部10の設置を行うことで、減衰材12を簡単に上側床部10と巾木20に挟まれた状態とすることができる。
【0032】
本実施の形態によれば、上側床部10の端部10dと壁部200の壁面との間には隙間Xが設けられていることから、上側床部10の端部10dから壁部200への直接の振動伝播は回避されている。そして、上側床部10の端部10dと巾木20の下端面との間の隙間Yには減衰材12が設けられているが、隙間の全範囲を閉塞するものではなく、所定箇所への部分的な配設である。本実施の形態では、図示のように、減衰材12の幅の5倍以上の間隔を空けて等間隔に配置されている。
【0033】
この減衰材12は、上側床部10の端部10dと巾木20の下端面との間に介在していることから、上側床部10の端部10dに上下方向の振れが生じた場合でも弾性変形することによりこの振動を吸収し減衰することができる。また、上側床部10の端部10dが巾木20に衝突することによって生じる二次振動は確実に回避される。
【0034】
また、重要なことは、上側床部10の端部10dと巾木20の下端面との隙間Yは、上述のように全域が塞がれているものではなく、減衰材12が設置されていない所では、上側床部10と下側床部100との間の床下空間とその上部空間との空気流通は確保されている。この空気流通状態の確保によって上側床部10における衝撃振動の減衰作用を奏することができる。
【0035】
この結果、上側床部10と巾木20との間の隙間Yを可及的に小さくすることが可能となり、外観の悪化を回避することができ、また、ゴミなどの床下への侵入を抑制することができる。また、図1に示したように減衰材12を等間隔に配置することで、上側床部10の端部10dの上下の振れを均等に抑制することができ、すなわち均等な減衰機能を発揮することができる。更に均等な配置により外観の向上も図られている。
【0036】
図3(A)及び(B)は、他の構成を有する減衰材14を示している。図示のように、上側床部10の端部10dの上端面と巾木20の下端面との隙間Yを埋める厚さを有する本体部14aを有している。更に、この本体部14aには、一方の縁部からほぼ直角に延伸した補助部14bが設けられている。図示のように、断面略L字状に形成されている。
【0037】
また、同図(A)はこの減衰材14の設置のための構成として、両面接着材16がL字の外側面に設置されている構造、同図(B)はL字の内側面に両面接着材18が設置されている構成がそれぞれ示されている。減衰材14をこの様な、L字型の構成とすることによって、本体部14aを上側床部10と巾木20の隙間Yに挟んだ状態とするために、補助部14bの部分を減衰材14の予備設置のために用いることが可能である。
【0038】
図4(A)及び(B)は、減衰材14の実際の設置例を示している。同図(A)は、図3(A)に示した減衰材14の設置状態であり、補助部14の外側面に接着剤16が設けられた減衰材14が、壁部200に両面接着材16を用いて固着されている。すなわち、減衰材14は、本体部14aの外側面が巾木20の下端面に当接された状態となるように壁部200に固着されている。例えば、この減衰材14に設置タイミングとしては、上側床部10が設置された後、巾木20の取り付けが行われる前の段階などである。この様な補助部14b及び両面接着材16を用いた固着により、簡単に減衰材14の隙間Yへの設置ができ、また、補助部10bは、構築物に大きな揺れが生じたような場合に、上側床部10の端部10dが壁部200に直接衝突することを防止する機能も有している。
【0039】
同図(B)は、図3(B)に示した減衰材14の設置状態であり、補助部14の内側面に接着剤18が設けられた減衰材14が、壁部200に両面接着材18を用いて固着されている。すなわち、減衰材14は、上側床部10の端部10dの先端面に両面接着材18によって固着されている。例えば、この減衰材14の設置状況としては、上側床部10の端部10dに予め設置し、その後の、巾木20の取り付けを巾木20の下端面と上側床部10の端部10dの上端面との間に本体部14aが挟持されるように行うなどである。この様な補助部14b及び両面接着材18を用いた固着により、簡単に減衰材14の隙間Yへの設置ができ、上述の補助部10bによる上側床部10の端部10dと壁部200との直接衝突の防止機能も奏することができる。
【0040】
図5は、上記減衰材14の他の設置例を示している。図示のように、本体部14aを上側床部10の端部10dの上端面と巾木20の下端面との隙間Yに設置した状態で、更に、補助部14bが巾木20の下部と壁部200との間に挟まれた状態となるように行われている。したがって、巾木20は、減衰材14の補助部14bを壁部200との間で挟んだ状態となっており、その上端部のみが壁部に接するように、両面接着材15等で壁部200に取り付けられている。したがって、巾木20は側面視やや斜めに設置されることになる。本図では、構成の明確化のため減衰材14が実際のサイズよりも大きくした縮尺で示されているのでその傾斜がより強調されているが、実際には、本実施の形態における補助部10bの厚さは、1mm〜2mm程度であり、実際に部屋内から見た場合、殆どその傾斜は気づかない程度である。
【0041】
この様な減衰材14の設置構造によれば、減衰材14は予め確実に壁部200又は巾木20の下部の裏面に貼着しておくことができ、減衰材14の設置作業は簡易なものとなる。また、巾木20はその下端部が減衰材14の補助部14bを介した状態で壁部200に取り付けられることとなり、その上端部20aのみが壁部200に直接接しているのみである。したがって、上側床部10から減衰材14を介して巾木20に伝播された振動が、更に壁部200に伝播されることを有効に抑制することができる。
【0042】
次に、上記実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造と、従来の構造との実際の衝撃音の改善量の対比を以下に示す。図6及び図8は、衝撃音遮断性能を示すグラフであり、JIS A 1418「建物の現場における床衝撃音レベルの測定方法」に基づいて実験を行ったものである。図6のグラフが軽量床衝撃音、図8のグラフが重量床衝撃音についての改善量の結果である。また、それぞれの測定結果の数値が、図7及び図9として示されている。
【0043】
まず、図6及び図8のグラフは共に、横軸に1/1オクターブバンドの中心周波数が示され、縦軸に改善レベルを「dB」(デシベル)で表示している。当該グラフにおいて、四角(□)ラインが本願発明の実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造を適用した場合、菱形(◇)ラインが巾木20を上側床部10から浮かしただけの従来の構造、更に、三角(△)ラインが上側床部10と巾木20の隙間Yの全域に弾性を有するヒレ部22を緩衝材として設置した従来の構造を適用した結果をそれぞれ示している。
【0044】
図示のように、軽量床衝撃音に関しては、何れも近い傾向の結果が出ており、全体傾向として、中音域である250〜1000Hz帯での改善効果が出ている。これは、巾木20を上側床部10から浮かしたことによる効果、すなわち、上側床部10と下側床部100との間の床下空間と上部空間との空気の流通性を確保したことによる効果であると考えられる。したがって、近似する結果ではあるが、上側床部10と巾木20との間の隙間Yを遮蔽しない巾木20を上側床部10から浮かしただけの従来の構造(菱形(◇)ライン)が最も改善量が高く、次に、隙間Yを部分的に閉塞している本願発明の実施の形態に係る構造(四角(□)ライン)、最後に隙間Yの全域に弾性を有するヒレ部22を設置して全域を塞いだ従来の構造(三角(△)ライン)という結果となっている。なお、各周波数毎の改善量は図7の表に示した通りである。
【0045】
一方、図8に示した重量床衝撃音に関しては、本願の実施の形態の構造(四角(□)ライン)と、隙間Yの全域にヒレ部22を設置した従来の構造(三角(△)ライン)とが近い結果を示しているが、巾木20を上側床部10から浮かしただけの従来の構造(菱形(◇)ライン)は最も改善量が低い。特に、125Hz以上の周波数帯域において、大きな差が生じている。これは、この周波数の領域では、上側床部10の端部10dの上下の振れにより巾木20に振動が伝播され二次振動が発生することによるものと考えられる。これに対して、隙間Yの間に減衰材12,14を介在させている本願の実施の形態に係る構造および隙間Yの全域に弾性のヒレ部22を設置している構造の場合、二次振動の発生が抑制されていることが理解される。
【0046】
更に重要なことは、この重量床衝撃音の遮断性能において、最も重要な周波数帯域は、63Hzと考えられている。すなわち、重量床衝撃音の遮断性能の差を評価する場合、63Hzの帯域における性能を比較することが重要と考えられている。この観点からすると、本願発明の実施の形態に係る構造(四角(□)ライン)は、全域にヒレ部22を設置した従来の構造(三角(△)ライン)よりも2.5dB程度改善量が高くなっている。なお、各周波数毎の改善量(dB)は、図9の表に示した通りである。
【0047】
上記実験の結果を総合的に判断すると、本願発明に係る実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、軽量床衝撃音の遮断性能においても重量床衝撃音の遮断性能においても常に良好な改善量を確保しており、衝撃音の近隣居住空間への伝播の抑制性能に優れることが理解されるものである。
【0048】
また、本発明は、上記実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形が可能である。例えば、減衰材の形状は、略直方体の
減衰材12や略L字状の減衰材14のような形状に限られず、隙間Yの間隔を埋めるサイズを有する弾性部材であれば種々の形状のものを用いることが可能である。また、上記実施の形態では、減衰材の設置範囲は、隙間Yの全領域の5分の1以下の範囲の例を示したが、構造物の状況によって変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造の適用状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示した実施の形態の構造の概略部分断面図である。
【図3】(A)及び(B)は、減衰材の他の構成例を示す概略斜視図である。
【図4】(A)及び(B)は、図3に示した減衰材の設置状態を示す概略断面図である。
【図5】減衰材の他の設置例を示す概略断面図である。
【図6】軽量床衝撃音に関する改善量の実験結果を示すグラフである。
【図7】図6に示した実験結果についての数値データを示す表である。
【図8】重量床衝撃音に関する改善量の実験結果を示すグラフである。
【図9】図8に示した実験結果についての数値データを示す表である。
【図10】従来の一般的な二重床構造の説明図である。
【図11】(A)、(B)及び(C)は、従来の上側床部と巾木との設置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10 上側床部
12、14 減衰材
14a 本体部
14b 補助部
16 両面接着材
20 巾木
100 下側付加部
200 壁部
X 上側床部の端部と壁部との間の隙間
Y 上側床部の端部と巾木の下端面との間の隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床の壁部側端部取り合い構造、特に、壁部の下部位置に巾木の設置される建造物において設置される乾式遮音二重床(下側床部と上側床部との間に空間の形成された床構造)の上側床部の壁部側端部と壁部との取り合い構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数階層の居住用の建築物において、上下の階層間や隣室への音の伝搬を抑制する1つの手段として、乾式遮音二重床の構造が知られている。この種の二重床構造は、コンクリートスラブとして構築された下側床部の上部に当該下側床部と所定間隔をおいて上側床部構築するものである。
【0003】
図10は、この様な二重床構造の例を示している。図示のように、コンクリートスラブである下側床部100上の複数箇所に所定高さの脚部102を設置し、その脚部102上に上側床部10が設置されている。すなわち、脚部102の高さ分が二重床構造の空間となり、この空間によって形成された空気層が上側床部10からの振動の緩衝材として機能する。また、脚部102は、支柱102aの下端部に防振ゴムなどにて形成された減衰材102bが設置されており、ここで上側床部10からの衝撃を吸収している。
【0004】
また、上側床部10の壁部200側の端部は、壁部200に接触しないように隙間を開けた状態で、壁部200の外表面に対向している。これは、上側床部10に加えられた衝撃が、直接、壁部200に伝搬することのない様にするための構造である。
【0005】
更に、上側床部10の壁側端部の上端部と対応する壁部200の下部位置との間には巾木20が、設置されている。すなわち、巾木20は壁部200の下部位置に固定され、上側床部10の壁部200への取付部分を目隠ししているものである。なお、上側床部10は図示のように、例えば、下側から下地パネル10a、捨て張り合板10b、複合フローリング10cの様な積層構造が取られている。以下の図面に置いては、図面簡略化のために単に一体的に表示している。
【0006】
また、一般に、床からの音の伝達は、通常歩行時の足音や掃除機の音などの軽量の衝撃に基づくもの、更に、椅子から床への飛び降りや大人が強く歩く際に生じる大きな重量の衝撃などに基づくものである。この様な衝撃音に対する遮音性の評価に関しては、JIS A 1418において、軽量衝撃源としてのタッピングマシン、重量衝撃源としてのタイヤ落下などが規格として定められている。上述したような乾式遮音二重床の構造は、主として軽量衝撃源に対する対策として講じられているものであり、床部からの振動が巾木や側壁などの垂直造作部にできるだけ伝搬され ない様にしているものである。
【0007】
図11(A)〜(C)には、二重床構造の上側床部10の端部と壁部200との取り合い構造における、従来からの軽量衝撃源に対する対策の例が示されている。 同図(A)は、上述の図7に示した従来の構造と同様の構造であり、すなわち、上側床部10の壁部200側の端部10dと壁部200との間には隙間が設けられており、上側床部10の端部10dの上側面は巾木20の下端面に接触した状態となっている。
【0008】
同図(B)に示された構造では、上側床部10の壁部200側の端部10dは、壁部200及び巾木20の双方から離反している。すなわち、壁部200の外側面及び巾木20の下端面のそれぞれの間に隙間が確保されている。
【0009】
同図(C)に示された構造は、上記図(B)に記載された構造と同じく、上側床部10の壁部200側の端部10dと、壁部200及び巾木20の双方との間には隙間が設けられている。更に、上側床部10の端部10dの上面と巾木20の下端面との間の隙間を弾性部材にて形成したヒレ部22を設置することで遮蔽している。なお、この図(C)に示された構造と同様の技術は、特許文献1(特開2003−293577)に開示されているものであり、巾木20の下側に生じる隙間を外観上目立たないようにするためであり、また、隙間からゴミ等が浸入することなどを防止せんとしているものである。
【0010】
【特許文献1】特開2003−293577
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記図11(A)の上側床部の壁部側端部取り合い構造の場合、上側床部10の端部10dと壁部200との間には隙間があり、上側床部10から壁部200に直接振動が伝達されることはない。しかしながら、図示のように、上側床部10の端部10dは、巾木20の下端面に接触しており、隙間による外観上の美感の低下やゴミの床内への侵入を防いでいる。しかしながら、上側床部10で生じた例えば、軽量衝撃や重量衝撃による振動は、巾木20を介して壁部200に伝達されることとなる。したがって、壁部200を介しての階下や階上への騒音の伝搬が生じてしまうことが避けられない。
【0012】
次に、図11(B)の上側床部の壁部側端部取り合い構造の場合、上側床部10の端部10dは、壁部200及び巾木20の双方との間に隙間を置いて配置されている。したがって、上記の同図(A)の場合と異なり、上側床部10からの振動は、基本的に巾木20、壁部200の双方に伝達されることがない。また、巾木20の下端面が浮いている状況は、部屋空間と上側床部10の下部空間の空気の移動を可能とし、これにより上側床部10に生じた振動の上記空気の上下の移動による解消、抑制が達成されている。
【0013】
しかしながら、例えば、上側床部10に重量衝撃が加えられた場合、上側床部10の振動が曲げ波として周囲に伝わり、端部10dにおいては、上下に振れる現象が生じる。したがって、上側床部10の端部10dの上面と巾木20の下端面との間の隙間を小さいものとすると、この端部10dの上下の振れにより、巾木20との衝突が生じ、二次振動が発生する。この二次振動が巾木から20から壁部200に伝播され、階下、階上への騒音の伝達状況を生起させてしまう。
【0014】
また、この振動の伝達を防止するため、巾木20と上側床部10の端部10dとの間の隙間を大きく取ると、床内が見えてしまったり、壁の奥が見えるなどで、外観を損ねてしまう。また、巾木20の下側からのゴミなどの床下への侵入を招来してしまう。
【0015】
また、特許文献1に開示された図11(C)の上側床部の壁部側端部取り合い構造の場合、上側床部10の端部10dと巾木20との間の隙間は、ヒレ部22によって遮蔽されているので、巾木20と同じ配色とすることなどによって、外観を損ねることを防止し、ゴミなどの床下への侵入を防ぐことが可能となっている。しかしながら、遮蔽機能を発揮するということは床下の空気層の流通経路を塞ぐことを意味し、空気流通による重量衝撃音の抑制機能が奪われてしまう。
【0016】
本発明は、上記種々の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外観を損ねることなく、上側床部への衝撃による振動の伝播を的確に抑制することのできる二重床の壁部側端部取り合い構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、
壁部の下部位置に巾木の設けられる建築物に構築され、下側床部上に所定の空間を確保して上側床部の設けられた二重床の壁部側端部の取り合い構造において、前記上側床部の前記壁部側端部と前記壁部の壁面及び前記巾木の下端面とのそれぞれの間に隙間が設けられ、前記上側床部の端部と前記巾木の下端面との隙間の所定位置には、前記上側床部の端部と前記巾木の下端面との間に介在し、弾性変形により前記上側床部の振動を減衰する減衰材が部分的に配設されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、まず、上側床部の壁部側端部と壁部の壁面との間には隙間が設けられているので、上側床部の端部から壁部への直接の振動伝達は回避されている。そして、上側床部の壁部側端部と巾木の下端面との間の隙間には減衰材が設けられているが、隙間の全範囲を閉塞するものではなく、所定箇所への部分的な配設である。そして、この減衰材は、上側床部の端部と巾木の下端面との間に介在し、弾性変形することにより上側床部の振動を減衰する。すなわち、上側床部の端部と巾木の下端面との隙間は、全域が塞がれているものではなく、減衰材が設置されていない所では、上側床部と下側床部との間の床下空間とその上部空間との空気流通は確保されている。
【0019】
したがって、この上下空間の空気流通が確保されていることによって、上側床部における衝撃振動の減衰作用を確保することができる。そして、上側床部の壁部側の端部の上下の振れに対しては、減衰材がこれを弾性変形により吸収することができるので、上側床部の端部の振れによる巾木との衝突に基づく二次振動の発生も的確に抑制される。その結果、上側床部の端部と巾木の下端面との間の隙間を可及的に小さくすることも可能となる。したがって、二次振動の防止のために隙間を大きくとることによる外観の悪化を回避することができ、また、ゴミなどの床下への侵入を抑制することができる。
【0020】
請求項2に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項1の構造において、
前記減衰材が、所定間隔を置いて複数箇所に設置されたことを特徴とする。減衰材は、上側床部の端部と巾木の下端面との間の隙間に部分的に配設されるが、本請求項に係る構造では、所定間隔毎に複数箇所に設置されているので、上側床部の端部の上下の振れを均等に抑制すること、すなわち均等な減衰機能を発揮することができると共に、外観の向上を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項1の構造において、
前記減衰材が、弾性部材にて形成されたことを特徴とする。ここで弾性部材とは、ゴムやバネなどの弾性体にて構成された部材を意味し、好適には防振ゴムなどを隙間のサイズ等に適合させて減衰機能を効果的に奏するように形成されるものである。すなわち、この様な弾性部材により構成したことで、減衰材の設置を簡単な作業により行うことができる。
【0022】
請求項4に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項3の構造において、
前記減衰材が、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する所定長さの略直方体の減衰材ピースとして形成されたことを特徴とする。すなわち、減衰材が略直方体の弾性部材としてシンプルな形状となっており、製造容易、且つ上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間への設置作業の容易化も達成されている。
【0023】
請求項5に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項3の構造において、
前記減衰材が、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する本体部と、該本体部の縁部からほぼ直角に延伸した補助部と、を有し、前記減衰材の取り付けが、前記本体部を前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間に設置した状態で、前記補助部が前記上側床部の壁部側端面又は該壁部側端面に対向する壁部に貼着されたことを特徴とする。
【0024】
この構成により、減衰材の取り付けの際の貼着面を大きく取ることができる。したがって、減衰材の取り付け作業の容易化が図られ、予め補助部を貼着することで、床部や壁部の構築にあたって、予め壁部又は上側床部に安定した状態で取り付けておくことができる。
【0025】
請求項6に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、請求項3の構造において、
前記減衰材が、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する本体部と、該本体部の縁部からほぼ直角に延伸した補助部と、を有し、該減衰材の取り付けが、前記本体部を前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間に設置した状態で、前記補助部が前記巾木の下部と前記壁部との間に挟まれた状態となるように行われ、前記巾木は、前記減衰材の補助部を前記壁部との間で挟んだ状態で、上端部のみが壁部に接するように前記壁部に取り付けられることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、請求項5の構造と同じく、予め減衰材を確実に壁部又は巾木の下部の裏面に貼着しておくことができ、減衰材の設置作業が簡易なものとなる。また、巾木はその下端部が減衰材の補助部を介した状態で壁部に取り付けられることとなり、上側床部から減衰材を介して巾木に伝播される振動の壁部への伝播が有効に減衰される。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明に係る二重床の壁部側端部取り合い構造によれば、巾木の下端部と上側床部との間の隙間を大きく取ることなく上側床部から巾木への振動伝達を抑制することができる。これにより、大きな隙間によって巾木下部の部分の外観を損ねることがなく、上側床部への衝撃による発生する振動の壁部への伝播も的確に抑制することができる。
【0028】
また、上側床部の壁部側端部と巾木の下端面との間の隙間には部分的にのみ減衰材が設けられているので、上側床部と下側床部との間の床下空間とその上部空間との空気流通は確保されており、上側床部における衝撃振動の空気流通による減衰作用も維持されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造の適用された二重床構造の部分説明図である。図示のように、下側床部100上に所定間隔を空けて、上側床部10が設置されており、上側床部10の壁部側の端部10dは壁面との間に所定の隙間Xを空けて設置されている。また、上側床部10の端部10dの上面側も巾木20の下端面との間に隙間Yを空けて構成されている。
【0030】
そして、特徴的なことは、上側床部10の上面と巾木20の下端面との間の隙間に等間隔に減衰材12を設置していることである。この減衰材12の配置は、構築物の種類等に応じて適宜設定されるが、好適には隙間の全領域の5分の1以下の範囲で減衰材12が設置される。すなわち、隙間は減衰材によって5分の1以上遮蔽されることがない様に設置されるのが好適である。本実施の形態では、長さ約20mmの緒減衰材12を約450mmのピッチで設置している。
【0031】
図2は、本実施の形態に係る取り合い構造の構成を示す概略断面図であり、図示のように、減衰材12は上側床部10の端部10dと巾木20の下端面の間に挟持された形で設置されている。本実施の形態では上側床部10と巾木20との間の隙間Yは2〜3mmに設定されており、減衰材12の厚さもほぼ2〜3mmに設定されている。また、減衰材12は、製造容易な略直方体形状のシンプルな形状とされており、防振ゴム、低反発性ウレタン、スポンジなどの減衰機能の高い部材にて形成されている。この減衰材12の設置は、予め巾木20の下端面の所定位置に貼着しておき、その状態で、巾木20や上側床部10の設置を行うことで、減衰材12を簡単に上側床部10と巾木20に挟まれた状態とすることができる。
【0032】
本実施の形態によれば、上側床部10の端部10dと壁部200の壁面との間には隙間Xが設けられていることから、上側床部10の端部10dから壁部200への直接の振動伝播は回避されている。そして、上側床部10の端部10dと巾木20の下端面との間の隙間Yには減衰材12が設けられているが、隙間の全範囲を閉塞するものではなく、所定箇所への部分的な配設である。本実施の形態では、図示のように、減衰材12の幅の5倍以上の間隔を空けて等間隔に配置されている。
【0033】
この減衰材12は、上側床部10の端部10dと巾木20の下端面との間に介在していることから、上側床部10の端部10dに上下方向の振れが生じた場合でも弾性変形することによりこの振動を吸収し減衰することができる。また、上側床部10の端部10dが巾木20に衝突することによって生じる二次振動は確実に回避される。
【0034】
また、重要なことは、上側床部10の端部10dと巾木20の下端面との隙間Yは、上述のように全域が塞がれているものではなく、減衰材12が設置されていない所では、上側床部10と下側床部100との間の床下空間とその上部空間との空気流通は確保されている。この空気流通状態の確保によって上側床部10における衝撃振動の減衰作用を奏することができる。
【0035】
この結果、上側床部10と巾木20との間の隙間Yを可及的に小さくすることが可能となり、外観の悪化を回避することができ、また、ゴミなどの床下への侵入を抑制することができる。また、図1に示したように減衰材12を等間隔に配置することで、上側床部10の端部10dの上下の振れを均等に抑制することができ、すなわち均等な減衰機能を発揮することができる。更に均等な配置により外観の向上も図られている。
【0036】
図3(A)及び(B)は、他の構成を有する減衰材14を示している。図示のように、上側床部10の端部10dの上端面と巾木20の下端面との隙間Yを埋める厚さを有する本体部14aを有している。更に、この本体部14aには、一方の縁部からほぼ直角に延伸した補助部14bが設けられている。図示のように、断面略L字状に形成されている。
【0037】
また、同図(A)はこの減衰材14の設置のための構成として、両面接着材16がL字の外側面に設置されている構造、同図(B)はL字の内側面に両面接着材18が設置されている構成がそれぞれ示されている。減衰材14をこの様な、L字型の構成とすることによって、本体部14aを上側床部10と巾木20の隙間Yに挟んだ状態とするために、補助部14bの部分を減衰材14の予備設置のために用いることが可能である。
【0038】
図4(A)及び(B)は、減衰材14の実際の設置例を示している。同図(A)は、図3(A)に示した減衰材14の設置状態であり、補助部14の外側面に接着剤16が設けられた減衰材14が、壁部200に両面接着材16を用いて固着されている。すなわち、減衰材14は、本体部14aの外側面が巾木20の下端面に当接された状態となるように壁部200に固着されている。例えば、この減衰材14に設置タイミングとしては、上側床部10が設置された後、巾木20の取り付けが行われる前の段階などである。この様な補助部14b及び両面接着材16を用いた固着により、簡単に減衰材14の隙間Yへの設置ができ、また、補助部10bは、構築物に大きな揺れが生じたような場合に、上側床部10の端部10dが壁部200に直接衝突することを防止する機能も有している。
【0039】
同図(B)は、図3(B)に示した減衰材14の設置状態であり、補助部14の内側面に接着剤18が設けられた減衰材14が、壁部200に両面接着材18を用いて固着されている。すなわち、減衰材14は、上側床部10の端部10dの先端面に両面接着材18によって固着されている。例えば、この減衰材14の設置状況としては、上側床部10の端部10dに予め設置し、その後の、巾木20の取り付けを巾木20の下端面と上側床部10の端部10dの上端面との間に本体部14aが挟持されるように行うなどである。この様な補助部14b及び両面接着材18を用いた固着により、簡単に減衰材14の隙間Yへの設置ができ、上述の補助部10bによる上側床部10の端部10dと壁部200との直接衝突の防止機能も奏することができる。
【0040】
図5は、上記減衰材14の他の設置例を示している。図示のように、本体部14aを上側床部10の端部10dの上端面と巾木20の下端面との隙間Yに設置した状態で、更に、補助部14bが巾木20の下部と壁部200との間に挟まれた状態となるように行われている。したがって、巾木20は、減衰材14の補助部14bを壁部200との間で挟んだ状態となっており、その上端部のみが壁部に接するように、両面接着材15等で壁部200に取り付けられている。したがって、巾木20は側面視やや斜めに設置されることになる。本図では、構成の明確化のため減衰材14が実際のサイズよりも大きくした縮尺で示されているのでその傾斜がより強調されているが、実際には、本実施の形態における補助部10bの厚さは、1mm〜2mm程度であり、実際に部屋内から見た場合、殆どその傾斜は気づかない程度である。
【0041】
この様な減衰材14の設置構造によれば、減衰材14は予め確実に壁部200又は巾木20の下部の裏面に貼着しておくことができ、減衰材14の設置作業は簡易なものとなる。また、巾木20はその下端部が減衰材14の補助部14bを介した状態で壁部200に取り付けられることとなり、その上端部20aのみが壁部200に直接接しているのみである。したがって、上側床部10から減衰材14を介して巾木20に伝播された振動が、更に壁部200に伝播されることを有効に抑制することができる。
【0042】
次に、上記実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造と、従来の構造との実際の衝撃音の改善量の対比を以下に示す。図6及び図8は、衝撃音遮断性能を示すグラフであり、JIS A 1418「建物の現場における床衝撃音レベルの測定方法」に基づいて実験を行ったものである。図6のグラフが軽量床衝撃音、図8のグラフが重量床衝撃音についての改善量の結果である。また、それぞれの測定結果の数値が、図7及び図9として示されている。
【0043】
まず、図6及び図8のグラフは共に、横軸に1/1オクターブバンドの中心周波数が示され、縦軸に改善レベルを「dB」(デシベル)で表示している。当該グラフにおいて、四角(□)ラインが本願発明の実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造を適用した場合、菱形(◇)ラインが巾木20を上側床部10から浮かしただけの従来の構造、更に、三角(△)ラインが上側床部10と巾木20の隙間Yの全域に弾性を有するヒレ部22を緩衝材として設置した従来の構造を適用した結果をそれぞれ示している。
【0044】
図示のように、軽量床衝撃音に関しては、何れも近い傾向の結果が出ており、全体傾向として、中音域である250〜1000Hz帯での改善効果が出ている。これは、巾木20を上側床部10から浮かしたことによる効果、すなわち、上側床部10と下側床部100との間の床下空間と上部空間との空気の流通性を確保したことによる効果であると考えられる。したがって、近似する結果ではあるが、上側床部10と巾木20との間の隙間Yを遮蔽しない巾木20を上側床部10から浮かしただけの従来の構造(菱形(◇)ライン)が最も改善量が高く、次に、隙間Yを部分的に閉塞している本願発明の実施の形態に係る構造(四角(□)ライン)、最後に隙間Yの全域に弾性を有するヒレ部22を設置して全域を塞いだ従来の構造(三角(△)ライン)という結果となっている。なお、各周波数毎の改善量は図7の表に示した通りである。
【0045】
一方、図8に示した重量床衝撃音に関しては、本願の実施の形態の構造(四角(□)ライン)と、隙間Yの全域にヒレ部22を設置した従来の構造(三角(△)ライン)とが近い結果を示しているが、巾木20を上側床部10から浮かしただけの従来の構造(菱形(◇)ライン)は最も改善量が低い。特に、125Hz以上の周波数帯域において、大きな差が生じている。これは、この周波数の領域では、上側床部10の端部10dの上下の振れにより巾木20に振動が伝播され二次振動が発生することによるものと考えられる。これに対して、隙間Yの間に減衰材12,14を介在させている本願の実施の形態に係る構造および隙間Yの全域に弾性のヒレ部22を設置している構造の場合、二次振動の発生が抑制されていることが理解される。
【0046】
更に重要なことは、この重量床衝撃音の遮断性能において、最も重要な周波数帯域は、63Hzと考えられている。すなわち、重量床衝撃音の遮断性能の差を評価する場合、63Hzの帯域における性能を比較することが重要と考えられている。この観点からすると、本願発明の実施の形態に係る構造(四角(□)ライン)は、全域にヒレ部22を設置した従来の構造(三角(△)ライン)よりも2.5dB程度改善量が高くなっている。なお、各周波数毎の改善量(dB)は、図9の表に示した通りである。
【0047】
上記実験の結果を総合的に判断すると、本願発明に係る実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造は、軽量床衝撃音の遮断性能においても重量床衝撃音の遮断性能においても常に良好な改善量を確保しており、衝撃音の近隣居住空間への伝播の抑制性能に優れることが理解されるものである。
【0048】
また、本発明は、上記実施の形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形が可能である。例えば、減衰材の形状は、略直方体の
減衰材12や略L字状の減衰材14のような形状に限られず、隙間Yの間隔を埋めるサイズを有する弾性部材であれば種々の形状のものを用いることが可能である。また、上記実施の形態では、減衰材の設置範囲は、隙間Yの全領域の5分の1以下の範囲の例を示したが、構造物の状況によって変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る二重床の壁部側端部取り合い構造の適用状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示した実施の形態の構造の概略部分断面図である。
【図3】(A)及び(B)は、減衰材の他の構成例を示す概略斜視図である。
【図4】(A)及び(B)は、図3に示した減衰材の設置状態を示す概略断面図である。
【図5】減衰材の他の設置例を示す概略断面図である。
【図6】軽量床衝撃音に関する改善量の実験結果を示すグラフである。
【図7】図6に示した実験結果についての数値データを示す表である。
【図8】重量床衝撃音に関する改善量の実験結果を示すグラフである。
【図9】図8に示した実験結果についての数値データを示す表である。
【図10】従来の一般的な二重床構造の説明図である。
【図11】(A)、(B)及び(C)は、従来の上側床部と巾木との設置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
10 上側床部
12、14 減衰材
14a 本体部
14b 補助部
16 両面接着材
20 巾木
100 下側付加部
200 壁部
X 上側床部の端部と壁部との間の隙間
Y 上側床部の端部と巾木の下端面との間の隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部の下部位置に巾木の設けられる建築物に構築され、下側床部上に所定の空間を確保して上側床部の設けられた二重床の壁部側端部の取り合い構造において、
前記上側床部の前記壁部側端部と前記壁部の壁面及び前記巾木の下端面とのそれぞれの間に隙間が設けられ、前記上側床部の端部と前記巾木の下端面との隙間の所定位置には、前記上側床部の端部と前記巾木の下端面との間に介在し、弾性変形により前記上側床部の振動を減衰する減衰材が部分的に配設されたことを特徴とする二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項2】
前記減衰材は、
所定間隔を置いて複数箇所に設置されたことを特徴とする請求項1に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項3】
前記減衰材は、弾性部材にて形成されたことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項4】
前記減衰材は、
前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する所定長さの略直方体の減衰材ピースとして形成されたことを特徴とする請求項3に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項5】
前記減衰材は、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する本体部と、該本体部の縁部からほぼ直角に延伸した補助部と、を有し、
該減衰材の取り付けは、前記本体部を前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間に設置した状態で、前記補助部が前記上側床部の壁部側端面又は該壁部側端面に対向する壁部に接する状態となるように行われることを特徴とする請求項3に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項6】
前記減衰材は、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する本体部と、該本体部の縁部からほぼ直角に延伸した補助部と、を有し、
該減衰材の取り付けは、前記本体部を前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間に設置した状態で、前記補助部が前記巾木の下部と前記壁部との間に挟まれた状態となるように行われ、
前記巾木は、前記減衰材の補助部を前記壁部との間で挟んだ状態で、上端部のみが壁部に接するように前記壁部に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項1】
壁部の下部位置に巾木の設けられる建築物に構築され、下側床部上に所定の空間を確保して上側床部の設けられた二重床の壁部側端部の取り合い構造において、
前記上側床部の前記壁部側端部と前記壁部の壁面及び前記巾木の下端面とのそれぞれの間に隙間が設けられ、前記上側床部の端部と前記巾木の下端面との隙間の所定位置には、前記上側床部の端部と前記巾木の下端面との間に介在し、弾性変形により前記上側床部の振動を減衰する減衰材が部分的に配設されたことを特徴とする二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項2】
前記減衰材は、
所定間隔を置いて複数箇所に設置されたことを特徴とする請求項1に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項3】
前記減衰材は、弾性部材にて形成されたことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項4】
前記減衰材は、
前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する所定長さの略直方体の減衰材ピースとして形成されたことを特徴とする請求項3に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項5】
前記減衰材は、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する本体部と、該本体部の縁部からほぼ直角に延伸した補助部と、を有し、
該減衰材の取り付けは、前記本体部を前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間に設置した状態で、前記補助部が前記上側床部の壁部側端面又は該壁部側端面に対向する壁部に接する状態となるように行われることを特徴とする請求項3に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【請求項6】
前記減衰材は、前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間を埋める厚さを有する本体部と、該本体部の縁部からほぼ直角に延伸した補助部と、を有し、
該減衰材の取り付けは、前記本体部を前記上側床部の端部上端面と前記巾木の下端面との隙間に設置した状態で、前記補助部が前記巾木の下部と前記壁部との間に挟まれた状態となるように行われ、
前記巾木は、前記減衰材の補助部を前記壁部との間で挟んだ状態で、上端部のみが壁部に接するように前記壁部に取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の二重床の壁部側端部取り合い構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−203769(P2009−203769A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49915(P2008−49915)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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