説明

二重構造成形体の製造方法及び二重構造成形体

【課題】外装容器と内装容器との間に接着材や固定用部品を介在させなくても、外装成形体と内装成形体の開口端接合部に正確にフランジ加工等の後加工ができ、高速生産性に優れ、且つ保温性、保冷性、断熱性に優れた二重構造成形体を得る。
【解決手段】外装成形体内部に内装成形体3を隙間を有して配置してそれぞれの開口端部が接触する開口端接触部4を形成し、該開口端接触部の少なくとも途中に内装成形体3が外装成形体2に対する軸方向滑り抵抗を与える滑り阻止部5を形成する。滑り阻止部は、外装成形体と内装成形体の両方又は何れか一方を径方向に変形させること、又は肉厚段差部を形成することにより形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温性、保冷性、断熱性等が要求される二重構造容器等の二重構造成形体の製造方法及び二重構造成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の保温性、保冷性、断熱性を高めるために外装容器と内装容器で二重構造にした二重構造容器が、例えば飲料容器、金属缶、エアゾール缶、各種美術缶、魔法瓶、マグカップ等で知られている。近年、飲料缶等の缶詰缶にもこのような二重構造缶が提案されている(特許文献1参照)。缶詰缶や飲料容器等の場合、図7に示すように外装容器2の上部を縮径加工して内装容器3と接触させて開口端接触部4を形成し、該開口端部を一体にフランジ加工して蓋との巻締部となるフランジ6を形成している。または、必要により前記開口端接触部にネックイン加工、カール加工等の後加工を施している。しかしながら、単に開口部を縮径加工した外装容器に内装成形体を挿入して接触させた状態でフランジ加工等の後加工を行うと、図8(a)に示すように、加工工具80から特に内装容器92が強い軸力を受けるため、フランジ加工が進むにつれて内装容器92が軸方向に滑って外装容器91とずれてしまい図8(b)に示すように、正確なフランジ加工ができないという問題点がある。その問題を解決するために、内装容器92と外装容器91を接着剤で接着するか、あるいは溶着するか、又は位置決め固定用部品や詰め物を隙間に介在させて内装容器が移動しないように外装容器に保持する方法等が用いられている。しかし、熱による接着や溶着では寸法精度が悪化し、ネックイン加工やフランジ加工の際には加工追従性に問題が生じる。また、内装容器と外装容器との隙間に介在物を存在させると工程が複雑になり生産性を阻害するばかりでなく、断熱性能が低下し二重構造容器の利点を損ない、且つ介在物を使用するのでそれだけ製造コストを増加させるという解決すべき問題点がある。
【特許文献1】特開平3−254322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、外装容器と内装容器との間に接着材や固定用部品、あるいは詰め物等を介在させなくても、外装成形体と内装成形体の開口端接合部に正確にフランジ加工等の後加工ができ、高速生産性に優れ、且つ保温性、保冷性、断熱性に優れた二重構造成形体を得ることができる二重構造成形体の製造方法及び二重構造成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決する本発明の二重構造成形体の製造方法は、外装成形体の内部に隙間を介して内装成形体を有する二重構造成形体の製造方法であって、外装成形体内部に内装成形体を配置して前記外装成形体と前記内装成形体のそれぞれの開口端部が接触する開口端接触部を形成し、該開口端接触部の少なくとも途中に前記内装成形体と前記外装成形体に軸方向滑り抵抗を与える滑り阻止部を形成させることを特徴とするものである。
【0005】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の二重構造成形体の製造方法において、前記滑り阻止部を、前記外装成形体と前記内装成形体の両方又は何れか一方を径方向に変形させることにより形成させるようにしたものである。さらに、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の二重構造成形体の製造方法において、前記滑り阻止部を、前記外装成形体と前記内装成形体の両方又は何れか一方に、開口端接触部の途中に肉厚段差部を形成し、該肉厚段差部に沿って前記外装成形体と前記内装成形体を接触させることにより形成させるようにしたものである。
【0006】
また、上記課題を達成する本発明の二重構造成形体は、外装成形体の内部に隙間を介して内装成形体を有する二重構造成形体であって、前記外装成形体と前記内装成形体のそれぞれの開口端部が接触する開口端接触部を有し、該開口端接触部の少なくとも途中に前記内装成形体と前記外装成形体に軸方向滑り抵抗を与える滑り阻止部を有することを特徴とするものであり、請求項1の製造方法により得ることができたものである。
【0007】
請求項5の発明は、請求項4に記載の二重構造成形体において、前記滑り阻止部が、前記外装成形体と前記内装成形体の両方又は何れか一方が径方向に変形して形成されてなるものである。また、請求項6の発明は、請求項5に記載の二重構造成形体において、前記内装成形体の開口端部が厚肉部となっているものである。また、請求項7の発明は、請求項4乃至6に記載の二重構造成形体において、前記滑り阻止部が、前記外装成形体と前記内装成形体の両方又は何れか一方の厚肉部と薄肉部の肉厚段差からなるように形成したものである。さらに、請求項8の発明は、請求項6に記載の二重構造成形体において、前記内層成形体の開口端部が外側に厚肉部となっているものである。さらにまた、請求項9の発明は、請求項8に記載の二重構造成形体において前記外装成形体の開口端部が薄肉部となっているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二重構造成形体によれば、開口端接触部の途中に内装成形体と前記外装成形体に軸方向滑り抵抗を与える滑り阻止部を形成してあるので、開口端接触部以外では非接触状態に保ちながら外装成形体に内装成形体を正確に保持することができ、保温性・保冷性・断熱性に優れた二重構造成形体を得ることができる。また、内装成形体と外装成形体との隙間に位置決め固定具や詰物等を配置しなくても内装成形体を外装成形体内に良好に配置することができるので、高速生産性に優れていると共に生産コストを低減させることができる。さらに、開口端接触部にフランジ加工等の後加工を施す際、内装成形体に作用する軸力は前記滑り阻止部で外装成形体が受け外装成形体に対する内装成形体の滑りが阻止され、外装成形体と内装成形体が接着剤や溶着あるいは接合部材による接合をしてなくても、良好なフランジ加工・ネックイン加工、巻締等の様々な後加工が容易にでき、二重構造成形体の適用範囲を広げることができる。前記滑り阻止部を外装成形体と内装成形体の両方又は何れか一方を径方向に変形させて形成することにより、容易に滑り阻止部を形成することができる。また、前記滑り阻止部を外装成形体と内装成形体の両方又は何れか一方の肉厚段差によって形成することによって、外形的に大きなくびれを形成しなくても、良好に内装成形体の軸方向滑りを阻止することができる。また、内装成形体の開口端部が厚肉部を有することによって、加工性を阻害することなく内装成形体の他の部分の肉厚を薄くすることができる。外装成形体の開口端部を薄肉部にすることによって、外装成形体の外周面にくびれのない二重構造成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を基に詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る二重構造成形体の開口端部の要部断面拡大図である。本実施形態に係る二重構造成形体1は、図7(a)に示すように外装成形体2内に内装成形体3を配して開口端部で外装成形体2と内装成形体3が接触している開口端接触部4を形成し、該開口端接触部4の途中を外装成形体と内装成形体を共に径方向内方に変形させてビード状の括れからなる滑り阻止部5を形成したものである。開口端接触部4の形成は、従来と同様に外装成形体の開口端部を内装成形体の開口端外径と同径まで縮径加工を施してから、内装成形体を挿入することによって形成できる。また他の方法として、内装成形体3を挿入しながら同時に外装成形体2を縮径加工することによって形成することも可能である。そして、開口端接触部4が形成された二重構造成形体へのビード状括れからなる滑り阻止部5の形成は、例えば図6に示すようなくびれ加工装置10により行うことができる。
【0010】
図6に示すくびれ加工装置10は、装置本体に設けられた加工ヘッド11の端部に取付けられたチャック12を有し、該チャック12を貫通して回転自在に設けられたスピンドル13の端部の偏心位置から突出した偏心軸14に前記チャック12の下端面との間にくびれ部を形成するための所定の間隔を経てくびれ部の内径よりも小径のバックアップロール15が回転自在に設けられている。また、ヘッド11には、前記チャック下端とバックアップロール14の間に外方より押し込み可能なくびれ成形ロール16が設けられている。さらにくびれ加工装置10は、ヘッド11に対向して上下駆動可能に二重構造成形体を載置するリフター(図示してない)を有している。このような構成からなるくびれ加工装置10による二重構造成形体の開口端接触部へのビード状くびれからなる滑り阻止部の形成は、リフターとチャック12とで二重構造成形体を挟持した状態で回転させ、バックアップローラ15を内装成形体の内周面に接触させ、この状態でチャック及びリフターと一体に二重構造成形体を回転させながらくびれ成形ロール16を二重構造成形体外方からチャック12とバックアップローラ15との隙間に押し込むことによって、開口端接触部4の途中に周方向に沿ってビード状の滑り阻止部5を形成することができる。このように、開口端接触部の途中に滑り阻止部を形成することによって内装成形体を外装成形体に確実に保持することができ、開口端接触部以外の胴部や底部では外装成形体と内装成形体を確実に非接触状態に維持することができ、二重構造成形体の保温性等の本来の機能を容易に向上させることができる。
【0011】
以上のように構成された二重構造成形体の開口端接触部にフランジを形成する場合は、例えば図8に示すようなフランジ加工工具80によって、二重構造成形体の開口端から軸力を加えることによって、開口端がフランジ加工工具の成形面に沿って拡径しながら移動することによって所定形状のフランジ部6が形成される。フランジ加工に際して、図8から明らかなように、フランジ加工工具の成形面81は内装成形体の開口端に当るので、内装成形体に軸力がより大きく作用するが、内装成形体3は外装成形体2と滑り阻止部5で係合して軸方向への滑り抵抗を与えているので、内装成形体に作用する軸力は該滑り阻止部で外装成形体が受け外装成形体に対する内装成形体の滑りが阻止され、外装成形体と内装成形体が接着剤や溶着あるいは接合部材による接合をしてなくても、図1(b)に示すように、外装成形体と内装成形体のずれのない良好なフランジ部6を形成することができる。上記実施形態ではフランジ加工の場合を示したが、フランジ加工に限らず、カール加工、ネックイン加工あるいは蓋の巻締等、二重構造成形体の開口端接触部への後加工を同様に良好に行うことができる。そして、本実施形態によれば、接着剤や接合部材による複雑な接合工程を必要とすることなく、簡単に外装成形体と内装成形体の軸力による滑りを阻止するように接合部を加工できるので、高速生産性に優れ、かつ低コストで断熱性等に優れた二重構造成形体を得ることができる。
【0012】
本発明の二重構造成形体における滑り阻止部の形態及びその製造方法は、上記実施形態に限らず種々の設計変更が可能である。図2、図3、図4、図5に他の実施形態を示す。以下の実施形態において前記実施形態と同様な個所は同一符号を付し、相違点のみを説明する。
図2(a)は本発明の他の実施形態に係る二重構造成形体20を示し、本実施形態では、ビード状くびれからなる滑り阻止部21の形態を図1に示す実施形態と逆に、外側に凸となるように滑り阻止部21を形成したものである。したがって、本実施形態ではたとえばフランジ加工に際して内装成形体が受ける軸力は、主にビード状の滑り阻止部の下面側の接触部22で外装成形体2に伝達され、両者の滑りが防止される。
【0013】
図2(b)は本発明の他の実施形態に係る二重構造成形体25を示し、本実施形態では、滑り阻止部26を外装成形体2と内装成形体3を共に径方向外方に変形させて鉤状に形成したものである。即ち、開口端接触部4の途中に鉤状に滑り阻止部を形成することによって、内装成形体が外装成形体に対して軸方向に滑ることを阻止するように係合させることができる。本実施形態における滑り阻止部26の形成は、開口端部接触部4を形成後、滑り阻止部となる部分の上方開口端部Aを張り出し加工により拡径することによって、容易に形成することができる。
【0014】
図2(c)は本発明の他の実施形態に係る二重構造成形体30を示し、本実施形態は図1(a)に示す実施形態の変形例であり、開口端接触部32の途中に外装成形体2と内装成形体3を共に径方向に変形させてビード状の滑り阻止部5を形成した点は同様であるが、本実施形態では内装成形体3の少なくとも開口端接触部となる部分を他の部分と比べて厚肉に形成して、開口端部に厚肉部31を形成したことに特徴を有するものである。このように、内装成形体3の後加工を施す開口端接触部32となる部分を部分的に肉厚にすることによって、後加工での加工性を向上させることができる。逆にいえば、内装成形体の他の部分をより薄肉にすることが可能となり、使用材料を低減させることができる。前記厚肉部31は、外側に厚肉となるように形成され、たとえば内装成形体の成形加工時に絞りしごき加工によって容易に厚肉部を形成することができる。
【0015】
図3(a)は、本発明の他の実施形態に係る二重構造成形体35を示し、本実施形態では、内装成形体の開口端部に開口端から開口端接触部となる途中に達するまでの領域に外側凸となる厚肉部36を形成し、該厚肉部36の下方部を肉厚段差部37を形成し、外装成形体2を前記内装成形体の開口端部に沿わせて縮径加工して開口端接触部38を形成したものである。外装成形体2は内装成形体の肉厚段差部37に沿ってくびれ形状となり、外装成形体と内装成形体が軸方向荷重を伝達するように係合する滑り阻止部39が形成される。したがって、本実施形態では滑り阻止部39は、外装成形体2の径方向変形と内装成形体3の肉厚段差37により形成されている。本実施形態の場合は、外装成形体を縮径加工させることによって外装成形体の径方向変形の形成が可能であり、開口端接触部の接触加工と同時に外装成形体のくびれ形成加工ができるという利点がある。しかしながら、開口端接触部の接触加工と同時でなく、後加工により外装成形体の径方向変形加工を行ってもよい。
【0016】
図3(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係る二重構造成形体を示し、本実施形態の二重構造成形体40は、同図(a)の実施形態をさらに変形したものである。本実施形態では、内装成形体3に外側凸の厚肉部36を形成すると共に、外装成形体2に内装成形体の厚肉部36に対応する部分に内側凹の肉薄部41を形成したことを特徴とする。薄肉部41には、内装成形体の肉厚段差部37と対応して該肉厚段差部と係合する外装成形体の肉厚段差部42が形成され、この肉厚段差部37、42によって滑り阻止部43が形成される。したがって、本実施形態では、滑り阻止部43は、外装成形体と内装成形体の両方の肉厚段差から形成されている。本実施形態によれば、開口端接触部に軸荷重に対して内装成形体の滑りを防止する滑り阻止部を形成しながら、開口端部接触部4の途中に外形変形部を有していないので、容器の開口端部の形状は従来の容器と変更することなくできるという利点がある。
【0017】
図3(c)は、本発明のさらに他の実施形態に係る二重構造成形体を示し、本実施形態の二重構造成形体45では滑り阻止部は外装成形体の肉厚段差と内装成形体厚肉部の径方向変形によって形成されている。
即ち、本実施形態の二重構造成形体45では、外装成形体2を前記実施形態と同様に開口端から開口端接触部となる途中まで達するように、薄肉部46を形成し、その下端が肉厚段差部47となっている。一方、内装成形体3は図2(c)に示す実施形態と同様に、少なくとも開口端接触部となる部分を厚肉部に形成し、開口端接触部では外装成形体の内周面に沿うように成形されている。その結果、外装成形体の肉厚段差部47で内装成形体も段差状に変形して、段差部48を形成して肉厚段差部47と係合して軸方向に抵抗を与える滑り阻止部49を形成している。内装成形体の段差部48は、接合後又は接合前に内装成形体のB部を張出し加工したり、また、接合前であれば絞り加工することによって容易に形成することができる。
【0018】
図4(a)は本発明のさらに他の実施形態にかかる二重構造容器50を示し、本実施形態では、内装成形体3の開口端部に開口端から開口端接触部となる途中に達するまでの領域に外側凸となる厚肉部51を形成し、外装成形体2を前記内装成形体3の開口端部に沿わせて縮径加工して開口端接触部を形成したものである。外装成形体2は内装成形体3の鉤状変形部52と肉厚段差部53に沿ってくびれ形状となり、滑り阻止部54及び55が形成される。
したがって、本実施形態では滑り阻止部54及び55は、外装成形体2の径方向変形と内装成形体3の鉤状変形部52及び肉厚段差部53により形成されている。本実施形態の場合、内装成形体3の開口端部にあらかじめ径方向変形部52と肉厚段差部53を設けておき、外装成形体2を内装成形体3の開口端部に沿わせて縮径加工することにより滑り阻止部54及び55を形成したものであるが、それに限るものではなく、該滑り阻止部54の形成については鉤状の金型56を用い外装成形体と内装成形体を該鉤状部に沿わせるように同時に縮径加工することにより形成させることもできる。
【0019】
図4(b)は本発明のさらに他の実施形態に係る二重構造成形体60を示し、本実施形態では、内装成形体3の開口端部に開口端から開口端接触部となる途中に達するまでの領域に外側凸となる厚肉部61を形成し、該厚肉部61の下方部に肉厚段差部62を形成し、該肉厚段差部62と該開口端接触部下方との途中に鉤状変形部63を形成し、外装成形体2を前記内装成形体の開口端部に沿わせて縮径加工して開口端接触部を形成したものである。外装成形体2は内装成形体3の肉厚段差部62と鉤状変形部63に沿ってくびれ形状となり、滑り阻止部64及び65が形成される。
したがって、本実施形態では滑り阻止部64及び65は、外装成形体2の径方向変形と内装成形体3の肉厚段差部62及び鉤状変形部63により形成されている。本実施形態の場合、内装成形体3の開口端部にあらかじめ肉厚段差部62と径方向変形部を設けておき、外装成形体2を内装成形体3の開口端部に沿わせて縮径加工することにより滑り阻止部64及び65を形成したものであるが、それに限るものではなく、該滑り阻止部65の形成については鉤状の金型66を用い外装成形体と内装成形体を該鉤状部に沿わせるように同時に縮径加工することにより形成させることもできる。
【0020】
図5は本発明のさらに他の実施形態に係る二重構造成形体70を示し、これまでと同様に開口端接触部に滑り阻止部が形成されているが、内装成形体は金属71の内外面に熱可塑性樹脂72が被覆された樹脂被覆金属成形体73となる。本実施形態では、内装成形体の肉厚段差及び外装成形体と内装成形体の径方向変形により滑り阻止部が形成されているが、滑り阻止部の形態は同図に限ったものではない。
本実施形態の場合、外装成形体2と内装成形体である樹脂被覆金属成形体73を接触させる際、高周波加熱等や薬液等で該樹脂を軟化もしくは溶融させた状態で接触させることにより、該樹脂に接着剤としての機能を発揮させ、滑り阻止効果をより一層高めることが可能である。また、同時に該樹脂は断熱材としても効果を発揮し、二重構造成形体本来の機能がより一層高められる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、外装成形体と内装成形体を有する二重構造成形体としての飲料容器、種々の缶、美術缶、エアゾール缶、魔法瓶、マグカップ等種々の容器に好適に利用でき、それらの二重構造成形体は金属製に限らず、プラスチック製、紙製、及びそれらの複合材料製に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る二重構造成形体の要部拡大断面図であり、(a)は開口端接続部を形成した状態、(b)はフランジ加工をした状態を示す。
【図2】(a)〜(c)は、それぞれ本発明の他の実施形態に係る二重構造成形体の要部拡大断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、それぞれ本発明の他の実施形態に係る二重構造成形体の要部拡大断面図である。
【図4】(a)、(b)は本発明の他の実施形態に係る二重構造成形体の要部拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る二重構造成形体の要部拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る二重構造成形体の製造方法において、くびれ部加工装置によりビード状の滑り阻止部を形成している状態を示すよう部断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る二重構造成形体の製造工程における(a)は開口端接続部を形成した状態の二重構造成形体の断面図、(b)はフランジ加工後の二重構造成形体の断面図である。
【図8】従来の二重構造成形体におけるフランジ加工状態を示す断面図であり、(a)はフランジ加工開始時の状態、(b)はフランジ加工終了時の状態を示す。
【符号の説明】
【0023】
1、20、25、30、35、40、45、50、60、70 二重構造成形体
2 外装成形体 3 内装成形体
4、32、38 開口端接触部
5、21、26、39、43、49、54、55、64、65 滑り阻止部
6 フランジ部 10 くびれ加工装置
11 ヘッド 12 チャック
13 スピンドル 14 偏心軸
15 バックアップロール 16 くびれ形成ロール
31、36、51、61 厚肉部 37、42、47、53、62 肉厚段差部
41、46 薄肉部 52、63 鉤状変形部
56、66 金型 72 熱可塑製樹脂
73 樹脂被覆金属成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装成形体の内部に隙間を介して内装成形体を有する二重構造成形体の製造方法であって、外装成形体内部に内装成形体を配置して前記外装成形体と前記内装成形体のそれぞれの開口端部が接触する開口端接触部を形成し、該開口端接触部の少なくとも途中に前記内装成形体と前記外装成形体に軸方向滑り抵抗を与える滑り阻止部を形成させることを特徴とする二重構造成形体の製造方法。
【請求項2】
前記滑り阻止部は、前記外装成形体と前記内装成形体の両方又は何れか一方を径方向に変形させることにより形成させる請求項1に記載の二重構造成形体の製造方法。
【請求項3】
前記滑り阻止部は、前記外装成形体と前記内装成形体の両方又は何れか一方に、開口端接触部の途中に肉厚段差部を形成し、該肉厚段差部に沿って前記外装成形体と前記内装成形体を接触させることにより形成させる請求項1または2に記載の二重構造成形体の製造方法。
【請求項4】
外装成形体の内部に隙間を介して内装成形体を有する二重構造成形体であって、前記外装成形体と前記内装成形体のそれぞれの開口端部が接触する開口端接触部を有し、該開口端接触部の少なくとも途中に前記内装成形体と前記外装成形体に軸方向滑り抵抗を与える滑り阻止部を有することを特徴とする二重構造成形体。
【請求項5】
前記滑り阻止部は、前記外装成形体と前記内装成形体の両方又は何れか一方が径方向に変形して形成されてなる請求項4に記載の二重構造成形体。
【請求項6】
前記内装成形体の開口端部が厚肉部を有する請求項5に記載の二重構造成形体。
【請求項7】
前記滑り阻止部は、前記外装成形体と前記内装成形体の両方又は何れか一方の厚肉部と薄肉部の肉厚段差からなる請求項4乃至6に記載の二重構造成形体。
【請求項8】
前記内層成形体の開口端部が外側に厚肉部を有する請求項7に記載の二重構造成形体。
【請求項9】
前記外装成形体の開口端部が薄肉部を有する請求項8に記載の二重構造成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−181863(P2007−181863A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1765(P2006−1765)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】