説明

二重特異性細胞内送達媒体

二重特異性親和性作用物質およびpH応答性の膜不安定化ポリマーを含む細胞に対して作用物質を送達するための組成物。当該二重特異性親和性作用物質は、第2の親和性作用物質に共有結合性に連結された第1の親和性作用物質を含んでよく、当該第1の親和性作用物質は、細胞の表面の物質に対して結合し、当該第2の親和性作用物質は細胞内ターゲットに対して結合する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2009年4月21日に出願された仮出願番号61/171,381、2008年12月24日に出願された仮出願番号61/140,779、2008年12月24日に出願された仮出願番号61/140,774、2008年11月6日に出願された仮出願番号61/112,054および2008年11月6日に出願された仮出願番号61/112,048の優先権を主張するものである。各出願はその全体について参照することによってここに組込まれる。
【0002】
連邦受託研究に関する記載
本発明は国立衛生研究所により認められた契約番号2R01EB002991-05A1の政府補助を用いてなされた。政府は発明において一定の権利を有する。
【発明の背景】
【0003】
本発明は、治療学的な作用物質の細胞内送達の分野、また特に、二重特異性親和性作用物質およびpH応答性の膜不安定化ポリマーを使用して、細胞サイトゾル内への分子の移送または送達を増強する領域にある。
【0004】
例えば、タンパク質、遺伝物質、および他の薬物および診断用化合物などの化合物を細胞内に送達することは多くの場合困難であり、これは、これらの化合物の通過に細胞膜が抵抗するからである。種々の方法が、作用物質を細胞内に投与するために開発されている。例えば、遺伝物質は、インビボ、インビトロおよびエキソビボで細胞内に対して、ウイルスベクター、DNA/脂質複合体およびリポソームを使用して投与されている。DNAはまた、合成カチオン性ポリマーおよびコポリマー、天然カチオン性担体、例えば、キトサンなどによって送達されている。時には、合成ポリマーは、疎水性に修飾されてエンドサイトーシスが増強される。ウイルスベクターは効率的である一方で、生ベクターの安全性および反復投与に続く免疫反応の発生に関する問題が残る。脂質複合体およびリポソームは、細胞核内にDNAを移入するときに有効性が低いようであり、インビボではマクロファージによって破壊され可能性があるかもしれない。
【0005】
受容体媒介エンドサイトーシスは、特定の細胞種類をターゲティングするための、および治療学的な作用物質を細胞内に送達するための代替的な手段を提供する。受容体媒介エンドサイトーシス(receptor-mediated endocytosis、RME)は、真核細胞膜の細胞表面受容体に対してリガンドが結合したときに生じ、結果的にクラスリン被覆小胞内の膜複合体の細胞陥入になる現象のカスケードを惹起または付随する。特定の細胞表面受容体と相互作用する化合物が使用されて、特異性に細胞表面受容体がターゲティングされる。一旦、化合物が細胞表面受容体と相互作用すれば、当該化合物はエンドソームに形質膜陥入される。連結は、化合物と直接に行われているか、またはDNAの場合では、ポリカチオン性ポリマー、例えば、ポリリジンおよびDEAE-デキストランなどとの接合を介して行われており、更にそれらはDNAと複合される(Haensler et al., Bioconj. Chem., 4:372-379 (1993))。
【0006】
治療学的な作用物質が、細胞内に送達された後でさえも、細胞内の通常の輸送がそれらの効果を最小にする。例えば、ある抗体−抗原複合体は、容易に形質膜陥入される。しかしながら、エンドサイトーシス後に、当該抗体は、サイトゾルに放出されず、分解のためにリソソームへ輸送されるまで、寧ろエンドソーム内での隔離が維持される(Press, O. W. et al., Cancer Research, 48: 2249-2257 (1988))。エンドソームは、リン脂質小胞に結合した膜であり、タンパク質の細胞内輸送と内在化されたタンパク質の分解において機能する。エンドソームの内部pHは、5.0〜5.5の間である。負に帯電している遺伝物質は、多くの場合、細胞への送達のためにポリカチオン物質、例えば、キトサンおよびポリリジンなどと複合される。免疫療法とポリカチオン/核酸複合体を使用する遺伝子治療は両者とも、エンドソームからリソソームへの細胞による複合体の輸送により制限され、そこにおいて抗体接合体または核酸は、分解され、無効化される。
【0007】
タンパク質伝達ドメイン(protein transduction domain、PTD)は、生体膜を横切って移行するそれらの能力のために薬物送達分野における相当な関心を引き付けている。PTDは、比較的短い(11〜13アミノ酸)配列であり、それらが接合、複合または融合されるタンパク質および他の巨大分子カーゴに対してこの明白な移動能力を与える(Derossi et al., 1994; Fawell et al., 1994; Elliott and O'Hare, 1997; Schwarze et al., 2000; Snyder and Dowdy, 2001; Bennett et al., 2002)。
【0008】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)TATタンパク質からの高度なカチオンの11アミノ酸残基(YGRKKRRQRRR)PTD(Frankel and Pabo, 1988; Green and Loewenstein, 1988)は、最も十分に研究された移動ペプチド(translocating peptide)の1つである。TAT配列を含むインフレーム融合タンパク質は、タンパク質の直接的な細胞取り込みが示されており、細胞内でそれらの活性が維持されていた(Nagahara et al., 1998; Kwon et al., 2000; Becker-Hapak et al., 2001; Jo et al., 2001; Xia et al., 2001; Cao et al., 2002; Joshi et al., 2002; Kabouridis et al., 2002; Peitz et al., 2002)。引き続いて、15〜120kDAの機能性ドメインを有する60以上の完全長タンパク質の多様なコレクションが今日までに設計されてきている。TAT融合方法論を使用する種々の研究が、末梢血リンパ球、二倍体繊維芽細胞、ケラチノサイト、骨髄幹細胞、破骨細胞、HeLa細胞およびジャーカットT細胞を含む初代および形質転換された哺乳類およびヒト細胞の種々の細胞種で伝達を証明してきた(Fawell et al., 1994; Nagahara et al., 1998; Gius et al., 1999; Vocero-Akbani et al., 1999, 2000, 2001; Becker-Hapak et al., 2001)。更に、インビボでの注射によるTAT-b-gal融合物の細胞内送達も示されている(Schwarze et al., 1999; Barka et al., 2000)。しかしながら、TATおよび他のペプチドドメインによる細胞内送達は、非効率的であり、再現不可能であり、且つ多くの場合において、結果は、固定化の手順により生じるアーチファクトのために誤解が招かれている(Richard et al., J. Biol Chem. 278:585, 2003)。
【0009】
薬物送達に加えて、インビトロでの多くの潜在的な適用が、例えば、薬物開発および実験用アッセイなどの領域において存在し、改善された生体分子および巨大分子カーゴの細胞内送達から利益が得られる。しかしながら、ある程度の検証が依然として残っている。例えば、生体分子および巨大分子カーゴが所望の細胞に対してターゲティングされ、細胞により形質膜陥入されたとしても、多くの場合、効果的にエンドソームからサイトゾルへの放出がされず、リソソームにより分解される。これらの検証および他の検証が、本発明の態様により扱われる。
【発明の概要】
【0010】
本発明のある態様は、二重特異性親和性作用物質およびpH応答性膜不安定化ポリマーを含む、細胞に対して作用物質を送達するための組成物を含む。幾つかの態様において、二重特異性親和性作用物質は単一のタンパク質を含む。幾つかの態様において、二重特異性親和性作用物質は、抗体、抗体フラグメントまたは抗体様分子を含む。幾つかの態様において、二重特異性親和性作用物質は、第2の親和性作用物質に対して共有結合性に連結された第1の親和性作用物質を含み、第1の親和性作用物質は、細胞の表面の分子に対して結合し、第2の親和性作用物質は、細胞内ターゲットに対して結合する。幾つかの態様において、第1の親和性作用物質および第2の親和性作用物質は、単一ポリペプチド鎖に含まれる。幾つかの態様において、第2の親和性作用物質はタンパク質様(proteinaceous)である。幾つかの態様において、ポリマーは、ブロックコポリマー、例えば、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマーまたは高次ブロックコポリマーである。
【0011】
本発明のある態様は、生体分子作用物質、例えば、治療剤または診断剤などを細胞に対して送達するための組成物であって、複数のペンダント連結基を有するpH応答性の膜不安定化ポリマーと二重特異性親和性作用物質とを含む組成物を含む。幾つかの態様において、二重特異性親和性作用物質は、ポリマーに対して連結された第1の親和性作用物質と、当該ポリマーに連結された第2の親和性作用物質とを含み、第1の親和性作用物質は、細胞の表面の分子に対して結合し、第2の親和性作用物質は、細胞内ターゲットに対して結合する。幾つかの態様において、二重特異性親和性作用物質は、複数の第1の親和性作用物質を含み、当該複数の第1の親和性作用物質は、ペンダント連結基を介してポリマーに連結される。幾つかの態様において、二重特異性親和性作用物質は複数の第2の親和性作用物質を含み、当該複数の第2の親和性作用物質は、ペンダント連結基を介してポリマーに対して連結される。
【0012】
本発明のある態様は、細胞における細胞内ターゲットの活性を変化させる方法であって、検出可能な活性を有する細胞内ターゲットを含む細胞と、pH応答性膜不安定化コポリマーおよび第2の親和性作用物質に対して共有結合性に連結された第1の親和性作用物質を含む組成物とを接触させることを含む方法を含む。幾つかの態様において、第1の親和性作用物質は、細胞の表面の分子に対して結合し、それにより第2の親和性作用物質を細胞表面の近傍に運び、それにより少なくとも第2の親和性作用物質のエンドサイトーシスが促進される。幾つかの態様において、pH応答性膜不安定化ポリマーは、酸性のpHで膜活動性(membrane-active)になり、それによって細胞のエンドソーム区画から少なくとも第2の親和性作用物質の放出を引き起こす。幾つかの態様において、第2の親和性作用物質は、細胞の内部への放出の後に細胞内ターゲットに結合し、それによって、細胞内ターゲットに対する第2の親和性作用物質の結合が、直接的に細胞内ターゲットの活性を作動する、または当該活性と拮抗する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の態様に従うpH応答性膜不安定化ポリマーについての模式的且つ化学的構造である。
【図2】図2は、本発明の態様に従う鎖導入剤(chain transfer agent)の合成を示す。
【図3】図3は、本発明の態様に従う二重特異性親和性作用物質のpH応答性膜不安定化ポリマーに対する連結を示す。
【図4A】図4Aおよび4Bは、電気泳動ゲルを使用し、本発明の態様に従うpH応答性膜不安定化ポリマーに対する二重特異性親和性作用物質の連結を分析した結果を示す。
【図4B】記載なし。
【図5】図5は、本発明の態様に従って製造されたポリマーのpH依存性膜破壊能力を測定するアッセイの結果を示すチャートである。
【図6A】図6Aおよび6Bは、従来の組成物と本発明の態様に従う組成物とによる細胞へのペプチド送達の蛍光顕微鏡分析の結果を示す。
【図6B】記載なし。
【図7A】図7Aおよび7Bは、本発明の態様に従う組成物の細胞毒性試験の結果を示す。
【図7B】記載なし。
【図8A】図8Aおよび8Bは、本発明の態様に従う組成物の生物活性試験の結果を示す。
【図8B】記載なし。
【発明の説明】
【0014】
ここで、明細書、図面および例はポリマー性送達媒体を用いる二重特異性親和性作用物質の細胞内送達に関する。
【0015】
ある用語の要約が、本発明の記載において存在する。各用語は、さらに明細書、図面および例を通して更に説明される。本明細書における何れの用語の解釈も、こで提示される明細書、図面および例の全体を考慮に入れるべきである。ここで引用される全ての出版物は、参照によりここに組み込まれる。
【0016】
親和性作用物質は、抗原または受容体または他の分子に結合する分子である。幾つかの態様において、親和性作用物質は抗原または受容体または他の分子に特異性に結合する分子である。ある態様において、親和性作用物質の幾つかまたは全てはアミノ酸(天然、非天然および修飾アミノ酸を含む)、核酸またはサッカライドから構成される。ある態様において、親和性作用物質は小型分子である。
【0017】
本発明のある態様における親和性作用物質は、分子またはターゲットに特異性に結合する。第1の親和性作用物質は細胞表面抗原、細胞表面受容体または他の細胞表面分子に結合する。第2の親和性作用物質は細胞内ターゲットに結合し、かつ影響を及ぼす。第2の親和性作用物質はタンパク質様の親和性作用物質、アプタマーまたは500分子量よりも大きい治療用の小型分子である。二重特異性親和性作用物質は、第2の親和性作用物質に共有結合性に連結された第1の親和性作用物質を含む。タンパク質様の親和性作用物質はアミノ酸(天然、非天然および修飾アミノ酸を含む)から構成される親和性作用物質である。
【0018】
本発明の幾つかの態様において、第1および第2の親和性作用物質はタンパク質様であり、かつ単一ペプチドまたはポリペプチド鎖内に存在してよい。幾つかの態様において、ポリペプチド鎖は二重特異性抗体である。
【0019】
二重特異性抗体は、標準技術としてその技術において十分に確立されており、2つの異なる決定因子に結合する単一ヘプチドが作り出される(Kufer et al., 2004)。二重特異性抗体は、多くの異なる構成で作られ、これに限定するものではないが、クアドローマ、F(ab')2、四価染色体、ヘテロ二量体scFv、二重特異性scFv、タンデム型scFv、ダイアボデイ(diabody)および小体構成物または全体の抗体に対して付属する、若しくは全体の抗体に組み換えにより融合されたscFvsを含む(Kufer et al, 2004; Holliger and Hudson 2005; Morrison and Coloma, PCTUS94/11411)。
【0020】
本発明において使用するための抗体は、例えば、マウスへの免疫原の注入および続く、リンパ球の融合によりハイブリドーマを作出するなどの何れかの従来法によって産生されてよい。そのようなハイブリドーマは、次に(a)抗体を直接生産すること、これは精製されて、化学的に接合体のために使用されて二重特異性抗体を作出する、もしくは(b)引き続き遺伝子操作のための抗体フラグメントをコードするcDNAsのクローニングすること、のいずれかに使用されてよい。例えば、後者の戦略を使用する1つの方法では、mRNAがハイブリドーマ細胞から分離され、アンチセンスオリゴdTまたは免疫グロブリン遺伝子特異性プライマーを用いてcDNAに逆転写され、およびプラスミドベクターにクローニングされる。クーロンは、シーケンシグされ、特性決定される。それらは、次に、標準的なプロトコールに従って操作され、短ペプチドリンカーによって分離される、各抗体の重鎖および軽鎖を以前に記述されたように細菌または哺乳類の発現ベクタに組み込まれ、組み換え二重特異性抗体を産生し、これは、次に、十分確立されたプロトコールに従って、細菌または哺乳類の細胞において発現され、精製される(Kufer et al, 2004; anti-body Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。抗体またはタンパク質様親和性分子、例えば、ペプチドは、例えば免疫グロブリンドメインまたはバクテリオファージによって発現されるペプチドなどの非常に大きなライブラリーのスクリーニングを介して、相互作用する親和性作用物質の選択を可能にするディスプレー技術を介して作られてもよい(anti-body Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。本発明の抗体はまた、ヒト免疫グロブリンドメインの移植を介してヒト化されてもよく、遺伝子導入マウスまたはヒト免疫グロブリン遺伝子/cDNAを有するバクテリオファージライブラリーから作られてもよい。
【0021】
本発明の幾つかの態様において、第1および第2の親和性作用物質は、タンパク質ターゲットに特異的に結合できる抗体以外のタンパク質構造を含んでもよく、これに限定するものではないが、アビマー(avimer、Silverman et al, 2005)、アンキリン反復(Zahnd et al., 2007)およびアドネクチン(adnectin、USP 7,115,396に述べられているような)および抗原に対する特異性を生じるために進化され得るドメインを有する他のそのようなタンパク質、集合的には「抗体様分子」と称されるものを含む。合成の間に、非天然アミノ酸の取り込みを介してタンパク質様親和性作用物質の修飾が使用されて、それらの性質が改良されてもよい(Datta et al., 2002; and Liu et al., 2007参照)。そのような修飾は、幾つかの利点を有し、それは、続く接合反応を促進する化学基の付加を含む。
【0022】
幾つかの態様において、第1または第2の親和性作用物質はペプチドであってもよい。幾つかの態様において、ペプチド鎖は二重特異性ペプチドである。ペプチドは、容易に作られ、スクリーニングされて、タンパク質などの微小分子を認識して、それに結合する親和性作用物質を作出してもよい(例えば"Phage display of combinatorial peptide and protein libraries and their applications in biology and chemistry". Current Topics in Microbiology and Immunology, vol. 243 1999, p. 87-105参照)。
【0023】
本発明の幾つかの態様において、タンパク質様の第1の親和性作用物質およびタンパク質様の第2の親和性作用物質は、2つの別々のペプチドまたはポリペプチド鎖に存在する。二重特異性親和性作用物質は、別々の合成と第1および第2の親和性作用物質の発現により構成されてよい。ポリペプチド二重特異性試薬は、二つの独立したコード鎖として発現され、これらはジスルフィド結合によって同じホスト細胞内での生成時に連結されてよく、例えば二重特異性scFv またはダイアボデイなどであってよい(Kufer et al., 2004; Holliger and Hudson, 2005)。同様に、標準的なおよび広く用いられる固相ペプチド合成技術(例えば、Handbook of reagents for Organic Synthesis, reagents for Glycoside, Nucleotide, and peptide Synthesis, David Crich (Ed.) 2005参照)がペプチドを合成するために使用されてよく、キメラ二重特異性ペプチドはその技術においてよく知られている(例えば、Dickey et al., J Biol Chem 283:35003, 2008参照)。二重特異性ペプチド戦略が使用されて、単一ペプチド鎖に第1および第2の親和性作用物質を組み込んでもよい。或いは、ポリペプチド鎖またはペプチド鎖は別々に発現/合成され、精製され、更に化学的に接合されて、本発明の二重特異性親和性作用物質を生成してもよい。抗体の多くの異なる構成が使用されてよい。抗体全体、F(ab')2、F(ab')、scFv、並びにより小さいFab および単一ドメイン抗体フラグメント(Holliger and Hudson, 2005)を全て使用して、第1および第2の親和性作用物質が作出されてよい。それらの発現および精製に続いて、第1および第2の親和性作用物質が化学的に接合されて、二重特異性親和性作用物質が作出さr手もよい。多くの接合化学が使用されて、この接合に影響してもよく、接合はエステル、アミド、チオエーテル、炭素−炭素またはジスルファイド結合を生じる同質機能的なまたは異質機能的なリンカーを含んでもよい(Bioconjugation, Aslam and Dent, Eds, Macmillan, 1998 and chapters therein参照)。第1および第2の親和性作用物質はまたポリマーそれ自体を介して互に接合されてもよい(以下参照)。
【0024】
幾つかの態様において、第1の親和性作用物質はペプチドアプタマーである。ペプチドアプタマーは、ターゲットタンパク質に特異性に結合するペプチド分子であり、かつそのターゲットタンパク質の機能的な能力を妨害する(Kolonin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:14266 (1998))。ペプチドアプタマーは、タンパク質骨格の両端で付着された可変的なペプチドループからなる。そのようなペプチドアプタマーは、多くの場合、抗体(ナノモル範囲)の結合親和性に匹敵する結合親和性を有してよい。ペプチドアプタマーの高い選択的性質のために、それらは、特異的タンパク質をターゲティングするのみならず、所定のタンパク質(例えばシグナリング機能)の特異的な官能基をターゲティングするために用いられてもよい。
【0025】
ペプチドアプタマーは、通常、ペプチドの無作為なプールまたはライブラリーからの特異的なターゲットを伴ってその結合親和性についてアダプターを選択することによって製造される。ペプチドアプタマーは、酵母二ハイブリッドスクリーニングによって無作為ペプチドライブラリーから分離されてよい(Xu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12473 (1997)。それらは、またファージライブラリ(Hoogenboom et al., Immunotechnology 4:1 (1998))、または化学的に発生させたペプチド/ライブラリーから分離されてもよい。
【0026】
第1の親和性作用物質はまた、核酸アプタマーであってもよい。核酸アプタマーは他の微小分子に特異的に結合する核酸オリゴマーであり、他の微小分子に特異的に結合するそのようなアプタマーは、例えば、SELEXなどの技術によって、そのようなオリゴマーのライブラリーから容易に単離されてよい(例えば"SELEX--a (r)evolutionary method to generate high-affinity nucleic acid ligands", Stoltenburg et al., Biomol. Eng. 24:381, 2007参照)。
【0027】
幾つかの態様において、第1の親和性作用物質はオリゴサッカライドである。あるオリゴサッカライドは、ある細胞外または細胞表面受容体に対する公知のリガンドである。例えば、コリンズ(Collins)らは、細胞タンパク質CD22に対して親和性を持つ合成シアロシド(synthetic sialoside)を記載する("High-affinity Ligand Probes of CD22 Overcome the Threshold Set by cis Ligands to Allow for Binding, Endocytosis, and Killing of B Cells" Collins et al., J. Immunol. 177:2994-3003, 2006)。
【0028】
第1の親和性作用物質は、ターゲット細胞上で細胞表面抗原を認識する。第1の親和性作用物質は、抗体、抗体様分子、またはペプチド、例えば、インテグリン結合RGDペプチド、小型分子、例えば、ビタミン、例えば、葉酸、糖、例えば、ラクトースおよびガラクトース、または他の小型分子であってもよい。細胞表面抗原は、内在化された何れかの細胞表面分子、例えば、タンパク質、糖、脂質頭部基または細胞表面の他の抗原であってよい。本発明の文脈において有用な細胞表面抗原の例は、これらに限定するものではないが、トランスフェリン受容体1型および2型、EGF 受容体、HER2/Neu、VEGF受容体、インテグリン、CD33、CD19、CD20、CD22およびアシアロ糖タンパク質受容体を含む。
【0029】
第1の親和性作用物質はまた、HSVからのVP22取り込みペプチド、HIV TAT タンパク質/ペプチド、およびアンテナペディアペプチド、トランスポータンペプチド、およびポリアルギニンなどのペプチド送達ドメインを含んでもよい。ペプチド送達ドメインは、例えばシドニーらの文献に記述されているようにその技術においてよく知られている(Snyder EL, Dowdy SF. Recent advances in the use of protein transduction domains for the delivery of peptides, proteins and nucleic acids in vivo. Expert Opin. Drug Deliv. 2005 Jan;2(1):43-51)。
【0030】
幾つかの態様において、第2の親和性作用物質は、抗体、抗体様分子、ペプチド、アプタマーまたは小型分子である。幾つかの態様において、第2の親和性作用物質は顕性不活性タンパク質である。ある顕性不活性タンパク質は、VEGF プロモータ活性を抑制することが示されている(J Biol Chem 274(44):31565-31570, October 29, 1999)。
【0031】
第2の親和性作用物質は、細胞内ターゲットを認識する。この「効果器」親和性作用物質はタンパク質のような細胞内抗原に特異的に結合する。幾つかの態様において、第2の親和性作用物質はタンパク質様であり、かつある態様において抗体または抗体様分子である。他の第2の親和性作用物質は、例えばbcl-2拮抗物質BH3ペプチド (Walsh et al., 2002)およびそれらの大きさ(>500gの分子量)電荷または他の物理化学的性質の理由から、細胞に全く侵入しないか、僅かに侵入する有機微小分子などのペプチドを含む。幾つかの態様において、第2の親和性作用物質は核酸アプタマーである。第2の親和性作用物質はサイトゾルタンパク質;原形質膜、または核、ミココンドリア膜または細胞内の他の膜の内部面に結合されるタンパク質;または核タンパク質または他の細胞以下の区画のタンパク質;に対して結合してよい。細胞内シグナリングの重要な機能を阻止する親和性作用物質が、第2の親和性作用物質としての使用のために良好な候補であろうことは当業者に明らかであろう。第2の親和性作用物質は、タンパク質の活性を直接的に阻害しても、またはタンパク質基質との相互反応を阻止してもよく、或いは、それらはタンパク質−タンパク質相互作用を阻止してもよい。また、幾つかの親和性作用物質が細胞内タンパク質の欠失を救済する能力があることも十分に立証されている。従って、そのような第2の親和性作用物質は、細胞内タンパク質の活性の作用物質として作用してもよい。これは、多くの癌細胞に見出されるp53変異体のDNA結合と転写性活性を増加するp53タンパク質に対する抗体の場合に明確に示されており、これは、癌細胞内のp53腫瘍抑制因子におけるこの変異の訂正を可能にするであろう(Abarzua et al., Cancer Res. 55(16):3490-4, August 15, 1995参照)。第2の親和性作用物質によってターゲティングされてよい特異的タンパク質ファミリーは、キナーゼ、例えば、EGFの細胞内ドメインを含む受容体チロシンキナーゼ、HER2/neu, PDGFおよびVEGF 受容体、イオンチャンネル受容体、Gタンパク質受容体および他の細胞表面受容体の細胞内ドメイン;細胞キナーゼ、例えば、erk、mek、mapキナーゼ(mapK)、mapKK、mapKKK、およびそれらの基質、例えば、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ、MAPKAPK2を含む活性タンパク質キナーゼ(MAPKAPKs);GTPases、例えば、h-, k-, and n-ras タンパク質;ホスファターゼ;アポトーシス経路に関与するたんぱく質、例えば、bcl-2 タンパク質および関連ファミリーのタンパク質;並びに全ての他の細胞内タンパク質;を含む。ある態様において、タンパク質様第2の親和性作用物質は、天然に存在するタンパク質である。幾つかの態様において、タンパク質である第2の親和性作用物質は、本発明のポリマー媒体と関連して喪失しているタンパク質を外因的に提供することにより遺伝子欠失を矯正するために使用されるタンパク質タンパク質(例えば、ゴーシェ病の症状を矯正するためのグルコセレブロシダーゼ欠失);細胞に対してタンパク質機能を補う/付与するために用いられるタンパク質;顕性不活性タンパク質;酵素;および治療価値のある他のタンパク質を含むことができる。
【0032】
第1および第2の親和性作用物質は、共有結合を介して互に直接的に共有結合性に連結される。或いは、第1および第2の親和性作用物質はリンカーを介して互に連結される。リンカーは、ペプチドリンカーまたは化学的リンカーであってもよい。特定の態様は、コハク酸グリシンリンカー、アミノ酸リンカー、またはそれらの組み合わせであるリンカーを意図する。他のリンカーは、これに限定するものではないが、ジスルフィドリンカー、炭酸リンカー、アミンおよびアルデヒドの反応から得られるイミンリンカー;アルコールをリン酸基と反応することにより形成されるリン酸エステルリンカー;ヒドラジドとアルデヒドとの反応生成物であるヒドラゾンリンカー;アルデヒドとアルコールの反応生成物であるアセタールリンカー;ギ酸塩とアルコールとの反応生成物であるオルソエステルリンカー、これに限定するものではないが、例えば、PEGなどのポリマー末端でを含むアミン基、およびペプチドのカルボキシル基末端により形成されるペプチドリンカーを含む。ここで記述されるとき、連結は、イオンまたはビオチンストレプトアビジン連結などを介する他の非共有連結を含まない。
【0033】
二重特異性タンパク質様親和性作用物質または構成タンパク質様親和性作用物質は細菌、真菌または哺乳類の発現系で発現され、標準クロマトグラフィ技術によって精製されてよい(anti-body Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。
【0034】
それらの発現/合成および精製に続き、第1および第2の親和性作用物質は、共有結合を介してpH応答性膜不安定化ポリマーと結合される。仮に、第1および第2の親和性作用物質が1つの化学物質として存在する場合、組み換え融合、または化学連結もしくは結合のいずれかを介して、二重特異性親和性作用物質はポリマーと共有結合性に結合される。或いは、第1および第2の親和性作用物質は、別々に発現され、ポリマーと別々に共有結合性に結合されて、二重特異性親和性作用物質が作出されてもよい。
【0035】
pH応答性膜不安定化ポリマーが、おおよそ生理的pH(7.4)でエンドソームの低pH環境で移行を受け、膜を安定化する。本発明の幾つかの非限定的な態様において、ポリマーはブチルアクリル酸またはプロピルアクリル酸(PAA)のようなアルキルアクリル酸のホモポリマーから作ることができ、またはエチルアクリル酸(EAA)のコポリマーであってもよい(Jones et al, 2003, Murthy et al., 2003)。メチルビニルエーテルまたはスチレンを伴う無水マレイン酸コポリマーのアルキルアミンまたはアルキルアルコール誘導体のポリマーを使用してもよい。幾つかの態様において、ポリマーは他のモノマーとのコポリマーとして作られてもよい。他のモノマーの付与は、ポリマーの有効性を増大し、かつ有用な機能を有する化学基を付加でき、それにより他の分子物質との結合を容易にするものであり、二重特異性親和性作用物質および/または他の補助物質、例えば、ポリエチレングリコールを含む。これらのコポリマーは、これに限定するものではないが、二重特異性親和性作用物質を架橋できる基を含むモノマーを有するコポリマーを含む。例示的な態様において、ポリ(ポリアクリル酸)(PAA)-co-ピリジルジスルフィドアクリレート(PDSA)、p(PAA-コ-PDSA)(El-Sayed et al., 2005)のコポリマーは、ポリマーのPDSA成分とTraut's 試薬 (2−イミノチオラン, Pierce Biotechnology, Rockford, IL)による反応によりタンパク質様親和性作用物質に導入される遊離チオールとの間のジスルフィド交換を介して接合される。同様に、NHS、アジ化物、アルキンモノマーなどの接合を可能にする他の置換基を含むモノマーを用いる戦略が使用されてもよい。
【0036】
ポリマーは、第1および第2の親和性作用物質が接合されることを介して媒体として供給されてもよく、更にpH応答性膜不安定化の機能特性を提供してもよい。第1および第2の親和性作用物質のポリマーに対する接合は、テレキリック末端(telechelic end)を有するポリマーを用いることによって達成されてよい。これらの異なる末端は第1および第2の親和性作用物質の別々の接合を可能にする。この点について、二重特異性親和性作用物質は第1、第2の親和性作用物質を同じポリマー分子の何れかの末端に連結することによって作られる。
【0037】
第1および/または第2の親和性作用物質もまたポリマー鎖のペンダント連結基を介して連結されてよい。そのような連結に対して用いることができるペンダント基は、アルキルアクリル酸並びにPDSAのような共重合を介して導入される他のモノマー上の化学基に存在するようなカルボキシル残基を含む。
【0038】
一般的に、本発明の化合物の構成部分として含まれる種々のポリマーは、重合を含むプロセスから誘導された1つ以上の繰り返し単位(モノマー(もしくはモノマーの)残基)を含んでよい。そのようなモノマー残基はまた、後重合(例えば誘導化)反応から誘導される構成部分(または種)を任意に含んでもよい。モノマー残基は、ポリマーの構成部分であり、従ってポリマーの構成単位として看做すことができる。一般的に、本発明のポリマーは1つ以上の重合可能なモノマーが誘導(直接的にまたは付加プロセスを介して間接的に)される構成単位を含んでよい。
【0039】
一般的に、各ポリマーはホモポリマー(単一型モノマー(本質的に同様な化学組成を有する)の重合から誘導される)またはコポリマー(2つ以上の異なるモノマー(異なる化学組成を有する)の重合から誘導される)であってよい。コポリマーであるポリマーはランダムコポリマー鎖またはブロックコポリマー鎖(例えば、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、高次ブロックコポリマーなど)を含む。幾つかの所定のブロックコポリマー鎖は、当該技術において知られた方法に従って慣例的に構成され、達成されてよい。
【0040】
一般的に、各ポリマーは直線ポリマーまたは非直線ポリマーであってよい。非直線ポリマーは、例えば分岐ポリマー、ブラシポリマー、星形ポリマー、デンドリマポリマーを含む、種々の構造を有することができ、かつ架橋ポリマー、半架橋ポリマー、グラフトポリマーおよびそれらの組み合わせであってよい。
【0041】
本発明のポリマーは、原子移動ラジカル重合(ATRP)、窒化酸素−媒介リビングフリーラジカル重合(NMP)、開環重合(ROP)、退化移動(DT)または可逆的追加断片化チェーン移動(RAFT)を含む方法によって実施される。特別な態様において、ポリマーは可逆的追加断片化チェーン移動(RAFT)重合などのような制御(リビング)ラジカル重合によって製造されてよい。そのような方法およびアプローチは、一般的にその技術において知られており、さらにここにおいて記述される。或いは、ポリマーは、従来のラジカル重合取り組みを含む従来の重合アプローチによって製造される。
【0042】
一般的に、ポリマーは複数の個々の反応(例えば、ペプチド合成またはオリゴヌクレオチド合成に対するその技術において知られるような)の順序を含む段階的な結合アプローチ以外の方法によって製造される。膜不安定化ポリマーの主鎖は、ペプチドポリマー、核酸ポリマーまたは脂質ポリマーではない。これに対し、明確にするために、前述の事項にも拘わらず、前述の事項に対する偏見なしで、本発明の親和性作用物質および/または他の生体分子作用性物質はアミノ酸ポリマー(例えば、ペプチド)または核酸ポリマー(例えば、オリゴヌクレオチド)であってもよい。
【0043】
一般的に、可逆的追加断片化チェーン移動(RAFT) のような制御(リビング)ラジカル重合で製造されるポリマーはモノマー残基(繰り返し単位)以外に成分を含んでもよい。例えばこれに限定するものではないが、そのようなポリマーはポリマー鎖のα−末端またはω−末端で重合処理依存性成分を含んでもよい。典型的には、RAFT重合のような制御ラジカル重合から誘導される例えばポリマー鎖は、そのα−末端で共有結合性にに結合されるラジカル源残基をさらに含んでもよい。例えば、ラジカル源残基は発動因子残基であることができ,またはラジカル源残基は可逆的追加断片化チェーン移動(RAFT)剤の脱離基であってよい。典型的な別の例として、RAFT重合のような制御ラジカル重合から誘導されるポリマーはそのω−末端で共有結合性に結合されるチェーン移動残基をさらに含む。例えばチェーン移動残基は式-SC(=S)Z(ここでZは活性基である)を有するチオカルボニルチオ成分であってもよい。典型的なRAFTチェーン移動残基はキサントゲン酸塩、ジチオカルバミン酸塩、ジチオエステルおよびトリチオカルバミン酸塩から選択されるチェーン移動剤の存在でラジカル重合から誘導される。ポリマーのα−末端またはω−末端、または異なるポリマーのブロック間の処理関連成分は、官能基、例えば共有結合等に対して適切な官能基を含んでもよいか、もしくは誘導されて含んでもよい。
【0044】
ポリマーのさらなる性状は、次の段落で開示され、ポリマーの繰り返し単位が誘導される好ましい重合化モノマーを含む。
【0045】
好ましい態様において、ポリマーはエチレン不飽和モノマーから誘導される繰り返し単位を含んでもよい。用語「エチレン不飽和モノマー」は少なくとも1つの炭素二重または三重結合を有する化合物としてここで規定する。エチレン不飽和モノマーの非限定的な例は、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルアクリル酸、N-アルキルアクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、アリルアミン、アリルアンモニウム、ジアリルアミン、ジアリルアンモニウム、n-ビニルホルムアミド、ビニルエーテル、ビニルスルフォネート、アクリル酸、スルフォベタイン、カルボキシベタイン、ホスホベタインまたはマレイン酸無水物である。
【0046】
種々の態様において、ここに記述されるポリマーを供するための適切な幾つかのモノマーは本発明を遂げるために用いることができる。幾つかの態様において、ここに供されるポリマーの調製に使用のための適切なモノマーは、非限定的な例として、次のモノマー:メチル メタクリレート、エチル アクリレート、プロピル メタクリレート(全ての異性体),ブチルメタクリレート(全ての異性体),2-エチルヘキシル メタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジル メタクリレート、フェニル メタクリレート、メタクリロニトリル、アルファ-メチルスチレン、メチル アクリレート、エチル アクリレート、プロピル アクリレート(全ての異性体)、ブチル アクリレート(全ての異性体)、2-エチルヘキシル アクリレート,イソボルニルアクリレート、アクリル酸、ベンジル アクリレート、フェニル アクリレート、アクリロニトリル、スチレン、アクリレートおよびグリシジルメタクリレートから選択されるスチレン、2-ヒドロキシエチル メタクリレート、ヒドロキシプロピル メタクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(全ての異性体)、N,N-ジメチルアミノエチル メタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル メタクリレート、トリエチレングリコール メタクリレート,イタコン酸無水物、イタコン酸、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチル アクリレート、ヒドロキシプロピル アクリレート(全ての異性体)、ヒドロキシブチル アクリレート(全ての異性体)、N,N-ジメチルアミノエチル アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル アクリレート、トリエチレングリコール アクリレート、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチルオルアクリルアミド、ビニル 安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノスチレン(全ての異性体)、アルファ-メチルビニル 安息香酸(全ての異性体)、ジエチルアミノ アルファ−メチルスチレン(全ての異性体)、p-ビニルベンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホンナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピル メタクリレート、トリエトキシシリルプロピル メタクリレート、トリブトキシシリルプロピル メタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピル メタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピル メタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピル メタクリレート、ジメトキシシリルプロピル メタクリレート、ジエトキシシリルプロピル メタクリレート、ジブトキシシリルプロピル メタクリレート、ジイソプロポキシシルプロピル メタクリレート、トリメトキシシリルプロピル アクリレート、トリエトキシシリルプロピル アクリレート、トリブトキシシリルプロピル アクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピル アクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピル アクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピル アクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピル アクリレート、ジメトキシシリルプロピル アクリレート、ジエトキシシリルプロピル アクリレート、ジブトキシシリルプロピル アクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピル アクリレート、ビニル アセテート、ビニル ブチレート、ビニル安息香酸塩、ビニルクロライデ、ビニルフルオロライド、ビニルブリマイド、マレイン酸無水物、N-アリルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-アルキルマレイミド、N-ブチルiマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、ブタジエン,イソプレン,クロロプレン、エチレン、プロピレン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,3-ブタジエン、1,4-ペンタジエン、ビニルアルコール、ビニルアミン、N-アルキルビニルアミン、アリルアミン、N-アルキルアリルアミン、ジアリルアミン、N-アルキルジアリルアミン、アルキレンイミン、アクリル酸、アルキルアクリレートs、アクリルアミド、メタクリル酸、アルキルメタクリレート、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、スチレン、ビニルナフタレン、ビニル ピリジンニル、ビニルベンゼン、アミノスチレン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルビフェニル、ビニルアニソール、ビニルイミダゾリル、ビニルピリジニル、ビニルポリエチレングリコール、ジメチルアミノメチルスチレン、トリメチルアンモニウムエチル メタクリレート、トリメチルアンモニウムエチル アクリレート、ジメチルアミノ プロピルアクリルアミド、トリメチルアンモニウムエチルアクリレート、トリメチルアンモニウムエチル メタクリレート、トリメチルアンモニウム プロピル アクリルアミド、ドデシル アクリレート、オクタデシル アクリレート、またはオクタデシル メタクリレート モノマー、またはそれらの組み合わせ、の1つ以上を含む。
【0047】
幾つかの態様において、ポリマーはある特異性なモノマーおよびモノマーの組み合わせ、例えばタンパク質様組成に結合されて使用のためのような、種々の態様で結合に使用のためのモノマーから誘導されてよい。。そのような好ましいポリマーは以下に記述される。
【0048】
一般的に、ポリマーは、前述のモノマーの種類を含む官能性化モノマーから誘導される繰り返し単位を含んでもよい。ここで用いられるような官能性化モノマーは、遮蔽(保護)または非遮蔽(非保護)官能基、例えば、他の成分が次の重合に共有結合性に取付けることができる基を含んでもよい。そのような基の非限定的な例は、第1級アミノ基、カルボキシル、チオール、ヒドロキシル、アジドおよびシアノ基である。多くの適切な遮蔽基が利用できる(例えばT.W. Greene & P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis (2nd edition) J. Wiley & Sons, 1991. P. J. Kocienski, Protecting Groups, Georg Thieme Verlag, 1994参照)。
【0049】
ここで用いられるとき、「ブロック」コポリマーは構成上またはモノマー単位の1つ以上の下位の組み合わせを含む構造を指す。幾つかの態様において、ブロックコポリマーはジブロックコポリマー、トリ−ブロックコポリマーまたは高次元ブロックコポリマーである。例えばジブロックコポリマーは、2つのブロック;モノマーの一般式は次式: [Aa/Bb/Cc/…]m−[Xx/Yy/Zz/ …]nにより模式的に表わされ、ここで各字句は構造またはモノマー単位のためにあり、かつ構造単位への横に記した文字は特定のブロックにおけるその単位のモル分数を表わし、3つの点は各ブロックで多くの(僅かの)構造単位が存在してもよいことを示し、かつmおよびnはジブロックコポリマー中の各ブロックの分子量(または重量割合)を示す。そのような模式的な表現による示唆する場合、ある例においては、各構成単位の数および性質は、独立して各ブロックについて制御される。模式的表示は、ブロックの各々における構成単位の数の間または構成単位の異なる出遺伝子の数の間の如何なる関係を意味するものでもなく、また解釈されるべきものでもない。また、模式的表示は、特定のブロックの構成単位の何れの特定の数または配列を記載することを意味するものでもない。各ブロックにおいて、構成単位は、別の状態であるべきであると明確に記載されていない限り、単に無作為、交互に無作為に、規則的に交互に、規則的なブロックまたは無作為なブロック構成単位が配置されてよい。全く無作為な配置は、例えば、x-x-y-z-x-y-y-z-y-z-z-z…という形態を有してよい。交互に無作為な配置は、例えば、x-y-x-z-y-x-y-z-y-x-z…の形態、例えば、規則的に交互な配置は、x-y-z-x-y-z-x-y-z…の形態を有してよい。例えば、規則的なブロック配置は、以下の一般的な配置:…x-x-x-y-y-y-z-z-z-x-x-x…を有してよく、一方で、例示的な無作為なブロック配置は、一般的な配置:x-x-x-z-z-x-x-y-y-y-y-z-z-z-x-x-z-z-z-…を有してよい。グラジエントポリマーにおいて、1以上のモノマー単位の含有量が、勾配のある様式でポリマーのα末端からω末端まで増加または減少する。一般的な例に先駆けるものがない中で、個々の構成単位またはブロックの特
定の並列、またはブロックにおける構成単位の数、またはブロックの数は、それらが何れの様式にあるかを解釈されるべきものではなく、それらは本発明のポリマー担体を形成するブロックコポリマーの実際の構造を制限するものであると解釈されるべきものではない。
【0050】
ここで用いられるように、構造単位を囲む角括弧は意味せず、かつ構造単位それ自身がブロックを形成することを意味すると解釈されるべきではない。すなわち、四角い角括弧内の構造単位はブロック内の他の構造単位と幾つかの方法、すなわち純粋不規則、交互不規則、通常交互、通常ブロックまたは不規則ブロック構成で組合すことができる。ここに記述されるブロックコポリマーは、任意、交互、漸次または不規則のブロックコポリマーである。
【0051】
単一もしくは単一ブロックポリマーは単一重合工程の合成生産物である。用語単一ブロックポリマーはランダムコポリマー(すなわち、1型以上のモノマーの重合生産物)およびホモポリマー(すなわち、単一型のモノマーの重合生産物)のようなコポリマーを含む。
【0052】
ポリマーを製造する方法が以下に記載され、それに限定するものではないが、それらはここで記述されるポリマーのために一般的に適用できる。
【0053】
膜不安定化ポリマー
ここに用いられているように、「膜不安定化」または「細胞膜の不安定化」はポリマーの組み合わせもしくは独立、またはここで記述されるミセル集合における微小細胞または生体分子を容認するように細胞膜構造(例えばエンドソマール膜)における浸透性変化を誘発するため、細胞に入れるかまたは細胞小胞(例えばエンドソーム)を出すため、の1つ以上の膜不安定化ポリマーを含む構成物の能力を指す。この浸透性変化は、例えば赤血球細胞溶解(溶血)を、または核酸もしくは細胞エンドソーム区画からのペプチド分子の放出で測定するアッセイにおけるポリマー活性によって機能的に規定できる。完全膜破壊は、エンドソームの溶解で起こると思われる機構を指す。
【0054】
ある態様において、ポリマーは膜不安定化ポリマーを含む少なくとも1つ以上のポリマー(例えばブロックコポリマーのブロックのような領域またはセグメントを含む)であるかまたは含んでもよい。他の態様において、ポリマーは少なくとも1つの膜分裂的ポリマーであるか、もしくは含んでもよい。ここに供給される好ましいポリマーは、非限定的な例として、細胞外膜、リポソームまたは赤血球細胞のような細胞膜不安定化ポリマー(例えば分裂的細胞膜である)であってよい。好ましくは、ある例において、ここに記述されるポリマーは細胞膜との接触であり、それは膜を分裂し、細胞内環境に侵入する。特別な態様において、ここに供給されるポリマーは溶血性である。特別な態様において、ここに供給されるポリマーはエンドソームである。
【0055】
膜不安定化もしくは膜分裂的なポリマーは、所定のpHで膜不安定化活性または膜分裂活性を有するpH感応ポリマーであってよい。幾つかの態様において、ここに供給される膜不安定化ポリマー(例えばコポリマー)または膜不安定化ブロックコポリマーは、エンドソームpHで膜不安定化(例えば水性媒体中で)である。幾つかの態様において、膜不安定化ブロックコポリマーはpH約6.5以下、好ましくは約5.0から約6.5の範囲のpHで、または約6.2以下のpHで、好ましくは約 5.0から約6.2の範囲のpHで、または約6.0以下のpHで、好ましくは約5.0から約6.0の範囲のpHで膜不安定化である。
【0056】
好ましくは、各々の場合において、膜不安定化ポリマーはポリマーの所望量(例えば濃度)で膜不安定化活性または膜分裂的活性を有することができる。ポリマーの膜不安定化または膜分裂的特性は当該技術において知られる適切なアッセイによって測定できる。例えば、ポリマーの膜不安定化活性または膜分裂的活性は赤血球細胞溶血アッセイのような生体外細胞アッセイで測定できる。エンドソームポリマー活性は、生体外細胞アッセイで測定できる。
【0057】
一般的に、膜不安定化ポリマーは特異性特性を有するモノマー残基で構成される。アニオン性モノマー残基は、プロトン化が可能なアニオン種を含む、帯電されるかまたはアニオンに帯電可能な種を含む。アニオン性モノマー残基は7.2-7.4の概ね中性のpHでアニオンであってよい。カチオン性モノマー残基は、脱プロトン化が可能なカチオン種を含む、帯電されるかまたはカチオンに帯電可能な種を含む。カチオン性モノマー残基は、7.2-7.4の概ね中性のpHでカチオンであってよい。疎水性モノマー残基は疎水性種を含む。親水性のモノマー残基は、親水性種を含む。
【0058】
好ましくは、この点において例えばポリマーは疎水性である少なくとも1つのポリマー鎖であるかまたは含んでもよい。好ましくは、この点において、ポリマーは複数のアニオン性モノマー残基を含む少なくとも1つのポリマー鎖であるか、または含んでもよい。この点において、例えばポリマーは、(i)疎水性種を有する複数の疎水性モノマー残基、および(ii)概ね中性のpHで好ましくはアニオンであってよい複数のアニオン性モノマー残基を含む少なくとも1つのポリマー鎖であるか、または含むことができ、かつエンドソ−ムpHまたは弱酸性のpHで基本的に中性もしくは非帯電である。
【0059】
そのような前述の態様において、ポリマーは複数のカチオン種をさらに含んでもよい。したがって、例えばポリマーは複数のアニオン性モノマー残基(例えば概ね中性のpHでアニオンである種を有する)、および複数の疎水性モノマー残基(例えば疎水性種を有する)、および任意の複数のカチオン性モノマー残基(例えば概ね中性のpHでカチオンである種を有する)を含む少なくとも1つのポリマー鎖であるか、または含んでもよい。そのような態様において、さらに以下に議論されるように、ポリマーは調節される帯電、好ましくは均衡される帯電−帯電で基本的に総合的に中性である、少なくとも1つ以上のポリマー鎖であるか、または含んでもよい。
【0060】
幾つかの態様において、膜不安定化または膜不安定化ポリマーはブロックコポリマーであることができ、かつ膜不安定化セグメント(例えばポリマーのブロックもしくは領域)を含んでもよい。膜不安定化セグメントは複数のアニオン性モノマー残基(例えば概ね中性のpHでアニオンである種を有する)および複数の疎水性モノマー残基(例えば疎水性種を有する)、および任意の複数のカチオン性モノマー残基(例えば概ね中性のpHでカチオンである種を有する)を含んでもよい。そのような態様において、セグメント(例えばブロックまたは領域)は結合で考慮される疎水性であってよい。そのような態様において、ブロックコポリマーは親水性セグメントをさらに含んでもよい。
【0061】
一般的に、非限定的な例のように、組成はブロックコポリマーを含むポリマーを含むことができ、ここでブロックコポリマーは少なくともポリマー鎖が膜不安定化ポリマー(例えばエンドソ−ム膜不安定化ポリマーのような)であるか、または含むので、1つ以上のポリマー鎖(例えば各々のそのような鎖はポリマーブロックを規定するので)を含む。例えば、1つの方向付けにおいて、ブロックコポリマーはコポリマーの第1ブロックAを規定する第1のポリマー鎖およびコポリマーの第2のブロックBを規定する第2の膜不安定化ポリマーを好ましくは含んでもよい。例えば、ブロックコポリマーは親水性である、コポリマーの第1ブロックAを規定する第1のポリマー鎖、を含むことができ、(i)複数の疎水性モノマー残基、および(ii)エンドソームpHで中性または非帯電である血清生理的pHにてアニオンである複数のアニオン性モノマー残基を含む、コポリマーの第2のブロックBを規定する第2の膜不安定化ポリマーを含んでもよい。
【0062】
本発明の幾つかの態様において、ポリマーはポリマー鎖の膜不安定化または膜不安定化活性を増大するために適合される割合で複数のアニオン性モノマー残基、複数の疎水性モノマー残基および任意の複数のカチオン性モノマー残基を含む少なくとも1つのポリマー鎖であるか、または含んでもよい。例えば限定せずにそのような態様において、pH7.4で疎水性の種:(アニオン+カチオン)種の比は約1:2から約3:1の範囲であり、およびアニオン種:カチオン種の比は約1:0 から約1:4の範囲である。他のそのような態様において、pH7.4で疎水性種:(アニオン+カチオン)種の比は約1:1から約2:1の範囲であり、およびアニオン種:カチオン種の比は約4:1から約1:4の範囲である。
【0063】
一般的に、ポリマーは例えば疎水性モノマー残基をアニオン性モノマー残基およびカチオン性モノマー残基の両方と共に含む、帯電を調節される少なくとも1つ以上のポリマー鎖であるか、または含んでもよい。アニオン性モノマー残基とカチオン性モノマー残基の相対比は、所定の全体帯電特性を達成するために制御できる。好ましい態様において、例えばそのようなポリマーまたはポリマー鎖は帯電を均衡でき−生理的pH(例えばpH7.2 から7.4)にて水性媒体で中性全体的帯電を本質的に有する。
【0064】
少なくとも1つのブロックが膜不安定化ポリマーであるか、または含むブロックコポリマーを含む態様は、ブロックコポリマーの追加ブロックとしての1つ以上のポリマー鎖をさらに含んでもよい。一般的に、そのようなさらなるポリマーブロックは狭義に重要ではなく、親水性、疎水性、両親媒性であり、かつ各場合において、全体的な帯電特性で中性、アニオン性またはカチオン性である、ポリマー鎖であるか、または含んでもよい。
【0065】
本発明の態様において、ポリマーは1つ以上の追加構成成分および/または本発明の化合物または成分の機能特徴を促進するために適合されるポリマー鎖であるか、または含んでもよい。例えば、そのようなポリマー鎖は親和性作用物質または遮蔽剤に共有結合性に結合、直接的に結合または間接的に結合するために適合される末端官能基(例えばポリマー鎖のアルファ末端またはオメガ末端上)を含んでもよい。さらに、或いは、そのようなポリマー鎖は薬剤に結合するために適合されるペンダント官能基を有する1つ以上のモノマー残基を含んでもよい。そのような結合可能なモノマー残基は、親和性作用物質、遮蔽剤または生体分子剤に共有結合性に、直接的にまたは間接的に結合するために利用できる。さらに、或いは、そのようなポリマー鎖は遮蔽種を有する1つ以上の残基を含んでもよい。例えば、遮蔽モノマー残基は、遮蔽成分を含む重合モノマーを含む重合反応から直接的に誘導できる。遮蔽剤は、ポリエチレングリコール モノマーおよび/またはポリマーを含む。さらに、或いは、そのようなポリマー鎖は2つ以上のペンダント官能基、ポリマー鎖間を架橋するために適切な、を有する1つ以上のモノマー残基を含んでもよい。そのような架橋モノマー残基は、多官能(例えば二官能)か強モノマーを含む1つ以上の重合モノマーを含む重合反応のから直接的に誘導されるような、架橋ポリマーまたはポリマー鎖の構成成分であってよい。生体分子剤、ターゲティング剤、遮蔽剤接合成分および架橋成分を含む、そのような薬剤およびそのような成分の種々の付加的側面および特別な特徴はここで議論される。
【0066】
一般的に、ブロックコポリマーの1つ以上のブロックは2つ以上の組成上で別個のモノマー残基を含むランダムコポリマーブロックであってよい。一般的に、単一モノマー残基は異なる官能性−例えば疎水性種とともにアニオン種を含むことができ、または例えば疎水性種とともにカチオン種を含むことができ、または例えばアニオン種とともにカチオン種を含んでもよい、を含む多成分を含んでもよい。したがって、幾つかの態様において、ポリマーは疎水性およびアニオン種(概ね中性のpHである種)を含む、アニオン疎水性モノマー残基のようなモノマー残基を含むポリマーであるか、または含んでもよい。
【0067】
アニオン性モノマー残基は、プロトン化が可能なアニオン種を好ましくは含んでもよい。ポリマー鎖に組み込まれるような結合を熟孝の上で、そのようなアニオン性モノマー残基は7.0以上のpHで基本的にアニオンであり、かつ6.0以下のpHで基本的に中性(非帯電)であってよい。好ましくは、そのようなアニオン性モノマー残基は約5.5から約6.8の範囲の pKaを有することができる。アニオン性モノマー残基は、カルボン酸、スルホンアミド、ホウ酸、スルホン酸、スルフィン酸、硫酸、リン酸、ホスフィン酸、亜リン酸基およびそれらの組み合わせから選ばれるプロトン化が可能なアニオン種を有する複数のモノマー残基を独立して含んでもよい。好ましいアニオン性モノマー残基は(C2-C8) アルキルアクリル酸の重合から誘導できる。
【0068】
疎水性モノマー残基は帯電であっても、非帯電であってもよい。一般的に、幾つかの態様は中性(非帯電)疎水性モノマー残基を含む。幾つかの態様において、ポリマー鎖は、(C2-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、アリル、およびヘテロアリール(各々任意に置換されてもよい)から選択される疎水性種を有する複数のモノマー残基を含む。ある態様において、複数のモノマー残基は、(C2-C8)アルキルエタクリレート、(C2-C8)アルキル−メタクリレート、または(C2-C8)アルキル−アクリレート(各々任意に置換されてもよい)の重合体から誘導されてもよい。
【0069】
カチオン性モノマー残基は脱プロトン化が可能なカチオン種を好ましく含んでよい。ポリマー鎖に組み込まれるような集合体について考慮される場合、そのようなカチオン性モノマー残基は7.0以上のpHで実質的にカチオンであってよい。好ましくは、そのようなカチオン性モノマー残基は約6.5から約9.0の範囲のpKaを有してよい。カチオン性モノマー残基は、非環式アミン、非環式イミン、環式アミン、環式イミンおよび窒素含有ヘテロアリールからなる群から選択される脱プロトン化可能なカチオン種を有する複数のモノマー残基を含む。好ましいカチオン性モノマー残基は、各々任意に置換されてもよく、(N,N-ジ(C1-C6)アルキルアミノ(C1-C6)アルキルエタクリレート、N,N-ジ(C1-C6)アルキルアミノ(C1-C6)アルキル−メタクリレート、またはN,N-ジ(C1-C6)アルキルアミノ(C1-C6)アルキルアクリレートの重合から誘導されてもよい。
【0070】
特に、好ましいポリマーまたはポリマー鎖は式Iによって表わされる2つ以上のブロックを含むか、または実質的にそれらからなるブロックコポリマーであってよい;
【化1】

【0071】
ここで、
A0、A1、A2、A3およびA4は-C-C-、-C-、-C(O)(C)aC(O)O-、-O(C)aC(O)および-O(C)bO-からなる群からそれぞれ選択される、
aは 1 〜 4の整数の範囲である;および
bは 2 〜 4の整数の範囲である;
Y4は、水素、(1C-10C)アルキル、(3C-6C)シクロアルキル、O-(1C-10C)アルキル、-C(O)O(1C-10C)アルキル、C(O)NR6(1C-10C)およびアリルからなる群より選択され、幾つかが1つ以上のフッ素基で任意に置換される;
Y0、Y1およびY2は共有結合、(1C-10C)アルキル-、-C(O)O(2C-10C) アルキル-、-OC(O)(1C-10C) アルキル-、-O(2C-10C)アルキル- and -S(2C-10C)アルキル-、-C(O)NR6(2C-10C) アルキル-からなる群よりそれぞれ独立して選択される;
Y3 は共有結合、(1C-10C)アルキルおよび(6C-10C)アリルからなる群より選択され、ここでA1-A4の四価の炭素原子はR1-R5で十分に置換されない、およびY0-Y4は 水素原子の適切な数で完成される;
各R1、R2、R3、R4、R5およびR6 は、水素、-CN、アルキル、アルキニル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され、幾つかが1つ以上のフッ素基で任意に置換される;
Q0は生理的pHで親水性であり、かつ生理的pHで少なくとも部分的に正に帯電される(例えばアミノ、アルキルアミノ、アンモニウム、アルキルアンモニウム、グアニジン、イミダゾリル、ピリジル等);生理的pHで少なくとも部分的に負に帯電されが、低pHでプロトン化を果たす(例えばカルボキシル、スルホンアミド、ボロネート、ホスホネート、ホスフェイト等);生理的pHで本質的に中性(または非帯電)である(例えばヒドロキシ、ポリオキシルアルキル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオールなど);生理的pHで少なくとも部分的に双性イオン(例えば生理的pHでリン酸塩基およびアンモニウム基を含むモノマー残基);結合できるまたは官能化できる残基(例えば反応性基、例えばアジド化合物、アルキン、スクシイミドエステル、テトラフルオロフェニルエステル、p−ニトロフェニルエステル、ピリジル ジスルフィド等)である残基からなる群から選択される残基である;
Q1は、生理的pH で親水性であり、かつ生理的pHで少なくとも部分的に正に帯電される(例えばアミノ、アルキルアミノ、アンモニウム、アルキルアンモニウム、グアニジン、イミダゾリル、ピリジル等);生理的pHで少なくとも部分的に負に帯電されが、低pHでプロトン化を果たす(例えばカルボキシル、スルホンアミド、ボロネート、ホスホネート、ホスフェイト等);生理的pHで本質的に中性(例えばヒドロキシ、ポリオキシルアルキル、ポリエチレングリコール,ポリプロピレン グリコール、チオール等);または生理的pHで少なくとも部分的に双性イオン(例えば生理的pHでリン酸塩基およびアンモニウム基を含むモノマー残基)である残基である;
Q2は、これらに限定されるものではないが、アミノ、アルキルアミノ、アンモニウム、アルキルアンモニウム、グアニジン、イミダゾリル、ピリジルを含む、生理的pHで少なくとも部分的に正に帯電される残基である;
Q3は、これらに限定されるものではないが、カルボキシル、スルホンアミド、ボロネート、ホスホネートおよびホスフェイトを含む、生理的pHで少なくとも部分的に負に帯電されが、低pHでプロトン化を果たす残基である;
mは、0〜1.0(例えば0〜約0.49)の範囲の数である;
nは、0〜1.0(例えば約0.51〜約1.0)の範囲の数である;
(m + n)の合計=1
pは、約0.1〜約0.9(例えば約0.2〜約0.5)の範囲の数である;
qは、約0.1〜約0.9(例えば約0.2〜約0.5)の範囲の数である;
rは、0〜約0.8(例えば0〜約0.6)の範囲の数である;
(p + q + r)の合計=1;
vは、約1〜約25 kDaの範囲である;および
wは、約1〜約50 kDaの範囲である。
【0072】
幾つかの態様において、pおよびqによって表されるモノマー残基の数または割合は互いに約30%以内、互いに約20%以内、互いに約10%以内などである。特別な態様において、pは本質的にqと同じである。ある態様において、少なくとも部分的に帯電種は一般的にわずかな量より多い帯電種を含み、例えば20% の残基が帯電され、30% の残基が帯電され、40% の残基が帯電され、50% の残基が帯電され、60% の残基が帯電され、70% の残基が帯電されるなどを含む。
【0073】
ある態様において、mは0、およびQ1は親水性、かつ生理的pHで本質的に中性(または非帯電)である残基である。幾つかの態様において、非帯電は例えば5%未満が帯電され、3%未満が帯電され、1%未満が帯電される等を本質的に含む。ある態様において、mが0およびQ1が親水性、かつ生理的pHで少なくとも部分的にカチオンである残基である。ある態様において、mが0およびQ1が親水性、かつ生理的pHで少なくとも部分的にアニオンである残基である。ある態様において、mが>0およびnが>1、Q0またはQ1の1つが親水性、かつ生理的pHで少なくとも部分的にカチオンである残基であり、残りのQ0またはQ1が親水性、かつ生理的pHで本質的に中性である残基である。ある態様において、mが>0およびnが>1、Q0またはQ1の1つが親水性、かつ生理的pHで少なくとも部分的にアニオンである残基であり、残りのQ0またはQ1が親水性、かつ生理的pHで本質的に中性である残基である。ある態様において、mが>0およびnが>1、Q1が親水性で、生理的pHで少なくとも部分的にカチオンである残基であり、かつQ0が結合できるかまたは官能化できる残基である。ある態様において、mが>0およびnが>1、Q1が親水性で、生理的pHで本質的に中性である残基であり、かつQ0がhconjugatableかまたは官能化できる残基である。
【0074】
この発明の非限定的なポリマーの例は、1つ以上の対イオンを任意に有する化合物1で表されるランダムコポリマーであるポリマー鎖であるか、または含んでもよい。
【化2】

【0075】
化合物1の構成単位は、それぞれ次に表される重合モノマーN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA or "D")、プロピルアクリル酸 (PAA or "P")およびブチルメタクリレート (BMA or "B")から誘導できる。
【化3】

【0076】
化合物1で表されるポリマー鎖の場合、p、qおよびrはポリマー鎖内の各構成単位のモル区分を表し、かつ以下に記述する値を有することができる。
【0077】
ポリマーは化合物1の鎖であってよいか、またはブロックコポリマーの1つとしての化合物1の鎖を含んでもよい。例えば、1つの態様において、ポリマーは膜分解ポリマーブロックおよび1つ以上の追加ブロックとしての化合物1を含むブロックコポリマーであってよい。例えばジブロックコポリマーは、[ A ]v- [1 ]w、ここで[ A ]は第2のブロック(例えば親水性ブロックまたは両新媒性ブロック)を表し、および英字vおよびwはコポリマーにおけるそれぞれのブロックの分子量を表す、によって表すことができる。
【0078】
例えば、ポリマーは2つ以上のブロックを有するブロックコポリマーを含み、次のように表される構造(適切な対イオンを持つ)を有するブロックを含んでもよい。
【化4】

【0079】
化合物2の構成単位は、重合モノマーO-(C1-C6 アルキル)ポリエチレングリコール−メタクリレート (PEGMA)(示されるように第1のブロック)から、および化合物1(示されるように第2のブロック)に関連して前述のような重合モノマー DMAEMA、PAAおよびBMAから誘導できる。英字p、qおよび rは第2のブロック(示すように)内の各構成単位のモル区画を表し、かつ以下の記述される値を有することができる。英字vおよびwは、ブロックコポリマーにおける各ブロックの分子量を表し、かつ以下の記述される値を有することができる。
【0080】
本発明の特に好ましいポリマーは、2つ以上のブロックを有するブロックコポリマーを含み、
【化5】

【0081】
ここで、Bはブチルメタクリレート残基である;Pはプロピルアクリル酸残基である;D、DMAEMAは各々ジメチルアミノエチルメタクリレート残基である;PEGMAはポリエチレングリコールメタクリレート残基(例えば化合物2または4-5 エチレン酸化物単位または7-8 エチレン酸化物単位のような1-20 エチレン 酸化物単位を有する)である;MAA(NHS)はメチルアクリル酸-N-ヒドロキシスクシンイミド残基である;HPMAはN-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド残基である;およびPDSMはピリジル ジスルフィド メタクリレート残基である、
のように表される構造を有するブロックを含んでもよい。
【0082】
一般的に、化合物1から9を含む各ポリマーの場合、各m、n、p、q、r、wおよびvは数である。好ましくは:
Pは、約0.1から約0.9 (例えば、約0.2から約0.5)までの範囲にある数である;
qは、約0.1から約0.9 (例えば、約0.2から約0.5)までの範囲にある数である;
rは、0から約0.8 (例えば、0から約0.6)までの範囲にある数である;
(p + q + r)の合計=1;
vは、約5から約25kDaまでの範囲にある;および
wは、約5から約50kDaまでの範囲にある。
【0083】
幾つかの特別な態様において、w:vの比は約1:1から約5:1までの範囲である。ポリマー1-9は、本発明に関連して用いるために適するポリマーの代表的な例である。ある優先すべき適用において、ポリマー PRx0729v6はポリマー P7v6と交互に用いられる。他のポリマーもまた用いるとができ、関連するポリマー(分子量および/またはモノマー残基比における変化のような)を構造的に含む。幾つかの態様において、第1のブロック(示すように)の構成単位は第1のブロック(示すように)を利用するために制御され、第1のブロックは中性(例えばPEGMA)、カチオン(例えばDMAEMA)、アニオン(例えばPEGMA-NHS、ここでNHSは酸またはアクリル酸を加水分解する)、両性(例えばPEGMA-NHS、ここでNHSは酸を加水分解する)、または双性イオン(例えばポリ[2-メタクリロイロキシ-2'トリメチルアンモニウムエチルホスフェイト])である構成単位であるか、または含む。幾つかの態様において、ポリマーは第1のブロック(示すように)におけるピリジル ジスルフィド官能性、例えば[PEGMA-PDSM]-[B-P-D]、ポリマー-siRNAを形成するためのチオールsiRNAのようなチオール生体分子剤と任意に反応できるか、またはされる、を含む。
【0084】
遮蔽/可溶化剤
一般的に、本発明の化合物の種々のポリマー(またはブロックコポリマーのブロックのような構成成分として含むポリマー鎖)は、1つ以上の遮蔽剤および/または可溶化剤を含んでもよい。遮蔽剤は、ポリマー鎖の可溶性を改良するために有効であり、かつ治療剤(例えばポリヌクレチオ、ペプチドなど)の立体遮蔽のために有効である。遮蔽剤はまたプラズマでの酵素消化作用に対する治療剤(例えばポリヌクレチオ、ペプチドなど)の安定性を増大するために有効である。遮蔽剤はまたある組成物(例えばポリヌクレチオを含む組成物)の毒性を低減するために有効である。幾つかの態様において、遮蔽剤は複数の中性親水性モノマー残基を含むポリマーであってよい。遮蔽ポリマーは、ポリマー末端を介するか、またはポリマーの1つ以上のモノマー残基のペンダント官能基を介して直接的にまたは間接的に、膜不安定化ポリマーに共有結合性に結合できる。幾つかの態様において、ポリマー鎖の複数のモノマー残基は遮蔽種を有することができ、好ましくは、そのような遮蔽種は重合モノマー(遮蔽モノマー残基から誘導される)からのペンダント成分である。例えば、ポリマーは遮蔽オリゴマーを含むペンダント基を有する複数のモノマー残基を含んでもよい。
【0085】
好ましい遮蔽/可溶化ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)オリゴマー(例えば20以下の繰り返し単位を有する)またはポリマー(例えば20を超える繰り返し単位を有する)であってよい。ある態様において、ブロックコポリマーの1つのブロックはポリエチレングリコール(PEG)オリゴマーまたはポリマー−例えばコポリマーの膜不安定化ブロックのアルファ末端またはオメガ末端に共有結合性に結合されるか、またはそれらを含んでよい。別の態様において、ポリエチレングリコール(PEG)オリゴマーは種を有する結合モノマー残基を介してポリマーに共有結合性に結合してよく、前記種はポリエチレングリコールオリゴマーまたはポリマーに直接的にまたは間接的に結合するために適切な官能基を含む。別の態様において、モノマー残基はモノマー(例えば前述のようなPEGMA)に対するポリエチレングリコールオリゴマーペンダントを含む重合モノマーから誘導されてよい。
【0086】
1つの一般的なアプローチにおいて、PEG鎖またはブロックは膜不安定化ポリマー鎖に共有結合性に結合される。そのような態様の場合、例えばPEG鎖またはブロックは約1,000〜約30,000までの範囲の分子量を有してよい。幾つかの態様において、PEGはコポリマーの第2のブロックとして(すなわち、そこに組み込まれて)有効である。例えば、PEGは膜不安定化ポリマーを含むブロックに共有結合性に結合される第2のブロックであってよい。幾つかの態様において、PEGはブロックコポリマー末端基、またはポリマー(例えばブロックコポリマー)の親水性セグメントもしくはブロック(例えば第2のブロック)内の修飾可能な基に接合するような、ポリマー化合物に存在する1つ以上のペンダント修飾可能な基に接合される。例として、コポリマーのブロックは式Vの繰り返し単位を有する遮蔽ポリマーであってもよく、またはそのような遮蔽ポリマーに接合されてもよい。
【化6】

【0087】
ここで、R1およびR2は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、および任意に置換されたC1-C3 アルキルからなる群から各々独立して選択され、かつ約1,500から約15,000の分子量を有する。
【0088】
別の一般的なアプローチにおいて、モノマー残基はPEGオリゴマーを含む重合モノマーから誘導され、例えばそのようなモノマー残基はポリマーに、または重合の間におけるブロックコポリマーの1つ以上のブロックに組み込まれてよい。好ましい態様において、モノマー残基は式Iのオリゴマーを含むペンダント基を有する重合モノマーから誘導できる。
【化7】

【0089】
ここで、R1およびR2は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、および任意の置換されたC1-C3 アルキルからなる群から各々独立して選択され、およびnは2から20の整数の範囲である。
【0090】
重合
一般的に、本発明の化合物の種々のポリマー(またはブロックコポリマーのブロックのような構成成分を含むポリマー鎖)は幾つかの適切な手法で製造されてよい。ここに供給されるポリマーを製造するために用いられる適切な合成方法はこれらに限定するものではないが、カチオン、アニオンおよびフリーラジカル重合を含む。
【0091】
好ましくは、前述のようなポリマーはフリーラジカル重合の手段によって調製される。フリーラジカル重合プロセスが使用される場合、(i)モノマー、(ii)任意に望ましいコモノマーおよび(iii)フリーラジカルの任意の源はフリーラジカル重合プロセスを起こすために提供される。幾つかの態様において、フリーラジカル源は任意であり、これは幾つかのモノマーは高温での加熱または光活性で自ら開始することができるからである。ある例において、重合混合物を形成した後、その混合物は重合条件に委ねられる。重合条件は、少なくとも1つのモノマーがここに記載されるように、少なくとも1つのポリマーを形成する条件である。そのような条件は適切な水準に任意に変化し、これらに限定するものではないが、温度、圧力、雰囲気、重合混合物に用いられる開始成分の割合および反応時間を含む。重合は、簡潔または幾つかの適切な溶媒で遂行され、かつ幾つかの適切な手法、例えば溶液、分散、懸濁、エマルジョンまたはバルクを含む手法でなすことができる。
【0092】
幾つかの態様において、発動因子は反応混合物に存在される。幾つかの適切な発動因子は、ここに述べられる重合プロセスにおいて役に立てば任意に利用される。そのような発動因子は、非限定的な例として、1つ以上のアルキル過酸化物、置換アルキル過酸化物、アリール過酸化物、置換アリール過酸化物、アクリル過酸化物、アルキルヒドロペルオキシド、置換アルキルヒドロペルオキシド、アリールヒドロペルオキシド、置換アリールヒドロペルオキシド、ヘテロアルキル過酸化物、置換ヘテロアルキル過酸化物、ヘテロアルキルヒドロペルオキシド、置換ヘテロアルキルヒドロペルオキシド、ヘテロアリール過酸化物、置換ヘテロアリール過酸化物、ヘテロアリールヒドロペルオキシド、置換ヘテロアリールヒドロペルオキシド、アルキル過酸エステル、置換アルキル過酸エステル、アリール過酸エステル、置換アリール過酸エステルまたはアゾ化合物を含む。特別な態様において、ベンゾイルペルオキシドおよび/またはAIBNが発動因子として用いられる。
【0093】
幾つかの態様において、重合は制御(リビング)ラジカル重合プロセスを用いて達成される。好ましい態様において、可逆的追加断片化チェーン移動(RAFT)アプローチはエチレンモノマーからポリマーを合成化するのに用いられる。RAFTはフリーラジカル変性チェーン移動プロセスを含む。幾つかの態様において、ここに記述されるポリマーを製造するためのRAFT手順は、チェーン移動剤(CTA)を使用する。一般的に、ポリマーまたはポリマー鎖(例えばポリマーブロック)は可逆的追加断片化チェーン移動剤の存在で重合を含む方法において誘導できる。そのようなRAFT剤は、一般的に式Y-RLを有し、ここでRLは脱離基であり、比較的に弱共有結合を介して典型的にチェーン移動成分Yに対して結合される。典型的に、Yはラジカル中間成分-Y-を形成し、これは(例えば、開始反応条件下の発動因子など、またはラジカル重合条件下でプロバゲイトポリマー鎖ラジカル、Pnなど)から、またはそれらの存在において発生される。
【0094】
一般的に好ましい態様において、チェーン移動剤(CTA)はチオカルボニルチオ成分を含んでもよい。例えば、CTAは活性基Zおよび脱離基-RLに共有結合性に結合されるチオカルボニルチオ成分-SC(=S)-を含んでもよい。そのようなCTAは、式RLSC(=S)Zを含む化合物によって例えば表わすことができる。種々のそのようなRAFTチェーン移動剤は制御(リビング)ラジカル重合に用いるために知られており、キサントゲン酸塩、ジチオカルバミン酸塩、ジオチオエーテルおよびリトリチオカルバミン酸塩を含む。例えば、Moad et al., The Chemistry of Radical polymarization, 2d Ed., Tables 9.10 to 9.18 at pp.508 to 514, Elsevier (2006), which is incorporated herein by reference参照。多くの態様において、チェーン移動剤(CTA)は微小分子チェーン移動剤(macro-CTA)であってよい。例えば、RAFTチェーン移動剤のチェーン移動成分Yはポリマー化合物を含むマクロCTAを形成するためにポリマー鎖、Pn、のω−末端に取り込むことができ、かつ式Pn-Yによって表わされる。(そのような場合において、ポリマー鎖Pnは微小分子鎖移動剤の脱離基-RLとして有効に機能させることができる)。したがって、ラジカル重合から誘導される本発明の化合物の背景において、-Yはチェーン移動残基であってよい。チェーン移動残基はチェーン重合条件下の制御(リビング)ラジカル重合から誘導できる。そのような制御ラジカル重合反応は、RAFT剤(例えばY-RL)またはマクロCTA(例えばPn-Y)のようなチェーン移動剤(CTA)の存在で例えば達成されてよい。チェーン移動残基Yはそのω−末端(マクロCTAを含む場合、チェーン伸展成分のリビング末端としてやはり指す)にポリマーを典型的に共有結合性に結合される。チェーン移動残基-Yは、式-SC(=S)Z 、ここでZは活性基である、を有するチオカルボニルチオ成分であることが好ましい。
【0095】
種々のアプローチが、チェーン移動残基Yを切断および/または誘導体化するために知られており、それによりチェーン移動残基誘導体が形成される。例えば、Moad et al., The Chemistry of Radical polymarization, 2d Ed., pp. 538 to 539, Elsevier (2006), which is incorporated herein by reference参照。同様にUS Patent No. 6,619,409 to Charmot et al., which discloses cleavage of the thiocarbonylthio control transfer agent参照。誘導体化チェーン移動残基は、架橋成分を任意に介して、1つ以上の生体分子剤(例えば、1つ以上の親和性作用物質)をポリマーに対して有効に結合するために用いられてよい。
【0096】
RAFT剤が好ましく使用されるが、他の制御(リビング)ラジカル重合法もまた本発明に関して適切である。例えば、Moad et al., The Chemistry of Radical polymarization, Elsevier (2006), which is incorporated herein by reference参照。特に、原子移動ラジカル重合(ATRP)および安定フリーラジカル重合(SFRP)方法は適切である。Moad et al., Id参照。
【0097】
一般に、ポリマーは低い多分散性指数(PDI) またはチェーン長の差を有してよい。多分散性指数(PDI)は幾つかの適切な手法、例えばポリマーの重量平均分子量をそれらの数平均分子量で除算することによって測定できる。1に近づく多分散性値はラジカルリビング重合を用いて達成可能である。これらに限定するものではないが、例えば、寸法排除クロマトグラフィ、動的光散乱、マトリックス支援レーザ脱離イオン化およびエレクトロスプレーマスクロマトグラフィなどの分子量および多分散性の測定方法が当該技術においてよく知られている。幾つかの態様において、ここに供されるポリマー化合物のブロックコポリマーは2.0未満、または1.5未満、または1.4未満、または1.3未満、または1.2未満の多分散性指数(PDI)を有する。
【0098】
一般的に、ここに記述される重合プロセスは幾つかの適切な溶媒またはそれらの混合物で生じる。適切な溶媒は、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール)、テトラヒドロフラン(THF)ジメチル スルフォキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、アセトニトリル、ヘキサメチルホスホラアミド、酢酸、ギ酸、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジオクサン、メチレンクロライド、エーテル(例えばジエチルエーテル)、クロロホルムおよびエチルアセテートを含む。1つの側面において、溶媒は水および水混合物およびDMFのような水混和性有機溶媒を含む。
【0099】
一般的に、ここに記述される重合プロセスは重合反応のために有効な温度で達成されてよい。温度は、他の反応側面、例えば溶媒、重合される(共重合される)モノマー(コモノマー)、チェーン移動剤、熱移動(発熱制御)、反応係数および反応熱力学を含み、これらに基づいて、およびこれらを熟考して変更してよい。典型的な温度範囲は、約2℃から約200℃、好ましくは約20℃から約110℃、および幾つかの態様において、約40℃から約90℃、または約50℃から約80℃の温度範囲を含む。
【0100】
一般的に、ここに記述される重合プロセスは重合反応のために有効な圧力で達成されてよい。一般に、反応圧力は厳格に重要なものではなく、約1atmの雰囲気圧力またはより高い圧力(例えば1 atmから約10 atmの範囲)またはより低い圧力(例えば1 atmを下回る)であってもよい。
【0101】
一般的に、ここに記述される重合プロセスは重合反応のために有効な反応雰囲気下で達成されてよい。例えば、重合は不活性ガス雰囲気(例えばAr、 N2)下、または雰囲気温度下で達成されてよい。
【0102】
一般的に、ここに記述される重合プロセスは重合反応のために有効なモノマーに対するチェーン移動剤(リビングチェーン移動成分または基)の種々のモル比で達成されてよい。例えば、重合は約1:1から約1:10、000、好ましくは約1:5から約1:5000、最も好ましくは約1:10から約1:2000の範囲のモノマーに対するチェーン移動剤(基)のモル比で達成されてよい。幾つかの態様において、そのようなモル比は約1:10から約1:1500の範囲にできる。
【0103】
一般的に、ここに記述される重合プロセスは溶媒中に約5重量%から約95重量%、好ましくは10重量%から約90重量%固体、および幾つかの態様において、約20重量%から約80重量%固体、各々の場合、溶液の相対総重量で、の範囲のモノマー濃度で達成されてよい。
【0104】
一般的に、ここに記載される重合プロセスは重合反応のために有効な発動因子に対するチェーン移動剤(リビングチェーン移動成分または基)の種々のモル比で達成されてよい。例えば、重合は約1:2から約50:1、好ましくは約1:1から約 40:1、および幾つかの態様において、約2:1から約30:1の範囲の発動因子に対するチェーン移動剤(基)のモル比で達成されてよい。
【0105】
一般的に、ここに記載される重合プロセスは、重合反応のために有効な種々の反応時間で達成されてよい。例えば、重合は約0.5時間から約96時間、好ましくは約1時間から約72時間、より好ましくは約1時間から36時間、および幾つかの態様において、約2時間から24時間、または約3時間から約12時間の範囲の反応時間期間に亘って達成されてよい。
【0106】
一般的に、当該技術において知られている前述の側面および他の要因は、目的の重合反応を達成ために用いられてよい。例えばMoad et al., The Chemistry of Radical polymarization, 2d Ed., Elsevier (2006), which is incorporated herewith in this regard参照。
【0107】
ポリマーは、標準的な化学結合技術によって二重特異性親和性作用物質に化学的に接合されてよい。ポリマーと二重特異性親和性作用物質との間の共有結合は非切断可能であってよく、または切断可能な結合が使用されてもよい。特に好ましい切断可能な結合は、細胞質の還元環境で解離するジスルフィド結合である。共有結合は、これらに限定されるものではないが、アミン-カルボキシルリンカー、アミン-スルフヒドリルリンカー、アミン-炭水化物リンカー、アミン-ヒドロキシルリンカー、アミン-アミンリンカー、カルボキシル-スルフヒドリルリンカー、カルボキシル-炭水化物リンカー、カルボキシル-ヒドロキシルリンカー、カルボキシル-カルボキシルリンカー、スルフヒドリル-炭水化物リンカー、スルフヒドリル-ヒドロキシルリンカー、スルフヒドリル-スルフヒドリルリンカー、炭水化物-ヒドロキシルリンカー、炭水化物-炭水化物リンカー、およびヒドロキシル-ヒドロキシルリンカーを含む化学的接合方法により達成される。接合体はまた、限定されるものではないが、ヒドロゾンおよびアセタール架橋を含む、pH感応結合およびリンカーで実施される。結合化学の多大な変化は当該技術で確立されている(例えばBioconjugation, Aslam and Dent, Eds, Macmillan, 1998 and chapters therein参照)。或いは、結合は標準配位化学、例えばタンパク質様実体と配位結合を形成するプラチナ錯体として、を用いて達成できる。例えば、US Patent No. 5,985,566参照。
【0108】
二重特異性ポリマー送達媒体は、検査試薬として生体外使用または検査試薬としてマウスもしくは小動物のいずれかのためにその第2の親和性作用物質を細胞に送達するために用いることができる。そのような試薬は、特異性ターゲットの抑制が細胞で特異性に好ましい効率を有することを示す、または選択ターゲットの抑制からもたらされる副作用もしくは毒性プロファイルを特性決定するおよび研究するために、ターゲット確認に有用であろう。二重特異性ポリマー送達媒体組成物は、作用を抑制するまたは作用を刺激するために、ヒトの特異性タンパク質の治療としてまた用いることができ、それによって疾病上体に影響を及ぼすために望ましい治療成果を達成する。また、本発明の組成はヒトの疾病状態の診断のための診断学として用いることができる。
【0109】
二重特異性ポリマー送達媒体は、多様性賦形剤のいずれか1つに製剤化でき、かつ幾つかの経路で送達でき、これらに限定されるものではないが、静脈内、腫瘍内、眼球内、吸入により、経口、皮下、頭蓋内により、またはカテテール、ポンプもしくは他の装置による何れかの経路を含んでよい。
【0110】
細胞情報送達タンパク質は細胞挙動の基礎を形成し、選択された情報送達経路に介在するための能力は多様性の疾病状態を処理するために望ましいであろう。本発明の組成物および方法によって影響を及ぼされる疾病はこれに限定するものではないが、それ自身癌細胞をターゲティングすることを介するか、または腫瘍間質細胞をターゲティングすることを介する癌;自己免疫性疾病;炎症;創傷治癒;アテローム性動脈硬化症;骨関節炎;CNS障害;および糖尿病および肥満症のような代謝性障害を含む。
【0111】
幾つかの態様において、本発明のポリマー担体はポリヌクレチドを送達するための他の技術に比例して優れた市場実行可能性を有し、これに限定するものではないが、次の繰り返し生体内投与である担体の減少免疫原性;送達媒体の多要素を組み立てるために要求され、良好の低コストをもたらす僅かな工程;およびバッチ間の生物物理学アッセイ結果(GPC, DLS, TEM)での5%未満, 10%未満または20%未満可変性を持つ繰り返し蜂の生産物を製造するための能力によって判定されるような、製造の再現性を含む。
【0112】
略語
本発明の記述全体を通して、種々の公知の頭字語および略語が使用されてモノマーまたはそのようなモノマーの重合に由来するモノマー残基について記述している。限定することなく、特に断りがない限り:「BMA」(または等価的な簡単な表記法としての英字「B」)はブチルメタクリレートまたはそれから誘導されるモノマー残基を表わす;「DMAEMA」(または等価的な簡単な表記法としての英字「D」)はN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートまたはそれから誘導されるモノマー残基を表わし;「Gal」はガラクトースまたはガラクトース残基を指し、ヒドロキシル−保護成分(例えばアセチル)またはそれのペグ誘導体(以下に説明するように)を任意に含む;HPMAは2-ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはそれから誘導されるモノマー残基を表わす;「MAA」はメチルアクリル酸またはそれから誘導されるモノマー残基を表わす;「MAA(NHS)」はメタクリル酸のN-ヒドロキシル-スクシンイミドエステルまたはそれから誘導されるモノマー残基を表わす;「PAA」(または等価的な簡単な表記法としての英字「P」は2-プロピルアクリル酸またはそれから誘導されるモノマー残基を表わす、「PEGMA」はペグメタクリルモノマー、CH3O(CH2O)7-8OC(O)C(CH3)CH2またはそれから誘導されるモノマーを指す。それぞれの場合において、何れかのそのような記号表示はモノマー(全ての塩またはそのイオン類似物を含む)またはモノマー(全ての塩またはそのイオン類似物を含む)の重合から誘導されるモノマー残基を示し、特定の指示された形態は当業者には文脈から明白である。
【0113】
次の例は、例証目的のためのものであり、本発明を限定すると解釈されるものではない。
【0114】
例1
[ras 二特性ポリマー送達媒体の構成]
第1の親和性作用物質、OKT 9は、ヒト1型トランスフェリン受容体に対するモノクローナル抗体であり、ATCCから入手可能である(CRL 8021C)。ハイブリドーマを培養し、増殖させ、分泌されたモノクローナル抗体を収穫し、タンパク質AまたはGクロマトグラフィを使用して精製する(Antibody Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。
【0115】
第2の親和性作用物質、Y13-259は、rasタンパク質に対するモノクローナル抗体であり(Furth et al., 1982)、ハイブリドーマとしてATCCから得られる(CRL 1742)。ハイブリドーマを培養し、増殖させ、分泌されたモノクローナル抗体を収穫し、タンパク質AまたはGクロマトグラフィを使用して精製する(Antibody Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。
【0116】
第1および第2の親和性作用物質を、ポリ(ポリアクリル酸)(PAA)−コ−ピリジルジスルフィドアクリレート(PDSA)、p(PAA-コ-PDSA)に対してポリマーのPDSA成分の間のジスルフィド交換によって共接合化し、遊離チオールをトラウツ試薬(Traut's reagent、2-イミノチオラン、Pierce Biotechnology, Rockford, IL)での反応により抗体に導入する。10mgの抗体を10倍モル濃度過剰なトラウツ試薬と接合緩衝液(0.1M リン酸緩衝液、pH 7.8、0.15M NaCl、5mM EDTA)中で1時間、室温で混合する。反応混合物を、セファデックスG-25を含むPD-10脱塩カラム(MWCO 5kD, GE Healthcare, Piscataway, NJ)の使用により精製し、修飾の程度をイールマンアッセイ(Ellman's assay、Pierce Biotechnology、Rockford, IL)により評価する。このアッセイのために、2.5倍過剰のp(PAA-コ-PDSA)を修飾タンパク質に急速に添加し、2時間、室温で、接合緩衝液中で反応させた。接合の程度を、ジスルフィド交換においてPDSAから放出されたピリジン-2-チオン基の343nm(A343)での吸収を測定することにより評価する。接合化の後、接合体をゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)の使用により精製する。
【0117】
p(PAA-コ-PDSA)の合成のために、0.007molのPAA(Gateway Chemical Technology, St. Louis, MO)、0.00011molのPDSAおよび0.000056molの遊離基開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、メタノールからの再結晶により精製)を5mlのフラスコ中で混合し、4回の凍結−減圧−解凍により脱気し、次に60℃で24時間反応させる。ポリマーを3mlのジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、500mlのジエチルエーテルでの3回の沈殿により精製する。ポリマー組成物をブルーカー・アバンス・300MHz測定器(Bruker AVance 300MHz instrument)および重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6, Fisher Chemical, Pittsburgh, PA)を使用するH1-NMRにより測定する。PDSA含有量をNMRと
過剰のジチオスレイトール(DTT)による還元に次いでポリマーから放出されるピリジン-2-チオンの343nmでの吸光度により測定する。分子量分布をGPC(Viscotek VE2001 サンプルモジュール、VE3580 RI 検出器、Waters Corp. ウルトラハイドロゲルカラム)により、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液、pH8中でポリ(エチレンオキシド)(PEO)標準物質(Polysciences, Inc., Warrington, PA)を使用して測定する。
【0118】
例2
[ras 二特性ポリマー送達媒体の活性の証明]
活性化されたN-ras遺伝子を有するHT1080細胞株(ATCCより入手可能)を、10%FCSおよび抗性物質を含むDMEM中で、37摂氏度で、空気中に10%の二酸化炭素の加湿した雰囲気において培養する。細胞を増殖し、60mmのプラスチック細胞培養用ペトリ皿当たりに100,000個の濃度で5mlの液体培地中で播種し、15〜18時間に亘りインキュベートし、次に、0、1、10、50および200μg/mlの二重特異性ポリマー送達媒体に8時間に亘り曝す。細胞を次に、プラスチック皿からトリプシン/EDTAで剥離させ、遠心し、培地に再懸濁し、血球計算盤を用いて計数し、20,000個/mlの濃度で、同じ濃度の二重特異性ポリマー送達媒体を含み、且つ60mmのペトリ皿に0.3%の寒天を含む以外は上記の通りの培地に播種する(5ml/皿)。
【0119】
細胞培養物を、14日間、37摂氏度で、空気中で10%の二酸化炭素の加湿した雰囲気においてインキュベートする。培養物を次に、皿毎の寒天コロニーの数を計数して、対照培養物と比較して評点する。
【0120】
例3
[p53 二重特異性ポリマー送達媒体の構成]
第1の親和性作用物質は、例1において上述したOKT9抗体である。第2の親和性作用物質、PAb421は、ヒトp53タンパク質のカルボキシ末端に対して方向付けられたモノクローナル抗体であり(Harlow et al, 1981)、SW480結腸直腸癌腫細胞に存在するp53の転写性欠損変異体を救出できる(Selivanova et al., 1997)。PAb421は、ハイブリドーマとして得られる。第1および第2の親和性作用性物質を発現するハイブリドーマを培養し、増殖させ、分泌されたモノクローナル抗体を収穫し、例1において上述した通りのタンパク質AまたはGカラムを使用して精製する。
【0121】
第1および第2の親和性作用物質を次に、p(PAA-コ-PDSA) ポリマーに対して共接合化し、例1において上述の通り精製する。
【0122】
例4
[p53 二重特異性ポリマー送達媒体の活性の証明]
SW480細胞をATTCから得る(CCL-228)。細胞を10%FCSおよび抗性物質を含むDMEM中で、37摂氏度で、空気中に10%の二酸化炭素の加湿した雰囲気において培養する。細胞を増殖し、コンフルエントに近くまで増殖し、100mm のプラスチック細胞培養用ペトリ皿当たりに15ml液体培地中に500,000個の細胞濃度で播種し、15〜18時間に亘ってインキュベートし、次にLipofectアミン (Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用して製造者の推奨に従って2μgの発現プラスミドPG-13 CATで形質移入する(Kern et al., 1992)。細胞をインキュベートし、液体培地中で0、1、10、50および200μg/mlの二重特異性ポリマー送達媒体に曝し、次に、収穫し、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)活性についてアッセイする。細胞溶解物を3回の凍結−解凍により調製し、標準14Cクロラムフェニコール薄層クロマトグラフィアッセイを使用して、対照培養物と比較して、透明な上清をCAT活性についてアッセイする。
【0123】
例5
[二重特異性融合タンパク質を用いるras二重特異性ポリマー送達媒体の作出と活性の証明]
本例における二重特異性親和性作用物質は、二重特異性抗体である。第1および第2の親和性作用物質は、標準的な組み換えおよびPCR技術により組み換えDNAクローンから構築する。第1の親和性作用物質は、トランスフェリン受容体に対して方向付けられたモノクローナル抗体ハイブリドーマOKT9に由来し、第2の親和性作用物質は、ハイブリドーマY13-259からのrasに由来し、両者共に例1に上述される。mRNAを、それぞれのハイブリドーマ細胞から単離し、アンチセンスオリゴdTまたは遺伝子特異的プライマーを用いて、cDNAに逆転写し、プラスミドベクターにクローニングする。クローンをシーケンシングして特性決定する。それらを次に標準プロトコールに従い操作し、従来記載された通りに短いペプチドリンカーにより細菌性または哺乳類性発現ベクターに分けられた各抗体の重鎖と軽鎖を組み合わせて、十分に確立されたプロトコールに従い哺乳類細胞に発現させ、精製する(Kufer et al., 2004; Antibody Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。得られた二重特異性親和性作用物質は、従って、トランスフェリン受容体細胞表面抗原に対して結合し、且つras細胞内ターゲットに対して結合する。
【0124】
二重特異性scFvフラグメントを次に、哺乳類の発現ベクターにクローニングし、ベクターをCHO細胞に形質移入する。CHO細胞をscFvの生産性についてスクリーニングし、得られた細胞を使用して二重特異性scFvを発現させ、それを次に、収穫し、標準のクロマトグラフィ技術により精製する(Antibody Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。
【0125】
精製された二重特異性scFvを次に、p(PAA-コ-PDSA) ポリマーに接合し、例1に上述した通りに精製し、例2に上述した通りに活性についてアッセイする。
【0126】
例6
[二重特異性融合タンパク質を用いるp53二重特異性ポリマー送達媒体の作出と活性の証明]
本例における二重特異性親和性作用物質は、二重特異性抗体である。第1および第2の親和性作用物質は、標準的な組み換えおよびPCR技術により組み換えDNAクローンから構築する。第1の親和性作用物質は、トランスフェリン受容体に対して方向付けられたモノクローナル抗体ハイブリドーマOKT9に由来し、第2の親和性作用物質は、ハイブリドーマPAb421からのp53に由来し、両者共に例1および3に上述される。mRNAを、それぞれのハイブリドーマ細胞から単離し、アンチセンスオリゴdTまたは遺伝子特異的プライマーを用いて、cDNAに逆転写し、プラスミドベクターにクローニングする。クローンをシーケンシングして特性決定する。それらを次に標準プロトコールに従い操作し、従来記載された通りに短いペプチドリンカーにより細菌性または哺乳類性発現ベクターに分けられた各抗体の重鎖と軽鎖を組み合わせて、十分に確立されたプロトコールに従い哺乳類細胞に発現させ、精製する(Kufer et al., 2004; Antibody Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。得られた二重特異性親和性作用物質は、従って、トランスフェリン受容体細胞表面抗原に対して結合し、且つp53細胞内ターゲットに対して結合する。
【0127】
二重特異性scFvフラグメントを次に、哺乳類の発現ベクターにクローニングし、ベクターをCHO細胞に形質移入する。CHO細胞をscFvの生産性についてスクリーニングし、得られた細胞を使用して二重特異性scFvを発現させ、それを次に、収穫し、標準のクロマトグラフィ技術により精製する(Antibody Engineering: A Practical Approach, McCafferty, Hoogenboom and Chiswell Eds, IRL Press 1996)。
【0128】
精製された二重特異性scFvを次に、p(PAA-コ-PDSA) ポリマーに接合し、例1に上述した通りに精製し、例4に上述した通りに活性についてアッセイする。
【0129】
以下の例においては、新規のジブロックコポリマー担体を記載し、これは、二重特異性ペプチドの細胞内送達を促進し、二重特異性ペプチドは、直接にポリマー−ペプチド接合により連結された2つの機能性ドメイン(1)細胞結合性およびエンドサイトーシス更新ドメイン(タンパク質伝達ドメイン、ペネトラチン(penetratin))と(2)医薬特性を有するプロアポトーシス性Bak-BH3ペプチドとを含む。ポリマーは、可逆的な付加断片化鎖導入(reversible addition fragmentation chain transfer、RAFT)を用いて製造し(Chiefari et al. Macromolecules. 1998;31(16):5559-5562)、末端機能性化、モジュラージブロックコポリマーを形成し、これは水溶解性および好ましい薬理特性を増強するN-(2-ヒドロキシプロピル) メタクリルアミド(HPMA)第1ブロックと、ペプチドエンドソーム逸脱のためのメカニズムを提供するジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、プロピルアクリル酸(PAA)およびブチルメタクリレート(BMA)から構成されるpH応答性ポリマーブロックとを組み込む。このポリマー性担体は、二重特異性ペプチドに対して還元性ジスルフィド結合により接合されており、送達においてポリマーがペプチドをサイトゾルに放出することを保証する。ポリマーはpH依存性膜不安定化する挙動を示し、ペプチド−ポリマー接合は、ペプチド細胞内送達と、下流のプロアポトーシス性生理活性とを顕著に増強することが示された。結果は、この多機能性ジブロックポリマー担体が細胞内ターゲットに対するペプチド薬物の送達を示すことを明らかにする。
【0130】
例7
[ポリ[HPMA]-b-[(PAA)(BMA)(DMAEMA)]の機能性設計]
図1は、ポリ[HPMA]-b-[(PAA)(BMA)(DMAEMA)]についてのポリマー設計を示す。多機能特性が、ピリジルジスルフィド末端機能性化CTAを使用するRAFTポリマー合成戦略を経て組み込まれ、水性溶液およびpH依存性膜不安定化特性を有するように作られたジブロック構造を形成した。図1で強調されたモノマー化学機能性が、各ポリマーブロックのために所望される性質を作出するために選択された。重要なことには、モジュール3は、生理的なpH(約50%のDMAEMAプロトン化と50%PAA脱プロトン化が予測される)で電荷中性に近づくように、且つより低いpH環境ではより疎水性で正電荷を有する状態への遷移を受けるように設計された。
【0131】
例8
[チオール反応性ポリマーの製造:トリチオ炭酸 1-シアノ-1-メチル-3-[2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)-エチルカルバモイル]-プロピルエステルエチルエステル (PyrECT)の合成]
4-シアノ-4-(エチルスルファニルチオカルボニル) スルファニルペンタン酸(ECT)前駆体を図2に示した通りに合成した。ピリジルジスルフィド機能性RAFT鎖転移剤(chain transfer agent、CTA)を、ECTをNHSに最初に変換し、次にピリジルジチオエチルアミンと反応することにより合成した。
【0132】
ECT(1.05 g、4 mmol)とN-ヒドロキシスクシンイミド(0.460 g、4 mmol)を100mLのクロロホルム中に溶解した。その混合物を次に0℃まで冷却し、その時点で、N,N' ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.865 mg、4.2 mmol)を添加した。その溶液を0℃で1時間に亘り維持し、次に、室温で22時間反応させた。その溶液を次に濾過し、ジシクロヘキシル尿素を除去し、その溶液を回転エバポレータにより濃縮した。得られた固体を次に減圧下で乾燥し、何れの更なる精製を行わずに使用した。NHS ECT(1.80g、5.0mmol)とピリジルジチオ-エチルアミン(0.90 g, 5.0 mmoL)を次に、別々に200および300mLのクロロホルムにそれぞれ溶解した。ピリジルジチオ-エチルアミンの溶液を次に、20分間隔で3つの部分として滴下により添加した。その混合物を次に、室温で2時間反応させた。溶媒除去後、2つの逐次的カラムクロマトグラフィ(Silica gel 60、Merk)を行い(エチルアセテート: ヘキサン 50:50; エチルアセテート: ヘキサン 70:30 v/v)、粘性の橙色固体を得た。1H NMR 200MHz (CDCl3, RT, ppm) 1.29-1.41 [t, CH3CH2S: 3H], 1.85-1.93 [s, (CH3)C(CN): 3H], 2.33-2.59 [m, C(CH3)(CN)(CH2CH2): 4H], 2.86-2.97 [t, CH2SS: 2H], 3.50-3.61 [t, NHCH2: 2H], 7.11-7.22 [m, Ar Para CH: 1H], 7.46-7.52 [m, Ar CH Ortho: 1H], 7.53-7.62 [br, NH: 1H], 7.53-7.68 [m, Ar meta CH: 1H], 8.47-8.60 [m, meta CHN, 1H]。
【0133】
[チオール反応性ポリマーの製造: ピリジルジスルフィド機能性ポリ[HPMA]-b-[(PAA)(BMA)(DMAEMA)のRAFT重合]
N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)のRAFT重合は、メタノール中で(50重量パーセントモノマー:溶媒)70℃で窒素雰囲気下で8時間2,2'-アゾ-ビス-イソブチリルニトリル(AIBN)をフリーラジカル開始剤として使用して行った。AIBNに対するCTAのモル比は1に対して10であり、CTAに対するモノマー比率は、100%で変換した場合に25,000g/モルの分子量が達成されるように設定された。ポリ(HPMA)マクロCTAをメタノールからジエチルエーテルへの反復沈殿により単離した。
【0134】
マクロCTAを減圧下で24時間乾燥し、次にジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、プロピルアクリル酸(PAA)およびブチルメタクリレート (BMA)のブロック共重合のために使用した。DMAEMA、PAAおよびMBAの等モル量([M]o / [CTA]o = 250)をN,N-ジメチルホルムアミド中に溶解されたHPMAマクロCTAに対して添加した(溶媒に対して25 wt % モノマーおよびマクロCTA)。ラジカル開始剤V70を、開始剤に対するCTA比が1対10で添加した。重合を、18時間30℃で窒素雰囲気下で進行させた。その後、得られたジブロックポリマーを50:50ジエチルエーテル/ペンタンへの4回の沈殿、沈殿の間のエタノールへの再溶解により単離した。生成物を次にジエチルエーテルで1回洗浄し、一晩真空内で乾燥させた。
【0135】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を使用して、DMF中のポリ(HPMA)マクロCTAとジブロックコポリマーの両方の分子量および多分散性(Mw/Mn, PDI)を決定した。分子量算定は、移動相として60℃で0.1wt%LiBrを含むHPLC等級DMFを使用するポリメチルメタクリレート標準品に対するカラム溶出時間に基づいた。トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)を使用して、ポリマー末端ピリジルジスルフェドを還元し、2-ピリジンチオンを放出した。実験的に決定したポリマー分子量および水性溶媒中で343nm(8080M-1cm-1)での2-ピリジンチオンのモル吸光係数に基づいて、末端基保存百分率をポリ(HPMA)マクロCTAおよびジブロックコポリマーについて決定した。
【0136】
例9
[ポリマーペプチド接合体]
ペプチド伝達ドメインペプチド移動配列との融合(アンテナペディアペプチド(Antp)配列としても知られている)を利用して、カルボキシ末端システイン残基(NH2-RQIKIWFQNRRMKWKKMGQVGRQLAIIGDDINRRYDSC-COOH)を含む細胞内在化形態のBak-BH3 ペプチド (Antp-BH3)の合成した。接合のために遊離チオールを保証するために、ペプチドを水中で再構成し、アガロースゲルに固定化されたジスルフィド還元剤TCEPで1時間に亘り処理した。還元されたペプチド(400μM)を次に24時間に亘り、5mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むリン酸緩衝液(pH7)中のピリジルジスルフィド末端機能性化ポリマーと反応させた。
【0137】
図3に示す通り、ピリジルジスルフィドポリマー末端基とペプチドシステインとの反応は、2-ピリジンチオンを作り出し、これは分光光度法により測定され、接合効率が特性決定できる。更にジスルフィド交換を検査するために、接合体をSDS-PAGE、16.5%トリシンゲル上で泳動した。並行して、一定分量の接合反応を、SDS-PAGEに先駆けて、固定化されたTCEPで処理し、還元環境においてポリマーからのペプチドの放出を検証した。
【0138】
接合反応は、ポリマー/ペプチド化学量1、2および5で行った。2-ピリジンチオン放出についての343nmでのUV分光光度による吸光度の測定は、それぞれ40%、75%および80%(モル2-ピリジンチオン/モルペプチド)の接合効率を示した。SDS PAGE ゲルを使用して、更にペプチド-ポリマー接合体の特性決定した。1のポリマー/ペプチドモル濃度比で、検出可能な量のペプチドが末端システインによるジスルフィド架橋を介するダイマーを形成した。しかしながら、ピリジルジスルフィドに対するチオール反応が好ましく、遊離ペプチド結合は、2または2よりも大きなポリマー/ペプチド比でもはや可視的ではなかった(図4A)。還元剤TCEPでの接合体の処理により、これらのサンプルにおけるペプチド結合の出現により示されるようなポリマー-ペプチドジスルフィド結合の切断が可能であった(図4B)。
【0139】
例10
[ポリ[HPMA]-b-[(PAA)(BMA)(DMAEMA)]のpH依存性膜不安定化特性]
エンドソーム活性についてポリマーポテンシャルを評価するために、膜破壊アッセイを用いて、図5に示すような脂質二重膜のpH依存性破壊を引き起こすポリマーの能力を測定した。ヒト全血を採取し、血漿を除去するために遠心分離した。残った赤血球を150mMのNaClで3回洗浄し、生理的(pH7.4)、初期エンドソーム(pH6.6)および後期エンドソーム(pH5.8)環境に相当するリン酸緩衝液に再懸濁した。ポリマー(1〜40μg/mL)または1%のTriton X-100を赤血球懸濁液に添加し、1時間に亘り37℃でインキュベートした。無処置の赤血球を遠心分離によりペレットにして、上清中のヘモグロビン含有量を541nmの吸収により測定した。溶血百分率をTriton X-100に対して測定した。ポリマー溶血は、1%v/vのTriton X-100に対して1〜40μg/mL の範囲の濃度で定量化された。この実験を3つの組について2回行い、同様の結果を得た。示されたデータは、3組で行った1実験±標準偏差で表す。
【0140】
赤血球細胞溶血は、生理的(pH7.4)、初期エンドソーム(pH6.6)および後期エンドソーム(pH5.8)環境を再現したpH値でのジブロックコポリマーのpH依存性膜破壊特性を示す。生理学pHでの顕著な赤血球細胞膜破壊は、40μg/mLのポリマー濃度でさえも観察されなかった。しかしながら、pHがエンドソームの値よりも低くなったとき、pH6.6に比較してpH5.8でより大きな膜破壊を伴う、溶血の顕著な増加が検出された。ポリマーの溶血性作用は、ポリマー濃度に関連し、pH5.8の緩衝液中で40μg/mLのポリマーでほぼ70%の赤血球溶血を伴った。生理学的pHにおける極僅かな活性を伴う、エンドソームpHでの膜不安定化に対する鋭い「切り替え(switch)」の形態は、非毒性の細胞内送達媒体としてのこのポリマーのポテンシャルを示す。
【0141】
例11
[HeLa細胞における細胞内送達の特性決定]
HeLas、ヒト子宮頸癌細胞(ATCC CCL-2)を、L-グルタミン、1%ペニシリン-ストレプトマイシンおよび10%のFBSを含む最小必須培地(MEM)中に維持した。実験に先駆けて、HeLaを顕微鏡観察のための8ウェルチャンバースライド(20,000 cells/well)と他のアッセイのための96ウェルプレート(10,000 cells/well)に一晩付着させた。ポリマー-ペプチド接合体およびコントロールを1%FBSを含むMEMに加えた。
【0142】
Antp (ペネトラチン)細胞貫通ペプチドを融合したBak-BH3ペプチドに対する生物接合に続いて、ポリマー細胞内送達ポテンシャルを評価した。Antpに対するBH3融合は細胞移行ドメインとして広範に試験され、アポトーシスシグナリング伝達を引き起こすことが既に分かっている(Li et al. Neoplasia (New York, N.Y. 2007;9(10):801-811)。しかしながら、ペプチド移行ドメインを介して送達される治療は、細胞内小胞内に隔離されるために有効性の邪魔になることに悩まされていると考えられている(Sugita et al. British Journal of Pharmacology. 2008;153(6):1143-1152)。
【0143】
インビトロ試験に続き、組み合わされたAntp-BH3 ペプチド細胞質送達とプロアポトーシス機能性がジブロックポリマーに対する接合により増大したことが示される。
【0144】
[接合体エンドソーム逸脱の顕微鏡分析]
アミン反応性 Alexa-488 スクシンイミジルエステルを1対1の割合でAntp-BH3ペプチドと無水ジメチルホルムアミド(DMF)中で混合した。未反応のフルオロフォアと有機溶媒をPD10脱塩カラムを使用して除去し、蛍光標識ペプチドを凍結乾燥した。Alexa-488標識Antp-BH3を上述のポリマーに接合した。遊離ペプチドまたはポリマー-ペプチド接合体をチャンバー式顕微鏡スライド上で増殖させたHeLaに対して25μM Antp-BH3の濃度ので添加した。細胞を15分間処理し、PBSで2回洗浄し、更に30分間に亘り新しい培地中でインキュベートした。サンプルを再度洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドで10分間、30℃で固定した。スライドをDAPIを含むプロロング・ゴールド・アンチフェイド(ProLong Gold Antifade)試薬でマウントし、蛍光顕微鏡を用いて撮像した。
【0145】
ペプチドエンドソーム逸脱におけるポリマー接合体の影響を試験するために、Alexa-488標識ペプチドを蛍光顕微鏡により分析した。蛍光標識ペプチドは、単独で、またはポリマー生物接合体として送達された。顕微鏡分析は、ポリマーの接合に続く、ペプチドの細胞内局在化において明らかな相違を示した(図6Aおよび6B)。ペプチド単独は、点状の染色を示し、これはエンドソームの区画化を示す。ポリマー-ペプチド接合体により送達されたサンプルは、分散した蛍光パターンを示し、これは細胞質の至るところへのペプチド拡散に一致した。ペプチド単独で送達されたサンプルにおける点状ペプチド染色を示す代表的な画像(図6A)と、ペプチド-ポリマー接合体の送達に続くサイトゾル内に分散されたペプチド蛍光の画像を示す(図6B)。サンプルは15分間25μMのペプチドで処理され、DAPI核染色に続いて顕微鏡試験のために準備された。
【0146】
[接合体の細胞毒性の測定]
腫瘍細胞死を引き起こすことについての生物接合体の有効性は、乳酸脱水素酵素(LDH)細胞毒性試験を使用して測定した。各時点の終わりに、細胞をPBSで2回洗浄して、次に細胞溶解緩衝液(100μL/well、20mMのTris-HCl、pH 7.5、150mMのNaCl、1mMのNa2EDTA、1mMのEGTA、1%のTriton、2.5mMのピロリン酸ナトリウム、1mMのβ-グリセロホスフェート、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム)で1時間4℃で溶解した。各サンプルからの溶解物の20μlを80μlまでPBSで希釈して、100μLのLDH基質溶液と混合することによりLDHを定量した。10分間のインキュベーションに続いて、490nmの吸光度を測定することによりLDHを測定した。生存率を無処理のサンプルに対する百分率で示した。
【0147】
ポリマー-ペプチド接合体の生物活性を評価するために、細胞毒性試験をHeLa子宮頸癌細胞において行った。Antp-BH3ポリマー接合体は、用量依存的に強力にHeLa細胞死を引き起こすことが明らかになった。50%未満のHeLa生存率が、10μMのペプチド接合体での処理の6時間後に検出され(図7A)、20μMのペプチド接合体を受けたサンプルは、4時間の暴露後に、存在したとしても生存細胞は殆ど見られなかった(図7B)。ペプチドまたはポリマー単独を受けたコントロールサンプルは、極僅かな処理効果が見られたのみであり、これらのコントロール処理群の間には差異はなかった。重要なことには、pH応答性ブロックを欠いたAntp-BH3ポリ(HPMA)接合体は、両方のコントロール群と同様であり、顕著な毒性を引き起こさず、更に、エンドソーム溶解性ブロックの機能性が認められた。
【0148】
[ミトコンドリア膜ポテンシャルのフローサイトメトリー評価]
ミトコンドリア膜ポテンシャルの喪失は、アポトーシスの公知の指標であり、これをJC-1染料を使用して評価した。JC-1は、サイトゾル内に、健康な細胞において分散されたときに緑色蛍光を示し、ミトコンドリア膜で赤色蛍光凝集を形成する(Cossarizza et al. Biochemical and biophysical research communications. 1993;197(1):40-45)。HeLaを10μMのペプチドまたは等量のポリマー担体と2時間に亘りインキュベートした。JC-1を最終濃度5μg/mLで添加し、15分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン処理し、フローサイトメトリー分析のために0.5%のBSAに再懸濁した。ミトコンドリアの消分極を示す細胞の百分率を、赤色蛍光について陰性である緑色蛍光細胞の数に基づいて定量した。ここで、赤色蛍光JC-1の顕著な喪失が集計され、それによりミトコンドリアの脱分極における喪失は、Antp-BH3ペプチドおよびポリマーペプチド接合体の両者の処理後に検出された(図8A)。ポリマーコントロールは、無処理の細胞と同様であり、一方で、Antp-BH3単独およびポリマー接合体はミトコンドリア極性の喪失を示す細胞の百分率においてそれぞれ4倍および10倍増大する結果となった。
【0149】
[カスパーゼ3/7活性アッセイ]
カスパーゼ3/7活性を、商業的に入手可能なアッセイキットを使用して測定した。このアッセイは、一旦酵素による切断されると蛍光性を発して、蛍光プレートリーダーを用いる相対的に酵素活性測定を可能にする前蛍光性カスパーゼ3/7を使用する。ここで、HeLaを、複合体サンプルと等量のポリマー単独に加えて、25μMペプチド(単独またはポリマー接合体として)と30分間インキュベートした。その後、カスパーゼ3/7蛍光発生性指標物を直接に各サンプルの培地に対して添加した。プレートを1時間振盪し、次に、蛍光プレートリーダーを用いて分析した。データは、無処理サンプルに対する百分率カスパーゼ活性として示した。
【0150】
プロアポトーシスシグナリング伝達を示すカスパーゼ3および7の活性は、これらのプロテアーゼに対して特異的な前蛍光性基質を使用して測定できる。図8B は、ポリマー単独を含むコントロールが、無処理の陰性コントロールに対して同等のカスパーゼ活性を示したことを表す。しかしながら、急速なカスパーゼ活性(約2.5倍)が、Antp-BH3 ペプチド単独、またはポリマー接合体に含まれた状態での処理の後に検出された。Antp-BH3単独またはポリマー接合体としてのAntp-BH3の同じ効果は、カスパーゼシグナリングが、ペプチド単独で処理されたことにより飽和していること、または他の陽性フィードバック機構がカスパーゼ活性状態において動揺の増幅のために存在することを示す。少なくとも、これらの結果は、ポリマーに対する接合の結果として、ペプチド誘導性カスパーゼ活性において立体障害または他の減少が存在しないことを示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞に対して薬剤を送達するための組成物であって、第2の親和性作用物質に共有結合性に連結された第1の親和性作用物質を含む二重特異性親和性作用物質と、pH応答性の膜不安定化ポリマーとを含み、前記第1の親和性作用物質は前記細胞の表面の分子に対して結合し、前記第2の親和性作用物質が細胞内ターゲットに対して結合する組成物。
【請求項2】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質および前記第2の親和性作用物質が単一ポリペプチド鎖に含まれる組成物。
【請求項3】
請求項1の組成物であって、前記二重特異性親和性作用物質が、抗体、抗体フラグメント、または抗体様分子を含む組成物。
【請求項4】
請求項1の組成物であって、前記二重特異性親和性作用物質が、単一タンパク質を含む組成物。
【請求項5】
請求項1の組成物であって、前記二重特異性親和性作用物質が、二重特異性scFvを含む組成物。
【請求項6】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質が、抗体、抗体フラグメントまたは抗体様分子である組成物。
【請求項7】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質が、小型分子である組成物。
【請求項8】
請求項7の組成物であって、前記小型分子が、葉酸またはラクトースおよびガラクトースを含むアシアロ糖タンパク質受容体のためのリガンドである組成物。
【請求項9】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質がペプチドである組成物。
【請求項10】
請求項9の組成物であって、前記ペプチドがRGDペプチドである組成物。
【請求項11】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質がオリゴサッカライドである組成物。
【請求項12】
請求項1の組成物であって、前記細胞の表面の分子が、抗原、受容体または脂質頭部を含む組成物。
【請求項13】
請求項12の組成物であって、前記細胞の表面の分子が、表面グリコサミノグリカンを含む組成物。
【請求項14】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質がタンパク質伝達ドメインを含む組成物。
【請求項15】
請求項14の組成物であって、前記タンパク質伝達ドメインが、アンテナペディア、TAT、VP22、トランスポータン、ペネトラチン、ポリアルギニン、そのフラグメント、またはその組み合わせを含む組成物。
【請求項16】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質がアプタマーである組成物。
【請求項17】
請求項1の組成物であって、前記第2の親和性作用物質が、抗体、抗体フラグメントまたは抗体様分子である組成物。
【請求項18】
請求項1の組成物であって、前記第2の親和性作用物質がペプチドである組成物。
【請求項19】
請求項18の組成物であって、前記ペプチドがBH3である組成物。
【請求項20】
請求項19の組成物であって、前記ペプチドがBAK-BH3である組成物。
【請求項21】
請求項1の組成物であって、前記第2の親和性作用物質がアプタマーである組成物。
【請求項22】
請求項1の組成物であって、前記細胞内ターゲットがDNA結合タンパク質である組成物。
【請求項23】
請求項22の組成物であって、前記細胞内ターゲットがp53である組成物。
【請求項24】
請求項1の組成物であって、前記細胞内ターゲットが膜受容体の細胞質ドメインである組成物。
【請求項25】
請求項1の組成物であって、前記細胞内ターゲットがキナーゼである組成物。
【請求項26】
請求項1の組成物であって、前記細胞内ターゲットがGTPaseである組成物。
【請求項27】
請求項26の組成物であって、前記細胞内ターゲットがrasである組成物。
【請求項28】
請求項1の組成物であって、前記細胞内ターゲットがホスファターゼである組成物。
【請求項29】
請求項1の組成物であって、前記細胞内ターゲットがタンパク質のBclファミリー内のタンパク質である組成物。
【請求項30】
請求項1の組成物であって、前記ポリマーがコポリマーである組成物。
【請求項31】
請求項30の組成物であって、前記コポリマーがブロックコポリマーである組成物。
【請求項32】
請求項30の組成物であって、前記コポリマーが、およそ中性のpHでアニオンである複数のアニオン種、および複数の疎水性種、およびおよそ中性のpHでカチオンである任意の複数のカチオン種を含む膜不安定化セグメントを含む組成物。
【請求項33】
請求項30の組成物であって、前記コポリマーが、
およそ中性のpHでアニオンである複数のアニオン種、および複数の疎水性種、および任意のおよそ中性のpHでカチオンである複数のカチオン種を含む膜不安定化セグメント;および
両親媒性または親水性セグメント;
を含む組成物。
【請求項34】
請求項1の組成物であって、前記ポリマーが複数のペンダント連結基を含む組成物。
【請求項35】
請求項34の組成物であって、少なくとも幾つかの前記複数のペンダント連結基が複数の第2の親和性作用物質に連結している組成物。
【請求項36】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質および第2の親和性作用物質がリンカーを介して互いに連結している組成物。
【請求項37】
請求項1の組成物であって、前記第1の親和性作用物質と前記第2の親和性作用物質とが切断可能なリンカーを介して互いに連結している組成物。
【請求項38】
細胞に対して治療剤または診断剤を送達するための組成物であって
複数のペンダント連結基を含むpH応答性の膜不安定化ポリマー;および
前記ポリマーに対して連結された第1の親和性作用物質と前記ポリマーに対して連結された第2の親和性作用物質とを含む二重特異性親和性作用物質;
を含み、
前記第1の親和性作用物質が前記細胞の表面の分子に対して結合し、前記第2の親和性作用物質が細胞内ターゲットに対して結合する組成物。
【請求項39】
請求項38の組成物であって、前記第1の親和性作用物質が、前記ポリマーの末端基に対して連結されている組成物。
【請求項40】
請求項38の組成物であって、前記第2の親和性作用物質が前記複数のペンダント連結基の1つに対して連結されている組成物。
【請求項41】
請求項38の組成物であって、更に、複数の第2の親和性作用物質を含み、ここにおいて、前記複数の第2の親和性作用物質が前記ペンダント連結基を介して前記ポリマーに対して連結されている組成物。
【請求項42】
請求項38の組成物であって、更に、複数の第1の親和性作用物質を含み、ここにおいて、前記複数の第1の親和性作用物質が前記ペンダント連結基を介して前記ポリマーに対して連結されている組成物。
【請求項43】
請求項38の組成物であって、前記第2の親和性作用物質が前記ポリマーに対して切断可能に連結されている組成物。
【請求項44】
請求項38の組成物であって、前記第2の親和性作用物質が抗体、抗体フラグメントまたは抗体様分子である組成物。
【請求項45】
請求項38の組成物であって、前記第2の親和性作用物質がペプチドである組成物。
【請求項46】
細胞における細胞内ターゲットの活性を変化させる方法であって、
検出可能な活性を有する細胞内ターゲットを含む細胞と、pH応答性の膜不安定化コポリマーおよび第2の親和性作用物質に対して共有結合性に連結された第1の親和性作用物質を含む組成物とを接触させることを含み、
ここにおいて、前記第1の親和性作用物質が、前記細胞の表面の分子に対して結合し、それによって、第2の親和性作用物質が前記細胞表面の近傍に運ばれ、それによって少なくとも前記第2の親和性作用物質のエンドサイトーシスが促進され;
前記pH応答性の膜不安定化ポリマーが酸性のpHで膜活動性になり、それによって少なくとも前記第2の親和性作用物質の前記細胞のエンドソーム区画からの放出が引き起こされ;および
前記第2の親和性作用物質が、前記細胞の内部への放出の後に前記細胞内ターゲットに結合し、それにより、前記細胞内ターゲットに対する前記第2の親和性作用物質の結合が、前記細胞内ターゲットの活性を検出可能に作動または拮抗する;
方法。
【請求項47】
治療学的ペプチドの細胞内送達を増強する方法であって、
第1の親和性作用物質と第2の親和性作用物質とを含む二重特異性親和性作用物質を準備することと、
ここにおいて、前記第1の親和性作用物質は前記細胞の表面の物質に対して結合し、前記第2の親和性作用物質は前記治療学的ペプチドを含み;
前記二重特異性親和性作用物質をpH応答性ジブロックコポリマーに対して共有結合性に連結して、ポリマー接合性二重特異性親和性作用物質を製造することと;
前記ポリマー接合性二重特異性親和性作用物質と細胞とを、前記細胞に対して前記第1の親和性作用物質を結合させる条件下で接触させることと;
ここにおいて、前記ジブロックコポリマーで処理された前記治療学的ペプチドの取り込みは、前記ペプチドが単独で前記細胞と接触したときの前記ペプチドの取り込みと比較して増強される;
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2012−507581(P2012−507581A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535577(P2011−535577)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/043852
【国際公開番号】WO2010/053596
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【出願人】(510302870)フェイズアールエックス,インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】