説明

二重配管構造及びこの構造に用いられる吸引口付き継手

【課題】内管部と外管部と隙間内の真空度が低下した場合、配管を交換することなく、内管部と外管部との間を容易に所定の真空度まで減圧することができて、メンテナンスが容易な二重配管構造及びこの構造に用いる吸引口付き継手を提供することを目的としている。
【解決手段】内管部1と、この内管部1との間に隙間を形成した状態で、内管部1に外嵌される外管部2aとを備えるとともに、外管部2aとなる2本の外管部材21を、この2本の外管部材21の間に介在する吸引口付き継手4を用いて気密に連結するとともに、吸引口付き継手4の吸引口42に設けられ真空バルブ5を設け、必要に応じて真空バルブ5を開放して吸引口42から前記隙間内の空気を真空ポンプで吸引排気することによって、隙間内を所望の減圧状態にできるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、給湯配管などの保温性や断熱性が要求される配管部位に好適に用いられる二重配管構造及びこの構造に用いられる吸引口付き継手に関する。
【背景技術】
【0002】
配管の断熱用途には、グラスウールやポリエチレン、ポリウレタン等の発泡体による保温材が広く使用されている。しかし、それらの材料においても、配管内の残り湯は数分で冷めてしまい、次回、数十分以上後に使用するに当たっては、お湯としての使用には温度が低下しすぎてしまう。その為、配管内の残り湯は、新たに給湯器から出湯されたお湯が出てくるまで廃棄されることになり、残り湯を加熱するために費やされたエネルギーおよびその水は無駄になってしまう。
この残り湯を出来るだけ長時間、使用可能な温度に保つ為には、従来の空気層を介在することによる断熱性能では限界があり、より高度な断熱性能が必要である。
【0003】
そこで、図7に示すように、流体が流れる内管部200と、この内管部が内装された外管部300とを備え、内管部200と外管部300との隙間400を減圧(真空)状態にして高断熱化をはかり、内管部200を流れる流体の保温性を確保するようにした二重管100が既に提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−204096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記二重管100の軽量化を図るために、内管部200及び外管部300、特に外管部を樹脂製の管材で形成した場合、樹脂はガス透過性があるため、真空状態を長期間保持することが難しい。したがって、真空度が低下した場合、二重管100全体を交換しなければならず、メンテナンスが煩雑であるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みて、内管部と外管部と隙間内の真空度が低下した場合、配管を交換することなく、内管部と外管部との間を容易に所定の真空度まで減圧することができて、メンテナンスが容易な二重配管構造及びこの構造に用いる吸引口付き継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の二重配管構造は、内管部と、この内管部との間に隙間を形成した状態で、内管部に外嵌される外管部とを備え、前記隙間が減圧状態になっている二重配管構造であって、前記外管部は、切れ目を有し、この切れ目に、前記内管部と前記外管部の隙間を減圧するための吸引口付き継手が介在していて、
前記吸引口付き継手は、切れ目を気密に囲むまたは切れ目を気密に連結する本体部と、この本体部から前記外管部の外方に突出するとともに前記隙間に連通する吸引口とを有し、
この吸引口には、開閉可能な弁が設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の二重配管構造は、主管接続部と複数の枝管接続部とを備えた枝管分岐用継手と、この枝管分岐用継手を、枝管分岐用継手との間に隙間を形成するように囲繞する枝管分岐用継手カバー部材と、枝管分岐用継手に接続されて、枝管分岐用継手とともに流路を形成する内管部と、前記枝管分岐用継手カバー部材と気密に連結されるとともに、前記内管部との間に前記隙間と連通する隙間を形成するように内管部を囲繞する外管部とを有する主管及び枝管とを備える二重配管構造であって、前記主管及び枝管のいずれかの外管部は、切れ目を有し、この切れ目に、前記内管部と前記外管部の隙間を減圧するための吸引口付き継手が介在していて、前記吸引口付き継手は、切れ目を気密に囲むまたは切れ目を気密に連結する本体部と、この本体部から前記外管部の外方に突出するとともに前記隙間に連通する吸引口とを有し、この吸引口には、開閉可能な弁が設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明において、切れ目とは、例えば、外管部となる外管部材を離間して配置して設けた構成や、外管部となる外管部材の一部に通気可能に設けた孔を意味する。
【0009】
上記請求項2の二重配管構造においては、主管及び枝管のいずれか1本に吸引口が設けられ、全ての主管及び枝管の内管部と外管部との隙間が枝管分岐用継手と枝管分岐用継手カバー部材との隙間に連通している構成とすることが好ましい。
【0010】
本発明において、上記吸引口付き継手は、特に限定されないが、外管部を、切れ目を形成するように離間して配置された2本の外管部材で形成する場合、内径が内管部の外径より大きく、外管部材の内径より小さいとともに、外径が前記外管部材の内径より大きいリング状本体と、前記リング状本体から両側に延出し、外管部材内に内装される内径が内管部材の外径より大きく、前記外管部材に嵌合される嵌合筒状部と、この嵌合筒状部に外嵌され、嵌合筒状部と外管部材の内壁面との間を気密状態にシールするシール部材とを有する本体部と、前記リング状本体を貫通するように設けられた吸引口と、を備える構成とすることが好ましい。
【0011】
上記吸引口付き継手の材質としては、特に限定されないが、嵌合筒状部によって、シール部材を外嵌部材の内壁面との間で圧縮状態に挟み込んで、気密状態を維持できれば、特に限定されないが、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料や、剛性の高いエンジニアリングプラスチックが好ましい。
【0012】
また、切れ目として孔が設けられた場合においては、例えば、吸引口付き継手として、サドル型電気融着分岐継手などを用いることができる。
すなわち、サドル型電気融着分岐継手の分岐管部が孔を臨み、サドル部が孔を囲むように配置してサドル部を電気融着すればよい。
【0013】
外管部を構成する外管部材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン製の蛇腹状断面の可撓管や、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管等の合成樹脂管、アルミ樹脂複合管等が挙げられる。
内管部を構成する内管部材としては、特に限定されないが、例えば、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管等の合成樹脂管、アルミ樹脂複合管等が挙げられ、給湯用として用いる場合、内外層が熱可塑性樹脂で形成され、中間層がアルミニウムで形成された複合管で形成されているアルミ樹脂複合管が好ましい。
【0014】
また、より断熱効果を高めるためには、外管部の内周面を、平滑面に形成された金属によって構成し、内管部側からの熱を外管部の内周面で反射させるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の請求項1の二重配管構造は、内管部と、この内管部との間に隙間を形成した状態で、内管部に外嵌される外管部とを備え、前記隙間が減圧状態になっている二重配管構造であって、前記外管部は、切れ目を有し、この切れ目に、前記内管部と前記外管部の隙間を減圧するための吸引口付き継手が介在していて、前記吸引口付き継手は、切れ目を気密に囲むまたは切れ目を気密に連結する本体部と、この本体部から前記外管部の外方に突出するとともに前記隙間に連通する吸引口とを有し、この吸引口には、開閉可能な弁が設けられているので、内管部と外管部と隙間内の真空度が低下した場合、配管を交換することなく、内管部と外管部との間を容易に所定の真空度まで減圧することができて、メンテナンスが容易となる。そして、定期的に上記メンテナンスを実施すれば、安定した断熱効果を維持することができ、優れた省エネ効果を発揮することができる
しかも、この二重配管構造は、外管部の切れ目部分に吸引口付き継手を介在させることによって吸引口を設けることができるとともに、形成された吸引口に設けた弁を開放して真空ポンプで内管部と外管部との隙間内を所定の真空度にできるので、予め二重管を工場等で作製しなくても、配管施工現場の状況にあわせて容易に現場で二重配管とすることができる。
【0016】
一方、請求項2の二重配管構造は、主管接続部と複数の枝管接続部とを備えた枝管分岐用継手と、この枝管分岐用継手を、枝管分岐用継手との間に隙間を形成するように囲繞する枝管分岐用継手カバー部材と、枝管分岐用継手に接続されて、枝管分岐用継手とともに流路を形成する内管部と、前記枝管分岐用継手カバー部材と気密に連結されるとともに、前記内管部との間に前記隙間と連通する隙間を形成するように内管部を囲繞する外管部とを有する主管及び枝管とを備え、前記主管及び枝管のいずれかの外管部は、切れ目を有し、この切れ目に、前記内管部と前記外管部の隙間を減圧するための吸引口付き継手が介在していて、前記吸引口付き継手は、切れ目を気密に囲むまたは切れ目を気密に連結する本体部と、この本体部から前記外管部の外方に突出するとともに前記隙間に連通する吸引口とを有し、この吸引口には、開閉可能な弁が設けられているので、主管及び枝管の内管部と外管部と隙間、枝管分岐用継手と枝管分岐用継手カバー部材との隙間内の真空度が低下した場合、配管を交換することなく、主管及び枝管の内管部と外管部との隙間、枝管分岐用継手と枝管分岐用継手カバー部材との隙間を容易に所定の真空度まで減圧することができて、メンテナンスが容易となる。そして、定期的に上記メンテナンスを実施すれば、安定した断熱効果を維持することができ、優れた省エネ効果を発揮することができる
しかも、この二重配管構造は、主管あるいは枝管の吸引口を、外管部の切れ目部分に吸引口付き継手を介在させることによって設けることができるとともに、形成された吸引口に設けた弁を開放して真空ポンプで内管部と外管部との隙間内を所定の真空度にできるので、予め二重管を工場等で作製しなくても、配管施工現場の状況にあわせて容易に現場で二重配管とすることができる。
【0017】
また、請求項2の二重配管構造において、主管及び枝管のいずれか1本に吸引口が設けられ、全ての主管及び枝管の内管部と外管部との隙間が枝管分岐用継手と枝管分岐用継手カバー部材との隙間に連通している構成とすれば、例えば、住戸内配管において、真空吸引作業が一箇所から実施できるようになり、真空度維持のメンテナンス性、および初期の施工性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の請求項1に記載の二重配管構造の第1の実施の形態をあらわす斜視図である。
【図2】図1の配管構造の端部の切欠断面斜視図である。
【図3】図1の配管構造の吸引口付き継手部分の切欠断面斜視図である。
【図4】本発明の請求項1に記載の二重配管構造の第2の実施の形態をあらわす端部斜視図である。
【図5】本発明の請求項2に記載の二重配管構造の第1の実施の形態をあらわす斜視図である。
【図6】図5の配管構造の枝管分岐用継手カバー部材取り付け前の状態をあらわす斜視図である。
【図7】従来の断熱二重管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図3は、本発明の請求項1の二重配管構造の第1の実施の形態をあらわしている。
【0020】
図1に示すように、この二重配管Aは、内管部1と、外管部2aと、端部キャップ3と、吸引口42と、弁としての真空バルブ5とを備えている。
内管部1は、図2及び図3に示すように、熱可塑性樹脂からなる内層11及び外層12と、アルミニウムからなる中間層13とを備えた複合管(例えば、積水化学工業社製のエスロン スーパーエスロメタックス)で形成されている。
【0021】
外管部2aは、2本の外管部材21が、切れ目を形成するように離間して配置され、吸引口付き継手4を介して連結することによって形成されていて、内管部1よりその長さが短くなっている。
すなわち、外管部材21は、図2に示すように、熱可塑性樹脂からなる外層21bと、アルミニウムからなる内層21aとを備え、内層21aの内周面が平滑にされている複合管(例えば、積水化学工業社製のエスロン スーパーエスロメタックスの内層を設けなかったもの)で形成されている。
【0022】
吸引口付き継手4は、図3に示すように、本体部としてのリング状本体41及び2つの嵌合筒状部43と、吸引口42と、2つのシール部材44とを備えている。
リング状本体41、嵌合筒状部43及び吸引口42は、アルミニウム製の成形品で形成されている。
【0023】
そして、リング状本体41は、その外径が外筒部材21の外径と略同じで、その内径が外管部材21の内径より小径で、内管部1の外径より大径のリング状をしている。
嵌合筒状部43は、リング状本体41の幅方向の両側からそれぞれ筒状に延出していて、その内周面がリング状本体41の内周面と面一になっているとともに、その外径が外管部材21の内径と略同じか少し小径となっている。
また、嵌合筒状部43の周面には、シール材嵌合溝43aが環状に設けられている。
【0024】
吸引口42は、リング状本体41の外周面から筒状に立ち上がり、リング状本体41の内周面まで貫通しているとともに、図示していないが、その周面に後述する真空バルブ5がネジ固定できるように、雄ねじが穿設されている。
シール材44は、EPDM等の一般に配管材のシール部材として用いられている合成ゴムでリング状に形成されていて、嵌合筒状部43のシール材嵌合溝43aに嵌合され、この嵌合状態でその外径が外管部材21の内径より大きくなっている。
【0025】
そして、吸引口付き継手4は、シール部材44を嵌合筒状部43のシール材嵌合溝43aに嵌合した状態で嵌合筒状部43を外管部材21の端部に嵌合させることによって、2つの外管部材21を気密に接続している。
【0026】
管端キャップ3は、筒状をしていて、熱伝導の小さい素材が好ましくポリプロピレン、塩化ビニル、ABS、フッ化ビニリデン、ポリエチレンや、ポリエ−テル・エ−テル・ケトン、ポリフェニレン・サルファイド等の合成樹脂で形成され、図2に示すように、外管部挿入部3aと、キャップ部3bとを備えている。
【0027】
外管部挿入部3aは、外径が外管部材21の内径と略同じで、内径が内管部2の外径と略同じの筒状をして、外周面の一部に環状溝31が形成され、この環状溝31にリング状パッキン(例えば、EPDM製)32が嵌合されている。
一方、キャップ部3bは、外管部挿入部3aに隣接して設けられたストッパ部33と、フランジ部34とを備えている。
【0028】
ストッパ部33は、外管部材21の内径より少し大きな外径をしている。
フランジ部34は、管端キャップ3の一端側が段状に拡径していて、この拡径部35にOリング(例えば、EPDM製)36が嵌合装着されている。
【0029】
そして、この管端キャップ3は、外管部2a内に内管部1を挿入し、内管部1の両端部がそれぞれ外管部2aの両端から突出する状態としたのち、外管部挿入部3a側を先頭にしてストッパ部33が外管部2aの端面に当接するまで外管部挿入部3aを外管部3内に挿入することで隙間5の両端を気密に封鎖するようになっている。
すなわち、外管部挿入部3aが外管部2a内に挿入されることによって、リング状パッキン32が、外管部2aの内周面に気密に密着するとともに、Oリング36が内管部1の外周面に気密に密着する。
【0030】
真空バルブ5は、吸引口42の雄ねじ部に端部に設けられた雌ねじ筒部を螺合することによって吸引口42に接続され、レバー51を操作することによって弁体(図示せず)を開閉して、吸引口42を開閉するようになっている。
上記のようになっているので、この二重配管Aの構造によれば、真空バルブ5に真空ポンプ(図示せず)につながる配管(図示せず)を接続し、真空ポンプを稼動させるとともに、レバー51を操作して弁体を開放位置にすることによって吸引口42を開放することによって容易に内管部1と外管部2aとの隙間の空気を排気し、隙間内を所望の真空度になるまで減圧することができる。
【0031】
そして、所定の真空度になれば、レバー51を操作して弁体を閉鎖位置にするとともに、真空ポンプを停止するようにすれば、内管部1と外管部2aとの隙間がある程度の期間所定の真空度に保持され、内管部1と外管部2aの外部とが、断熱性の高い状態に保持される。
したがって、例えば、このようにして内管部1と外管部2aとの隙間が減圧状態にされた二重配管Aを、内管部1の一方の突出部を給湯器(図示せず)の温水吐出口に接続するとともに、他方の突出部をシャワーの混合栓の温水配管接続口(図示せず)に接続するようにすれば、給湯を停止しても、内管部1内に残った残水が温度の長時間高い状態に保持される。
【0032】
一方、樹脂で形成された端部キャップ3から大気中の空気が上記隙間に入り込み、隙間内の真空度が低下し、断熱性能が低下してくると、上記と同様に、吸引口42から隙間内の空気を吸引し再び隙間内を減圧状態に戻すことによって断熱性能が高い状態に戻すことができる。隙間への空気の流入により断熱効果の低下してきた二重配管を交換するという手間がまったくいらない。すなわち、メンテナンスが容易となる。
【0033】
また、この二重配管Aは、外管部材21の内周面が平滑なアルミニウムで形成されているので、内管部1内を流れる流体の放射熱がこの外管部材21の内周面によって反射されて外部に放射されるのを防止でき、保温効果がより高い。
そして、内管部1及び外管部2aを構成する外管部材21が上記のような複合管で形成されているので、所望の位置で容易に曲げ加工することができ、施工現場の状況に合わせて自由に配管することができる。
【0034】
また、管端キャップ3が、ストッパ部33を備えているので、隙間内が減圧状態なって、管端キャップ3が隙間方向に引き込まれるが、ストッパ部33が外管部2aの端面に当接するので、管端キャップ3が、外管部挿入部31の挿入長さが所定の長さに規制される。したがって、管端キャップ3よって隙間の両端が確実に気密に封鎖される。
さらに、この二重配管Aは、内管部1の端部が端部キャップ3より突出しているので、
この内管部1の突出した部分を利用すれば、エルボやチーズなどの一般に使用されている継手を介して他の二重配管Aと接続することができる。
【0035】
図4は、本発明の請求項1の二重配管構造の第2の実施の形態をあらわしている。
図4に示すように、この二重配管Bは、外管部2bとして用いられる外管部材22がポリエチレン製の蛇腹断面のフレキシブル管であるとともに、端部キャップ8が、以下に記載する構造となっている以外は、上記二重配管Aと同様になっている。すなわち、図示していないが、この二重配管Bも両端に端部キャップ8を備え、外管部材22が吸気口付き継手4を介して接続されている。
【0036】
すなわち、端部キャップ8は、外管部材22の外径と略同じ外径をしたフランジ状のキャップ本体8aと、外管部挿入部8bとを備え、キャップ本体8aが外管部材22の端面に受けられるとともに、外管部挿入部8bに外嵌されたリング状シール材82が外管部材22の内壁面に設けられた凹溝に嵌り込むようになっている。
なお、図4中、81は外管部挿入部8bに設けられたシール材嵌合溝、85はキャップ本体8aの設けられた拡径部、86はOリング(例えば、EPDM製)である。
【0037】
この二重配管Bは、上記二重配管Aの外管部材21の内周面による放射熱の反射効果はあまり望めないものの、その他の効果は上記二重配管Aと同様の効果を備えている。しかも、外管部材22がフレキシブル管で形成されているので、より曲げ配管が容易となる。
【0038】
図5及び図6は、本発明の請求項2の二重配管構造の第1の実施の形態をあらわしている。
図5及び図6に示すように、この二重配管Cは、主管X、3本の枝管Y、枝管分岐継手6及び枝管分岐継手用カバー7とを備えている。
【0039】
主管Xは、一端に上記端部キャップ3が設けられておらず、この端部キャップ3が設けられていない側の内管部1の端部が後述する枝管分岐継手6のヘッダー部61の一端に設けられた主管受口に接続されている以外は、上記二重配管Aと同様の構造となっている。
枝管Yは、一端に上記端部キャップ3が設けられていないとともに、外管部が一本の外管部材21のみから形成されていて、端部キャップ3が設けられていない側の内管部1の端部が後述する枝管分岐継手6の枝管接続部62に接続されている以外は、上記二重配管Aと同様の構造となっている。
【0040】
枝管分岐継手6は、ポリエチレン等の合成樹脂で形成されていて、ヘッダー部61とヘッダー部61から分岐する3つの枝管接続部62とを備えている。
【0041】
枝管分岐継手用カバー7は、図5に示すように、カバー本体部73と、3つの分岐部カバー部74とを備えている。
また、枝管分岐継手用カバー7は、図6に示すように、2つ割の分割体7a,7bから形成されている。
【0042】
両分割体7a,7bは、ポリエチレン樹脂の成形体の内面にアルミニウムなどの平滑な金属層を設けたもので、主管X及び枝管Yが枝管分岐継手6に接続された状態で、図5に示すように、2つの分割体7a,7bを閉合することによってその分割面に設けたパッキン(図示せず)によって、分割面部分で気密状態に一体化されるとともに、枝管分岐継手用カバー7のカバー本体部73が枝管分岐継手6との間に隙間が形成される。また、同時にカバー本体部73の一端部が主管Xの外管部の端部を構成する外管部材21の端部の周囲を、パッキン(図示せず)を介して気密に囲繞するとともに、3つの分岐部カバー部74がそれぞれ枝管Yの外管部を構成する外管部材21の一端部を、パッキン(図示せず)を介して気密に囲繞する。
【0043】
したがって、枝管分岐継手6と枝管分岐継手用カバー7の隙間を介して、主管X及び枝管Yの内管部1と外管部との隙間が連通された状態になっている。
【0044】
そして、この二重配管Cは、主管Xに設けられた吸引口42から上記二重配管Aと同様に真空バルブ5の弁体を開放状態とし、真空ポンプによって空気を吸引すれば、主管Xの内管部1と外管部との隙間を介して枝管分岐継手6と枝管分岐継手用カバー7の隙間と、枝管Yの内管部1と外管部との隙間内の空気を排気して所定の真空度まで減圧できる。
また、所定の真空度まで減圧後、真空バルブ5の弁体を閉鎖状態とすれば、二重配管C内の隙間が所定の真空度にある程度の期間保持され、断熱性の高い状態に保持される。
【0045】
しかも、上記二重配管Cの構造によれば、1つの吸引口から吸引するだけで、主管Xの内管部1と外管部との隙間を介して枝管分岐継手6と枝管分岐継手用カバー7の隙間と、枝管Yの内管部1と外管部との隙間内の空気をすべて排気することができるので、例えば、住戸内配管において、真空吸引作業が一箇所から実施できるようになり、真空度維持のメンテナンス性、および初期の施工性が大幅に向上する。
【0046】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、嵌合筒状部を外管部材の端部に嵌合するだけで、外管部材と吸引口付き継手とが気密状態で接続されるようになっていたが、外管部材として合成樹脂管を用い、クリープ現象によって外管部材がシール材の弾性力で外側に変形するおそれがある場合は、外管部材のシール材に対応する部分を帯状の締め具によって外周方向から締付けるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、主管となる二重配管部分にのみ吸引口を設けるようにしていたが、枝管となる1系統あるいは全ての二重配管部分の吸引口を設けるようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の二重配管構造は、例えば、給湯配管や冷媒配管に用いられる。
【符号の説明】
【0048】
A,B,C 二重配管
X 主管
Y 枝管
1 内管部
2a,2b 外管部
21,22 外管部材
3,8 管端キャップ
4 吸引口付き継手
41 リング状本体(本体部)
42 吸引口
43 嵌合筒状部(本体部)
44 シール部材
5 真空バルブ(弁)
6 枝管分岐継手
7 枝管分岐継手用カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管部と、この内管部との間に隙間を形成した状態で、内管部に外嵌される外管部とを備えた二重配管構造であって、
前記外管部は、切れ目を有し、この切れ目に、前記内管部と前記外管部の隙間を減圧するための吸引口付き継手が介在していて、
前記吸引口付き継手は、切れ目を気密に囲むまたは切れ目を気密に連結する本体部と、この本体部から前記外管部の外方に突出するとともに前記隙間に連通する吸引口とを有し、
この吸引口には、開閉可能な弁が設けられていることを特徴とする二重配管構造。
【請求項2】
主管接続部と複数の枝管接続部とを備えた枝管分岐用継手と、
この枝管分岐用継手を、枝管分岐用継手との間に隙間を形成するように囲繞する枝管分岐用継手カバー部材と、
枝管分岐用継手に接続されて、枝管分岐用継手とともに流路を形成する内管部と、前記枝管分岐用継手カバー部材と気密に連結されるとともに、前記内管部との間に前記隙間と連通する隙間を形成するように内管部を囲繞する外管部とを有する主管及び枝管とを備える二重配管構造であって、
前記主管及び枝管のいずれかの外管部は、切れ目を有し、この切れ目に、前記内管部と前記外管部の隙間を減圧するための吸引口付き継手が介在していて、
前記吸引口付き継手は、切れ目を気密に塞ぐまたは切れ目を気密に連結する本体部と、この本体部から前記外管部の外方に突出するとともに前記隙間に連通する吸引口とを有し、
この吸引口には、開閉可能な弁が設けられていることを特徴とする二重配管構造。
【請求項3】
主管及び枝管のいずれか1本に吸引口が設けられ、全ての主管及び枝管の内管部と外管部との隙間が枝管分岐用継手と枝管分岐用継手カバー部材との隙間に連通している請求項2に記載の二重配管構造。
【請求項4】
外管部が、切れ目を形成するように配置された2本の外管部材で形成され、
吸引口付き継手は、内径が内管部の外径より大きく、外管部材の内径より小さいとともに、外径が前記外管部材の内径より大きいリング状本体と、前記リング状本体から両側に延出し、外管部材内に内装される内径が内管部材の外径より大きく、前記外管部材に嵌合される嵌合筒状部と、この嵌合筒状部に外嵌され、嵌合筒状部と外管部材の内壁面との間を気密状態にシールするシール部材とを有する本体部と、
前記リング状本体を貫通するように設けられた吸引口と、
を備える請求項1〜請求項3のいずれかに記載の二重配管構造。
【請求項5】
外管部の内周面が、平滑面に形成された金属からなる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の二重配管構造。
【請求項6】
内管部が、内外層が熱可塑性樹脂で形成され、中間層がアルミニウムで形成された複合管で形成されている請求項1〜請求項5のいずれかに記載の二重配管構造。
【請求項7】
内径が内管部の外径より大きく、外管部材の内径より小さいとともに、外径が前記外管部材の内径より大きいリング状本体と、
リング状本体を貫通するように設けられた吸引口と、
前記リング状本体から両側に延出し、外管部材内に内装される内径が内管部材の外径より大きい嵌合筒状部と、
この嵌合筒状部に外嵌され、嵌合筒状部と外管部材の内壁面との間を気密状態にシールするシール部材とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかの二重配管構造に用いられる吸引口付き継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−77786(P2012−77786A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221376(P2010−221376)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】