説明

亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を水から除去する装置および方法

【解決手段】 亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を水から除去する方法を提供する。前記方法は、前記水を酸化銅(CuO)粒子と所定時間反応させる工程と、反応した前記水を濾過する工程とを有する。また、亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を液体から除去する装置も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2003年9月19日に出願された係属中の仮出願第60/504329「水から亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を除去する装置および方法」の継続出願である。
【0002】
本発明は水から亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を除去する装置および方法全般に関連し、特に、ヒ素に汚染された水を所定時間、酸化銅(CuO)粒子と反応させることにより、亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を水から除去する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒ素は様々な結合形態で土壌中に見出される天然の物質である。飲料水のヒ素汚染は世界の多くの地域から報告されている。米国環境保護庁(EPA)は、飲料水中のヒ素は人間において癌を生じさせ、現在認められている濃度における水中のヒ素量は喫煙によりもたらされるヒ素量に相当すると示している。
【0004】
ヒ素は一般的な−3、0、+3、および+5の結合価を有する5A族の非金属である。亜ヒ酸塩(As+3)およびヒ酸塩(As+5)は飲料水および廃水流に見られる最も一般的な形態である。ヒ素被害地の一部においては、飲料水を安全かつ容易に入手できるものと代替することは非常に高価となり得る。人間の飲料水、灌漑用水、家畜および野生生物の水需要、および水中生物のための最大汚染濃度(MCL)に適うためには安全なレベルにまでヒ素を除去しなければならない。まさに、このような状況下ではヒ素除去がより適切な水供給の選択肢となり得る。
【0005】
従って、水供給者にとっては飲料水からヒ素を経済的かつ安全に除去する方法が必要である。更に、井戸から水を得ている住宅では、引き込み口または使用口における低価格、安全、かつ効率的なヒ素除去装置が必要である。
【0006】
従来、ヒ素を除去する方法は:(1)固定床接触槽内における活性アルミナへの吸着、(2)従来の浄水施設における、以前はアルミニウムおよび鉄の水酸化物あるいは酸化水酸化物であった含水金属沈殿物とヒ素との錯体化、(3)逆浸透法などの膜技術による水からの金属の濾過、および(4)電気透析法などの電気力学的処理、などの方法がある。
【0007】
残念ながら、従来のヒ素除去方法の多くはは亜ヒ酸塩(As+3)の除去は困難である。特定の技術は大きな地方自治体の供給においてかなり成功しているにもかかわらず、それらはスペースの必要性、危険な化学薬品の使用、頻繁な監視、および費用の理由で住宅用途としては現実的ではない。実際に、これらの方法はそれぞれ、参入する時点において、住宅用途に不適切或いは適切にするための操作と維持のために継続的に十分に訓練された人員を常時必要とする。
【0008】
住宅用水を補正する技術として最も一般的な2つの技術は、逆浸透(RO)と活性化アルミナである。活性化アルミナは、腐食性化学薬品の使用と本発明が利用する高流速のために大量を要する。ROは、亜ヒ酸塩(As+3)を有意に除去することができないため、もはやヒ素除去法として認定されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を水から除去する方法である。前記方法は、前記水を酸化銅(CuO)粒子と所定時間反応させる工程と、反応させた前記水を濾過する工程を有する。
【0010】
また、本発明は亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を水から除去する装置を有する。前記装置は、ヒ素に汚染された水と、汚染された前記水に加えられた酸化銅(CuO)粒子と、前記CuO/水を濾過する濾過器とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
酸化銅の調整:
提案方法は、安価な固形粒子を用い、さらに亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を水から除去される。除去反応速度は迅速で、方法は簡便あり、工程は処理に伴う有害な副生成物を生じない。ヒ素類は、EPAが人間の飲料水用に要求する10μg/L未満まで水から除去される。我々は装置のpHを調整した場合(pH6.0)と調整しない場合(pH7.5〜8.5)とで実験を行った。
【0012】
水酸化ナトリウムを塩化銅と反応させて水酸化銅を形成する。水酸化銅を1日室温で放置すると酸化銅として沈殿する。
【0013】
CuOを濾過し、乾燥し、その後微粉末にする。この実験室で調整されたCuOを水からヒ素を除去するために用いた。
【0014】
標準試料の調整:
亜ヒ酸ナトリウム塩(NaAsO)を用いて亜ヒ酸塩の標準試料を調整した。
【0015】
1000ppmの亜ヒ酸塩の標準試料を用いて、1ppm、500ppb、250ppb、100ppb、および10ppbの亜ヒ酸塩の標準試料を調整した。
【0016】
ヒ酸ナトリウム(NaAsO)を用いてヒ酸塩の標準試料を調整した。
【0017】
1000ppmのヒ酸塩の標準試料を用いて、1ppm、500ppb、250ppb、100ppb、および10ppbのヒ酸塩の標準試料を調整した。
【0018】
硫酸ナトリウム塩(NaSO)を用いて1,250ppm、1,000ppm、250ppm、および50ppmの硫酸塩の標準試料を調整した。
【0019】
実験:
ヒ素標準溶液を調整し、三角フラスコの中で50mlの各標準溶液を0.5グラムのCuOと反応させた。三角フラスコを攪拌機にかけ、所定時間反応させた。反応後、溶液を濾過し、ICP Mass Spectrometryを用いてヒ素の分析を行なった。
結果:
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
【表6】

【0026】
【表7】

【0027】
以下のpHを調整せずに天然水からのヒ素除去データは、本願の発明を用いて水からヒ素を除去できることを示している。
【0028】
【表8】

【0029】
【表9】

【0030】
本発明において、自然条件下におけるCuO粒子によるヒ素類の効果的な除去について三つの有力なメカニズムが見出された;1)水中のCuO粒子に対するZPCのpHが他の吸着剤よりも高い場合、これら粒子はヒ素類の親和性より高い親和性を持つ可能性がある;2)亜ヒ酸塩およびヒ酸塩は、CuO粒子の構造に入り込むように適した原子サイズを有する;および/または3)CuO粒子から溶解したCu2+は、おそらくpH7〜9の範囲において亜ヒ酸塩と複合体になっており、それは次にCuO粒子によって吸着される。前述のデータは、CuO粒子が異なる条件下において、水中の亜ヒ酸塩およびヒ酸塩の両方を人間の飲料水に要求される汚染限度である10μg/Lよりもはるかに下回って低減できることを示唆している。
【0031】
本発明による方法は迅速であり、かつ、pH調整を必要としない。他の一般的な水イオンはヒ素類の除去に影響しない。更に、前記方法は簡便であり、効果的であり、安価である。また、前記方法は有害な副生成物を生成しない。本発明の方法は、発展途上国および先進国が直面する深刻な健康上および環境上の問題を、これらの国々が依存する飲料水の質を改善することにより解決する可能性を有する。
【0032】
結論:
1.ヒ酸塩および亜ヒ酸塩は水中のCuOに対して強い親和性を示した。
2.0.5グラムのCuOを用いた場合、高濃度の硫酸塩の存在下において水からヒ酸塩および亜ヒ酸塩を除去することができる。
3.CuOは天然水に混入したヒ酸塩および亜ヒ酸塩を効率的に除去した。
4.CuOは、天然のpHを調整せずに、飲料水および/または汚染された水からヒ素類
を除去するために効率的に使用できる。
【0033】
図2に示すように、水道水からヒ酸塩および/または亜ヒ酸塩を除去する装置は、前記液体中のヒ素をAsおよび/またはAsに変換する酸化の過程を有する。酸化銅の接触槽は、酸化銅を受け取り、酸化銅とAsおよび/またはAsを含む前記液体とを混合するために、前記酸化過程の下流に配置される。前記液体からヒ素錯体或いは混合物を除去するために、前記接触槽の下流に濾過器が配置される。前記装置は更に、濾過された前記液体を受け取る活性炭槽と、炭素濾過された前記液体を受け取る混合床イオン交換媒体とを有してもよい。
【0034】
図3に示すように、水から亜ヒ酸塩および/またはヒ酸塩を除去する処理濾過装置は、酸化銅を水流に含まれるヒ素と反応させ、亜ヒ酸塩および/またはヒ酸塩を生成する酸化銅接触部を有する。活性炭濾過器は前記酸化銅接触部の下流に配置されている。混合床イオン交換部は前記活性炭濾過器の下流に配置されており、ここで、前記酸化銅接触部、活性炭濾過器、および混合床イオン交換部は水源に接続するように構成されているハウジング内にに内蔵されている。前記処理濾過装置のハウジングは、家庭の水道の蛇口に取り付けられるほどに十分に小型である。
【0035】
前述の、本発明の典型的な記載および最良の実施形態について、種々の改良と代案の実施形態を用いて、図面において説明し詳細に記載してきた。このように本発明を示し、説明し、例証したが、当業者であれば、本発明の精神と範囲を逸脱しない限り、形態と詳細において等価の変更を行ってもよいことが理解され、本発明の範囲は従来の技術によって排除される範囲を除き、本請求項のみに限定されることが理解される。更に、ここに開示された本発明は、ここに開示された具体的要素を欠いていても、好適に実践できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明に従って汚染された水からのヒ素除去を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明に従って構成された濾過施設の設計を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明に従って構成された濾過器の設計を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜ヒ酸塩およびヒ酸塩を液体から除去する方法であって、
前記液体を酸化銅(CuO)粒子と所定時間反応させる工程と、
反応した前記液体を濾過する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記液体は約6.0のpHを有するものである。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記液体は約7.5〜約8.5のpHを有するものである。
【請求項4】
請求項1の方法において、前記CuO粒子は、以下の:
水酸化ナトリウムを塩化銅と反応させる工程と、
水酸化銅を形成させる工程と、
前記水酸化銅を室温で所定時間放置する工程と、
酸化銅を沈殿させる工程と、
前記CuO粒子を濾過し、乾燥し、さらに微粉末に砕く工程と
を有する方法によって製造されるものである。
【請求項5】
請求項1の方法において、濾過された前記液体は約10μg/L未満のヒ素濃度を有するものである。
【請求項6】
請求項1の方法において、前記CuO粒子の量は約0.5グラムである。
【請求項7】
亜ヒ酸塩および/またはヒ酸塩を液体から除去する装置であって、前記装置は、
前記液体中のヒ素をAsおよび/またはAsに変換する酸化過程と、
前記酸化工程の下流に配置され、酸化銅を受け取りさらに酸化銅をAsおよび/またはAsを含む前記液体と混合する酸化銅接触槽と、
前記接触槽の下流に配置され、前記液体からヒ素錯体又は混合物を除去する濾過器と
を有する装置。
【請求項8】
請求項7の装置において、前記液体は水道水である。
【請求項9】
請求項8の装置であって、前記装置はさらに、
濾過された前記液体を受け取る活性炭槽を有するものである。
【請求項10】
請求項9の装置であって、前記装置はさらに、
炭素濾過された前記液体を受け取る混合床イオン交換媒体を有するものである。
【請求項11】
請求項7の装置において、前記水は約6.0のpHを有するものである。
【請求項12】
請求項7の装置において、前記水は約7.5〜約8.5の間のpHを有するものである。
【請求項13】
請求項7の装置において、CuO粒子は、以下の:
水酸化ナトリウムを塩化銅と反応させる工程と、
水酸化銅を形成する工程と、
前記水酸化銅を室温で約1日放置する工程と、
酸化銅に沈殿させる工程と、
前記CuOを濾過し、乾燥し、微粉末に砕く工程と
を有する方法によって、製造されるものである。
【請求項14】
請求項7の装置において、混合した前記水は、濾過された後、約10μg/L未満のヒ素濃度を有するものである。
【請求項15】
請求項7の装置において、CuO粒子の量は約0.5グラムである。
【請求項16】
亜ヒ酸塩および/またはヒ酸塩を水から除去する処理及び濾過装置であって、前記装置は、
酸化銅を水流に含まれるヒ素と反応させ、亜ヒ酸塩および/またはヒ酸塩を生成する酸化銅接触部と、
前記酸化銅接触部の下流に配置された活性炭濾過器と、
前記活性炭濾過器の下流に配置された混合床イオン交換部とを有し、ここで、前記酸化銅接触部、活性炭濾過器、及び混合床イオン交換部は、水源に接続するために構成されているハウジング内に内蔵されているものと
を有する装置。
【請求項17】
請求項16の前記処理及び濾過装置において、前記ハウジングは、前記装置が家庭の水道の蛇口に取り付けられるほどに十分に小型である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−505736(P2007−505736A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527057(P2006−527057)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/030491
【国際公開番号】WO2005/028376
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501374437)ユニヴァーシティー オヴ ワイオミング (1)
【Fターム(参考)】