亜酸化銅被覆粉体及びその製造方法
【課題】亜酸化銅の密着性が高く、防汚塗料中での分散性が良く、且つ、防汚塗料の保存安定性が高くなる亜酸化銅被覆粉体を提供する。
【解決手段】芯材と、該芯材の表面に被覆されている亜酸化銅と、からなる亜酸化銅被覆粉体であり、該芯材/該亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、水中で該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、該亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であること、を特徴とする亜酸化銅被覆粉体。
【解決手段】芯材と、該芯材の表面に被覆されている亜酸化銅と、からなる亜酸化銅被覆粉体であり、該芯材/該亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、水中で該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、該亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であること、を特徴とする亜酸化銅被覆粉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚顔料として好適な新規亜酸化銅に関するものであり、芯材の表面に亜酸化銅が被覆された亜酸化銅被覆粉体及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
亜酸化銅は、古くから防汚顔料として知られており、塗料化され、船底用塗料として、海中の貝類や藻類の付着を防止するために用いられている。亜酸化銅は、真比重が6.0と大きく、船底用塗料にした場合、ビヒクルと亜酸化銅との比重の差により、亜酸化銅が沈降してしまうという問題があった。また、近年の金属原料価格の高騰により、使用量を削減することが、業界の課題となっている。
【0003】
比重を小さくする方法としては、芯材の表面に亜酸化銅を被覆することにより、比重を小さくする方法が考えられる。例えば、特開平1−213368号公報(特許文献1)には、塩素イオンを含む水溶液中にSiO2及びまたはAl2O3を少なくとも含む粉を懸濁させた液を電解液とし、銅板を陽極として電解する防汚塗料用複合顔料の製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法で得られた亜酸化銅被覆粉体には、亜酸化銅の密着性が悪いこと、防汚塗料中での分散性が悪いこと、防汚塗料の保存安定性が悪くなること等実用性に乏しいという問題があった。
【0005】
従って、本発明の課題は、亜酸化銅の密着性が高く、防汚塗料中での分散性が良く、且つ、防汚塗料の保存安定性が高くなる亜酸化銅被覆粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、芯材に亜酸化銅を電着し、次いで、水洗する亜酸化銅被覆粉体の製造方法において、(1)芯材に亜酸化銅を電着する前に、芯材の表面を特定の金属塩水溶液を用いて表面処理することにより、亜酸化銅の密着性が高く、且つ、分散性が良好な亜酸化銅被覆粉体が得られること、(2)そのようにして得られた亜酸化銅被覆粉体は、溶出性の塩素イオンが少なく、防汚塗料の保存安定が高くなること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明(1)は、芯材と、該芯材の表面に被覆されている亜酸化銅と、からなる亜酸化銅被覆粉体であり、
該芯材/該亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、
水中で該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、該亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であること
を特徴とする亜酸化銅被覆粉体を提供するものである。
【0008】
また、本発明(2)は、芯材を、第一スズ塩の水溶液、銀塩の水溶液及びパラジウム塩の水溶液のいずれか1種又は2種以上の表面処理水溶液に接触させて、芯材の表面処理物を得る表面処理工程と、
該芯材の表面処理物を、電解質及び酸化防止剤を含有する電解液水溶液に分散させ、金属銅を陽極として、該芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させて、亜酸化銅被覆粉体を得る電着工程と、
該亜酸化銅被覆粉体を水洗して、亜酸化銅被覆粉体を得る水洗工程と、
を有し、
該電解液水溶液中の塩素イオン濃度が、20〜200g/Lであること、
を特徴とする亜酸化銅被覆粉体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、亜酸化銅の密着性が高く、防汚塗料中での分散性が良く、且つ、防汚塗料の保存安定性が高くなる亜酸化銅被覆粉体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の原料のシリカ粉の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B1の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1の密着性試験後の亜酸化銅被覆粉体B1の電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例2の原料のフライアッシュの電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B2の電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例3の原料の珪石粉の電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B3の電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例4の原料のポリエチレン粉の電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例4の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B4の電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例5の原料の溶融シリカ粉の電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例5の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B5の電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例1の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B6の電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例1の密着性試験後の亜酸化銅被覆粉体B6の電子顕微鏡写真である。
【図14】比較例2の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B7の電子顕微鏡写真である。
【図15】比較例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B8の電子顕微鏡写真である。
【図16】比較例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B8の凝集粒子の電子顕微鏡写真である。
【図17】実施例1の原料のシリカ粉の粒度分布図である。
【図18】実施例1の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B1の粒度分布図である。
【図19】実施例2の原料のフライアッシュの粒度分布図である。
【図20】実施例2の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B2の粒度分布図である。
【図21】実施例3の原料の珪石粉の粒度分布図である。
【図22】実施例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B3の粒度分布図である。
【図23】実施例4の原料のポリエチレン粉の粒度分布図である。
【図24】実施例4の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B4の粒度分布図である。
【図25】実施例5の原料の溶融シリカ粉の粒度分布図である。
【図26】実施例5の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B5の粒度分布図である。
【図27】比較例1の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B6の粒度分布図である。
【図28】比較例2の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B7の粒度分布図である。
【図29】比較例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B8の粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の亜酸化銅被覆粉体は、芯材と、該芯材の表面に被覆されている亜酸化銅とからなる亜酸化銅被覆粉体であり、
該芯材/該亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、
水中で該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、該亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下である、
亜酸化銅被覆粉体である。
【0012】
本発明の亜酸化銅被覆粉体は、芯材と、芯材の表面に被覆されている亜酸化銅とからなる亜酸化銅被覆粉体であり、芯材が亜酸化銅により被覆されている。
【0013】
本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材としては、例えば、珪酸含有無機化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミナ、有機化合物等が挙げられる。芯材に係る珪酸含有無機化合物としては、例えば、結晶シリカ、非結晶シリカ、珪藻土、各種ゼオライト、タルク、クレイ、フライアッシュ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シラスバルーン等が挙げられる。芯材に係るアルカリ土類金属化合物としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。芯材に係る有機化合物としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、更に具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0014】
本発明の亜酸化銅被覆粉体では、芯材/亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、芯材の種類によって、上記範囲内で適宜選択される。
【0015】
本発明の亜酸化銅被覆粉体では、水に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体から水に溶出する塩素イオン量が、亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下である。水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオンは、防汚塗料中に溶出し易いので、水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、上記範囲より多いと、塗料化して船底塗料とした場合に、防汚塗料のゲル化が起こり、保存安定性が悪くなる。本発明において、水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であるとは、亜酸化銅被覆粉体を水に加えて、水へ溶出した塩素イオン量を測定した時に、加えた亜酸化銅被覆粉体の質量をY(g)、亜酸化銅被覆粉体から水に溶出した塩素イオン量をX(g)とすると、(X/Y)×100の値が0.1以下であることを指す。
【0016】
なお、本発明において、水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量は、イオンクロマトグラフにより測定される値である。
【0017】
本発明の亜酸化銅被覆粉体は、以下に示す本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法により、好適に製造される。
【0018】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法は、芯材を、第一スズ塩の水溶液、銀塩の水溶液及びパラジウム塩の水溶液のいずれか1種又は2種以上の表面処理水溶液に接触させて、芯材の表面処理物を得る表面処理工程と、
該芯材の表面処理物を、電解質及び酸化防止剤を含有する電解液水溶液に分散させ、金属銅を陽極として、該芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させて、亜酸化銅被覆粉体を得る電着工程と、
該亜酸化銅被覆粉体を水洗して、亜酸化銅被覆粉体を得る水洗工程と、
を有し、
該電解液水溶液中の塩素イオン濃度が、20〜200g/Lである、
亜酸化銅被覆粉体の製造方法である。
【0019】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る表面処理工程は、芯材に、表面処理水溶液を接触させて、芯材の表面処理を行い、芯材の表面処理物を得る工程である。
【0020】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る芯材は、本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材と同様である。
【0021】
なお、本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の場合、更に具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の場合、アルカリ洗浄及び酸による表面粗化を行った芯材を用いることができる。言い換えると、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る表面処理工程を行う前に、芯材のアルカリ洗浄及び酸による表面粗化を行ってもよい。本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材をアルカリ洗浄する際のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材を酸により表面粗化する際の酸としては、硫酸、硝酸、リン酸、クロム酸、塩酸、酢酸、フッ化水素酸等から選ばれる1種又はこれら2種以上の混酸等が挙げられる。
【0022】
芯材の平均粒子径は、好ましくは0.5〜100μmである。芯材の平均粒子径が上記範囲未満だと、ハンドリング性が悪くなる、固液分離がし難くなる等の問題が起こり易くなり、一方、上記範囲を超えると、防汚塗料中での分散安定性が悪くなる、塗膜の平滑性が悪くなる等の問題が起こり易くなる。
【0023】
芯材の外形は、特に制限されない。また、芯材は、中空粒子であっても、中実粒子であってもよい。
【0024】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る表面処理水溶液は、第一スズ塩の水溶液、銀塩の水溶液又はパラジウム塩の水溶液、あるいは、銀塩とパラジウム塩との混合水溶液である。そして、表面処理工程では、芯材を、1種類の表面処理水溶液とのみ接触させてもよく、あるいは、芯材を、1の表面処理水溶液と接触させた後、他の種類の表面処理水溶液と接触させてもよい。
【0025】
表面処理水溶液に係る第一スズ塩の水溶液としては、フッ化第一スズ水溶液、塩化第一スズ水溶液等のハロゲン化第一スズの水溶液、硫酸第一スズの水溶液等が挙げられる。また、表面処理水溶液に係る銀塩の水溶液としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀の水溶液等が挙げられる。また、表面処理水溶液に係るパラジウム塩の水溶液としては、塩化パラジウムの水溶液が挙げられる。
【0026】
表面処理水溶液中の第一スズ塩、銀塩又はパラジウム塩の濃度は、好ましくは0.1〜40g/L、特に好ましくは0.5〜30g/Lである。
【0027】
表面処理水溶液は、必要に応じ、塩酸、アンモニア水を含有することができる。
【0028】
表面処理工程で、芯材を、表面処理水溶液と接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、表面処理水溶液中に芯材を加え、撹拌する方法が挙げられる。
【0029】
表面処理工程を行う際の表面処理水溶液の温度は、特に制限されず、好ましくは0〜70℃、特に好ましくは10〜50℃である。
【0030】
表面処理工程では、芯材を表面処理水溶液に接触させた後、表面処理水溶液から芯材を分離し、芯材の表面処理物を得る。そして、表面処理工程では、芯材を、1種類の表面処理水溶液とのみ接触させてもよく、あるいは、芯材を、1の表面処理水溶液と接触させた後、分離し、更に、他の表面処理水溶液に接触させ、分離するというように、2種類以上の表面処理水溶液と接触させてもよい。
【0031】
なお、表面処理を行った後、表面処理水溶液から芯材を分離する方法としては、ブフナーろ過、遠心分離等が挙げられる。また、表面処理水溶液から分離した芯材の表面処理物を、必要に応じて乾燥することができる。
【0032】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る電着工程は、芯材の表面処理物を、電解液水溶液に分散させ、金属銅を陽極として、芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させて、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)を得る工程である。
【0033】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る電解液水溶液は、電解質及び酸化防止剤を含有する。
【0034】
電解液水溶液に係る電解質は、塩素イオンを有することが必要であり、塩化ナトリウム又は塩化カリウムである。
【0035】
電解液水溶液中の塩素イオン濃度は、20〜200g/L、好ましくは20〜150g/Lである。電解液水溶液中の塩素イオン濃度が、上記範囲未満だと、電着速度が遅く、作業性が悪くなり、一方、上記範囲を超えると、電着された亜酸化銅中に取り込まれる塩素イオンの量が多くなり、水洗工程で水洗しても塩素イオンを十分に除去することができなくなる。
【0036】
電解液水溶液に係る酸化防止剤としては、グリセリン、クエン酸、糖類等が挙げられる。
【0037】
電解液水溶液中の酸化防止剤の濃度は、好ましくは0.3〜60g/L、特に好ましくは0.5〜40g/Lである。電解液水溶液中の酸化防止剤の濃度が、上記範囲未満だと、亜酸化銅の酸化防止効果が得られ難くなり易く、一方、上記範囲を超えても、亜酸化銅の酸化防止効果は得られるが、効果が頭打ちとなり濃度に見合った効果が得られ難くなる。
【0038】
電着工程において、電解液水溶液に分散させる芯材の表面処理物の量は、電解液水溶液に対して、好ましくは1〜80g/L、特に好ましくは1〜60g/Lである。電解液水溶液に分散させる芯材の表面処理物の量が、上記範囲未満だと、電着の効率が悪くなり易く、一方、上記範囲を超えると、電解液水溶液中の芯材の濃度が高いために、電着時に芯材同士の凝集が起こり易くなる。
【0039】
電着工程では、陽極として、金属銅を用いるが、通常、金属銅板を用いる。電着工程に係る金属銅の純度は、99%以上であればよい。また、電着工程では、陰極として、金属銅、SUS等を用いるが、通常、金属銅板、SUS板等を用いる。
【0040】
電着工程では、芯材の表面処理物を、電解液水溶液に加え、電解液水溶液を撹拌して、芯材の表面処理を分散させ、陽極及び陰極を設置し、撹拌しながら、通電を行うことにより、芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させる。
【0041】
電着工程における電着の際の電着温度は、10〜70℃が好ましい。電着温度が、上記範囲未満だと、電着速度が遅くなり易く、一方、上記範囲を超えると、電着に伴うガスの発生が多くなり、亜酸化銅と芯材表面との密着性が低くなり易い。
【0042】
電着工程における電着の際の電流密度は、1〜30A/dm2、好ましくは1〜10A/dm2である。電流密度が、上記範囲未満だと、電着に要する時間が長くなり作業効率が悪くなり易く、一方、上記範囲を超えると、電着された亜酸化銅中に取り込まれる塩素イオンが多くなり易い。
【0043】
また、電着工程では、電着の際の電着時間により、芯材に被覆させる亜酸化銅の被覆量を調節することができる。この亜酸化銅の被覆量は、芯材の種類により適宜調節され、好ましくは芯材/亜酸化銅の質量比が95/5〜10/90となる量である。そして、電着工程における電着の際の電着時間は、亜酸化銅の被覆量により適宜選択され、通常、10分〜4時間が好適である。
【0044】
電着工程では、電着を行った後、ブフナーろ過、遠心分離等により、電解液水溶液から亜酸化銅被覆粉体を分離し、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)を得る。なお、電着工程を行い得られる水洗前の亜酸化銅被覆粉体を、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)とも記載する。
【0045】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る水洗工程は、電着工程で得られた亜酸化銅被覆粉体(水洗前)を水洗して、水洗された亜酸化銅被覆粉体を得る工程である。
【0046】
水洗工程において、亜酸化銅被覆粉体を水洗する方法としては、リパルプ洗浄が一般的であり、その際、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)と水との混合スラリー中、亜酸化銅被覆粉体のスラリー濃度は5〜20質量%、洗浄時間は10分〜60分である。水洗工程では、洗浄水として、10〜70℃の温水を使用することもできる。
【0047】
水洗工程では、洗浄に使用した洗浄水中の塩素イオン濃度が0.1%以下になるまで、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)の水洗を行う。なお、上澄み液を採取して、硝酸銀水溶液を滴下して、その白濁の様子を観察することによって、洗浄液中の塩素イオンの存在を判断することができる。
【0048】
水洗工程では、亜酸化銅被覆粉体を、酸化防止剤を含有する洗浄水で洗浄することが、水洗工程中に被覆された亜酸化銅が酸化するのを防ぐことができる点で、好ましい。その場合、洗浄水に含有される酸化防止剤としては、グリセリン、糖類等が挙げられ、洗浄水中の酸化防止剤の濃度は、好ましくは0.3〜60g/L、特に好ましくは0.5〜40g/Lである。
【0049】
水洗工程では、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)の水洗を行った後、洗浄液から水洗後の亜酸化銅被覆粉体を分離し、乾燥して水洗された亜酸化銅被覆粉体を得る。
【0050】
水洗工程では、被覆された亜酸化銅の被覆層の表面に付着している塩素イオンばかりでなく、亜酸化銅の被覆層に内包されている塩素イオンも除去することができる。そのため、水洗工程を行い得られる亜酸化銅被覆粉体は、防汚塗料に分散させた時に塗料に溶出する塩素イオン(以下、溶出性の塩素イオンとも記載する。)の含有量が少ない。
【0051】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法を行い得られる亜酸化銅被覆粉体は、水中に加えた時に、該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下である亜酸化銅被覆粉体である。
【0052】
水中に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオンは、防汚塗料中に溶出し易いので、水中に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、上記範囲より多いと、塗料化して船底塗料とした場合に、防汚塗料のゲル化が起こり、保存安定性が悪くなる。
本発明の亜酸化銅被覆粉体では、水中に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であるので、溶出性の塩素イオンの量が少ない。そのため、防汚塗料がゲル化し難いので、本発明の亜酸化銅被覆粉体によれば、保存安定性に優れる防汚塗料が得られる。
【0053】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法では、表面処理工程を行うことにより、亜酸化銅の付き回り及び密着性が良くなるので、亜酸化銅の被覆層の密着性が高くなり、且つ、亜酸化銅の単独粉や亜酸化銅被覆粉体の凝集体を、極めて少なくすることができる。そのため、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法によれば、防汚塗料中での分散安定性が良好な亜酸化銅被覆粉体が得られる。本発明において、亜酸化銅の単独粉や亜酸化銅被覆粉体の凝集体が、極めて少ないことは、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法の原料である芯材の粒度分布と、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法により得られる亜酸化銅被覆粉体の粒度分布と、を比較することにより分かる。
【0054】
また、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法では、芯材の表面に均一に亜酸化銅が被覆されているため、水洗工程で、亜酸化銅の被覆層の表面に存在している塩素イオンばかりでなく、亜酸化銅の被覆層に内包されている塩素イオンも洗浄することができる。そのため、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法によれば、溶出性の塩素イオンの量が少ない亜酸化銅被覆粉体が得られる。
即ち、従来は存在していた洗浄が困難な亜酸化銅の微粒子等の凝集粒子が、本発明ではないため、内包される塩素イオンが除去される。
【0055】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
(表面処理工程)
芯材としてシリカ粉(平均粒子径5μm)(電子顕微鏡写真:図1)を、フッ化スズ水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、更に硝酸銀水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A1を得た。
【0057】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A1 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、36分間通電し、芯材の表面処理物A1に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B1 21gを得た。亜酸化銅被覆粉体B1の真比重は3.1g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:250g/L(塩素イオン濃度152g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :40℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0058】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B1を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図2に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また、亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0059】
<粒度分布測定>
原料である芯材のシリカ粉及び得られた亜酸化銅被覆粉体B1の粒度分布を測定した。芯材のシリカ粉の粒度分布を図17に、亜酸化銅被覆粉体B1の粒度分布を図18に示す。亜酸化銅被覆粉体B1の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材のシリカ粉の粒度分布の形と、殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B1では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。なお、粒度分布測定は、日機装(株)マイクロトラックで行った。
【0060】
<水中に溶出する塩素イオン量の測定>
イオンクロマトグラフにより、水中に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体より水に溶出する塩素イオン量を測定した。その結果、水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.05質量%であった。測定機器は、DX−320、カラムはAS12A、溶離液としてNa2CO3とNaHCO3を使用した。
【0061】
<亜酸化銅の密着性試験>
亜酸化銅被覆粉体B1の密着性を、以下の手順で評価した。密着性試験後の電子顕微鏡写真を図3に示す。その結果、1視野当たりの亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
(1)試料、ジルコニアビーズ及びトルエンを、容器に入れる。
(2)撹拌装置で、10分間撹拌する。
(3)撹拌後、ふるいで、試料とジルコニアビーズとを分ける。
(4)分けた試料をロートでろ過する。
(5)試料を自然乾燥する。
(6)電子顕微鏡(500倍、視野に50個程度の粒子が入る倍率を選択する。)により、亜酸化銅粒子の剥離状態を観察する。
(7)無作為に10視野を観察し、各視野中の剥離粒子数を数え、平均値を求める。
【0062】
<防汚塗料の保存安定性>
亜酸化銅被覆粉体B1を用いて防汚塗料を調合し、36日間静置した。静置後の防汚塗料の粘度を測定したところ79Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度78Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0063】
(実施例2)
(表面処理工程)
芯材としてフライアッシュ(平均粒子径41μm)(電子顕微鏡写真:図4)を、硝酸銀水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A2を得た。
【0064】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A2 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、18分間通電し、芯材の表面処理物A2に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B2 16gを得た。亜酸化銅被覆粉体B2の真比重は1.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:200g/L(塩素イオン濃度121g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :30℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0065】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B2を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図5に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また、亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0066】
<粒度分布測定>
原料である芯材のフライアッシュ及び得られた亜酸化銅被覆粉体B2の粒度分布を測定した。芯材のフライアッシュの粒度分布を図19に、亜酸化銅被覆粉体B2の粒度分布を図20に示す。亜酸化銅被覆粉体B2の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材のフライアッシュの粒度分布の形と、殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B2では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。
【0067】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.04質量%であった。
【0068】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
【0069】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、74Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度72Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0070】
(実施例3)
(表面処理工程)
芯材として珪石粉(平均粒子径32μm)(電子顕微鏡写真:図6)を、フッ化スズ水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、更に塩酸含有塩化パラジウム水溶液(塩化パラジウム:0.2g/L、塩酸1ml/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A3を得た。
【0071】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A3 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、25分間通電し、芯材の表面処理物A3に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B3 16gを得た。亜酸化銅被覆粉体B3の真比重は3.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:200g/L(塩素イオン濃度121g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :5A/dm2
電解液水溶液の液温 :50℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0072】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B3を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図7に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また、亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0073】
<粒度分布測定>
原料である芯材の珪石粉及び得られた亜酸化銅被覆粉体B3の粒度分布を測定した。芯材の珪石粉の粒度分布を図21に、亜酸化銅被覆粉体B3の粒度分布を図22に示す。亜酸化銅被覆粉体B3の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材の珪石粉の粒度分布の形と、殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B3では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。
【0074】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.02質量%であった。
【0075】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
【0076】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、76Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度74Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0077】
(実施例4)
(表面処理工程)
芯材としてポリエチレン粉(平均粒子径20μm)(電子顕微鏡写真:図8)を、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで、クロム酸、硫酸及びリン酸の混酸により表面粗化した後、フッ化スズ水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、更に硝酸銀水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A4を得た。
【0078】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A4 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、15分間通電し、芯材の表面処理物A4に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B4 14.6gを得た。亜酸化銅被覆粉体B4の真比重は1.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:250g/L(塩素イオン濃度152g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :30℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0079】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B4を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図9に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また、亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0080】
<粒度分布測定>
原料である芯材のポリエチレン粉及び得られた亜酸化銅被覆粉体B4の粒度分布を測定した。芯材のポリエチレン粉の粒度分布を図23に、亜酸化銅被覆粉体B4の粒度分布を図24に示す。亜酸化銅被覆粉体B4の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材のポリエチレン粉の粒度分布の形と、殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B4では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。
【0081】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.02質量%であった。
【0082】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
【0083】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、80Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度78Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0084】
(実施例5)
(表面処理工程)
芯材として溶融シリカ粉(非晶質、平均粒子径20μm)(電子顕微鏡写真:図10)を、水酸化ナトリウム水溶液によりアルカリ洗浄し、フッ化水素酸による表面粗化を施した後フッ化スズ(1g/L)水溶液に分散させ、撹拌し、濾過後、水洗し、更に硝酸銀(1g/L)水溶液に分散させ、撹拌し、濾過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A5を得た。
【0085】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A5 10gを電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で15分間通電し、芯材の表面処理物A5に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液を濾過し、濾過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B5 14.3gを得た。亜酸化銅被覆粉体B5の真比重は2.8g/cm3であった。
【0086】
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:250g/L(塩素イオン濃度152g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :30℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0087】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B5を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図11に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0088】
<粒度分布測定>
原料である芯材の溶融シリカ粉及び得られた亜酸化銅被覆粉体B5の粒度分布を測定した。芯材の溶融シリカ粉の粒度分布を図25に、亜酸化銅被覆粉体B5の粒度分布を図26に示す。亜酸化銅被覆粉体B5の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材の溶融シリカ粉の粒度分布の形と殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図により、亜酸化銅被覆粉体B5では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。
【0089】
<水中に溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.03%であった。
【0090】
<亜酸化銅密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
【0091】
<防汚塗料の安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、78Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度76Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0092】
(比較例1)
(電着工程及び水洗工程)
芯材として実施例1に用いたシリカ粉(平均粒子径5μm) 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、36分間通電し、芯材に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B6 21gを得た。亜酸化銅被覆粉体B6の真比重は3.1g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:400g/L(塩素イオン濃度243g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :40℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0093】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B6を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図12に示す。その結果、芯材の表面が、まばらに、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集が見られた。また、亜酸化銅の単独粉が見られた。
【0094】
<粒度分布測定>
得られた亜酸化銅被覆粉体B6の粒度分布を測定した。亜酸化銅被覆粉体B6の粒度分布を図27に示す。亜酸化銅被覆粉体B6の粒度分布は、原料の芯材のシリカ粉の粒度分布(図17)に比べ、微細部分が多かった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B6では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されておらず、亜酸化銅被覆粉体の凝集体が存在していることが分かる。
【0095】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.20質量%であった。
【0096】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行った。電子顕微鏡写真を図13に示す。その結果、全視野において亜酸化銅粒子の剥離が見られた。
【0097】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、99Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度76Kuに比べ、高くなっていた。
【0098】
(比較例2)
(電着工程及び水洗工程)
芯材として実施例2で用いたフライアッシュ(平均粒子径41μm) 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、25分間通電し、芯材に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B7 16gを得た。亜酸化銅被覆粉体B7の真比重は3.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:200g/L(塩素イオン濃度121g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :5A/dm2
電解液水溶液の液温 :50℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0099】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B7を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図14に示す。その結果、芯材の表面が、まばらに、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集が見られた。また、亜酸化銅の単独粉が見られた。
【0100】
<粒度分布測定>
得られた亜酸化銅被覆粉体B7の粒度分布を測定した。亜酸化銅被覆粉体B7の粒度分布を図28に示す。亜酸化銅被覆粉体B7の粒度分布は、原料の芯材のフライアッシュの粒度分布(図19)に比べ、微細部分が多かった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B7では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されておらず、亜酸化銅被覆粉体の凝集が存在していることが分かる。
【0101】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオンの量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.03質量%であった。
【0102】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、全視野において亜酸化銅粒子の剥離が見られた。
【0103】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日静置後の粘度は、81Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度80Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0104】
(比較例3)
(電着工程及び水洗工程)
芯材として実施例3で用いた珪石粉(平均粒子径32μm) 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、25分間通電し、芯材に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B8 16gを得た。亜酸化銅被覆粉体B8の真比重は3.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:400g/L(塩素イオン濃度243g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :5A/dm2
電解液水溶液の液温 :50℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0105】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B8を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図15に示す。その結果、芯材の表面が、まばらに、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集が見られた(図16)。また、亜酸化銅の単独粉が見られた。
【0106】
<粒度分布測定>
得られた亜酸化銅被覆粉体B8の粒度分布を測定した。亜酸化銅被覆粉体B8の粒度分布を図29に示す。亜酸化銅被覆粉体B8の粒度分布は、原料の芯材の珪石粉の粒度分布に比べ、微細部分が多かった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B8では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されておらず、亜酸化銅被覆粉体の凝集が存在していることが分かる。
【0107】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオンの量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.15質量%であった。
【0108】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、全視野において亜酸化銅粒子の剥離が見られた。
【0109】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、95Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度80Kuに比べ、高くなっていた。
【0110】
【表1】
【0111】
表1中、付き回りについては、芯材への亜酸化銅粒子の電着状態が、全面的なら「○」、部分的なら「×」とした。また、密着性については、芯材から亜酸化銅粒子が剥離した粒子数の平均値が1以下の場合を「○」、1を超える場合を「×」とした。また、分散性については、凝集粒子が無かった場合を「○」、凝集粒子が有った場合を「×」とした。また、塗料安定性については、36日経過後に、塗料の粘度変化が10%未満の場合を「○」、粘度変化が10%以上の場合を「×」とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開平1−213368号公報(特許請求の範囲)
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚顔料として好適な新規亜酸化銅に関するものであり、芯材の表面に亜酸化銅が被覆された亜酸化銅被覆粉体及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
亜酸化銅は、古くから防汚顔料として知られており、塗料化され、船底用塗料として、海中の貝類や藻類の付着を防止するために用いられている。亜酸化銅は、真比重が6.0と大きく、船底用塗料にした場合、ビヒクルと亜酸化銅との比重の差により、亜酸化銅が沈降してしまうという問題があった。また、近年の金属原料価格の高騰により、使用量を削減することが、業界の課題となっている。
【0003】
比重を小さくする方法としては、芯材の表面に亜酸化銅を被覆することにより、比重を小さくする方法が考えられる。例えば、特開平1−213368号公報(特許文献1)には、塩素イオンを含む水溶液中にSiO2及びまたはAl2O3を少なくとも含む粉を懸濁させた液を電解液とし、銅板を陽極として電解する防汚塗料用複合顔料の製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法で得られた亜酸化銅被覆粉体には、亜酸化銅の密着性が悪いこと、防汚塗料中での分散性が悪いこと、防汚塗料の保存安定性が悪くなること等実用性に乏しいという問題があった。
【0005】
従って、本発明の課題は、亜酸化銅の密着性が高く、防汚塗料中での分散性が良く、且つ、防汚塗料の保存安定性が高くなる亜酸化銅被覆粉体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、芯材に亜酸化銅を電着し、次いで、水洗する亜酸化銅被覆粉体の製造方法において、(1)芯材に亜酸化銅を電着する前に、芯材の表面を特定の金属塩水溶液を用いて表面処理することにより、亜酸化銅の密着性が高く、且つ、分散性が良好な亜酸化銅被覆粉体が得られること、(2)そのようにして得られた亜酸化銅被覆粉体は、溶出性の塩素イオンが少なく、防汚塗料の保存安定が高くなること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明(1)は、芯材と、該芯材の表面に被覆されている亜酸化銅と、からなる亜酸化銅被覆粉体であり、
該芯材/該亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、
水中で該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、該亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であること
を特徴とする亜酸化銅被覆粉体を提供するものである。
【0008】
また、本発明(2)は、芯材を、第一スズ塩の水溶液、銀塩の水溶液及びパラジウム塩の水溶液のいずれか1種又は2種以上の表面処理水溶液に接触させて、芯材の表面処理物を得る表面処理工程と、
該芯材の表面処理物を、電解質及び酸化防止剤を含有する電解液水溶液に分散させ、金属銅を陽極として、該芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させて、亜酸化銅被覆粉体を得る電着工程と、
該亜酸化銅被覆粉体を水洗して、亜酸化銅被覆粉体を得る水洗工程と、
を有し、
該電解液水溶液中の塩素イオン濃度が、20〜200g/Lであること、
を特徴とする亜酸化銅被覆粉体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、亜酸化銅の密着性が高く、防汚塗料中での分散性が良く、且つ、防汚塗料の保存安定性が高くなる亜酸化銅被覆粉体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の原料のシリカ粉の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B1の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1の密着性試験後の亜酸化銅被覆粉体B1の電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例2の原料のフライアッシュの電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例2の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B2の電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例3の原料の珪石粉の電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B3の電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例4の原料のポリエチレン粉の電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例4の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B4の電子顕微鏡写真である。
【図10】実施例5の原料の溶融シリカ粉の電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例5の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B5の電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例1の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B6の電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例1の密着性試験後の亜酸化銅被覆粉体B6の電子顕微鏡写真である。
【図14】比較例2の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B7の電子顕微鏡写真である。
【図15】比較例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B8の電子顕微鏡写真である。
【図16】比較例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B8の凝集粒子の電子顕微鏡写真である。
【図17】実施例1の原料のシリカ粉の粒度分布図である。
【図18】実施例1の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B1の粒度分布図である。
【図19】実施例2の原料のフライアッシュの粒度分布図である。
【図20】実施例2の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B2の粒度分布図である。
【図21】実施例3の原料の珪石粉の粒度分布図である。
【図22】実施例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B3の粒度分布図である。
【図23】実施例4の原料のポリエチレン粉の粒度分布図である。
【図24】実施例4の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B4の粒度分布図である。
【図25】実施例5の原料の溶融シリカ粉の粒度分布図である。
【図26】実施例5の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B5の粒度分布図である。
【図27】比較例1の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B6の粒度分布図である。
【図28】比較例2の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B7の粒度分布図である。
【図29】比較例3の密着性試験前の亜酸化銅被覆粉体B8の粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の亜酸化銅被覆粉体は、芯材と、該芯材の表面に被覆されている亜酸化銅とからなる亜酸化銅被覆粉体であり、
該芯材/該亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、
水中で該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、該亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下である、
亜酸化銅被覆粉体である。
【0012】
本発明の亜酸化銅被覆粉体は、芯材と、芯材の表面に被覆されている亜酸化銅とからなる亜酸化銅被覆粉体であり、芯材が亜酸化銅により被覆されている。
【0013】
本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材としては、例えば、珪酸含有無機化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミナ、有機化合物等が挙げられる。芯材に係る珪酸含有無機化合物としては、例えば、結晶シリカ、非結晶シリカ、珪藻土、各種ゼオライト、タルク、クレイ、フライアッシュ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、シラスバルーン等が挙げられる。芯材に係るアルカリ土類金属化合物としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。芯材に係る有機化合物としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、更に具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0014】
本発明の亜酸化銅被覆粉体では、芯材/亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、芯材の種類によって、上記範囲内で適宜選択される。
【0015】
本発明の亜酸化銅被覆粉体では、水に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体から水に溶出する塩素イオン量が、亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下である。水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオンは、防汚塗料中に溶出し易いので、水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、上記範囲より多いと、塗料化して船底塗料とした場合に、防汚塗料のゲル化が起こり、保存安定性が悪くなる。本発明において、水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であるとは、亜酸化銅被覆粉体を水に加えて、水へ溶出した塩素イオン量を測定した時に、加えた亜酸化銅被覆粉体の質量をY(g)、亜酸化銅被覆粉体から水に溶出した塩素イオン量をX(g)とすると、(X/Y)×100の値が0.1以下であることを指す。
【0016】
なお、本発明において、水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量は、イオンクロマトグラフにより測定される値である。
【0017】
本発明の亜酸化銅被覆粉体は、以下に示す本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法により、好適に製造される。
【0018】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法は、芯材を、第一スズ塩の水溶液、銀塩の水溶液及びパラジウム塩の水溶液のいずれか1種又は2種以上の表面処理水溶液に接触させて、芯材の表面処理物を得る表面処理工程と、
該芯材の表面処理物を、電解質及び酸化防止剤を含有する電解液水溶液に分散させ、金属銅を陽極として、該芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させて、亜酸化銅被覆粉体を得る電着工程と、
該亜酸化銅被覆粉体を水洗して、亜酸化銅被覆粉体を得る水洗工程と、
を有し、
該電解液水溶液中の塩素イオン濃度が、20〜200g/Lである、
亜酸化銅被覆粉体の製造方法である。
【0019】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る表面処理工程は、芯材に、表面処理水溶液を接触させて、芯材の表面処理を行い、芯材の表面処理物を得る工程である。
【0020】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る芯材は、本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材と同様である。
【0021】
なお、本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の場合、更に具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の場合、アルカリ洗浄及び酸による表面粗化を行った芯材を用いることができる。言い換えると、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る表面処理工程を行う前に、芯材のアルカリ洗浄及び酸による表面粗化を行ってもよい。本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材をアルカリ洗浄する際のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、オルソケイ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、本発明の亜酸化銅被覆粉体に係る芯材を酸により表面粗化する際の酸としては、硫酸、硝酸、リン酸、クロム酸、塩酸、酢酸、フッ化水素酸等から選ばれる1種又はこれら2種以上の混酸等が挙げられる。
【0022】
芯材の平均粒子径は、好ましくは0.5〜100μmである。芯材の平均粒子径が上記範囲未満だと、ハンドリング性が悪くなる、固液分離がし難くなる等の問題が起こり易くなり、一方、上記範囲を超えると、防汚塗料中での分散安定性が悪くなる、塗膜の平滑性が悪くなる等の問題が起こり易くなる。
【0023】
芯材の外形は、特に制限されない。また、芯材は、中空粒子であっても、中実粒子であってもよい。
【0024】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る表面処理水溶液は、第一スズ塩の水溶液、銀塩の水溶液又はパラジウム塩の水溶液、あるいは、銀塩とパラジウム塩との混合水溶液である。そして、表面処理工程では、芯材を、1種類の表面処理水溶液とのみ接触させてもよく、あるいは、芯材を、1の表面処理水溶液と接触させた後、他の種類の表面処理水溶液と接触させてもよい。
【0025】
表面処理水溶液に係る第一スズ塩の水溶液としては、フッ化第一スズ水溶液、塩化第一スズ水溶液等のハロゲン化第一スズの水溶液、硫酸第一スズの水溶液等が挙げられる。また、表面処理水溶液に係る銀塩の水溶液としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀の水溶液等が挙げられる。また、表面処理水溶液に係るパラジウム塩の水溶液としては、塩化パラジウムの水溶液が挙げられる。
【0026】
表面処理水溶液中の第一スズ塩、銀塩又はパラジウム塩の濃度は、好ましくは0.1〜40g/L、特に好ましくは0.5〜30g/Lである。
【0027】
表面処理水溶液は、必要に応じ、塩酸、アンモニア水を含有することができる。
【0028】
表面処理工程で、芯材を、表面処理水溶液と接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、表面処理水溶液中に芯材を加え、撹拌する方法が挙げられる。
【0029】
表面処理工程を行う際の表面処理水溶液の温度は、特に制限されず、好ましくは0〜70℃、特に好ましくは10〜50℃である。
【0030】
表面処理工程では、芯材を表面処理水溶液に接触させた後、表面処理水溶液から芯材を分離し、芯材の表面処理物を得る。そして、表面処理工程では、芯材を、1種類の表面処理水溶液とのみ接触させてもよく、あるいは、芯材を、1の表面処理水溶液と接触させた後、分離し、更に、他の表面処理水溶液に接触させ、分離するというように、2種類以上の表面処理水溶液と接触させてもよい。
【0031】
なお、表面処理を行った後、表面処理水溶液から芯材を分離する方法としては、ブフナーろ過、遠心分離等が挙げられる。また、表面処理水溶液から分離した芯材の表面処理物を、必要に応じて乾燥することができる。
【0032】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る電着工程は、芯材の表面処理物を、電解液水溶液に分散させ、金属銅を陽極として、芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させて、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)を得る工程である。
【0033】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る電解液水溶液は、電解質及び酸化防止剤を含有する。
【0034】
電解液水溶液に係る電解質は、塩素イオンを有することが必要であり、塩化ナトリウム又は塩化カリウムである。
【0035】
電解液水溶液中の塩素イオン濃度は、20〜200g/L、好ましくは20〜150g/Lである。電解液水溶液中の塩素イオン濃度が、上記範囲未満だと、電着速度が遅く、作業性が悪くなり、一方、上記範囲を超えると、電着された亜酸化銅中に取り込まれる塩素イオンの量が多くなり、水洗工程で水洗しても塩素イオンを十分に除去することができなくなる。
【0036】
電解液水溶液に係る酸化防止剤としては、グリセリン、クエン酸、糖類等が挙げられる。
【0037】
電解液水溶液中の酸化防止剤の濃度は、好ましくは0.3〜60g/L、特に好ましくは0.5〜40g/Lである。電解液水溶液中の酸化防止剤の濃度が、上記範囲未満だと、亜酸化銅の酸化防止効果が得られ難くなり易く、一方、上記範囲を超えても、亜酸化銅の酸化防止効果は得られるが、効果が頭打ちとなり濃度に見合った効果が得られ難くなる。
【0038】
電着工程において、電解液水溶液に分散させる芯材の表面処理物の量は、電解液水溶液に対して、好ましくは1〜80g/L、特に好ましくは1〜60g/Lである。電解液水溶液に分散させる芯材の表面処理物の量が、上記範囲未満だと、電着の効率が悪くなり易く、一方、上記範囲を超えると、電解液水溶液中の芯材の濃度が高いために、電着時に芯材同士の凝集が起こり易くなる。
【0039】
電着工程では、陽極として、金属銅を用いるが、通常、金属銅板を用いる。電着工程に係る金属銅の純度は、99%以上であればよい。また、電着工程では、陰極として、金属銅、SUS等を用いるが、通常、金属銅板、SUS板等を用いる。
【0040】
電着工程では、芯材の表面処理物を、電解液水溶液に加え、電解液水溶液を撹拌して、芯材の表面処理を分散させ、陽極及び陰極を設置し、撹拌しながら、通電を行うことにより、芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させる。
【0041】
電着工程における電着の際の電着温度は、10〜70℃が好ましい。電着温度が、上記範囲未満だと、電着速度が遅くなり易く、一方、上記範囲を超えると、電着に伴うガスの発生が多くなり、亜酸化銅と芯材表面との密着性が低くなり易い。
【0042】
電着工程における電着の際の電流密度は、1〜30A/dm2、好ましくは1〜10A/dm2である。電流密度が、上記範囲未満だと、電着に要する時間が長くなり作業効率が悪くなり易く、一方、上記範囲を超えると、電着された亜酸化銅中に取り込まれる塩素イオンが多くなり易い。
【0043】
また、電着工程では、電着の際の電着時間により、芯材に被覆させる亜酸化銅の被覆量を調節することができる。この亜酸化銅の被覆量は、芯材の種類により適宜調節され、好ましくは芯材/亜酸化銅の質量比が95/5〜10/90となる量である。そして、電着工程における電着の際の電着時間は、亜酸化銅の被覆量により適宜選択され、通常、10分〜4時間が好適である。
【0044】
電着工程では、電着を行った後、ブフナーろ過、遠心分離等により、電解液水溶液から亜酸化銅被覆粉体を分離し、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)を得る。なお、電着工程を行い得られる水洗前の亜酸化銅被覆粉体を、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)とも記載する。
【0045】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法に係る水洗工程は、電着工程で得られた亜酸化銅被覆粉体(水洗前)を水洗して、水洗された亜酸化銅被覆粉体を得る工程である。
【0046】
水洗工程において、亜酸化銅被覆粉体を水洗する方法としては、リパルプ洗浄が一般的であり、その際、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)と水との混合スラリー中、亜酸化銅被覆粉体のスラリー濃度は5〜20質量%、洗浄時間は10分〜60分である。水洗工程では、洗浄水として、10〜70℃の温水を使用することもできる。
【0047】
水洗工程では、洗浄に使用した洗浄水中の塩素イオン濃度が0.1%以下になるまで、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)の水洗を行う。なお、上澄み液を採取して、硝酸銀水溶液を滴下して、その白濁の様子を観察することによって、洗浄液中の塩素イオンの存在を判断することができる。
【0048】
水洗工程では、亜酸化銅被覆粉体を、酸化防止剤を含有する洗浄水で洗浄することが、水洗工程中に被覆された亜酸化銅が酸化するのを防ぐことができる点で、好ましい。その場合、洗浄水に含有される酸化防止剤としては、グリセリン、糖類等が挙げられ、洗浄水中の酸化防止剤の濃度は、好ましくは0.3〜60g/L、特に好ましくは0.5〜40g/Lである。
【0049】
水洗工程では、亜酸化銅被覆粉体(水洗前)の水洗を行った後、洗浄液から水洗後の亜酸化銅被覆粉体を分離し、乾燥して水洗された亜酸化銅被覆粉体を得る。
【0050】
水洗工程では、被覆された亜酸化銅の被覆層の表面に付着している塩素イオンばかりでなく、亜酸化銅の被覆層に内包されている塩素イオンも除去することができる。そのため、水洗工程を行い得られる亜酸化銅被覆粉体は、防汚塗料に分散させた時に塗料に溶出する塩素イオン(以下、溶出性の塩素イオンとも記載する。)の含有量が少ない。
【0051】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法を行い得られる亜酸化銅被覆粉体は、水中に加えた時に、該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下である亜酸化銅被覆粉体である。
【0052】
水中に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオンは、防汚塗料中に溶出し易いので、水中に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、上記範囲より多いと、塗料化して船底塗料とした場合に、防汚塗料のゲル化が起こり、保存安定性が悪くなる。
本発明の亜酸化銅被覆粉体では、水中に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であるので、溶出性の塩素イオンの量が少ない。そのため、防汚塗料がゲル化し難いので、本発明の亜酸化銅被覆粉体によれば、保存安定性に優れる防汚塗料が得られる。
【0053】
本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法では、表面処理工程を行うことにより、亜酸化銅の付き回り及び密着性が良くなるので、亜酸化銅の被覆層の密着性が高くなり、且つ、亜酸化銅の単独粉や亜酸化銅被覆粉体の凝集体を、極めて少なくすることができる。そのため、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法によれば、防汚塗料中での分散安定性が良好な亜酸化銅被覆粉体が得られる。本発明において、亜酸化銅の単独粉や亜酸化銅被覆粉体の凝集体が、極めて少ないことは、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法の原料である芯材の粒度分布と、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法により得られる亜酸化銅被覆粉体の粒度分布と、を比較することにより分かる。
【0054】
また、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法では、芯材の表面に均一に亜酸化銅が被覆されているため、水洗工程で、亜酸化銅の被覆層の表面に存在している塩素イオンばかりでなく、亜酸化銅の被覆層に内包されている塩素イオンも洗浄することができる。そのため、本発明の亜酸化銅被覆粉体の製造方法によれば、溶出性の塩素イオンの量が少ない亜酸化銅被覆粉体が得られる。
即ち、従来は存在していた洗浄が困難な亜酸化銅の微粒子等の凝集粒子が、本発明ではないため、内包される塩素イオンが除去される。
【0055】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
(表面処理工程)
芯材としてシリカ粉(平均粒子径5μm)(電子顕微鏡写真:図1)を、フッ化スズ水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、更に硝酸銀水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A1を得た。
【0057】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A1 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、36分間通電し、芯材の表面処理物A1に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B1 21gを得た。亜酸化銅被覆粉体B1の真比重は3.1g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:250g/L(塩素イオン濃度152g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :40℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0058】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B1を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図2に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また、亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0059】
<粒度分布測定>
原料である芯材のシリカ粉及び得られた亜酸化銅被覆粉体B1の粒度分布を測定した。芯材のシリカ粉の粒度分布を図17に、亜酸化銅被覆粉体B1の粒度分布を図18に示す。亜酸化銅被覆粉体B1の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材のシリカ粉の粒度分布の形と、殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B1では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。なお、粒度分布測定は、日機装(株)マイクロトラックで行った。
【0060】
<水中に溶出する塩素イオン量の測定>
イオンクロマトグラフにより、水中に加えた時に、亜酸化銅被覆粉体より水に溶出する塩素イオン量を測定した。その結果、水中で亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.05質量%であった。測定機器は、DX−320、カラムはAS12A、溶離液としてNa2CO3とNaHCO3を使用した。
【0061】
<亜酸化銅の密着性試験>
亜酸化銅被覆粉体B1の密着性を、以下の手順で評価した。密着性試験後の電子顕微鏡写真を図3に示す。その結果、1視野当たりの亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
(1)試料、ジルコニアビーズ及びトルエンを、容器に入れる。
(2)撹拌装置で、10分間撹拌する。
(3)撹拌後、ふるいで、試料とジルコニアビーズとを分ける。
(4)分けた試料をロートでろ過する。
(5)試料を自然乾燥する。
(6)電子顕微鏡(500倍、視野に50個程度の粒子が入る倍率を選択する。)により、亜酸化銅粒子の剥離状態を観察する。
(7)無作為に10視野を観察し、各視野中の剥離粒子数を数え、平均値を求める。
【0062】
<防汚塗料の保存安定性>
亜酸化銅被覆粉体B1を用いて防汚塗料を調合し、36日間静置した。静置後の防汚塗料の粘度を測定したところ79Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度78Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0063】
(実施例2)
(表面処理工程)
芯材としてフライアッシュ(平均粒子径41μm)(電子顕微鏡写真:図4)を、硝酸銀水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A2を得た。
【0064】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A2 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、18分間通電し、芯材の表面処理物A2に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B2 16gを得た。亜酸化銅被覆粉体B2の真比重は1.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:200g/L(塩素イオン濃度121g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :30℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0065】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B2を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図5に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また、亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0066】
<粒度分布測定>
原料である芯材のフライアッシュ及び得られた亜酸化銅被覆粉体B2の粒度分布を測定した。芯材のフライアッシュの粒度分布を図19に、亜酸化銅被覆粉体B2の粒度分布を図20に示す。亜酸化銅被覆粉体B2の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材のフライアッシュの粒度分布の形と、殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B2では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。
【0067】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.04質量%であった。
【0068】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
【0069】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、74Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度72Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0070】
(実施例3)
(表面処理工程)
芯材として珪石粉(平均粒子径32μm)(電子顕微鏡写真:図6)を、フッ化スズ水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、更に塩酸含有塩化パラジウム水溶液(塩化パラジウム:0.2g/L、塩酸1ml/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A3を得た。
【0071】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A3 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、25分間通電し、芯材の表面処理物A3に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B3 16gを得た。亜酸化銅被覆粉体B3の真比重は3.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:200g/L(塩素イオン濃度121g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :5A/dm2
電解液水溶液の液温 :50℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0072】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B3を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図7に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また、亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0073】
<粒度分布測定>
原料である芯材の珪石粉及び得られた亜酸化銅被覆粉体B3の粒度分布を測定した。芯材の珪石粉の粒度分布を図21に、亜酸化銅被覆粉体B3の粒度分布を図22に示す。亜酸化銅被覆粉体B3の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材の珪石粉の粒度分布の形と、殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B3では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。
【0074】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.02質量%であった。
【0075】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
【0076】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、76Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度74Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0077】
(実施例4)
(表面処理工程)
芯材としてポリエチレン粉(平均粒子径20μm)(電子顕微鏡写真:図8)を、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、次いで、クロム酸、硫酸及びリン酸の混酸により表面粗化した後、フッ化スズ水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、更に硝酸銀水溶液(1g/L)に分散させ、撹拌し、ろ過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A4を得た。
【0078】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A4 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、15分間通電し、芯材の表面処理物A4に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B4 14.6gを得た。亜酸化銅被覆粉体B4の真比重は1.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:250g/L(塩素イオン濃度152g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :30℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0079】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B4を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図9に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また、亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0080】
<粒度分布測定>
原料である芯材のポリエチレン粉及び得られた亜酸化銅被覆粉体B4の粒度分布を測定した。芯材のポリエチレン粉の粒度分布を図23に、亜酸化銅被覆粉体B4の粒度分布を図24に示す。亜酸化銅被覆粉体B4の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材のポリエチレン粉の粒度分布の形と、殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B4では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。
【0081】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.02質量%であった。
【0082】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
【0083】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、80Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度78Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0084】
(実施例5)
(表面処理工程)
芯材として溶融シリカ粉(非晶質、平均粒子径20μm)(電子顕微鏡写真:図10)を、水酸化ナトリウム水溶液によりアルカリ洗浄し、フッ化水素酸による表面粗化を施した後フッ化スズ(1g/L)水溶液に分散させ、撹拌し、濾過後、水洗し、更に硝酸銀(1g/L)水溶液に分散させ、撹拌し、濾過後、水洗し、乾燥して、芯材の表面処理物A5を得た。
【0085】
(電着工程及び水洗工程)
次いで、芯材の表面処理物A5 10gを電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で15分間通電し、芯材の表面処理物A5に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液を濾過し、濾過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B5 14.3gを得た。亜酸化銅被覆粉体B5の真比重は2.8g/cm3であった。
【0086】
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:250g/L(塩素イオン濃度152g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :30℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0087】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B5を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図11に示す。その結果、芯材の表面が、まんべんなく、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集は、殆ど見られなかった。また亜酸化銅の単独粉は、殆ど見られなかった。
【0088】
<粒度分布測定>
原料である芯材の溶融シリカ粉及び得られた亜酸化銅被覆粉体B5の粒度分布を測定した。芯材の溶融シリカ粉の粒度分布を図25に、亜酸化銅被覆粉体B5の粒度分布を図26に示す。亜酸化銅被覆粉体B5の粒度分布の形は、微粉部分が見られず、原料である芯材の溶融シリカ粉の粒度分布の形と殆ど変わらなかった。従って、これらの分布図により、亜酸化銅被覆粉体B5では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されていることが分かる。
【0089】
<水中に溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.03%であった。
【0090】
<亜酸化銅密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、亜酸化銅が剥離した粒子数の平均値は1以下であった。
【0091】
<防汚塗料の安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、78Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度76Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0092】
(比較例1)
(電着工程及び水洗工程)
芯材として実施例1に用いたシリカ粉(平均粒子径5μm) 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、36分間通電し、芯材に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B6 21gを得た。亜酸化銅被覆粉体B6の真比重は3.1g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:400g/L(塩素イオン濃度243g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :7A/dm2
電解液水溶液の液温 :40℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0093】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B6を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図12に示す。その結果、芯材の表面が、まばらに、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集が見られた。また、亜酸化銅の単独粉が見られた。
【0094】
<粒度分布測定>
得られた亜酸化銅被覆粉体B6の粒度分布を測定した。亜酸化銅被覆粉体B6の粒度分布を図27に示す。亜酸化銅被覆粉体B6の粒度分布は、原料の芯材のシリカ粉の粒度分布(図17)に比べ、微細部分が多かった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B6では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されておらず、亜酸化銅被覆粉体の凝集体が存在していることが分かる。
【0095】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオン量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.20質量%であった。
【0096】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行った。電子顕微鏡写真を図13に示す。その結果、全視野において亜酸化銅粒子の剥離が見られた。
【0097】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、99Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度76Kuに比べ、高くなっていた。
【0098】
(比較例2)
(電着工程及び水洗工程)
芯材として実施例2で用いたフライアッシュ(平均粒子径41μm) 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、25分間通電し、芯材に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B7 16gを得た。亜酸化銅被覆粉体B7の真比重は3.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:200g/L(塩素イオン濃度121g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :5A/dm2
電解液水溶液の液温 :50℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0099】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B7を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図14に示す。その結果、芯材の表面が、まばらに、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集が見られた。また、亜酸化銅の単独粉が見られた。
【0100】
<粒度分布測定>
得られた亜酸化銅被覆粉体B7の粒度分布を測定した。亜酸化銅被覆粉体B7の粒度分布を図28に示す。亜酸化銅被覆粉体B7の粒度分布は、原料の芯材のフライアッシュの粒度分布(図19)に比べ、微細部分が多かった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B7では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されておらず、亜酸化銅被覆粉体の凝集が存在していることが分かる。
【0101】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオンの量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.03質量%であった。
【0102】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、全視野において亜酸化銅粒子の剥離が見られた。
【0103】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日静置後の粘度は、81Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度80Kuに比べ、殆ど変化していなかった。
【0104】
(比較例3)
(電着工程及び水洗工程)
芯材として実施例3で用いた珪石粉(平均粒子径32μm) 10gを、電解液水溶液1Lに加え、電極を設置し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、以下の条件で、25分間通電し、芯材に亜酸化銅を電着させた。次いで、電解液水溶液をろ過し、ろ過物を水洗後、グリセリン水溶液に分散後濾過、乾燥し、亜酸化銅被覆粉体B8 16gを得た。亜酸化銅被覆粉体B8の真比重は3.2g/cm3であった。
<電解液水溶液>
塩化ナトリウム:400g/L(塩素イオン濃度243g/L)
グリセリン :10g/L
<処理条件>
電流密度 :5A/dm2
電解液水溶液の液温 :50℃
電極 :陽極及び陰極のいずれも銅板
【0105】
(性能評価)
<表面観察>
亜酸化銅被覆粉体B8を、電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡写真を図15に示す。その結果、芯材の表面が、まばらに、亜酸化銅粒子で被覆されていることが観察された。また、亜酸化銅被覆粉体同士の凝集が見られた(図16)。また、亜酸化銅の単独粉が見られた。
【0106】
<粒度分布測定>
得られた亜酸化銅被覆粉体B8の粒度分布を測定した。亜酸化銅被覆粉体B8の粒度分布を図29に示す。亜酸化銅被覆粉体B8の粒度分布は、原料の芯材の珪石粉の粒度分布に比べ、微細部分が多かった。従って、これらの分布図より、亜酸化銅被覆粉体B8では、芯材の表面に均一に亜酸化銅粒子が被覆されておらず、亜酸化銅被覆粉体の凝集が存在していることが分かる。
【0107】
<水中で溶出する塩素イオン量の測定>
実施例1と同様の方法で行ったところ、水中で亜酸化銅被覆粉体から溶出する塩素イオンの量は、亜酸化銅被覆粉体に対して0.15質量%であった。
【0108】
<亜酸化銅の密着性試験>
実施例1と同様の方法で行ったところ、全視野において亜酸化銅粒子の剥離が見られた。
【0109】
<防汚塗料の保存安定性>
実施例1と同様の方法で行ったところ、36日間静置後の粘度は、95Kuであり、防汚塗料の調合直後の粘度80Kuに比べ、高くなっていた。
【0110】
【表1】
【0111】
表1中、付き回りについては、芯材への亜酸化銅粒子の電着状態が、全面的なら「○」、部分的なら「×」とした。また、密着性については、芯材から亜酸化銅粒子が剥離した粒子数の平均値が1以下の場合を「○」、1を超える場合を「×」とした。また、分散性については、凝集粒子が無かった場合を「○」、凝集粒子が有った場合を「×」とした。また、塗料安定性については、36日経過後に、塗料の粘度変化が10%未満の場合を「○」、粘度変化が10%以上の場合を「×」とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開平1−213368号公報(特許請求の範囲)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、該芯材の表面に被覆されている亜酸化銅と、からなる亜酸化銅被覆粉体であり、
該芯材/該亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、
水中で該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、該亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であること、
を特徴とする亜酸化銅被覆粉体。
【請求項2】
前記芯材が、珪酸含有無機化合物であることを特徴とする請求項1記載の亜酸化銅被覆粉体。
【請求項3】
前記芯材が、アルカリ土類金属化合物であることを特徴とする請求項1記載の亜酸化銅被覆粉体。
【請求項4】
前記芯材が、有機化合物であることを特徴とする請求項1記載の亜酸化銅被覆粉体。
【請求項5】
前記芯材が、アルミナであることを特徴とする請求項1記載の亜酸化銅被覆粉体。
【請求項6】
芯材を、第一スズ塩の水溶液、銀塩の水溶液及びパラジウム塩の水溶液のいずれか1種又は2種以上の表面処理水溶液に接触させて、芯材の表面処理物を得る表面処理工程と、
該芯材の表面処理物を、電解質及び酸化防止剤を含有する電解液水溶液に分散させ、金属銅を陽極として、該芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させて、亜酸化銅被覆粉体を得る電着工程と、
該亜酸化銅被覆粉体を水洗して、亜酸化銅被覆粉体を得る水洗工程と、
を有し、
該電解液水溶液中の塩素イオン濃度が、20〜200g/Lであること、
を特徴とする亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項7】
前記表面処理水溶液が、フッ化スズ水溶液、硝酸銀水溶液及び塩化パラジウム水溶液のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項6記載の亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項8】
前記電解質が、塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項6又は7いずれか1項記載の亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項9】
前記酸化防止剤が、グリセリンであることを特徴とする請求項6〜8いずれか1項記載の亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項10】
前記亜酸化銅被覆粉体を、酸化防止剤を含有する洗浄水で洗浄することにより、前記水洗工程を行うこと特徴とする請求項6〜9いずれか1項記載の亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項1】
芯材と、該芯材の表面に被覆されている亜酸化銅と、からなる亜酸化銅被覆粉体であり、
該芯材/該亜酸化銅の質量比が、95/5〜10/90であり、
水中で該亜酸化銅被覆粉体より溶出する塩素イオン量が、該亜酸化銅被覆粉体に対して0.1質量%以下であること、
を特徴とする亜酸化銅被覆粉体。
【請求項2】
前記芯材が、珪酸含有無機化合物であることを特徴とする請求項1記載の亜酸化銅被覆粉体。
【請求項3】
前記芯材が、アルカリ土類金属化合物であることを特徴とする請求項1記載の亜酸化銅被覆粉体。
【請求項4】
前記芯材が、有機化合物であることを特徴とする請求項1記載の亜酸化銅被覆粉体。
【請求項5】
前記芯材が、アルミナであることを特徴とする請求項1記載の亜酸化銅被覆粉体。
【請求項6】
芯材を、第一スズ塩の水溶液、銀塩の水溶液及びパラジウム塩の水溶液のいずれか1種又は2種以上の表面処理水溶液に接触させて、芯材の表面処理物を得る表面処理工程と、
該芯材の表面処理物を、電解質及び酸化防止剤を含有する電解液水溶液に分散させ、金属銅を陽極として、該芯材の表面処理物の表面に亜酸化銅を電着させて、亜酸化銅被覆粉体を得る電着工程と、
該亜酸化銅被覆粉体を水洗して、亜酸化銅被覆粉体を得る水洗工程と、
を有し、
該電解液水溶液中の塩素イオン濃度が、20〜200g/Lであること、
を特徴とする亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項7】
前記表面処理水溶液が、フッ化スズ水溶液、硝酸銀水溶液及び塩化パラジウム水溶液のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項6記載の亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項8】
前記電解質が、塩化ナトリウムであることを特徴とする請求項6又は7いずれか1項記載の亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項9】
前記酸化防止剤が、グリセリンであることを特徴とする請求項6〜8いずれか1項記載の亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【請求項10】
前記亜酸化銅被覆粉体を、酸化防止剤を含有する洗浄水で洗浄することにより、前記水洗工程を行うこと特徴とする請求項6〜9いずれか1項記載の亜酸化銅被覆粉体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2009−197221(P2009−197221A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8550(P2009−8550)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
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