説明

亜鉛合金及び金属化プラスチックフィルムコンデンサ端面電極材料

【課題】有害とされる鉛(Pb)やアンチモン(Sb)を含まない亜鉛合金及び有害物質を含まずかつ電気特性をある程度維持できる金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料を提供する。
【解決手段】Zn91.0〜95.0重量%、Al3.0〜5.0重量%、Cu1.5〜3.5重量%、Mg0.001〜0.02重量%、Si0.0001〜0.02重量%からなる合金であり、金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極用素材として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、亜鉛合金及び金属化プラスチックフィルムコンデンサ端面電極材料に係り、詳しくは、鉛・アンチモンを含まない環境安全性の高い亜鉛合金及びそれを用いた金属化プラスチックフィルムコンデンサ端面電極材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、金属化プラスチックフィルムコンデンサ素子及びその端面電極部は、構成材料が温度に敏感なため融点の高いはんだを用いることができず、Sn/Pb/Zn合金を主成分にした低温アルミニウム用はんだを用いてはんだ付けが行われている。このはんだ付けの方法はアーク溶射機による溶射(メタリコン)、または鏝による擦り付け(摩擦はんだ付け)が採用されている。主として使用されている金属合金は、Sn37.0〜39.0重量%、Zn3.0〜5.0重量%、Sb0.5〜1.5重量%、Cu0.05〜0.1重量%、Pb55.0〜59.5重量%からなるアルミニウム用はんだ合金であり、この合金の温度範囲は、固相温度170℃、液相温度224℃である。もう一つは、Sn18.5〜21.5重量%、Zn2.0〜4.0重量%、Sb0.5〜1.5重量%、Cu0.03〜0.1重量%、Pb73.0〜79.0重量%からなるアルミニウム用はんだ合金を使用しており、この温度範囲は、固相温度173℃、液相温度263℃である。
【0003】
現在、巻回型・積層型の金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極に用いられている無鉛金属は、一層目に亜鉛又は亜鉛合金を主体にし、二層目にSn80重量%/Zn20重量%合金、Sn70重量%/Zn30重量%合金、Sn50重量%/Zn50重量%合金の三種類を使い分けているが、これらは、比較的安価であることと有害性に配慮して選択されたものであり、電気的特性及び物理的特性としては充分な性能を発揮するものではない。
【0004】
また、金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極に使用される金属は、コンデンサの性能を決定する上で最も重要であるが、二層目に使用される金属も重要である。
【0005】
即ち、二層目の金属と一層目の金属との接合接着性によってコンデンサの性能が左右され、又電気特性にも大きな影響を与えるのである。また、二層目金属にスポット溶接又ははんだ付けされるリードワイヤー又はリード端子と、二層目金属との相性により、コンデンサの物理特性・電気特性が決まり、コンデンサそのものの性能が左右される。
【0006】
リードワイヤー又はリード端子を二層目金属にスポット溶接又ははんだ付けする場合は、二層目金属の材質の安定が必要である。従来、二層目金属にSn/Pbはんだ合金を使用し、安全と安定を維持していた。更に、無鉛はんだとしてSn80重量%/Zn20重量%合金、Sn70重量%/Zn30重量%合金、Sn50重量%/Zn50重量%合金の三種類の二元合金が使用されていたが、Sn/Znの二元合金に多々発生するZnの拡散腐食が、リードワイヤー又はリード端子との溶接部分に支障を生じることがある。
【0007】
拡散腐食は、製造時には支障がなくても数年後に経年変化が起こり、溶接部分が拡散腐食による剥離、クラック等が発生する。
【0008】
現在アルミニウム用無鉛はんだとし特許文献1に記載のものが主流で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-58370号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載の金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極に用いられる合金は、有害とされるアンチモン(Sb)を含んでいるという欠点がある。
【0011】
この発明は、有害とされる鉛(Pb)やアンチモン(Sb)を含まない亜鉛合金及び有害物質を含まずかつ電気特性をある程度維持できる金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上のような問題を解決する本発明は、以下のような構成を有する。
【0013】
(1)Zn91.0〜95.0重量%、Al3.0〜5.0重量%、Cu1.5〜3.5重量%、Mg0.001〜0.02重量%、Si0.0001〜0.02重量%からなるはんだ合金。
【0014】
(2)Zn90.0〜93.0重量%、Al3.0〜5.0重量%、Cu1.5〜3.5重量%、Sn1.0〜6.0重量%、Mg0.001〜0.02量%、Si0.0001〜0.02重量%からなるからなるはんだ合金。
【0015】
(3)上記(1)または(2)に記載のはんだ合金よりなることを特徴とする金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料。
【0016】
(4)上記(3)に記載の金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料のメタリコン有することを特徴とする金属化プラスチックフィルムコンデンサ。
【0017】
(5)上記(3)に記載の金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料が、端面に鏝にて擦り付けされていることを特徴とする金属化プラスチックフィルムコンデンサ。
【発明の効果】
【0018】
本発明のはんだ合金によれば、鉛、カドミウム、アンチモンなどの有害物質を含有しない合金であるにもかかわらず、はんだ合金として良好な電気的特性や物理特性を有する。
【0019】
本発明の金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料によれば、金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面をアーク溶射機にて溶射(メタリコン又はメタルスプレー)及び擦り付け(摩擦はんだ付け)製造に於いて鏝チップの食われ現象の少ない、良好な作業性を有する。
【0020】
即ち、Znに有効量のAl、Cu、Sn、Mg、Siの適量の添加により、結晶構造が微細化なり、金属結合による電位差が小さくなることから酸化膜が均一、安定した酸化膜が形成され、従来の二元合金の酸化膜より少ない。これは、熱による接合時(鏝付け・ガスバ−ナ付け・炉中付け等)従来の二元合金だと、母材との拡散反応を起こし、又、大気との拡散反応を起こすため、接合部の内部にデンドライトが起こる。又、数年後に経年変化が起こり、母材と接合面に剥離現象が現れ、表面にはクラックが現れてくる。この様な、拡散反応現象を少なくするためには、合金内部の結晶構造を微細化し金属元素との電極電位差を小さくする。つまり、アルミニウム母材と本発明のはんだ合金との電位差が小さくなることから合金接合時の接合面には均一、安定した酸化膜が形成される。
【0021】
金属化プラスチックフィルムの内部電極であるアルミニウムとの接合が安定化した外部電極を形成し、外部電極であるメタリコン合金層及び摩擦はんだ付層にリードワイヤー、リ−ド端子等のスポット溶接に対して安定した接合ができ、電気的特性、かつ物理特性の優れたコンデンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンデンサの構成を示す模式図である。
【図2】コンデンサの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の合金は、Pb、Sb及びCdを含まないはんだ合金である。そして、金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極用素材としては、例えば、アルミニウムの蒸着された誘電体フィルムを巻回及び積層等した金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面に対して、鏝による擦り付け(摩擦はんだ付け)により、及び溶射技術により端面電極を形成する線状のはんだ及びメタリコン材として使用される。
【0024】
実施の形態(1)
Zn93.48重量%、Al4.0重量%、Cu2.5重量%、Mg0.01重量%、Si0.01重量%の合金からなる。この実施形態は、金属化プラスチックフィルムコンデンサ端面電極材として使用する場合に、コンデンサの電気的特性・物理的特性がより良好となる。特に、ポリエチレンテレフタレートからなる誘電体フィルムに有効であるが、特にポリプロピレンからなる誘電体フィルムについて有効である。
【0025】
このような効果は、以下の範囲内で有効に発揮される。即ち、Znの含有率が91.0〜95.0重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Znの含有率は、好ましくは91.5〜94.0重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0026】
Alの含有率が3.0〜5.0重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Alの含有率は、好ましくは3.2〜4.8重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0027】
Cuの含有率が1.5〜3.5重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Cuの含有率は、好ましくは1.7〜3.3重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0028】
Mgの含有率が0.001〜0.02重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Mgの含有率は、好ましくは0.005〜0.015重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0029】
Siの含有率が0.0001〜0.02重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Siの含有率は、好ましくは0.0005〜0.015重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0030】
この合金は、ある程度の大きさのビレット及び長尺鋳込みインゴットに鋳込まれた後、ビレット品は、長さを揃えてからプレス装置により5.0〜8.0mm度の線径になるように押出されて、線状の擦り付け(摩擦はんだ付け)用及び溶射用材料としてアルミニウム用亜鉛合金材に形成される。しかしこの合金は、硬度が硬いことからプレス装置で難しい時は、長尺鋳込みインゴットに鋳込まれた合金を溝ロール圧延機で段階的に圧延し伸ばし5.0〜8.0mm程度の線径で一旦輪取りの状態で管理する、数日後輪取りの状態の線状品を表面熱処理(焼鈍炉)に入れ一定の温度で30分〜45分くらい表面熱処理(焼鈍炉)後、大型・中型・小型伸線機で溶射用のメタリコン材に形成される。
【0031】
この実施の形態(1)は、固相温度320.0℃〜液相温度360.0℃、比重6.5、硬度32.6Hv、伸び63.0%、抗張力329.0N/mm2、電気比抵抗10.8μΩcm、電導率31.4%の物性特性を有する。
【0032】
実施の形態(2)
Zn90.48重量%、Al4.0重量%、Cu2.5重量%、Sn3.0重量%、Mg0.01重量%、Si0.01重量%の合金からなる。
【0033】
この実施形態は、金属化プラスチックフィルムコンデンサ端面電極材として使用する場合に、コンデンサの電気的特性・物理的特性がより良好となる。特に、ポリエチレンテレフタレートからなる誘電体フィルムに有効であるが、特にポリプロピレンからなる誘電体フィルムについて有効である。
【0034】
さらに上記効果は、特に構成要素が以下の範囲内で有効に発揮される。即ち、Znの含有率が90.0〜93.0重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Znの含有率は、好ましくは90.0〜92.0重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0035】
Alの含有率が3.0〜5.0重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Alの含有率は、好ましくは3.5〜4.5重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0036】
Cuの含有率が1.5〜3.5重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Alの含有率は、好ましくは2.0〜3.0重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0037】
Snの含有率が1.0〜6.0重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Snの含有率は、好ましくは1.5〜5.5重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0038】
Mgの含有率が0.001〜0.02重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Mgの含有率は、好ましくは0.005〜0.015重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0039】
Siの含有率が0.0001〜0.02重量%であると良い。この範囲を超えると、接合部の接合強度が十分に得られない。Siの含有率は、好ましくは0.0005〜0.015重量%であるとよい。この範囲においては、接合部の強度がさらに十分強化される。
【0040】
この合金は、ある程度の大きさのビレット及び長尺鋳込みインゴットに鋳込まれた後、ビレット品は、長さを揃えてからプレス装置により5.0〜8.0mm程度の線径になるように押出されて、線状の擦り付け(摩擦はんだ付け)用及び溶射用材料としてアルミニウム用亜鉛合金材に形成される。しかしこの合金は、硬度が硬いことからプレス装置で難しい時は、長尺鋳込みインゴットに鋳込まれた合金を溝ロール圧延機で段階的に圧延し伸ばし5.0〜8.0mm程度の線径で一旦輪取りの状態で管理する、数日後輪取りの状態の線状品を表面熱処理(焼鈍炉)に入れ一定の温度で30分〜45分くらい表面熱処理(焼鈍炉)後、大型・中型・小型伸線機で溶射用のメタリコン材に形成される。
【0041】
この実施の形態(2)は、固相温度312.0℃〜液相温度354.7℃、比重6.5、硬度31.8Hv、伸び74.0%、抗張力261.0N/mm2、電気比抵抗9.4μΩcm、電導率29.6%の物性特性を有する。
【0042】
以下、本発明のはんだ合金を、金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極用素材として使用した場合の実施の形態を説明する。図1は、コンデンサの構造を示す断面模式図である。
【0043】
この実施形態は、プラスチックフィルム21a、21bの片面にアルミニウムが蒸着された蒸着膜22a、22bを有し、それぞれ反対側にマージン(非蒸着部)23a、23b(図示せず)を有する金属化プラスチックフィルムを2枚重ねて巻回し、構成される。このフィルム21a、21bを巻回して構成された本体20の端面に、本発明の合金を擦り付け、又は金属溶射(メタリコン)等公知の方法により、端面電極31を形成する。本発明の合金により端面電極を構成すると、端面電極31と本体20との間の接続部30の接合強度が十分に得られる。図2に示されているように、端面電極を、本体20の端面に直接設けられる第1層31と、第1層31の上に形成される第2層32から構成することができる。これにより、十分な接合強度を有し、かつ、良好な電気的な特性を有する端面電極を得ることができる。例えば、端面電極32にはリード線4がスポット溶接により接続される。
【0044】
表1に記載の構成を有するはんだ合金を、コンデンサ端面にコテ付にて擦り付け、コンデンサ端面電極を構成した。
【表1】

実施例1、2の合金は、接合部の光沢及び強度とも非常に良好であった。接合部の光沢の良し悪しは、はんだ付部の割れや、酸化物の残渣の程度を表し、光沢が良い場合には、接合部の耐久性が良好であること、スポット溶接等が容易であることを示している。表1に記載されている他の比較例では、接合部の強度が十分でなかった。
【0045】
接合部の強度は、コンデンサ端面を構成する比較例1〜11による端面電極部をラジオペンチで摘み、引っ張ることで計った。実施例1では、10回以上引っ張った場合においても、剥離しない場合ことを確認した。比較例1〜11、10回以下で剥離又は5回以下で剥離していた。
【符号の説明】
【0046】
1:金属化フィルムコンデンサ
20:本体
21:プラスチックフィルム
22:蒸着膜
23:マージン
30:接合部
31:端面電極(第1層)
32:端面電極(第2層)
4:リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zn91.0〜95.0重量%、Al3.0〜5.0重量%、Cu1.5〜3.5重量%、Mg0.001〜0.02重量%、Si0.0001〜0.02重量%からなるはんだ合金。
【請求項2】
Zn90.0〜93.0重量%、Al3.0〜5.0重量%、Cu1.5〜3.5重量%、Sn1.0〜6.0重量%、Mg0.001〜0.02量%、Si0.0001〜0.02重量%からなるからなるはんだ合金。
【請求項3】
請求項1または2に記載のはんだ合金よりなることを特徴とする金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料。
【請求項4】
請求項3に記載の金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料のメタリコン有することを特徴とする金属化プラスチックフィルムコンデンサ。
【請求項5】
請求項3に記載の金属化プラスチックフィルムコンデンサの端面電極材料が、端面に鏝にて擦り付けされていることを特徴とする金属化プラスチックフィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−6071(P2012−6071A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146993(P2010−146993)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(504452837)ナノジョイン株式会社 (11)
【Fターム(参考)】