説明

亜鉛電解液の製造方法

【課題】ハロゲン含有量の高い亜鉛含有物を原料に用いて、乾式処理を介することなく、生産性が高く、ハロゲンの除去が容易である、低ハロゲン濃度の高純度な亜鉛電解元液を効率よく製造できる亜鉛電解液の製造方法の提供。
【解決手段】亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出して抽出元液(水相A)を得る浸出工程と、前記抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)とを撹拌して混合することにより、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、ハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る溶媒抽出工程と、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと電解尾液(水相E)とを撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を得る逆抽出工程とを含む亜鉛電解液の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン含有量の高い亜鉛含有物から低ハロゲン濃度の高純度な亜鉛電解液(亜鉛電解元液)を効率よく製造できる亜鉛電解液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、亜鉛製錬は、図1に示すように、亜鉛鉱石を焙焼し、浸出した後、浄液工程を経て、電解採取を行って電気亜鉛を製造していた。
近年、キュポラダスト、溶融飛灰等の亜鉛を含有する亜鉛含有物のリサイクルが重要な課題となっている。これまでの亜鉛含有物の多くは亜鉛品位も低く埋め立て処分されていたが、最近では亜鉛品位が20%〜50%の亜鉛含有ダストも排出され、亜鉛の二次原料としての可能性を有してきた。
【0003】
このような亜鉛含有物はハロゲン含有量が高く、これらは製錬工程における設備の腐食、カソードの剥離性の低下などをもたらすため、前もって除去する必要がある。ハロゲンの除去方法としては、塩化揮発−酸化焙焼等の乾式処理が知られており、既存の焙焼炉に原料を添加することで処理を可能としてきた。しかし、前記酸化焙焼炉での処理には設備能力の限界があり、新たに炉を増設すると多大なコストがかかり採択できない。前記酸化焙焼炉は現行の亜鉛鉱石や中間品の亜鉛残渣を処理するので手一杯であり、大量の前記亜鉛含有物を酸化焙焼炉で処理することは困難である。
【0004】
そこで、湿式製錬法を用いた処理方法の検討が必要となる。例えば特許文献1には、ハロゲン濃度がごく少量の原料の場合であるが、亜鉛の電解後液を中和後、溶媒抽出を行い、亜鉛を濃縮し、更に金属不純物を除去した後に電解液に返送することが開示されている。前記特許文献1では、亜鉛電解后液の不純物除去に際し、溶媒抽出法を用いて液中のMg、Na、Mn、Cl、Fを液中に留めて除去する方法が記載されているが、原料のハロゲン濃度が0.003mol/L(0.1g/L)と低く、高ハロゲン濃度の液に対しての効果が明確でなく、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平8−260181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ハロゲン含有量の高い亜鉛含有物を原料に用いて、乾式処理を介することなく、生産性が高く、ハロゲンの除去が容易である、低ハロゲン濃度の高純度な亜鉛電解元液を効率よく製造できる亜鉛電解液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出して抽出元液(水相A)を得る浸出工程と、
前記抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)とを撹拌して混合することにより、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、ハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る溶媒抽出工程と、
亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、電解尾液(水相E)とを撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を得る逆抽出工程とを含むことを特徴とする亜鉛電解液の製造方法である。
<2> 溶媒抽出工程と逆抽出工程との間に、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと希釈電解尾液(水相C)とを攪拌して混合することにより亜鉛を含む有機相Cとハロゲンを含む洗浄后液(水相D)を得る溶媒洗浄工程を含む前記<1>に記載の亜鉛電解液の製造方法である。
<3> 亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出し、pH3〜4とした抽出元液(水相A)を得る浸出工程と、
抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)とを体積比(有機相A/水相A)が1.5〜5となるように撹拌して混合することにより、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bとハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る溶媒抽出工程と、
前記亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、希釈電解尾液(水相C)とを体積比(有機相B/水相C)が20〜50となるように撹拌して混合することにより亜鉛を含む有機相Cとハロゲンを含む洗浄后液(水相D)を得る溶媒洗浄工程と、
前記亜鉛を含む有機相Cと、電解尾液(水相E)とを体積比(有機相C/水相E)が5〜20となるように撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を得る逆抽出工程とを含む前記<2>に記載の亜鉛電解液の製造方法である。
<4> 酸浸出時のハロゲン濃度(塩素濃度とフッ素濃度の合計)が1000mg/L以上である前記<1>から<3>のいずれかに記載の亜鉛電解液の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、ハロゲン含有量の高い亜鉛含有物を原料に用いて、乾式処理を介することなく、生産性が高く、ハロゲンの除去が容易な、低ハロゲン濃度の高純度な亜鉛電解元液を効率よく製造できる亜鉛電解液の製造方法を提供することができる。
更に、本発明によると、抽出后液、洗浄后液は原料の浸出工程に再利用することができ、電解尾液は洗浄、逆抽出に再利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の亜鉛電解液の製造方法は、浸出工程と、溶媒抽出工程と、逆抽出工程とを含み、好ましくは前記溶媒抽出工程と前記逆抽出工程との間に溶媒洗浄工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0010】
本発明の第1の手段による亜鉛電解液の製造方法においては、ハロゲンを含む亜鉛含有物をpH3〜4で酸浸出し、亜鉛及びハロゲンが溶出した液を抽出元液として亜鉛抽出剤を含む有機溶媒と撹拌して混合させることにより、亜鉛は有機相に、ハロゲンは水相に分離される。この際、抽出元液のハロゲン濃度が高いため、ハロゲンの一部は有機相に相当量が移行する。前記有機相に移行したハロゲンは逆抽出工程時に電解元液に移行し、一部は有機相に蓄積される。
本発明の第2の手段による亜鉛電解液の製造方法においては、溶媒抽出を施した有機相に希釈した電解尾液を洗浄剤として撹拌して混合させて溶媒の洗浄を行い、逆抽出工程へのハロゲンの過剰混入を防止して高純度の亜鉛電解元液(逆抽出后液、亜鉛電解液)を作製する。その結果、繰り返し使用される電解液及び有機相へのハロゲンの蓄積を極力防ぐことができ、連続的な操業が可能となる。
【0011】
−浸出工程−
前記浸出工程は、亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出して抽出元液(水相A)を調製する工程である。
【0012】
本発明で処理される亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば鋳物工場から排出されるキュポラダストや製鉄所から排出される鉄鋼ダスト、産業廃棄物を処理した際に生成される溶融飛灰などが挙げられる。これらの亜鉛含有ダストは、一般に亜鉛(Zn)の他に鉄(Fe)、鉛(Pb)、銅(Cu)、シリカ(SiO)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、塩素(Cl)、フッ素(F)の含有量が高く、通常、亜鉛を20%〜50%含み、ハロゲンとして塩素を1%〜15%、フッ素を0.1%〜10%含む。
前記ハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出し、亜鉛及びハロゲンを液中に溶出させた後、pH3〜4とした浸出液を抽出元液(水相A)とした。
この浸出液のハロゲン濃度(少なくとも塩素濃度とフッ素濃度の合計)は1000mg/L以上である。
前記酸浸出に用いる酸としては、繰返し使用される抽出尾液(抽出后液、洗浄后液)に酸の不足分を補う硫酸を加えたものを使用してもよい。
【0013】
−溶媒抽出工程−
前記溶媒抽出工程は、前記前記抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)とを撹拌して混合することにより、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、ハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る工程である。
【0014】
図4に示すミキサーセトラーを用いて、亜鉛及びハロゲンを含む抽出元液(水相A)と亜鉛抽出剤を含む有機溶媒(有機相A)を向流接触させ、攪拌して混合することにより亜鉛及び少量のハロゲンを含む有機相Bとハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る。このとき、体積比(有機相A/水相A)は1.5〜5が好ましい。この範囲であれば亜鉛が効果的に抽出される。なお、体積比の定義には両相とも室温、大気圧下での体積を使用することとする。
前記亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒としては、例えば亜鉛抽出剤ジ−2−エチルヘキシルモノチオリン酸(以下、「D2EHPA」と称することもある)と、ケロシンとを体積比(D2EHPA:ケロシン)で1:1〜1:4に希釈した有機溶媒を用いることができる。この範囲であれば、必要な溶媒の抽出能力を保つとともに粘度上昇による流動性悪化を防ぐことができる。この溶媒抽出工程で回収されるハロゲンを含む抽出后液(水相B)は、浸出工程において再使用されるが、一部は排水処理に廻り、抽出后液に残存した亜鉛は水酸化物で回収される(図示せず)。
【0015】
−溶媒洗浄工程−
前記溶媒洗浄工程は、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと希釈電解尾液(水相C)とを攪拌して混合することにより亜鉛を含む有機相Cとハロゲンを含む洗浄后液(水相D)を得る工程である。
【0016】
洗浄剤として用いる希釈電解尾液の希釈率は6倍〜30倍が好ましく、8倍〜20倍がより好ましい。前記希釈率が、6倍未満であると、ハロゲンだけでなく亜鉛まで水相に移行してしまい生産性が悪化する。一方、前記希釈率が20倍を超えると、ハロゲンの洗浄が不十分になることがある。また、前記希釈電解尾液の遊離酸濃度(FA)は10g/L〜30g/Lの範囲が好ましい。後述する実施例2では電解尾液を10倍希釈して用いた。
図4に示すミキサーセトラーを用いて、前記亜鉛と少量のハロゲンを含む有機相Bと洗浄液である10倍に希釈した電解尾液(水相C)を向流接触させ、攪拌して混合することにより亜鉛を含む有機相Cとハロゲンを含む洗浄后液(水相D)を得る。
前記有機相Bと希釈電解尾液(水相C)との体積比(有機相B/水相C)は20〜50が好ましく、20〜30がより好ましい。この範囲であれば亜鉛よりもハロゲンが有機溶媒に優先的に移行するためハロゲンを溶媒から除去することが可能である。また、希釈電解尾液を用いることで新たに硫酸を使用することなく溶媒の洗浄を行うことができ、上記の複合により有機相から水相への亜鉛(Zn)の移動を抑えつつ、ハロゲンの移動は促進させると言う効果を得ることができる。
なお、ハロゲンを含む洗浄后液(水相D)は浸出工程において再使用できる。
【0017】
−逆抽出工程−
前記逆抽出工程は、前記溶媒抽出工程後に前記溶媒洗浄工程を行わない場合には、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、電解尾液(水相E)とを撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を作製する工程である。
前記逆抽出工程は、前記溶媒抽出工程後に前記溶媒洗浄工程を行った場合には、亜鉛を含む有機相Cと、電解尾液(水相E)とを撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を作製する工程である。
【0018】
図4に示すミキサーセトラーを用いて、前記亜鉛及びハロゲンを含む有機相B、又は前記亜鉛を含む有機相Cと、電解尾液(水相E)を向流接触させ、混合撹拌することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、高純度の亜鉛電解元液を作製する。
【0019】
前記有機相Bと電解尾液(水相E)との体積比(有機相B/水相E)は5〜20が好ましく、6〜15がより好ましい。この範囲であれば有機溶媒中の亜鉛は逆抽出后液にほぼ全量移行し、高純度の亜鉛電解元液が得られる。
前記有機相Cと電解尾液(水相E)との体積比(有機相C/水相E)は5〜20が好ましく、6〜15がより好ましい。この範囲であれば有機溶媒中の亜鉛は逆抽出后液にほぼ全量移行し、高純度の亜鉛電解元液が得られる。
前記電解尾液(水相E)の遊離酸濃度(FA)は硫酸で50g/L以上であることが好ましい。前記遊離酸濃度(FA)が50g/L未満であると、逆抽出不可能となることがある。なお、亜鉛電解後の電解尾液は、製造条件によるものの、例えば硫酸換算の酸濃度でFAが180g/L〜200g/Lである。
なお、逆抽出後の溶媒は抽出工程において再使用できる。
【0020】
ここで、図2は、本発明の第1形態の亜鉛電解液の製造方法の工程フローを示し、亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出して抽出元液(水相A)を得る浸出工程と、
前記抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)とを撹拌して混合することにより、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、ハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る溶媒抽出工程と、
亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、電解尾液(水相E)とを撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を得る逆抽出工程と、を順次行うことにより、低ハロゲン濃度の高純度な亜鉛電解液を効率よく製造することができる。
【0021】
また、図3は、本発明の第1形態の亜鉛電解液の製造方法の工程フローを示し、亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出し、pH3〜4とした抽出元液(水相A)を得る浸出工程と、
抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)とを撹拌して混合することにより、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bとハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る溶媒抽出工程と、
前記亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、希釈電解尾液(水相C)とを撹拌して混合することにより亜鉛を含む有機相Cとハロゲンを含む洗浄后液(水相D)を得る溶媒洗浄工程と、
前記亜鉛を含む有機相Cと、電解尾液(水相E)とを撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を得る逆抽出工程と、を順次行うことにより、低ハロゲン濃度の高純度な亜鉛電解液を効率よく製造することができる。また、図3の亜鉛電解液の製造方法は、図2の亜鉛電解液の製造方法に比べて洗浄工程を有しているので、逆抽出后液の塩素濃度、及びフッ素濃度をより低くすることができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
図2に示す亜鉛電解液の製造方法に従って、以下のようにして亜鉛電解元液(逆抽出后液)を製造した。
まず、亜鉛含有物の酸浸出により亜鉛濃度が32.58g/L、塩素濃度が11000mg/L、フッ素濃度が1600mg/LでpH4となる抽出元液(水相A)を作製した。得られた抽出元液を図4に示すミキサーセトラーを用いて、ジ−2−エチルヘキシルモノチオリン酸(D2EHPA):ケロシン=1:2(体積比)の亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)で多段溶媒抽出を行い、亜鉛を有機溶媒(有機相B)に、ハロゲンを抽出后液(水相B)に分離させた。なお、抽出元液流量は50mL/min、有機溶媒流量は100mL/minとし、抽出段数は3段とした。
次に、抽出後の有機溶媒(有機相B)は、有機溶媒流量を100mL/min、電解尾液(水相E)流量を12mL/minとして2段で逆抽出を行い、逆抽出后液(水相F)が得られた。得られた逆抽出后液を亜鉛電解元液とした。
電解尾液の組成、及び酸濃度を表1に示す。また、浸出液、抽出后液、及び逆抽出后液の組成を表2に示す。
なお、抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)との体積比(有機相A/水相A)は、2.0であった。
亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、電解尾液(水相E)との体積比(有機相B/水相E)は、8.3であった。
逆抽出后液は、亜鉛濃度が132.2g/L、ハロゲン濃度は塩素濃度が802mg/L、フッ素濃度が102mg/Lであり、亜鉛以外の金属元素濃度は非常に低く、低ハロゲン濃度で高純度の亜鉛電解元液が得られた。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
(実施例2)
実施例1と同じ抽出元液を用い、図3に示す亜鉛電解液の製造方法に従って、以下のようにして亜鉛電解元液(逆抽出后液)を製造した。なお、この図3の製造方法では、図2の亜鉛電解液の製造方法において洗浄工程が追加されている。
まず、亜鉛含有物の酸浸出により亜鉛濃度が32.58g/L、塩素濃度が11000mg/L、フッ素濃度が1600mg/LでpH4となる抽出元液(水相A)を作製した。このハロゲン濃度の高い抽出元液を、図4に示すミキサーセトラーを用いてジ−2−エチルヘキシルモノチオリン酸(D2EHPA):ケロシン=1:2(体積比)の亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)で多段溶媒抽出を行い、亜鉛を有機溶媒(有機相B)にハロゲンを抽出后液(水相B)に分離させた。なお、抽出元液流量は50mL/min、有機溶媒流量は100mL/minとし、抽出段数は3段とした。
次に、溶媒中に抽出されたハロゲンを除去するため有機相Bを10倍希釈した電解尾液(水相C)を洗浄液として2段で洗浄を行い、フッ素及び塩素の除去を行った。有機溶媒流量は100mL/min、洗浄液流量は5mL/minとした。
洗浄後の有機溶媒(有機相C)は、有機溶媒流量を100mL/min、電解尾液(水相E)流量を12mL/minとして2段で逆抽出を行い、逆抽出后液(水相F)が得られた。得られた逆抽出后液を亜鉛電解元液とした。
亜鉛含有物の浸出液、抽出后液、洗浄后液、及び逆抽出后液の液組成を表3に示す。
なお、抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)との体積比(有機相A/水相A)は、2.0であった。
亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、希釈電解尾液(水相C)との体積比(有機相B/水相C)は、20であった。
亜鉛を含む有機相Cと、電解尾液(水相E)との体積比(有機相C/水相E)は、8.3であった。
逆抽出后液は、亜鉛濃度が130.2g/L、ハロゲン濃度は塩素濃度が280mg/L、フッ素濃度が9mg/Lであり、亜鉛以外の金属元素濃度は非常に低く、低ハロゲン濃度で高純度の亜鉛電解元液が得られた。
【0027】
【表3】

【0028】
表1〜表3の結果から、溶媒洗浄工程を行った実施例2の逆抽出后液のハロゲン濃度(塩素濃度とフッ素濃度の合計)は、溶媒洗浄工程を行わない実施例1の逆抽出后液のハロゲン濃度と比べてより低く、亜鉛電解元液として十分に供することができた。また、実施例2で得られた亜鉛電解元液を電解すると、使用した電解尾液と同等の組成になるため、実施例1に比べて更に生産性が高いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の亜鉛電解液の製造方法は、ハロゲン含有量の高い亜鉛含有物を原料に用いて、乾式処理を介することなく、生産性が高く、ハロゲンの除去が容易であり、低ハロゲン濃度の高純度な亜鉛電解元液を効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、従来の亜鉛電解プロセスの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、実施例1の亜鉛電解液の製造方法を示す工程フロー図である。
【図3】図3は、実施例2の亜鉛電解液の製造方法を示す工程フロー図である。
【図4】図4は、本発明の亜鉛電解液の製造方法に用いる溶媒抽出装置の一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出して抽出元液(水相A)を得る浸出工程と、
前記抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)とを撹拌して混合することにより、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、ハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る溶媒抽出工程と、
亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、電解尾液(水相E)とを撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を得る逆抽出工程とを含むことを特徴とする亜鉛電解液の製造方法。
【請求項2】
溶媒抽出工程と逆抽出工程との間に、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと希釈電解尾液(水相C)とを攪拌して混合することにより亜鉛を含む有機相Cとハロゲンを含む洗浄后液(水相D)を得る溶媒洗浄工程を含む請求項1に記載の亜鉛電解液の製造方法。
【請求項3】
亜鉛及びハロゲンを含む亜鉛含有物を酸浸出し、pH3〜4とした抽出元液(水相A)を得る浸出工程と、
抽出元液(水相A)と、亜鉛抽出剤を含む非水溶性有機溶媒(有機相A)とを体積比(有機相A/水相A)が1.5〜5となるように撹拌して混合することにより、亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bとハロゲンを含む抽出后液(水相B)を得る溶媒抽出工程と、
前記亜鉛及びハロゲンを含む有機相Bと、希釈電解尾液(水相C)とを体積比(有機相B/水相C)が20〜50となるように撹拌して混合することにより亜鉛を含む有機相Cとハロゲンを含む洗浄后液(水相D)を得る溶媒洗浄工程と、
前記亜鉛を含む有機相Cと、電解尾液(水相E)とを体積比(有機相C/水相E)が5〜20となるように撹拌して混合することにより亜鉛を逆抽出后液(水相F)に回収し、亜鉛電解元液を得る逆抽出工程とを含む請求項2に記載の亜鉛電解液の製造方法。
【請求項4】
酸浸出時のハロゲン濃度(塩素濃度とフッ素濃度の合計)が1000mg/L以上である請求項1から3のいずれかに記載の亜鉛電解液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−74132(P2009−74132A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243727(P2007−243727)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(306039131)DOWAメタルマイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】