説明

交差点通行制御システム及びこれに用いる車載機器

【課題】 本発明は、効率的な通行制御を実現することができる交差点通行制御システムの提供を目的とする。
【解決手段】 交差点に対する各車両の通行態様を制御する交差点通行制御システムにおいて、交差点に路側情報提供手段が設定され、当該路側情報提供手段は、交差点に進入すべく交差点に接近する各車両に対して、車両に搭載される車載機器との通信を介して受信する各車両の進入要求信号に従って受動的に、前記進入可否情報を生成する。前記進入可否情報は、前記路側情報提供手段と、車両に設けられる車載情報提供手段とにより協働して、車両の運転者に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に対する各車両の通行態様を制御する交差点通行制御システム及びこれに用いる車載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車の時間位置軌跡と信号機の現示の状態を同時に示した画面において、ユーザが信号機の現示をポインティングデバイスで選択し移動させることにより信号機の位相、または青時間を変えることができ、その値を反映し車の位置時間軌跡を再計算し車軌跡と信号機の現示の状態を再描画することを特徴とする信号機パラメータ設定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この信号機パラメータ設定装置においては、車の走行の結果により車の旅行時間、停止回数、車群状態、リンク毎の平均車群数、信号機が青に変わってから車群が到着するまでの時間を元に計算される安全指標時間及び交通量を表示する評価値表示部を付加し、ユーザが見て各評価値が小さくなるように信号機のパラメータ、速度、発生交通の値を操作するかまたは車軌跡表示の部分を調整する。
【特許文献1】特開平10−105877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般的な信号機では、上述の従来技術のように、交差点における効率的な車両の通行を可能とすべく信号機のパラメータ設定に対する工夫が提案されているものの、信号機のパラメータを管理者が適宜設定するだけでは、交差点に接近する車両の要求にリアルタイムに応じることができないため、交差点に複数の方向から接近してそれぞれ各自の進路(右左折・直進)で当該交差点を通過しようとする複数の車両を、効率的にさばくことが困難であるという問題点がある。
【0004】
そこで、本発明は、交差点に複数の方向から接近してそれぞれ各自の進路で当該交差点を通過しようとする複数の車両に対して、効率的な通行制御を実現することができる交差点通行制御システム及びこれに用いる車載機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、第1の発明は、交差点に対する各車両の通行態様を制御する交差点通行制御システムにおいて、
交差点に設定される路側情報提供手段が、交差点に進入すべく交差点に接近する各車両に対して、各車両の該交差点に対する接近態様に応じて、該交差点に対する進入可否情報を提供することを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る交差点通行制御システムにおいて、前記路側情報提供手段は、車両に搭載される車載機器との通信を介して受信する各車両の進入要求信号に従って、前記進入可否情報を生成することを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第1又は2の発明に係る交差点通行制御システムにおいて、前記車載機器からは、該車載機器を搭載する車両の交差点における予定進路に応じた進入要求信号が、前記路側情報提供手段に向けて送信されることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第1〜3の何れかの発明に係る交差点通行制御システムにおいて、前記進入可否情報は、各車両の運転者による目視が可能な態様で提供されることを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、第1〜4の何れかの発明に係る交差点通行制御システムにおいて、前記進入可否情報は、前記路側情報提供手段と、車両に設けられる車載情報提供手段とにより協働して、車両の運転者に提供されることを特徴とする。
【0010】
第6の発明は、第1の発明に係る交差点通行制御システムにおいて、前記路側情報提供手段は、交差点内の各領域に対応してそれぞれ設定され、
前記車載機器は、該車載機器を搭載する車両の予定進路に応じた路側情報提供手段に対して、進入要求信号を送信することを特徴とする。
【0011】
第7の発明は、第2又は6の発明に係る交差点通行制御システムにおいて、前記路側情報提供手段は、進入要求信号に応じて、少なくとも2色以上の異なる色で点灯するように構成されたランプであり、その点灯する色により進入可否情報を表し、
前記車載機器は、該車載機器を搭載する車両の予定進路に応じた路側情報提供手段に対して、該車両に割り当てられた色で点灯するように、進入要求信号を送信することを特徴とする。
【0012】
第8の発明は、第6の発明に従属する第7の発明に係る交差点通行制御システムにおいて、
各車両には、それぞれの交差点に対する接近方向に応じて、互いに交錯しうる車両とは異なる色が割り当てられ、
前記車載情報提供手段は、該車載情報提供手段を搭載する車両に割り当てられた色に点灯するように構成されたランプを含み、
前記進入可否情報は、点灯している路側情報提供手段の位置(どの路側情報提供手段が点灯しているかという情報。)及びその点灯色と、車載情報提供手段の点灯色とにより協働して、車両の運転者に提供されることを特徴とする。
【0013】
第9の発明は、前記車載機器は、該車載機器を搭載する車両が交差点を通過した後に、進入要求信号を送信した前記路側情報提供手段に対して要求解除信号を送信するように構成され、
前記路側情報提供手段は、進入要求信号を受けた後は要求解除信号を受けるまで点灯状態が変化しないように構成されることを特徴とする。
【0014】
第10の発明は、第1〜9の何れかの発明に係る交差点通行制御システムにおいて用いられる前記車載機器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、交差点に複数の方向から接近してそれぞれ各自の進路で当該交差点を通過しようとする複数の車両に対して、効率的な通行制御を実現することができる交差点通行制御システム及びこれに用いる車載機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0017】
図1は、本発明による交差点通行制御システムの一実施例の基本構成を示すシステム構成図である。本実施例の交差点通行制御システムは、路側情報提供装置10を有する。路側情報提供装置10は、交差点に設置され、以下で詳説する如く、交差点に進入すべく交差点に接近する各車両に対して、該交差点に対する進入可否情報を提供する。路側情報提供装置10は、図1に示すように、通信部12、ランプ14及びランプ制御部16を備える。
【0018】
通信部12は、車両に搭載される車載情報提供装置20からの各種要求信号(後に詳説。)を受信する。ランプ制御部16は、通信部12を介して受信する各種要求信号に従って、ランプ14を制御する。
【0019】
ランプ14は、好ましくは、路面(例えば、図2等に示すように交差点の中心点付近の路面)に埋め込まれる。これにより、支柱により高い位置に懸架される一般的な信号機(赤、青、黄色のランプを備えるもの。)に比べて、設備コストやメインテナンスコストを低減することができる。また、ランプ14は、好ましくは、太陽電池を電力源とし、消費電力等で有利なLED(light−emitting diode)により構成される。尚、ランプ14自体の構成は任意であり、本発明は特にこれに限定されることは無い。
【0020】
図1には、路側情報提供装置10と協働して、車両の運転者に進入可否情報を提供する車載情報提供装置20が示されている。車載情報提供装置20は、車両の運転者に進入可否情報を提供するという情報提供機能に加えて、交差点に設置される上述の路側情報提供装置10に対して、自車(当該車載情報提供装置20を搭載している車両。)が交差点を通過できるような進入可否情報を生成するように要求する機能(以下、「交差点進入要求機能」という。)を有する。
【0021】
車載情報提供装置20は、図1に示すように、通信部22、ランプ24及びランプ制御部26を備える。通信部22は、主に、交差点進入要求機能を実現する。また、通信部22は、他車との通信(車車間通信)や他のインフラ施設(例えば情報提供センター)との通信を実現できるものであってもよい。
【0022】
ランプ24及びランプ制御部26は、主に、情報提供機能を実現する。従って、ランプ24は、車室内の運転者が目視可能な位置に設定される。ランプ24は、同様に、車載バッテリ又は太陽電池等を電力源とし、LEDにより構成されてよい。同様に、ランプ24自体の構成は任意であり、本発明は特にこれに限定されることは無い。
【0023】
進入可否情報は、ランプ14及び/又はランプ24の点灯態様により車両の各運転者に提供(伝達)される。本例では、路側情報提供装置10が設置された交差点(以下、「オンデマンド型交差点」ともいう。)における進入可否ルールを分かりやすくし、オンデマンド型交差点を車両で通行しうる全てのユーザが進入可否情報を容易に共通認識できるようにすべく、車載情報提供装置20を搭載していない車両のユーザに対しては、路側情報提供装置10のランプ14が所定の色(例えば黄色)に点灯しているときが“進入許可状態”であり、車載情報提供装置20を搭載している車両のユーザに対しては、自車のランプ24と路側情報提供装置10のランプ14とが同一色(前記所定の色とは異なる同一色であり、例えば青や赤。)で点灯したときが“進入許可状態”であるとする。この種のルールは、ユーザに対して予め周知される。
【0024】
以下、上述の基本構成を前提として、本発明の特徴的な構成を幾つかの実施例に分けて説明していく。
【実施例1】
【0025】
図2は、車載情報提供装置20を搭載した車両(自車)が、オンデマンド型交差点に接近している状況において、実施例1により車載情報提供装置20側で実行される各種処理の流れを示すフローチャートである。
【0026】
ステップ100では、車両進行方向前方に路側情報提供装置10が存在するか否か、即ち、オンデマンド型交差点が存在するか否かが判定される。オンデマンド型交差点の存在は、例えば路側情報提供装置10の通信部12から所定エリアに向けてブロードキャストされる電波を車載情報提供装置20が受信することにより検出されてよい。この場合、車載情報提供装置20を搭載する車両の位置が、オンデマンド型交差点の中心点から電波の到達しうる所定エリア内に入った段階で、オンデマンド型交差点の存在の検出が可能となる。或いは、オンデマンド型交差点の位置情報を予め車載ナビゲーションシステムの地図データとして記憶しておき、オンデマンド型交差点の位置情報と、GPS測位により得られる自車位置情報とに基づいて、オンデマンド型交差点の存在が検出されてもよい。
【0027】
本ステップ100において、車両進行方向前方に路側情報提供装置10が存在する場合、ステップ110に進む。
【0028】
ステップ110では、路側情報提供装置10をして、自車がオンデマンド型交差点を通過できるような進入可否情報を生成させるべく、路側情報提供装置10に対して進入要求信号が送信される。本例では、進入要求信号は、路側情報提供装置10のランプ14を、自車に割り当てられた色で点灯させる要求・指示である。
【0029】
また、本ステップ110では、ランプ制御部26が、車載情報提供装置20のランプ24を、自車に割り当てられた色で点灯するよう制御する。これにより、ランプ24が、自車に割り当てられた色で点灯され、運転者は、自車に割り当てられた色が何色であるかを把握することができる。尚、車載情報提供装置20のランプ24は、自車に割り当てられた色が決まった時点又は進入要求信号を送信する時点で点灯されてよく、後述の如く要求解除信号を送信する時点で消灯されてよい。
【0030】
ここで、自車に割り当てられた色とは、所定の種類の色(ランプ14,24の点灯可能な複数種の色。)の中から所定のルールに従って割り当てられる色であり、具体的には、各車両には、それぞれのオンデマンド型交差点に対する接近方向に応じて、互いに交錯しうる車両とは異なる色が割り当てられる。この色の割り当て方は、任意であるが、例えば、車両の進行方位(例えばGPS測位により導出。)が南北方向に近い車両には“青”、東西方向に近い車両には“赤”が付与されるようにしてもよい。或いは、オンデマンド型交差点を進入する手前の区間において、交錯する可能性のある他車との車車間通信により、互いに割り当てられる色を決定してもよい。
【0031】
ステップ120では、自車がオンデマンド型交差点を通過し終えたか否かが判定される。自車がオンデマンド型交差点を通過し終えた場合には、路側情報提供装置10に対して要求解除信号が送信される(ステップ130)。この要求解除信号は、上記ステップ110にて進入要求信号による要求を解除するための信号である。従って、本例では、実質的には、車載情報提供装置20が路側情報提供装置10のランプ14の点灯状態を遠隔的に制御していることになる。尚、自車がオンデマンド型交差点を通過し終えたか否かは、GPS測位により得られる自車位置情報に基づいて判断することができる。
【0032】
図3は、上述の実施例1の構成が適用されるオンデマンド型交差点における交通状況の一例を示す図である。図3に示す例では、対面走行可能な2本の道路が交差してなるオンデマンド型交差点に対して、図の左側から、車載情報提供装置20を備えていない他車Xが接近しており、図の下側から自車が接近している交通状況が示されている。
【0033】
この場合、図3(A)に示すように自車前方にオンデマンド型交差点が検出されると(図2のステップ100参照)、自車からの進入要求信号が送信され(図2のステップ110参照)、この結果、図3(B)に示すように、路側情報提供装置10のランプ14及び車載情報提供装置20のランプ24が同一色(例えば青。)で点灯する。これにより、自車の運転者は、自己の車両のランプ24とオンデマンド型交差点のランプ14が同一の青色に点灯したことで、現在自車がオンデマンド型交差点に進入可能であることを容易に把握することができる。一方、他車Xの運転者も、交差点内のランプ14が黄色以外の青色に点灯しているのを見て、オンデマンド型交差点に進入不能であることを容易に把握することができる。
【0034】
従って、この場合、自車の運転者は、オンデマンド型交差点の手前で車両を停止させることなく、オンデマンド型交差点に車両を進入させ、オンデマンド型交差点を所望の進路(右左折・直進。)で車両を通過させることができる。一方、他車Xの運転者は、オンデマンド型交差点の手前で車両を停止させて、交差点内のランプ14が黄色に変わるまで待機し(即ち、図2のステップ130の要求解除信号が送信されるまで待機し)、交差点内のランプ14が黄色になってから、オンデマンド型交差点に車両を進入させ、オンデマンド型交差点を所望の進路で車両を通過させることになる。
【0035】
このように実施例1によれば、車載情報提供装置20を搭載していない車両と車載情報提供装置20を搭載している車両とが混在している過渡期においても、オンデマンド型交差点における円滑で且つ安全な通行制御を実現することができる。
【0036】
また、図3(C)に示すように、他車Xが車載情報提供装置20を搭載している場合には、例えば他車Xには、自車に割り当てられる色(本例では、青色。)とは異なる色(例えば、赤色。)が割り当てられ、それぞれの進入要求信号が競合することになる。この場合、各車両に対する優先順位の決定方法は、それぞれの道路の優先関係や、オンデマンド型交差点に対する各車両の接近態様(オンデマンド型交差点からの車両位置・距離、接近速度等。)に基づいて実現されてよい。
【0037】
例えば、ランプ制御部16は、受信時刻の早い方の進入要求信号に従って、ランプ14の色を変化させる。即ち、自車の方がオンデマンド型交差点に時間的に早く接近していた場合には、青色の点灯を要求する進入要求信号に従って、ランプ14が青色に点灯され、赤色の点灯を要求する他車Xからの進入要求信号が、遅れて受信されたために無効とされる。これにより、図3(D)に示すように、自車の運転者は、自己の車両のランプ24とオンデマンド型交差点のランプ14が同一の青色に点灯したことで、現在自車がオンデマンド型交差点に進入可能であることを容易に把握することができる。一方、他車Xの運転者は、交差点内のランプ14が、自己の車両のランプ24の点灯色である赤色以外の青色に点灯しているのを見て、オンデマンド型交差点に進入不能であることを容易に把握することができる。
【0038】
従って、この場合、自車の運転者は、オンデマンド型交差点の手前で車両を停止させることなく、オンデマンド型交差点に車両を進入させ、オンデマンド型交差点を所望の進路で車両を通過させることができる。自車がオンデマンド型交差点を通過し終えると、ランプ制御部16は、自車からの要求解除信号を受信した段階で、他車Xからの進入要求信号に従って、ランプ14の点灯色を赤色に変化させる。従って、他車Xの運転者は、オンデマンド型交差点の手前で車両を停止させて、交差点内のランプ14が赤色に変わるまで待機し(即ち、図2のステップ130の要求解除信号が送信されるまで待機し)、交差点内のランプ14が赤色になってから、オンデマンド型交差点に車両を進入させ、オンデマンド型交差点を所望の進路で車両を通過させることになる。尚、他車Xの車載情報提供装置20は、ランプ14が赤色になるまで進入要求信号を送り続けることとしてもよいが(この場合、路側情報提供装置10の通信部12は受信機能を有しさえすればよい。)、各車両からの進入要求信号が、ランプ制御部16で保持され、順次処理されることとしてもよい。後者の場合、路側情報提供装置10は、他車Xの車載情報提供装置20に対して、進入要求信号を受信した旨を知らせる信号(ACK信号)を送信する(この場合、路側情報提供装置10の通信部12は送受信機能が必要となる。)。
【実施例2】
【0039】
先ず、前提として、実施例2では、ランプ14は、オンデマンド型交差点内の所定領域毎に設定され、各領域におけるランプ14は、互いに独立に点灯状態が制御される。尚、各ランプ14に対しては、それぞれのランプ制御部16及び/又は通信部12が設定されてもよく、或いは、共通のランプ制御部16及び/又は通信部12が設定されてもよい。
【0040】
また、実施例2では、進入可否情報は、ランプ14,24の点灯色等に加えて、点灯しているランプ14の位置(どの領域のランプ14が点灯しているか)により車両の各運転者に提供(伝達)される。
【0041】
本例では、交差点には、複数の方向から複数の車両が接近してそれぞれ各自の進路で通過しうることを考慮して、図4(A)及び図4(B)に示すように、交差点内の領域は、4つの領域I,II,III,IVに区分される。この4つの領域は、考えられる全ての進路を考慮した場合に、他の進路に対して排他的な使用権が必要となる領域である。例えば、図4(A)の左から右に交差点を直進する車両は、領域I,IIを独占的に使用しなければならないし、図4(A)の下から上方向に接近して交差点を右折する車両は、領域I,II,IIIを独占的に使用しなければならないし、図4(A)の上から下方向に接近して交差点を左折する車両は、領域Iを独占的に使用しなければならない。
【0042】
本例においても、オンデマンド型交差点におけるルールを分かりやすくし、オンデマンド型交差点を車両で通行しうる全てのユーザが容易に共通認識できるようにすべく、自車のランプ24と同一色で点灯している路側情報提供装置10のランプ14の領域が “進入許可領域”とする。例えば、図4(A)の下から上方向に接近する車両の運転者は、領域II,IIIが自車のランプ24と同一色で点灯している場合、直進可能であると認識し、領域I,II,IIIが自車のランプ24と同一色で点灯している場合、右折可能であると認識する。この種のルールは、ユーザに対して予め周知される。
【0043】
図5は、車載情報提供装置20を搭載した車両(自車)が、オンデマンド型交差点に接近している状況において、実施例2により車載情報提供装置20側で実行される各種処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
ステップ200では、車両進行方向前方に路側情報提供装置10が存在するか否か、オンデマンド型交差点が存在するか否かが判定される。車両進行方向前方に路側情報提供装置10が存在する場合、ステップ210に進む。
【0045】
ステップ210では、上記ステップ200で検出されたオンデマンド型交差点における自車の予定進路が判断される。即ち、自車は、前方のオンデマンド型交差点を直進する予定なのか、右折する予定なのか、或いは、左折する予定なのかが予測・判断される。この予測・判断は、簡易的に、運転者により操作される方向指示器(いわゆるウインカー。)の操作態様や、ナビゲーションシステムにより提示されている案内経路に基づいて実現されてよい。
【0046】
続くステップ220では、路側情報提供装置10をして、自車がオンデマンド型交差点を通過できるような進入可否情報を生成させるべく、路側情報提供装置10に対して進入要求信号が送信される。本例では、進入要求信号は、自車の予定進路に応じたランプ14を、自車に割り当てられた色で点灯させる要求・指示である。例えば、図4(A)の左から右に接近する車両が直進を予定している場合には、領域I,IIに対応するランプ14に対して、自車に割り当てられた色で点灯するよう進入要求信号が生成・送信される。同様に、図4(A)の下から上方向に接近する車両が右折を予定している場合には、領域I,II,IIIに対応するランプ14に対して、自車に割り当てられた色で点灯するよう進入要求信号が生成・送信される。同様に、図4(A)の上から下方向に接近して車両が左折を予定している場合には、領域Iに対応するランプ14に対して、自車に割り当てられた色で点灯するよう進入要求信号が生成・送信される。
【0047】
また、本ステップ220では、ランプ制御部26が、車載情報提供装置20のランプ24を、自車に割り当てられた色で点灯するよう制御する。これにより、ランプ24が、自車に割り当てられた色で点灯され、運転者は、自車に割り当てられた色が何色であるかを把握することができる。尚、車載情報提供装置20のランプ24は、自車に割り当てられた色が決まった時点又は進入要求信号を送信する時点で点灯されてよく、後述の如く要求解除信号を送信する時点で消灯されてよい。
【0048】
尚、自車に割り当てられた色とは、上述の如く、所定の種類の色(ランプ14,24の点灯可能な複数種の色。)の中から所定のルールに従って割り当てられる色であり、具体的には、各車両には、それぞれのオンデマンド型交差点に対する接近方向に応じて、互いに交錯しうる車両とは異なる色が割り当てられる。
【0049】
続くステップ230では、自車がオンデマンド型交差点を通過し終えたか否かが判定される。自車がオンデマンド型交差点を通過し終えた場合には、路側情報提供装置10に対して要求解除信号が送信される(ステップ240)。この要求解除信号は、上記ステップ220にて進入要求信号による要求を解除するための信号である。従って、本例においても同様に、実質的には、車載情報提供装置20が路側情報提供装置10のランプ14の点灯状態を遠隔的に制御していることになる。
【0050】
図6は、上述の実施例2の構成が適用されるオンデマンド型交差点における交通状況の一例を示す図である。図6に示す例では、対面走行可能な2本の道路が交差してなるオンデマンド型交差点に対して、図の左側から直進予定の他車X1が接近しており、図の上側から左折予定の他車X2が接近しており、図の下側から自車が接近している交通状況が示されている。尚、本例では、登場する全ての車両には車載情報提供装置20が搭載されているものとする。
【0051】
この場合、図6(A)に示すように自車前方にオンデマンド型交差点が検出されると(図5のステップ200参照)、自車からの進入要求信号が送信される(図5のステップ220参照)。このとき、路側情報提供装置10に対しては、他車X1からは、領域I,IIに対応するランプ14に対して例えば赤色で点灯するように要求する進入要求信号が送信され、他車X2からは、領域Iに対応するランプ14に対して例えば白色で点灯するように要求する進入要求信号が送信され、自車からは、領域II,IIIに対応するランプ14に対して例えば青色で点灯するように要求する進入要求信号が送信される。この場合、領域Iに対しては、他車X1からと他車X2からの進入要求信号が競合し、領域IIに対しては、他車X1からと自車からの進入要求信号が競合することになる。この場合、各車両に対する優先順位の決定方法は、それぞれの道路の優先関係や、オンデマンド型交差点に対する各車両の接近態様(オンデマンド型交差点からの車両位置・距離、接近速度等。)に基づいて実現されてよい。
【0052】
例えば、ランプ制御部16は、受信時刻の早い方の進入要求信号に従って、各ランプ14の色を変化させる。即ち、自車の方が他車X1よりもオンデマンド型交差点に時間的に早く接近していた場合には、青色の点灯を要求する自車の進入要求信号に従って、領域II,IIIに対応するランプ14が青色に点灯され、領域IIに対応するランプ14に対して赤色の点灯を要求する他車X1からの進入要求信号が、遅れて受信されたために無効とされる。これにより、図6(B)に示すように、自車の運転者は、自己の車両のランプ24と同一の青色で、領域II,IIIに対応するランプ14が点灯したことで、現在自車がオンデマンド型交差点の領域II,IIIに対応する領域に進入可能であること、即ち直進可能であることを容易に把握することができる。一方、他車X1の運転者は、領域IIに対応するランプ14が、自己の車両のランプ24の点灯色である赤色以外の青色に点灯しているのを見て、オンデマンド型交差点に進入不能であることを容易に把握することができる。
【0053】
また、他車X2の方が他車X1よりもオンデマンド型交差点に時間的に早く接近していた場合には、白色の点灯を要求する他車X2の進入要求信号に従って、領域Iに対応するランプ14が白色に点灯され、領域Iに対応するランプ14に対して赤色の点灯を要求する他車X1からの進入要求信号が、遅れて受信されたために無効とされる。これにより、図6(B)に示すように、他車X2の運転者は、自己の車両のランプ24と同一の白色で、領域Iに対応するランプ14が点灯したことで、現在自車がオンデマンド型交差点の領域Iに対応する領域に進入可能であること、即ち左折可能であることを容易に把握することができる。一方、他車X1の運転者は、領域Iに対応するランプ14が、自己の車両のランプ24の点灯色である赤色以外の白色に点灯しているのを見て、オンデマンド型交差点に進入不能であることを容易に把握することができる。
【0054】
従って、この場合、自車の運転者は、オンデマンド型交差点の手前で車両を停止させることなく、オンデマンド型交差点に車両を進入させてオンデマンド型交差点を直進させることができる。また、他車X2の運転者は、オンデマンド型交差点の手前で車両を停止させることなく、オンデマンド型交差点に車両を進入させてオンデマンド型交差点を左折させることができる。
【0055】
自車及び他車X2がオンデマンド型交差点を通過し終えると、ランプ制御部16は、自車からの要求解除信号を受信した段階で、他車X1からの進入要求信号に従って、領域IIに対応するランプ14の点灯色を青色から赤色に変化させ、他車X2からの要求解除信号を受信した段階で、他車X1からの進入要求信号に従って、領域Iに対応するランプ14の点灯色を白色から赤色に変化させる。従って、他車X1の運転者は、オンデマンド型交差点の手前で車両を停止させて、交差点内のランプ14が赤色に変わるまで待機し(即ち、図5のステップ240の要求解除信号が自車及び他車X2から送信されるまで待機し)、交差点内のランプ14が赤色になってから、オンデマンド型交差点に車両を進入させ、オンデマンド型交差点を直進させることになる。
【0056】
尚、先の例とは異なり、自車が左折を予定し、自車、他車X1、他車X2の順でオンデマンド型交差点に接近している場合は、オンデマンド型交差点に対する自車及び他車X1の同時期の進入と共に、それぞれの進路(自車は左折、他車X1は直進。)による通過が許可される。
【0057】
このように本実施例によれば、オンデマンド型交差点内の各領域に対応したランプ14を設定して、各車両の予定進路に応じたランプ14を点灯させて進入可否情報を提示することで、同時期に異なる方向からオンデマンド型交差点に接近する2以上の車両に対して、交錯のない態様で同時にオンデマンド型交差点に進入させることができ、オンデマンド型交差点に複数の方向から接近して多様な進路で通過しようとする複数の車両の通行を、効率的に制御・調整することができる。
【実施例3】
【0058】
実施例3は、実施例1又は実施例2による上述のオンデマンド式通行制御状態から切り替えられる時差式通行制御に関する。ここで、時差式通行制御とは、通常の信号機と同様、ある時間(固定時間又は可変時間)毎に、交差する複数の道路間で、進入可能な状態と進入不能な状態とが切り替えられる制御をいう。。尚、時差式通行制御時には、オンデマンド型交差点は、実質的にはオンデマンド型でなくなるが、路側情報提供装置10が設置されている交差点であることに変わりがないので、継続して「オンデマンド型交差点」と称する。
【0059】
本実施例では、時差式通行制御は、オンデマンド型交差点に向かう道路に所定の渋滞状態が発生した場合に実現される。これは、上述のオンデマンド式通行制御では多数の車両(例えば、多数の車両が複数の方向から車群でオンデマンド型交差点に到来する場合。)の競合を、効率的に調整するのが困難となるためである
従って、例えば、上述の如く基本的に先着順に処理される進入要求信号が、所定数以上溜まった状態で処理されていない場合、ランプ制御部16は、その動作モードを、実施例1又は実施例2による上述のオンデマンド式通行制御モードから、時差式通行制御モードに切り替える。
【0060】
図7に示すように、図の上下の2方向からオンデマンド型交差点に接近する車両X1−4には、同一色(例えば青色。)が割り当てられ、図の左右の2方向からオンデマンド型交差点に接近する車両X5−8には、車両X1−4とは異なる同一色(例えば赤色)が割り当てられている場合、時差式通行制御モードでは、所定時間毎に、交差点内のランプ14が赤色と青色の間で切り替えられ、図7(A)に示すような、図の上下の2方向からオンデマンド型交差点に接近する車両X1−4が通行可能と、図7(B)に示すような、図の左右の2方向からオンデマンド型交差点に接近する車両X5−8が通行可能とが、交互に切り替えられる。
【0061】
ランプ制御部16にタイマー機能がない場合、ランプ14の点灯色の切り替えは、オンデマンド型交差点を通過する各車両の車載情報提供装置20により協働して実現されてよい。例えば、各車両の車載情報提供装置20を、絶対時間(例えば、GPS時刻)を取得できるように構成し、所定の切り替え時刻に、オンデマンド型交差点付近に位置する車両の車載情報提供装置20から、路側情報提供装置10のランプ14に対して点灯色の切り替え要求信号を送信することで、ランプ14の点灯色の切り替えを各車両の協力で自律的に実現することができる。
【0062】
尚、図7に示す例では、図3や図6に示すランプ14とは異なる配置構成のランプ14が用いられている。これにより、ユーザは、現在の制御モードがオンデマンド式通行制御モードであるか又は時差式通行制御モードであるかを容易に判別することができる。但し、図3や図6に示すランプ14と同一の配置構成が用いられてもよい。例えば図6に示すランプ14の配置構成の場合、4つのランプ14が同一色(赤色又は青色)で点灯されることで、ユーザは、現在の制御モードがオンデマンド式通行制御モードであるか又は時差式通行制御モードであるかを容易に判別することができる。尚、現在の制御モードがオンデマンド式通行制御モードであるか又は時差式通行制御モードであるかは、車車間通信を介して前方車両から後続車両へと順次伝達されてもよく、各車両の運転者に対して、各車両の音声出力装置(例えば、ナビゲーション装置)により現在の制御モードが通知されてよい。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0064】
例えば、上述した各実施例では、車載情報提供装置20から路側情報提供装置10に対して送信される進入要求信号は、実質的に、路側情報提供装置10のランプ14の点灯状態を遠隔的に制御する点灯要求信号であり、これにより、路側情報提供装置10のランプ制御部16の構成の簡易化が実現されている。しかしながら、本発明は、これに限定されることは無く、例えば、路側情報提供装置10のランプ制御部16に、各車両の接近方向・予定進路に関する情報に基づいてどのランプ14を点灯させるか判断する機能を持たせてもよいし、競合する複数の車両からの進入要求信号を所与の調停条件に従って調停する機能を持たせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による交差点通行制御システムの一実施例の基本構成を示すシステム構成図である。
【図2】実施例1の車載情報提供装置20により実行される主要処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の構成が適用されるオンデマンド型交差点における交通状況の一例を示す図である。
【図4】実施例2によりオンデマンド型交差点内の所定領域毎に設定される路側情報提供装置10のランプ14を示す図である。
【図5】実施例2の車載情報提供装置20により実行される主要処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例2の構成が適用されるオンデマンド型交差点における交通状況の一例を示す図である。
【図7】実施例1又は実施例2によるオンデマンド式通行制御モードから切り替えられる実施例3による時差式通行制御モードの説明図である。
【符号の説明】
【0066】
10 路側情報提供装置
12 通信部
14 ランプ
16 ランプ制御部
20 車載情報提供装置
22 通信部
24 ランプ
26 ランプ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に対する各車両の通行態様を制御する交差点通行制御システムにおいて、
交差点に設定される路側情報提供手段が、交差点に進入すべく交差点に接近する各車両に対して、各車両の該交差点に対する接近態様に応じて、該交差点に対する進入可否情報を提供することを特徴とする、交差点通行制御システム。
【請求項2】
前記路側情報提供手段は、車両に搭載される車載機器との通信を介して受信する各車両の進入要求信号に従って、前記進入可否情報を生成する、請求項1に記載の交差点通行制御システム。
【請求項3】
前記車載機器からは、該車載機器を搭載する車両の交差点における予定進路に応じた進入要求信号が、前記路側情報提供手段に向けて送信される、請求項1又は2に記載の交差点通行制御システム。
【請求項4】
前記進入可否情報は、各車両の運転者による目視が可能な態様で提供される、請求項1〜3の何れかに記載の交差点通行制御システム。
【請求項5】
前記進入可否情報は、前記路側情報提供手段と、車両に設けられる車載情報提供手段とにより協働して、車両の運転者に提供される、請求項1〜4の何れかに記載の交差点通行制御システム。
【請求項6】
前記路側情報提供手段は、交差点内の各領域に対応してそれぞれ設定され、
前記車載機器は、該車載機器を搭載する車両の予定進路に応じた路側情報提供手段に対して、進入要求信号を送信する、請求項1に記載の交差点通行制御システム。
【請求項7】
前記路側情報提供手段は、進入要求信号に応じて、少なくとも2色以上の異なる色で点灯するように構成されたランプであり、その点灯する色により進入可否情報を表し、
前記車載機器は、該車載機器を搭載する車両の予定進路に応じた路側情報提供手段に対して、該車両に割り当てられた色で点灯するように、進入要求信号を送信する、請求項2又は6に記載の交差点通行制御システム。
【請求項8】
請求項6に従属する請求項7に記載の交差点通行制御システムにおいて、
各車両には、それぞれの交差点に対する接近方向に応じて、互いに交錯しうる車両とは異なる色が割り当てられ、
前記車載情報提供手段は、該車載情報提供手段を搭載する車両に割り当てられた色に点灯するように構成されたランプであり、
前記進入可否情報は、点灯している路側情報提供手段の位置及びその点灯色と、車載情報提供手段の点灯色とにより協働して、車両の運転者に提供される、交差点通行制御システム。
【請求項9】
前記車載機器は、該車載機器を搭載する車両が交差点を通過した後に、進入要求信号を送信した前記路側情報提供手段に対して要求解除信号を送信するように構成され、
前記路側情報提供手段は、進入要求信号を受けた後は要求解除信号を受けるまで点灯状態が変化しないように構成される、請求項2又は6に記載の交差点通行制御システム。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の交差点通行制御システムにおいて用いられる前記車載機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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