説明

交差碍子

【課題】立体交差する架空送電線の交差角度の変動を吸収できる交差碍子を提供する。
【解決手段】交差碍子10は、一対の支持碍子1・1と中央碍子2を備える。一対の支持碍子1・1は、立体交差する一組の架空送電線w1・w2を支持する。中央碍子2は、一対の支持碍子1・1を同軸上に連結している。中央碍子2は、一対の第1ボルト部材21・21を両端部に有する。第1ボルト部材21は、頭部21aが中心軸方向に離脱困難に保持されると共に、円周方向に回動自在に保持され、一対の第1雄ねじ部21b・21bを相反する向きに配置する。支持碍子1は、一方の端部から突出した円柱状の連結部材12を有する。連結部材12は、第1雄ねじ部21bに螺合する第1雌ねじ部12aを中心軸に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差碍子に関する。特に、立体交差する架空送電線間の距離を一定に保持すると共に、一組の架空送電線の交差角度の変動を吸収できる交差碍子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送電線は、鉄塔又は電柱に架設されている。この場合、並行して配設された複数の架空送電線の距離を一定に保持することによって、架空送電線の短絡事故を抑止できる。架空送電線間の距離を一定に保持する装置は、いわゆる、相間スペーサと呼ばれている。相間スペーサは、多くの場合、絶縁棒の両端に架空送電線を保持して、所定の相間距離を確保している。
【0003】
このような相間スペーサとして、架空送電線が互いに近づくことによって座屈荷重を受けたときに、良好に撓む(座屈変形する)ことができ、強風や着氷に起因して架空送電線が大きく揺動する、いわゆる「ギャロッピング現象」を抑制できる架空送電線用相間スペーサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1による相間スペーサは、対向する架空送電線間に介装される架空送電線用相間スペーサであって、一方の架空送電線に連結される第1ポリマー製碍子と、他方の架空送電線に連結される第2ポリマー製碍子と、第1ポリマー製碍子と第2ポリマー製碍子とを連結する帯板状の連結部材と、を備え、連結部材は、撓み変形可能に形成されている。
【0005】
又、このような相間スペーサとして、並行して配設された複数の架空送電線相間距離を調整でき、現場での取り付けが容易な相間スペーサが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2による相間スペーサは、架空送電線を支持する上下の絶縁碍子の端部金具に円柱状又は円筒状の接続部を形成し、接続部に円筒状又は棒状で長さ調節可能なスペーサ本体を嵌合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−224924号公報
【特許文献2】実開平1−147626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、市街地の交差点では、電柱に架設された架空送電線が立体交差していることがある。この場合、上方の架空送電線と下方の架空送電線とを交差碍子で連結して、上方の架空送電線と下方の架空送電線の短絡を防止している。
【0009】
既存の交差碍子は、その上端部と上方の架空送電線をバインド線で巻き付けて保持すると共に、下端部と下方の架空送電線をバインド線で巻き付けて保持している。しかし、強風などで上下の架空送電線の交差角度が激しく変動すると、バインド線の巻き付け強度が低下し、これに起因して交差碍子が脱落する心配がある。
【0010】
特許文献1による相間スペーサは、上下方向に揺動する一組の架空送電線の振動を吸収することは容易であるが、上下の架空送電線の交差角度の変動を吸収することは困難であるという問題がある。
【0011】
特許文献2による相間スペーサは、上下の架空送電線間の距離を可変できるが、段階的に相間距離を変えるように構成され、連続的に相間距離を変えるように構成された、交差碍子が望まれている。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、立体交差する架空送電線間の距離を一定に保持する交差碍子であって、一組の架空送電線の交差角度の変動を吸収でき、かつ、連続的に相間距離を可変できる交差碍子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、立体交差する一組の架空送電線を支持する一対の支持碍子と、これらの端部碍子を同軸上に連結する中央碍子で交差碍子を構成し、支持碍子と中央碍子の端部は、回動可能に、かつ軸方向の距離が可変可能にボルト部材で連結することにより、これらの課題を解消できると考え、これに基づいて、以下のような新たな交差碍子を発明するに至った。
【0014】
(1)本発明による交差碍子は、立体交差する一組の架空送電線を支持する一対の支持碍子と、これらの支持碍子を同軸上に連結する中央碍子と、を備え、前記中央碍子は、頭部が中心軸方向に離脱困難に保持されると共に、円周方向に回動自在に保持され、第1雄ねじ部が相反する向きに配置された一対の第1ボルト部材を両端部に有し、前記支持碍子は、一方の端部から突出し、前記第1雄ねじ部に螺合する第1雌ねじ部を中心軸に設ける円柱状の連結部材を有する。
【0015】
(2)前記連結部材は、工具で回転できるように六角柱状の回し部を基端部に有することが好ましい。
【0016】
(3)前記中央碍子と反対側に前記支持碍子と同軸上に締結する端部碍子を更に備え、前記支持碍子は、前記支持碍子の他方の端部に突出した円柱状の送電線保持部を更に有し、前記送電線保持部は、前記架空送電線を外周方向から挿通可能な切り欠き溝と、この切り欠き溝の内壁に螺設された第2雌ねじ部と、を有し、前記端部碍子は、前記第2雌ねじ部に螺合する第2雄ねじ部を一方の端部から突出する第2ボルト部材を有し、前記切り欠き溝の底面と第2ボルト部材の先端面で前記架空送電線を挟持することが好ましい。
【0017】
(4)前記切り欠き溝は、前記架空送電線の外周との摩擦を増加する第1滑り止め部材を底面に有し、前記第2ボルト部材は、前記架空送電線の外周との摩擦を増加する第2滑り止め部材を先端面に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明による交差碍子は、立体交差する一組の架空送電線を支持する一対の支持碍子と、これらの支持碍子を同軸上に連結する中央碍子で構成し、支持碍子と中央碍子の端部は、回動可能に、かつ軸方向の距離が可変可能に第1ボルト部材で連結しているので、一組の架空送電線の交差角度の変動を吸収でき、かつ、連続的に相間距離を可変できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による交差碍子の構成を示す正面図であり、要部を縦断面で示している。
【図2】前記実施形態による交差碍子の構成を示す斜視図である。
【図3】前記実施形態による交差碍子の正面図であり、図1の状態から一組の架空送電線間の距離を可変した状態図である。
【図4】前記実施形態による交差碍子の正面図であり、図1の状態から一対の端部碍子を離反させた状態図である。
【図5】前記実施形態による交差碍子の適用例を示す平面図であり、3相の架空送電線が立体交差した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[交差碍子の構成]
最初に、本発明の一実施形態による交差碍子の構成を説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による交差碍子の構成を示す正面図であり、要部を縦断面で示している。図2は、前記実施形態による交差碍子の構成を示す斜視図である。図3は、前記実施形態による交差碍子の正面図であり、図1の状態から一組の架空送電線間の距離を可変した状態図である。図4は、前記実施形態による交差碍子の正面図であり、図1の状態から一対の端部碍子を離反させた状態図である。
【0022】
図1又は図2を参照すると、本発明の一実施形態による交差碍子10は、一対の支持碍子1・1と中央碍子2を備えている。一方の支持碍子1は、上方の架空送電線(以下、電線と略称する)w1を支持している。他方の支持碍子1は、下方の電線w2を支持している。中央碍子2は、一対の支持碍子1・1を同軸上に連結している。
【0023】
図1から図4を参照すると、中央碍子2は、本体20を磁器で構成している。本体20は、複数の傘状の鍔部2aを外周方向に延出している。又、中央碍子2は、一対の第1ボルト部材21・21を本体20の両端部に保持している。
【0024】
図1又は図3及び図4を参照すると、第1ボルト部材21は、頭部21aと第1雄ねじ部21bで構成している。頭部21aは、本体20の中心軸方向に離脱困難に保持されている。又、頭部21aは、本体20の円周方向に回動自在に保持されている。そして、本体20に対して、一対の第1雄ねじ部21b・21bを相反する向きに配置している。
【0025】
図1又は図3及び図4を参照すると、支持碍子1は、本体11を磁器で構成している。又、支持碍子1は、円柱状の連結部材12を本体11の一方の端部から突出している。そして、連結部材12は、第1雄ねじ部21bに螺合する第1雌ねじ部12aを中心軸に設けている。
【0026】
図1又は図3及び図4を参照すると、連結部材12は、その基端部に六角柱状の回し部12bを設けている。スパナなどの工具(図示せず)を支持碍子1と中央碍子2の間隙に挿入して、回し部12bを挟んで回動すると、第1雄ねじ部21bに第1雌ねじ部12aを螺合でき、一組の電線w1・w2の高さ方向の距離を連続的に変えることができる。
【0027】
図1から図4を参照すると、交差碍子10は、一対の端部碍子3・3を更に備えている。端部碍子3は、本体30を磁器で構成している。又、端部碍子3は、第2ボルト部材31を有している。第2ボルト部材31は、頭部31aと第2雄ねじ部31bで構成している。頭部31aは、本体30に埋設されている。第2雄ねじ部31bは、本体30の一方の端部から突出している。
【0028】
図1又は図3及び図4を参照すると、支持碍子1は、他方の端部に突出した円柱状の送電線保持部13を更に有している。送電線保持部13は、切り欠き溝13aと第2雌ねじ部13bを有している(図4参照)。切り欠き溝13aには、電線w1又は電線w2をそれらの外周方向から挿通できる。第2雌ねじ部13bは、切り欠き溝13aの内壁に螺設されている。
【0029】
図1又は図3及び図4を参照すると、第2雌ねじ部13bには、第2雄ねじ部31bを螺合できる。電線w1又は電線w2を切り欠き溝13aに挿通した状態で、第2雌ねじ部13bに第2雄ねじ部31bを締結すると、切り欠き溝13aの底面と第2ボルト部材31の先端面で電線w1又は電線w2を挟持できる。
【0030】
図1又は図3及び図4を参照すると、切り欠き溝13aは、ゴム板などの第1滑り止め部材131を底面に接着している。一方、第2ボルト部材31は、ゴム板などの第2滑り止め部材132を先端面に接着している。
【0031】
図1又は図3及び図4を参照すると、電線w1又は電線w2を切り欠き溝13aに挿通した状態で、第2雌ねじ部13bに第2雄ねじ部31bを締結すると、第1滑り止め部材131及び第2滑り止め部材132が電線w1又は電線w2の外周との摩擦を増加でき、電線w1又は電線w2を支持碍子1に確実に支持できる。
【0032】
[交差碍子の作用]
次に、実施形態による交差碍子10の適用例を説明しながら、交差碍子10の作用及び効果を説明する。図5は、前記実施形態による交差碍子の適用例を示す平面図であり、3相の架空送電線が立体交差した状態図である。
【0033】
図5に示されるように、市街地の交差点などでは、電柱に架設された3相の電線w1と電線w2とが直交するように立体交差している。図1から図5を参照すると、上方の電線w1と下方の電線w2とを交差碍子10で連結して、上方の電線w1と下方の電線w2の短絡を防止している。
【0034】
図1から図4を参照すると、実施形態による交差碍子10は、立体交差する一組の電線w1・w2を支持する一対の支持碍子1・1と、一対の支持碍子1・1を同軸上に連結する中央碍子2で構成し、支持碍子1と中央碍子2の端部は、回動可能に、かつ軸方向の距離が可変可能に第1ボルト部材21で連結しているので、一対の支持碍子1・1が互いに独立して回動でき、一組の電線w1・w2の交差角度の変動を吸収できる。
【0035】
図1から図4を参照すると、支持碍子1は、第1ボルト部材21に螺合可能な連結部材12を備えている。図1を参照して、スパナなどの工具(図示せず)で回し部12bを一方の方向に回転すると、一対の支持碍子1・1を相対的に離反する方向に移動でき、一組の電線w1・w2の距離を拡大できる(図3参照)。
【0036】
一方、図3を参照して、スパナなどの工具(図示せず)で回し部12bを他方の方向に回転すると、一対の支持碍子1・1を相対的に近づく方向に移動でき、一組の電線w1・w2の距離を減少できる(図1参照)。例えば、頭部21aが回転しないように、ピン(図示せず)で押さえつけるために、このピンが挿入される穴(図示せず)を中央碍子2に開口しておくことが好ましく、第1ボルト部材21が回転することなく、連結部材12を螺合できる。このように、実施形態による交差碍子10は、連続的に相間距離を可変できる。
【0037】
図1から図4を参照すると、実施形態による交差碍子10は、支持碍子1に設けた切り欠き溝13aに電線w1又は電線w2を挿通して組み立てることができ、便利である。
【0038】
図1又は図3及び図4を参照すると、電線w1又は電線w2を切り欠き溝13aに挿通した状態で、第2雌ねじ部13bに第2雄ねじ部31bを締結すると、ゴム板などで形成された第1滑り止め部材131及び第2滑り止め部材132が電線w1又は電線w2の外周との摩擦を増加でき、電線w1又は電線w2を支持碍子1に確実に支持できる。
【0039】
本発明による交差碍子は、水平面を立体交差する架空送電線間の距離を一定に保持する実施形態を開示したが、本発明による交差碍子は、垂直面を立体交差する架空送電線間の距離を一定に保持することもできる。
【符号の説明】
【0040】
1・1 一対の支持碍子
2 中央碍子
10 交差碍子
12 連結部材
12a 第1雌ねじ部
21 第1ボルト部材
21a 頭部
21b 第1雄ねじ部
w1・w2 一組の電線(架空送電線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体交差する一組の架空送電線を支持する一対の支持碍子と、
これらの支持碍子を同軸上に連結する中央碍子と、を備え、
前記中央碍子は、頭部が中心軸方向に離脱困難に保持されると共に、円周方向に回動自在に保持され、第1雄ねじ部が相反する向きに配置された一対の第1ボルト部材を両端部に有し、
前記支持碍子は、一方の端部から突出し、前記第1雄ねじ部に螺合する第1雌ねじ部を中心軸に設ける円柱状の連結部材を有する交差碍子。
【請求項2】
前記連結部材は、工具で回転できるように六角柱状の回し部を基端部に有する請求項1記載の交差碍子。
【請求項3】
前記中央碍子と反対側に前記支持碍子と同軸上に締結する端部碍子を更に備え、
前記支持碍子は、前記支持碍子の他方の端部に突出した円柱状の送電線保持部を更に有し、
前記送電線保持部は、
前記架空送電線を外周方向から挿通可能な切り欠き溝と、
この切り欠き溝の内壁に螺設された第2雌ねじ部と、を有し、
前記端部碍子は、前記第2雌ねじ部に螺合する第2雄ねじ部を一方の端部から突出する第2ボルト部材を有し、
前記切り欠き溝の底面と第2ボルト部材の先端面で前記架空送電線を挟持する請求項1又は2記載の交差碍子。
【請求項4】
前記切り欠き溝は、前記架空送電線の外周との摩擦を増加する第1滑り止め部材を底面に有し、
前記第2ボルト部材は、前記架空送電線の外周との摩擦を増加する第2滑り止め部材を先端面に有する請求項3記載の交差碍子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−20916(P2013−20916A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155861(P2011−155861)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】