交流−交流直接電力変換器の制御装置
【課題】スイッチング回数を減らし、スイッチング損失やノイズの影響を低減してシステム全体の小型化、低コスト化を図ると共に、高効率化、信頼性向上を可能とした制御装置を提供する。
【解決手段】マトリクスコンバータ等の交流−交流直接電力変換器において、入力電圧検出手段41と、出力電流検出手段45と、マトリクスコンバータ20の出力電圧指令値、入力電圧情報及び出力電流情報、並びに、出力電圧指令値及び入力電圧情報のそれぞれの各相の大小関係を用いて、マトリクスコンバータ20を構成する交流スイッチSru〜Stwのスイッチングパターン(オンデューティ)を決定し、このスイッチングパターンに応じて交流スイッチの駆動パルスを生成する駆動パルス演算手段400Aと、を備える。
【解決手段】マトリクスコンバータ等の交流−交流直接電力変換器において、入力電圧検出手段41と、出力電流検出手段45と、マトリクスコンバータ20の出力電圧指令値、入力電圧情報及び出力電流情報、並びに、出力電圧指令値及び入力電圧情報のそれぞれの各相の大小関係を用いて、マトリクスコンバータ20を構成する交流スイッチSru〜Stwのスイッチングパターン(オンデューティ)を決定し、このスイッチングパターンに応じて交流スイッチの駆動パルスを生成する駆動パルス演算手段400Aと、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ等の大形のエネルギーバッファを用いることなく、半導体スイッチング素子を用いて多相交流電圧を任意の大きさ及び周波数の多相交流電圧に直接変換する交流−交流直接電力変換器に関し、特に、スイッチング回数やスイッチング損失、発生ノイズの低減を図った交流−交流直接電力変換器の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は、交流−交流直接電力変換器の一例であるマトリクスコンバータ20の簡略モデルであり、10は三相交流電源、30は負荷を示している。実際のマトリクスコンバータでは、その入力側にスイッチングに伴う高調波電流抑制用のLCフィルタが必要とされるが、説明を容易にするため、図13ではこのLCフィルタを無視し、また、負荷30を三相電流源iuv,ivw,iwuによって模擬している。なお、マトリクスコンバータ20内のSru,Ssu,Stu,Srv,Ssv,Stv,Srw,Ssw,Stwは、電流を双方向に通流可能な交流スイッチである。
いま、電源10を対称三相電源とし、線間電圧実効値をE、電源角周波数をω、電源位相角をθとすると、相電圧er,es,etは数式1,2により与えられる。
【0003】
【数1】
【0004】
【数2】
【0005】
ここでは、スイッチング周期2Tにおける電源電圧er,es,et及び負荷電流iuv,ivw,iwuをそれぞれ一定値として近似するものとする。また、電源電圧はer>0>es>et(0≦θ≦π/6)、出力相電圧指令値はvu*>vv*>vw*(線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*)とする。
スイッチング半周期T間の転流回数は、9個の交流スイッチ全てに導通期間を設けると6回であるが、転流回数を4回に低減すると共に、電源力率を1に制御し、また、出力電圧をスイッチング半周期Tの平均値として指令値通りの電圧に制御する従来技術について、9個の交流スイッチSru〜StwのオンデューティDru〜Dtwの決め方を以下に説明する。
【0006】
従来方式1として、電源電圧絶対値が最大値であるr相と出力電圧が最大値であるu相とを、スイッチング半周期Tにわたって導通し続ける方式がある。このときの各オンデューティDru〜Dtwは数式3で与えられる。
【0007】
【数3】
【0008】
図14(a)は、従来方式1の動作を示したオンデューティ(スイッチングパターン)及び出力線間電圧を示すもので、全ての線間電圧波形において零電圧と電源の最大線間電圧であるetrが存在する。
なお、この従来方式1に相当するスイッチング方法が、非特許文献1に記載されている。
【0009】
従来方式1において、出力電圧指令値が低い場合に電源の最大線間電圧であるetrを用いない方式として、非特許文献2に記載された従来方式2が知られている。
この従来方式2の出力電圧最大値は、電源電圧の1/2である。従来方式2では、各パルスパターンの組み合わせに対するデューティDA〜DEが相電圧実効値Em=E/√3を用いて定義されており、それぞれ数式4で与えられる。
【0010】
【数4】
【0011】
図14(b)は、従来方式2の動作を示したオンデューティ及び出力線間電圧を示しており、電源の最大線間電圧etrを使用しない方式である。
【0012】
従来方式1では、出力電圧指令値の大きさに関わらず、電源電圧の最大線間電圧と零電圧とを用いているため、スイッチング周期における電圧リプルが増大する。電圧リプルの増大に伴って変換器が発生するノイズが大きくなり、他の装置の誤動作を招く恐れがあるため好ましくない。また、ノイズを除去するフィルタを新たに取り付けることはコスト上昇や体積の増加を招くという問題がある。
【0013】
従来方式2によれば、電圧リプルは低減できるが、PWM制御可能な範囲の電圧が電源電圧の1/2と低いため、高い出力電圧を得るためには制御を切り替える必要がある。しかし、制御の切替を行うとシーケンス処理が増加するため、演算装置が複雑化する恐れがある。また、制御の切替を行わない場合は出力電圧がPWM制御可能な範囲外となり、出力電圧に歪みが発生する。出力電圧の歪みは、負荷に電動機が接続されているとトルク脈動を引き起こし、電動機の損失増大や過熱などの原因となって好ましくない。
【0014】
また、従来方式1,2共に、電源力率を1とする場合の制御方式である。このように電源力率1制御を行った場合には、変換器の入力側のLCフィルタにより交流電源から進み電流が流れ、実際には電源力率が進み力率になる。この進み電流による電流の増加や損失の増大により、入力リアクトルの大型化やコスト上昇を招くという問題がある。
【0015】
上記の点に鑑み、本出願人は、交流−交流直接電力変換器のスイッチング周期における出力電圧リプルを低減し、発生ノイズを低減すると共に、複雑な制御の切替等も必要としない交流−交流直接電力変換器の制御装置を既に出願した。
以下、この先願発明について説明する。
【0016】
図15は先願発明の構成を示すブロック図であり、その主回路において、10は前記同様に三相交流電源、20はマトリクスコンバータ、21はリアクトルL及びコンデンサCからなる入力フィルタ、30は負荷をそれぞれ示す。
制御装置40は、三相交流電源10に接続された入力電圧検出手段41と、出力電圧指令演算手段42と、入力電圧及び出力電圧指令値からマトリクスコンバータ20の交流スイッチのオンデューティを演算し、このオンデューティに応じてマトリクスコンバータ20の交流スイッチSru〜Stwに対する駆動パルス(PWMパルス)Gru,Gsu,Gtu,Grv,Gsv,Gtv,Grw,Gsw,Gtwを生成する駆動パルス演算手段400とを備えている。
【0017】
入力電圧検出手段41では、例えば、三相入力端子r,s,tから入力される各相電圧を星形結線した抵抗等により分圧し、電源10の各相電圧er,es,etを検出する。
図16は、図15における出力電圧指令演算手段42のブロック図であり、負荷30としての誘導電動機を可変速制御する場合のものである。図16において、誘導電動機の速度指令値に相当する一次角周波数指令値ωL*を与え、V/fテーブル421により一次角周波数指令値ωL*に応じた線間電圧指令値VL*を得る。また、一次角周波数指令値ωL*を積分器422に入力して時間積分により誘導電動機の電気角θL*を得る。上記線間電圧指令値VL*と電気角θL*とに基づき、三相発振器423によって数式5により出力相電圧指令値vu*,vv*,vw*が与えられる。
【0018】
【数5】
【0019】
図17は、図15における駆動パルス演算手段400の構成を示すブロック図である。
まず、最大電圧を出力させる相の交流スイッチに対しては電源側の最大電圧相及び中間電圧相に接続されるようにスイッチングパターンを決定し、最小電圧を出力させる相の交流スイッチに対しては電源側の中間電圧相及び最小電圧相に接続されるようにスイッチングパターンを決定する動作について説明する。
【0020】
図15のマトリクスコンバータ20を制御する場合、出力線間電圧vuv,vvw,vwu及び電源力率cosψをそれぞれ指定値通りに制御するために、数式6に従って、スイッチング半周期Tにおける9個のスイッチSru〜StwのオンデューティDru〜Dtw及びスイッチング時間Ttu〜Ttwを決めている。
【0021】
【数6】
【0022】
オンデューティの条件として、マトリクスコンバータ20の負荷電流の連続性から、数式7が成立しなければならない。
【0023】
【数7】
【0024】
例えば、u相においては、スイッチSru,Ssu,Stuの何れか1つだけが常にオンしなければならない。スイッチングパターンを考えるにあたって、スイッチング周波数は電源や負荷電圧の周波数に比較して十分高く、また、誘導性負荷を前提にして、スイッチング周期2Tにおける入力電圧er,es,et及び負荷電流iuv,ivw,iwuをそれぞれ一定値として近似する。また、入力電圧はer>es>et 、出力電圧指令値はvu*>vv*>vw*という条件のもとで説明する。
【0025】
図18は、この先願発明におけるオンデューティ(スイッチングパターン)及び出力線間電圧を示している。各相スイッチの導通期間をオンデューティDru〜Dtwによりそれぞれ示し、前半の半周期と後半の半周期では折り返しのパターンとしている。
このスイッチングパターンは、最大出力電圧指令vu*のu相の交流スイッチについては、電源の最大電圧er(最大電圧相であるr相)及び中間電圧es(中間電圧相であるs相)のみに接続して最小電圧et(最小電圧相であるt相)には接続せず、また、最小出力電圧指令値vw*のw相の交流スイッチについては、電源の中間電圧es及び最小電圧etのみに接続して最大電圧erには接続しないPWMパターンであり、このようなPWMパターンを用いることは、同図(a)の高出力電圧時、同図(b)の低出力電圧時の何れも変わりがない。すなわち、出力電圧の大きさに関わらず、最大電圧を出力させる相の交流スイッチに対しては電源側の最大電圧相及び中間電圧相に接続されるようにスイッチングパターンを決定し、最小電圧を出力させる相の交流スイッチに対しては電源側の中間電圧相及び最小電圧相に接続されるようにスイッチングパターンを決定する。
スイッチング半周期Tの転流回数については、スイッチStu,Srwを導通しない(Dtu=0,Drw=0)ため、従来方式1,2と同様に4回に低減できている。また、最大電圧と最小電圧との間の直接の切替がないので、スイッチング損失及びノイズを低減でき、全ての相で中間電圧が使用されるため、負荷中性点の電位変化を抑制することができる。
【0026】
この先願発明では、図18に示すように必ず線間電圧指令値と同符号の電圧パルスで線間電圧を構成することができ(例えば、線間電圧vuvについては、その指令値vuv*と同極性の電圧パルスers,estにより線間電圧vuvが構成される)、更に、指令値の絶対値が最大となる線間電圧波形vwuについては、同図(a)に示すように出力電圧が高い場合には零電圧が出力されず、同図(b)に示すように出力電圧が低い場合には最大の電圧パルスetrが出力されないので、出力電圧高調波を抑制することができる。
【0027】
次に、図15におけるオンデューティ演算手段400について説明する。
図19は、出力電圧指令値が最大値のu相と最小値のw相との間の負荷電流iwuのみを考慮した接続関係を示している。このとき、図19のようにu相スイッチSru,Ssuとw相スイッチSsw,Stwとをそれぞれ導通してスイッチング半周期Tのパターンを発生する。
図19において、電源力率1を実現するために、電源から見た負荷側インピーダンスを抵抗Rwuと考えると、スイッチング半周期Tの平均入力電流irwu,iswu,itwuは数式8により得られる(明細書本文中では記号「−」を付記できないため、以下では、各数式における電流i,電力Pの上方に記号「−」を付して平均値を示す)。
【0028】
【数8】
【0029】
これにより、スイッチング半周期Tの電源の平均電力Pwuは数式9で与えられる。
【0030】
【数9】
【0031】
数式9の平均Pwuが負荷の消費電力に等しいことから、w,u間の電流源iwuは数式10によって表される。
【0032】
【数10】
【0033】
最大出力電圧相であるu相は、最大電圧相のr相及び中間電圧相のs相のみに接続され、最小電圧相のt相には接続されないので、数式11が成り立つ。
【0034】
【数11】
【0035】
また、r相電流irwuは、スイッチSruをオンしたときだけ−iwuが流れるので、数式8,10より、オンデューティDruは数式12のようになる。
【0036】
【数12】
【0037】
数式7から、オンデューティDsuは数式13により得られる。
【0038】
【数13】
【0039】
w相については、最大電圧相のr相には接続されず、また、t相電流itwuは、スイッチStwをオンしたときだけiwuが流れることから、オンデューティDrw,Dtw,Dswはそれぞれ数式14〜数式16によって得られる。
【0040】
【数14】
【0041】
【数15】
【0042】
【数16】
【0043】
次いで、中間電圧相のv相のスイッチングパターンを考える。
図20は、出力電圧指令値が最大値のu相と中間値のv相との間の負荷電流iuvのみを考慮した接続関係を示している。図20において、電源力率1を実現するために、電源から見た負荷側インピーダンスを抵抗Ruvと考えると、入力電流iruv,isuv,ituvは数式17により表される。
【0044】
【数17】
【0045】
また、スイッチング半周期Tにおける電源平均電力Puvが負荷電力に等しいことから、電流源iuvは数式18によって与えられる。
【0046】
【数18】
【0047】
図20において、t相電流ituvは、スイッチStvをオンしたときだけ、−iuvが流れるので、オンデューティDtvは数式19により得られる。
【0048】
【数19】
【0049】
また、図21は、出力電圧指令値が中間値のv相と最小相のw相間の負荷電流ivwのみを考慮した接続関係を示している。図21において、電源力率1を実現するために、電源から見た負荷側インピーダンスを抵抗Rvwと考えると、入力電流irvw,isvw,itvwは数式20によって表される。
【0050】
【数20】
【0051】
また、スイッチング半周期Tの電源平均電力Pvwが負荷電力に等しいことから、電流源ivwは数式21によって与えられる。
【0052】
【数21】
【0053】
図21において、r相電流irvwは、スイッチSrvをオンしたときだけivwが流れるので、オンデューティDrvは数式22により得られる。
【0054】
【数22】
【0055】
数式7,19,22より、オンデューティDsvは数式23により得られる。
【0056】
【数23】
【0057】
上記では、入力電圧がer>es>et、出力電圧指令値がvu*>vv*>vw*の場合の各スイッチのオンデューティを導出した。
以下に、入出力電圧の任意の大小関係におけるスイッチングパターン発生時のオンデューティ演算手段400の作用を説明する。
【0058】
図17に示したオンデューティ演算手段406では、入力電圧の大小関係の情報を得るために、入力電圧の相/線間変換手段401において、入力電圧er,es,etから線間電圧ers,est,etrを数式24により求める。
【0059】
【数24】
【0060】
入力大小判別手段402では、表1に従って、入力電圧の符号から入力電圧モードms(1〜6)を判別し、入力電圧(電源電圧)の最大電圧e1、中間電圧e2、最小電圧e3を得る。ここで、添字1,2,3は、入力電圧の最大、中間、最小をそれぞれ意味する。
【0061】
【表1】
【0062】
入力大小判別手段402の出力は、最大電圧e1、中間電圧e2、最小電圧e3と、大小関係を表す3ビットの信号r1,s1,r2s3である。信号r1,s1は、それぞれer,esが最大電圧のときにのみ“1”になり、信号r2s3は、erが中間電圧またはesが最小電圧のときにのみ“1”になる信号である。
【0063】
図17における出力電圧相/線間変換手段403は、出力電圧指令値vu*,vv*,vw*から線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*を数式25により求める。
【0064】
【数25】
【0065】
出力大小判別手段404では、表2に従って、線間電圧指令値の符号から出力電圧モードmL(1〜6)を判別し、出力相電圧指令値の最大電圧va*、中間電圧vb*、最小電圧vc*を得る。ここで、添字a,b,cは、出力電圧の最大、中間、最小をそれぞれ意味する。
【0066】
【表2】
【0067】
更に、電圧指令相/線間変換手段405により、線間電圧指令値vab*,vbc*,vca*を数式26により演算する。
【0068】
【数26】
【0069】
オンデューティ演算手段406では、入力の最大電圧e1、中間電圧e2、最小電圧e3及び線間電圧指令値vab*,vbc*,vca*を用いて、出力電圧指令値の最大電圧相a相、中間電圧相b相、最小電圧相c相がそれぞれ入力電圧の最大電圧相1相、中間電圧相2相、最小電圧相3相に接続されるスイッチのオンデューティD1a〜D3cに関して、数式27を演算する。
【0070】
【数27】
【0071】
相判別手段407では、表3に従って、出力大小判別手段404から受ける出力電圧モードmLから出力電圧指令値の最大電圧相a相、中間電圧相b相、最小電圧相c相がそれぞれu相、v相、w相の何れに対応するかを判断し、対応した相のPWM発生部に数式27のオンデューティを出力する。
例えばmL=1の場合には、表3によれば出力中間電圧相b相がv相であるから、D1v=D1b,D12v=D12bとして、D1v,D12vをv相比較回路410に出力する。
【0072】
【表3】
【0073】
図17においてPWMパルスを発生するための各相比較回路409〜411及びPWM発生手段412〜414は、三相とも同様の回路であり、その具体的なPWM発生原理図を図22に示す。
【0074】
図22はv相についてのPWM発生原理図であり、出力相電圧指令が中間電圧の場合(vb*=vv*)である。
同図(a)では、0,1間で変化する三角波キャリアとオンデューティD1v,D12v(=D1v+D2v)とを比較し、信号Q1v,Q12vが得られる。同図(b)に示す論理回路により、信号Q1v,Q12vからスイッチング信号G1v,G2v,G3vを得て、更に、これらをr,s,t相に振り分けることによりPWMパルスGrv,Gsv,Gtvを発生する。この振り分けにおいては、表1から得られる信号r1(e1=er信号)、信号s1(e1=es信号)、信号r2s3(e2=erまたはe3=es信号)を用いて、電源側のr,s相がそれぞれ最大電圧相、中間電圧相、最小電圧相の何れであるかを判断しPWMパルスGrv,Gsvを作成する。電源側のt相のPWMパルスGtvは、Grv,Gsvが共にオフ状態のときにオンする論理として得られる。
【0075】
上述した入力電圧検出手段41または出力電圧指令演算手段42はあくまで一例であり、入力電圧検出手段41については、電源10の相電圧を検出する以外に線間電圧を検出してもよいし、入力電圧の振幅は一定とみなして入力電圧の正負を検出することでも実現可能である。また、出力電圧指令演算手段42については、V/f制御以外にベクトル制御でも実現可能である。
【0076】
なお、電源力率を1に制御する場合に、入力電圧er,es,etからこれに比例する入力電流指令値ir*,is*,it*を演算し、オンデューティ演算手段400に出力しても良い。この場合、入力電流指令値ir*,is*,it*は、比例定数を1/Rsとすると数式28により与えられる。ここで、Rsは電源から見たマトリクスコンバータのインピーダンス(抵抗)である。
【0077】
【数28】
【0078】
図15に示したマトリクスコンバータの簡易モデルにおいて、入力電圧をer>es>et、出力電圧指令値をvu*>vv*>vw*とし、スイッチング周期2Tにおける入力電圧er,es,et及び負荷電流iuv,ivw,iwuをそれぞれ一定値として近似する。その後、各スイッチSru〜StwのオンデューティDru〜Dtwの演算式を導出する。
【0079】
数式28より、入力電圧er,es,etは、入力電流指令値ir*,is*,it*を用いて数式29により表される。
【0080】
【数29】
【0081】
数式29を数式11〜16,19,22,23に代入することにより、各オンデューティDru〜Dtwを数式30によって得ることができる。
【0082】
【数30】
【0083】
以上により、マトリクスコンバータ20の9個の交流スイッチSru〜StwのオンデューティDru〜Dtwが決定される。これらのオンデューティの演算式は、数式28における比例定数1/Rsを含んでおらず、Rsに依存しない。従って、実際の入力電流ir,is,itは入力電流指令値ir*,is*,it*にそれぞれ比例した電流となり、入力電流の位相(入力力率)が指令値通りに制御され、入力電流の大きさは負荷電流により決まることとなる。
【0084】
【非特許文献1】石黒章夫,古橋武,石田宗秋,大熊繁,「入力線間電圧瞬時値に基づくPWM制御サイクロコンバータの出力電圧制御法」,電気学会論文誌D,111巻3号,平成3年,pp.201-207
【非特許文献2】原英則,山本栄治,善家充彦,姜俊求,久米常生,「低電圧領域におけるマトリクスコンバータの電圧改善の一方策」,平成16年電気学会産業応用部門大会講演論文集I−48,pp.313-316
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0085】
前述した図18のスイッチングパターンにおいては、高出力電圧時、低出力電圧時の何れも、u相は2回のスイッチの切り替わり(r相,s相の入力電圧が現れる)、v相は4回のスイッチの切り替わり(r相,s相,t相の入力電圧が現れる)、w相は2回のスイッチの切り替わり(s相,t相の入力電圧が現れる)となっている。すなわち、1スイッチング周期(キャリア周期)におけるスイッチング回数は三相合計で8回であるから、出力1相あたりの平均回数は8回を三相で除した2.6回となる。
【0086】
上述のごとく、先願発明では1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数が2.6回と多いため、スイッチング素子の損失が増大し、スイッチング素子を冷却するための放熱フィンやファンなどの冷却装置が大型化し、コストが上昇するという問題がある。また、スイッチング回数が多いということはスイッチングによって発生するノイズの増加を招き、他の装置の誤作動を引き起こすほか、ノイズ対策用のフィルタを追加せざるを得ないなど、小型化、低コスト化、信頼性向上の観点から問題がある。
【0087】
そこで本発明の解決課題は、先願発明よりもスイッチング回数を減らし、スイッチング損失やノイズの影響を低減してシステム全体の小型化、低コスト化を図ると共に、高効率化、信頼性向上を可能とした制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0088】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、交流電源に接続される入力側の各相と出力側の各相とが双方向性の交流スイッチにより直接接続され、前記交流スイッチのオンオフ動作により、交流電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に直接変換する交流−交流直接電力変換器において、
前記電力変換器の入力電圧を検出する手段と、前記電力変換器の出力電流を検出する手段と、前記電力変換器の出力電圧指令値、入力電圧情報及び出力電流情報、並びに、前記出力電圧指令値及び前記入力電圧情報それぞれの各相の大小関係を用いて、前記交流スイッチのスイッチングパターンを決定し、このスイッチングパターンに応じて前記交流スイッチの駆動パルスを生成する駆動パルス演算手段と、を備えたものである。
【0089】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記駆動パルス演算手段は、
前記出力電圧指令値及び出力電流検出値から出力電力を演算する手段と、前記電力変換器の入力電圧指令値、入力電流位相指令値及び前記出力電力から入力電流指令値を演算する手段と、前記入力電圧検出値、入力電流指令値、出力電流検出値及び出力電圧指令値から前記交流スイッチのスイッチングパターンをオンデューティとして演算するオンデューティ演算手段と、を備えたものである。
【0090】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記オンデューティ演算手段は、
前記電力変換器の出力電圧最大相及び出力電圧中間相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第1のオンデューティ演算部と、前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧中間相及び出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第2のオンデューティ演算部と、を備えたものである。
【0091】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記オンデューティ演算手段は、更に、
前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相に接続し、前記電力変換器の出力電圧中間相を入力電圧最大相、入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第3のオンデューティ演算部と、前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、前記電力変換器の出力電圧中間相を入力電圧最大相、入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第4のオンデューティ演算部と、を備えたものである。
【0092】
請求項5に記載した発明は、請求項3または4に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
何れかのオンデューティ演算部により演算されたスイッチングパターンを選択して出力する手段を備えたものである。
【0093】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数が2回以下になるようにスイッチングパターンを決定するものである。
【発明の効果】
【0094】
本発明によれば、電力変換器の入力電圧情報、出力電流情報及び出力電圧指令値を用い、入力相と出力相とを接続するスイッチングの接続条件に基づいてオンデューティを演算することにより、先願発明に比べてスイッチング回数を3/4に低減することができる。
これによってスイッチング損失を低減し、システム全体の小型化、低コスト化を図り、効率や信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。この実施形態に係る制御装置40Aの最大の特徴は、マトリクスコンバータ20の出力電流を検出し、入力電圧及び出力電流の情報からスイッチング回数を低減するパルスパターンを演算する駆動パルス演算手段400Aを設けたことである。なお、図1において、図15と同一の構成要素には同一の参照符号を付すものとする。
【0096】
図1において、入力電圧検出手段41は、三相交流電源10のr,s,t各相の電圧を検出する。入力電圧検出手段41の検出位置は、図1に示す以外に、リアクトルLとフィルタコンデンサCとの間であっても良く、また、三相全てを検出せずに二相の電圧を検出して他の一相を演算により求めても良い。
得られた入力電圧er,es,etは駆動パルス演算手段400Aに入力されると共に、入力電圧位相演算手段43に入力され、入力電圧の位相θがPLL等により検出される。入力電流位相演算手段44は、入力電圧位相θと入力電流力率指令値ψ*とから、各相の入力電流基準指令値ur*,us*,ut*を数式31により演算する。
【0097】
【数31】
【0098】
出力電圧指令演算手段42は、負荷30として例えば電動機が接続されている際に広く用いられるV/f一定制御において、周波数指令値ωL*に応じた出力電圧値VL*と、周波数指令値ωL*を時間積分して得られる出力電圧位相指令値θL*とにより、数式32から各相の出力電圧指令値vu*,vv*,vw*を演算する。
【0099】
【数32】
【0100】
この実施形態において、出力電圧指令演算手段42はV/f一定制御に限定されるものではなく、ベクトル制御やその他さまざまな制御方式を適用することができる。
出力電流検出手段45は、ホールセンサやシャント抵抗器等を用いてマトリクスコンバータ20の各相出力電流iu,iv,iwを検出する。図1では、u相及びv相の二相の電流を検出し、残りのw相に関してはこれらの検出電流から演算により求めている。
【0101】
以下、本実施形態の主要部である駆動パルス演算手段400Aについて説明する。
図2は、駆動パルス演算手段400Aの構成を示すブロック図である。図2において、入力電圧相/線間変換手段461は、入力電圧er,es,etを数式33により線間電圧ers,est,etrに変換する。
【0102】
【数33】
【0103】
入力電流振幅指令演算手段462は、入力電圧er,es,etと、出力電圧指令値vu*,vv*,vw*と、出力電流iu,iv,iwと、入力電流基準指令値ur*,us*,ut*とを用いて、入力電流の振幅指令値I*を演算する。まず、出力電圧指令値vu*,vv*,vw*及び出力電流iu,iv,iwから、制御周期間の平均出力電力Poutを数式34により演算する。
【0104】
【数34】
【0105】
次に、入力電圧er,es,et及び入力電流基準指令値ur*,us*,ut*から、制御周期間の平均入力基準電力Puを数式35により演算する。
【0106】
【数35】
【0107】
平均入力基準電力Puは、入力電流基準指令値ur*,us*,ut*から演算しているため入力電流の振幅情報を持たない。制御周期間の平均入力電力Pinと平均入力基準電力Puとの関係は、入力電流の振幅をI*とすると、数式36となる。
【0108】
【数36】
【0109】
マトリクスコンバータはエネルギー蓄積要素を持たないので、平均入力電力Pinと出力電力Poutとは等しい。従って、入力電流振幅I*は数式37によって求められる。
【0110】
【数37】
【0111】
入力電流指令値演算手段463は、数式37によって得られた入力電流振幅I*と入力電流基準指令値ur*,us*,ut*とを用いて、入力電流指令値ir*,is*,it*を数式38により演算する。
【0112】
【数38】
【0113】
出力電圧相/線間変換手段464は、数式39により出力電圧指令値vu*,vv*,vw*を出力線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*に変換する。
【0114】
【数39】
【0115】
入力大小判別手段465は、表4のように、入力線間電圧ers,est,etrの符号から入力モードmS(1〜6)を判別し、入力電圧の最大、中間、最小相電圧eα,eβ,eγと、入力電流指令値iα*,iβ*,iγ*と、パルスパターン判別信号としての大小関係信号rα,sα,rβsγとを求める。
なお、ここで、添字α,β,λは最大、中間、最小をそれぞれ意味しており、前述した表1における添字1,2,3に相当する。このため、表4は実質的に表1と同一である。
【0116】
【表4】
【0117】
また、出力大小判別手段466は、表5のように、出力線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*の符号から出力モードmL(1〜6)を判別し、出力線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*の最大、中間、最小相電圧指令値va*,vb*,vc*、出力電流ia,ib,icを求める。ここで、添字a,b,cは最大、中間、最小をそれぞれ意味している。
【0118】
【表5】
【0119】
電圧指令相/線間変換手段467は、数式40によって出力線間電圧指令値vab*,vbc*,vca*を求める。
【0120】
【数40】
【0121】
また、第1のオンデューティ演算手段468は、入力電圧の最大、中間、最小相電圧eα,eβ,eγと、最大、中間、最小の入力電流指令値iα*,iβ*,iγ*と、出力線間電圧指令値vab*,vbc*,vca*と、最大、中間、最小の出力電流ia,ib,icとから、入力電圧の最大相α、中間相β、最小相γと、出力電圧指令値の最大相a、中間相b、最小相cとを接続するそれぞれのスイッチのオンデューティD1αa〜D1αβcを数式41により求める。
【0122】
【数41】
【0123】
第2のオンデューティ演算手段469は、第1のオンデューティ演算手段468と同様に、eα,eβ,eγとiα*,iβ*,iγ*とvab*,vbc*,vca*とia,ib,icとから、それぞれのスイッチのオンデューティD2αa〜D2αβcを数式42により求める。
【0124】
【数42】
【0125】
ここで、数式41について説明する。
図3は、導通しないスイッチを省略したマトリクスコンバータ、三相交流電源及び負荷の接続構成を示す回路図であり、第1のオンデューティ演算手段468によるスイッチの接続例を説明するためのものである。なお、入力フィルタは、説明を容易にするために図示を省略している。
【0126】
図3において、入力電圧の大小関係は、r相が最大、s相が中間、t相が最小であり、出力電圧の大小関係は、u相が最大、v相が中間、w相が最小である。図3に示すように、出力電圧最大相のu相と中間相のv相は入力電圧最小相のt相に接続せず、出力電圧最小相のw相は入力電圧最大相のr相に接続しないように各スイッチのオンデューティを演算する。
出力電圧最小相(c相)は、入力電圧最大相(α相)に接続しないため、D1αcは数式43となる。
【0127】
【数43】
【0128】
入力電圧最小相(γ相)の電流は、D1γcの割合で出力最小相電流icが流れるので、数式44となる。
【0129】
【数44】
【0130】
マトリクスコンバータの出力電流の連続性から、出力一相のオンデューティの和は1にならなければならない。よって、D1βcは数式45となる。
【0131】
【数45】
【0132】
出力電圧最大相(a相)は入力電圧最小相(γ相)に接続しないので、D1γaは数式46となる。
【0133】
【数46】
【0134】
出力電圧指令値vca*と数式44,45との関係は数式47となる。
【0135】
【数47】
【0136】
数式47よりD1αaを求めると、数式48となる。
【0137】
【数48】
【0138】
D1βaは、オンデューティの条件から数式49となる。
【0139】
【数49】
【0140】
次に、出力電圧中間相(b相)は入力電圧最小相(γ相)に接続しないので、D1γbは数式50となる。
【0141】
【数50】
【0142】
出力電圧指令vbc*と数式44,45の関係は数式51となる。
【0143】
【数51】
【0144】
数式51よりD1αbを求めると、数式52となる。
【0145】
【数52】
【0146】
D1βbはオンデューティの条件から数式53となる。
【0147】
【数53】
【0148】
以上のように、数式41は、スイッチの接続条件としての数式43〜数式53から導出することができる。
【0149】
図4は、数式41により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示している。図4(a)の高出力電圧時、図4(b)の低出力電圧時の何れも、u相は2回のスイッチの切り替わり(r相,s相の入力電圧が現れる)、v相は2回のスイッチの切り替わり(r相,s相の入力電圧が現れる)、w相は2回のスイッチの切り替わり(s相,t相の入力電圧が現れる)となっている。すなわち、1スイッチング周期間のスイッチング回数は三相合計で6回であり、出力1相あたりの平均は、6回を三相で除した2回となる。従って、スイッチング回数は先願発明の3/4に低減できており、スイッチング損失も低減できることになる。
ただし、第1のオンデューティ演算手段468のみでは、負荷力率と出力電流によっては実現できない場合が存在する。例えば、負荷力率が1で入力電圧最大相及び中間相の電圧が正の場合は、正の入力電圧を用いている以上、正の中間相に負の電流を流すことが不可能である。したがって、第1のオンデューティ演算手段468のみでは実現が不十分となる。
【0150】
そこで、図2に示した第2のオンデューティ演算手段469では、出力電圧最大相(a相)を入力電圧最小相(γ相)に接続せず、出力電圧中間相(b相)及び出力電圧最小相(c相)を入力電圧最大相(α相)に接続しないように前記数式42によってオンデューティを演算する。数式42の導出は数式41の導出と同様の考え方で行えばよいので、詳細な説明は省略する。
【0151】
図5は、数式42により演算されたデューティによりスイッチングを行った際の回路であり、第2のオンデューティ演算手段469によるスイッチの接続例を説明するためのものである。図5より、出力電圧最大相u相は入力電圧最小相t相に接続せず、出力電圧中間相v相及び出力電圧最小相w相は入力電圧最大相r相に接続していないことがわかる。
【0152】
図6は、数式42により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示している。
図4と同様に、1スイッチング周期間のスイッチング回数は三相合計で6回であり、出力1相あたりの平均は2回となる。
【0153】
図2に戻って、第1,第2のオンデューティ演算手段468,469の出力のいずれかを選択するために、オンデューティ選択手段470が設けられている。このオンデューティ選択手段470は、数式41と数式42でオンデューティが0〜1の間に存在しない方が条件不成立と判断し、もう一方の数式に対応するオンデューティ演算手段468または469の出力を選択するように動作する。
相判別手段471では、表5で求めた出力電圧モードmLを用いて表6に従って出力u,v,w相の三角波キャリアと比較するデューティDαu〜Dαβwを求める。
【0154】
【表6】
【0155】
図7はv相についてのPWM発生原理図であり、出力相電圧指令値が中間電圧の場合(vb*=vv*)である。
同図(a)では、0,1間で変化する三角波キャリアとオンデューティDαv,Dαβv=Dαv+Dβv)とを比較し、信号Qαv,Qαβvが得られる。同図(b)に示す論理回路により、信号Qαv,Qαβvからスイッチング信号Gαv,Gβv,Gγvを得ると共に、これらを表4の大小関係信号と論理演算してr,s,t相に振り分けることにより、PWMパルスGrv,Gsv,Gtvを発生してマトリクスコンバータの各スイッチをスイッチングする。
【0156】
なお、本実施形態において、オンデューティ演算手段の構成は上述した例に限定されるものではなく、様々な構成が考えられる。従って、マトリクスコンバータの入力電圧及び出力電流を検出し、接続するスイッチの条件に応じて所定の演算式によりオンデューティを演算し、1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数が2回以内となる方法であれば、本発明に包含されるものである。
【0157】
次に、図8は本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図であり、図1における駆動パルス演算手段400Aの他の構成例を示している。
この実施形態では、図2に示した第1実施形態の構成に加えて、第3のオンデューティ演算手段479及び第4のオンデューティ演算手段480を備えている。以下、これらのオンデューティ演算手段479,480について説明する。
【0158】
図9は、第3のオンデューティ演算手段479によるスイッチの接続例を説明するためのものである。
図9において、入力電圧の大小関係はr相が最大、s相が中間、t相が最小であり、出力電圧の大小関係はu相が最大、v相が中間、w相が最小である。第3のオンデューティ演算手段479では、出力電圧最大相を入力電圧最大相に接続し、出力電圧中間相を入力電圧最大相、中間相及び最小相に接続すると共に、出力電圧最小相を入力電圧中間相及び最小相に接続するようにオンデューティを演算する。
以下、第1実施形態における第1のオンデューティ演算手段468と同様にデューティの演算式を導出する。
【0159】
出力電圧最大相(a相)は入力電圧最大相(α相)に接続されるため、D3αa〜D3γaは数式54となる。
【0160】
【数54】
【0161】
出力電圧最小相(c相)は入力電圧最大相(α相)に接続しないので、D3αcは数式55となる。
【0162】
【数55】
【0163】
出力電圧指令値vca*と数式54との関係は、数式56となる。
【0164】
【数56】
【0165】
数式56からD3γcを求めると、数式57となる。
【0166】
【数57】
【0167】
また、D3βcはオンデューティの条件から、数式58となる。
【0168】
【数58】
【0169】
次いで、出力電圧中間相(b相)について考える。入力電圧最大相(α相)には出力電圧最大相(a相)の電流が流れ続け、これにD3αbの割合で出力電圧中間相(b相)の電流が重畳されるので、数式59の関係になる。
【0170】
【数59】
【0171】
数式59より、D3αbは数式60となる。
【0172】
【数60】
【0173】
出力電圧指令値vab*と数式54、数式60の関係は、数式61となる。
【0174】
【数61】
【0175】
数式61より、D3βbは数式62となる。
【0176】
【数62】
【0177】
D3γbは、オンデューティの条件から数式63となる。
【0178】
【数63】
【0179】
以上より、第3のオンデューティ演算手段479による演算内容は数式64によって表される。
【0180】
【数64】
【0181】
図10は、数式64により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。図10のスイッチングパターンより、出力電圧最大相のu相はスイッチングを行わずに入力電圧最大相のr相に接続され、出力電圧中間相のv相は、4回の切り替わりで入力電圧最大相のr相、中間相のs相及び最小相のt相に接続され、出力電圧最小相のw相は、2回の切り替わりでs相及びt相に接続される。
すなわち、1スイッチング周期間のスイッチング回数は、出力電圧最大相であるu相がスイッチングを行わないので、三相合計で6回であり、出力1相あたりの平均は、6回を三相で除した2回となる。
【0182】
一方、第1実施形態で述べたように、数式64のみではデューティの条件を満足しない場合が存在するので、第4のオンデューティ演算手段480を設ける。
図11は、第4のオンデューティ演算手段480によるスイッチの接続例を示す回路図である。オンデューティ演算手段480では、出力電圧最大相を入力電圧最大相及び中間相に接続し、出力電圧中間相を入力電圧最大相、中間相及び最小相に接続すると共に、出力電圧最小相を入力電圧最小相に接続するようにオンデューティを演算する。
この場合のオンデューティは第3のオンデューティ演算手段479と同様の考え方で導出可能であり、数式65となる。
【0183】
【数65】
【0184】
図12は、数式65により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
図12のスイッチングパターンにより、出力電圧最大相のu相は2回の切り替わりで入力電圧最大相のr相及び入力電圧中間相のs相に接続される。出力電圧中間相のv相は、4回の切り替わりでr相,s相及び入力電圧最小相のt相に接続され、出力電圧最小相のw相は、スイッチングを行わずにt相に接続される。
すなわち、1キャリア周期間のスイッチング回数は、出力電圧最小相のw相がスイッチングを行わないため、三相合計で6回であり、出力1相あたりの平均は、6回を三相で除した2回となる。
【0185】
図8におけるオンデューティ選択手段470は、第1〜第4のオンデューティ演算手段468,469,479,480にそれぞれ対応する数式41,数式42,数式64,数式65の中で、全てのスイッチのオンデューティが0〜1の間に存在するものを選択し、当該オンデューティを相判別手段471に出力する。なお、数式64及び数式65の二つのパターンでは、出力電圧の位相によって満足しない場合が存在するため、すべての出力電圧指令値通りの出力電圧を実現するためには、数式41,数式42を合わせた四つのパターンから選択する必要がある。
【0186】
以上説明したように、本発明に係るオンデューティ演算手段により、1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数は2回となり、先願発明に比べて3/4に低減できるため、スイッチング損失やノイズの影響を低減してシステム全体の小型化、低コスト化が可能になると共に、高効率化、高信頼性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1における駆動パルス演算手段の構成を示すブロック図である。
【図3】図2における第1のオンデューティ演算手段によるスイッチの接続例を示す回路図である。
【図4】数式41により演算したデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
【図5】図2における第2のオンデューティ演算手段によるスイッチの接続例を示す回路図である。
【図6】数式42により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
【図7】v相についてのPWMパターン発生原理図であり、図7(a)は三角波キャリア及びスイッチング信号の波形図、図7(b)はスイッチング信号及びPWMパルス発生回路の回路図である。
【図8】本発明の第2実施形態における駆動パルス演算手段の構成を示すブロック図である。
【図9】図8における第3のオンデューティ演算手段によるスイッチの接続例を示す回路図である。
【図10】数式64により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
【図11】図8における第4のオンデューティ演算手段によるスイッチの接続例を示す回路図である。
【図12】数式65により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
【図13】マトリクスコンバータの簡略モデルを示す図である。
【図14】従来技術におけるオンデューティと出力線間電圧を示す図であり、図14(a)は従来方式1、図14(b)は従来方式2の動作例である。
【図15】先願発明の構成を示すブロック図である。
【図16】図15における出力電圧演算手段の構成を示すブロック図である。
【図17】図15における駆動パルス演算手段の構成を示すブロック図である。
【図18】先願発明におけるオンデューティと出力線間電圧を示す図であり、図18(a)は高出力電圧時の動作例、図18(b)は低出力電圧時の動作例である。
【図19】最大・最小出力電圧相の接続図である。
【図20】最大・中間出力電圧相の接続図である。
【図21】中間・最小出力電圧相の接続図である。
【図22】PWMパターン発生原理図であり、図22(a)は三角波キャリア及びスイッチング信号の波形図、図22(b)はスイッチング信号及びPWMパルス発生回路の回路図である。
【符号の説明】
【0188】
10:三相交流電源
20:マトリクスコンバータ
21:入力フィルタ
30:負荷
40A:制御装置
41:入力電圧検出手段
42:出力電圧指令演算手段
43:入力電圧位相演算手段
44:入力電流位相演算手段
45:出力電流検出手段
400A:駆動パルス演算手段
461:入力電圧相/線間変換手段
462:入力電流振幅指令演算手段
463:入力電流指令値演算手段
464:出力電圧相/線間変換手段
465:入力大小判別手段
466:入力大小判別手段
467:電圧指令相/線間変換手段
468:第1のオンデューティ演算手段
469:第2のオンデューティ演算手段
470:オンデューティ選択手段
471:相判別手段
472:u相比較回路
473:v相比較回路
474:w相比較回路
475:三角波キャリア発生回路
476:u相PWM発生手段
477:v相PWM発生手段
478:w相PWM発生手段
479:第3のオンデューティ演算手段
480:第4のオンデューティ演算手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ等の大形のエネルギーバッファを用いることなく、半導体スイッチング素子を用いて多相交流電圧を任意の大きさ及び周波数の多相交流電圧に直接変換する交流−交流直接電力変換器に関し、特に、スイッチング回数やスイッチング損失、発生ノイズの低減を図った交流−交流直接電力変換器の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は、交流−交流直接電力変換器の一例であるマトリクスコンバータ20の簡略モデルであり、10は三相交流電源、30は負荷を示している。実際のマトリクスコンバータでは、その入力側にスイッチングに伴う高調波電流抑制用のLCフィルタが必要とされるが、説明を容易にするため、図13ではこのLCフィルタを無視し、また、負荷30を三相電流源iuv,ivw,iwuによって模擬している。なお、マトリクスコンバータ20内のSru,Ssu,Stu,Srv,Ssv,Stv,Srw,Ssw,Stwは、電流を双方向に通流可能な交流スイッチである。
いま、電源10を対称三相電源とし、線間電圧実効値をE、電源角周波数をω、電源位相角をθとすると、相電圧er,es,etは数式1,2により与えられる。
【0003】
【数1】
【0004】
【数2】
【0005】
ここでは、スイッチング周期2Tにおける電源電圧er,es,et及び負荷電流iuv,ivw,iwuをそれぞれ一定値として近似するものとする。また、電源電圧はer>0>es>et(0≦θ≦π/6)、出力相電圧指令値はvu*>vv*>vw*(線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*)とする。
スイッチング半周期T間の転流回数は、9個の交流スイッチ全てに導通期間を設けると6回であるが、転流回数を4回に低減すると共に、電源力率を1に制御し、また、出力電圧をスイッチング半周期Tの平均値として指令値通りの電圧に制御する従来技術について、9個の交流スイッチSru〜StwのオンデューティDru〜Dtwの決め方を以下に説明する。
【0006】
従来方式1として、電源電圧絶対値が最大値であるr相と出力電圧が最大値であるu相とを、スイッチング半周期Tにわたって導通し続ける方式がある。このときの各オンデューティDru〜Dtwは数式3で与えられる。
【0007】
【数3】
【0008】
図14(a)は、従来方式1の動作を示したオンデューティ(スイッチングパターン)及び出力線間電圧を示すもので、全ての線間電圧波形において零電圧と電源の最大線間電圧であるetrが存在する。
なお、この従来方式1に相当するスイッチング方法が、非特許文献1に記載されている。
【0009】
従来方式1において、出力電圧指令値が低い場合に電源の最大線間電圧であるetrを用いない方式として、非特許文献2に記載された従来方式2が知られている。
この従来方式2の出力電圧最大値は、電源電圧の1/2である。従来方式2では、各パルスパターンの組み合わせに対するデューティDA〜DEが相電圧実効値Em=E/√3を用いて定義されており、それぞれ数式4で与えられる。
【0010】
【数4】
【0011】
図14(b)は、従来方式2の動作を示したオンデューティ及び出力線間電圧を示しており、電源の最大線間電圧etrを使用しない方式である。
【0012】
従来方式1では、出力電圧指令値の大きさに関わらず、電源電圧の最大線間電圧と零電圧とを用いているため、スイッチング周期における電圧リプルが増大する。電圧リプルの増大に伴って変換器が発生するノイズが大きくなり、他の装置の誤動作を招く恐れがあるため好ましくない。また、ノイズを除去するフィルタを新たに取り付けることはコスト上昇や体積の増加を招くという問題がある。
【0013】
従来方式2によれば、電圧リプルは低減できるが、PWM制御可能な範囲の電圧が電源電圧の1/2と低いため、高い出力電圧を得るためには制御を切り替える必要がある。しかし、制御の切替を行うとシーケンス処理が増加するため、演算装置が複雑化する恐れがある。また、制御の切替を行わない場合は出力電圧がPWM制御可能な範囲外となり、出力電圧に歪みが発生する。出力電圧の歪みは、負荷に電動機が接続されているとトルク脈動を引き起こし、電動機の損失増大や過熱などの原因となって好ましくない。
【0014】
また、従来方式1,2共に、電源力率を1とする場合の制御方式である。このように電源力率1制御を行った場合には、変換器の入力側のLCフィルタにより交流電源から進み電流が流れ、実際には電源力率が進み力率になる。この進み電流による電流の増加や損失の増大により、入力リアクトルの大型化やコスト上昇を招くという問題がある。
【0015】
上記の点に鑑み、本出願人は、交流−交流直接電力変換器のスイッチング周期における出力電圧リプルを低減し、発生ノイズを低減すると共に、複雑な制御の切替等も必要としない交流−交流直接電力変換器の制御装置を既に出願した。
以下、この先願発明について説明する。
【0016】
図15は先願発明の構成を示すブロック図であり、その主回路において、10は前記同様に三相交流電源、20はマトリクスコンバータ、21はリアクトルL及びコンデンサCからなる入力フィルタ、30は負荷をそれぞれ示す。
制御装置40は、三相交流電源10に接続された入力電圧検出手段41と、出力電圧指令演算手段42と、入力電圧及び出力電圧指令値からマトリクスコンバータ20の交流スイッチのオンデューティを演算し、このオンデューティに応じてマトリクスコンバータ20の交流スイッチSru〜Stwに対する駆動パルス(PWMパルス)Gru,Gsu,Gtu,Grv,Gsv,Gtv,Grw,Gsw,Gtwを生成する駆動パルス演算手段400とを備えている。
【0017】
入力電圧検出手段41では、例えば、三相入力端子r,s,tから入力される各相電圧を星形結線した抵抗等により分圧し、電源10の各相電圧er,es,etを検出する。
図16は、図15における出力電圧指令演算手段42のブロック図であり、負荷30としての誘導電動機を可変速制御する場合のものである。図16において、誘導電動機の速度指令値に相当する一次角周波数指令値ωL*を与え、V/fテーブル421により一次角周波数指令値ωL*に応じた線間電圧指令値VL*を得る。また、一次角周波数指令値ωL*を積分器422に入力して時間積分により誘導電動機の電気角θL*を得る。上記線間電圧指令値VL*と電気角θL*とに基づき、三相発振器423によって数式5により出力相電圧指令値vu*,vv*,vw*が与えられる。
【0018】
【数5】
【0019】
図17は、図15における駆動パルス演算手段400の構成を示すブロック図である。
まず、最大電圧を出力させる相の交流スイッチに対しては電源側の最大電圧相及び中間電圧相に接続されるようにスイッチングパターンを決定し、最小電圧を出力させる相の交流スイッチに対しては電源側の中間電圧相及び最小電圧相に接続されるようにスイッチングパターンを決定する動作について説明する。
【0020】
図15のマトリクスコンバータ20を制御する場合、出力線間電圧vuv,vvw,vwu及び電源力率cosψをそれぞれ指定値通りに制御するために、数式6に従って、スイッチング半周期Tにおける9個のスイッチSru〜StwのオンデューティDru〜Dtw及びスイッチング時間Ttu〜Ttwを決めている。
【0021】
【数6】
【0022】
オンデューティの条件として、マトリクスコンバータ20の負荷電流の連続性から、数式7が成立しなければならない。
【0023】
【数7】
【0024】
例えば、u相においては、スイッチSru,Ssu,Stuの何れか1つだけが常にオンしなければならない。スイッチングパターンを考えるにあたって、スイッチング周波数は電源や負荷電圧の周波数に比較して十分高く、また、誘導性負荷を前提にして、スイッチング周期2Tにおける入力電圧er,es,et及び負荷電流iuv,ivw,iwuをそれぞれ一定値として近似する。また、入力電圧はer>es>et 、出力電圧指令値はvu*>vv*>vw*という条件のもとで説明する。
【0025】
図18は、この先願発明におけるオンデューティ(スイッチングパターン)及び出力線間電圧を示している。各相スイッチの導通期間をオンデューティDru〜Dtwによりそれぞれ示し、前半の半周期と後半の半周期では折り返しのパターンとしている。
このスイッチングパターンは、最大出力電圧指令vu*のu相の交流スイッチについては、電源の最大電圧er(最大電圧相であるr相)及び中間電圧es(中間電圧相であるs相)のみに接続して最小電圧et(最小電圧相であるt相)には接続せず、また、最小出力電圧指令値vw*のw相の交流スイッチについては、電源の中間電圧es及び最小電圧etのみに接続して最大電圧erには接続しないPWMパターンであり、このようなPWMパターンを用いることは、同図(a)の高出力電圧時、同図(b)の低出力電圧時の何れも変わりがない。すなわち、出力電圧の大きさに関わらず、最大電圧を出力させる相の交流スイッチに対しては電源側の最大電圧相及び中間電圧相に接続されるようにスイッチングパターンを決定し、最小電圧を出力させる相の交流スイッチに対しては電源側の中間電圧相及び最小電圧相に接続されるようにスイッチングパターンを決定する。
スイッチング半周期Tの転流回数については、スイッチStu,Srwを導通しない(Dtu=0,Drw=0)ため、従来方式1,2と同様に4回に低減できている。また、最大電圧と最小電圧との間の直接の切替がないので、スイッチング損失及びノイズを低減でき、全ての相で中間電圧が使用されるため、負荷中性点の電位変化を抑制することができる。
【0026】
この先願発明では、図18に示すように必ず線間電圧指令値と同符号の電圧パルスで線間電圧を構成することができ(例えば、線間電圧vuvについては、その指令値vuv*と同極性の電圧パルスers,estにより線間電圧vuvが構成される)、更に、指令値の絶対値が最大となる線間電圧波形vwuについては、同図(a)に示すように出力電圧が高い場合には零電圧が出力されず、同図(b)に示すように出力電圧が低い場合には最大の電圧パルスetrが出力されないので、出力電圧高調波を抑制することができる。
【0027】
次に、図15におけるオンデューティ演算手段400について説明する。
図19は、出力電圧指令値が最大値のu相と最小値のw相との間の負荷電流iwuのみを考慮した接続関係を示している。このとき、図19のようにu相スイッチSru,Ssuとw相スイッチSsw,Stwとをそれぞれ導通してスイッチング半周期Tのパターンを発生する。
図19において、電源力率1を実現するために、電源から見た負荷側インピーダンスを抵抗Rwuと考えると、スイッチング半周期Tの平均入力電流irwu,iswu,itwuは数式8により得られる(明細書本文中では記号「−」を付記できないため、以下では、各数式における電流i,電力Pの上方に記号「−」を付して平均値を示す)。
【0028】
【数8】
【0029】
これにより、スイッチング半周期Tの電源の平均電力Pwuは数式9で与えられる。
【0030】
【数9】
【0031】
数式9の平均Pwuが負荷の消費電力に等しいことから、w,u間の電流源iwuは数式10によって表される。
【0032】
【数10】
【0033】
最大出力電圧相であるu相は、最大電圧相のr相及び中間電圧相のs相のみに接続され、最小電圧相のt相には接続されないので、数式11が成り立つ。
【0034】
【数11】
【0035】
また、r相電流irwuは、スイッチSruをオンしたときだけ−iwuが流れるので、数式8,10より、オンデューティDruは数式12のようになる。
【0036】
【数12】
【0037】
数式7から、オンデューティDsuは数式13により得られる。
【0038】
【数13】
【0039】
w相については、最大電圧相のr相には接続されず、また、t相電流itwuは、スイッチStwをオンしたときだけiwuが流れることから、オンデューティDrw,Dtw,Dswはそれぞれ数式14〜数式16によって得られる。
【0040】
【数14】
【0041】
【数15】
【0042】
【数16】
【0043】
次いで、中間電圧相のv相のスイッチングパターンを考える。
図20は、出力電圧指令値が最大値のu相と中間値のv相との間の負荷電流iuvのみを考慮した接続関係を示している。図20において、電源力率1を実現するために、電源から見た負荷側インピーダンスを抵抗Ruvと考えると、入力電流iruv,isuv,ituvは数式17により表される。
【0044】
【数17】
【0045】
また、スイッチング半周期Tにおける電源平均電力Puvが負荷電力に等しいことから、電流源iuvは数式18によって与えられる。
【0046】
【数18】
【0047】
図20において、t相電流ituvは、スイッチStvをオンしたときだけ、−iuvが流れるので、オンデューティDtvは数式19により得られる。
【0048】
【数19】
【0049】
また、図21は、出力電圧指令値が中間値のv相と最小相のw相間の負荷電流ivwのみを考慮した接続関係を示している。図21において、電源力率1を実現するために、電源から見た負荷側インピーダンスを抵抗Rvwと考えると、入力電流irvw,isvw,itvwは数式20によって表される。
【0050】
【数20】
【0051】
また、スイッチング半周期Tの電源平均電力Pvwが負荷電力に等しいことから、電流源ivwは数式21によって与えられる。
【0052】
【数21】
【0053】
図21において、r相電流irvwは、スイッチSrvをオンしたときだけivwが流れるので、オンデューティDrvは数式22により得られる。
【0054】
【数22】
【0055】
数式7,19,22より、オンデューティDsvは数式23により得られる。
【0056】
【数23】
【0057】
上記では、入力電圧がer>es>et、出力電圧指令値がvu*>vv*>vw*の場合の各スイッチのオンデューティを導出した。
以下に、入出力電圧の任意の大小関係におけるスイッチングパターン発生時のオンデューティ演算手段400の作用を説明する。
【0058】
図17に示したオンデューティ演算手段406では、入力電圧の大小関係の情報を得るために、入力電圧の相/線間変換手段401において、入力電圧er,es,etから線間電圧ers,est,etrを数式24により求める。
【0059】
【数24】
【0060】
入力大小判別手段402では、表1に従って、入力電圧の符号から入力電圧モードms(1〜6)を判別し、入力電圧(電源電圧)の最大電圧e1、中間電圧e2、最小電圧e3を得る。ここで、添字1,2,3は、入力電圧の最大、中間、最小をそれぞれ意味する。
【0061】
【表1】
【0062】
入力大小判別手段402の出力は、最大電圧e1、中間電圧e2、最小電圧e3と、大小関係を表す3ビットの信号r1,s1,r2s3である。信号r1,s1は、それぞれer,esが最大電圧のときにのみ“1”になり、信号r2s3は、erが中間電圧またはesが最小電圧のときにのみ“1”になる信号である。
【0063】
図17における出力電圧相/線間変換手段403は、出力電圧指令値vu*,vv*,vw*から線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*を数式25により求める。
【0064】
【数25】
【0065】
出力大小判別手段404では、表2に従って、線間電圧指令値の符号から出力電圧モードmL(1〜6)を判別し、出力相電圧指令値の最大電圧va*、中間電圧vb*、最小電圧vc*を得る。ここで、添字a,b,cは、出力電圧の最大、中間、最小をそれぞれ意味する。
【0066】
【表2】
【0067】
更に、電圧指令相/線間変換手段405により、線間電圧指令値vab*,vbc*,vca*を数式26により演算する。
【0068】
【数26】
【0069】
オンデューティ演算手段406では、入力の最大電圧e1、中間電圧e2、最小電圧e3及び線間電圧指令値vab*,vbc*,vca*を用いて、出力電圧指令値の最大電圧相a相、中間電圧相b相、最小電圧相c相がそれぞれ入力電圧の最大電圧相1相、中間電圧相2相、最小電圧相3相に接続されるスイッチのオンデューティD1a〜D3cに関して、数式27を演算する。
【0070】
【数27】
【0071】
相判別手段407では、表3に従って、出力大小判別手段404から受ける出力電圧モードmLから出力電圧指令値の最大電圧相a相、中間電圧相b相、最小電圧相c相がそれぞれu相、v相、w相の何れに対応するかを判断し、対応した相のPWM発生部に数式27のオンデューティを出力する。
例えばmL=1の場合には、表3によれば出力中間電圧相b相がv相であるから、D1v=D1b,D12v=D12bとして、D1v,D12vをv相比較回路410に出力する。
【0072】
【表3】
【0073】
図17においてPWMパルスを発生するための各相比較回路409〜411及びPWM発生手段412〜414は、三相とも同様の回路であり、その具体的なPWM発生原理図を図22に示す。
【0074】
図22はv相についてのPWM発生原理図であり、出力相電圧指令が中間電圧の場合(vb*=vv*)である。
同図(a)では、0,1間で変化する三角波キャリアとオンデューティD1v,D12v(=D1v+D2v)とを比較し、信号Q1v,Q12vが得られる。同図(b)に示す論理回路により、信号Q1v,Q12vからスイッチング信号G1v,G2v,G3vを得て、更に、これらをr,s,t相に振り分けることによりPWMパルスGrv,Gsv,Gtvを発生する。この振り分けにおいては、表1から得られる信号r1(e1=er信号)、信号s1(e1=es信号)、信号r2s3(e2=erまたはe3=es信号)を用いて、電源側のr,s相がそれぞれ最大電圧相、中間電圧相、最小電圧相の何れであるかを判断しPWMパルスGrv,Gsvを作成する。電源側のt相のPWMパルスGtvは、Grv,Gsvが共にオフ状態のときにオンする論理として得られる。
【0075】
上述した入力電圧検出手段41または出力電圧指令演算手段42はあくまで一例であり、入力電圧検出手段41については、電源10の相電圧を検出する以外に線間電圧を検出してもよいし、入力電圧の振幅は一定とみなして入力電圧の正負を検出することでも実現可能である。また、出力電圧指令演算手段42については、V/f制御以外にベクトル制御でも実現可能である。
【0076】
なお、電源力率を1に制御する場合に、入力電圧er,es,etからこれに比例する入力電流指令値ir*,is*,it*を演算し、オンデューティ演算手段400に出力しても良い。この場合、入力電流指令値ir*,is*,it*は、比例定数を1/Rsとすると数式28により与えられる。ここで、Rsは電源から見たマトリクスコンバータのインピーダンス(抵抗)である。
【0077】
【数28】
【0078】
図15に示したマトリクスコンバータの簡易モデルにおいて、入力電圧をer>es>et、出力電圧指令値をvu*>vv*>vw*とし、スイッチング周期2Tにおける入力電圧er,es,et及び負荷電流iuv,ivw,iwuをそれぞれ一定値として近似する。その後、各スイッチSru〜StwのオンデューティDru〜Dtwの演算式を導出する。
【0079】
数式28より、入力電圧er,es,etは、入力電流指令値ir*,is*,it*を用いて数式29により表される。
【0080】
【数29】
【0081】
数式29を数式11〜16,19,22,23に代入することにより、各オンデューティDru〜Dtwを数式30によって得ることができる。
【0082】
【数30】
【0083】
以上により、マトリクスコンバータ20の9個の交流スイッチSru〜StwのオンデューティDru〜Dtwが決定される。これらのオンデューティの演算式は、数式28における比例定数1/Rsを含んでおらず、Rsに依存しない。従って、実際の入力電流ir,is,itは入力電流指令値ir*,is*,it*にそれぞれ比例した電流となり、入力電流の位相(入力力率)が指令値通りに制御され、入力電流の大きさは負荷電流により決まることとなる。
【0084】
【非特許文献1】石黒章夫,古橋武,石田宗秋,大熊繁,「入力線間電圧瞬時値に基づくPWM制御サイクロコンバータの出力電圧制御法」,電気学会論文誌D,111巻3号,平成3年,pp.201-207
【非特許文献2】原英則,山本栄治,善家充彦,姜俊求,久米常生,「低電圧領域におけるマトリクスコンバータの電圧改善の一方策」,平成16年電気学会産業応用部門大会講演論文集I−48,pp.313-316
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0085】
前述した図18のスイッチングパターンにおいては、高出力電圧時、低出力電圧時の何れも、u相は2回のスイッチの切り替わり(r相,s相の入力電圧が現れる)、v相は4回のスイッチの切り替わり(r相,s相,t相の入力電圧が現れる)、w相は2回のスイッチの切り替わり(s相,t相の入力電圧が現れる)となっている。すなわち、1スイッチング周期(キャリア周期)におけるスイッチング回数は三相合計で8回であるから、出力1相あたりの平均回数は8回を三相で除した2.6回となる。
【0086】
上述のごとく、先願発明では1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数が2.6回と多いため、スイッチング素子の損失が増大し、スイッチング素子を冷却するための放熱フィンやファンなどの冷却装置が大型化し、コストが上昇するという問題がある。また、スイッチング回数が多いということはスイッチングによって発生するノイズの増加を招き、他の装置の誤作動を引き起こすほか、ノイズ対策用のフィルタを追加せざるを得ないなど、小型化、低コスト化、信頼性向上の観点から問題がある。
【0087】
そこで本発明の解決課題は、先願発明よりもスイッチング回数を減らし、スイッチング損失やノイズの影響を低減してシステム全体の小型化、低コスト化を図ると共に、高効率化、信頼性向上を可能とした制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0088】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、交流電源に接続される入力側の各相と出力側の各相とが双方向性の交流スイッチにより直接接続され、前記交流スイッチのオンオフ動作により、交流電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に直接変換する交流−交流直接電力変換器において、
前記電力変換器の入力電圧を検出する手段と、前記電力変換器の出力電流を検出する手段と、前記電力変換器の出力電圧指令値、入力電圧情報及び出力電流情報、並びに、前記出力電圧指令値及び前記入力電圧情報それぞれの各相の大小関係を用いて、前記交流スイッチのスイッチングパターンを決定し、このスイッチングパターンに応じて前記交流スイッチの駆動パルスを生成する駆動パルス演算手段と、を備えたものである。
【0089】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記駆動パルス演算手段は、
前記出力電圧指令値及び出力電流検出値から出力電力を演算する手段と、前記電力変換器の入力電圧指令値、入力電流位相指令値及び前記出力電力から入力電流指令値を演算する手段と、前記入力電圧検出値、入力電流指令値、出力電流検出値及び出力電圧指令値から前記交流スイッチのスイッチングパターンをオンデューティとして演算するオンデューティ演算手段と、を備えたものである。
【0090】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記オンデューティ演算手段は、
前記電力変換器の出力電圧最大相及び出力電圧中間相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第1のオンデューティ演算部と、前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧中間相及び出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第2のオンデューティ演算部と、を備えたものである。
【0091】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記オンデューティ演算手段は、更に、
前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相に接続し、前記電力変換器の出力電圧中間相を入力電圧最大相、入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第3のオンデューティ演算部と、前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、前記電力変換器の出力電圧中間相を入力電圧最大相、入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第4のオンデューティ演算部と、を備えたものである。
【0092】
請求項5に記載した発明は、請求項3または4に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
何れかのオンデューティ演算部により演算されたスイッチングパターンを選択して出力する手段を備えたものである。
【0093】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数が2回以下になるようにスイッチングパターンを決定するものである。
【発明の効果】
【0094】
本発明によれば、電力変換器の入力電圧情報、出力電流情報及び出力電圧指令値を用い、入力相と出力相とを接続するスイッチングの接続条件に基づいてオンデューティを演算することにより、先願発明に比べてスイッチング回数を3/4に低減することができる。
これによってスイッチング損失を低減し、システム全体の小型化、低コスト化を図り、効率や信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。この実施形態に係る制御装置40Aの最大の特徴は、マトリクスコンバータ20の出力電流を検出し、入力電圧及び出力電流の情報からスイッチング回数を低減するパルスパターンを演算する駆動パルス演算手段400Aを設けたことである。なお、図1において、図15と同一の構成要素には同一の参照符号を付すものとする。
【0096】
図1において、入力電圧検出手段41は、三相交流電源10のr,s,t各相の電圧を検出する。入力電圧検出手段41の検出位置は、図1に示す以外に、リアクトルLとフィルタコンデンサCとの間であっても良く、また、三相全てを検出せずに二相の電圧を検出して他の一相を演算により求めても良い。
得られた入力電圧er,es,etは駆動パルス演算手段400Aに入力されると共に、入力電圧位相演算手段43に入力され、入力電圧の位相θがPLL等により検出される。入力電流位相演算手段44は、入力電圧位相θと入力電流力率指令値ψ*とから、各相の入力電流基準指令値ur*,us*,ut*を数式31により演算する。
【0097】
【数31】
【0098】
出力電圧指令演算手段42は、負荷30として例えば電動機が接続されている際に広く用いられるV/f一定制御において、周波数指令値ωL*に応じた出力電圧値VL*と、周波数指令値ωL*を時間積分して得られる出力電圧位相指令値θL*とにより、数式32から各相の出力電圧指令値vu*,vv*,vw*を演算する。
【0099】
【数32】
【0100】
この実施形態において、出力電圧指令演算手段42はV/f一定制御に限定されるものではなく、ベクトル制御やその他さまざまな制御方式を適用することができる。
出力電流検出手段45は、ホールセンサやシャント抵抗器等を用いてマトリクスコンバータ20の各相出力電流iu,iv,iwを検出する。図1では、u相及びv相の二相の電流を検出し、残りのw相に関してはこれらの検出電流から演算により求めている。
【0101】
以下、本実施形態の主要部である駆動パルス演算手段400Aについて説明する。
図2は、駆動パルス演算手段400Aの構成を示すブロック図である。図2において、入力電圧相/線間変換手段461は、入力電圧er,es,etを数式33により線間電圧ers,est,etrに変換する。
【0102】
【数33】
【0103】
入力電流振幅指令演算手段462は、入力電圧er,es,etと、出力電圧指令値vu*,vv*,vw*と、出力電流iu,iv,iwと、入力電流基準指令値ur*,us*,ut*とを用いて、入力電流の振幅指令値I*を演算する。まず、出力電圧指令値vu*,vv*,vw*及び出力電流iu,iv,iwから、制御周期間の平均出力電力Poutを数式34により演算する。
【0104】
【数34】
【0105】
次に、入力電圧er,es,et及び入力電流基準指令値ur*,us*,ut*から、制御周期間の平均入力基準電力Puを数式35により演算する。
【0106】
【数35】
【0107】
平均入力基準電力Puは、入力電流基準指令値ur*,us*,ut*から演算しているため入力電流の振幅情報を持たない。制御周期間の平均入力電力Pinと平均入力基準電力Puとの関係は、入力電流の振幅をI*とすると、数式36となる。
【0108】
【数36】
【0109】
マトリクスコンバータはエネルギー蓄積要素を持たないので、平均入力電力Pinと出力電力Poutとは等しい。従って、入力電流振幅I*は数式37によって求められる。
【0110】
【数37】
【0111】
入力電流指令値演算手段463は、数式37によって得られた入力電流振幅I*と入力電流基準指令値ur*,us*,ut*とを用いて、入力電流指令値ir*,is*,it*を数式38により演算する。
【0112】
【数38】
【0113】
出力電圧相/線間変換手段464は、数式39により出力電圧指令値vu*,vv*,vw*を出力線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*に変換する。
【0114】
【数39】
【0115】
入力大小判別手段465は、表4のように、入力線間電圧ers,est,etrの符号から入力モードmS(1〜6)を判別し、入力電圧の最大、中間、最小相電圧eα,eβ,eγと、入力電流指令値iα*,iβ*,iγ*と、パルスパターン判別信号としての大小関係信号rα,sα,rβsγとを求める。
なお、ここで、添字α,β,λは最大、中間、最小をそれぞれ意味しており、前述した表1における添字1,2,3に相当する。このため、表4は実質的に表1と同一である。
【0116】
【表4】
【0117】
また、出力大小判別手段466は、表5のように、出力線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*の符号から出力モードmL(1〜6)を判別し、出力線間電圧指令値vuv*,vvw*,vwu*の最大、中間、最小相電圧指令値va*,vb*,vc*、出力電流ia,ib,icを求める。ここで、添字a,b,cは最大、中間、最小をそれぞれ意味している。
【0118】
【表5】
【0119】
電圧指令相/線間変換手段467は、数式40によって出力線間電圧指令値vab*,vbc*,vca*を求める。
【0120】
【数40】
【0121】
また、第1のオンデューティ演算手段468は、入力電圧の最大、中間、最小相電圧eα,eβ,eγと、最大、中間、最小の入力電流指令値iα*,iβ*,iγ*と、出力線間電圧指令値vab*,vbc*,vca*と、最大、中間、最小の出力電流ia,ib,icとから、入力電圧の最大相α、中間相β、最小相γと、出力電圧指令値の最大相a、中間相b、最小相cとを接続するそれぞれのスイッチのオンデューティD1αa〜D1αβcを数式41により求める。
【0122】
【数41】
【0123】
第2のオンデューティ演算手段469は、第1のオンデューティ演算手段468と同様に、eα,eβ,eγとiα*,iβ*,iγ*とvab*,vbc*,vca*とia,ib,icとから、それぞれのスイッチのオンデューティD2αa〜D2αβcを数式42により求める。
【0124】
【数42】
【0125】
ここで、数式41について説明する。
図3は、導通しないスイッチを省略したマトリクスコンバータ、三相交流電源及び負荷の接続構成を示す回路図であり、第1のオンデューティ演算手段468によるスイッチの接続例を説明するためのものである。なお、入力フィルタは、説明を容易にするために図示を省略している。
【0126】
図3において、入力電圧の大小関係は、r相が最大、s相が中間、t相が最小であり、出力電圧の大小関係は、u相が最大、v相が中間、w相が最小である。図3に示すように、出力電圧最大相のu相と中間相のv相は入力電圧最小相のt相に接続せず、出力電圧最小相のw相は入力電圧最大相のr相に接続しないように各スイッチのオンデューティを演算する。
出力電圧最小相(c相)は、入力電圧最大相(α相)に接続しないため、D1αcは数式43となる。
【0127】
【数43】
【0128】
入力電圧最小相(γ相)の電流は、D1γcの割合で出力最小相電流icが流れるので、数式44となる。
【0129】
【数44】
【0130】
マトリクスコンバータの出力電流の連続性から、出力一相のオンデューティの和は1にならなければならない。よって、D1βcは数式45となる。
【0131】
【数45】
【0132】
出力電圧最大相(a相)は入力電圧最小相(γ相)に接続しないので、D1γaは数式46となる。
【0133】
【数46】
【0134】
出力電圧指令値vca*と数式44,45との関係は数式47となる。
【0135】
【数47】
【0136】
数式47よりD1αaを求めると、数式48となる。
【0137】
【数48】
【0138】
D1βaは、オンデューティの条件から数式49となる。
【0139】
【数49】
【0140】
次に、出力電圧中間相(b相)は入力電圧最小相(γ相)に接続しないので、D1γbは数式50となる。
【0141】
【数50】
【0142】
出力電圧指令vbc*と数式44,45の関係は数式51となる。
【0143】
【数51】
【0144】
数式51よりD1αbを求めると、数式52となる。
【0145】
【数52】
【0146】
D1βbはオンデューティの条件から数式53となる。
【0147】
【数53】
【0148】
以上のように、数式41は、スイッチの接続条件としての数式43〜数式53から導出することができる。
【0149】
図4は、数式41により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示している。図4(a)の高出力電圧時、図4(b)の低出力電圧時の何れも、u相は2回のスイッチの切り替わり(r相,s相の入力電圧が現れる)、v相は2回のスイッチの切り替わり(r相,s相の入力電圧が現れる)、w相は2回のスイッチの切り替わり(s相,t相の入力電圧が現れる)となっている。すなわち、1スイッチング周期間のスイッチング回数は三相合計で6回であり、出力1相あたりの平均は、6回を三相で除した2回となる。従って、スイッチング回数は先願発明の3/4に低減できており、スイッチング損失も低減できることになる。
ただし、第1のオンデューティ演算手段468のみでは、負荷力率と出力電流によっては実現できない場合が存在する。例えば、負荷力率が1で入力電圧最大相及び中間相の電圧が正の場合は、正の入力電圧を用いている以上、正の中間相に負の電流を流すことが不可能である。したがって、第1のオンデューティ演算手段468のみでは実現が不十分となる。
【0150】
そこで、図2に示した第2のオンデューティ演算手段469では、出力電圧最大相(a相)を入力電圧最小相(γ相)に接続せず、出力電圧中間相(b相)及び出力電圧最小相(c相)を入力電圧最大相(α相)に接続しないように前記数式42によってオンデューティを演算する。数式42の導出は数式41の導出と同様の考え方で行えばよいので、詳細な説明は省略する。
【0151】
図5は、数式42により演算されたデューティによりスイッチングを行った際の回路であり、第2のオンデューティ演算手段469によるスイッチの接続例を説明するためのものである。図5より、出力電圧最大相u相は入力電圧最小相t相に接続せず、出力電圧中間相v相及び出力電圧最小相w相は入力電圧最大相r相に接続していないことがわかる。
【0152】
図6は、数式42により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示している。
図4と同様に、1スイッチング周期間のスイッチング回数は三相合計で6回であり、出力1相あたりの平均は2回となる。
【0153】
図2に戻って、第1,第2のオンデューティ演算手段468,469の出力のいずれかを選択するために、オンデューティ選択手段470が設けられている。このオンデューティ選択手段470は、数式41と数式42でオンデューティが0〜1の間に存在しない方が条件不成立と判断し、もう一方の数式に対応するオンデューティ演算手段468または469の出力を選択するように動作する。
相判別手段471では、表5で求めた出力電圧モードmLを用いて表6に従って出力u,v,w相の三角波キャリアと比較するデューティDαu〜Dαβwを求める。
【0154】
【表6】
【0155】
図7はv相についてのPWM発生原理図であり、出力相電圧指令値が中間電圧の場合(vb*=vv*)である。
同図(a)では、0,1間で変化する三角波キャリアとオンデューティDαv,Dαβv=Dαv+Dβv)とを比較し、信号Qαv,Qαβvが得られる。同図(b)に示す論理回路により、信号Qαv,Qαβvからスイッチング信号Gαv,Gβv,Gγvを得ると共に、これらを表4の大小関係信号と論理演算してr,s,t相に振り分けることにより、PWMパルスGrv,Gsv,Gtvを発生してマトリクスコンバータの各スイッチをスイッチングする。
【0156】
なお、本実施形態において、オンデューティ演算手段の構成は上述した例に限定されるものではなく、様々な構成が考えられる。従って、マトリクスコンバータの入力電圧及び出力電流を検出し、接続するスイッチの条件に応じて所定の演算式によりオンデューティを演算し、1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数が2回以内となる方法であれば、本発明に包含されるものである。
【0157】
次に、図8は本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図であり、図1における駆動パルス演算手段400Aの他の構成例を示している。
この実施形態では、図2に示した第1実施形態の構成に加えて、第3のオンデューティ演算手段479及び第4のオンデューティ演算手段480を備えている。以下、これらのオンデューティ演算手段479,480について説明する。
【0158】
図9は、第3のオンデューティ演算手段479によるスイッチの接続例を説明するためのものである。
図9において、入力電圧の大小関係はr相が最大、s相が中間、t相が最小であり、出力電圧の大小関係はu相が最大、v相が中間、w相が最小である。第3のオンデューティ演算手段479では、出力電圧最大相を入力電圧最大相に接続し、出力電圧中間相を入力電圧最大相、中間相及び最小相に接続すると共に、出力電圧最小相を入力電圧中間相及び最小相に接続するようにオンデューティを演算する。
以下、第1実施形態における第1のオンデューティ演算手段468と同様にデューティの演算式を導出する。
【0159】
出力電圧最大相(a相)は入力電圧最大相(α相)に接続されるため、D3αa〜D3γaは数式54となる。
【0160】
【数54】
【0161】
出力電圧最小相(c相)は入力電圧最大相(α相)に接続しないので、D3αcは数式55となる。
【0162】
【数55】
【0163】
出力電圧指令値vca*と数式54との関係は、数式56となる。
【0164】
【数56】
【0165】
数式56からD3γcを求めると、数式57となる。
【0166】
【数57】
【0167】
また、D3βcはオンデューティの条件から、数式58となる。
【0168】
【数58】
【0169】
次いで、出力電圧中間相(b相)について考える。入力電圧最大相(α相)には出力電圧最大相(a相)の電流が流れ続け、これにD3αbの割合で出力電圧中間相(b相)の電流が重畳されるので、数式59の関係になる。
【0170】
【数59】
【0171】
数式59より、D3αbは数式60となる。
【0172】
【数60】
【0173】
出力電圧指令値vab*と数式54、数式60の関係は、数式61となる。
【0174】
【数61】
【0175】
数式61より、D3βbは数式62となる。
【0176】
【数62】
【0177】
D3γbは、オンデューティの条件から数式63となる。
【0178】
【数63】
【0179】
以上より、第3のオンデューティ演算手段479による演算内容は数式64によって表される。
【0180】
【数64】
【0181】
図10は、数式64により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。図10のスイッチングパターンより、出力電圧最大相のu相はスイッチングを行わずに入力電圧最大相のr相に接続され、出力電圧中間相のv相は、4回の切り替わりで入力電圧最大相のr相、中間相のs相及び最小相のt相に接続され、出力電圧最小相のw相は、2回の切り替わりでs相及びt相に接続される。
すなわち、1スイッチング周期間のスイッチング回数は、出力電圧最大相であるu相がスイッチングを行わないので、三相合計で6回であり、出力1相あたりの平均は、6回を三相で除した2回となる。
【0182】
一方、第1実施形態で述べたように、数式64のみではデューティの条件を満足しない場合が存在するので、第4のオンデューティ演算手段480を設ける。
図11は、第4のオンデューティ演算手段480によるスイッチの接続例を示す回路図である。オンデューティ演算手段480では、出力電圧最大相を入力電圧最大相及び中間相に接続し、出力電圧中間相を入力電圧最大相、中間相及び最小相に接続すると共に、出力電圧最小相を入力電圧最小相に接続するようにオンデューティを演算する。
この場合のオンデューティは第3のオンデューティ演算手段479と同様の考え方で導出可能であり、数式65となる。
【0183】
【数65】
【0184】
図12は、数式65により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
図12のスイッチングパターンにより、出力電圧最大相のu相は2回の切り替わりで入力電圧最大相のr相及び入力電圧中間相のs相に接続される。出力電圧中間相のv相は、4回の切り替わりでr相,s相及び入力電圧最小相のt相に接続され、出力電圧最小相のw相は、スイッチングを行わずにt相に接続される。
すなわち、1キャリア周期間のスイッチング回数は、出力電圧最小相のw相がスイッチングを行わないため、三相合計で6回であり、出力1相あたりの平均は、6回を三相で除した2回となる。
【0185】
図8におけるオンデューティ選択手段470は、第1〜第4のオンデューティ演算手段468,469,479,480にそれぞれ対応する数式41,数式42,数式64,数式65の中で、全てのスイッチのオンデューティが0〜1の間に存在するものを選択し、当該オンデューティを相判別手段471に出力する。なお、数式64及び数式65の二つのパターンでは、出力電圧の位相によって満足しない場合が存在するため、すべての出力電圧指令値通りの出力電圧を実現するためには、数式41,数式42を合わせた四つのパターンから選択する必要がある。
【0186】
以上説明したように、本発明に係るオンデューティ演算手段により、1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数は2回となり、先願発明に比べて3/4に低減できるため、スイッチング損失やノイズの影響を低減してシステム全体の小型化、低コスト化が可能になると共に、高効率化、高信頼性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1における駆動パルス演算手段の構成を示すブロック図である。
【図3】図2における第1のオンデューティ演算手段によるスイッチの接続例を示す回路図である。
【図4】数式41により演算したデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
【図5】図2における第2のオンデューティ演算手段によるスイッチの接続例を示す回路図である。
【図6】数式42により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
【図7】v相についてのPWMパターン発生原理図であり、図7(a)は三角波キャリア及びスイッチング信号の波形図、図7(b)はスイッチング信号及びPWMパルス発生回路の回路図である。
【図8】本発明の第2実施形態における駆動パルス演算手段の構成を示すブロック図である。
【図9】図8における第3のオンデューティ演算手段によるスイッチの接続例を示す回路図である。
【図10】数式64により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
【図11】図8における第4のオンデューティ演算手段によるスイッチの接続例を示す回路図である。
【図12】数式65により演算されたデューティによりスイッチングを行った際のスイッチングパターン、入力電流及び出力線間電圧を示す図である。
【図13】マトリクスコンバータの簡略モデルを示す図である。
【図14】従来技術におけるオンデューティと出力線間電圧を示す図であり、図14(a)は従来方式1、図14(b)は従来方式2の動作例である。
【図15】先願発明の構成を示すブロック図である。
【図16】図15における出力電圧演算手段の構成を示すブロック図である。
【図17】図15における駆動パルス演算手段の構成を示すブロック図である。
【図18】先願発明におけるオンデューティと出力線間電圧を示す図であり、図18(a)は高出力電圧時の動作例、図18(b)は低出力電圧時の動作例である。
【図19】最大・最小出力電圧相の接続図である。
【図20】最大・中間出力電圧相の接続図である。
【図21】中間・最小出力電圧相の接続図である。
【図22】PWMパターン発生原理図であり、図22(a)は三角波キャリア及びスイッチング信号の波形図、図22(b)はスイッチング信号及びPWMパルス発生回路の回路図である。
【符号の説明】
【0188】
10:三相交流電源
20:マトリクスコンバータ
21:入力フィルタ
30:負荷
40A:制御装置
41:入力電圧検出手段
42:出力電圧指令演算手段
43:入力電圧位相演算手段
44:入力電流位相演算手段
45:出力電流検出手段
400A:駆動パルス演算手段
461:入力電圧相/線間変換手段
462:入力電流振幅指令演算手段
463:入力電流指令値演算手段
464:出力電圧相/線間変換手段
465:入力大小判別手段
466:入力大小判別手段
467:電圧指令相/線間変換手段
468:第1のオンデューティ演算手段
469:第2のオンデューティ演算手段
470:オンデューティ選択手段
471:相判別手段
472:u相比較回路
473:v相比較回路
474:w相比較回路
475:三角波キャリア発生回路
476:u相PWM発生手段
477:v相PWM発生手段
478:w相PWM発生手段
479:第3のオンデューティ演算手段
480:第4のオンデューティ演算手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続される入力側の各相と出力側の各相とが双方向性の交流スイッチにより直接接続され、前記交流スイッチのオンオフ動作により、交流電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に直接変換する交流−交流直接電力変換器において、
前記電力変換器の入力電圧を検出する手段と、
前記電力変換器の出力電流を検出する手段と、
前記電力変換器の出力電圧指令値、入力電圧情報及び出力電流情報、並びに、前記出力電圧指令値及び前記入力電圧情報それぞれの各相の大小関係を用いて、前記交流スイッチのスイッチングパターンを決定し、このスイッチングパターンに応じて前記交流スイッチの駆動パルスを生成する駆動パルス演算手段と、
を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記駆動パルス演算手段は、
前記出力電圧指令値及び出力電流検出値から出力電力を演算する手段と、
前記電力変換器の入力電圧指令値、入力電流位相指令値及び前記出力電力から入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電圧検出値、入力電流指令値、出力電流検出値及び出力電圧指令値から前記交流スイッチのスイッチングパターンをオンデューティとして演算するオンデューティ演算手段と、
を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記オンデューティ演算手段は、
前記電力変換器の出力電圧最大相及び出力電圧中間相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第1のオンデューティ演算部と、
前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧中間相及び出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第2のオンデューティ演算部と、
を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記オンデューティ演算手段は、更に、
前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相に接続し、前記電力変換器の出力電圧中間相を入力電圧最大相、入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第3のオンデューティ演算部と、
前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、前記電力変換器の出力電圧中間相を入力電圧最大相、入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第4のオンデューティ演算部と、
を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
何れかのオンデューティ演算部により演算されたスイッチングパターンを選択して出力する手段を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数が2回以下になるようにスイッチングパターンを決定することを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項1】
交流電源に接続される入力側の各相と出力側の各相とが双方向性の交流スイッチにより直接接続され、前記交流スイッチのオンオフ動作により、交流電圧を任意の大きさ及び周波数の交流電圧に直接変換する交流−交流直接電力変換器において、
前記電力変換器の入力電圧を検出する手段と、
前記電力変換器の出力電流を検出する手段と、
前記電力変換器の出力電圧指令値、入力電圧情報及び出力電流情報、並びに、前記出力電圧指令値及び前記入力電圧情報それぞれの各相の大小関係を用いて、前記交流スイッチのスイッチングパターンを決定し、このスイッチングパターンに応じて前記交流スイッチの駆動パルスを生成する駆動パルス演算手段と、
を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記駆動パルス演算手段は、
前記出力電圧指令値及び出力電流検出値から出力電力を演算する手段と、
前記電力変換器の入力電圧指令値、入力電流位相指令値及び前記出力電力から入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電圧検出値、入力電流指令値、出力電流検出値及び出力電圧指令値から前記交流スイッチのスイッチングパターンをオンデューティとして演算するオンデューティ演算手段と、
を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記オンデューティ演算手段は、
前記電力変換器の出力電圧最大相及び出力電圧中間相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第1のオンデューティ演算部と、
前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧中間相及び出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第2のオンデューティ演算部と、
を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
前記オンデューティ演算手段は、更に、
前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相に接続し、前記電力変換器の出力電圧中間相を入力電圧最大相、入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第3のオンデューティ演算部と、
前記電力変換器の出力電圧最大相を入力電圧最大相または入力電圧中間相に接続し、前記電力変換器の出力電圧中間相を入力電圧最大相、入力電圧中間相または入力電圧最小相に接続し、かつ、前記電力変換器の出力電圧最小相を入力電圧最小相に接続するスイッチングパターンを演算する第4のオンデューティ演算部と、
を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
何れかのオンデューティ演算部により演算されたスイッチングパターンを選択して出力する手段を備えたことを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載した交流−交流直接電力変換器の制御装置において、
1スイッチング周期における出力1相あたりの平均スイッチング回数が2回以下になるようにスイッチングパターンを決定することを特徴とする交流−交流直接電力変換器の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−5609(P2008−5609A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171788(P2006−171788)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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