説明

交流電力調整器

【課題】出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減する。
【解決手段】入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する交流電力調整器において、直列接続されたダイオードD1およびIGBTQ1と、直列接続されたダイオードD2およびIGBTQ2とを逆並列に接続することにより出力制御用交流スイッチを構成した。好ましくは、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化されたものと、IGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する交流電力調整器(APR:AC Power Regulator)に関し、特には、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる交流電力調整器に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、例えば商用の交流電源から入力された交流電圧・電流を0%から100%までの間で無段階に調整し、その調整された交流電圧・電流を例えば電気炉、照明、モータ、電源装置などの種々の(交流)負荷に対して出力する交流電力調整器(APR:AC Power Regulator)に関する。
【0003】
更に詳細には、本発明は、入力された交流が直流に変換されることなく調整されて出力される、いわゆる直接方式の交流電力調整器であって、出力制御用交流スイッチの一部を構成するIGBTに対してチョッパ制御を行う交流電力調整器に関する。
【背景技術】
【0004】
従来から、入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)が知られている。この種の出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)の例としては、例えば実公平3−13770号公報に記載されたものがある。
【0005】
図10および図11は従来の出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)を示した図である。詳細には、図10は実公平3−13770号公報の図1に相当する図、図11は実公平3−13770号公報の図2に相当する図である。図10および図11において、1は第1端子を示しており、2は第2端子を示しており、3は交流電源を示しており、4,5,6,7はトランジスタを示しており、8,9,10,11はダイオードを示している。12は負荷を示しており、13はパルス発生器を示しており、14はインバータを示しており、15,16,17は抵抗を示している。
【0006】
図10に示す従来の出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)では、交流電源3と負荷12との間に配置された出力制御用交流スイッチが、トランジスタ6,7およびダイオード10,11によって構成されている。また、負荷12に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチが、トランジスタ4,5およびダイオード8,9によって構成されている。
【0007】
また、図11に示す従来の出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)では、交流電源3と負荷12との間に配置された出力制御用交流スイッチが、トランジスタ4,7およびダイオード8,11によって構成されている。また、負荷12に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチが、トランジスタ5,6およびダイオード9,10によって構成されている。
【0008】
図12は図11に示した従来の出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)の動作を説明するための主要各部の波形図である。詳細には、図12は実公平3−13770号公報の図3に相当する図である。
【0009】
実公平3−13770号公報には、図11に示した出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)によれば、図10に示した出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)で必要とされていたトランジスタの過負荷防止の保護抵抗を設ける必要がなくなる旨が記載されている。また、図10に示した出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)で必要とされていたインバータが不要になる旨が記載されている。更に、図11に示した出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)によれば、短絡電流による損失発生がなくなり、その分の能率改善効果が得られる旨が記載されている。
【0010】
また、従来から、入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する交流電圧制御装置(交流電力調整器)が知られている。この種の交流電圧制御装置(交流電力調整器)の例としては、例えば特公昭56−33724号公報に記載されたものがある。
【0011】
図13および図14は従来の交流電圧制御装置(交流電力調整器)を示した図である。詳細には、図13は特公昭56−33724号公報の図1に相当する図、図14は特公昭56−33724号公報の図2に相当する図である。図13および図14において、Lは負荷を示しており、eは交流電源を示しており、TR1,TR2,TR3,TR4,TR5はトランジスタを示しており、D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8はダイオードを示しており、SCR1,SCR2はサイリスタを示している。
【0012】
図13に示す従来の交流電圧制御装置(交流電力調整器)では、交流電源eと負荷Lとの間に配置された出力制御用交流スイッチが、トランジスタTR1,TR2およびダイオードD1,D2によって構成されている。また、負荷Lに流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチが、トランジスタTR3,TR4およびダイオードD3,D4によって構成されている。
【0013】
また、図14に示す従来の交流電圧制御装置(交流電力調整器)では、交流電源eと負荷Lとの間に配置された出力制御用交流スイッチが、トランジスタTR5およびダイオードD5,D6,D7,D8によって構成されている。また、負荷Lに流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチが、サイリスタSCR1,SCR2によって構成されている。
【0014】
特公昭56−33724号公報には、図13および図14に示した交流電圧制御装置(交流電力調整器)によれば、負荷電流を均一化することができ、それにより、損失の少ない交流電圧の制御を連続して行うことができる旨が記載されている。また、図13および図14に示した交流電圧制御装置(交流電力調整器)によれば、スイッチング周波数を数KHzまで高くすることができ、それにより、出力波形が良く、応答性に優れた交流電圧の制御を行うことができる旨が記載されている。
【0015】
また、従来から、入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する交流スイッチング回路(交流電力調整器)が知られている。この種の交流スイッチング回路(交流電力調整器)の例としては、例えば特開昭61−211713号公報に記載されたものがある。
【0016】
図15は従来の交流スイッチング回路(交流電力調整器)を示した図である。詳細には、図15は特開昭61−211713号公報の図1に相当する図である。図15において、Mは負荷を示しており、Sは交流電源を示しており、FET1,FET2はMOSFETを示しており、D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7,D8はダイオードを示している。
【0017】
図15に示す従来の交流スイッチング回路(交流電力調整器)では、交流電源Sと負荷Mとの間に配置された出力制御用交流スイッチが、FET1およびダイオードD1,D2,D3,D4によって構成されている。また、負荷Mに流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチが、FET2およびダイオードD5,D6,D7,D8によって構成されている。
【0018】
図16は図15に示した従来の交流スイッチング回路(交流電力調整器)の各部の出力波形図である。詳細には、図16は特開昭61−211713号公報の図2に相当する図である。図16において、Xは交流電源Sの出力を示しており、YはトランジスタTR2のベース端子に入力される制御信号を示している。Z1はコイルC3の出力を示しており、この出力Z1はFET1のゲート端子およびソース端子に導かれている。Z2はコイルC4の出力を示しており、この出力Z2はFET2のゲート端子およびソース端子に導かれている。
【0019】
特開昭61−211713号公報には、FET1およびFET2が制御信号Yの周波数よりも十分に高い周波数の交流出力Z1,Z2によってドライブされる旨が記載されている。
【0020】
また、従来から、入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する交流電力調整装置(交流電力調整器)が知られている。この種の交流電力調整装置(交流電力調整器)の例としては、例えば特開平8−9660号公報に記載されたものがある。
【0021】
図17は従来の交流電力調整装置(交流電力調整器)を示した図である。詳細には、図17は特開平8−9660号公報の図7に相当する図である。図17において、55は負荷を示しており、52は交流電源を示しており、61,62は双方向スイッチ回路を示しており、56は交流スナバを示している。
【0022】
図17に示す従来の交流電力調整装置(交流電力調整器)では、交流電源52と負荷55との間に配置された双方向スイッチ回路(出力制御用交流スイッチ)61が、FET11F1,11F2およびダイオード11D1,11D2によって構成されている。また、負荷55に流れた電流を還流させるための双方向スイッチ回路(還流用交流スイッチ)62が、FET12F1,12F2およびダイオード12D1,12D2によって構成されている。
【0023】
また、従来から、入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する電源装置(交流電力調整器)が知られている。この種の電源装置(交流電力調整器)の例としては、例えば特開平7−15960号公報に記載されたものがある。
【0024】
図18は従来の電源装置(交流電力調整器)を示した図である。詳細には、図18は特開平7−15960号公報の図1に相当する図である。図18において、102は負荷を示しており、101は交流電源を示しており、108はフライホイル部(還流用交流スイッチ)を示している。102aはインダクタンス分を示しており、102bは抵抗分を示しており、114,115は駆動装置を示している。
【0025】
図18に示す従来の電源装置(交流電力調整器)103では、交流電源101と負荷102との間に配置された出力制御用交流スイッチが、IGBT104,105およびダイオード106,107によって構成されている。また、負荷102に流れた電流を還流させるためのフライホイル部(還流用交流スイッチ)108が、IGBT109,110およびダイオード111,112によって構成されている。
【0026】
図19は図18に示した従来の電源装置(交流電力調整器)103の各部の出力電圧波形図である。詳細には、図19は特開平7−15960号公報の図2に相当する図である。更に詳細には、図19(a)は電源装置(交流電力調整器)103から出力される電圧の波形を示しており、図19(b)は駆動装置114からIGBT104,105に入力される駆動信号の波形を示しており、図19(c)は駆動装置115からIGBT109,110に入力される駆動信号の波形を示している。
【0027】
特開平7−15960号公報には、図18に示した電源装置(交流電力調整器)によれば、インダクタンスを有する負荷を自己消弧型制御素子を用いて位相制御する際に、インダクタンスに蓄積されたエネルギーを放出させ、自己消弧型制御素子に印加する過大電圧を抑制し、制御素子の破損を防止することができる旨が記載されている。
【0028】
詳細には、特開平7−15960号公報には、図18に示した電源装置(交流電力調整器)によれば、主消弧型制御素子の位相制御のOFF時、フライホイル用自己消弧型制御素子をONさせることにより、負荷のインダクタンス分に蓄積されたエネルギーがフライホイル用自己消弧型制御素子を介して放出されて、過大な振動電圧が発生することもなく自己消弧型制御素子を破損することもない旨が記載されている。
【0029】
また、特開平7−15960号公報には、図18に示した電源装置(交流電力調整器)によれば、抵抗負荷の場合、小さなリアクトルを設け、主自己消弧型制御素子のOFF時、フライホイル用自己消弧型制御素子をONさせ、リアクトルに蓄積されたエネルギーをフライホイル型制御素子を介して放出させて、ソフトダウンさせることができ、負荷又は配線の振動によるうなりを防止することができる旨が記載されている。
【0030】
ところが、図18に示した従来の電源装置(交流電力調整器)では、IGBT104と、そのIGBT104と逆並列に接続されたダイオード106とを設けた並列回路と、IGBT105と、そのIGBT105と逆並列に接続されたダイオード107とを設けた並列回路とを逆方向に直列接続することにより、出力制御用交流スイッチが構成されている。そのため、図18に示した従来の電源装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が比較的大きくなってしまう。
【0031】
また、従来から、入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、入力端子と出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する交流電圧調整装置(交流電力調整器)が知られている。この種の交流電圧調整装置(交流電力調整器)の例としては、例えば特開2003−18843号公報に記載されたものがある。
【0032】
図20は従来の交流電圧調整装置(交流電力調整器)を示した図である。詳細には、図20は特開2003−18843号公報の図1に相当する図である。更に詳細には、図20(a)は交流電圧調整装置(交流電力調整器)の回路図、図20(b)は図20(a)に示す回路各部の動作波形図である。また、図20(b)(イ)は電源電圧波形を示しており、図20(b)(ロ)は半導体スイッチ素子のON/OFF信号波形を示しており、図20(b)(ハ)はチョッパ出力波形を示しており、図20(b)(ニ)は出力電圧波形を示している。図20において、201は交流電圧調整装置(交流電力調整器)を示しており、203は負荷を示しており、202は交流電源を示している。201aは入力端子を示しており、201bは出力端子を示している。
【0033】
図20に示す従来の交流電圧調整装置(交流電力調整器)201では、交流電源202と負荷203との間に配置された出力制御用交流スイッチS1,S3が、IGBTQ1,Q3およびダイオードD1,D3によって構成されている。また、負荷203に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチS2,S4が、IGBTQ2,Q4およびダイオードD2,D4によって構成されている。
【0034】
特開2003−18843号公報には、図20に示した交流電圧調整装置(交流電力調整器)によれば、交流電源と交流チョッパ回路の切換え動作の同期がずれても、交流チョッパの出力電圧波形が乱れないようにすることができる旨が記載されている。
【0035】
詳細には、特開2003−18843号公報には、図20に示した交流電圧調整装置(交流電力調整器)によれば、スイッチング装置の組の動作を切換えるタイミングが電源電圧の極性が反転する0点に同期しなくても、出力電圧波形が大きく振動することが無くなり、負荷に悪影響を及ぼすことがなくなる旨が記載されている。
【0036】
また、特開2003−18843号公報には、図20に示した交流電圧調整装置(交流電力調整器)によれば、電源からの大電流の流入が無くなるので、スイッチング素子のストレスが軽減される旨が記載されている。
【0037】
ところが、図20に示した従来の交流電圧調整装置(交流電力調整器)では、IGBTQ1と、そのIGBTQ1と逆並列に接続されたダイオードD1とを設けた並列回路を交流電源202の一方の端子201aに接続し、IGBTQ3と、そのIGBTQ3と逆並列に接続されたダイオードD3とを設けた並列回路を交流電源202の他方の端子201aに接続することにより、出力制御用交流スイッチS1,S3が構成されている。そのため、図20に示した従来の交流電圧調整装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチS1,S3のインダクタンス成分が比較的大きくなってしまう。
【0038】
つまり、特開平7−15960号公報、特開2003−18843号公報などに記載されたようなIGBTによって出力制御用交流スイッチの一部が構成されている従来の交流電力調整器においては、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が比較的大きくなってしまっていた。
【0039】
【特許文献1】実公平3−13770号公報
【特許文献2】特公昭56−33724号公報
【特許文献3】特開昭61−211713号公報
【特許文献4】特開平8−9660号公報
【特許文献5】特開平7−15960号公報
【特許文献6】特開2003−18843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
前記問題点に鑑み、本発明は、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる交流電力調整器を提供することを目的とする。
【0041】
詳細には、本発明は、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)よりも出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる交流電力調整器を提供することを目的とする。
【0042】
更に詳細には、本発明は、出力制御用交流スイッチを構成するIGBTを保護するためのスナバ回路を簡素化しつつ、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる交流電力調整器を提供することを目的とする。
【0043】
また、本発明は、出力制御用交流スイッチの寄生インダクタンス成分に伴うノイズを鎮圧することができる交流電力調整器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0044】
請求項1に記載の発明によれば、入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、前記入力端子と前記出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、前記負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する交流電力調整器において、直列接続されたダイオードD1およびIGBTQ1と、直列接続されたダイオードD2およびIGBTQ2とを逆並列に接続することにより前記出力制御用交流スイッチを構成したことを特徴とする交流電力調整器が提供される。
【0045】
請求項2に記載の発明によれば、前記ダイオードD1と前記ダイオードD2とが直列接続されてモジュール化されたものと、前記IGBTQ1と前記IGBTQ2とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて前記出力制御用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項1に記載の交流電力調整器が提供される。
【0046】
請求項3に記載の発明によれば、直列接続されたダイオードD3およびIGBTQ3と、直列接続されたダイオードD4およびIGBTQ4とを前記負荷に対して逆並列に接続することにより前記還流用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の交流電力調整器が提供される。
【0047】
請求項4に記載の発明によれば、前記ダイオードD3と前記ダイオードD4とが直列接続されてモジュール化されたものと、前記IGBTQ3と前記IGBTQ4とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて前記還流用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項3に記載の交流電力調整器が提供される。
【0048】
請求項5に記載の発明によれば、直列接続されたダイオードFRD3およびサイリスタSCR3と、直列接続されたダイオードFRD4およびサイリスタSCR4とを前記負荷に対して逆並列に接続することにより前記還流用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の交流電力調整器が提供される。
【0049】
請求項6に記載の発明によれば、前記還流用交流スイッチのターンオン時には、前記ダイオードFRD3の両端に発生した順電圧に基づいて生成された駆動信号を前記サイリスタSCR3のゲート端子に入力することによって、前記負荷からの電流が前記ダイオードFRD3および前記サイリスタSCR3を還流せしめられ、前記還流用交流スイッチのターンオフ時には、前記ダイオードFRD3の両端に発生した逆電圧によって、前記ダイオードFRD3を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、前記サイリスタSCR3にも電流が流れなくなるように、前記ダイオードFRD3と前記サイリスタSCR3とを構成したことを特徴とする請求項5に記載の交流電力調整器が提供される。
【0050】
請求項7に記載の発明によれば、前記還流用交流スイッチのターンオン時には、前記ダイオードFRD4の両端に発生した順電圧に基づいて生成された駆動信号を前記サイリスタSCR4のゲート端子に入力することによって、前記負荷からの電流が前記ダイオードFRD4および前記サイリスタSCR4を還流せしめられ、前記還流用交流スイッチのターンオフ時には、前記ダイオードFRD4の両端に発生した逆電圧によって、前記ダイオードFRD4を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、前記サイリスタSCR4にも電流が流れなくなるように、前記ダイオードFRD4と前記サイリスタSCR4とを構成したことを特徴とする請求項5又は6に記載の交流電力調整器が提供される。
【0051】
請求項8に記載の発明によれば、要求出力が高い時に前記IGBTQ1および前記IGBTQ2の駆動信号の周波数を低くし、要求出力が低い時に前記IGBTQ1および前記IGBTQ2の駆動信号の周波数を高くすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の交流電力調整器が提供される。
【0052】
請求項9に記載の発明によれば、前記ダイオードFRD3と前記ダイオードFRD4とが直列接続されてモジュール化されたものと、前記サイリスタSCR3と前記サイリスタSCR4とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて前記還流用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の交流電力調整器が提供される。
【発明の効果】
【0053】
請求項1に記載の交流電力調整器では、直列接続されたダイオードD1およびIGBTQ1と、直列接続されたダイオードD2およびIGBTQ2とを逆並列に接続することにより出力制御用交流スイッチが構成されている。そのため、IGBTと、このIGBTに逆並列に接続されたダイオードとを設けた並列回路を2組逆方向に直列接続することにより出力制御用交流スイッチを構成した特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)よりも出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができ、また、IGBTQ1と、そのIGBTQ1と逆並列に接続されたダイオードD1とを設けた並列回路を交流電源の一方の端子に接続し、IGBTQ3と、そのIGBTQ3と逆並列に接続されたダイオードD3とを設けた並列回路を交流電源の他方の端子に接続することにより出力制御用交流スイッチを構成した特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)よりも出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる。
【0054】
請求項2に記載の交流電力調整器では、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化されたものと、IGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて出力制御用交流スイッチが構成されている。そのため、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化された汎用品およびIGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いることができる。それゆえ、ダイオードD1とダイオードD2とがモジュール化されていない場合、あるいは、IGBTQ1とIGBTQ2とがモジュール化されていない場合よりも、交流電力調整器全体を小型化することができ、また、モジュールの内部配線に対する外部配線の割合を低減することができ、それにより、外部配線の寄生インダクタンス成分を低減することができる。
【0055】
請求項3に記載の交流電力調整器では、直列接続されたダイオードD3およびIGBTQ3と、直列接続されたダイオードD4およびIGBTQ4とを負荷に対して逆並列に接続することにより還流用交流スイッチが構成されている。換言すれば、直列接続されたダイオードD3およびIGBTQ3と、直列接続されたダイオードD4およびIGBTQ4とが逆並列に接続された並列回路を負荷に対して並列に接続することにより還流用交流スイッチが構成されている。そのため、IGBTと、このIGBTに逆並列に接続されたダイオードとを設けた並列回路を2組逆方向に直列接続することにより還流用交流スイッチを構成した特開平7−15960号公報および特開2003−18843号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)よりも還流用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる。
【0056】
請求項4に記載の交流電力調整器では、ダイオードD3とダイオードD4とが直列接続されてモジュール化されたものと、IGBTQ3とIGBTQ4とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて還流用交流スイッチが構成されている。そのため、ダイオードD3とダイオードD4とが直列接続されてモジュール化された汎用品およびIGBTQ3とIGBTQ4とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いることができる。それゆえ、ダイオードD3とダイオードD4とがモジュール化されていない場合、あるいは、IGBTQ3とIGBTQ4とがモジュール化されていない場合よりも、交流電力調整器全体を小型化することができ、また、モジュールの内部配線に対する外部配線の割合を低減することができ、それにより、外部配線の寄生インダクタンス成分を低減することができる。
【0057】
還流用交流スイッチとして比較的高価なIGBTを用いると、交流電力調整器全体のコストが上昇してしまう。また、サージ電流・電圧に比較的弱いIGBTがサージ電流・電圧によって破壊されないように複雑なスナバ回路を設けると、交流電力調整器全体のコストが更に上昇してしまう。
【0058】
これらの点に鑑み、請求項5に記載の交流電力調整器では、還流用交流スイッチとしてIGBTが用いられず、直列接続されたダイオードFRD3およびサイリスタSCR3と、直列接続されたダイオードFRD4およびサイリスタSCR4とを負荷に対して逆並列に接続することにより還流用交流スイッチが構成されている。換言すれば、直列接続されたダイオードFRD3およびサイリスタSCR3と、直列接続されたダイオードFRD4およびサイリスタSCR4とが逆並列に接続された並列回路を負荷に対して並列に接続することにより還流用交流スイッチが構成されている。詳細には、IGBTより安価であって、IGBTよりもサージ電流・電圧に強く、また、IGBT用のスナバ回路のような複雑なスナバ回路を必要としないダイオードFRD3,FRD4とサイリスタSCR3,SCR4とによって還流用交流スイッチが構成されている。そのため、還流用交流スイッチとしてIGBTが用いられる交流電力調整器よりもコストを抑えつつ、信頼性を向上させることができる。
【0059】
請求項6に記載の交流電力調整器では、還流用交流スイッチのターンオン時には、ダイオードFRD3の両端に発生した順電圧に基づいて生成された駆動信号をサイリスタSCR3のゲート端子に入力することによって、負荷からの電流がダイオードFRD3およびサイリスタSCR3を還流せしめられる。つまり、例えば出力制御用交流スイッチがONせしめられている時のような、還流用交流スイッチをターンオンすべきでない時には、サイリスタSCR3がターンオンせしめられず、一方、還流用交流スイッチをターンオンすべき時には、サイリスタSCR3が瞬時にターンオンせしめられ、それにより、負荷からの電流がダイオードFRD3およびサイリスタSCR3を還流せしめられる。
【0060】
更に、請求項6に記載の交流電力調整器では、還流用交流スイッチのターンオフ時には、ダイオードFRD3の両端に発生した逆電圧によって、ダイオードFRD3を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、サイリスタSCR3にも電流が流れなくなる。つまり、還流用交流スイッチをターンオフすべき時には、ターンオフの応答性が比較的悪いサイリスタSCR3のターンオフが完了する前に、ターンオフの応答性が良いダイオードFRD3のターンオフが完了せしめられ、それにより、ダイオードFRD3およびサイリスタSCR3を還流せしめられていた電流が遮断される。
【0061】
請求項7に記載の交流電力調整器では、還流用交流スイッチのターンオン時には、ダイオードFRD4の両端に発生した順電圧に基づいて生成された駆動信号をサイリスタSCR4のゲート端子に入力することによって、負荷からの電流がダイオードFRD4およびサイリスタSCR4を還流せしめられる。つまり、例えば出力制御用交流スイッチがONせしめられている時のような、還流用交流スイッチをターンオンすべきでない時には、サイリスタSCR4がターンオンせしめられず、一方、還流用交流スイッチをターンオンすべき時には、サイリスタSCR4が瞬時にターンオンせしめられ、それにより、負荷からの電流がダイオードFRD4およびサイリスタSCR4を還流せしめられる。
【0062】
更に、請求項7に記載の交流電力調整器では、還流用交流スイッチのターンオフ時には、ダイオードFRD4の両端に発生した逆電圧によって、ダイオードFRD4を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、サイリスタSCR4にも電流が流れなくなる。つまり、還流用交流スイッチをターンオフすべき時には、ターンオフの応答性が比較的悪いサイリスタSCR4のターンオフが完了する前に、ターンオフの応答性が良いダイオードFRD4のターンオフが完了せしめられ、それにより、ダイオードFRD4およびサイリスタSCR4を還流せしめられていた電流が遮断される。
【0063】
請求項8に記載の交流電力調整器では、要求出力が高い時にIGBTQ1およびIGBTQ2の駆動信号の周波数を低くし、要求出力が低い時にIGBTQ1およびIGBTQ2の駆動信号の周波数を高くするPFM制御が行われる。そのため、要求出力が低い時に、IGBTQ1およびIGBTQ2の駆動信号の周波数が変更されず、比較的低いIGBTQ1およびIGBTQ2の駆動信号の周波数がそのまま維持されるPWM制御が行われる場合よりも、要求出力が低い時における出力波形の歪みおよびノイズを低減することができる。
【0064】
請求項9に記載の交流電力調整器では、ダイオードFRD3とダイオードFRD4とが直列接続されてモジュール化されたものと、サイリスタSCR3とサイリスタSCR4とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて還流用交流スイッチが構成されている。そのため、ダイオードFRD3とダイオードFRD4とが直列接続されてモジュール化された汎用品およびサイリスタSCR3とサイリスタSCR4とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いることができる。それゆえ、ダイオードFRD3とダイオードFRD4とがモジュール化されていない場合、あるいは、サイリスタSCR3とサイリスタSCR4とがモジュール化されていない場合よりも、交流電力調整器全体を小型化することができ、また、モジュールの内部配線に対する外部配線の割合を低減することができ、それにより、外部配線の寄生インダクタンス成分を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、本発明の交流電力調整器の第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態の交流電力調整器の回路図である。詳細には、図1中の破線によって囲まれた部分が第1の実施形態の交流電力調整器に相当している。
【0066】
図1に示すように、第1の実施形態の交流電力調整器には、入力される交流電源に接続するための入力端子と、例えば電気炉、照明、モータ、電源装置などのような負荷に接続するための出力端子とが設けられている。また、入力端子と出力端子との間には、ダイオードD1,D2、IGBTQ1,Q2、および、フライホイールダイオードFWD1,FWD2によって構成された出力制御用交流スイッチが設けられている。更に、第1の実施形態の交流電力調整器には、負荷に流れた電流を還流させるために、ダイオードD3,D4、IGBTQ3,Q4、および、フライホイールダイオードFWD3,FWD4によって構成された還流用交流スイッチが設けられている。また、第1の実施形態の交流電力調整器では、入力フィルタ回路がL1,C1によって構成され、出力フィルタ回路がL2,C2によって構成されている。例えば100A/200V型の第1の実施形態の交流電力調整器では、例えばL1,L2≒400(μH)、例えばC1,C2≒12(μF)となるように、入力フィルタ回路および出力フィルタ回路が構成されている。
【0067】
図2は図1に示した回路の各部における波形を示した図である。詳細には、図2(A)は交流電源の電圧Vaの波形、つまり、交流電源から入力端子を介して交流電力調整器に入力される電圧Vaの波形を示しており、図2(B)はIGBTQ1をON/OFFするために駆動回路からIGBTQ1のゲート端子に供給される駆動信号を示しており、図2(C)はIGBTQ2をON/OFFするために駆動回路からIGBTQ2のゲート端子に供給される駆動信号を示している。図2(D)はIGBTQ3をON/OFFするために駆動回路からIGBTQ3のゲート端子に供給される駆動信号を示しており、図2(E)はIGBTQ4をON/OFFするために駆動回路からIGBTQ4のゲート端子に供給される駆動信号を示しており、図2(F)は図1中の電圧Vxの波形を示しており、図2(G)は出力電圧Voutの波形、つまり、交流電力調整器から出力端子を介して負荷に出力される電圧Voutの波形を示している。
【0068】
図2に示すように、第1の実施形態の交流電力調整器では、電圧Vaが正の期間中に、IGBTQ1のゲート端子に対し、例えば約20KHzの周波数のパルス信号、つまり、例えば約20KHzの周波数でIGBTQ1をON/OFFさせるための駆動信号が供給される。また、IGBTQ2のゲート端子に対し、IGBTQ2をOFFし続けるための駆動信号が供給される。更に、IGBTQ3のゲート端子に対し、IGBTQ3をOFFし続けるための駆動信号が供給される。また、IGBTQ4のゲート端子に対し、IGBTQ4をONし続けるための駆動信号が供給される。
【0069】
そのため、電圧Vaが正の期間中のうち、IGBTQ1がONしている時には、交流電源→図1の上側の入力端子→ダイオードD1→IGBTQ1→図1の上側の出力端子→負荷→図1の下側の出力端子→図1の下側の入力端子→交流電源の経路で電流が流れる。一方、IGBTQ1がONからOFFに切り換えられると、交流電源から負荷に電流が供給されなくなるが、負荷は電流を流し続けようとする。その結果、電圧Vaが正の期間中のうち、IGBTQ1がOFFしている時には、負荷→図1の下側の出力端子→ダイオードD4→IGBTQ4→図1の上側の出力端子→負荷の経路で、負荷を流れた電流が還流せしめられる。
【0070】
つまり、電圧Vaが正の期間中には、電圧Vxが図2(F)に示すような波形になり、出力端子を介して負荷に出力される電圧Voutは、電圧Vxの波形がなまされて、図2(G)に示すような波形になる。
【0071】
更に、電圧Vaが負の期間中には、IGBTQ2のゲート端子に対し、例えば約20KHzの周波数のパルス信号、つまり、例えば約20KHzの周波数でIGBTQ2をON/OFFさせるための駆動信号が供給される。また、IGBTQ1のゲート端子に対し、IGBTQ1をOFFし続けるための駆動信号が供給される。更に、IGBTQ3のゲート端子に対し、IGBTQ3をONし続けるための駆動信号が供給される。また、IGBTQ4のゲート端子に対し、IGBTQ4をOFFし続けるための駆動信号が供給される。
【0072】
そのため、電圧Vaが負の期間中のうち、IGBTQ2がONしている時には、交流電源→図1の下側の入力端子→図1の下側の出力端子→負荷→図1の上側の出力端子→IGBTQ2→ダイオードD2→図1の上側の入力端子→交流電源の経路で電流が流れる。一方、IGBTQ2がONからOFFに切り換わると、交流電源から負荷に電流が供給されなくなるが、負荷は電流を流し続けようとする。その結果、電圧Vaが負の期間中のうち、IGBTQ2がOFFしている時には、負荷→図1の上側の出力端子→IGBTQ3→ダイオードD3→図1の下側の出力端子→負荷の経路で、負荷を流れた電流が還流せしめられる。
【0073】
つまり、電圧Vaが負の期間中には、電圧Vxが図2(F)に示すような波形になり、出力端子を介して負荷に出力される電圧Voutは、電圧Vxの波形がなまされて、図2(G)に示すような波形になる。
【0074】
電圧Vaが正から負に切り換わる時に、IGBTQ4がONしているにもかかわらず、IGBTQ2がOFFからONに切り換わってしまうと、交流電源→図1の下側の入力端子→ダイオードD4→IGBTQ4→IGBTQ2→ダイオードD2→図1の上側の入力端子→交流電源の経路で短絡電流が流れてしまうおそれがある。この点に鑑み、第1の実施形態の交流電力調整器では、図2に示すように、IGBTQ1がONからOFFに切り換わってから、IGBTQ2がOFFからONに切り換えられるまでの間に例えば約100μsのデッドタイムが設けられている。詳細には、IGBTQ4がONからOFFに切り換わってから、IGBTQ2がOFFからONに切り換えられるまでの間にデッドタイムが設けられている。それにより、第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ4がONしかつIGBTQ2がONする状況が回避されている。つまり、第1の実施形態の交流電力調整器では、交流電源→図1の下側の入力端子→ダイオードD4→IGBTQ4→IGBTQ2→ダイオードD2→図1の上側の入力端子→交流電源の経路で短絡電流が流れてしまうおそれが排除されている。
【0075】
同様に、電圧Vaが負から正に切り換わる時に、IGBTQ3がONしているにもかかわらず、IGBTQ1がOFFからONに切り換わってしまうと、交流電源→図1の上側の入力端子→ダイオードD1→IGBTQ1→IGBTQ3→ダイオードD3→図1の下側の入力端子→交流電源の経路で短絡電流が流れてしまうおそれがある。この点に鑑み、第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ2がONからOFFに切り換わってから、IGBTQ1がOFFからONに切り換えられるまでの間に例えば約100μsのデッドタイムが設けられている。詳細には、IGBTQ3がONからOFFに切り換わってから、IGBTQ1がOFFからONに切り換えられるまでの間にデッドタイムが設けられている。それにより、第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ3がONしかつIGBTQ1がONする状況が回避されている。つまり、第1の実施形態の交流電力調整器では、交流電源→図1の上側の入力端子→ダイオードD1→IGBTQ1→IGBTQ3→ダイオードD3→図1の下側の入力端子→交流電源の経路で短絡電流が流れてしまうおそれが排除されている。
【0076】
また、第1の実施形態の交流電力調整器では、要求出力(指令、デューティー)が高い時、つまり、高い電圧Voutが要求される時には、IGBTQ1のゲート端子に対して供給されるパルス信号(図2(B)参照)のうち、IGBTQ1をONさせるための部分の幅が増加せしめられ、そのパルス信号の周波数自体は変更せしめられない。同様に、IGBTQ2のゲート端子に対して供給されるパルス信号(図2(C)参照)のうち、IGBTQ2をONさせるための部分の幅が増加せしめられ、そのパルス信号の周波数自体は変更せしめられない。
【0077】
一方、要求出力(指令、デューティー)が低い時、つまり、低い電圧Voutが要求される時には、IGBTQ1のゲート端子に対して供給されるパルス信号(図2(B)参照)のうち、IGBTQ1をONさせるための部分の幅が減少せしめられ、そのパルス信号の周波数自体は変更せしめられない。同様に、IGBTQ2のゲート端子に対して供給されるパルス信号(図2(C)参照)のうち、IGBTQ2をONさせるための部分の幅が減少せしめられ、そのパルス信号の周波数自体は変更せしめられない。
【0078】
すなわち、第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ1,Q2に対するチョッパ制御がPWM方式によって行われる。また、第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ3,Q4に対してチョッパ制御が行われないため、IGBTQ3,Q4に対してチョッパ制御を実行するのに伴ってスイッチング損失が発生してしまうのを回避することができる。
【0079】
更に、第1の実施形態の交流電力調整器では、図1に示すように、直列接続されたダイオードD1およびIGBTQ1と、直列接続されたダイオードD2およびIGBTQ2とを逆並列に接続することにより出力制御用交流スイッチが構成されている。詳細には、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化されたものと、IGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて出力制御用交流スイッチが構成されている。更に詳細には、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化された汎用品と、IGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化された汎用品とを用いて出力制御用交流スイッチが構成されている。
【0080】
そのため、第1の実施形態の交流電力調整器によれば、ダイオードD1とダイオードD2とがモジュール化されていない場合、あるいは、IGBTQ1とIGBTQ2とがモジュール化されていない場合よりも、交流電力調整器全体を小型化することができ、また、モジュールの内部配線に対する外部配線の割合を低減することができ、それにより、外部配線の寄生インダクタンス成分を低減することができる。
【0081】
すなわち、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、出力制御用交流スイッチの一部を構成する2つのIGBTが逆向きに直列接続されている。2つのIGBTを逆向きに直列接続してモジュール化した汎用品は存在しないため、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、2つのIGBTとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、2つのIGBTを外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0082】
また、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、出力制御用交流スイッチの一部を構成する2つのIGBTが離間して配置されている。そのため、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、2つのIGBTとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、出力制御用交流スイッチの残りの部分に対して個々のIGBTをそれぞれ外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0083】
それに対し、第1の実施形態の交流電力調整器では、図1に示すように、IGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いて出力制御用交流スイッチの一部が構成されている。そのため、第1の実施形態の交流電力調整器によれば、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)よりも、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる。
【0084】
更に、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、出力制御用交流スイッチの一部を構成する2つのダイオードが逆向きに直列接続されている。2つのダイオードを逆向きに直列接続してモジュール化した汎用品は存在しないため、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、2つのダイオードとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、2つのダイオードを外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0085】
また、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、出力制御用交流スイッチの一部を構成する2つのダイオードが離間して配置されている。そのため、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、2つのダイオードとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、出力制御用交流スイッチの残りの部分に対して個々のダイオードをそれぞれ外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0086】
それに対し、第1の実施形態の交流電力調整器では、図1に示すように、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いて出力制御用交流スイッチの一部が構成されている。そのため、第1の実施形態の交流電力調整器によれば、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)よりも、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる。
【0087】
更に、第1の実施形態の交流電力調整器では、図1に示すように、直列接続されたダイオードD3およびIGBTQ3と、直列接続されたダイオードD4およびIGBTQ4とを逆並列に接続し、その並列回路を負荷に対して並列接続することにより還流用交流スイッチが構成されている。詳細には、ダイオードD3とダイオードD4とが直列接続されてモジュール化されたものと、IGBTQ3とIGBTQ4とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて還流用交流スイッチが構成されている。更に詳細には、ダイオードD3とダイオードD4とが直列接続されてモジュール化された汎用品と、IGBTQ3とIGBTQ4とが直列接続されてモジュール化された汎用品とを用いて還流用交流スイッチが構成されている。
【0088】
そのため、第1の実施形態の交流電力調整器によれば、ダイオードD3とダイオードD4とがモジュール化されていない場合、あるいは、IGBTQ3とIGBTQ4とがモジュール化されていない場合よりも、交流電力調整器全体を小型化することができ、また、モジュールの内部配線に対する外部配線の割合を低減することができ、それにより、外部配線の寄生インダクタンス成分を低減することができる。
【0089】
すなわち、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の還流用交流スイッチでは、還流用交流スイッチの一部を構成する2つのIGBTが逆向きに直列接続されている。2つのIGBTを逆向きに直列接続してモジュール化した汎用品は存在しないため、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の還流用交流スイッチでは、2つのIGBTとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、2つのIGBTを外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)では、還流用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0090】
それに対し、第1の実施形態の交流電力調整器では、図1に示すように、IGBTQ3とIGBTQ4とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いて還流用交流スイッチの一部が構成されている。そのため、第1の実施形態の交流電力調整器によれば、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)よりも、還流用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる。
【0091】
更に、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の還流用交流スイッチでは、還流用交流スイッチの一部を構成する2つのダイオードが逆向きに直列接続されている。2つのダイオードを逆向きに直列接続してモジュール化した汎用品は存在しないため、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の還流用交流スイッチでは、2つのダイオードとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、2つのダイオードを外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)では、還流用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0092】
それに対し、第1の実施形態の交流電力調整器では、図1に示すように、ダイオードD3とダイオードD4とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いて還流用交流スイッチの一部が構成されている。そのため、第1の実施形態の交流電力調整器によれば、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)よりも、還流用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる。
【0093】
上述したように、IGBTQ1がONからOFFに切り換えられると、交流電源から負荷に電流が供給されなくなるが、負荷は電流を流し続けようとする。つまり、負荷に逆起電力が発生し、図1の下側の出力端子の電位が、図1の上側の出力端子の電位より高くなる。その結果、IGBTQ3およびダイオードD3の両端に、逆電圧が加わる。第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ3およびダイオードD3の両端に逆電圧が加わった時に、その逆電圧のほとんどがダイオードD3の両端に加わり、IGBTQ3の両端には、フライホイールダイオードFWD3のVF(≒3V)程度の逆電圧のみが加わるように、ダイオードD3が選定されている。そのため、第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ3として、低耐圧の素子(低VCES素子)を用いることができる。
【0094】
同様に、IGBTQ2がONからOFFに切り換えられると、交流電源から負荷に電流が供給されなくなるが、負荷は電流を流し続けようとする。つまり、負荷に逆起電力が発生し、図1の上側の出力端子の電位が、図1の下側の出力端子の電位より高くなる。その結果、IGBTQ4およびダイオードD4の両端に、逆電圧が加わる。第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ4およびダイオードD4の両端に逆電圧が加わった時に、その逆電圧のほとんどがダイオードD4の両端に加わり、IGBTQ4の両端には、フライホイールダイオードFWD4のVF(≒3V)程度の逆電圧のみが加わるように、ダイオードD4が選定されている。そのため、第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ4として、低耐圧の素子(低VCES素子)を用いることができる。
【0095】
以下、本発明の交流電力調整器の第2の実施形態について説明する。図3は第2の実施形態の交流電力調整器の回路図である。詳細には、図3中の破線によって囲まれた部分が第2の実施形態の交流電力調整器に相当している。
【0096】
図3に示すように、第2の実施形態の交流電力調整器には、入力される交流電源に接続するための入力端子と、例えば電気炉、照明、モータ、電源装置などのような負荷に接続するための出力端子とが設けられている。また、入力端子と出力端子との間には、ダイオードD1,D2、IGBTQ1,Q2、および、フライホイールダイオードFWD1,FWD2によって構成された出力制御用交流スイッチが設けられている。更に、第2の実施形態の交流電力調整器には、負荷に流れた電流を還流させるために、高速整流ダイオードFRD3,FRD4、および、サイリスタSCR3,SCR4によって構成された還流用交流スイッチが設けられている。また、第2の実施形態の交流電力調整器では、入力フィルタ回路がLin,Cin,Rinによって構成され、出力フィルタ回路がLout,Coutによって構成されている。例えば100A/200V型の第2の実施形態の交流電力調整器では、例えばLin≒50(μH)、例えばCin=10〜20(μF)、例えばRin=5〜10(Ω)、例えばLout≒100(μH)、例えばCout≒20(μF)となるように、入力フィルタ回路および出力フィルタ回路が構成されている。
【0097】
第2の実施形態の交流電力調整器のIGBTQ1をON/OFFするためにIGBT駆動回路からIGBTQ1のゲート端子に供給される駆動信号は、図2(B)に示した駆動信号とほぼ同様に構成されている。また、第2の実施形態の交流電力調整器のIGBTQ2をON/OFFするためにIGBT駆動回路からIGBTQ2のゲート端子に供給される駆動信号は、図2(C)に示した駆動信号とほぼ同様に構成されている。
【0098】
つまり、第2の実施形態の交流電力調整器では、交流電源から正の正弦半波が供給される期間中、つまり、図3の上側の入力端子の電位が図3の下側の入力端子の電位より高い期間中に、IGBTQ1のゲート端子に対し、例えば約10KHzの周波数のパルス信号、つまり、例えば約10KHzの周波数でIGBTQ1をON/OFFさせるための駆動信号が供給される。また、IGBTQ2のゲート端子に対し、IGBTQ2をOFFし続けるための駆動信号が供給される。
【0099】
そのため、交流電源から正の正弦半波が供給される期間中のうち、IGBTQ1がONしている時には、交流電源→図3の上側の入力端子→ダイオードD1→IGBTQ1→図3の上側の出力端子→負荷→図3の下側の出力端子→図3の下側の入力端子→交流電源の経路で電流が流れる。一方、IGBTQ1がONからOFFに切り換えられると、交流電源から負荷に電流が供給されなくなるが、負荷は電流を流し続けようとする。つまり、負荷に逆起電力が発生し、図3の下側の出力端子の電位が、図3の上側の出力端子の電位より高くなる。その結果、サイリスタSCR4および高速整流ダイオードFRD4の両端に順電圧が加わる。
【0100】
第2の実施形態の交流電力調整器では、高速整流ダイオードFRD4の両端に順電圧が発生すると、SCR駆動回路において、サイリスタSCR4をONするための駆動信号がその順電圧に基づいて生成され、その駆動信号がサイリスタSCR4のゲート端子に入力される。それにより、サイリスタSCR4がONせしめられる。
【0101】
その結果、交流電源から正の正弦半波が供給される期間中のうち、IGBTQ1がOFFしている時には、負荷→図3の下側の出力端子→高速整流ダイオードFRD4→サイリスタSCR4→図3の上側の出力端子→負荷の経路で、負荷を流れた電流が還流せしめられる。
【0102】
次いで、IGBTQ1がOFFからONに再び切り換えられると、サイリスタSCR4および高速整流ダイオードFRD4の両端に逆電圧が加わる。詳細には、サイリスタSCR4よりも応答性の速い高速整流ダイオードFRD4の両端に発生した逆電圧によって、まず最初に、高速整流ダイオード4を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、サイリスタSCR4にも電流が流れなくなる。すなわち、サイリスタSCR4がOFFされる。その結果、交流電源→図3の上側の入力端子→ダイオードD1→IGBTQ1→図3の上側の出力端子→負荷→図3の下側の出力端子→図3の下側の入力端子→交流電源の経路で電流が再び流れ始める。
【0103】
つまり、交流電源から正の正弦半波が供給される期間中には、交流電源から負荷に電流が流れる状態と、負荷から高速整流ダイオードFRD4およびサイリスタSCR4に電流が還流される状態とが繰り返される。その結果、電圧Vx(図3参照)が、第1の実施形態の交流電力調整器と同様に、図2(F)に示すような波形になり、出力端子を介して負荷に出力される電圧Voutは、電圧Vxの波形がなまされて、第1の実施形態の交流電力調整器と同様に、図2(G)に示すような波形になる。
【0104】
次いで、交流電源から負の正弦半波が供給され始めると、つまり、図3の下側の入力端子の電位が図3の上側の入力端子の電位より高くなると、第1の実施形態の交流電力調整器と同様に、所定のデッドタイム(図2(B)参照)の経過後に、IGBTQ2のゲート端子に対し、例えば約10KHzの周波数のパルス信号、つまり、例えば約10KHzの周波数でIGBTQ2をON/OFFさせるための駆動信号が供給され始める。また、交流電源から負の正弦半波が供給され始めると、IGBTQ1のゲート端子に対し、IGBTQ1をOFFし続けるための駆動信号が供給される。
【0105】
交流電源から正の正弦半波が供給されていた期間中、IGBTQ1がONからOFFに最後に切り換えられた時に、サイリスタSCR4はONせしめられているが、上述したデッドタイムの期間中に、サイリスタSCR4のアノード−カソード間を流れる電流は、サイリスタSCR4をONし続けるのに必要な保持電流未満まで減少している。そのため、上述したデッドタイムの期間中に、サイリスタSCR4はONからOFFに切り換わっている。その結果、上述したデッドタイムの経過後に、IGBTQ2がONせしめられても、交流電源からの電流が高速整流ダイオードFRD4およびサイリスタSCR4を短絡せしめられてしまうことはない。つまり、IGBTQ2がONしている時に高速整流ダイオードFRD4およびサイリスタSCR4に短絡電流が流れてしまうことが、上述したデッドタイムによって回避されている。
【0106】
第2の実施形態の交流電力調整器では、交流電源から負の正弦半波が供給される期間中のうち、IGBTQ2がONしている時には、交流電源→図3の下側の入力端子→図3の下側の出力端子→負荷→図3の上側の出力端子→IGBTQ2→ダイオードD2→図3の上側の入力端子→交流電源の経路で電流が流れる。一方、IGBTQ2がONからOFFに切り換えられると、交流電源から負荷に電流が供給されなくなるが、負荷は電流を流し続けようとする。つまり、負荷に逆起電力が発生し、図3の上側の出力端子の電位が、図3の下側の出力端子の電位より高くなる。その結果、サイリスタSCR3および高速整流ダイオードFRD3の両端に順電圧が加わる。
【0107】
第2の実施形態の交流電力調整器では、高速整流ダイオードFRD3の両端に順電圧が発生すると、SCR駆動回路において、サイリスタSCR3をONするための駆動信号がその順電圧に基づいて生成され、その駆動信号がサイリスタSCR3のゲート端子に入力される。それにより、サイリスタSCR3がONせしめられる。
【0108】
その結果、交流電源から負の正弦半波が供給される期間中のうち、IGBTQ2がOFFしている時には、負荷→図3の上側の出力端子→サイリスタSCR3→高速整流ダイオードFRD3→図3の下側の出力端子→負荷の経路で、負荷を流れた電流が還流せしめられる。
【0109】
次いで、IGBTQ2がOFFからONに再び切り換えられると、サイリスタSCR3および高速整流ダイオードFRD3の両端に逆電圧が加わる。詳細には、サイリスタSCR3よりも応答性の速い高速整流ダイオードFRD3の両端に発生した逆電圧によって、まず最初に、高速整流ダイオードFRD3を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、サイリスタSCR3にも電流が流れなくなる。すなわち、サイリスタSCR3がOFFされる。その結果、交流電源→図3の下側の入力端子→図3の下側の出力端子→負荷→図3の上側の出力端子→IGBTQ2→ダイオードD2→図3の上側の入力端子→交流電源の経路で電流が再び流れ始める。
【0110】
つまり、交流電源から負の正弦半波が供給される期間中には、交流電源から負荷に電流が流れる状態と、負荷からサイリスタSCR3および高速整流ダイオードFRD3に電流が還流される状態とが繰り返される。その結果、電圧Vx(図3参照)が、第1の実施形態の交流電力調整器と同様に、図2(F)に示すような波形になり、出力端子を介して負荷に出力される電圧Voutは、電圧Vxの波形がなまされて、第1の実施形態の交流電力調整器と同様に、図2(G)に示すような波形になる。
【0111】
次いで、交流電源から正の正弦半波が再び供給され始めると、つまり、図3の上側の入力端子の電位が図3の下側の入力端子の電位より高くなると、所定のデッドタイムの経過後に、IGBTQ1のゲート端子に対し、IGBTQ1をON/OFFさせるための駆動信号が再び供給され始める。また、交流電源から正の正弦半波が再び供給され始めると、IGBTQ2のゲート端子に対し、IGBTQ2をOFFし続けるための駆動信号が供給される。
【0112】
交流電源から負の正弦半波が供給されていた期間中、IGBTQ2がONからOFFに最後に切り換えられた時に、サイリスタSCR3はONせしめられているが、上述したデッドタイムの期間中に、サイリスタSCR3のアノード−カソード間を流れる電流は、サイリスタSCR3をONし続けるのに必要な保持電流未満まで減少している。そのため、上述したデッドタイムの期間中に、サイリスタSCR3はONからOFFに切り換わっている。その結果、上述したデッドタイムの経過後に、IGBTQ1が再びONせしめられても、交流電源からの電流がサイリスタSCR3および高速整流ダイオードFRD3を短絡せしめられてしまうことはない。つまり、IGBTQ1がONしている時にサイリスタSCR3および高速整流ダイオードFRD3に短絡電流が流れてしまうことが、上述したデッドタイムによって回避されている。
【0113】
更に、第2の実施形態の交流電力調整器では、要求出力(指令、デューティー)が低い時における出力Vout(図2(G)参照)の波形の歪みおよびノイズを低減するために、要求出力(指令、デューティー)が高い時にIGBTQ1およびIGBTQ2の駆動信号の周波数を低くし、要求出力が低い時にIGBTQ1およびIGBTQ2の駆動信号の周波数を高くするPFM制御が行われる。
【0114】
図4は第2の実施形態の交流電力調整器においてPFM制御を行うための回路を示した図である。図5は第1の実施形態の交流電力調整器におけるPWM制御と第2の実施形態における交流電力調整器におけるPFM制御とを比較して示した図である。詳細には、図5(A)は第1の実施形態の交流電力調整器において要求出力(指令、デューティー)が低い時にIGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)を生成する方法を示した図、図5(B)は第1の実施形態の交流電力調整器において要求出力(指令、デューティー)が高い時にIGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)を生成する方法を示した図、図5(C)は第2の実施形態の交流電力調整器において要求出力(指令、デューティー)が低い時にIGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)を生成する方法を示した図、図5(D)は第2の実施形態の交流電力調整器において要求出力(指令、デューティー)が高い時にIGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)を生成する方法を示した図である。図6はPFM制御における指令とスイッチング周波数fswおよびパルス幅(ON部分の幅)Pwとの関係を示した図である。
【0115】
図5(A)および図5(B)に示すように、PWM制御が採用されている第1の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)の周波数自体は変更せしめられず、駆動信号(パルス信号)を構成するON部分の幅とOFF部分の幅との比が、要求出力(指令、デューティー)に応じて変更される。詳細には、図5(A)に示すように、要求出力(指令、デューティー)が低い時には、駆動信号(パルス信号)を構成するON部分の割合が減少せしめられ、OFF部分の割合が増加せしめられる。一方、図5(B)に示すように、要求出力(指令、デューティー)が高い時には、駆動信号(パルス信号)を構成するON部分の割合が増加せしめられ、OFF部分の割合が減少せしめられる。
【0116】
それに対し、図5(C)、図5(D)および図6に示すように、PFM制御が採用されている第2の実施形態の交流電力調整器では、IGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)の周波数が、要求出力(指令、デューティー)に応じて変更される。詳細には、図5(C)および図6に示すように、要求出力(指令、デューティー)が低い時には、IGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)の周波数が増加せしめられる。一方、図5(D)および図6に示すように、要求出力(指令、デューティー)が高い時には、IGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)の周波数が減少せしめられる。そのため、第2の実施形態の交流電力調整器によれば、要求出力(指令、デューティー)が低い時における出力Vout(図2(G)参照)の波形の歪みおよびノイズを低減することができる。
【0117】
換言すれば、第2の実施形態の交流電力調整器では、交流電源から正の正弦半波が供給される期間(図2(A)参照)中に、IGBTQ1がOFFしている期間(図2(B)参照)が比較的短い場合と、IGBTQ1がOFFしている期間(図2(B)参照)が比較的長い場合とが生じてくる。
【0118】
交流電源から正の正弦半波が供給される期間(図2(A)参照)中に、IGBTQ1がOFFしている期間(図2(B)参照)が比較的短い場合には、上述したように、IGBTQ1がOFFからONに再び切り換えられた時に高速整流ダイオードFRD4の両端に発生した逆電圧によって、まず最初に、高速整流ダイオード4を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、サイリスタSCR4がOFFされる。
【0119】
一方、交流電源から正の正弦半波が供給される期間(図2(A)参照)中に、IGBTQ1がOFFしている期間(図2(B)参照)が比較的長い場合には、そのIGBTQ1がOFFしている期間中に、サイリスタSCR4のアノード−カソード間を流れる電流が、サイリスタSCR4をONし続けるのに必要な保持電流未満まで減少し、その結果、そのIGBTQ1がOFFしている期間中に、サイリスタSCR4がONからOFFに切り換わる。つまり、IGBTQ1がOFFからONに再び切り換えられる以前に、サイリスタSCR4がONからOFFに既に切り換わっている。
【0120】
同様に、第2の実施形態の交流電力調整器では、交流電源から負の正弦半波が供給される期間(図2(A)参照)中に、IGBTQ2がOFFしている期間(図2(C)参照)が比較的短い場合と、IGBTQ2がOFFしている期間(図2(C)参照)が比較的長い場合とが生じてくる。
【0121】
交流電源から負の正弦半波が供給される期間(図2(A)参照)中に、IGBTQ2がOFFしている期間(図2(C)参照)が比較的短い場合には、上述したように、IGBTQ2がOFFからONに再び切り換えられた時に高速整流ダイオードFRD3の両端に発生した逆電圧によって、まず最初に、高速整流ダイオード3を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、サイリスタSCR3がOFFされる。
【0122】
一方、交流電源から負の正弦半波が供給される期間(図2(A)参照)中に、IGBTQ2がOFFしている期間(図2(C)参照)が比較的長い場合には、そのIGBTQ2がOFFしている期間中に、サイリスタSCR3のアノード−カソード間を流れる電流が、サイリスタSCR3をONし続けるのに必要な保持電流未満まで減少し、その結果、そのIGBTQ2がOFFしている期間中に、サイリスタSCR3がONからOFFに切り換わる。つまり、IGBTQ2がOFFからONに再び切り換えられる以前に、サイリスタSCR3がONからOFFに既に切り換わっている。
【0123】
詳細には、第2の実施形態の交流電力調整器では、図4に示すように、要求出力(指令、デューティー)が入力されると、比較器1の反転端子に入力されている例えば10Vの基準電圧Vrefと比較され、その差分の電圧に応じて、発信機から出力される図6に示すようなスイッチング周波数fsw(つまり、IGBTQ1,Q2に供給される駆動信号(パルス信号)の周波数)、および、パルス幅Pw(つまり、IGBTQ1,Q2がONせしめられる部分の幅)が選定される。次いで、三角波発生装置において、図5に示すような三角波および駆動信号(パルス信号)が発生せしめられる。次いで、三角波発生装置からの信号が、比較器2の反転端子に入力され、比較器2の非反転端子に入力された要求出力(指令、デューティー)との比較が再び行われる。
【0124】
次いで、比較器2からの出力と、図7に示すAC極性判定回路のLine aおよびLine bからの信号とのAND論理がとられ、IGBTQ1,Q2の駆動信号(パルス信号)が出力される。また、Line aの信号波形がそのままQ3の駆動信号として出力され、Line bの信号波形がそのままQ4の駆動信号として出力される。
【0125】
図7はAC極性判定回路の一例を示した図、図8は図4中のQ3,Q4として仮にIGBTが用いられる場合における図7中のAC入力端子に入力されるAC入力波形と、Line aの出力波形と、Line bの出力波形とを示した図である。
【0126】
図7に示すように、AC極性判定回路では、AC+,AC−からの入力電圧を受け、LED1,LED2が各々の正弦半波毎に点灯する。LED1と共にフォトカプラPC1を構成する受光素子がLED1からの光を受光すると、フォトカプラPC1がONし、そのON信号をB1が増幅して、反転した出力波形を図4に示したLine aに出力する。同様に、LED2と共にフォトカプラPC2を構成する受光素子がLED2からの光を受光すると、フォトカプラPC2がONし、そのON信号をB2が増幅して、反転した出力波形を図4に示したLine bに出力する。図4中のQ3,Q4として仮にIGBTが用いられる場合には、図8に示すように、Line aの出力の立ち下がりとLine bの出力の立ち上がりとの間、および、Line bの出力の立ち下がりとLine aの出力の立ち上がりとの間にデッドタイムが設けられることになる。
【0127】
第1の実施形態の交流電力調整器では、図1に示したように、Q3,Q4としてIGBTが用いられているが、第2の実施形態の交流電力調整器では、図3に示したように、これらの代わりにサイリスタSCR3,SCR4が用いられている。そのため、第2の実施形態の交流電力調整器では、図9に示すようなSCR駆動回路が必要になる。図9は図3に示したSCR駆動回路として適用可能なSCR駆動回路の一例を示した図である。
【0128】
図9に示すように、高速整流ダイオードFRD3の両端に順電圧VFが発生すると、比較器において順電圧VFか否かの比較が行われ、次いで、フォトカプラにおいて光信号に変換される。次いで、再び電気信号となった信号と、図4に示した発信器(三角波発生器)とのフリップフロップ信号とがAND論理を経て、MOSFETのゲート信号となり、次いで、パルストランスを介してSBDで整流される。次いで、コンデンサ平滑され、サイリスタSCR3をONするための駆動信号が生成される。次いで、その駆動信号がサイリスタSCR3のゲート端子に入力される。それにより、サイリスタSCR3がONせしめられる。
【0129】
つまり、サイリスタSCR3が用いられている第2の実施形態の交流電力調整器では、図8に示したようなLine a出力波形がサイリスタSCR3に供給されるのではなく、IGBTQ2(図3参照)のON→OFFに伴って、高速整流ダイオードFRD3の両端に順電圧VFが発生する毎に、サイリスタSCR3に駆動信号が供給されることになる。
【0130】
同様に、図9に示すように、高速整流ダイオードFRD4の両端に順電圧VFが発生すると、比較器において順電圧VFか否かの比較が行われ、次いで、フォトカプラにおいて光信号に変換される。次いで、再び電気信号となった信号と、図4に示した発信器(三角波発生器)とのフリップフロップ信号とがAND論理を経て、MOSFETのゲート信号となり、次いで、パルストランスを介してSBDで整流される。次いで、コンデンサ平滑され、サイリスタSCR4をONするための駆動信号が生成される。次いで、その駆動信号がサイリスタSCR4のゲート端子に入力される。それにより、サイリスタSCR4がONせしめられる。
【0131】
つまり、サイリスタSCR4が用いられている第2の実施形態の交流電力調整器では、図8に示したようなLine b出力波形がサイリスタSCR4に供給されるのではなく、IGBTQ1(図3参照)のON→OFFに伴って、高速整流ダイオードFRD4の両端に順電圧VFが発生する毎に、サイリスタSCR4に駆動信号が供給されることになる。
【0132】
更に、第2の実施形態の交流電力調整器では、図3に示すように、直列接続されたダイオードD1およびIGBTQ1と、直列接続されたダイオードD2およびIGBTQ2とを逆並列に接続することにより出力制御用交流スイッチが構成されている。詳細には、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化されたものと、IGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて出力制御用交流スイッチが構成されている。更に詳細には、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化された汎用品と、IGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化された汎用品とを用いて出力制御用交流スイッチが構成されている。
【0133】
そのため、第2の実施形態の交流電力調整器によれば、ダイオードD1とダイオードD2とがモジュール化されていない場合、あるいは、IGBTQ1とIGBTQ2とがモジュール化されていない場合よりも、交流電力調整器全体を小型化することができ、また、モジュールの内部配線に対する外部配線の割合を低減することができ、それにより、外部配線の寄生インダクタンス成分を低減することができる。
【0134】
すなわち、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、出力制御用交流スイッチの一部を構成する2つのIGBTが逆向きに直列接続されている。2つのIGBTを逆向きに直列接続してモジュール化した汎用品は存在しないため、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、2つのIGBTとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、2つのIGBTを外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0135】
また、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、出力制御用交流スイッチの一部を構成する2つのIGBTが離間して配置されている。そのため、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、2つのIGBTとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、出力制御用交流スイッチの残りの部分に対して個々のIGBTをそれぞれ外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0136】
それに対し、第2の実施形態の交流電力調整器では、図3に示すように、IGBTQ1とIGBTQ2とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いて出力制御用交流スイッチの一部が構成されている。そのため、第2の実施形態の交流電力調整器によれば、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)よりも、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる。
【0137】
更に、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、出力制御用交流スイッチの一部を構成する2つのダイオードが逆向きに直列接続されている。2つのダイオードを逆向きに直列接続してモジュール化した汎用品は存在しないため、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、2つのダイオードとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、2つのダイオードを外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0138】
また、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、出力制御用交流スイッチの一部を構成する2つのダイオードが離間して配置されている。そのため、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)の出力制御用交流スイッチでは、2つのダイオードとして、モジュール化された汎用品を用いることができず、出力制御用交流スイッチの残りの部分に対して個々のダイオードをそれぞれ外部配線によって接続しなければならない。その結果、特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)では、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分が大きくなってしまう。
【0139】
それに対し、第2の実施形態の交流電力調整器では、図3に示すように、ダイオードD1とダイオードD2とが直列接続されてモジュール化された汎用品を用いて出力制御用交流スイッチの一部が構成されている。そのため、第3の実施形態の交流電力調整器によれば、特開平7−15960号公報に記載された電源装置(交流電力調整器)および特開2003−18843号公報に記載された交流電圧調整装置(交流電力調整器)よりも、出力制御用交流スイッチのインダクタンス成分を低減することができる。
【0140】
更に、第1の実施形態の交流電力調整器では、図3に示すように、直列接続された高速整流ダイオードFRD3およびサイリスタSCR3と、直列接続された高速整流ダイオードFRD4およびサイリスタSCR4とを逆並列に接続し、その並列回路を負荷に対して並列接続することにより還流用交流スイッチが構成されている。詳細には、高速整流ダイオードFRD3と高速整流ダイオードFRD4とが直列接続されてモジュール化されたものと、サイリスタSCR3とサイリスタSCR4とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて還流用交流スイッチが構成されている。更に詳細には、高速整流ダイオードFRD3と高速整流ダイオードFRD4とが直列接続されてモジュール化された汎用品と、サイリスタSCR3とサイリスタSCR4とが直列接続されてモジュール化された汎用品とを用いて還流用交流スイッチが構成されている。
【0141】
そのため、第2の実施形態の交流電力調整器によれば、高速整流ダイオードFRD3と高速整流ダイオードFRD4とがモジュール化されていない場合、あるいは、サイリスタSCR3とサイリスタSCR4とがモジュール化されていない場合よりも、交流電力調整器全体を小型化することができ、また、モジュールの内部配線に対する外部配線の割合を低減することができ、それにより、外部配線の寄生インダクタンス成分を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の交流電力調整器は、例えば商用の交流電源から入力された交流電圧・電流を0%から100%までの間で無段階に調整し、その調整された交流電圧・電流を例えば電気炉、照明、モータ、電源装置などの負荷に対して出力することが必要とされる場合に適用可能である。
【0143】
例えばφ3000mm対応のランプアニール装置に対して交流電力調整器が適用される場合には、その性能として、例えば最高使用温度:1250℃、面内温度均一性:±2℃、最大昇温レート:250℃/sec、最大降温レート:90℃/sec程度のものが求められる。この加熱源としては、雰囲気加熱ではなく、ハロゲンランプを例えば10〜20の多数のゾーンに配置したクロスランプ構造と呼ばれる構造が採られる。1つのランプアニール装置の中には、そのゾーン数に見合う数の交流電力調整器が所狭しと組み込まれる。
【0144】
つまり、コンパクトであって、低損失であって、装置内での発熱が極めて少なく、急速な熱サイクル運転に耐えることができ、製造コストを低減した本発明の交流電力調整器は、上述したランプアニール装置のような負荷に対して適用されるのに非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】第1の実施形態の交流電力調整器の回路図である。
【図2】図1に示した回路の各部における波形を示した図である。
【図3】第2の実施形態の交流電力調整器の回路図である。
【図4】第2の実施形態の交流電力調整器においてPFM制御を行うための回路を示した図である。
【図5】第1の実施形態の交流電力調整器におけるPWM制御と第2の実施形態における交流電力調整器におけるPFM制御とを比較して示した図である。
【図6】PFM制御における指令とスイッチング周波数fswおよびパルス幅(ON部分の幅)Pwとの関係を示した図である。
【図7】AC極性判定回路の一例を示した図である。
【図8】図4中のQ3,Q4として仮にIGBTが用いられる場合における図7中のAC入力端子に入力されるAC入力波形と、Line aの出力波形と、Line bの出力波形とを示した図である。
【図9】図3に示したSCR駆動回路として適用可能なSCR駆動回路の一例を示した図である。
【図10】従来の出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)を示した図である。
【図11】従来の出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)を示した図である。
【図12】図11に示した従来の出力可変誘導性負荷回路(交流電力調整器)の動作を説明するための主要各部の波形図である。
【図13】従来の交流電圧制御装置(交流電力調整器)を示した図である。
【図14】従来の交流電圧制御装置(交流電力調整器)を示した図である。
【図15】従来の交流スイッチング回路(交流電力調整器)を示した図である。
【図16】図15に示した従来の交流スイッチング回路(交流電力調整器)の各部の出力波形図である。
【図17】従来の交流電力調整装置(交流電力調整器)を示した図である。
【図18】従来の電源装置(交流電力調整器)を示した図である。
【図19】図18に示した従来の電源装置(交流電力調整器)103の各部の出力電圧波形図である。
【図20】従来の交流電圧調整装置(交流電力調整器)を示した図である。
【符号の説明】
【0146】
D1,D2,D3,D4 ダイオード
Q1,Q2,Q3,Q4 IGBT
FWD1,FWD2,FWD3,FWD4 フライホイールダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される交流電源に接続するための入力端子と、負荷に接続するための出力端子と、前記入力端子と前記出力端子との間に配置された出力制御用交流スイッチと、前記負荷に流れた電流を還流させるための還流用交流スイッチとを具備する交流電力調整器において、直列接続されたダイオードD1およびIGBTQ1と、直列接続されたダイオードD2およびIGBTQ2とを逆並列に接続することにより前記出力制御用交流スイッチを構成したことを特徴とする交流電力調整器。
【請求項2】
前記ダイオードD1と前記ダイオードD2とが直列接続されてモジュール化されたものと、前記IGBTQ1と前記IGBTQ2とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて前記出力制御用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項1に記載の交流電力調整器。
【請求項3】
直列接続されたダイオードD3およびIGBTQ3と、直列接続されたダイオードD4およびIGBTQ4とを前記負荷に対して逆並列に接続することにより前記還流用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の交流電力調整器。
【請求項4】
前記ダイオードD3と前記ダイオードD4とが直列接続されてモジュール化されたものと、前記IGBTQ3と前記IGBTQ4とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて前記還流用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項3に記載の交流電力調整器。
【請求項5】
直列接続されたダイオードFRD3およびサイリスタSCR3と、直列接続されたダイオードFRD4およびサイリスタSCR4とを前記負荷に対して逆並列に接続することにより前記還流用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の交流電力調整器。
【請求項6】
前記還流用交流スイッチのターンオン時には、前記ダイオードFRD3の両端に発生した順電圧に基づいて生成された駆動信号を前記サイリスタSCR3のゲート端子に入力することによって、前記負荷からの電流が前記ダイオードFRD3および前記サイリスタSCR3を還流せしめられ、前記還流用交流スイッチのターンオフ時には、前記ダイオードFRD3の両端に発生した逆電圧によって、前記ダイオードFRD3を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、前記サイリスタSCR3にも電流が流れなくなるように、前記ダイオードFRD3と前記サイリスタSCR3とを構成したことを特徴とする請求項5に記載の交流電力調整器。
【請求項7】
前記還流用交流スイッチのターンオン時には、前記ダイオードFRD4の両端に発生した順電圧に基づいて生成された駆動信号を前記サイリスタSCR4のゲート端子に入力することによって、前記負荷からの電流が前記ダイオードFRD4および前記サイリスタSCR4を還流せしめられ、前記還流用交流スイッチのターンオフ時には、前記ダイオードFRD4の両端に発生した逆電圧によって、前記ダイオードFRD4を還流せしめられていた電流が遮断され、それにより、前記サイリスタSCR4にも電流が流れなくなるように、前記ダイオードFRD4と前記サイリスタSCR4とを構成したことを特徴とする請求項5又は6に記載の交流電力調整器。
【請求項8】
要求出力が高い時に前記IGBTQ1および前記IGBTQ2の駆動信号の周波数を低くし、要求出力が低い時に前記IGBTQ1および前記IGBTQ2の駆動信号の周波数を高くすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の交流電力調整器。
【請求項9】
前記ダイオードFRD3と前記ダイオードFRD4とが直列接続されてモジュール化されたものと、前記サイリスタSCR3と前記サイリスタSCR4とが直列接続されてモジュール化されたものとを用いて前記還流用交流スイッチを構成したことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の交流電力調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−333588(P2006−333588A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151734(P2005−151734)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000227928)日本インター株式会社 (67)
【Fターム(参考)】