説明

交直両用電源装置

【課題】同一仕様の出力であっても、一組の受電端子からAC100VとDC−48Vの受電を可能とする交直両用電源装置を提供する。
【解決手段】AC入力用とDC入力用とを共用する一組の入力端子を備え、整流回路1は入力端子から給電された電圧を整流する。昇圧コンバータ2は整流回路にて生成された直流電圧を高い電圧に変換し、絶縁型DC/DCコンバータ3は昇圧された高い電圧を絶縁した直流電圧に変換する。電圧種別判定回路5は給電された電圧が交流か直流かを判定する。制御回路4は、判定結果により昇圧コンバータにおける昇圧と力率改善を制御するための制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一出力仕様におけるAC入力電源とDC入力電源を共用する交直両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器の入力電源は、設置環境に応じて異なっており、AC100VやDC−48Vとなる。そして、通信機器に接続される一般的な電子機器は+5V〜+3.3V等の低電圧直流電源で動作する。このため、機器の設置環境に応じて、AC100Vを+5V〜+3.3Vへ変換する電源装置と、DC−48Vから+5V〜+3.3Vへ変換する電源装置を準備する必要がある。
【0003】
2種類の電源装置を準備することなく、一組の入力端子部で交流入力と直流入力とを共用化する従来技術として、図6に示す装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、常用・非常用点灯装置および防災用照明装置等に用いられ、通常時は商用交流電源でランプを点灯させ、停電時の非常時には蓄電池からの直流電圧給電にてランプを点灯させることを目的としている。そのため、電源入力部31に入力された電圧を入力判別部32にて判別し、判別結果に基づいて負荷33に対する(電源部35およびインバータ部36から成る)点灯部の出力レベルを制御するものであり、商用入力時には負荷33を最大出力で点灯させ、直流電圧入力時には負荷33を調光点灯させることにより、蓄電池等に基づく直流電圧入力時の電力消費を軽減する。
【0004】
2種類の電源装置を準備することなく、AC入力であってもDC入力であっても同一の出力電圧を供給する(電源装置を共用化する)ようにした従来の電源装置の例(例えば、特許文献2参照)を図7に示す。この電源装置は、交流電源41と直流電源57を共用する昇圧型力率改善回路を有するスイッチング交直両用電源装置であって、直流電源57は交流電源41が停電になったときに電力を供給する。交流電源41は全波整流器42を経てリアクトル43の第1の巻線の一端に接続され、直流電源57は第2のスイッチ素子56およびリアクトル43の第2の巻線と直列接続される。リアクトル43の第1の巻線,第1のダイオード46および第1のコンデンサ47は昇圧型力率改善回路を構成する。
【0005】
【特許文献1】特開平10−241868号公報(第2頁−第4頁、図1)
【特許文献2】特開2001−136747号公報(第2頁−第4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1記載の技術は、入力が商用交流電源と直流電圧給電との入力判別回路を備えているが、その判別結果は負荷部の出力レベルを制御することによって、蓄電池等に基づく直流電圧時の電力消費を低減するためのものである。
【0007】
また、特許文献2記載の技術では、交流入力用受電端子と直流入力用受電端子が必要であるので装置が煩雑化する。また、装置を設置する時に入力端子部の誤接続、例えばDC−48V端子に誤ってAC100Vの高電圧を接続することで電源装置の破損や発煙、発火などの問題が発生する危険性がある。
【0008】
本発明の目的は、同一仕様の出力であっても、入力電源種の相違により異なった2種類の電源装置を準備することなく、一つの電源装置で一組の受電端子からAC100VとDC−48Vの受電を可能とすることを目的とした交直両用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の交直両用電源装置は、一組の入力端子から給電された交流入力電圧または直流入力電圧を整流する整流回路と、給電が交流入力電圧か直流入力電圧交流入力かを判別する入力電圧種判定回路と、判別の結果によって決定される制御信号を生成する制御回路と、制御信号により、整流回路で整流された直流電圧よりも高い直流電圧に変換する昇圧コンバータと、該昇圧コンバータで変換された直流電圧を絶縁した直流電圧に変換する絶縁型DC/DCコンバータ回路を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明では、入力端子からAC100Vを受電すると、整流回路によって交流電圧を整流する。例えば、AC100Vの整流電圧は約140Vとなる。次に、昇圧コンバータによって電圧を昇圧後、絶縁型DC/DCコンバータによって電子機器に必要な+5Vや+3.3Vに変換して出力する。一方、入力端子にDC−48Vが給電されると、整流回路にて約+48Vに整流後、昇圧コンバータによって電圧を昇圧し、絶縁型DC/DCコンバータによって電子機器に必要な+5Vや+3.3Vに変換して出力する。また、出力電圧は制御回路4によって制御されており、入力電圧の種類を判別する電圧判定回路からの信号によって決まる。例えば、昇圧コンバータの出力電圧は、DC−48V入力時は約100V、AC100V入力時は約170Vと設定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、一つの電源装置でAC100V入力とDC−48V入力の共用化が可能となる。更に、AC100VとDC−48Vの受電端子の共用化も可能となり小型化ができる。また、受電端子部が1箇所であるため、装置を設置する時に誤接続することはなくなり電源装置の破損や発煙、発火などを防止することが可能であるという効果がある。
【0012】
また、入力電圧種各々に対応してDC/DCコンバータの入力電圧、つまり昇圧コンバータの出力電圧を所定の電圧に切換えことにより、DC/DCコンバータの入力電圧範囲を狭くすることが可能となり安定動作で電力損失の軽減が可能となり高い品質を確保できる。数百Wの電源では力率改善を求められるため、昇圧コンバータは力率改善機能を有しており、高調波電流規制(IEC61000-3-2)への対応も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
[構成の説明]
図1は本発明の交直両用電源装置の構成を示すブロック図である。この電源装置は、整流回路1,昇圧コンバータ2,絶縁型DC/DCコンバータ3,制御回路4および電圧種別判定回路5で構成されている。
【0015】
整流回路1には、AC入力電圧(AC100V)またはDC入力電圧(DC−48V)が択一的に接続される。整流回路1は、AC電圧が入力すると、全波整流・平滑を行ない+140VにDC変換する。一方、DC電圧が入力すると+48Vを出力する。電圧種別判定回路5は、整流回路1の出力電圧の大きさによりAC入力電圧とDC入力電圧の判定を行なう。この入力電圧種判定は初期起動時に行なうだけで足りる。
【0016】
昇圧コンバータ2は、AC入力電圧の場合は+140Vを+170Vに昇圧し、DC入力電圧の場合は+48Vを+100Vに昇圧する。これは、絶縁型DC/DCコンバータ3において、+140V〜+48Vと広範囲の電圧を+5V〜+3.3Vへ変換すると、トランス等の部品サイズが大きくなるのを回避するため、昇圧コンバータ2を経由させたものである。
【0017】
制御回路4は、電圧種別判定回路5においてAC入力電圧の判定がなされると、昇圧コンバータ2に対して力率改善を指示して上記の昇圧を行わせる。昇圧コンバータ2の出力側には、入力AC100Vの高圧部と絶縁するため、絶縁型DC/DCコンバータ3を設け、所望のDC電圧+5V〜+3.3Vを出力している。
【0018】
[動作の説明]
入力端子にAC100Vが給電された場合は整流回路1によって整流する。例えば、整流回路1が全波整流の場合、AC100Vの整流電圧は約140Vとなる。次に、昇圧コンバータ2によって電圧を昇圧後、絶縁型DC/DCコンバータ3によって電子機器に必要な+5Vや+3.3Vに変換して出力する。一方、入力端子にDC−48Vが給電されると、整流回路1にて約+48Vに整流後、昇圧コンバータ2によって電圧を昇圧する。絶縁型DC/DCコンバータ3によって電子機器に必要な+5Vや+3.3Vに変換して出力する。
【0019】
昇圧コンバータ2の出力電圧は制御回路4によって制御されており、入力電圧の種類を判別する電圧判定回路5からの信号によって決まる。例えば、昇圧コンバータ2の出力電圧設定値としては、DC−48V入力時は約48V、AC100V入力時は約170Vとなる。AC100V入力時とDC−48V入力時による昇圧コンバータ2後の出力電圧レベル差を狭くすることで、後段の絶縁型DC/DCコンバータ3での性能負担を軽減している。図2は以上の整流回路1,昇圧コンバータ2および絶縁型DC/DCコンバータ3における電圧の関係を示している。
【実施例1】
【0020】
本発明の一実施例の構成を図3に示す。図3において、ブリッジ整流回路6と平滑コンデンサ7は整流回路1を構成し、コイル8,トランジスタスイッチ9,ダイオード10およびコンデンサ11は昇圧コンバータ2を構成する。トランジスタスイッチ9は、制御回路4からの制御信号によりオン/オフしてコンデンサ11のチャージ時間を調整する。これにより昇圧電圧を定める。また、整流回路1に電流が流れる期間、即ち導通角を制御することにより力率を改善する。
【0021】
力率改善制御IC12,抵抗13,コンデンサ14,ダイオード15および抵抗16は制御回路4を構成する。力率改善制御IC12は、電圧判定回路5からの信号と昇圧コンバータ2の出力によって定まる制御信号をトランジスタスイッチ9のゲートへ出力する。力率改善制御IC12は、当初は抵抗13を介した整流回路1の出力、その後はダイオード15を介した絶縁型DC/DCコンバータ3におけるトランス18の第2の二次巻線電圧により電源の供給を受ける。
【0022】
トランジスタスイッチ17,トランス18、DC/DC制御IC19,ダイオード20と22と23,コンデンサ21,コイル24,出力電圧制御回路25およびコンデンサ26は絶縁型DC/DCコンバータ3を構成する。
【0023】
入力にAC100Vが給電されると、ブリッジ整流回路6と平滑コンデンサ7によって全波整流される。例えば、図3によるとAC100Vの整流電圧は約140Vとなる。次に、昇圧コンバータ2により昇圧される。
【0024】
昇圧コンバータ2はトランジスタスイッチ9がスイッチング動作をすることで、電圧を上昇させる。例えば、図7のようにAC100V(DC140V相当)入力時は約170V(DC)まで昇圧させる。入力電力が数百ワットになるような昇圧コンバータの構成には力率改善制御IC12を伴い、入力電圧と同相の電流にすることができる。次に、絶縁型DC/DCコンバータ3によって電子機器に必要な+5Vや+3.3Vに変換して出力する。
【0025】
一方、入力にDC−48Vが給電されると、ブリッジ整流回路6と平滑コンデンサ7によって約+48Vに整流後、昇圧コンバータ2によって約100V(DC)に昇圧後、絶縁型DC/DCコンバータ3によって電子機器に必要な+5Vや+3.3Vに変換して出力する。
【0026】
昇圧コンバータ2では、整流された電圧レベルに応じ、電圧種別判定回路5によって調整している。例えば、図4に示すように、昇圧コンバータ2の入力電圧が60V未満の場合はDC入力されたとみなし、昇圧コンバータ2の出力レベルは100Vになる。また、昇圧コンバータ2の入力電圧が60V以上の場合は、AC入力されたとみなし、昇圧コンバータ2の出力レベルを170Vになる。
【0027】
絶縁型DC/DCコンバータ3では、図5に示すように、昇圧コンバータ2で昇圧された電圧を+5V(または+3.3V)一定レベルで出力する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の交直両用電源装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の交直両用電源装置におけるレベルダイヤグラムを示す図
【図3】本発明の交直両用電源装置の一実施例を示す図
【図4】本発明の交直両用電源装置における昇圧コンバータの入出力電圧特性図
【図5】本発明の交直両用電源装置における絶縁型DC/DCコンバータの入出力電圧特性図
【図6】従来の交直両用電源装置の一例を示す図
【図7】従来の交直両用電源装置の他の例を示す図
【符号の説明】
【0029】
1 整流回路
2 昇圧コンバータ
3 絶縁型DC/DCコンバータ
4 制御回路
5 電圧種別判定回路
6 ブリッジ整流回路
7 平滑コンデンサ
8,24 コイル
9,17 トランジスタスイッチ
10,15 ダイオード
11,14 コンデンサ
12 力率改善制御IC
13,16 抵抗
14,21,26 コンデンサ
20,22,23 ダイオード
18 トランス
19 DC/DC制御IC
25 出力電圧制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の入力端子から給電された交流入力電圧または直流入力電圧を整流する整流回路と、
前記給電が交流入力電圧か直流入力電圧交流入力かを判定する入力電圧種判定回路と、
前記判定の結果によって決定される制御信号を生成する制御回路と、
前記制御信号により、前記整流回路で整流された直流電圧よりも高い直流電圧に変換する力率改善型の昇圧コンバータと、
該昇圧コンバータで変換された直流電圧を絶縁した直流電圧に変換する絶縁型DC/DCコンバータ回路を備えたことを特徴とする交直両用電源装置。
【請求項2】
前記昇圧コンバータは、前記整流回路の出力に一端が接続されたコイルと、
該コイルの他端がアノードに接続されたダイオードと、
一端が該ダイオードのカソードおよび前記絶縁型DC/DCコンバータ回路の入力に接続されたコンデンサと、
前記ダイオードのアノードと前記コンデンサの他端の間に接続されたトランジスタスイッチで構成され、
前記トランジスタスイッチは、前記制御信号によりオン/オフして前記コンデンサのチャージ時間を調整することにより昇圧電圧を定め、前記整流回路に電流が流れる期間を制御することにより力率を改善することを特徴とする請求項2記載の交直両用電源装置。
【請求項3】
前記判定は、前記整流回路の出力により初期起動時にのみ行なうことを特徴とする請求項3記載の交直両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−284646(P2009−284646A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133724(P2008−133724)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】