説明

交通システムおよび交通信号制御機

【課題】信号機の表示に関する信号情報を提供する交通システムにおいて、信号制御プランを作成するタイミングを変更する。
【解決手段】交通信号制御機1Aは、サイクル毎に信号制御プランを決定し、当該信号制御プランに基づいて、信号灯器2Aaの現在の信号灯色やその継続時間、及び将来表示する予定の信号灯色やその継続時間等に関する信号情報を作成し、通信領域Qに送信している。道路Rを走行する車両Cの車載機6は、前記通信領域Qにおいて前記信号情報を受信し、前記信号情報から停止線到達時の信号灯色を予測する。そして、予測結果に応じて、車両を制動する。この場合、交通信号制御機1Aは、信号制御プランの作成時点を自由に切り替え可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機に対して信号灯器の表示に関する信号情報を提供する交通システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
交通信号制御においては、1サイクル毎に、各信号灯色を点灯等するための信号制御プランを作成し、当該信号制御プランに従って信号灯器を制御するテーブル制御方式が普及している。
1サイクルとは信号機の表示が一巡することを意味し、サイクル長とは1サイクルの所要時間を指す。交差点に設置されている信号機の場合は、主道路側に対する青信号表示の開始を1サイクルの開始時点とし、信号の表示が一巡して、次に主道路側に対する青信号表示を開始するまでの期間を1サイクルとすることが多い。また、サイクル長は、概ね90秒〜150秒程度に設定されていることが多く、交通状況や時間帯等に応じて随時変更される。
【0003】
テーブル制御方式では、通常、1サイクルの開始直前の時点において、交通信号制御機が当該1サイクルの信号制御プランを作成し、当該信号制御プランに従って、信号灯器の表示が行われる。
この場合、交通信号制御機は、交通管制センターに設置された信号制御装置等の中央装置から送られる信号制御指令情報に基づいて信号制御プランを作成する。中央装置は、随時、前記信号制御指令情報を送信することができ、交通信号制御機は、信号制御プラン作成時点(1サイクルの開始直前の時点)において、中央装置から最後に受信した信号制御指令情報を採用する。なお、信号制御プランは、信号制御指令情報のみではなく、交通信号制御機が予め記憶している各種パラメータの値も加味して作成される。
【0004】
また、近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、路上等に設置されたインフラ装置から情報を受信し、当該情報を活用することで、車両の安全性を向上させるシステムが検討されている。
そのようなシステムとして、例えば、信号機の作動情報を無線で車両に送信し、前記作動情報に含まれる青信号の残表示時間に応じて車両がブレーキ制御を行う安全運転支援システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テーブル制御方式では、1サイクルの開始直前の時点において、交通信号制御機が当該1サイクルの信号制御プランを作成するため、1サイクルの開始時点ではサイクル長に相当する時間分だけ未来の時点までの信号機の表示予定は決められているが、それ以降については未定である。
つまり、前記安全運転支援システムにおける信号機の作動情報(以下、信号情報という。)では、1サイクル分については確定情報として、例えば「青:65秒、黄:5秒、赤:50秒」などとすることができるが、当該1サイクル終了以降の信号機の表示予定については未確定となってしまう。
【0007】
この場合、1サイクルの開始時点では、当該1サイクルに相当する時間経過後の未来の時点までの表示予定(概ね90秒〜150秒程度未来までの情報)を車両に提供することができるが、前記1サイクルの終了間際の時点では、確定した情報はほとんどなく、車両に対して有用な信号情報を提供することができない。
【0008】
例えば、主道路の青信号開始時点から開始する1サイクルの場合、当該1サイクルの終了間際(例えば終了3秒前)に主道路上を交差点に向かって進行する車両に対して提供される信号情報では、「現在表示されている灯色が赤信号であり、その継続時間は3秒である」という部分のみが確定しており、その次に表示される青信号の継続時間については未確定の状態である。
そのため、例えば約1分後に交差点に到着すると予想される車両が前記信号情報を受信した場合、青信号の表示時間が不明なため、当該交差点を安全に通過しうるのか、停止しなければならないのかを判断することができない、という問題がある。
【0009】
一方、同様に主道路の青信号開始時点から開始する1サイクルの場合、当該1サイクルの終了間際(例えば終了3秒前)に従道路上を交差点に向かって進行する車両に対しては、現在表示されている赤信号の継続時間すら提供することができない。
というのも、従道路側では、1サイクルの最後に表示する信号灯色とその次のサイクルの先頭で表示する信号灯色の双方が赤信号であるから、次のサイクルの表示予定が不明である以上、この赤信号の継続時間すら確定させることができないためである。
そのため、従道路上を交差点に向かって進行する車両についても、交差点に到着する時点における信号灯色の表示を予想することができないという問題がある。
【0010】
このような問題を解消するため、本発明者は、1サイクルの直前の直前1サイクルの開始前の時点や直前1サイクルを概ね半分程度実行した時点で、その1サイクルの信号制御プランを予め作成しておく方式を発明した(特願2007−110147、および、特願2007−119074)。
【0011】
前記の方式では、1サイクルの信号制御プランを早い段階で作成するため、従来の方式に比べてより多くの信号灯色の継続時間を確定させることができ、1サイクルの終了間際の時点であっても、一定程度未来の時点までの信号情報を確定させることが可能となった。ただし、1サイクルが開始されるよりも所定期間前の時点で信号制御プランを先に作成してしまうと、信号制御のリアルタイム性はその分だけ低下する。
このように、信号情報の確定性と信号制御のリアルタイム性はトレードオフの関係に立つため、双方の便益を考慮した上で、信号制御プランを作成する時点を随時変更可能としておくことがさらに望ましい。
そこで、信号制御プラン作成時点を変更することが可能な交通システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の発明にかかる交通システムは、1サイクル分の信号制御プランを、当該1サイクルの直前である直前1サイクルの開始時点から前記直前1サイクルの終了時点までの間の期間に当たるプラン作成期間内のいずれかの時点で作成する信号制御プラン作成手段と、作成した前記信号制御プランに従って、前記1サイクルにおいて信号灯器の各信号灯色を切り替える信号灯器制御手段と、作成された信号制御プランに基づいて、現在及び将来の前記信号灯器の表示に関する信号情報を作成する信号情報作成手段とを有する交通信号制御機と、前記信号情報を道路上の所定領域に送信する送信手段とを含み、前記信号制御プラン作成手段は、プラン作成期間の開始直前の時点において、1サイクルの信号制御プランをプラン作成期間内のどの時点で作成するかについて決定することを特徴とする(請求項1)。
【0013】
この発明では、1サイクルの信号制御プランを作成する期間に所定の幅を持たせた上で、そのプラン作成期間が開始する時点で、当該プラン作成期間内のどの時点でプランを作成するかについて予め決定するようにした。
これにより、例えば、交通システムが交通需要の増加や交通渋滞に対応して信号制御のリアルタイム性を重視すべき局面と、交通事故防止のために信号情報の確定性を重視すべき局面が交互に訪れるような場合に、随時信号制御プランの作成時点を随時切り替えて動作させることができるようになり、大変有用である。
【0014】
この場合、複数の候補の中から信号制御プラン作成時点を選択して決定するように前記信号制御プラン作成手段を構成しておき、その複数の候補に、前記プラン作成期間の開始時点、該期間の略中間時点、および、該期間の終了時点の少なくとも3つの時点を含ませておくことが好ましい(請求項2)。
【0015】
前記プラン作成期間の開始時点で信号制御プランを作成する方法であれば信号情報の確定性が高まり交通事故防止に資するし、該期間の終了時点であれば信号制御のリアルタイム性が高まり交通流の円滑化に資するし、該期間の略中間時点であれば、その双方の利害を調整することができる。すなわち、信号制御プラン作成時点を少なくともこれら3つの候補を含む複数の候補の中から選択するようにしておけば、交通事故防止と交通流円滑化との利害得失に応じて、適切にシステムを切り替えることが可能となる。
【0016】
また本発明の交通システムは、前記信号制御プランの作成に用いる信号制御指令情報を作成する信号制御指令作成手段と前記信号制御指令情報を前記交通信号制御機に対して送信する指令送信手段とを有する信号制御装置をさらに備えていても良く、その場合、その信号制御装置が前記交通信号制御機に対してプラン作成期間内のどの時点で信号制御プランを作成するかについての指示を与え、前記交通信号制御機はその指示に応じて信号制御プラン作成時点を決定することが好ましい(請求項3)。
さらに、前記交通信号制御機の設置地点周辺の交通状況を取得する交通状況取得手段を備えて、その交通状況に応じて前記プラン作成時点指示手段が指示を与えるようにすると良い(請求項4)。
【0017】
交通システムでは、複数の交通信号制御機を系統的に制御する方が交通流の円滑化の点で有利であるから、信号制御装置が交通信号制御機を制御するようにすることで、より一層交通状況に即した信号制御を実現することが可能になる。
この場合、ミクロ的かつマクロ的な交通状況を集中的に収集しうる信号制御装置が、信号制御プラン作成時点に関する指示についても一元的に管理して与える方が良い。
というのも、例えば交通信号制御機が個々に判断した場合、その判断にバラツキがあれば、ある交差点の交通信号制御機が交通流円滑化を優先する決定をしたとしても、その近傍の交通信号制御機が交通流円滑化を軽視する決定をしてしまった場合、交通流円滑化の効果が半減してしまうためである。
そして、与えられる指示は、例えば時間帯などに応じて切り替える方法などを用いることもできるが、好ましくは、交通状況に応じて切り替えることが望ましい。交通事故や交通渋滞の発生しやすい時間帯が固定的な地域であれば時間帯に応じたシステムの切り替えも有効であるが、多くの場合、周辺で発生する不定期のイベントや天候などに応じて変動するから、交通状況に応じてその都度適切な運用方法を決定した上で、指示を与えることが望ましい。
【0018】
この場合、取得する交通状況は、例えば交差点への流入交通量や渋滞長などでも良いが、車両走行速度を取得した上で、その車両走行速度に応じて前記プラン作成時点指示手段が指示を与えるようにすることが好ましい(請求項5)。
車両走行速度は、交通事故の発生確率及び交通流の円滑度合いの双方を最も直接的に示す指標だからである。
【0019】
また、指示を与えるタイミングをサイクル毎とした場合には、前回指示を与えた時の車両走行速度と比較して車両走行速度が向上している場合には、信号制御プラン作成時点を前回の指示と比較してより早い時期とするような指示を与える方が良い(請求項6)。
走行速度の向上に伴って、車両が信号機に接近する接近速度も向上するから、信号灯色の切り替わり時における交通事故の発生確率が高まると考えられるからであり、信号情報の確定性を高める目的で信号制御プラン作成時点を前倒しすることが、交通事故の防止に資するためである。
【0020】
なお、前記交通信号制御機は、前記信号制御プラン作成手段が信号制御プランを作成する時点に関する通知情報を作成し前記信号制御装置に通知する通知手段をさらに備えることが好ましく(請求項7)、前記信号制御装置は、前記通知情報に基づいて、前記信号制御指令情報の送信時点を決定すると良い(請求項8)。
【0021】
交通信号制御機が信号制御プラン作成時点に関する通知情報を前記信号制御装置に通知することで、信号制御装置自身の与えた指示に従って交通信号制御機が正しく信号制御プラン作成時点を決定したかどうかを確認することができると共に、その通知に応じて、交通信号制御機が信号制御プランを作成するタイミングを見計らって、信号制御装置から信号制御指令情報を送信するようにすれば、信号制御のリアルタイム性が高くなるためである。
【0022】
この場合、前記信号制御装置は、前記信号制御指令情報を用いて作成された信号制御プランに従って実際に前記信号灯色が制御される未来の時点における交通状況を予測し、予測した前記交通状況に応じた信号制御指令情報を作成するようにすると、なお一層良い(請求項9)。
というのも、本発明によれば、信号制御プランをサイクル開始時点よりも所定時間前に予め決めてしまうケースがあるため、送付する信号制御指令情報は、現時点での実績交通状況ではなく、実際に当該信号制御指令情報を採用して制御が行われるサイクルの開始時点における予測交通状況に基づいて作成しておいた方が、より実際の状況に即した信号制御を実施できるためである。
【0023】
なお、第一の発明にかかる交通システムに用いられる交通信号制御機が有用であることは言うまでもない(請求項10)。
【0024】
また、第二の発明にかかる交通信号制御機は、1サイクル分の信号制御プランを、当該1サイクルの直前の直前1サイクルの開始直前時点から前記直前1サイクルの終了時点までの間のプラン作成期間内のいずれかの時点で作成する信号制御プラン作成手段と、作成した前記信号制御プランに従って、前記1サイクルにおいて信号灯器の各信号灯色を切り替える信号灯器制御手段と、作成された信号制御プランに基づいて、現在及び将来の前記信号灯器の表示に関する信号情報を作成する信号情報作成手段と、前記信号情報を外部に出力する出力手段と、交通状況を取得する交通状況取得手段を有し、前記信号制御プラン作成手段は、プラン作成期間の開始直前の時点において、取得した前記交通状況に応じて、1サイクルの信号制御プランをプラン作成期間内のどの時点で作成するかについて決定するように構成されている(請求項11)。
【0025】
第二の発明では、交通信号制御機が交通状況取得手段を備えるようにしたため、1台の交通信号制御機のみによって、第一の交通システムと同様に、交通状況に応じて適切に信号制御プラン作成時点を決定できるようになる。
【0026】
この場合、予め定められた複数の候補の中から信号制御プラン作成時点を選択して決定するように前記信号制御プラン作成手段を構成し、前記複数の候補に、前記プラン作成期間の開始時点、および、該期間の終了時点の少なくとも2つの時点を含ませるようにすると良い(請求項12)。
【0027】
前記プラン作成期間の開始時点で信号制御プランを作成する方法であれば信号情報の確定性が高まり交通事故防止に資するし、該期間の終了時点であれば信号制御のリアルタイム性が高まり交通流の円滑化に資する。すなわち、信号制御プラン作成時点を少なくともこれら2つの候補を含む複数の候補の中から選択するようにしておけば、交通事故防止と交通流円滑化との利害得失に応じて、適切にシステムを切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の交通システム及び交通信号制御機によれば、時間帯や交通状況等に応じて、自在に信号制御プランの作成時点を切り替えることができるようになり、信号制御のリアルタイム性と信号情報の確定性の双方の利益に鑑みた交通信号制御を実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る交通システムの機器配置の概要を示す模式図であり、交通信号制御機1A、信号制御装置5、車両C、及び車両Cに搭載された車載機6を含むものである。また、図3は交通信号制御機1Aの機能ブロックを示すブロック図である。
【0030】
〔システムの全体構成〕
交差点Aに接続する道路Rには、交差点Aの手前に停止線Pが描かれている。
交差点Aには交通信号制御機1Aが設置されており、信号灯器2Aaを含む信号灯器の各信号灯色を点灯、消灯、及び点滅させて、交差点Aに向かって進行する1又は複数の車両(図中の車両Cを含む)に対して通行権の有無を表示する。
【0031】
交通信号制御機1Aには車両に対して無線で通信データを送信するための送信機7(図3)が内蔵されており、当該送信機に接続された通信アンテナ1Aaから道路Rに向けて通信データが送信される。道路R上を走行する車両Cは、通信領域Q(図1において斜線で示す範囲)において、通信アンテナ1Aaを介して送信される前記通信データを受信することができる。
なお、交差点Aに接続する道路R以外の道路についても、同様の構成により、当該道路を走行する車両は交通信号制御機1Aの通信データを受信することができる。
【0032】
通信領域Qに送信される前記通信データには、交通信号制御機1Aが制御する信号灯器2Aaの表示灯色やその継続秒数の予定に関する信号情報が含まれる。
ここにいう信号情報には、例えば、現在表示中の青信号の継続期間や、その後に表示する黄信号、右折矢や赤信号等の表示の順序やその継続予定期間等が格納される。なお、当該信号情報には、1サイクル分よりも多くの信号機の表示予定の情報が含まれている。また、道路R上を交差点Aに向かって進行する車両に対して青信号の表示を開始する時点を、サイクルの開始時点とする。
そして、前記通信データには、道路Rの車線数や勾配といった道路の形状等に関する道路形状情報や道路Rの路面状態を通知する路面状態情報等が含まれている。
【0033】
なお、前記送信機7は交通信号制御機1Aに内蔵しなくても良く、例えば、送信機7を独立した路上装置(例えば、光ビーコンやDSRC路上機等)として別途道路R上等に設置して用いても良い。
この場合、交通信号制御機1Aは、作成した信号情報等を、前記路上装置に対して別途通信回線等を通じて送信すれば良い。
また、前記信号情報等はどのような形式であっても良く、例えば信号情報と道路形状情報をあわせて1つの情報としても良いし、逆に信号情報を2つ以上の複数の情報としても良い。また、送信機は送信するデータの種類毎に用意しても良く、信号情報と道路形状情報が異なる送信機から送信されていても良い。
【0034】
一方、交通管制センターには信号制御装置5が設置され、ルータ4や通信回線を通じて、交通信号制御機1Aとの間で情報を交換する。
交通信号制御機1Aは、信号制御装置5からの信号制御指令情報に基づいて信号制御プランを作成し、作成した前記信号制御プランに基づいて、信号灯器2Aa等の各信号灯色を点灯等する機能を有する。
ここにいう信号制御指令情報には、例えば主道路と従道路のそれぞれに対して割り当てるべき青信号の時間又はその割合に関する情報、サイクル長、地点感応制御(例えば、右折感応制御、バス感応制御やジレンマ感応制御等)を実施してよいか否かに関する情報等が格納される。
【0035】
そして、道路Rを走行する車両Cは、前記信号情報等を受信して安全運転支援動作を行う機能を有する。
ここにいう安全運転支援動作とは、前記信号情報や道路形状情報等に基づいて、車両Cが停止線Pを通過する時点における信号機の表示状態を予測した上で、例えば前記時点で赤信号になっていると予測される場合には、停止線Pの手前に車両を停止させるように自動的にブレーキを制御したり、ドライバに対して停止を促すような警告を発したりすることをいう。
なお、道路Rを走行する全ての車両が前記安全運転支援動作の機能を有する必要はなく、また、前記機能を有する車両であっても当該機能を停止していても良い。
【0036】
〔信号情報の内容〕
図2に前記信号情報の一例を示す。
(a)は信号情報の基本構造の一例であり、ヘッダ部、データ部、及びフッタ部によって構成されることを示す。
(b)は情報の詳細を示す一例である。
【0037】
ヘッダ部には、信号情報のデータサイズや、交通信号制御機1Aが車両に対して情報提供する対象となる灯色数(08)が格納されており、後続の領域に各表示灯色の表示予定秒数が、前記灯色数分格納されている。
そして、フッタ部にはCRCやSUM値等が格納される。
【0038】
また、データ部には、ヘッダ部に格納された前記灯色数分の灯色の表示予定秒数が格納される。この例では、現在表示している信号灯色は青信号(コード「01」)で、その表示予定秒数は22秒(16進数で「16」)であり、青信号の次に表示するのは黄信号(コード「02」)で、その表示予定秒数は8秒(16進数で「08」)であり、黄信号の次に表示するのは右折矢(コード「13」)で、その表示予定秒数は10秒(16進数で「0A」)であり、右折矢の次に表示するのは赤信号(コード「03」)で、その表示予定秒数は64秒(16進数で「40」)であることを示している。
なお、表示予定秒数は、100msや10ms単位で表現しても良い。また、表示予定秒数が不明の場合には、秒数のところに秒数が不明であることを示す「FF」などを格納すれば良い。
【0039】
本発明の信号情報に1サイクル分よりも多くの表示予定を格納する場合、通常は、主道路側に対して送信される信号情報の前記灯色数のフィールドには、1サイクル実行する間に表示される信号灯色数よりも大きな値が設定される。また、従道路側に対して送信される信号情報では、サイクル開始時とサイクル終了時に表示する信号灯色(赤信号)が同じであるため、1サイクル実行する間に表示される信号灯色数と同じかそれよりも大きな値が設定される。
【0040】
なお、交通信号制御では、交通量の少ない夜中の時点などにおいて、閃光表示(主道路側に黄点滅信号、従道路側に赤点滅信号を表示)を行うことがあるため、灯色数が常に同じになるとは限らない。
また、信号情報には2サイクル分の情報やそれ以上の情報を格納しても良いし、ちょうど1サイクル分の情報としていても良い。また、信号情報のうちその一部の内容が未確定とされている場合があっても良い。
【0041】
〔交通信号制御機の基本的動作〕
以下、交通信号制御機1Aの基本的動作を図3〜図5を用いて説明する。
【0042】
交通信号制御機1Aは、通信回線やルータ等を通じて信号制御装置5と情報をやりとりしており、中央装置情報受信手段131は、信号制御装置5の送信する信号制御指令情報を受け取る。
【0043】
交通信号制御機1Aの信号制御プラン作成手段101は、従来の交通信号制御機のように、1サイクル(以下、次サイクルという。)の開始直前に次サイクルの信号制御プランを作成するのではなく、次サイクルの1つ前のサイクル(現在実行されているサイクルであり、以下、当サイクルという。)の開始直前の時点から当サイクルの終了時点まで(以下、プラン作成期間という。)の間のいずれかの時点で次サイクルの信号制御プランを作成する。
【0044】
前記次サイクルの信号制御プランを前記プラン作成期間内のどの時点で作成するか、については、当該プラン作成期間の開始時において決定する。すなわち、次サイクルの信号制御プランの作成時点をプラン作成期間の開始時点で予め決定しておいて、当該作成時点となったらその時点までに到着している最後の信号制御指令情報に基づいて次サイクルの信号制御プランを決定する。
つまり、1サイクルの信号制御プランを作成するプラン作成時点はそのサイクルよりも1つ前のサイクルが開始される前に決定され、その前記プラン作成時点がやってきたら信号制御プランを作成する。
【0045】
図4は、前記信号制御プランの作成タイミングの決定の手順などを示す図である。
なお、当サイクルよりも1つ前のサイクルを前サイクルと呼ぶ。
ここでは、前サイクルの終了間際の時点から当サイクルの終了間際の時点までを次サイクルのプラン作成期間と定義する。この場合、このプラン作成期間は、次サイクル開始時点までの期間であればどのように設定していても良いが、おおむねその期間の長さは、当サイクルの実行期間と同程度かこれよりも少し長い程度が好ましく、期間の終期は次サイクルの開始直前が好ましい。
【0046】
次サイクルのプラン作成期間が開始する時点において、まず、交通信号制御機1Aのプラン作成時点決定手段141は、次サイクルのプラン作成時点(T1)を決定する(図4の(1))。
この場合、T1の決定に当たっては、信号制御装置5などの中央装置からの指示があればその指示に従って決定しても良いし、交通信号制御機1A自身が交通状況や予め記憶部に保持する定数等に基づいて決定しても良い。また、単純に時間帯に応じて切り替えるようにしても良い。
この際、決定されたプラン作成時点(T1)はプラン作成時点通知手段151によって、信号制御装置5に通知される。なお、この際、同じ情報を隣接する他の交通信号制御機などに対して通知しても良い。
また、プラン作成時点通知手段151は、プラン作成時点(T1)が近づいた頃(例えばT1の数秒前など)に、信号制御プランを作成するタイミングが近づいた旨を示す情報(信号制御指令情報の送信を促す旨の情報)を送るように構成されていても良い。通常、信号制御装置5は複数の交通信号制御機を同時に制御しているから、信号制御装置5に自律的に交通信号制御機ごとの信号制御指令情報の適切な送信タイミングを把握させようとすると、信号制御装置5の機能を複雑化させることになるが、信号制御指令情報を送信すべきタイミングを交通信号制御機1A側から自発的に通知してやることで、信号制御装置5は、交通信号制御機ごとの信号制御指令情報の適切な送信時点を、簡易かつ的確に把握できるようになり大変有効である。
【0047】
次に、前サイクルや当サイクルを実行している間に、前記プラン作成時点(T1)が訪れたら、その時点で信号制御装置5から最後に受信した信号制御指令情報に基づいて次サイクルの信号制御プランを作成する(図4の(2))。作成された信号制御プランは、次信号制御プランテーブル103に格納される(図5の(b))。なお、この場合、現信号制御プランテーブル102には、現在実行中の当サイクルの信号制御プランが既に格納された状態となっている(図5の(a))。
そして、当サイクルが終了したら、次信号制御プランテーブル103の内容を現信号制御プランテーブル102にコピーした上で、信号灯器制御手段111がその現信号制御プランテーブル102に格納された次サイクルの信号制御プランにおける状態1乃至7の順番及び継続時間で信号灯器2Aa等を制御し、次サイクルの各信号灯色の点灯や消灯等を開始する(図4の(3))。
【0048】
このように、サイクル毎に、当該サイクルの信号制御プランの作成時点を決定できるようにしたため、従来のように次サイクルの開始直前の時点で次サイクルの信号制御プランを作成することもできるし、当サイクルの開始時点あるいは当サイクルの実行中の任意の時点で次サイクルの信号制御プランを作成することもできるようになった。
この方法であれば、プラン作成時点をサイクル毎に切り替えられるため、交通量が多く信号制御のリアルタイム性を重視すべき状況になった場合にはプラン作成期間の後半や終了間際にプラン作成時点を設定し、交通量が少なく車両の平均走行速度が向上する状況になった場合にはプラン作成期間の前半にプラン作成時点を設定する、といった柔軟で高度なシステム運用を実現することが可能となった。
【0049】
なお、次サイクルのプラン作成期間は、例えば、当サイクルのサイクル開始から終了までとしても良いし、当サイクルのサイクル開始前10秒の時点から終了までなどとしても良い。また、当サイクルのサイクル開始後10秒の時点から終了までの期間や、当サイクルの略後半サイクル分の期間などのように、1サイクル未満の長さとしても良い。
【0050】
〔交通信号制御機による信号制御装置への通知〕
前述の通り、交通信号制御機1Aのプラン作成時点通知手段151は、信号制御装置5等に対してプラン作成時点についての情報を送信する。この場合、信号制御プランを作成するタイミングが近づいた頃に、信号制御装置5等に対して信号制御指令情報の送信を促す情報を送信するようにしても良い。
【0051】
なお、例えば次サイクルの信号制御プランを作成する時点を通知するに当たっては、その通知時点で既に確定している当サイクルの信号制御プランに関する情報を同時に通知することが好ましい。
けだし、間もなく決定される次サイクルの信号制御プランに従って実際に信号灯器を制御するのは、現在実行している当サイクルの終了後であるから、当サイクルの制御の内容等が分かっていれば、信号制御装置5が、次サイクルの開始時点における交通状況をより一層正確に予測することができるようになり、その正確な予測に応じて信号制御指令情報を作成することで、より一層実際の交通状況に応じた適切な交通信号制御を行うことができるようになるためである。
なお、既に確定している当サイクルの信号制御プランに関する情報は、その信号制御プランを作成した時点で逐次送信するようにしても良く、必ずしも前記作成タイミングの通知と同時でなくても良い。
【0052】
〔交通信号制御機による信号情報の作成〕
また、信号情報作成手段121は、所定の周期毎(例えば1秒毎)に、現信号制御プランテーブル102及び次信号制御プランテーブル103に基づいて1サイクル分よりも長い期間の信号情報を作成する。そして、作成された前記信号情報は、送信機7を通じて通信領域Qに対して送信される。
この場合、信号情報に含まれる「現在表示中の信号灯色(1)の表示予定秒数」は、時間の経過とともにその秒数が減じられていき、0秒となった時点で、現在表示中の信号灯色は次の信号灯色に置き換えられる。
【0053】
なお、作成される前記信号情報は、2サイクル分の情報としても良いし、2サイクル分よりも多くの情報を含めていても良い。例えば、次サイクルの信号制御プランを当サイクルの開始直後や、当サイクルの開始以前の時点で作成していた場合であれば、2サイクル分以上の信号灯色の継続期間を確定することができるため、より遠くの未来の時点までの情報を車両側に提供しても良い。
また、提供する信号情報については、データ量や路車間通信の帯域などを考慮して地点毎にカスタマイズすることもできる。例えば、サイクル長が十分に長く設定されているような場合には、1サイクル分の情報に加えて、あと1つか2つ程度の信号灯色の継続時間を提供するだけでも、十分遠くの未来までの情報とすることができる。このように、信号情報のデータ量を必要限度にとどめることで、路車間通信の情報量を減らし、車両側へのデータ到達の確実性を向上させたり、通信帯域を効率よく使用したりすることが可能となる。
【0054】
なお、交通信号制御機1Aは、信号制御装置5から信号制御指令情報によらず交通信号制御機1Aが単独で信号制御プランを作成するように指示された場合や、通信回線が切断されて信号制御装置5との通信ができない状態の場合には、交通信号制御機1Aが自身の記憶装置等に記憶する制御パラメータ等のみに基づいて信号制御プランを作成するように構成されていても良い。
【0055】
〔信号制御装置の動作〕
次に、信号制御装置5の動作を説明する。
図6は、信号制御装置5の機能ブロックの概略図である。
信号制御装置5は、交通信号制御機1A及び他の交通信号制御機(図示せず)を含む複数の交通信号制御機との間で、送信手段501及び受信手段511により、通信回線を通じて情報を送受信している。
【0056】
交通状況取得手段531は、道路上に設置された1又は複数の車両感知器(図示せず)から送信されてくる感知器情報を収集し、交通情報データベース532に蓄積する。そして、これらの感知器情報に基づいて車両感知器の設置された道路やその周辺における交通状況を把握する。この場合、交通状況の把握は例えば5分毎や信号機のサイクル時間毎等の周期で行われる。前記交通状況の把握に当たっては、各道路における交通量、占有時間、平均走行速度、車群の待ち行列長等の指標が用いられる。
例えば、ある交差点では主道路側と従道路側の交通量の比率が大幅に変動したことや、別の交差点では流入交通量が交差点の飽和交通流率を上回り飽和状態に達していること等の状況を把握する。
【0057】
次に、プラン作成時点指示手段551は、前記交通状況や時間帯等に基づいて、各交差点の信号制御プラン作成時点についての指示を各交通信号制御機に対して与える。
例えば、交通状況が混雑であったために、従来方式により次サイクルの信号制御プランを次サイクルの開始直前の時点で作成するように指示していた場合、交通状況が閑散な状態へと移行したのであれば、プラン作成時点を当サイクルの直前や当サイクルの略半分を実行した時点などに変更するように指示する。このようにすることで信号情報の確定性が高まり、交通事故の防止に資する信号制御を実行することが可能となる。
【0058】
この場合、前記指示の方法としては、例えば、プラン作成期間が当サイクルの期間と一致しているような場合には、当サイクル開始後の経過時間(例えば30秒など)で指定しても良いし、当サイクルの階梯番号(例えば合計10階梯で構成されるサイクルであれば、第6階梯など)や現示(例えば3現示で構成されるサイクルであれば、第2現示など)などで指定しても良い。指示を受け取った交通信号制御機は、指定された階梯番号や現示の開始時点や終了時点又はその階梯や現示が実行されている任意の時点を、プラン作成時点として決定すれば良い。
また、例えば、プラン作成期間の開始時点K1、プラン作成期間の略中間時点K2、及びプラン作成期間の終了時点K3の3つの時点を予め識別コードとして決めておき、信号制御装置5が当該識別コードK1〜K3のいずれかを指示することで、交通信号制御機1Aがその指示された識別コードの示す時点をプラン作成時点とするようにしても良い。
なお、指示はプラン作成時点を変更したいときのみ送るようにしても良いし、変更の有無に関わらずサイクル毎に送るようにしても良い。
【0059】
そして、信号制御指令作成手段521は、前記交通状況に基づいて、各交差点の現示に割り当てる青時間、サイクル長やオフセット等を決定し、これらを含む前記信号制御指令情報を作成する。前記青時間の割当ての決定に当たっては、例えば、交差点における流入路ごとの飽和度や負荷率を算出し、それらの比率に応じて割当てを決定する方法が考えられる。そして、前記作成された信号制御指令情報を随時各交通信号制御機に送信することで、各交通信号制御機の動作に関する指示を与える。
当該信号制御指令情報を受信した各交通信号制御機は、プラン作成時点において、最後に受信した信号制御指令情報に基づいて信号制御プランを決定する。
【0060】
この場合、例えば交通信号制御機1Aが、当サイクルを半分程度実行した時点で次サイクルの信号制御プランを作成するように指示しているのであれば、当該半分程度実行した時点において、次サイクルが実行される未来の時点における交通状況を予測した上で、当該交通状況に応じた信号制御指令情報を作成して送信することが好ましい。そうすることで、実際に信号機が制御される時点における交通状況に応じた適切な信号制御指令情報を作成することができるようになる。
なお、前記交通状況の予測は、例えば交差点に流入する交通量の予測であれば、当該交差点よりも上流側に設置された車両感知器の計測結果から、近未来に前記交差点に流入する台数を見積もる方法を用いることが出来る。また、記憶している過去の統計データを用いて、現時点における交通状況と類似した過去のデータをサーチし、時間帯や日種等の条件を加味して渋滞長や旅行時間等を予測することもできる。
【0061】
また、指令送信時点決定手段541は、交通信号制御機1Aが信号制御プランを作成すると予想されるタイミングに近づいた時点を前記信号制御指令情報の送信時点として決定した上で、信号制御指令情報を送信することが好ましい。さらに、この場合、前記送信時点の直前で得られている最新の交通状況に基づいて信号制御指令作成手段521が信号制御指令情報を作成し、当該信号制御指令情報を送信すると良い。交通状況は時々刻々と変化するから、なるべく最新の交通状況に基づいて作成された信号制御指令情報を交通信号制御機1Aに採用させた方が、交通の円滑化に資するためである。
【0062】
なお、交通信号制御機1Aが信号制御装置5に対して信号制御プランの作成タイミングに関する通知情報を送信している場合には、前記作成タイミングの直前等の時点で信号制御指令情報を交通信号制御機1Aに対して送信すれば良い。このような方法によれば、交通信号制御機ごとに信号制御プランの作成タイミングを予想する必要がなく、交通信号制御機ごとに作成タイミングが異なるような場合であっても、それぞれの交通信号制御機に応じた適切なタイミングで信号制御指令情報を送信することができるようになる。
【0063】
さらに、前記通知情報に、その通知時点で既に確定している当サイクルの信号制御プランに関する情報が含まれている場合には、交通状況の予測に際しては、その当サイクルの信号制御プランに関する情報を活用することが好ましい。
けだし、間もなく交通信号制御機1Aが作成する次サイクルの信号制御プランに従って実際に信号灯器が制御されるのは、交通信号制御機1Aが実行している当サイクルの終了後となるためである。
具体的には、例えば、次サイクルの実行開始時間は当サイクルが終了するまでの残りの期間分だけ未来の時点であるから、当サイクルの情報を活用することにより、次サイクルの開始時点を正確に把握できるようになる。また、当サイクルの青時間の配分に応じて、当サイクル実行時間内に捌かれる交通量を正確に見積もることができるため、次サイクルの実行時点における交通状況をより一層正確に予測することが可能となる。
【0064】
信号制御装置5のプラン作成時点指示手段551がプラン作成時点を指示する際の処理の詳細としては、例えば以下のような方法が考えられる。
【0065】
まず、道路R上あるいは道路Rよりも上流側に設置された車両感知器において計測される交通量や占有時間から道路Rにおける車両の平均走行速度(速度感知器などから得られる実績値でも良いし、推定値や予測値でも良い。)を算出し、道路Rの交差点Aに流入する方路の平均走行速度が予め定めた第一の閾値(例えば時速60キロ)を超えるか否か比較する。
ここで、第一の閾値を超えるのであれば交通流はスムーズであり交通状況は「閑散」と判断する。交通状況が閑散であれば、各車両のドライバの視野も広がり、スピードが超過しやすくなると共に、前方の信号機が青の状態であれば、無意識にアクセルを踏み込むケースが増加する。この場合、プラン作成時点指示手段551は、信号情報の確定性を増大させ安全運転支援動作が有効に機能するようにシステムを運用することに便益があると判断し、プラン作成期間の最初もしくは前半をプラン作成時点として決定する。例えば、第1階梯や前記識別コードK1を格納した指示情報等を作成し、交通信号制御機1Aに対して送信する。
【0066】
また、第一の閾値を超えないのであれば、第一の閾値よりも小さい第二の閾値(例えば時速40キロ)を超えるか否か判断する。もし、第二の閾値を超える場合には、交通状況を「近飽和状態」と判断する。交通状況が近飽和の場合、車両の走行速度は高速ではないがノロノロ運転ではないから、ある程度交通事故が発生する状況にあると共に、信号制御のリアルタイム性を著しく低下させると交通渋滞が発生する恐れもある。この場合、プラン作成時点指示手段551は、信号情報の確定性と信号制御のリアルタイム性の双方をある程度担保できるようにシステムを運用すべきであると判断し、プラン作成期間の略中間の時点をプラン作成時点として決定する。例えば、第6階梯(合計10階梯の場合など)や前記識別コードK2を格納した指示情報等を作成し、交通信号制御機1Aに対して送信する。
また、第二の閾値よりも平均速度が小さいのであれば、「過飽和状態」と判断し、渋滞が発生していると判断する。この場合、甚大な交通事故が発生する確率は小さく、いち早く交通渋滞を解消すべきであるから、プラン作成期間の最後もしくは後半をプラン作成時点として決定する。例えば、第10階梯(合計10階梯の場合など)や前記識別コードK3を格納した指示情報等を作成し、交通信号制御機1Aに対して送信する。
【0067】
なお、交通状況を判断するに際しては、走行速度以外にも例えば渋滞長などを計測できるのであれば渋滞長を基準にしても良いし、交通量や速度など複数の交通指標を用いて、いくつものパタンに分類してきめ細かく指示するようにしても良い。また、単純に時間帯に応じて切り替える方法でも良いし、交通状況と時間帯の双方を判断の基準として使用しても良い。例えば、夕方の薄暮の時間帯や夜間の時間帯に特に交通事故が発生しやすいといったことが分かっているのであれば、これらの時間帯のみ交通状況に関係なく信号情報の確定性を優先した指示を送るようにしても良い。
また、周辺の交通状況に対して与える影響が大きいと考えられている交差点については、夜間以外は信号制御のリアルタイム性を優先した指示をする、といった方法を用いても良く、交通システムを運用する運用担当者が政策的に運用方法を決定しても良い。
【0068】
なお、プラン作成時点指示手段551に相当する機能を各交通信号制御機に実装し、各交通信号制御機が、設置された地点周辺の交通状況や時間帯等を判断の基準として信号制御プランの作成時点を決定するようにしても良い。
また、例えば、地理的に近傍に設置された複数の交通信号制御機や、同一のサイクル長で動作させる複数の交通信号制御機については、プラン作成時点が統一されるようにしても良い。この場合、信号制御装置5が、制御対象となる交通信号制御機をグループ化し、各グループ毎にプラン作成時点を統一的に決定するようにしても良いし、交通信号制御期間で情報交換することが可能であれば、ある核となる交通信号制御機が他の交通信号制御機に対して自身のプラン作成時点を通知し、他の交通信号制御機がこれに従う、といった方法を用いても良い。
【0069】
〔車載機の基本的動作〕
以下、車載機6の基本的動作を詳しく説明する。
図7は、車載機6と車載機6を搭載した車両Cの機能ブロックの概略図である。
【0070】
車両Cには車載機6の他に、車両Cを進行させるためのエンジンと制動するためのブレーキが備えられている。前記エンジンやブレーキは、ドライバがアクセルペダルやブレーキペダル等を操作することによって制御できるが、この他にも、車載機6からの指示等に基づいて自動的に制御することができる。
また、車両Cには、車載機6からの情報等に基づいて、搭乗者に対して画像や音声等によって各種情報を報知するためのディスプレイ(ヘッドアップディスプレイやカーナビゲーション装置の表示機等)やスピーカが備えられている。
【0071】
信号情報等取得手段601は、通信アンテナ1Aaから所定の通信方式で送出される前記信号情報や道路形状情報等を、車両Cに搭載した受信アンテナ(図示せず)等を介して受信して取得する。
この場合、路車間通信に用いられる通信方式では、長波帯や短波帯等いずれの周波数帯を使用しても良く、変調方式もOFDMやCDMA等いかなる方法を用いても良いし、手順についてもCSMA/CA等どのような方法でも良い。
また、信号情報等が異なる送信機から送信される場合には、情報毎に受信手段を備えていても良い。
【0072】
次に、取得した前記信号情報等に基づく安全運転支援制御について詳しく説明する。なお、前記安全運転支援制御とは、停止線P到達時の信号灯器2Aaの表示灯色を予測し、当該予測結果に応じて、ドライバの安全運転を支援することを指す。
具体的には、報知情報作成手段611が搭乗者に対する音声情報を作成してスピーカを通じて報知したり、画像情報を作成してディスプレイを通じて報知したりする。また、速度制御手段621が、エンジンやブレーキを制御し、車両Cを自動的に制動したり、ドライバの運転をアシストしたりする。
【0073】
まず、現在の車両Cの走行速度を車輪速センサ等の速度取得手段(図示せず)によって取得すると共に、受信した道路形状情報等に基づいて停止線Pまでの距離を取得する。そして、取得した前記走行速度で走行した場合の停止線Pまでの所要時間を取得する。
【0074】
そして、前記所要時間経過後の信号灯器2Aaの表示灯色を予測する。
例えば、前記所要時間が30秒と算出された場合、図2に示す信号情報を受信していれば30秒後には信号機は赤信号に変わっているから、車両Cは停止線Pの手前で停止すべきと判断できる。
【0075】
この場合、報知情報作成手段611は、ドライバへの報知情報として「まもなく信号が赤に変わる」や「停止線の手前で停止すべき」といった音声情報を作成し、スピーカ等を通じて報知する。さらに、これらを文字情報としてヘッドアップディスプレイに表示したり、カーナビゲーション装置の表示機に対して停止を促す文字や図柄を表示したりする。
また、速度制御手段621は、アクセルやブレーキに対して制御信号を送り、車両Cがこれ以上加速しないようにしたり、減速させたりしてドライバの運転をアシストする。この場合、自動的に減速等を行っている旨を別途表示機等に表示したり、音声でドライバに通知したりしても良い。
また、ドライバが完全に自動的な運転に委ねているような場合には、停止線Pの手前で安全かつスムーズに停止するように、ブレーキやアクセルを継続して制御しても良い。
【0076】
なお、停止線Pに到達する時点で青信号が表示されていると判断される状況であれば、報知情報作成手段611は、報知情報を作成しなくても良いし、「このまま安全に交差点を通過できるため落ち着いて運転するように」といった音声情報等を作成して報知するようにしても良い。また、速度制御手段621は、特にブレーキアシスト等の動作をする必要はない。
【0077】
以上のように、本発明によれば、信号制御プランを作成する時点をサイクル毎に変更できるようにしたため、時間帯や交通状況等に応じてシステムの運用を自在に切り替えることが可能となった。これにより、信号制御のリアルタイム性と信号情報の確定性の双方の利益に鑑みた交通信号制御を実施することが可能となった。
【0078】
なお、本発明における交通信号制御機や信号制御装置等は、1の筐体によって実現されていても良いし、複数の筐体の組み合わせによって実現されても良い。また、これらは、それぞれ1つのコンピュータによって実現されていても良いし、複数のコンピュータを組み合わせて実現されていても良い。
【0079】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る交通システムの機器配置の概要を示す模式図である。
【図2】(a)は本発明に係る信号情報のフォーマットの一例を示す図、(b)は信号情報の一例を示す図である。
【図3】交通信号制御機1Aの機能ブロック構成の一例を示す図である。
【図4】信号制御プランの作成タイミングの決定手順等を示す図である。
【図5】(a)は現信号制御プランテーブル102に格納される信号制御プランの一例を示す図、(b)は次信号制御プランテーブル103に格納される信号制御プランの一例を示す図である。
【図6】信号制御装置5の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【図7】車載機6の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1A 交通信号制御機
1Aa 通信アンテナ
2Aa 信号灯器
4 ルータ
5 信号制御装置
6 車載機
7 送信機
101 信号制御プラン作成手段
102 現信号制御プランテーブル
103 次信号制御プランテーブル
111 信号灯器制御手段
121 信号情報作成手段
131 中央装置情報受信手段
141 プラン作成時点決定手段
151 プラン作成時点通知手段
501 送信手段
511 受信手段
521 信号制御指令作成手段
531 交通状況取得手段
532 交通情報データベース
541 指令送信時点決定手段
551 プラン作成時点指示手段
601 信号情報等取得手段
611 報知情報作成手段
621 速度制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1サイクル分の信号制御プランを、当該1サイクルの直前である直前1サイクルの開始時点から前記直前1サイクルの終了時点までの間の期間に当たるプラン作成期間内のいずれかの時点で作成する信号制御プラン作成手段と、
作成した前記信号制御プランに従って、前記1サイクルにおいて信号灯器の各信号灯色を切り替える信号灯器制御手段と、
作成された信号制御プランに基づいて、現在及び将来の前記信号灯器の表示に関する信号情報を作成する信号情報作成手段とを有する交通信号制御機と、
前記信号情報を道路上の所定領域に送信する送信手段とを含む交通システムであって、
前記信号制御プラン作成手段は、プラン作成期間の開始前の時点において、1サイクルの信号制御プランをプラン作成期間内のどの時点で作成するかについて決定すること
を特徴とする交通システム。
【請求項2】
前記信号制御プラン作成手段は、
複数の候補の中から信号制御プラン作成時点を選択して決定するように構成されており、
前記複数の候補は、前記プラン作成期間の開始時点、該期間の略中間時点、および、該期間の終了時点の少なくとも3つの時点を含むこと
を特徴とする請求項1に記載の交通システム。
【請求項3】
前記交通システムは、
前記信号制御プランの作成に用いる信号制御指令情報を作成する信号制御指令作成手段と、前記信号制御指令情報を前記交通信号制御機に対して送信する指令送信手段とを有する信号制御装置をさらに備え、
前記信号制御装置は、
前記交通信号制御機に対して、プラン作成期間内のどの時点で信号制御プランを作成するかについての指示を与えるプラン作成時点指示手段を有し、
前記交通信号制御機は、その指示に応じて信号制御プラン作成時点を決定すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の交通システム。
【請求項4】
前記交通システムは、
前記交通信号制御機の設置地点周辺の交通状況を取得する交通状況取得手段をさらに有し、
前記プラン作成時点指示手段は、取得した前記交通状況に応じて指示を与えること
を特徴とする請求項3に記載の交通システム。
【請求項5】
前記交通状況取得手段は、前記交通信号制御機の設置地点周辺の車両走行速度を取得し、
前記プラン作成時点指示手段は、その車両走行速度に応じて指示を与えること
を特徴とする請求項4に記載の交通システム。
【請求項6】
前記プラン作成時点指示手段は、
サイクル毎に指示を与えるように構成されており、
前回指示を与えた時の車両走行速度と比較して車両走行速度が向上している場合には、信号制御プラン作成時点を前回の指示と比較してより早い時期とするような指示を与えること
を特徴とする請求項5に記載の交通システム。
【請求項7】
前記交通信号制御機は、
前記信号制御プラン作成手段が信号制御プランを作成する時点に関する通知情報を作成し前記信号制御装置に通知する通知手段をさらに備えること
を特徴とする請求項3乃至6のいずれか1つに記載の交通システム。
【請求項8】
前記信号制御装置は、
前記通知情報に基づいて、前記信号制御指令情報の送信時点を決定すること
を特徴とする請求項7に記載の交通システム。
【請求項9】
前記信号制御装置は、
前記信号制御指令情報を用いて作成された信号制御プランに従って実際に前記信号灯色が制御される未来の時点における交通状況を予測する交通状況予測手段をさらに備え、
前記信号制御指令作成手段は、予測した前記交通状況に応じた信号制御指令情報を作成すること
を特徴とする請求項3乃至8のいずれか1つに記載の交通システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つに記載の交通システムに用いられることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項11】
1サイクル分の信号制御プランを、当該1サイクルの直前の直前1サイクルの開始直前時点から前記直前1サイクルの終了時点までの間のプラン作成期間内のいずれかの時点で作成する信号制御プラン作成手段と、
作成した前記信号制御プランに従って、前記1サイクルにおいて信号灯器の各信号灯色を切り替える信号灯器制御手段と、
作成された信号制御プランに基づいて、現在及び将来の前記信号灯器の表示に関する信号情報を作成する信号情報作成手段と、
前記信号情報を外部に出力する出力手段と、
交通状況を取得する交通状況取得手段を有し、
前記信号制御プラン作成手段は、プラン作成期間の開始直前の時点において、取得した前記交通状況に応じて、1サイクルの信号制御プランをプラン作成期間内のどの時点で作成するかについて決定するように構成されていること
を特徴とする交通信号制御機。
【請求項12】
前記信号制御プラン作成手段は、
予め定められた複数の候補の中から信号制御プラン作成時点を選択して決定するように構成されており、
前記複数の候補は、前記プラン作成期間の開始時点、および、該期間の終了時点の少なくとも2つの時点を含むこと
を特徴とする請求項11に記載の交通信号制御機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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