交通信号制御装置及び交通信号制御方法
【課題】渋滞状態を含むあらゆる交通状態において中央管理装置に依存しないで最適な制御を行うことができる完全自律分散型の交通信号制御装置を提供する。
【解決手段】渋滞が発生していないとき、各交差点13に設けた交通信号制御装置1で近い将来の交通需要に応じてサイクル長とスプリットを算出し、算出したサイクル長とスプリット及び上流側交差点に設けた交通信号制御装置1で算出したサイクル長とスプリットからオフセットを算出して信号制御パラメータを決定する。渋滞が発生しているときは、各交差点13に設けた交通信号制御装置1で渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する。決定した信号制御パラメータ又は選択した渋滞時制御パラメータにより交差点13に設けた信号灯器を制御する。
【解決手段】渋滞が発生していないとき、各交差点13に設けた交通信号制御装置1で近い将来の交通需要に応じてサイクル長とスプリットを算出し、算出したサイクル長とスプリット及び上流側交差点に設けた交通信号制御装置1で算出したサイクル長とスプリットからオフセットを算出して信号制御パラメータを決定する。渋滞が発生しているときは、各交差点13に設けた交通信号制御装置1で渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する。決定した信号制御パラメータ又は選択した渋滞時制御パラメータにより交差点13に設けた信号灯器を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の複数の交差点に設けられた信号灯器を交通需要に応じて制御する交通信号制御装置及び交通信号制御方法、特に近い将来の交通需要を予測して最適な制御を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車交通の安全と円滑化を図るためには、道路の交差点に設けた信号灯器を適切に制御することが必要である。この交通信号制御において、急激な交通状況の変動にも対応するため、特許文献1に示された交通信号制御装置は、隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻0秒までの一定時間例えば300秒前から例えば300秒後までの予測範囲の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から例えば300秒前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミング、すなわち上流側交差点から下流側交差点までの旅行時間を補正する。この流入交通流テーブルの作成と実測値による到着タイミングの補正を例えば10秒毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて信号制御パラメータを算出して近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを決定している。この場合、上流側信号機との青表示開始時間のずれであるオフセットは各交差点に設けられた交通信号制御装置が接続された伝送路を介して中央管理装置により送信されて規定値として設定される。このため中央管理装置に異常等が発生して機能を果たせなくなった場合は、それ以前に交通信号制御装置に設定されたオフセットに依存しなければならず、交通状況の変動に応じた最適な制御を行うことはできなかった。
【0003】
このオフセットを中央交通信号制御装置で設定するため、特許文献2に示された交通信号制御装置は、リンクの通過車両台数とそのリンクの実測された旅行時間と目標旅行時間との差を用いてオフセットを設定している。また、特許文献3に示された交通信号制御装置は、隣接交差点の青時間秒数と自己の交差点の青時間秒数との差及びリンク間の距離と系統速度により相対オフセット制約条件を算出し、算出した相対オフセット制約条件に基づいて遅れ時間、停止回数等を最小とする最適解探索により自己の交差点の青時間秒数を決定している。
【0004】
しかしながら特許文献2と特許文献3に示された交通信号制御装置は、リンク毎の遅れや停止回数の最小解を得ることはできるが、サブエリア全体としては必ずしも最小とする最適解を得ることはできず、急激な交通状況の変動に応じた適切な制御を行うことは困難である。
【0005】
また、特許文献1における上流側交差点を出発した車両群が下流側交差点に到着するタイミングを予測する方法は、車両が自由に走行可能な交通状態を前提としている。そして渋滞状態においては、中央管理装置より各交通信号制御装置に送信する渋滞用信号制御パラメータに依存するか、あらかじめ各交通信号制御装置に設定された渋滞用信号制御パラメータの多段プログラムに依存しなければならない。このため中央管理装置に故障等の異常が発生して、中央管理装置から渋滞用信号制御パラメータが送信されなくなると、渋滞状態に応じた最適な制御を行うことは困難であった。
【特許文献1】特許第4159976号公報
【特許文献2】特開平7−152993号公報
【特許文献3】特開2006−119753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、このような問題を改善し、交通状況の変化を確実に対応させたサイクル長とスプリットとともにオフセットも自動計算するとともに渋滞状態を含むあらゆる交通状態において中央管理装置に依存しないで最適な制御を行うことができる完全自律分散型の交通信号制御装置と交通信号制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の交通信号制御装置は、隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻前後の一定時間の間の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から一定時間前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正して所定時間毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出する信号制御定数算出部を有し、道路の各交差点に設けられた信号灯器を制御する交通信号制御装置において、中央処理部とオフセット自動計算部及び渋滞時制御定数選択部を有し、前記中央処理部は、自装置で得られる車両感知器情報である占有率または渋滞長により交差点の各流入路の渋滞状況を判断し、渋滞が発生していないときは、前記信号制御定数算出部と前記オフセット自動計算部に処理を実行させ、渋滞が発生しているときは、前記渋滞時制御定数選択部に処理を実行させ、前記オフセット自動計算部は、前記信号制御定数算出部で算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点に設けられた交通信号制御装置から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するためのオフセットとし、前記信号制御定数算出部は、前記算出したサイクル長とスプリットと前記オフセット自動計算部から前のサイクル時に送られたオフセットにより信号制御パラメータを決定し、前記渋滞時制御定数選択部は、あらかじめ記憶部に記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択し、前記信号制御定数算出部で決定した信号制御パラメータ又は前記渋滞時制御定数選択部で選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御することを特徴とする。
【0008】
この発明の交通信号制御方法は、隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻前後の一定時間の間の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から一定時間前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正して所定時間毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出して交差点に設けた信号灯器を制御する交通信号制御方法において、制御装置は、車両感知器情報で得られる占有率または渋滞長により交差点の各流入路の渋滞状況を判断する工程と、渋滞が発生していないときは、前記サイクル長とスプリットを算出する工程と、算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するためのオフセットとする工程と、前記算出したサイクル長とスプリットとサイクル時に更新したオフセットにより信号制御パラメータを決定する工程と、渋滞が発生しているときは、あらかじめ記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する工程と、前記決定した信号制御パラメータ又は選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御する工程とを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、渋滞が発生していないときは、各交差点に設けた交通信号制御装置で近い将来の交通需要に応じてサイクル長とスプリットを算出し、算出したサイクル長とスプリット及び上流側交差点に設けた交通信号制御装置で算出したサイクル長とスプリットからオフセットを算出して信号制御パラメータを決定し、渋滞が発生しているときは、各交差点に設けた交通信号制御装置で渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択し、決定した信号制御パラメータ又は選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御するから、中央制御装置に依存しないで近い将来の交通需要に応じた最適な交通信号パラメータを決定することができ、完全自律分散型の交通信号制御装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの発明の交通信号制御システムの構成図である。図に示すように、交通信号制御システムは、各交差点に設けられた複数の交通信号制御装置1が伝送路2を介して接続されている。
【0011】
交通信号制御装置1は、道路の交差点に設けた信号灯器を制御するものであり、図2のブロック図に示すように、情報伝送部3と中央処理部4と交通流計測部5と記憶部6と流入情報作成部7と信号制御定数算出部8とオフセット自動計算部9と流出情報作成部10と渋滞時制御定数選択部11及び信号制御部12を有する。
【0012】
情報伝送部3は伝送路2を介して隣接交差点に設けた交通信号制御装置1との間で各種情報を授受する。中央処理部4は交通信号制御装置1で実行する各種処理等を制御する。交通流計測部5は、図3の道路配置図に示すように、各交差点13に設けられた車両感知器14a〜14hからの車両感知信号を逐次入力して交差点13に流入する車両の流入交通流量と交差点13から流出する車両の流出交通流量を計測する。記憶部6は情報伝送部3で受信している各種情報や交通流計測部5で計測している流入交通流量や流出交通流量等及び渋滞状況に応じた渋滞時制御パラメータの複数のパターンを記憶する。
【0013】
流入情報作成部7は、情報伝送部3で受信している隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻0秒までの一定時間例えば300秒前から例えば300秒後までの予測範囲の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと交通流計測部5で計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正し、一定時間例えば10秒毎に更新する。信号制御定数算出部8は、流入情報作成部7で作成した流入交通流テーブルを使用し、近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出し、算出したサイクル長とスプリット及びオフセット自動計算部9で計算したオフセットにより信号制御パラメータを決定する。オフセット自動計算部9は、信号制御定数算出部8で決定したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点13に設けられた交通信号制御装置1から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するための基本オフセットとする。
【0014】
流出情報作成部10は、交通流計測部5で計測している流出交通流量と流入情報作成部7で作成している流入交通流テーブル及び分岐率及び信号制御パラメータを用いて流出交通流量を一定時間例えば10秒毎に予測して流出交通流情報を作成する。この逐次作成される流出交通流情報は情報伝送部3から伝送路2を介して隣接交差点13の交通信号制御装置1に送信される。渋滞時制御定数選択部11は、交差点13の流入路が渋滞状況のとき、記憶部6に記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する。信号制御部12は信号制御定数算出部8で算出した信号制御パラメータや渋滞時制御定数選択部11で選択した渋滞時制御パラメータにより各交差点13に設けた信号灯器15a〜15dを制御する。
【0015】
この交通信号制御システムの交通信号制御装置1で各交差点13に設けた信号灯器15a〜15dを制御するときの処理を説明する。
【0016】
各交通信号制御装置1の中央処理部4は、図4のフローチャートに示すように、交通流計測部5より得られる感知器情報である占有率または渋滞長により交差点13の各流入路の渋滞状況を判断し(ステップ1)、車両が自由に走行可能な交通状態のときは流入交通流テーブルの作成処理を行う(ステップS2)。この流入交通流テーブルの作成処理においては、図5のフローチャートに示すように、各交通信号制御装置1の情報伝送部3は、隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1から例えば10秒毎に送信している流出交通流情報を受信して記憶部6に記憶する(ステップS11)。この隣接交差点13の流出交通流情報21には、図6の模式図に示すように、実測占有率と実測流出台数及び例えば10秒毎の予測流出台数を含む。また、交通流計測部5は、交差点13の各方路の流入側に設けた車両感知器14a〜14dの感知信号を入力して各方路の流入交通量を計測して記憶部6に逐次記憶する(ステップS12)。流入情報作成部7は、まず、自交差点13と隣接交差点13との間のリンク距離とリンク速度から各流入路の旅行時間Tを算出する(ステップS13)。この旅行時間Tは、隣接交差点13に設けた流出車両を感知する車両感知器14の設置位置から自交差点13の停止線までの車両通過時間であり、速度は、交差点13間に速度感知器が存在する場合は、速度感知器で計測した平均速度を利用する。また、速度感知器が存在しないとき、隣接交差点13の流出地点で占有率と交通量を計測できる場合は、占有率と交通量及び平均車長から計算する。その後、流入情報作成部7は、情報伝送部3で受信している隣接交差点13の流出交通流情報21と算出した各方路における隣接交差点13からの旅行時間Tにより、図7の模式図に示すように、現在時刻0秒から300秒前までと現在時刻0秒から300秒後までの予測範囲の予測流入台数を示す流入交通流テーブル22を作成して記憶部6に格納する(ステップS14)。この流入交通流テーブル22を作成するとき、隣接交差点13から受信した流出交通流情報を各流入路毎の旅行時間Tの分だけ移行する。そして現在時刻0秒から方路nの旅行時間Tの間のデータは、隣接交差点13から受信した実測流出台数の履歴を採用し、それ以降の300秒後までは隣接交差点13から受信した最新の流出交通流情報を採用する。次に、流入情報作成部7は、作成した流入交通流テーブル22と、交通流計測部5で計測した現在時刻0秒から300秒前の間の流入交通量の計測値23とを比較し、作成した流入交通流テーブル22と流入交通流の計測値23の交通量が小から大に立ち上がる変化点すなわち車両群の先頭が到着したタイミングに着目して到着タイミングのずれを補正する(ステップS15)。この作成した流入交通流テーブル22を補正するとき、例えば図8(a)に示すように、流入交通流テーブル22で想定した交通量の変化点Aに比べて流入交通流の計測値23の実測交通量の変化点Bがt秒早い場合は、作成した流入交通流テーブル22をt秒だけ前にスライドして、旅行時間を(T−t)に補正する。また、例えば図7(b)に示すように、流入交通流テーブル22で想定している交通量の変化点が生じているとき、流入交通流の計測値23の実測交通量に変化点が生じていなく、流入交通流テーブル22で想定した車両群が到着していない場合は、作成した流入交通流テーブル22を一定時間例えば10秒だけ後にスライドし、旅行時間を(T+10秒)に補正する。この流入交通流テーブル22の作成と実測値による到着タイミングの補正を例えば10秒毎に更新する。なお、交通量が極端に少ない場合や飽和交通流が継続する場合は、交通量の変化点が抽出できないため到着タイミングのずれ補正は行わないでおく。
【0017】
中央処理部4は、この10秒毎に更新される流入交通流テーブル22を用い、近い将来の交通需要に基づく信号制御パラメータを決定する処理を信号制御定数算出部8に行わせる(ステップS3)。この信号制御パラメータを作成するとき、信号制御定数算出部8は、図9のフローチャートに示すように、まず、各方路の流入交通流テーブル22の現在時刻0秒から300秒後の流入台数を合計して、今後予想される飽和度を計算する(ステップS21)。ここで交差点13の1つの流入路jに着目するとき、現示番号iにおいて流入しようとする予測累計交通量Qjと飽和交通流率Sj(設定値)から流入路予測飽和度ρijは、ρij=(Qi/300)/Sjで算出され、流入路予測飽和度ρijの最大値ρi=MAX(ρij)をその現示の予測飽和度とする。この現示予測飽和度ρiの和ρ=Σρiが交差点予測飽和度となる。この交差点予測飽和度ρから必要サイクル長Cnを、Cn=(1.5L+5+T)/(1−ρ)で10秒単位で算出する(ステップS22)。ここでLは損出時間(設定値)、Tは飽和度算出対象外ステップの合計値(設定値)である。この必要サイクル長Cnを算出するとき、交差点予測飽和度ρが1以上の場合には、必要サイクル長Cnをあらかじめ設定された上限値とする。また、必要サイクル長Cnの下限値は各ステップの最低保証秒数の和にする。次に、信号制御定数算出部8は、図10に示すように、全流入路又は特定の流入路の流入交通流テーブル22の値を未来に向かって積算して需要累積値を算出する。そして需要累積値が急激に変化する点を求め、その2点間の時間を予定サイクル長Cとする(ステップS23)。このように需要累積値の変化点をサイクル長に反映することにより、隣接交差点との同期をとることができる。また、需要累積値の変化点が検出できない場合には、必要サイクル長Cnを予定サイクル長Cとする。
【0018】
信号制御定数算出部8は、算出した交差点飽和度ρとi現示の予測飽和度ρiの比により、i現示の基本スプリットSi=ρi/ρを決定し、各現示の可変ステップの秒数Aiを必要サイクル長Cとその現示の基本スプリットSiを使用して下記式で算出する(ステップ24)。
Ai=(C−T−L)×Si−Bi
ここでBiはi現示の青固定ステップ時間である。
この各現示の可変ステップの秒数Aiの下限値は(最低保証秒数+1秒)とし、上限値を(最大監視時間−1秒)とし、この下限値と上限値に抵触した場合は下限値又は上限値で固定して基本スプリットSiの再計算を行う。この決定した基本スプリットSiを到着タイミングを考慮して微調整する(ステップS25)。各方路の停止時間コストは、図11に示すように、各現示ψ1,ψ2、ψ3毎の各単位時間における滞留台数の総和ΣWで計算することができる。この滞留台数は、前回の青現示の打切り時間後に到着した交通量の和とし、発信遅れによるコストΔWは、発信波の伝播係数(5m/s)を考慮してΔW=(Wmax×1.2)/2で計算することができる。ここでWmaxは青開始時の滞留台数である。
各現示ψ1,ψ2、ψ3を有する各サイクルの総遅れ時間は、下記式に示すように、各現示ψ1,ψ2、ψ3毎の滞留台数の総和ΣWと発信遅れによるコストΔWとの和となる。
総遅れ時間=(ΣW1+ΔW1+ΣW2+ΔW2+ΣW3+ΔW3)。
そこであらかじめ設定された可変スプリットについて、最大短縮秒数TSから最大延長秒数TEの範囲で可変ステップAiの値を変化させて、それぞれの場合について次サイクルの総遅れ時間を計算し、総遅れ時間が最小となる値を可変ステップ値と決定する。
【0019】
中央処理部4は、信号制御定数算出部8で近い将来の交通需要に基づいて算出したサイクル長とスプリットを記憶部6に記憶するとともに情報伝送部3から伝送路2を介して隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1に送る。また、中央処理部4は上流側の隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1から送られたサイクル長とスプリットを記憶部6に記憶する。そして信号制御定数算出部8で近い将来の交通需要に基づいて算出したサイクル長とスプリット及び記憶部6に記憶した上流側の隣接交差点13側から送られたサイクル長とスプリットをオフセット自動計算部9に送りオフセットの算出処理を行わせる。すなわち信号制御定数算出部8で算出したスプリットと上流側交差点13から送られたスプリットの結果は上流側交差点13との関係で青信号の開始時点に着目すればオフセットである。これは予測交通情報に基づく遅れ時間が最小となるオフセットである。そこでオフセット自動計算部9は、信号制御定数算出部8で算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点13側から送られたサイクル長とスプリットからオフセットを算出し、算出したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するための基本オフセットとして信号制御定数算出部8に送る。オフセット自動計算部9はこのオフセットの算出処理を各サイクル毎に繰り返して基本オフセットを更新する。
【0020】
信号制御定数算出部8は近い将来の交通需要に基づいて算出したサイクル長とスプリットとオフセット自動計算部9から前のサイクル時に送られたオフセットにより信号制御パラメータを決定する。中央処理部4は、信号制御定数算出部8で決定したサイクル長とスプリットとオフセットを信号制御部12に送り、各信号灯器15a〜15dを制御させる(ステップS4)。
【0021】
このように信号制御を行って交差点13を通過する車両を制御しているとき、中央処理部4は流出情報作成部10に流出交通流情報の作成処理を行わせる(ステップS5)。この流出交通流情報の作成処理では、交通流計測部5で各交差点13の流出側に設けた車両感知器14e〜14hから出力する感知信号を一定時間例えば10秒毎に計数して各方路の流出交通流を計測する。流出情報作成部10は一定時間例えば10秒毎に交通流計測部5で計測している各方路の流出台数の履歴と各信号灯器15a〜15dの現示の青秒数を10秒刻みで300秒分保持し、流入交通流テーブルの履歴データと比較し、各信号灯器15a〜15dの現示毎に分岐率を算出する。そして流入交通流テーブル22と予定現示を比較し、現示に対応した分岐率を用いて10秒毎の流出予測台数を0.1台単位で計算して、図6に示す流出交通流情報21を作成する。ここで流出台数を0.1台単位で計算するのは、流出予測台数の計算結果を信号制御に十分に反映させるためである。情報伝送部3は流出情報作成部10で作成した流出交通流情報21を隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1に伝送路2を介して送信する(ステップS6)。
【0022】
この流入交通流テーブルの作成処理と信号パラメータ算出処理と信号制御及び流出交通流情報の作成処理と送信処理を逐次繰り返して、時系列に作成した流出交通流情報を隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1との間で相互に交換することにより、信号制御に交通状況の変化を確実に対応させることができ、近い将来の交通需要に応じた最適な交通信号制御を行うことができる。
【0023】
このように各交差点13に設けた交通信号制御装置1で近い将来の交通需要に応じてサイクル長とスプリットを算出し、算出したサイクル長とスプリット及び上流側交差点13に設けた交通信号制御装置1で算出したサイクル長とスプリットからオフセットを算出するから中央制御装置に依存しないで近い将来の交通需要に応じた最適な交通信号パラメータを決定することができる。
【0024】
また、中央処理部4は、交通流計測部5より得られる感知器情報である占有率または渋滞長により交差点13の各流入路の渋滞状況を判断した結果、渋滞が発生しているときは、渋滞時制御定数選択部11に渋滞時制御パラメータの選択処理を行なわせる(ステップS7)。渋滞時制御定数選択部11は中央処理部4から送られる渋滞状況に応じて記憶部6に記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する。中央処理部4は渋滞時制御定数選択部11で選択した渋滞時制御パラメータを信号制御部12に送り、各信号灯器15a〜15dを制御させる(ステップS8)。
【0025】
このように車両が自由に走行可能な交通状態のときは信号制御定数算出部8で決定した信号制御パラメータにより各信号灯器15a〜15dを制御し、渋滞が発生しているときは、渋滞時制御定数選択部11で選択した渋滞時制御パラメータにより各信号灯器15a〜15dを制御するから、各交差点13に設けた交通信号制御装置1は中央管理装置に依存しないで各信号灯器15a〜15dを交通需要に応じて最適に制御することができる。
【0026】
前記説明では、交通信号制御装置1に流入情報作成部7と信号制御定数算出部8とオフセット自動計算部9と流出情報作成部10及び渋滞時制御定数選択部11を設けた場合について説明したが、図12のブロック図に示すように、流入交通流テーブルの作成処理と信号制御パラメータの算出処理及び流出交通流情報の作成処理のプログラムをあらかじめ磁気ディスクや光ディスク等の外部記憶媒体16に格納しておき、外部記憶媒体16に格納した処理プログラムを交通信号制御装置1の外部記憶媒体I/F17で読み取り、記憶部6に格納し、記憶部6に格納した処理プログラムを使用して中央処理部4でこれらの処理を実行しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の交通信号制御システムの構成図である。
【図2】交通信号制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】道路の交差点の構成図である。
【図4】交通信号制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】流入交通流テーブルの作成処理を示すフローチャートである。
【図6】流出交通流情報の構成を示す模式図である。
【図7】流入交通流テーブルの構成を示す模式図である。
【図8】作成した流入交通流テーブルの補正処理を示す模式図である。
【図9】信号制御パラメータの算出処理を示すフローチャートである。
【図10】予定サイクル長を算出するための累積需要量の変化特性図である。
【図11】到着タイミングのずれ補正を示す模式図である。
【図12】他の交通信号制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1;交通信号制御装置、2;伝送路、3;情報伝送部、4;中央処理部、
5;交通流計測部、6;記憶部、7;流入情報作成部、8;信号制御定数算出部、
9;オフセット自動計算部、10;流出情報作成部、11;渋滞時制御定数選択部、
12;信号制御部、13;交差点、14;車両感知器、15;信号灯器、
21;流出交通流情報、22;流入交通流テーブル。
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の複数の交差点に設けられた信号灯器を交通需要に応じて制御する交通信号制御装置及び交通信号制御方法、特に近い将来の交通需要を予測して最適な制御を行うことに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車交通の安全と円滑化を図るためには、道路の交差点に設けた信号灯器を適切に制御することが必要である。この交通信号制御において、急激な交通状況の変動にも対応するため、特許文献1に示された交通信号制御装置は、隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻0秒までの一定時間例えば300秒前から例えば300秒後までの予測範囲の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から例えば300秒前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミング、すなわち上流側交差点から下流側交差点までの旅行時間を補正する。この流入交通流テーブルの作成と実測値による到着タイミングの補正を例えば10秒毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて信号制御パラメータを算出して近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを決定している。この場合、上流側信号機との青表示開始時間のずれであるオフセットは各交差点に設けられた交通信号制御装置が接続された伝送路を介して中央管理装置により送信されて規定値として設定される。このため中央管理装置に異常等が発生して機能を果たせなくなった場合は、それ以前に交通信号制御装置に設定されたオフセットに依存しなければならず、交通状況の変動に応じた最適な制御を行うことはできなかった。
【0003】
このオフセットを中央交通信号制御装置で設定するため、特許文献2に示された交通信号制御装置は、リンクの通過車両台数とそのリンクの実測された旅行時間と目標旅行時間との差を用いてオフセットを設定している。また、特許文献3に示された交通信号制御装置は、隣接交差点の青時間秒数と自己の交差点の青時間秒数との差及びリンク間の距離と系統速度により相対オフセット制約条件を算出し、算出した相対オフセット制約条件に基づいて遅れ時間、停止回数等を最小とする最適解探索により自己の交差点の青時間秒数を決定している。
【0004】
しかしながら特許文献2と特許文献3に示された交通信号制御装置は、リンク毎の遅れや停止回数の最小解を得ることはできるが、サブエリア全体としては必ずしも最小とする最適解を得ることはできず、急激な交通状況の変動に応じた適切な制御を行うことは困難である。
【0005】
また、特許文献1における上流側交差点を出発した車両群が下流側交差点に到着するタイミングを予測する方法は、車両が自由に走行可能な交通状態を前提としている。そして渋滞状態においては、中央管理装置より各交通信号制御装置に送信する渋滞用信号制御パラメータに依存するか、あらかじめ各交通信号制御装置に設定された渋滞用信号制御パラメータの多段プログラムに依存しなければならない。このため中央管理装置に故障等の異常が発生して、中央管理装置から渋滞用信号制御パラメータが送信されなくなると、渋滞状態に応じた最適な制御を行うことは困難であった。
【特許文献1】特許第4159976号公報
【特許文献2】特開平7−152993号公報
【特許文献3】特開2006−119753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、このような問題を改善し、交通状況の変化を確実に対応させたサイクル長とスプリットとともにオフセットも自動計算するとともに渋滞状態を含むあらゆる交通状態において中央管理装置に依存しないで最適な制御を行うことができる完全自律分散型の交通信号制御装置と交通信号制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の交通信号制御装置は、隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻前後の一定時間の間の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から一定時間前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正して所定時間毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出する信号制御定数算出部を有し、道路の各交差点に設けられた信号灯器を制御する交通信号制御装置において、中央処理部とオフセット自動計算部及び渋滞時制御定数選択部を有し、前記中央処理部は、自装置で得られる車両感知器情報である占有率または渋滞長により交差点の各流入路の渋滞状況を判断し、渋滞が発生していないときは、前記信号制御定数算出部と前記オフセット自動計算部に処理を実行させ、渋滞が発生しているときは、前記渋滞時制御定数選択部に処理を実行させ、前記オフセット自動計算部は、前記信号制御定数算出部で算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点に設けられた交通信号制御装置から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するためのオフセットとし、前記信号制御定数算出部は、前記算出したサイクル長とスプリットと前記オフセット自動計算部から前のサイクル時に送られたオフセットにより信号制御パラメータを決定し、前記渋滞時制御定数選択部は、あらかじめ記憶部に記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択し、前記信号制御定数算出部で決定した信号制御パラメータ又は前記渋滞時制御定数選択部で選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御することを特徴とする。
【0008】
この発明の交通信号制御方法は、隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻前後の一定時間の間の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から一定時間前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正して所定時間毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出して交差点に設けた信号灯器を制御する交通信号制御方法において、制御装置は、車両感知器情報で得られる占有率または渋滞長により交差点の各流入路の渋滞状況を判断する工程と、渋滞が発生していないときは、前記サイクル長とスプリットを算出する工程と、算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するためのオフセットとする工程と、前記算出したサイクル長とスプリットとサイクル時に更新したオフセットにより信号制御パラメータを決定する工程と、渋滞が発生しているときは、あらかじめ記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する工程と、前記決定した信号制御パラメータ又は選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御する工程とを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、渋滞が発生していないときは、各交差点に設けた交通信号制御装置で近い将来の交通需要に応じてサイクル長とスプリットを算出し、算出したサイクル長とスプリット及び上流側交差点に設けた交通信号制御装置で算出したサイクル長とスプリットからオフセットを算出して信号制御パラメータを決定し、渋滞が発生しているときは、各交差点に設けた交通信号制御装置で渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択し、決定した信号制御パラメータ又は選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御するから、中央制御装置に依存しないで近い将来の交通需要に応じた最適な交通信号パラメータを決定することができ、完全自律分散型の交通信号制御装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの発明の交通信号制御システムの構成図である。図に示すように、交通信号制御システムは、各交差点に設けられた複数の交通信号制御装置1が伝送路2を介して接続されている。
【0011】
交通信号制御装置1は、道路の交差点に設けた信号灯器を制御するものであり、図2のブロック図に示すように、情報伝送部3と中央処理部4と交通流計測部5と記憶部6と流入情報作成部7と信号制御定数算出部8とオフセット自動計算部9と流出情報作成部10と渋滞時制御定数選択部11及び信号制御部12を有する。
【0012】
情報伝送部3は伝送路2を介して隣接交差点に設けた交通信号制御装置1との間で各種情報を授受する。中央処理部4は交通信号制御装置1で実行する各種処理等を制御する。交通流計測部5は、図3の道路配置図に示すように、各交差点13に設けられた車両感知器14a〜14hからの車両感知信号を逐次入力して交差点13に流入する車両の流入交通流量と交差点13から流出する車両の流出交通流量を計測する。記憶部6は情報伝送部3で受信している各種情報や交通流計測部5で計測している流入交通流量や流出交通流量等及び渋滞状況に応じた渋滞時制御パラメータの複数のパターンを記憶する。
【0013】
流入情報作成部7は、情報伝送部3で受信している隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻0秒までの一定時間例えば300秒前から例えば300秒後までの予測範囲の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと交通流計測部5で計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正し、一定時間例えば10秒毎に更新する。信号制御定数算出部8は、流入情報作成部7で作成した流入交通流テーブルを使用し、近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出し、算出したサイクル長とスプリット及びオフセット自動計算部9で計算したオフセットにより信号制御パラメータを決定する。オフセット自動計算部9は、信号制御定数算出部8で決定したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点13に設けられた交通信号制御装置1から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するための基本オフセットとする。
【0014】
流出情報作成部10は、交通流計測部5で計測している流出交通流量と流入情報作成部7で作成している流入交通流テーブル及び分岐率及び信号制御パラメータを用いて流出交通流量を一定時間例えば10秒毎に予測して流出交通流情報を作成する。この逐次作成される流出交通流情報は情報伝送部3から伝送路2を介して隣接交差点13の交通信号制御装置1に送信される。渋滞時制御定数選択部11は、交差点13の流入路が渋滞状況のとき、記憶部6に記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する。信号制御部12は信号制御定数算出部8で算出した信号制御パラメータや渋滞時制御定数選択部11で選択した渋滞時制御パラメータにより各交差点13に設けた信号灯器15a〜15dを制御する。
【0015】
この交通信号制御システムの交通信号制御装置1で各交差点13に設けた信号灯器15a〜15dを制御するときの処理を説明する。
【0016】
各交通信号制御装置1の中央処理部4は、図4のフローチャートに示すように、交通流計測部5より得られる感知器情報である占有率または渋滞長により交差点13の各流入路の渋滞状況を判断し(ステップ1)、車両が自由に走行可能な交通状態のときは流入交通流テーブルの作成処理を行う(ステップS2)。この流入交通流テーブルの作成処理においては、図5のフローチャートに示すように、各交通信号制御装置1の情報伝送部3は、隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1から例えば10秒毎に送信している流出交通流情報を受信して記憶部6に記憶する(ステップS11)。この隣接交差点13の流出交通流情報21には、図6の模式図に示すように、実測占有率と実測流出台数及び例えば10秒毎の予測流出台数を含む。また、交通流計測部5は、交差点13の各方路の流入側に設けた車両感知器14a〜14dの感知信号を入力して各方路の流入交通量を計測して記憶部6に逐次記憶する(ステップS12)。流入情報作成部7は、まず、自交差点13と隣接交差点13との間のリンク距離とリンク速度から各流入路の旅行時間Tを算出する(ステップS13)。この旅行時間Tは、隣接交差点13に設けた流出車両を感知する車両感知器14の設置位置から自交差点13の停止線までの車両通過時間であり、速度は、交差点13間に速度感知器が存在する場合は、速度感知器で計測した平均速度を利用する。また、速度感知器が存在しないとき、隣接交差点13の流出地点で占有率と交通量を計測できる場合は、占有率と交通量及び平均車長から計算する。その後、流入情報作成部7は、情報伝送部3で受信している隣接交差点13の流出交通流情報21と算出した各方路における隣接交差点13からの旅行時間Tにより、図7の模式図に示すように、現在時刻0秒から300秒前までと現在時刻0秒から300秒後までの予測範囲の予測流入台数を示す流入交通流テーブル22を作成して記憶部6に格納する(ステップS14)。この流入交通流テーブル22を作成するとき、隣接交差点13から受信した流出交通流情報を各流入路毎の旅行時間Tの分だけ移行する。そして現在時刻0秒から方路nの旅行時間Tの間のデータは、隣接交差点13から受信した実測流出台数の履歴を採用し、それ以降の300秒後までは隣接交差点13から受信した最新の流出交通流情報を採用する。次に、流入情報作成部7は、作成した流入交通流テーブル22と、交通流計測部5で計測した現在時刻0秒から300秒前の間の流入交通量の計測値23とを比較し、作成した流入交通流テーブル22と流入交通流の計測値23の交通量が小から大に立ち上がる変化点すなわち車両群の先頭が到着したタイミングに着目して到着タイミングのずれを補正する(ステップS15)。この作成した流入交通流テーブル22を補正するとき、例えば図8(a)に示すように、流入交通流テーブル22で想定した交通量の変化点Aに比べて流入交通流の計測値23の実測交通量の変化点Bがt秒早い場合は、作成した流入交通流テーブル22をt秒だけ前にスライドして、旅行時間を(T−t)に補正する。また、例えば図7(b)に示すように、流入交通流テーブル22で想定している交通量の変化点が生じているとき、流入交通流の計測値23の実測交通量に変化点が生じていなく、流入交通流テーブル22で想定した車両群が到着していない場合は、作成した流入交通流テーブル22を一定時間例えば10秒だけ後にスライドし、旅行時間を(T+10秒)に補正する。この流入交通流テーブル22の作成と実測値による到着タイミングの補正を例えば10秒毎に更新する。なお、交通量が極端に少ない場合や飽和交通流が継続する場合は、交通量の変化点が抽出できないため到着タイミングのずれ補正は行わないでおく。
【0017】
中央処理部4は、この10秒毎に更新される流入交通流テーブル22を用い、近い将来の交通需要に基づく信号制御パラメータを決定する処理を信号制御定数算出部8に行わせる(ステップS3)。この信号制御パラメータを作成するとき、信号制御定数算出部8は、図9のフローチャートに示すように、まず、各方路の流入交通流テーブル22の現在時刻0秒から300秒後の流入台数を合計して、今後予想される飽和度を計算する(ステップS21)。ここで交差点13の1つの流入路jに着目するとき、現示番号iにおいて流入しようとする予測累計交通量Qjと飽和交通流率Sj(設定値)から流入路予測飽和度ρijは、ρij=(Qi/300)/Sjで算出され、流入路予測飽和度ρijの最大値ρi=MAX(ρij)をその現示の予測飽和度とする。この現示予測飽和度ρiの和ρ=Σρiが交差点予測飽和度となる。この交差点予測飽和度ρから必要サイクル長Cnを、Cn=(1.5L+5+T)/(1−ρ)で10秒単位で算出する(ステップS22)。ここでLは損出時間(設定値)、Tは飽和度算出対象外ステップの合計値(設定値)である。この必要サイクル長Cnを算出するとき、交差点予測飽和度ρが1以上の場合には、必要サイクル長Cnをあらかじめ設定された上限値とする。また、必要サイクル長Cnの下限値は各ステップの最低保証秒数の和にする。次に、信号制御定数算出部8は、図10に示すように、全流入路又は特定の流入路の流入交通流テーブル22の値を未来に向かって積算して需要累積値を算出する。そして需要累積値が急激に変化する点を求め、その2点間の時間を予定サイクル長Cとする(ステップS23)。このように需要累積値の変化点をサイクル長に反映することにより、隣接交差点との同期をとることができる。また、需要累積値の変化点が検出できない場合には、必要サイクル長Cnを予定サイクル長Cとする。
【0018】
信号制御定数算出部8は、算出した交差点飽和度ρとi現示の予測飽和度ρiの比により、i現示の基本スプリットSi=ρi/ρを決定し、各現示の可変ステップの秒数Aiを必要サイクル長Cとその現示の基本スプリットSiを使用して下記式で算出する(ステップ24)。
Ai=(C−T−L)×Si−Bi
ここでBiはi現示の青固定ステップ時間である。
この各現示の可変ステップの秒数Aiの下限値は(最低保証秒数+1秒)とし、上限値を(最大監視時間−1秒)とし、この下限値と上限値に抵触した場合は下限値又は上限値で固定して基本スプリットSiの再計算を行う。この決定した基本スプリットSiを到着タイミングを考慮して微調整する(ステップS25)。各方路の停止時間コストは、図11に示すように、各現示ψ1,ψ2、ψ3毎の各単位時間における滞留台数の総和ΣWで計算することができる。この滞留台数は、前回の青現示の打切り時間後に到着した交通量の和とし、発信遅れによるコストΔWは、発信波の伝播係数(5m/s)を考慮してΔW=(Wmax×1.2)/2で計算することができる。ここでWmaxは青開始時の滞留台数である。
各現示ψ1,ψ2、ψ3を有する各サイクルの総遅れ時間は、下記式に示すように、各現示ψ1,ψ2、ψ3毎の滞留台数の総和ΣWと発信遅れによるコストΔWとの和となる。
総遅れ時間=(ΣW1+ΔW1+ΣW2+ΔW2+ΣW3+ΔW3)。
そこであらかじめ設定された可変スプリットについて、最大短縮秒数TSから最大延長秒数TEの範囲で可変ステップAiの値を変化させて、それぞれの場合について次サイクルの総遅れ時間を計算し、総遅れ時間が最小となる値を可変ステップ値と決定する。
【0019】
中央処理部4は、信号制御定数算出部8で近い将来の交通需要に基づいて算出したサイクル長とスプリットを記憶部6に記憶するとともに情報伝送部3から伝送路2を介して隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1に送る。また、中央処理部4は上流側の隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1から送られたサイクル長とスプリットを記憶部6に記憶する。そして信号制御定数算出部8で近い将来の交通需要に基づいて算出したサイクル長とスプリット及び記憶部6に記憶した上流側の隣接交差点13側から送られたサイクル長とスプリットをオフセット自動計算部9に送りオフセットの算出処理を行わせる。すなわち信号制御定数算出部8で算出したスプリットと上流側交差点13から送られたスプリットの結果は上流側交差点13との関係で青信号の開始時点に着目すればオフセットである。これは予測交通情報に基づく遅れ時間が最小となるオフセットである。そこでオフセット自動計算部9は、信号制御定数算出部8で算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点13側から送られたサイクル長とスプリットからオフセットを算出し、算出したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するための基本オフセットとして信号制御定数算出部8に送る。オフセット自動計算部9はこのオフセットの算出処理を各サイクル毎に繰り返して基本オフセットを更新する。
【0020】
信号制御定数算出部8は近い将来の交通需要に基づいて算出したサイクル長とスプリットとオフセット自動計算部9から前のサイクル時に送られたオフセットにより信号制御パラメータを決定する。中央処理部4は、信号制御定数算出部8で決定したサイクル長とスプリットとオフセットを信号制御部12に送り、各信号灯器15a〜15dを制御させる(ステップS4)。
【0021】
このように信号制御を行って交差点13を通過する車両を制御しているとき、中央処理部4は流出情報作成部10に流出交通流情報の作成処理を行わせる(ステップS5)。この流出交通流情報の作成処理では、交通流計測部5で各交差点13の流出側に設けた車両感知器14e〜14hから出力する感知信号を一定時間例えば10秒毎に計数して各方路の流出交通流を計測する。流出情報作成部10は一定時間例えば10秒毎に交通流計測部5で計測している各方路の流出台数の履歴と各信号灯器15a〜15dの現示の青秒数を10秒刻みで300秒分保持し、流入交通流テーブルの履歴データと比較し、各信号灯器15a〜15dの現示毎に分岐率を算出する。そして流入交通流テーブル22と予定現示を比較し、現示に対応した分岐率を用いて10秒毎の流出予測台数を0.1台単位で計算して、図6に示す流出交通流情報21を作成する。ここで流出台数を0.1台単位で計算するのは、流出予測台数の計算結果を信号制御に十分に反映させるためである。情報伝送部3は流出情報作成部10で作成した流出交通流情報21を隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1に伝送路2を介して送信する(ステップS6)。
【0022】
この流入交通流テーブルの作成処理と信号パラメータ算出処理と信号制御及び流出交通流情報の作成処理と送信処理を逐次繰り返して、時系列に作成した流出交通流情報を隣接交差点13に設けた交通信号制御装置1との間で相互に交換することにより、信号制御に交通状況の変化を確実に対応させることができ、近い将来の交通需要に応じた最適な交通信号制御を行うことができる。
【0023】
このように各交差点13に設けた交通信号制御装置1で近い将来の交通需要に応じてサイクル長とスプリットを算出し、算出したサイクル長とスプリット及び上流側交差点13に設けた交通信号制御装置1で算出したサイクル長とスプリットからオフセットを算出するから中央制御装置に依存しないで近い将来の交通需要に応じた最適な交通信号パラメータを決定することができる。
【0024】
また、中央処理部4は、交通流計測部5より得られる感知器情報である占有率または渋滞長により交差点13の各流入路の渋滞状況を判断した結果、渋滞が発生しているときは、渋滞時制御定数選択部11に渋滞時制御パラメータの選択処理を行なわせる(ステップS7)。渋滞時制御定数選択部11は中央処理部4から送られる渋滞状況に応じて記憶部6に記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する。中央処理部4は渋滞時制御定数選択部11で選択した渋滞時制御パラメータを信号制御部12に送り、各信号灯器15a〜15dを制御させる(ステップS8)。
【0025】
このように車両が自由に走行可能な交通状態のときは信号制御定数算出部8で決定した信号制御パラメータにより各信号灯器15a〜15dを制御し、渋滞が発生しているときは、渋滞時制御定数選択部11で選択した渋滞時制御パラメータにより各信号灯器15a〜15dを制御するから、各交差点13に設けた交通信号制御装置1は中央管理装置に依存しないで各信号灯器15a〜15dを交通需要に応じて最適に制御することができる。
【0026】
前記説明では、交通信号制御装置1に流入情報作成部7と信号制御定数算出部8とオフセット自動計算部9と流出情報作成部10及び渋滞時制御定数選択部11を設けた場合について説明したが、図12のブロック図に示すように、流入交通流テーブルの作成処理と信号制御パラメータの算出処理及び流出交通流情報の作成処理のプログラムをあらかじめ磁気ディスクや光ディスク等の外部記憶媒体16に格納しておき、外部記憶媒体16に格納した処理プログラムを交通信号制御装置1の外部記憶媒体I/F17で読み取り、記憶部6に格納し、記憶部6に格納した処理プログラムを使用して中央処理部4でこれらの処理を実行しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の交通信号制御システムの構成図である。
【図2】交通信号制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】道路の交差点の構成図である。
【図4】交通信号制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】流入交通流テーブルの作成処理を示すフローチャートである。
【図6】流出交通流情報の構成を示す模式図である。
【図7】流入交通流テーブルの構成を示す模式図である。
【図8】作成した流入交通流テーブルの補正処理を示す模式図である。
【図9】信号制御パラメータの算出処理を示すフローチャートである。
【図10】予定サイクル長を算出するための累積需要量の変化特性図である。
【図11】到着タイミングのずれ補正を示す模式図である。
【図12】他の交通信号制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1;交通信号制御装置、2;伝送路、3;情報伝送部、4;中央処理部、
5;交通流計測部、6;記憶部、7;流入情報作成部、8;信号制御定数算出部、
9;オフセット自動計算部、10;流出情報作成部、11;渋滞時制御定数選択部、
12;信号制御部、13;交差点、14;車両感知器、15;信号灯器、
21;流出交通流情報、22;流入交通流テーブル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻前後の一定時間の間の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から一定時間前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正して所定時間毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出する信号制御定数算出部を有し、道路の各交差点に設けられた信号灯器を制御する交通信号制御装置において、
中央処理部とオフセット自動計算部及び渋滞時制御定数選択部を有し、
前記中央処理部は、自装置で得られる車両感知器情報である占有率または渋滞長により交差点の各流入路の渋滞状況を判断し、渋滞が発生していないときは、前記信号制御定数算出部と前記オフセット自動計算部に処理を実行させ、渋滞が発生しているときは、前記渋滞時制御定数選択部に処理を実行させ、
前記オフセット自動計算部は、前記信号制御定数算出部で算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点に設けられた交通信号制御装置から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するためのオフセットとし、
前記信号制御定数算出部は、前記算出したサイクル長とスプリットと前記オフセット自動計算部から前のサイクル時に送られたオフセットにより信号制御パラメータを決定し、
前記渋滞時制御定数選択部は、あらかじめ記憶部に記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択し、
前記信号制御定数算出部で決定した信号制御パラメータ又は前記渋滞時制御定数選択部で選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御することを特徴とする交通信号制御装置。
【請求項2】
隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻前後の一定時間の間の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から一定時間前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正して所定時間毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出して交差点に設けた信号灯器を制御する交通信号制御方法において、
制御装置は、車両感知器情報で得られる占有率または渋滞長により交差点の各流入路の渋滞状況を判断する工程と、
渋滞が発生していないときは、前記サイクル長とスプリットを算出する工程と、
算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するためのオフセットとする工程と、
前記算出したサイクル長とスプリットとサイクル時に更新したオフセットにより信号制御パラメータを決定する工程と、
渋滞が発生しているときは、あらかじめ記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する工程と、
前記決定した信号制御パラメータ又は選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御する工程と、
を機能させることを特徴とする交通信号制御方法。
【請求項1】
隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻前後の一定時間の間の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から一定時間前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正して所定時間毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出する信号制御定数算出部を有し、道路の各交差点に設けられた信号灯器を制御する交通信号制御装置において、
中央処理部とオフセット自動計算部及び渋滞時制御定数選択部を有し、
前記中央処理部は、自装置で得られる車両感知器情報である占有率または渋滞長により交差点の各流入路の渋滞状況を判断し、渋滞が発生していないときは、前記信号制御定数算出部と前記オフセット自動計算部に処理を実行させ、渋滞が発生しているときは、前記渋滞時制御定数選択部に処理を実行させ、
前記オフセット自動計算部は、前記信号制御定数算出部で算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点に設けられた交通信号制御装置から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するためのオフセットとし、
前記信号制御定数算出部は、前記算出したサイクル長とスプリットと前記オフセット自動計算部から前のサイクル時に送られたオフセットにより信号制御パラメータを決定し、
前記渋滞時制御定数選択部は、あらかじめ記憶部に記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択し、
前記信号制御定数算出部で決定した信号制御パラメータ又は前記渋滞時制御定数選択部で選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御することを特徴とする交通信号制御装置。
【請求項2】
隣接交差点からの流出交通流情報と隣接交差点からの旅行時間により、現在時刻前後の一定時間の間の予測流入台数を示す流入交通流テーブルを作成し、作成した流入交通流テーブルと現在時刻から一定時間前の間の実際に計測している流入交通量とを比較し、作成した流入交通流テーブルと計測している流入交通流量の交通量が小から大に立ち上がる変化点に着目して流入交通流テーブルの到着タイミングを補正して所定時間毎に更新し、更新した流入交通流テーブルを用いて近い将来の交通需要に基づいてサイクル長とスプリットを算出して交差点に設けた信号灯器を制御する交通信号制御方法において、
制御装置は、車両感知器情報で得られる占有率または渋滞長により交差点の各流入路の渋滞状況を判断する工程と、
渋滞が発生していないときは、前記サイクル長とスプリットを算出する工程と、
算出したサイクル長とスプリット及び上流側の隣接交差点から送られるサイクル長とスプリットによりオフセットを計算して順次更新し、更新したオフセットを次の信号制御パラメータを算出するためのオフセットとする工程と、
前記算出したサイクル長とスプリットとサイクル時に更新したオフセットにより信号制御パラメータを決定する工程と、
渋滞が発生しているときは、あらかじめ記憶した渋滞時制御パラメータのパターンのなかから渋滞のバランスが最適となることを意図した渋滞時制御パラメータを選択する工程と、
前記決定した信号制御パラメータ又は選択した渋滞時制御パラメータにより交差点に設けた信号灯器を制御する工程と、
を機能させることを特徴とする交通信号制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−134568(P2010−134568A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308085(P2008−308085)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】
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