説明

交通情報管理システム、交通情報管理サーバおよび交通情報処理装置

【課題】 交通に関する情報の管理を効率化し、利用を容易にする技術を提供する。
【解決手段】 車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システムに、車両および道路上に存在する物体の情報を取得する情報取得手段と、前記情報に関連付けられる空間である情報空間を定義する情報空間定義手段と、車両の情報空間と道路上に存在する物体の情報空間との交わりを判定する判定手段と、前記判定手段によって車両の情報空間と道路上に存在する物体の情報空間とが交わっていると判定された場合に、前記車両において、前記物体の情報空間に関連付けられている情報に応じたプログラムを実行するプログラム実行手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両および道路上に存在する物体の情報を管理・利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車ではエンジン、ブレーキ、ステアリング、エアバッグなど様々な機器がECU(Electronic Control Unit)によって制御されている。また、ナビゲーションやテ
レマティクスといった車載情報システムも搭載されている。これらのシステムでは、周囲から情報を取得し、この情報に基づいて電子機器上でプログラムを実行している。
【0003】
例えば、プリクラッシュシステムは、レーダーによって周囲の物体との衝突を予測する。このシステムでは、衝突を予測すると段階に応じて、運転者への警告、ブレーキの自動制御、シートベルトの巻き込み、エアバックの作動などを行う。
【0004】
また、経路探索を行うカーナビゲーションシステムでは、渋滞情報を取得した際には渋滞を迂回できるような経路が存在するか再探索を行う機能もある。その他にも、周辺の店舗などの情報をディスプレイに表示して乗員に店舗を案内する機能がある。
【0005】
これらのプログラムは、関連する情報を取得した際に実行されるように構成されている。
【特許文献1】特開2004−268628号公報
【特許文献2】特開2002−48562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来技術では、各プログラムはそれぞれ情報の取得を行い、プログラムの実行タイミングについては個別に判断していた。
【0007】
すなわち、プログラムの開発においてプログラムごとに実行タイミングの判定処理を実装しなければならず、開発効率の低下、開発コストの増大という問題が生じていた。
【0008】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車両および道路上に存在する物体に関する情報の管理を効率化し利用を容易にする技術を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、車両用のプログラムの開発効率を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような構成をとる。
【0011】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システムである。車両に関する情報とは、例えば、車両の現在位置、走行速度、走行方向、目的地などである。また、道路上に存在する物体とは、例えば、車両、信号機、道路自体や、店舗、観光スポットなどである。道路上に存在する物体の情報とは、車両であれば、現在位置、走行速度、走行方向、目的地などである。また、信号機であれば、現在の信号の状態(赤や青)、次の信号状態の変化まで
の時間などである。また、道路自体であれば、路面状況、交通規制情報、渋滞情報などである。店舗や観光スポットであれば、その位置や、店舗や観光スポットを紹介する情報などである。
【0012】
本発明に係る交通情報管理システムは、情報取得手段、情報空間定義手段、判定手段、およびプログラム実行手段を有する。
【0013】
情報取得手段は、上記した車両および道路上に存在する物体の情報を取得する。例えば、車両については、現在位置はGPS(Global Positioning System)によって、速度は速度計によって取得する。また、信号機については信号機の状態を管理・記憶している制御装置から取得する。また、道路自体については、路面状況や渋滞情報などをカメラやレーダ等のセンサを有する路側機から取得する。また、店舗の情報は、通信によって取得する。
【0014】
情報空間定義手段は、情報取得手段が取得した情報に関連付けられる空間である情報空間を定義する。情報空間は、関連付けられた情報が車両などに影響を及ぼす範囲であり、情報と情報空間とは関連付けられて本交通情報管理システム上で管理される。(なお、車両および道路上に存在する物体の情報に関連付けられる情報空間のことをそれぞれ単に、車両の情報空間、道路上に存在する物体の情報空間と呼ぶ。)
判定手段は、車両の情報空間と道路上に存在する物体の情報空間との交わりを判定する。
【0015】
プログラム実行手段は、判定手段によって車両の情報空間と道路上に存在する物体の情報空間とが交わっていると判定された場合に、この車両において、この物体の情報空間に関連付けられている情報に応じたプログラムを実行する。
【0016】
例えば、車両の情報空間と交わった情報空間が他の車両の情報に関連付けられている場合は、衝突の警告や衝突回避のための自動制御を行うプログラムを実行する。また、車両の情報空間と交わった情報空間が路面の渋滞情報に関連付けられている場合は、目的地までの経路の再探索を行うプログラムを実行する。また、車両の情報空間と交わった情報空間が店舗の情報に関連付けられている場合は、この店舗に関する情報を乗員に対して通知するプログラムを実行する。このように、交わった情報空間に関連付けられている情報に基づいて、所定のプログラムを実行する。ここでは、情報空間が交わったときに実行されるプログラムは1つとして説明したが、実行されるプログラムは複数であっても構わない。
【0017】
以上のように、本発明の第1の態様に係る交通情報管理システムでは、交通に関する情報をその種類に依らず情報空間に関連付けて一元的に管理し、各プログラムで共通して利用できるため、交通に関する情報の管理が効率化され、利用が容易になる。また、各プログラムで個別に実行タイミングの判断についての開発する必要がなくなるため、車両用プログラムの開発の効率が向上する。
【0018】
また、本発明の第1の態様における情報空間定義手段は、車両の走行速度および車両が走行中の道路の道幅を取得する手段を有し、取得された走行速度および道幅に基づいて車両の情報空間の大きさを定義することも好ましい。
【0019】
走行速度は、車両内に搭載された速度計や、路側に設置されたレーダーや磁気を利用するセンサなどにより取得する。また、道路の道幅は、道幅が格納されている地図情報を予め保持したり、基地局から通信により道幅を取得したり、測距センサの使用、カメラで道路の画像を撮影し画像解析を行うなどの方法により取得する。
【0020】
車両の走行速度に応じて、周囲の情報から影響を受ける範囲を主に進行方向に対して拡げると良い。例えば、走行速度が大きいほど衝突予測の範囲を拡げることが好ましく、店舗案内もより遠くの店舗の情報まで案内することが好ましい。また、道幅は周囲を走行する車両の範囲を定める要素であるため、道幅に応じて情報空間を拡大することが好ましい。
【0021】
このように走行速度や道幅に応じて情報空間の大きさを変えることで、プログラムの実行開始のための判断をより適切に行うことが可能となる。
【0022】
また、本発明の第1の態様において、車両は複数のプログラムを有し、情報空間定義手段は、各プログラムの実行条件に応じて、異なる大きさの情報空間を定義することが好ましい。例えば、衝突回避のための自動制動プログラムに対応する情報空間は車両の進行方向であって比較的至近な距離に定義し、衝突警告プログラムに対応する情報空間はこれよりも前方の範囲に定義することが好ましい。店舗案内プログラムに対応する情報空間はこれらよりも広範囲に定義することが好ましい。
【0023】
このように、実行するプログラムごとに異なる範囲の情報空間を定義することで、複数のプログラムに対して適切な実行条件を設定することが可能となる。また、複数のプログラムの実行タイミングの判定処理を一元化することが可能となり、開発効率の向上および開発コストの低減が可能となる。
【0024】
また、本発明の第1の態様に係る交通情報管理システムは、車両内の状況を取得する車内状況取得手段をさらに有することが好ましい。そして、本発明の第1の態様におけるプログラム実行手段は、車内状況取得手段が取得した車両内の状況に応じてプログラムの実行方法を変更することが好ましい。
【0025】
車両内の状況とは、例えば、運転者および同乗者の人数、その構成、乗車位置などである。これらの情報は、シートに備えられた圧力センサや、画像センサなどにより取得する。
【0026】
そして、例えば、チャイルドシートを使用している場合には、衝突の際に、その座席に備えられたエアバックを動作させない。また、店舗案内の際に、乗員の構成が大人と子供を含む場合には、ファミリー向けの店舗を優先的に案内するようにする。
【0027】
このように、車内の状況に応じてプログラムの実行方法を変更することで、より状況に即したプログラムの実行を行うことが可能となる。
【0028】
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システム上の交通情報管理サーバである。本発明の第2の態様に係る交通情報管理サーバは、情報空間取得手段、判定手段、および通知手段を有する。
【0029】
情報取得手段は、車両および道路上に存在する物体の情報を取得する。情報空間取得手段は、車両および道路上に存在する物体の情報をその情報に関連付けられた情報空間とともに取得する。判定手段は、車両の情報空間と道路上に存在する物体の情報空間との交わりを判定する。通知手段は、判定手段によって情報空間が交わっていると判定された場合に、情報空間が交わったことを、道路上に存在する物体の情報とともに車両に通知する。
【0030】
本発明の第2の態様に係る交通情報管理サーバは、車両および道路上に存在する物体の情報を、情報空間と関連付けて一元的に管理する。そして、交通情報管理サーバにおいて情報空間の交わりを判定手段が判定して、情報空間が交わった場合にはその旨の通知を通知手段が車両に対して行う。
【0031】
通知手段は、情報空間が交わったことを車両に通知する際に、交わった道路上に存在する物体の情報とともに通知する。この通知は、情報空間の交わりを通知するだけであっても良く、車両に対してプログラムの実行を命令する通知であっても良い。
【0032】
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システム上の交通情報管理サーバである。本発明の第3の態様に係る交通情報管理サーバは、情報空間取得手段および情報空間通知手段とを有する。
【0033】
情報空間取得手段は、車両および道路上に存在する物体の情報をその情報に関連付けられた情報空間とともに取得する。情報空間通知手段は、道路上に存在する物体の情報を、この情報に関連付けられた情報空間とともに車両に通知する。
【0034】
本発明の第3の態様に係る交通情報管理サーバは、車両および道路上の物体の情報を、情報空間と関連付けて一元的に管理する。第3の態様では、上記の情報と情報空間とを車両に対して通知する。すなわち、車両は、交通情報管理サーバから自車の周囲に存在する情報および情報空間を取得することが可能となる。これにより各車両は、取得した情報空間の交わりを自ら判断することでプログラムの実行タイミングの判定を行うことが可能となる。
【0035】
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システム上の交通情報処理装置である。本発明の第4の態様に係る交通情報処理装置は、情報空間定義手段、情報空間取得手段、判定手段、およびプログラム実行手段とを有する。
【0036】
第4の態様における情報空間定義手段は、自車に関する情報に関連付けられる空間である情報空間を定義する。情報空間取得手段は、道路上に存在する物体の情報をその情報に関連付けられた情報空間とともに取得する。判定手段は、情報空間定義手段が定義した自車の情報空間と、情報空間取得手段が取得した情報空間との交わりを判定する。プログラム実行手段は、判定手段によって両情報空間が交わると判定された場合に、交わった情報空間の種類に応じたプログラムを実行する。
【0037】
上記のように、第4の態様に係る交通情報処理装置では、自車の情報空間は交通情報処理装置で定義し、道路上の物体についての情報空間は外部から取得する。そして、情報空間の交わりを判断してプログラムを実行する。その際、交わった情報空間に関連付けられている情報の種類や内容を考慮してプログラムを実行する。
【0038】
このように、本発明の第4の態様に係る交通情報処理装置では、交通に関する情報をその種類に依らず情報空間に関連付けて情報空間の交わりに基づいてプログラムを実行しているため、各プログラムでの実行タイミングの判断についての開発を省略することが可能となり、車両用プログラムの開発の効率が向上する。
【0039】
本発明の第4の態様は、自車の走行速度および自車が走行中の道路の道幅を取得する走
行状況取得手段をさらに有することが好ましい。そして、本発明の第4の態様における情報空間定義手段は、走行状況取得手段が取得した走行速度および道幅とに基づいて、自車に関する情報に関連付けられる情報空間の大きさを定義する。
【0040】
このように走行速度や道幅に応じて情報空間の大きさを変えることで、プログラムの実行開始のための判断をより適切に行うことが可能となる。
【0041】
本発明の第4の態様において、交通情報処理装置は複数のプログラムを有し、情報空間定義手段は、各プログラムの実行条件に応じて、異なる大きさの情報空間を定義することも好ましい。これにより、各プログラムごとに適切な実行条件を設定することが可能となる。また、複数のプログラムの実行タイミングの判定処理を一元化することが可能となり、開発効率の向上および開発コストの低減が可能となる。
【0042】
本発明の第4の態様に係る交通情報処理装置は、自車内の状況を取得する車内状況取得手段をさらに有することが好ましい。そして、本発明の第4の態様におけるプログラム実行手段は、車内状況取得手段が取得した自車内の状況に応じて、プログラムの実行方法を変更することが好ましい。これにより、より状況に即したプログラムの実行を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、車両および道路上に存在する物体に関する情報の管理が効率化されるとともにその利用が容易になる。また、本発明によれば、車両用プログラムの開発効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0045】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態では、交通情報管理サーバが車両情報、渋滞情報、店舗情報を一元管理し、車両がこれらの情報を取得してプログラムの実行判断を行う。
【0046】
<システム構成>
図1は、本実施形態のシステム構成を示す図である。本システムは、ネットワーク8を介して接続された、交通情報管理サーバ1、車両2、3、路側機4、店舗5を含む。車両2,3はアクセスポイント(AP)7を介してネットワーク8に接続される。
【0047】
[交通情報管理サーバ]
図2は交通情報管理サーバ1の構成を示す図である。交通情報管理サーバ1は、情報空間取得部41、座標変換部42、情報空間記憶部43、および情報空間通知部44から構成される。これらの各部の機能は、CPU(中央演算処理装置)がメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0048】
情報空間取得部41は、車両2、3、路側機4、店舗5から情報とこれらの情報に関連付けられた空間である情報空間とを取得する。取得した情報空間が車両2,3等を原点とする座標系で表されている場合には、その車両等の現在位置をもとに、座標変換部42が絶対座標(緯度,経度、高さ)に変換する。そして、情報空間記憶部43は、絶対座標で表された情報空間を、車両等の情報と関連付けて記憶する。
【0049】
情報空間通知部44は、車両2,3から情報空間を要求されたときに、情報空間記憶部43に記憶されている情報空間およびこれに関連付けられている情報を要求元に通知する
。この際、情報空間記憶部43では情報空間は絶対座標を用いて管理されているので、座標変換部42は要求元の車両の位置を原点とする座標系に座標変換してから通知する。ただし、要求元の車両側で座標変換を行う場合には、絶対座標で通知しても良い。
【0050】
[車両]
図3は、車両2に搭載された交通情報処理装置の構成を示す図である。交通情報処理装置は、通信部11、ミリ波レーダ12、速度センサ13、ナビゲーション装置14、走行制御部15、統合制御部16から構成される。これらの各部は車内LAN17によって接続されている。
【0051】
通信部11は、アクセスポイント7との間で無線通信を行う。また、通信部11によって、他の車両と車車間通信を行ったり、路側機から送信される情報を受信したりする。
【0052】
ミリ波レーダ12は、他の車両や障害物などの相対位置および相対速度を計測する。速度センサ13は、車両2の走行速度を計測する。速度センサ13は、走行速度が計測できるものであれば、磁気式、機械式などいかなる技術を用いても構わない。
【0053】
ナビゲーション装置14は、GPS(Global Positioning System)、地図情報を格納し
た記録部、表示部、入力部などを有する。ナビゲーション装置14は、入力部から目的地を入力され、GPSから取得した現在位置および記録部に格納された地図情報を用いて最適な経路を検索し、表示部に表示する。また、周囲に存在する店舗を検索・表示する機能を有する。また、ナビゲーション装置14が有する地図情報には道路の道幅が記録されているので、GPSにより取得した現在位置を利用して、車両2が走行中の道路の道幅を取得することができる。
【0054】
走行制御部15は、ブレーキやステアリングやエンジンを制御する複数のECUから構成される。走行制御部15は、例えば、衝突回避のための制動を行ったり、適切な走行速度や車間距離を保つための制御を行う。また、走行制御部15は、衝突の警告などを運転者に対して行う。
【0055】
統合制御部16は、自車の情報空間および道路上に存在する物体の情報空間の交わりを判定し、情報空間が交わっている場合には走行制御部15やナビゲーション装置14に対してプログラム実行の通知を行う。
【0056】
図4は、統合制御部16の構成を示す図である。統合制御部16は、情報空間定義部21、情報空間取得部22、情報空間記憶部23、判定部24、およびプログラム実行部25を有する。これらの各部の機能は、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0057】
情報空間定義部21は、実行判定を行うプログラムごとに情報空間を定義し、情報空間記憶部23に格納する。情報空間定義部21は、プログラムごとに予め定められた既定領域と、速度センサ13によって取得された自車の走行速度、ナビゲーション装置14によって取得された走行中の道路の道幅とに基づいて、情報空間を定義する。
【0058】
情報空間取得部22は、通信部11を介して交通情報管理サーバ1に対して自車の周囲に存在する物体の情報およびこの情報に関連付けられている情報空間を要求する。情報空間取得部22は、交通情報管理サーバ1から取得した情報および情報空間を関連付けて情報空間記憶部23に格納する。
【0059】
判定部24は、自車の情報空間と、周囲に存在する物体の情報空間の交わりを判定する
。両情報空間が交わっている場合には、プログラム実行部25が走行制御部15やナビゲーション装置14に対してプログラムの実行を通知する。実行されるプログラムは、交わった情報空間の種類に応じて決定される。また、実行通知の際に、交わった情報空間に関連付けられている情報の内容がプログラムに渡される。
【0060】
<情報空間>
図5を用いて情報空間について説明する。図5は、情報空間定義部21によって定義された車両2の情報空間を概念的に示した図である。
【0061】
車両2に対して複数の情報空間31,32,33,34が定義される。これらの情報空間は、実行の対象となるプログラムごとに位置・大きさ・範囲などが異なる領域を持つ。
【0062】
情報空間31は、衝突回避プログラムの実行判定領域となる情報空間(以下、衝突回避プログラム用情報空間という)である。この情報空間と、他の車両の衝突回避プログラム用情報空間が交わったときに、衝突回避プログラムが実行される。衝突回避プログラムは、走行制御部15によって実行され、車両に対して制動処理を行う。
【0063】
情報空間32は、衝突警告プログラム用情報空間であり、他の車両の衝突警告プログラム用情報空間が交わったときに、衝突警告プログラムが実行される。衝突警告プログラムは、走行制御部15によって実行され、運転者に対して、音声を利用したりシートベルト引っ張ることなどによって衝突の可能性が高いことを通知する。
【0064】
情報空間33は、経路再探索プログラム用情報空間であり、渋滞情報の情報空間が交わったときに、経路再探索プログラムが実行される。経路再探索プログラムは、ナビゲーション装置14によって実行され、目的地までの所要時間が最短となる経路を再探索する。この探索の際に、交わった情報空間に関連付けられている渋滞情報を考慮して経路の探索を行う。
【0065】
情報空間34は、店舗案内プログラム用情報空間であり、店舗情報の情報空間が交わったときに、店舗案内プログラムが実行される。店舗案内プログラムは、ナビゲーション装置14によって実行され、その店舗に関する情報を、ナビゲーション装置14の表示部に表示したり、音声によって運転者に通知する。
【0066】
これらの情報空間は、車両2の位置を原点とする3次元座標系で管理される。また、情報空間の範囲は、車両の走行速度および走行中の道路の道幅に基づいて定義される。
【0067】
図6は、情報空間記憶部23に格納される情報空間のデータ構造を示す図である。図6に示すように、情報空間は、実行の対象となるプログラムと、情報空間の3次元座標およびプログラム実行の判定対象となる情報空間の種類によって管理される。
【0068】
本実施形態では、情報空間は直方体形状としたが、円筒形状やドーム形状などどのような形状であっても構わない。また、車両2の複数の情報空間は、互いに交わっていても構わない。
【0069】
<処理フロー>
[情報空間のサーバへの登録処理]
[[車両]]
次に、情報空間を定義し交通情報管理サーバ1に登録する処理について説明する。まず、図7のフローチャートを用いて車両2が交通情報管理サーバ1に登録する処理を説明する。
【0070】
ステップS101で、車両2は、速度センサ13から走行速度を、ナビゲーション装置14の地図情報から道幅を取得する。
【0071】
ステップS102で、情報空間定義部21は、プログラムごとに情報空間を定義する。この際、プログラムごとに予め定められた既定の範囲と、上記ステップで取得した走行速度および道幅とに基づいて情報空間の範囲を定義する。この情報空間は、上記したように自車を原点とする座標系であらわされる。
【0072】
ステップS103において、上記で定義した情報空間を、通信部11を介して情報管理サーバ1に通知し登録する。この際、自車の現在位置、走行速度、進行方向、目的地などの情報も合わせて通知する。車両の現在位置は、ナビゲーション装置14のGPSから取得する。走行速度は、速度センサ13から取得する。進行方向および目的地はナビゲーション装置14から取得する。
【0073】
ステップS104において、上記通知を受け取った交通情報管理サーバ1は、車両2を原点として表されている情報空間の座標を、絶対座標系へと変換する。この座標変換は、車両の現在位置(絶対座標)、車両の進行方向、および情報空間(車両2を中心とする座標系)とを用いて行うことができる。
【0074】
ステップS105において、交通情報管理サーバ1は、座標変換した情報空間の範囲と、通知された車両に関する情報とを関連付けて記憶する。
【0075】
[[路側機および店舗]]
次に、路側機4が交通情報管理サーバ1に情報空間を登録する処理を説明する。路側機4は路面の状況や、渋滞情報をセンサによって取得する。この情報を、情報空間とともに交通情報管理サーバ1に通知する。
【0076】
路側機4は移動しないため、交通情報管理サーバ1に位置が登録されていれば、再度通知を行う必要はない。したがって、路面状況や渋滞情報などの情報のみを通知しても良い。
【0077】
また、情報空間の広さが変わって交通情報管理サーバ1に通知を行う必要が生じた場合も、路側機4を原点とする座標系で情報空間を表さずに、絶対座標系を用いた座標で交通情報管理サーバ1に通知する。
【0078】
また、店舗5が交通情報管理サーバ1に情報空間を登録する処理も路側機4の場合と同様である。
【0079】
[車両における判定処理]
車両2におけるプログラム実行判定処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0080】
ステップS201で、上記のように定義され情報空間記憶部43に記憶されている自車の情報空間を取得する。
【0081】
ステップS202において、情報空間取得部22は、周囲の物体の情報空間の取得要求を交通情報管理サーバ1に対して送信し、情報空間およびその情報に関連付けられた情報を取得する。
【0082】
ステップS203において、自車の情報空間と、取得した情報空間との交わりを判定する。自車の情報空間は、図6に示したようにプログラムごとに定義されており、その判定対象となる情報空間が交わったときのみ、両情報空間が交わったと判定する。
【0083】
例えば、自車の店舗案内プログラム用情報空間34と、店舗5の情報空間が交わった場合は情報空間が交わったと判定する。逆に、店舗案内プログラム用情報空間34、渋滞情報の情報空間が交わっても、両情報空間は交わっていると判定されない。
【0084】
ステップS204で上記判定結果にしたがって、処理を分岐する。両情報空間が交わっていると判定された場合には、ステップS205に進み、対応するプログラムが実行される。この際、情報空間に関連付けられている情報が、プログラムの中で利用される。ステップS204で交わっていないと判定された場合には、処理を終了する。
【0085】
<動作例>
次に、図9の状況を例に具体的なプログラム実行判定処理の動作について説明する。図9には、車両2および車両A,B、路側機4、店舗5の情報空間が示されている。車両2の情報空間31,32,33,34は、図面の見易さのために図5における情報空間と異なる形状をしている。また、車両A,Bについては、衝突警告プログラム用情報空間32a,32bのみを示してある。
【0086】
車両2は、まず自車の走行速度および道路の道幅に基づいて情報空間31,32,33,34を定義する。そして車両2は、車両A、Bおよび路側機4、店舗5の情報空間を交通情報管理サーバ1から取得する。これらの情報空間は、情報空間記憶部23に格納される。
【0087】
次に、判定部24がこれらの情報空間の重なりを判定する。衝突回避プログラム用情報空間31と重なる情報空間はないので、衝突回避プログラムは実行されない。
【0088】
衝突警告プログラム用情報空間32は、車両Aの情報空間32aと重なるため、プログラム実行部25は、走行制御部15に衝突警告プログラムの実行を通知する。この際、衝突警告プログラムは、情報空間32aに関連付けられている車両Aに関する情報(走行速度、進行方向など)を利用して、衝突の可能性が高いことを運転者に音声などにより通知する。
【0089】
経路再探索プログラム用情報空間33は、路側機4の渋滞情報に関する情報空間35と重なるため、プログラム実行部25は、ナビゲーション装置14に対して経路再探索プログラムの実行を通知する。この際、ナビゲーション装置14は、情報空間35に関連付けられている渋滞情報を利用して最短経路の再探索を行う。
【0090】
店舗案内プログラム用情報空間34は、店舗5の情報空間36と交わっているため、プログラム実行部25は、ナビゲーション装置14に対して店舗案内プログラムの実行を通知する。この際、店舗案内プログラムは、情報空間36と関連付けられている店舗に関する情報を、運転者に対して案内する。なお、店舗案内プログラム用情報空間34は、車両Bの情報空間32bとも重なっている。しかし、店舗案内プログラム用情報空間34の重なりの判定対象は、店舗の情報空間である(図6参照)。したがって、店舗案内プログラム用情報空間34と車両Bの情報空間は重なっているとは判定しない。
【0091】
<効果>
このように、交通に関する情報を情報空間に関連付けて交通情報管理サーバ1に管理するため、交通に関する情報の管理が効率化され、その利用も容易になる。また、各車両が
周囲の物体の情報および情報空間を交通情報管理サーバ1から取得し、情報空間の交わりがある場合にプログラムを実行することで、各車両におけるプログラム実行の判定は、全てのプログラムで情報空間の重なりを判断するだけで行うことができる。したがって、車両用のプログラム開発において、各プログラムごとに実行判断ルーチンの開発をする必要がなく、共通の実行判断ルーチンを使用することが可能となり、開発効率が向上する。また、開発コストも低下する。
【0092】
また、車両についての情報空間をその車両の走行速度および走行中の道路の道幅に基づいて変化させるため、プログラムの実行開始判断をより適切に行うことが可能となる。
【0093】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、交通情報管理サーバが車両情報、渋滞情報、店舗情報を一元管理する。そして、交通情報管理サーバが車両におけるプログラムの実行判断もあわせて行う。本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態と基本的に同様であるので、異なる部分についてのみ説明する。
【0094】
図10は、本発明の第2の実施形態における交通情報管理サーバ1の構成を示す図である。交通情報管理サーバ1は、情報空間取得部41、座標変換部42、情報空間記憶部43、判定部45、および通知部46から構成される。情報空間取得部41、座標変換部42、および情報空間記憶部43は第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0095】
判定部45は、情報空間記憶部43に記憶されている、車両に関する情報空間が他の情報空間と交わっているか判定する。判定処理の内容は第1の実施形態の場合と同様である。
【0096】
判定部45が車両の情報空間と他の情報空間とが交わっていると判定した場合に、通知部46は、情報空間が交わったことを車両に対して通知する。この際、この情報空間に関連付けられて情報空間記憶部43に記憶されている情報も同時に、車両に対して通知する。
【0097】
この通知を受け取った車両では、プログラム実行部25が交わった情報空間およびこれに関連付けられている情報をもとにプログラムの実行を走行制御装置15やナビゲーション装置14に対して通知する。
【0098】
このような構成をとることで、車両におけるプログラムの実行判断は交通情報管理サーバ1側で一括して行うことが可能となり、車両用のプログラムの開発効率が向上する。また、実行判断処理がサーバ側で行われるため、車両の処理負荷が軽減する。
【0099】
(その他の変形例)
本実施形態においては、周囲の物体の情報および情報空間は、交通情報管理サーバ1から取得していたが、他の方法により取得しても良い。例えば、車両2はミリ波レーダ12を用いて、周囲の車両A,Bの位置および相対速度を取得し、それに基づいて情報空間を自車で定義してそれを使用しても良い。また、車両2は、通信部11を介して車両A,Bや路側機4、店舗5と通信を行うことで、情報空間を取得しても良い。
【0100】
上記の実施形態では、車両(との衝突)、渋滞、店舗に関する情報およびそれに伴って実行するプログラムのみを紹介したが、その他にどのような情報およびプログラムを扱っても良い。例えば、明るさを情報として、ライトの点灯、消灯を制御または警告するプログラムや、雨を検知してワイパーを制御するプログラムなど様々なものに利用することができる。
【0101】
また、車両2は、車内センサを設けて乗員数や乗員構成などを取得し、プログラム実行部25は車内の状況も考慮してプログラムを実行するか判断しても良い。例えば、エアバッグを始動する場合には、チャイルドシートが使われている座席に対してはエアバッグを動作させない。また、車内カメラの画像解析により、乗員の構成が大人と子供であれば、店舗案内プログラムで家族向きの店舗を優先的に案内する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1の実施形態におけるシステム構成の例を示す図である。
【図2】第1の実施形態における交通情報管理サーバの構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態における車両の構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態における統合制御部の構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態における車両の有する情報空間を説明する概念図である。
【図6】第1の実施形態における情報空間のデータ構造を説明する図である。
【図7】第1の実施形態における情報空間の登録処理を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態におけるプログラム実行判断処理を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態におけるシステム構成の例を示す図である。
【図10】第2の実施形態における交通情報管理サーバの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0103】
1 交通情報管理サーバ
2、3 車両
4 路側機
5 店舗
7 アクセスポイント
8 ネットワーク
11 通信部
12 ミリ波レーダ
13 速度センサ
14 ナビゲーション装置
15 走行制御部
16 統合制御部
17 車内LAN
21 情報空間定義部
22 情報空間取得部
23 情報空間記憶部
24 判定部
25 プログラム実行部
31,32,32a,32b,33,34,35,36 情報空間
41 情報空間取得部
42 座標変換部
43 情報空間記憶部
44 情報空間通知部
45 判定部
46 通知部
A,B 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システムであって、
車両および道路上に存在する物体の情報を取得する情報取得手段と、
前記情報に関連付けられる空間である情報空間を定義する情報空間定義手段と、
車両の情報空間と道路上に存在する物体の情報空間との交わりを判定する判定手段と、
前記判定手段によって車両の情報空間と道路上に存在する物体の情報空間とが交わっていると判定された場合に、前記車両において、前記物体の情報空間に関連付けられている情報に応じたプログラムを実行するプログラム実行手段と、
を有する交通情報管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の交通情報管理システムであって、
前記情報空間定義手段は、車両の走行速度および車両が走行中の道路の道幅を取得する手段を有し、取得された走行速度および道幅に基づいて前記車両の情報空間の大きさを定義する
ことを特徴とする交通情報管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の交通情報管理システムであって、
車両は複数のプログラムを有し、
前記情報空間定義手段は、各プログラムの実行条件に応じて、異なる大きさの情報空間を定義する
ことを特徴とする交通情報管理システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の交通情報管理システムであって、
車両内の状況を取得する車内状況取得手段をさらに有し、
前記プログラム実行手段は、前記車内状況取得手段が取得した車両内の状況に応じてプログラムの実行方法を変更する
ことを特徴とする交通情報管理システム。
【請求項5】
車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システム上の交通情報管理サーバであって、
車両および道路上に存在する物体の情報をその情報に関連付けられた情報空間とともに取得する情報空間取得手段と、
車両の情報空間と道路上に存在する物体の情報空間との交わりを判定する判定手段と、
前記判定手段によって情報空間が交わっていると判定された場合に、前記情報空間が交わったことを、前記道路上に存在する物体の情報とともに前記車両に通知する通知手段と、
を有する交通情報管理サーバ。
【請求項6】
車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システム上の交通情報管理サーバであって、
車両および道路上に存在する物体の情報をその情報に関連付けられた情報空間とともに取得する情報空間取得手段と、
前記道路上に存在する物体の情報を、該情報に関連付けられた情報空間とともに車両に通知する情報空間通知手段と、
を有する交通情報管理サーバ。
【請求項7】
車両に関する情報および道路上に存在する物体の情報をそれぞれ空間に関連付けて管理する交通情報管理システム上の交通情報処理装置であって、
自車に関する情報に関連付けられる空間である情報空間を定義する情報空間定義手段と、
道路上に存在する物体の情報をその情報に関連付けられた情報空間とともに取得する情報空間取得手段と、
前記情報空間定義手段が定義した自車の情報空間と、前記情報空間取得手段が取得した情報空間との交わりを判定する判定手段と、
前記判定手段によって両情報空間が交わると判定された場合に、交わった情報空間の種類に応じたプログラムを実行するプログラム実行手段と、
を有する交通情報処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の交通情報処理装置であって、
自車の走行速度および自車が走行中の道路の道幅を取得する走行状況取得手段をさらに有し、
前記情報空間定義手段は、前記走行状況取得手段が取得した走行速度および道幅に基づいて、自車に関する情報に関連付けられる情報空間の大きさを定義する
ことを特徴とする交通情報処理装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の交通情報処理装置であって、
該交通情報処理装置は複数のプログラムを有し、
前記情報空間定義手段は、各プログラムの実行条件に応じて、異なる大きさの情報空間を定義する
ことを特徴とする交通情報処理装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の交通情報処理装置であって、
自車内の状況を取得する車内状況取得手段をさらに有し、
前記プログラム実行手段は、前記車内状況取得手段が取得した自車内の状況に応じて、プログラムの実行方法を変更する
ことを特徴とする交通情報処理装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載の交通情報処理装置を備えた車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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