説明

交通流制御装置

【課題】本線道路およびこの本線道路に接続された複数の合流路における渋滞の発生を効果的に抑制可能な交通流制御装置を提供する。
【解決手段】
サグ部Sよりも上流側において複数の合流路W,W,…が接続された本線道路M上において、渋滞発生予測部51がサグ部Sの渋滞の発生を予測する。渋滞発生予測部51によってサグ部Sにおける渋滞の発生が予測された場合に、流入量制御部53が、複数の合流路W,W,…の各々から本線道路Mへ流入する車両の流入量Q(t),Q(t),…をそれぞれ制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本線道路およびこの本線道路に接続された複数の合流路における渋滞の発生を抑制するための交通流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、本線道路および本線道路に接続された複数の合流路における渋滞の発生を抑制することが広く要求されている。このような要求に対して、従来、道路における渋滞の発生を防止するための道路制御方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この道路制御方法では、本線道路上に設けられたETC(Electronic Toll Collection System)ゲート付近の交通流を一定間隔で測定して得られた測定結果を用いて、現在のETCゲートの開閉時間の状態に応じたその後の本線道路の交通流を予測している。そして、この道路制御方法では、予測された交通流が渋滞を含まないような所定の条件を満たすように、改めてETCゲートの開閉時間の制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−296870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された道路制御方法では、本線道路上に設けられたETCゲートの開閉時間を制御している。このため、例えば、このETCゲートの閉時間を長くしてETCゲートを通過する車両の台数を減らした場合、ETCゲートの下流側の本線道路上における渋滞は防止することができる。しかし、この場合、交通の負荷がETCゲートに集中することとなるので、ETCゲートより上流側の本線道路上に新たな渋滞が生じてしまう。このように、この道路制御方法においては、渋滞の発生を効果的に抑制することができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、本線道路およびこの本線道路に接続された複数の合流路における渋滞の発生を効果的に抑制可能な交通流制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明に係る交通流制御装置は、所定の地点よりも上流側において複数の合流路が接続された本線道路上において、所定の地点の渋滞の発生を予測する渋滞発生予測手段と、渋滞発生予測手段によって所定の地点における渋滞の発生が予測された場合に、複数の合流路の各々から本線道路へ流入する車両の流入量をそれぞれ制御する流入量制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る交通流制御装置においては、所定の地点で渋滞の発生が予想された場合に、所定の地点よりも上流側において本線道路への車両の流入量を制御するので、所定の地点における渋滞の発生が抑制される。しかも、本発明に係る交通流制御装置によれば、複数の合流路の各々において流入量を制御するので、この制御による交通の負荷が複数の合流路に分散される。その結果、各合流路においても渋滞が発生し難い。よって、本線道路および本線道路に接続された複数の合流路における渋滞の発生を効果的に抑制できる。
【0009】
ここで、各流入量を計測する流入量計測手段と、本線道路と複数の合流路との接続地点よりも上流側における本線道路の交通量である本線交通量を計測する本線交通量計測手段と、渋滞発生予測手段によって所定の地点における渋滞の発生が予測された場合に、当該渋滞の発生を回避するための所定の地点における交通量の目標制限量を、各流入量および本線交通量に基づいて算出する目標制限量算出手段と、をさらに備える態様とすることができる。
【0010】
このように、各流入量および本線交通量を計測することにより、各流入量および本線交通量を把握することができる。そして、各流入量および本線交通量に基づいて目標制限量を算出することにより、本線道路の所定の地点における渋滞の発生をより効果的に抑制することができる。
【0011】
また、流入量制御手段は、各流入量の制限量の和が目標制限量以上となるように、各流入量を制御する態様とすることができる。
【0012】
このように、各流入量の制限量が目標制限量以上となるように各流入量を制御することにより、本線道路の所定の地点における渋滞の発生を確実に抑制できる。
【0013】
また、流入量制御手段は、各合流路に対して予め設定された既定制限率に応じて各流入量を制御すると共に、各流入量の制限量の和が目標制限量以上となるように、流入量の制御を行う合流路の数を設定する態様とすることができる。
【0014】
このように、各合流路において、予め設定された既定制限率をもって各流入量を制御することにより、容易に交通量を制御して渋滞の発生を抑制できる。
【0015】
また、流入量制御手段は、流入量に応じて合流路毎に流入量の制限率を算定すると共に、算定された制限率に基づいて各流入量を制御する態様とすることができる。
【0016】
このように、流入量に応じて合流路毎に制限率を算定し、算定された制限率に基づいて各流入量を制御することにより、たとえば、流入量の多い合流路の制限量を少なくするなどの制御が可能となり、各合流路における渋滞の発生を効率的に抑制することができる。
【0017】
或いは、流入量制御手段は、各合流路に設けられたETCゲートの開閉時間をそれぞれ制御することによって各流入量を制御する態様とすることができる。
【0018】
この場合、ETCゲートといった既存のインフラシステムを利用して渋滞の発生を効果的に抑制することができる。
【0019】
さらに、流入量制御手段は、各合流路を走行する車両の速度を制御することによって、各流入量を制御する態様とすることができる。
【0020】
この場合、たとえば、路車間通信などを用いて各合流路を走行する車両の速度を制御し、渋滞の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る交通流制御装置によれば、本線道路およびこの本線道路に接続された複数の合流路における渋滞の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1および第2実施形態に係る交通流制御装置のブロック構成図である。
【図2】図1に示される交通流制御装置が交通流の制御を行う道路を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る交通流制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1に示される交通流制御装置が算出する総交通量を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る交通流制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0024】
(第1実施形態)
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態に係る交通流制御装置のブロック構成図であり、図2は、この交通流制御装置が交通流の制御を行う道路を模式的に表す図である。図2に示すように、本実施形態に係る交通流制御装置が交通流の制御を行う道路は、サグ部Sを有する本線道路Mと、複数のインターチェンジIC,IC,…と、を含む。複数のインターチェンジIC,IC,…の各々は、サグ部Sよりも上流側において本線道路Mに接続される合流路W,W,…を有する。各合流路には、ETCゲートが設けられている。
【0026】
複数のインターチェンジIC,IC,…の各々からは、対応する合流路W,W,…を介して、流入量Q(t),Q(t),…で本線道路Mへ車両が流入している。また、本線道路Mと複数の合流路W,W,…との接続地点よりも上流側における本線道路M上では、本線交通量Q(t)をもって車両が通行している。なお、tは時刻を表している。また、サグ部とは、勾配が下りから上りに変化する部分であって、道路の交通量を制約してしまうボトルネック(隘路区間)の代表例であり、一般に渋滞が発生し易い部分である。
【0027】
本実施形態に係る交通流制御装置は、図1に示すように、サグ部交通量計測装置2、本線交通量計測装置3、流入量計測装置4およびECU(Electronic Control Unit)5を備えている。
【0028】
サグ部交通量計測装置2は、トラフィックカウンタなどの計測装置であり、本線道路Mのサグ部Sにおける交通量であるサグ部交通量を計測して取得する。また、サグ部交通量計測装置2は、取得したサグ部交通量をECU2へ送信する。
【0029】
本線交通量計測装置3は、トラフィックカウンタなどの計測装置であり、本線道路Mと複数の合流路W,W,…との接続地点よりも上流側における本線道路Mの交通量である本線交通量Q(t)を計測して取得する。また、本線交通量計測装置3は、取得した本線交通量Q(t)をECU2へ送信する。
【0030】
流入量計測装置4は、トラフィックカウンタなどの計測装置であり、複数の合流路W,W,…の各々から(複数のインターチェンジIC,IC,…の各々から)本線道路Mへの車両の流入量Q(t),Q(t),…を計測して取得する。また、流入量計測装置4は、取得した流入量Q(t),Q(t),…をECU2へ送信する。
【0031】
ECU5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力ポートなどを備える電子制御ユニットである。ECU5は、渋滞発生予測部51、目標制限量算出部52および流入量制御部53を含む。
【0032】
渋滞発生予測部51は、サグ部交通量計測装置2、本線交通量計測装置3および流入量計測装置4から、サグ部交通量、本線交通量Q(t)および流入量Q(t),Q(t),…を受信して取得する。渋滞発生予測部51は、サグ部Sにおける渋滞の発生を予測する。渋滞発生予測部51は、サグ部交通量計測装置2で計測したサグ部交通量に基づいて渋滞の発生を予測してもよいし、本線交通量Q(t)および流入量Q(t),Q(t),…に基づいて渋滞の発生を予測してもよい。
【0033】
また、渋滞発生予測部51は、VICS(Vehicle Information and Communication Systems)などの道路交通情報システムから提供される道路交通情報に基づいて、渋滞の発生を予測することもできる。以下では、渋滞発生予測部51は、本線交通量Q(t)および流入量Q(t),Q(t),…に基づいて、サグ部Sにおける渋滞の発生を予測するものとする。渋滞発生予測部51は、サグ部Sにおける渋滞の発生の予測結果を、目標制限量算出部52へ送信する。
【0034】
目標制限量算出部52は、サグ部交通量計測装置2、本線交通量計測装置3および流入量計測装置4から、サグ部交通量、本線交通量Q(t)および流入量Q(t),Q(t),…を受信して取得する。そして、目標制限量算出部52は、渋滞発生予測部51によってサグ部Sにおける渋滞の発生が予測された場合、すなわち、渋滞発生予測部51から送信される予測結果が、サグ部Sにおいて渋滞の発生が予測されたことを示す結果であった場合に、渋滞を回避するためのサグ部Sにおける交通量の目標制限量QLを、本線交通量Q(t)および流入量Q(t),Q(t),…に基づいて算出する。そして、目標制限量算出部52は、算出した目標制限量QLを流入量制御部53へ送信する。なお、目標制限量算出部52は、サグ部交通量計測装置2で計測したサグ部交通量に基づいて目標制限量QLを算出してもよい。
【0035】
流入量制御部53は、目標制限量算出部52から目標制限量QLを受信して取得する。また、流入量制御部53は、流入量計測装置4から、流入量Q(t),Q(t),…を受信して取得する。そして、流入量制御部53は、各流入量の制限量の和が目標制限量QL以上となるように、各流入量を制御(制限)する。
【0036】
次に、本実施形態に係る交通流制御装置1の動作について説明する。図3は、交通流制御装置1の動作を示すフローチャートである。図3に示すように、交通流制御装置1では、サグ部交通量計測装置2は、サグ部交通量を計測して取得し、取得したサグ部交通量を、渋滞発生予測部51および目標制限量算出部52へ送信する(S1)。
【0037】
続いて、本線交通量計測装置3は、本線交通量Q(t)を計測して取得し、取得した本線交通量Q(t)を、渋滞発生予測部51および目標制限量算出部52へ送信する(S2)。
【0038】
そして、流入量計測装置4は、流入量Q(t),Q(t),…を計測して取得し、取得した流入量Q(t),Q(t),…を、渋滞発生予測部51、目標制限量算出部52および流入量制御部53へ送信する(S3)。
【0039】
なお、上記の処理手順S1〜S3に係る動作は、便宜上S1からS3まで順次行うものとしたが、異なる順序で行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0040】
続いて、渋滞発生予測部51は、本線交通量Q(t)および流入量Q(t),Q(t),…に基づいて、サグ部Sにおける渋滞の発生を予測し、予測した結果を目標制限量算出部52へ送信する(S4)。具体的には、渋滞発生予測部51は、まず、下式(1)により総交通量QS(t)を算出する。
【数1】


【0041】
続いて、図4に示されるように、渋滞発生予測部51は、総交通量QS(t)がサグ部の交通容量Dに達した時刻tにおける総交通量QS(t)の微分値βを算出する。そして、渋滞発生予測部51は、この微分値βが所定の設定値Bよりも大きいか否かを判定する。その結果、微分値βが設定値Bよりも大きい場合に、渋滞が発生すると予測する。
【0042】
ここで、サグ部の交通容量Dは、サグ部を渋滞させることなく通行可能な車両の台数の最大値である。また、設定値Bは、総交通量QS(t)が交通容量Dに達した時刻tから時間T後における総交通量QS(t+T)が、交通容量Dを所定値X%超過した場合の、総交通量QS(t)の時刻tにおける微分値の統計値である。また、時間Tは、渋滞の発生が予測されてから各流入量を実際に制御するまでに要する時間である。そして、所定値Xは、総交通量QS(t)÷交通容量Dで求められる統計値であり、時刻tは、サグ部における渋滞の発生直前の時刻である。
【0043】
なお、総交通量QS(t)が交通容量Dから所定値αを減じた量に達した時点で、上記の処理を行うことにより、時間的な余裕をもって渋滞の発生を予測することができる。さらに、渋滞発生予測部51は、渋滞発生予測領域Aに属する任意の時刻を、上記の処理を行う基点の時刻とすることができる。
【0044】
続いて、渋滞発生予測部51において渋滞の発生が予測された場合(S4:YES)、目標制限量算出部52は、目標制限量QLを算出し、算出した目標制限量QLを流入量制御部53へ送信する(S5)。具体的には、目標制限量算出部52は、渋滞発生予測部51から送信された予測結果が、サグ部Sにおいて渋滞が発生することを示す結果であった場合、上記の式(1)により総交通量QS(t)を算出したうえで、QS(t)−DとD×(1+X)とを比較し、大きい方の値を目標制限量QLとして決定し、流入量制御部53へ送信する。ここで、時刻tは渋滞発生予測部51によって渋滞の発生が予測された時刻である。
【0045】
続いて、流入量制御部53は、各流入量の制限量の和が目標制限量QL以上となるように、流入量の制御を行う合流路の数を設定する(S6)。具体的には、流入量制御部53は、まず、予め設定された既定制限率Lを用いて、下式(2)により各合流路における流入量Q(t),Q(t),…の制限量R(t),R(t),…をそれぞれ算出する。そして、算出した制限量R(t),R(t),…の和が、目標制限量QL以上となるように、流入量の制御を行う合流路の数を設定する。
【数2】


【0046】
なお、既定制限率Lは、0<L<Lm<1を満たす値である。ただし、Lmは、各合流路における交通量の超過量を示す統計値であって、「交通渋滞徹底解剖,社団法人交通工学研究会」によれば、概ね0.1〜0.2程度の値である。
【0047】
なお、ここでは、既定制限率Lは、全ての合流路において一律の値であるが、各合流路毎に異なる値であってもよい。
【0048】
そして、流入量制御部53は、流入量の制御を行う合流路における各流入量の制御を行う(S7)。具体的には、流入量制御部53は、流入量の制御を行う各合流路のETCゲートの開閉時間を制御することにより、各流入量の制御を行う。
【0049】
たとえば、流入量制御部53は、n番目の合流路WのETCゲートの開閉時間を、このETCゲートを通過する車両の台数が目標流入量P(t)=Q(t)−R(t)となるように制御する。より具体的には、流入量制御部53は、単位時間÷目標流入量P(t)をもって一台の車両を通過せしめるように、このETCゲートの開閉時間を制御する。
【0050】
なお、渋滞発生予測部51において渋滞が発生しないと予測された場合(S4:NO)、処理手順S1に戻る。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る交通流制御装置1によれば、サグ部Sで渋滞の発生が予想された場合に、サグ部Sよりも上流側において、本線道路Mへの車両の流入量Q(t),Q(t),…を制御するので、サグ部Sにおける渋滞の発生が抑制される。
【0052】
しかも、交通流制御装置1によれば、複数の合流路W,W,…の各々において流入量Q(t),Q(t),…をそれぞれ制御するので、この制御による交通の負荷が複数の合流路W,W,…に分散される。その結果、各合流路においても渋滞が発生し難い。
【0053】
よって、交通流制御装置1によれば、本線道路Mおよび本線道路Mに接続された複数の合流路W,W,…における渋滞の発生を効果的に抑制できる。
【0054】
また、交通流制御装置1においては、流入量Q(t),Q(t),…および本線交通量Q(t)を計測して把握したうえで目標制限量QLを算出し、流入量Q(t),Q(t),…の制限量R(t),R(t),…の和が目標制限量QL以上となるように各流入量を制御するので、サグ部Sにおける渋滞の発生をより効果的に、かつ確実に抑制することができる。
【0055】
さらに、交通流制御装置1においては、各合流路に設けられたETCゲートの開閉時間をそれぞれ制御することによって各流入量を制御するので、ETCゲートといった既存のインフラシステムを利用して渋滞の発生を効果的に抑制することができる。
【0056】
(第2実施形態)
【0057】
続いて、本発明の第2実施形態に係る交通流制御装置について説明する。本実施形態に係る交通流制御装置は、図1に示された第1実施形態に係る交通流制御装置1の構成と同様の構成を有しており、図2に示される道路の交通量を制御するものである。
【0058】
本実施形態に係る交通流制御装置1の動作について説明する。図5は、本実施形態に係る交通流制御装置1の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、本実施形態に係る交通流制御装置1の動作は、処理手順S1〜S5までは、第1実施形態に係る交通流制御装置1の動作と同様である。
【0059】
本実施形態に係る交通流制御装置1では、処理手順S5において、目標制限量算出部52が目標制限量QLを算出して流入量制御部53へ送信した後に、流入量制御部53は、流入量Q(t),Q(t),…に応じて合流路毎に流入量Q(t),Q(t),…の制限率L,L,…を算定する(S8)。
【0060】
具体的には、流入量制御部53は、まず、渋滞発生予測部51によって渋滞の発生が予測された時刻tにおける、各合流路の流入量Q(t),Q(t),…の制限量R(t),R(t),…を、上記の式(2)により算出する。
【0061】
続いて、これら制限量R(t),R(t),…を目標制限量QLでそれぞれ除して、目標制限量QLに対する制限量R(t),R(t),…の割合Y(t),Y(t),…をそれぞれ算出する。さらに、1−Y(t),1−Y(t),…をそれぞれ算出したうえで、これらの値に既定制限率Lをそれぞれ乗じて、合流路毎の制限率L,L,…を算出する。
【0062】
次に、流入量制御部53は、算定した合流路毎の制限率L,L,…に基づいて、各合流路に設けられたETCゲートの開閉時間を制御することにより、各流入量の制御を行う(S9)。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る交通流制御装置1においては、流入量に応じて合流路毎に制限率L,L,…を算定し、算定された制限率L,L,…に基づいて各流入量を制御するので、たとえば、流入量の多い合流路の制限量を少なくするなどの制御が可能となり、各合流路における渋滞の発生を効率的に抑制することができる。
【0064】
なお、上記の第1および第2実施形態においては、流入量制御部53は、ETCゲートの開閉時間を制御することによって各流入量を制御する態様としたが、これに限らず、各合流路を走行する車両の速度や車間距離を制御することによって各流入量を制御する態様とすることができる。
【0065】
この場合、たとえば、n番目の合流路Wにおいては、この合流路Wと本線道路Mとの接続地点を通過する車両の量Nが、単位時間÷目標流入量P(t)となるように、下式(3)により、この合流路Wを走行する車両の速度Vおよび車間距離Sを設定する。ただし、速度Vおよび車間距離Sは、上限値と下限値とが予め設定されている。
【数3】


【0066】
この態様によれば、路車間通信などを用いて各合流路を走行する車両の速度や車間距離を制御し、渋滞の発生を抑制することができる。さらに、この態様によれば、ETCゲートが設置されていない道路にも、交通流制御装置1を適用することができる。
【0067】
また、第1および第2実施形態において、ECU5は、道路管理センターなどの管理施設に設置されてもよいし、各車両に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…交通流制御装置、2…サグ部交通量計測装置、3…本線交通量計測装置、4…流入量計測装置、5…ECU、51…渋滞発生予測部、52…目標制限量算出部、53…流入量制御部。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地点よりも上流側において複数の合流路が接続された本線道路上において、前記所定の地点の渋滞の発生を予測する渋滞発生予測手段と、
前記渋滞発生予測手段によって前記所定の地点における渋滞の発生が予測された場合に、前記複数の合流路の各々から前記本線道路へ流入する車両の流入量をそれぞれ制御する流入量制御手段と、を備えることを特徴とする交通流制御装置。
【請求項2】
前記複数の合流路の各々における前記各流入量を計測する流入量計測手段と、
前記本線道路と前記複数の合流路との接続地点よりも上流側における前記本線道路の交通量である本線交通量を計測する本線交通量計測手段と、
前記渋滞発生予測手段によって前記所定の地点における渋滞の発生が予測された場合に、当該渋滞の発生を回避するための前記所定の地点における交通量の目標制限量を、前記各流入量および前記本線交通量に基づいて算出する目標制限量算出手段と、をさらに備える請求項1に記載の交通流制御装置。
【請求項3】
前記流入量制御手段は、前記各流入量の制限量の和が前記目標制限量以上となるように、前記各流入量を制御する請求項1に記載の交通流制御装置。
【請求項4】
前記流入量制御手段は、前記各合流路に対して予め設定された既定制限率に応じて前記各流入量を制御すると共に、前記各流入量の制限量の和が前記目標制限量以上となるように、前記流入量の制御を行う前記合流路の数を設定する請求項3に記載の交通流制御装置。
【請求項5】
前記流入量制御手段は、前記流入量に応じて前記合流路毎に前記流入量の制限率を算定すると共に、算定された前記制限率に基づいて前記各流入量を制御する請求項3に記載の交通流制限装置。
【請求項6】
前記流入量制御手段は、前記各合流路に設けられたETCゲートの開閉時間をそれぞれ制御することによって前記各流入量を制御する請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載の交通流制御装置。
【請求項7】
前記流入量制御手段は、前記各合流路を走行する車両の速度を制御することによって、前記各流入量を制御する請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載の交通流制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−100276(P2011−100276A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254196(P2009−254196)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】