説明

交通状況解析装置、交通状況解析プログラム及び交通状況解析方法

【課題】主要幹線道路などの情報に限られることなく交通状況の提供を行う交通状況解析装置、交通状況解析プログラム及び交通状況解析方法を提供する。
【解決手段】交通状況解析装置は、近似曲線算出部が、予め定められたエリア単位ごとに、そのエリア内に存在する車両台数と、そのエリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線を算出する。混雑指数算出部が、近似曲線との位置関係に基づいてそのエリアの通行困難度を示す混雑指数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の通行状況に係る情報から、道路の交通状況の解析を行う交通状況解析装置、交通状況解析プログラム及び交通状況解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通状況解析装置は、道路情報を提供する際に、車両の通行状況に係る道路情報データを収集して、その道路情報データに基づいて渋滞状況などを判定し、判定された渋滞情報を提供する際に用いられる。
各地の道路情報データは、交通情報システムで定期的に収集され、収集された情報が基本データとなる。
これまでに提供されている交通情報は、車載のカーナビゲーション装置などを受信機とするVICS(Vehicle Information and Communication System)による提供や、放送メディアを介しての提供がある(例えば、非特許文献1参照)。また、VICSで提供される情報は、インターネットに接続された配信サーバによっても提供されており、インターネットに接続された端末装置や携帯電話端末装置からの要求に応じて取得することができる。
【0003】
一方、これまでの放送メディアを介しての交通情報には、次に示すような制約のもとで提供されている。例えば、情報提供が行われる対象路線は、高速道路や主要幹線道路に限られる。すなわち、限られた対象路線の渋滞情報が提供されているが、主要幹線道路以外の道路の状況についての情報提供は行われていない(例えば、非特許文献2参照)。
また、提供される情報の表示は、テレビモニタに表示可能な解像度によって制限される表現力の制約がある。そのため、地図を模式化して対象路線を示し、その対象路線の表示色を変更して混雑状況を表示する方法で提供されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】財団法人 道路交通情報通信システムセンター、http://www.vics.or.jp/area/tokyo.html(2009年7月23日検索)
【非特許文献2】財団法人 日本道路交通情報センター、http://www.jartic.or.jp/traffic/ippan/tokyoseibu.html(2009年7月23日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これまでの交通情報データは、主要幹線道路などの路線に沿って固定的に配置されるトラフィックカウンターなどによって検出されたデータがあり、トラフィックカウンターが配置された地点の車両の通行量と速度に基づいていた。近年、走行する車両を移動するセンサーに見立て、実際に走行している車両の走行状態を検出して提供情報として用いることが検討されている。このようなシステムは、「プローブ交通情報」といわれ、固定的に配置されるトラフィックカウンターなどによって検出される情報に基づいたこれまでの交通情報データよりも、提供範囲を拡大することが期待されている。
【0006】
しかしながら、非特許文献1及び2に示されるように、放送における情報提供は、不特定多数の人を対象として情報を提供することを目的としているため、情報提供者から情報利用者に向けての片方向の情報伝達形態を基本とすることから情報伝達方向に制限がある。
つまり、放送による情報提供では、車載のカーナビゲーション装置のように、移動方向に応じた重みづけを行った方向を表示することはできず、また、携帯電話端末などのように、操作を行って必要な情報を要求することもできず、放送された情報表示を参照することが要求される。すなわち、放送メディアを介した情報提供では、表示する情報の対象エリアを特定することができないことから、広域な範囲を提供することが必要とされる。これまでの提供方法では、広域な範囲を提供しながら、主要幹線道路以外の情報提供を行うことが行えないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、主要幹線道路などの情報に限られることなく交通状況の提供を行う交通状況解析装置、交通状況解析プログラム及び交通状況解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明は、予め定められたエリア単位ごとに、該エリア内に存在する車両台数と、該エリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線を算出する近似曲線算出部と、該近似曲線との位置関係に基づいて該エリアの通行困難度を示す混雑指数を算出する混雑指数算出部と、を備えることを特徴とする交通状況解析装置である。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、基準とする上に凸となる関数で示した近似曲線と前記エリア交通状態情報との差から変化指数を算出する変化指数算出部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記近似曲線算出部は、前記上に凸となる関数で示した近似曲線を2次曲線として算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記近似曲線算出部は、前記エリア交通状態情報を、前記エリアにおいて対象道路として選定した道路を単位時間当たりに走行する車両の総走行時間で示される集計交通密度とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記近似曲線算出部は、前記エリア交通状態情報を、前記エリアにおいて対象道路として選定した道路を単位時間当たりに走行する車両の総走行距離で示される集計交通量とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記エリアごとの前記混雑指数又は前記変化指数の変化を段階的な指標で出力する混雑指数出力部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記の発明において、前記混雑指数出力部は、前記エリアを地図上にマッピングし、前記エリアごとに導かれた混雑指数又は前記変化指数から導かれた段階的な指標に基づいて前記エリアの色又は濃度の違いによって表示することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、予め定められたエリア単位ごとに、該エリア内に存在する車両台数と、該エリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線で近似する手順と、該近似曲線との位置関係に基づいて該エリアの通行困難度を示す混雑指数を算出する手順と、をコンピュータに実施させることを特徴とする交通状況解析プログラムである。
【0016】
また、本発明は、予め定められたエリア単位ごとに、該エリア内に存在する車両台数と、該エリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線で近似するステップと、該近似曲線との位置関係に基づいて該エリアの通行困難度を示す混雑指数を算出するステップと、を有することを特徴とする交通状況解析方法である。
【発明の効果】
【0017】
この本発明によれば、交通状況解析装置において、近似曲線算出部は、予め定められたエリア単位ごとに、該エリア内に存在する車両台数と、該エリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線を算出する。混雑指数算出部は、該近似曲線との位置関係に基づいて該エリアの通行困難度を示す混雑指数を算出する。
これにより、交通状況解析装置は、主要幹線道路などの情報に限られることなく交通状況の提供を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態による本実施形態による交通状況解析装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態による1本の道路におけるエリア交通流状態について示す図である。
【図3】本実施形態による道路ネットワークにおけるエリア交通流状態について示す図である。
【図4】本実施形態による交通状態の非日常性を示す図である。
【図5】本実施形態による混雑度の分布を地図にマッピングして示す図である。
【図6】本実施形態による交通状態の分布を地図にマッピングして示す図である。
【図7】本実施形態によるエリアと道路の関係を示す図である。
【図8】本実施形態によるエリアごとの集計QKを示す図である。
【図9】本実施形態による図8に示した散布図からエリアごとの集計QK近似曲線を示す図である。
【図10】本実施形態による2次関数からパラメトリック空間への変換を示す図である。
【図11】本実施形態による平日と休日の混雑指数の分布をそれぞれ示したものである。
【図12】本実施形態による交通状況解析処理の手順における初期化処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態による交通状況解析処理の手順における解析処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】本実施形態による交通状況解析処理の手順における近似曲線算出処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について図を参照し説明する。
図1は、本実施形態における交通状況解析装置の概略構成図である。
この図に示される交通状況解析装置100は、交通情報システム200から提供される交通状況データを定期的に取得して、その時々の交通状況を解析する。
交通情報システム200は、提供する交通状況データの収集を定められた周期で定期的に行う。交通情報システム200が提供する交通状況データは、解析対象範囲に含まれる道路の交通状況を示す情報であり、例えば、路側などに配置されるトラフィックカウンターで収集された情報や、走行状況を検出する機能を有する車両(プローブカー)が検出した実際の走行状況に基づいて通知された情報を含む情報である。
【0020】
交通状況解析装置100は、集計対象エリア情報取得部111、エリア情報記憶部112、情報取得部121、エリア集計QK状態値算出部122、乖離量算出部123、変化指数算出部124、混雑指数出力部125、エリア集計QK状態値記憶部131、集計QK近似曲線部132及び2次元正規分布パラメータ変換部133を備える。
【0021】
集計対象エリア情報取得部111は、交通状況解析装置100が行う解析処理の対象エリア(範囲)を定める情報を取得して、エリア情報記憶部112に記録する。集計対象エリア情報取得部111が取得する情報は、対象範囲の地図情報、路線情報、交通状況解析を行う単位を示す対象エリアを定めるエリア情報、及び、その対象エリアと路線の関係を示す情報である。例えば、その対象エリアは、定められた距離による分類又は緯度経度で区切られた範囲によって定められる。
また、集計対象エリア情報取得部111は、対象エリアごとに、そのエリアに関係する路線との対応付けを行う。その対応付け方法の詳細は、後述することとする。
【0022】
エリア情報記憶部112は、集計対象エリア情報取得部111によって記録された対象範囲の地図情報、路線情報、交通状況解析を行う単位を示す対象エリアを定めるエリア情報、及び、その対象エリアと路線の対応付けを示す情報を記録する。
【0023】
情報取得部121は、交通情報システム200から提供される交通状況データを予め定められた周期で定期的に取得する。例えば、情報取得部121は、数分から20分程度に設定された周期で交通状況データを取得する。この取得周期は、短くすると後述する各演算処理量が増大し、長くすると事象変化の検出が遅れ、その結果に基づいて演算処理される解析結果の通知も後れることになる。そのため、この取得周期は、適用されるシステムが必用とする時間に応じて予め定められる。
また、情報取得部121は、エリア情報記憶部112に記憶された対象範囲の地図情報、路線情報、交通状況解析を行う単位を示す対象エリアを定める情報、及び、その対象エリアと路線の対応付けを示す情報を参照し、解析を行う範囲に係る情報を取得する。
そして、情報取得部121は、上記の情報に基づいて、対象エリアを通過する車両の台数並びに通過にかかる所要時間情報を取得する。
【0024】
エリア集計QK状態値算出部122は、情報取得部121によって取得された情報に基づいて、対象エリアごとの交通状況を示すエリア集計QK状態値を算出する。エリア集計QK状態値の算出方法の詳細は、後述することとする。
また、エリア集計QK状態値算出部122は、対象エリアごとに算出されたエリア集計QK状態値をエリア集計QK状態値記憶部131に記録する。エリア集計QK状態値記憶部131への記録は、エリア集計QK状態値の算出に応じて行われ、情報取得部121によって取得された情報に応じた時間情報が付加されて時系列的に行われる。
【0025】
乖離量算出部123は、エリア集計QK状態値に基づいて導かれる集計QK近似曲線に対して、エリア集計QK状態値算出部122が算出したエリア集計QK状態値を射影変換する。また、乖離量算出部123は、この射影変換の結果から、エリア混雑指数と、近似曲線からの乖離量を算出する。
変化指数算出部124は、2次元正規分布パラメータ変換部133によって導かれる2次元正規分布と、乖離量算出部123によって算出された、エリア混雑指数と、近似曲線からの乖離量から、変化の度合いを示すエントロピー情報量を示す変化指数を算出する。
混雑指数出力部125は、算出されたエリアごとの混雑指数と変化指数を、段階的に設定された出力形態に適応させてそれぞれ出力する。
【0026】
エリア集計QK状態値記憶部131は、エリア集計QK状態値算出部122によってエリアごとに算出されたエリア集計QK状態値を時系列に応じて記憶する。
集計QK近似曲線部132は、エリア集計QK状態値記憶部131によって記憶されたエリアごとのエリア集計QK状態値を参照し、エリアごとに集計QK近似曲線を算出する。集計QK近似曲線の算出方法の詳細は、後述することとする。
2次元正規分布パラメータ変換部133は、エリア集計QK状態値記憶部131に記憶されたエリア集計QK状態値を時間帯ごとに、集計QK近似曲線に沿って射影変換して、2次元正規分布のパラメータを算出する。
【0027】
続いて、エリア交通流状態について説明する。
図2は、一本の道路におけるエリア交通流状態について示す図である。
図2(a)は、2車線の道路に車両が通行している状態をモデル化して示した平面図である。この道路の左側から進入する車両は、車間距離が保たれ、走行が容易な状態が示される。この道路の右側半分に示される状態では、渋滞が発生し車両間隔が狭くなり、車両の速度が低下した状態が示される。さらに車両間隔が狭くなる状態になると停車状態に移行して、交通量が極端に低下した状態となる。つまり、車両間隔が十分に保たれる状態にあるときには、交通量は、車両台数に応じて高くなる。一方、車両間隔が十分に保たれない状態に移行すると、交通量は、車両台数に応じて低下する。
【0028】
図2(b)は、道路上の車両の密度と交通量の関係を示すグラフである。このグラフでは、縦軸が交通量、すなわち単位時間当たりの通過台数を示し、横軸が車両の密度、すなわち単位距離あたりの走行車両台数を示す。
この道路が有する最大性能、すなわち最大の交通量を示す容量になるまでは、車両の密度が高くなるほど交通量が高くなり、その状態では渋滞は発生せず、自由に走行可能な状態が保たれた状態を示す。一方、ある密度を超えると、渋滞が発生し、単位距離あたりの車両台数が多くなって速度が低下することにより、交通量は低下する。
このグラフに示される、原点とグラフ上の任意の点(例えば、点A)を結んだ線分の傾きは、渋滞が発生した状態の平均速度を示す。渋滞が発生している状態では、さらに車両台数が増加すると、密度の上昇に伴い速度が低下して交通量も低下する。そのため、線分の傾きによって示される傾きが小さくなり、平均速度が低下する。
【0029】
また、この図2(a)、(b)に示された状態は、理想的な状態を示すものである。実際の道路では、駐車車両があり、走行せずに道路空間を占有して、交通量を低下させる要因となる。また、信号があり、車両の移動が制限される時間が生じることにより、交通量を低下させる要因となる。さらに、歩行者や自転車との制約があり、自由に走行できない状態が生じて平均速度が低下することから、交通量を低下させる要因となる。これらの要因以外にも、理想的な状態との差異を発生する事象が実際の道路では発生することから、図2(b)に示した交通量より少ない交通量で限界値となって現れる。
【0030】
図3は、道路ネットワークにおけるエリア交通流状態について示す図である。
図3(a)は、格子状に配置された道路ネットワークを示す平面図である。この図に示される各道路は、それぞれ片側1車線の対面通行の道路である。
この図に示される道路ネットワークにおいては、一部の道路に混雑が生じると、その道路の流動性が低下することで、他の道路を通行しようとする交通まで阻害してしまう。そのため、混雑が発生した道路に車両が流入できず、流入しようとする車両が交差点手前で流入を待つこととなり、その交差点の前方には、車両が少なく渋滞のない道路が生じる。
このような道路の性能を限界まで使うことなく、一部の道路での渋滞によりエリア全体の流動性が低下している状況があり得ることから、エリア全体の流動性は、そのエリアに含まれる道路を全て限界性能まで使用した場合よりも小さくなる。
【0031】
図3(b)は、エリア内の車両から走行車両を抽出し、走行車両台数とそれらの走行車両の集計交通量の関係を示すグラフである。
このグラフでは、縦軸が集計交通量、横軸は、エリア内の全ての走行車両台数を示す。縦軸に示す集計交通量は、エリア内の全ての道路の交通量の合計を示す。
グラフG20は、理想的な状態で道路が使用された場合の、道路の限界性能を示し、グラフ21は、実際の道路の利用条件に基づいた限界性能を示す。
【0032】
図3(b)のグラフG20においても、図2(b)に示したグラフ10によって示される交通量の場合と似た傾向を示し、これらの道路が有する最大性能、すなわち最大の交通量を示す容量にそれぞれなるまでは、走行車両台数が多くなるほど集計交通量が高くなり、その状態では渋滞は発生せず、自由に走行可能な状態が保たれた状態を示す。一方、ある車両台数を超えると、渋滞が発生し、単位距離あたりの車両台数が多くなって速度が低下することにより、集計交通量は低下する。
また、グラフG21は、実際の道路の利用条件に基づいた値をそれぞれ集計するため、走行車両台数のいずれにおいても、理想的な状態のグラフG20より、低い値がグラフG21によって示される。また、グラフG20のピークを示す走行車両台数より、グラフG21のピークを示す走行車両台数は小さな値を示す。
【0033】
続いて、交通状態の変動性について説明する。
図4は、交通状態の非日常性を示す図である。
図4は、3車線の高速道路で観測された交通量の変動を示す。
このグラフでは、縦軸が交通量(pcu/時)、すなわち単位時間当たりの通過台数を示し、横軸が密度(pcu/km)、すなわち単位距離あたりの走行台数を示す。
散布図で示された図4のグラフは、図2(b)のグラフに対応する。
交通量は、密度が75(pcu/km)に達するまでは、単調に増加する傾向を示す。また、交通量は、密度が75(pcu/km)を越えると減少する傾向を示し、ばらつきが大きくなる。そして、密度が75(pcu/km)から150(pcu/km)までの範囲では、プロットの分布が密集していることから、この密度範囲の渋滞が日常的に発生していることが示される。
さらに、密度が高くなり150(pcu/km)を越えると、プロットの分布は粗くなり、発生する頻度は少なくなるが時々渋滞が発生していることから、非日常的な渋滞が発生していることが示される。
【0034】
続いて、混雑度の地理的な分布について説明する。
図5は、混雑度の分布を地図にマッピングして示す図である。
各エリアの交通状況は、方眼で示される単位ごとに、「混雑なし」、「やや混雑」、「混雑」及び「渋滞」の各段階で判定され、それぞれの段階に応じた濃度で表示される。この図では、各エリアの濃度が濃いほど流動性が低下し渋滞が発生していることが示される。
この図に示されるように、隣接するエリアが同じ段階の濃度で示される混雑度であれば、関連する渋滞がエリアをまたいで発生していることが示される。この混雑度をエリアに分割して示すことにより、渋滞の面的な広がりを確認することができる。
【0035】
また、交通状態の地理的な分布について説明する。
図6は、交通状態の分布を地図にマッピングして示す図である。
各エリアの交通状況は、方眼で示される単位ごとに、「通常状態」、「通常よりやや混雑」及び「通常より混雑」の各段階で判定され、それぞれの段階に応じた濃度で表示される。この図では、各エリアの濃度が濃いほど通常より流動性が低下し渋滞が発生していることが示される。
この図に示されるように、隣接するエリアと同じ段階の濃度で示される交通状況であれば、関連する渋滞がエリアをまたいで発生し、通常より流動性が低下した渋滞が発生していることが示される。また、より混雑度が高い渋滞が発生しているエリアの周囲には、その渋滞に関連する渋滞が発生し影響を受けている。
図6による交通状態の表示を、前述の混雑度の表示(図5)と組み合わせて参照することにより、通常時の渋滞の状況を認知している道路利用者は、通常時の渋滞との比較を容易に行うことができる。
【0036】
続いて、対象範囲を分割したエリアと道路との関係付けについて示す。
図7は、エリアと道路の関係を示す図である。この図において四角で示されるエリアは、例えば、デジタル地図における2次メッシュについて、縦横を(10×10)に分割した範囲を示し、1km(キロメートル)四方で区切られた地域メッシュ(3次メッシュ)を集計単位とする。
この図に示す、エリア(地域メッシュ)の外側に位置するノードN1と、エリアの内側に位置するノードN2からN5を示す。各ノードは、各ノード間を接続する道路を定義する際の分割点を示す。
【0037】
エリア内のノードN2、N3、N4及びN5は、道路を示すリンクL23、L34及びL45で接続される。また、ノードN1とエリア内のノードN2及びN3は、それぞれリンクL12及びL13で接続される。
各リンクは、それぞれ方向性を有して定義される。両端のノードがこのエリア内に含まれる場合には、そのノード間を接続する各リンクが両方向ともこのエリアに属すると定義され、片方のノードがこのエリア内に含まれる場合には、下流となるノードが含まれる方向のリンクがこのエリアに属すると定義される。すなわち、エリア内を移動する車両と、エリアに流入する車両が、このエリアの対象車両として定義される。
【0038】
なお、高速道路や自動車専用道など(以下、まとめて「高速道路など」という。)が地域メッシュ内を通過する場合がある。エリア(地域メッシュ)を1km(キロメートル)四方で区切った場合には、高速道路などが通過するエリアであっても、多くの地域メッシュでは高速道路などのインターチェンジが無く、特定のエリアにインターチェンジが存在する。つまり、ほとんどのエリアでは、高速道路などとエリアとの車両の出入りが無く、車両の出入りが有るエリアは、インターチェンジが設けられているエリアに限られる。また、高速道路などのインターチェンジの有るエリアでは、インターチェンジの無いエリアと比べると、交通状態とは異なる状態にあることが多いため、一般道のエリア流動性を評価する場合は、集計対象から外すことにより適切に評価することができる。
さらに、高速道路などを解析の対象外として扱うことにより処理の簡素化することができる。これにより、インターチェンジが有るエリアと、無いエリアとで処理を統一した処理を行うことができ、解析結果の連続性も確保しやすいものとなる。
【0039】
メッシュ集計QKについて説明する。
図8は、エリアごとの集計QKを示す図である。
この図に示されるグラフは、エリア内の走行車両台数とそれらの走行車両の集計交通量の関係を示すグラフである。
このグラフでは、縦軸が集計交通量(台km/時)、横軸は、エリア内の全ての走行車両台数(台)を示す。縦軸に示す集計交通量は、エリア内の全ての道路の交通量の合計を示す。
このグラフに示される2種類の散布図は、それぞれ平日と、休日(土曜を含む。以下、特に明示しない場合には、合わせて「休日」という。)とに分類して示される。また、各プロットは、時間帯別に集計された結果を示す。この図に示す例では、1時間ごとに集計した結果である。
平日と休日とでは、台数の分布、集計交通量の分布とも異なる傾向を示す。実際の平日と休日の交通量の傾向が異なった傾向を示すことを、この図で再現できる。
【0040】
この図を導いた演算処理について説明する。
集計交通量Qは、(各リンクjの長さ)と(プローブ通過台数njτ)の積を集計して求められる。集計交通量Qは、式(1)として示される。
【0041】
【数1】

【0042】
式(1)において、ΔTがi番目の時間帯(1時間幅)を示し、τがi番目時間帯に属する集計時刻(正15分)を示し、jがメッシュに属するリンクの集合を示し、lがリンクjの長さ(km)を示し、njτがリンクjの時刻τにおけるプローブ通過台数(台)を示す。
また、エリア存在台数Kは、(リンクjの時刻τにおける平均旅行時間Tjτ)と(プローブ通過台数njτ)の積を集計して求められる。エリア存在台数Kは、式(2)として示される。
【0043】
【数2】

【0044】
式(2)において、Tjτがリンクjの時刻τにおける平均旅行時間(時)を示す。
図9は、図8に示した散布図からエリアごとの集計QK近似曲線を示す図である。
この図に示されるグラフは、エリア内の走行車両台数とそれらの走行車両の集計交通量の関係を示すグラフである。
このグラフでは、縦軸が集計交通量(台km/時)、横軸は、エリア内の全ての走行車両台数(台)を示す。縦軸に示す集計交通量は、エリア内の全ての道路の交通量の合計を示す。
近似曲線G31は、平日のプロットの散布図から導かれ、近似曲線G32は、休日のプロットの散布図から導かれる。
近似曲線G31とG32は、それぞれのプロットの散布状態に基づいて、原点をとおり上に凸の2次曲線で近似した例である。
この図に示されるように平日と休日を示す近似曲線G31とG32は、明らかに異なる傾向を示す近似曲線として示される。
【0045】
近似曲線の算出について以下に説明する。
原点を通る2次曲線は、集計交通量をy、エリア存在台数をxで定義すると、式(3)として示される。
【0046】
【数3】

【0047】
式(3)において、係数aは、グラフが上に凸の曲線であるから、a<0である。また、係数bは、台数が自然数で表されることから、b>0である。
この近似曲線について、最小二乗法を用いて評価すると、式(4)として示される評価式を定義でき、その値が最小となる条件を算出する。
【0048】
【数4】

【0049】
その条件を導くには、f(a,b)を変数aとbでそれぞれ偏微分を行い、その結果が0(零)となる条件は、式(5)として示される。
【0050】
【数5】

【0051】
式(5)を式(4)に基づいて整理することにより、式(6)として示される。
【0052】
【数6】

【0053】
式(6)を行列式に変換することにより、式(7)として示される。
【0054】
【数7】

【0055】
式(7)において、行列の要素A,B及びCは、式(8)として示される。
【0056】
【数8】

【0057】
式(7)を解くと、式(9)が導かれる。
【0058】
【数9】

【0059】
続いて、パラメトリック空間への変換と混雑指数の算出について説明する。
図10は、2次関数からパラメトリック空間への変換を示す図である。
この図に示されるグラフは、原点を通る2次元曲線を示すグラフである。
このグラフでは、縦軸がy、横軸がxを示す。このグラフに示される原点を通る2次曲線は、式(10)として示される。
【0060】
【数10】

【0061】
式(10)において、係数aは、グラフが上に凸の曲線であるから、a<0である。また、係数bは、台数が自然数で表されることから、b>0である。
式(10)は、前述の式(3)に相当し、QK曲線を示す。
2次関数で示されたQK曲線は、パラメータtを媒介して、式(11)のように示される。
【0062】
【数11】

【0063】
式(11)において、パラメータtは、0以上1以下で示される。
式(11)で示されるQK近似曲線を、スケールファクタsで各QKプロット(x, y)を通るように変形することにより式(12)として示される。
【0064】
【数12】

【0065】
式(12)において、スケーリング調整が行われたQK近似曲線に基づいて、パラメータtを媒介して、式(13)のように示される。
【0066】
【数13】

【0067】
式(13)において、パラメータtは、0以上1以下で示される。また、このプロットに対応するパラメータtを求める。このパラメータt、すなわち2次曲線に沿って原点から遠ざかる度合いを、混雑指数とする。
式(13)に基づいて、点(x, y) を通るようにスケーリングされた曲線上の点を示すパラメータt及びsを示すと式(14)として示される。
【0068】
【数14】

【0069】
式(14)に基づいて、スケールファクタsで変形する前のQK曲線上で、パラメータtで示される点(x*, y*)と、点(x, y)との距離dを導くと式(15)として示される。
【0070】
【数15】

【0071】
式(15)において、δsは、式(16)に示されるようにクロネッカーのδ(デルタ)を示す。
【0072】
【数16】

【0073】
なお、式(15)において、距離dは、2次曲線の縦横のサイズ比(アスペクト比)に基づいて、座標を正規化して算出された距離を示す。
また、距離dは、平均的なQK曲線からの乖離の度合いを示すので、非日常性を示す指標とすることができる。
【0074】
続いて、混雑指数の算出について説明する。
図11(a)と(b)は、平日と休日の混雑指数と乖離量の関係をそれぞれ示したものである。
それぞれのグラフにおいて、縦軸がQK曲線からの乖離量dを示し、横軸が混雑指数tを示す。
このグラフに示される散布図のプロットは、それぞれ集計交通量を基に4時間単位で集計された集計結果に基づいて示される。
縦軸の値が「0」から離れるにつれ、近似曲線からの乖離が大きくなることが示される。
図11(a)に示される平日の分布では、夜間(22時)から早朝(6時)までの分布にばらつきが少なく、また、他の時間の分布は、日によって乖離量に差があるが似た傾向を示している。
一方、図11(b)に示される休日の分布では、平日と同じように夜間(22時)から早朝(6時)までの分布にばらつきが少ないが、他の時間の分布は、ばらついた傾向が示される。
【0075】
この散布図を導いた時間帯別の2次元正規分布の算定について説明する。
各QKプロットiに対して求めたパラメータ(t, d)を、時間帯別にt-d平面にプロットし、2次元正規分布確率密度関数P(t,d)のパラメータ(μ, μ2, σ2, ρ)を求める。
事象生起確率分布Pを導く式を、式(17)に示す。
【0076】
【数17】

【0077】
式(17)において、μ, μ2, σ2は、パラメータtとdの、平均と分散であり、式(18)に示される通りとなる。
【0078】
【数18】

【0079】
また、式(17)において、ρは相関係数であり、式(19)として示される。
【0080】
【数19】

【0081】
式(17)に示した2次元正規分布確率密度関数P(t,d)を、当日の状態(t, d)の周りの微少領域[t, ±Δt,d±Δd]について積分して事象生起確率p(t, d) を求め、式(20)に示す。
【0082】
【数20】

【0083】
最後に、式(20)の積分結果から、エントロピー情報量Iを求める。
エントロピー情報量Iを導く式は、式(21)となる。
【0084】
【数21】

【0085】
続いて、交通状況解析装置100が行う交通状況解析処理の手順を示す。
図12は、交通状況解析処理の手順における初期化処理の手順を示すフローチャートである。
集計対象エリア情報登録部111は、入力された集計対象エリアを特定するエリア情報を、デジタル地図の領域を予め分割した地域情報メッシュに対応づけを行ってエリア情報記憶部112に記録する。対象とするすべてのエリアに対応するエリア情報の記録を完了すると初期化処理を終了する(ステップS11)。
【0086】
図13は、交通状況解析処理の手順における解析処理の手順を示すフローチャートである。
情報取得部121は、対象エリアにおける時刻tでのリンク通過台数とリンク所要時間情報を取得する。すなわち、情報取得部121は、交通情報システム200から提供される交通状況データを予め定められた周期にしたがったタイミング(時刻t)において取得する。また、情報取得部121は、エリア情報記憶部112に記憶された対象範囲の地図情報、路線情報、交通状況解析を行う単位を示す対象エリアを定めるエリア情報、及び、その対象エリアと路線の対応付けを示す情報を参照し、解析を行う範囲に係る情報を取得する。そして、情報取得部121は、上記の情報に基づいて、対象エリアを通過する車両の台数並びに通過にかかる所要時間情報を取得する(ステップS21)。
【0087】
エリア集計QK状態値算出部122は、時刻tでのエリア集計QK状態値を算出する。すなわち、エリア集計QK状態値算出部122は、情報取得部121によって取得された情報に基づいて、対象エリアごとのエリアの交通状況を示すエリア集計QK状態値を算出する。エリア集計QK状態値の算出は、式(1)から式(2)に示す演算式による。
また、エリア集計QK状態値算出部122は、対象エリアごとに算出されたエリア集計QK状態値をエリア集計QK状態値記憶部131に記録する。エリア集計QK状態値記憶部131への記録は、エリア集計QK状態値の算出に応じて行われ、情報取得部121によって取得された情報に応じた時間情報が付加されて時系列的に記録する(ステップS22)。
【0088】
乖離量算出部123は、時刻tでのエリア集計QK状態値を集計QK近似曲線に沿って射影変換し、エリア混雑指数と近似曲線からの乖離量を算出する。すなわち、乖離量算出部123は、エリア集計QK状態値に基づいて導かれる集計QK近似曲線に対して、エリア集計QK状態値算出部122が算出したエリア集計QK状態値を射影変換する。また、乖離量算出部123は、この射影変換の結果から、エリア混雑指数と近似曲線からの乖離量を算出する(ステップS23)。
【0089】
変化指数算出部124は、2次元正規分布と、求めたエリア混雑指数及び乖離量から、変化指数(エントロピー情報量)を算出する。すなわち、変化指数算出部124は、2次元正規分布パラメータ変換部133によって導かれる2次元正規分布と、乖離量算出部123によって算出された、エリア混雑指数と、近似曲線からの乖離量から、変化の度合いを示すエントロピー情報量を示す変化指数を算出する(ステップS24)。
【0090】
混雑指数出力部125は、算出されたエリアごとの混雑指数と変化指数を、段階的に設定された出力形態に適応させてそれぞれ出力する(ステップS25)。
情報取得部121は、装置内部に備える計時部からの指示により、所定の時刻になったことを検出すると、ステップS21からの処理を繰り返す。解析処理の終了が指示された場合には、処理を終了する(ステップS26)。
【0091】
図14は、交通状況解析処理の手順における近似曲線算出処理の手順を示すフローチャートである。
乖離量算出部123は、算出したエリア集計QK状態値をエリア集計QK状態値記憶部131に記録し、記憶されているデータの更新処理を行う。この更新処理は、ステップS21におけるデータ取得に応じて行われ、ステップS23の演算結果が反映される(ステップS31)。
【0092】
集計QK近似曲線部132は、エリア集計QK状態値記憶部131によって記憶されたエリアごとのエリア集計QK状態値を参照し、エリアごとに集計QK近似曲線を算出する。この近似曲線の算出処理は、比較的長い周期で繰り返し手行われる。例えば、繰り返し周期は、1週間とする。算出された結果は、新たな集計QK近似曲線を示すデータとして記録され更新される(ステップS32)。
【0093】
2次元正規分布パラメータ変換部133は、エリア集計QK状態値記憶部131に記憶されたエリア集計QK状態値を時間帯ごとに、集計QK近似曲線に沿って射影変換して、2次元正規分布のパラメータを算出する。この2次元正規分布のパラメータを算出は、比較的長い周期で繰り返し手行われる。例えば、ステップS32に合わせて行われ、繰り返し周期は、1週間とする。算出された結果は、新たな2次元正規分布のパラメータを示すデータとして記録され更新される(ステップS33)。
【0094】
なお、本発明の実施形態では、集計QK近似曲線部132は、予め定められたエリア単位ごとに、該エリア内に存在する車両台数と、該エリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線(集計QK近似曲線)を算出する。乖離量算出部123は、集計QK近似曲線との位置関係に基づいてエリアの通行困難度を示す混雑指数を算出する。
これにより、交通状況解析装置100は、主要幹線道路などの情報に限られることなくエリアごとに交通状況の提供を行うことが可能となる。
【0095】
変化指数算出部124は、基準とする上に凸となる関数で示した集計QK近似曲線とエリア交通状態情報との差から変化指数を算出する。
これにより、交通状況解析装置100は、算出される変化指数を参照することにより平常時との差を検出できる。
【0096】
集計QK近似曲線部132は、上に凸となる関数で示した近似曲線を2次曲線として算出する。
これにより、交通状況解析装置100は、近似曲線を2次曲線として扱うことにより、処理の負荷を低減しつつ、算出される変化指数を参照することにより平常時との差を検出できる。
【0097】
集計QK近似曲線部132は、エリア交通状態情報を、エリアにおいて対象道路として選定した道路を単位時間当たりに走行する車両の総走行時間で示される集計交通密度とする。
これにより、集計QK近似曲線部132は、対象エリアの道路を単位時間当たりに走行する車両の総走行時間で示される集計交通密度からエリア交通状態情報を導くことができる。
【0098】
集計QK近似曲線部132は、エリア交通状態情報を、エリアにおいて対象道路として選定した道路を単位時間当たりに走行する車両の総走行距離で示される集計交通量とする。
これにより、集計QK近似曲線部132は、対象エリアの道路を単位時間当たりに走行する車両の総走行距離で示される集計交通量からエリア交通状態情報を導くことができる。
【0099】
混雑指数出力部125は、エリアごとの混雑指数又は変化指数の変化を段階的な指標で出力する。
これにより、混雑指数又は変化指数の段階的な表示とすることにより、表示された内容の判別を容易とすることができる。
【0100】
混雑指数出力部125は、エリアを地図上にマッピングし、エリアごとに導かれた混雑指数又は変化指数から導かれた段階的な指標に基づいてエリアの色又は濃度の違いによって表示する。
これにより、地図上に示された混雑指数又は変化指数の情報を、段階的な表示としたエリアの色又は濃度の違いによって示すことにより、表示された内容の判別を容易とすることができる。
【0101】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
変化指数算出部124は、基準とする上に凸となる関数を2次曲線で近似するとして示したが、例えば、上に凸の三角形状を示す折れ線によって示される関数、或いは、渋滞領域だけを下に凸となる単調減少関数で近似する関数としても良い。渋滞領域とは、上に凸の関数の最大値を示す点より右側の領域、つまり、山の右側の領域である。
また、エリアごとに集計した交通量の変化の特徴を、平日と休日に分けて示したが、必要に応じて曜日ごと、期間ごとなどに分類することも可能である。また、時間帯ごとの分類についても任意の時間で分類することができる。
また、集計単位とするエリアは、デジタル地図に応じた分割を地域メッシュとして例示したに過ぎず、任意の形状、大きさを選択することができ、それぞれのエリアが同一の形状や同一の大きさとすることに制限されることはない。
【0102】
なお、上述の交通状況解析装置100は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した交通状況の提供を行う処理手順は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0103】
100 交通状況解析装置
111 集計対象エリア情報取得部
112 エリア情報記憶部
121 情報取得部
122 エリア集計QK状態値算出部
123 乖離量算出部
124 変化指数算出部
125 混雑指数出力部
131 エリア集計QK状態値記憶部
132 集計QK近似曲線部
133 2次元正規分布パラメータ変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められたエリア単位ごとに、該エリア内に存在する車両台数と、該エリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線を算出する近似曲線算出部と、
該近似曲線との位置関係に基づいて該エリアの通行困難度を示す混雑指数を算出する混雑指数算出部と、
を備えることを特徴とする交通状況解析装置。
【請求項2】
基準とする前記上に凸となる関数で示した近似曲線と前記エリア交通状態情報との差から変化指数を算出する変化指数算出部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の交通状況解析装置。
【請求項3】
前記近似曲線算出部は、
前記上に凸となる関数で示した近似曲線を、近似曲線を2次曲線として算出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の交通状況解析装置。
【請求項4】
前記近似曲線算出部は、
前記エリア交通状態情報を、前記エリアにおいて対象道路として選定した道路を単位時間当たりに走行する車両の総走行時間で示される集計交通密度とする
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の交通状況解析装置。
【請求項5】
前記近似曲線算出部は、
前記エリア交通状態情報を、前記エリアにおいて対象道路として選定した道路を単位時間当たりに走行する車両の総走行距離で示される集計交通量とする
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の交通状況解析装置。
【請求項6】
前記エリアごとの前記混雑指数又は前記変化指数の変化を段階的な指標で出力する混雑指数出力部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の交通状況解析装置。
【請求項7】
前記混雑指数出力部は、
前記エリアを地図上にマッピングし、前記エリアごとに導かれた混雑指数又は前記変化指数から導かれた段階的な指標に基づいて前記エリアの色又は濃度の違いによって表示する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の交通状況解析装置。
【請求項8】
予め定められたエリア単位ごとに、該エリア内に存在する車両台数と、該エリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線で近似する手順と、
該近似曲線との位置関係に基づいて該エリアの通行困難度を示す混雑指数を算出する手順と、
をコンピュータに実施させることを特徴とする交通状況解析プログラム。
【請求項9】
予め定められたエリア単位ごとに、該エリア内に存在する車両台数と、該エリアを通過する車両の走行車両数を示すエリア交通状態情報の関係を、上に凸となる関数で示した近似曲線で近似するステップと、
該近似曲線との位置関係に基づいて該エリアの通行困難度を示す混雑指数を算出するステップと、
を有することを特徴とする交通状況解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−48754(P2011−48754A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198363(P2009−198363)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、『エネルギーITS推進事業/国際的に信頼される効果評価方法の確立委託研究』、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501303840)株式会社アイ・トランスポート・ラボ (11)
【Fターム(参考)】