説明

人体検知装置とそれを使用した衛生洗浄装置

【課題】周囲温度の変化によって人体検知の検知精度の変動を簡単な回路構成で補正し、検知精度を向上することを目的とする。
【解決手段】焦電センサと610、焦電センサ610の出力を増幅する増幅回路620と、比較回路630と、室温を検知する温度センサRthとを備え、焦電センサ610の出力は温度センサRthを介して増幅回路620の増幅器621へ入力する回路構成としたことにより、周囲の温度の影響で変動する焦電センサ610の出力電圧を、温度センサ623の抵抗値の変化により、増幅率を自動的に変化させることによりマイコンソフトに依存しない温度補正ができ、検知精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体を検出する人体検知装置における回路構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の人体検知装置の回路構成としては、人体を検知する測距センサと、前記測距センサの出力電圧と基準電圧とを比較して人体の有無を判定する比較手段と、周囲温度を測定する温度センサと、温度センサが測定した温度変化に基づき測距センサの出力を補正する補正手段を備え、季節の変化等による周囲温度が変化することにより測距センサの出力が変動することによる誤差を、温度センサの測定データに基づきマイコンからなる補正手段により測距誤差を補正しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の人体検知装置の回路構成を示すものである。図に示すように、比較手段と補正手段を備えたマイコン1に、測距センサ2と温度センサ3を接続した構成となっている。
【特許文献1】特開2004−150240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前期従来の構成では補正手段はマイコンにより演算させる必要があり回路構成が複雑になり、しかも判断基準となる基準値のマイコンへの入力数に限りがあるため、検知精度を高めることができないという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり人体検知の精度を周囲の温度の影響によって、変動するのを低減させることができる人体検知装置を簡単な回路構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の人体検知装置は、赤外線を検知する焦電センサと、焦電センサの出力を増幅する増幅回路と、人が入室したことを判断する比較回路と、室温を検知する温度センサとを備え、焦電センサの出力は前記温度センサを介して増幅回路の増幅器へ入力する回路構成としたものである。
【0007】
これにより、周囲の温度の影響で変動する焦電センサの出力電圧を、温度センサの抵抗値の変化により、増幅率を自動的に変化させることによりマイコンソフトに依存しない温度補正ができ、かつリニア的に変化させることにより温度変化の判断基準に制限がなく、検知精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の人体検知装置の回路構成は、周囲温度の影響に対して簡単な構成で補正することができ、かつ温度変化の判断基準に制限がなく、検知精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明は、赤外線を検知する焦電センサと、前記焦電センサの出力を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の出力に応じて人が入室したことを判断する比較回路と、室温を検知する温度センサとを備え、前記焦電センサの出力は前記温度センサを介して前記の増幅回路の増幅器へ入力する回路構成とすることにより、物体までの距離を電圧値として出力する焦電センサと、前記焦電センサの出力電圧を増幅する増幅回路に、固定抵抗に変わり
に温度センサを有することにより、周囲の温度の影響で変動する焦電センサの出力電圧を、温度センサの抵抗値の変化により、増幅率を自動的に変化させることによりマイコンソフトに依存しない温度補正ができ、かつリニア的に変化させることにより温度変化の判断基準に制限がなく、検知精度を向上させることができる。
【0010】
第2の発明の衛生洗浄装置は、第1の発明の人体検知装置と、便器の上面に設置する本体部と、前記本体部に回動自在に枢支した便座部および蓋部と、人体局部に向けて洗浄水を噴出するノズル部と、遠隔操作装置とを備えたことにより、トイレルーム内に入室した使用者を室温の変化にかかわらず確実に検知することができ、衛生洗浄装置の制御の精度と信頼性を高めることができる。
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
<1>人体検知装置およびそれを備える衛生洗浄装置の外観
図1は本発明の実施形態1に係る人体検知装置およびそれを備える衛生洗浄装置を示す外観斜視図である。衛生洗浄装置100はトイレットルーム内に設置される。
【0013】
衛生洗浄装置100は便器700の上面に取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400、蓋部500、人体検知装置600により構成される。
【0014】
本体部200には、便座部400および蓋部500が便座便蓋回動機構(図示せず)を介して電動で開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、ノズル部800と、図示しない洗浄水供給機構と、乾燥ユニット等が内蔵される。
【0015】
図1では、本体部200の正面上部に設けられる着座センサ900が示されている。この着座センサ900は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ900は、人体から反射された赤外線を検出することにより便座部400上に使用者が存在することを検知する。
【0016】
また、洗浄水供給機構は、ノズル部40に接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水をノズル部800に供給する。それにより、ノズル部800から使用者の局部に洗浄水が噴出される。
【0017】
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0018】
人体検知装置600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。人体検知装置600の検知センサは、赤外線を検知する焦電センサ610であり、人体からの赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0019】
本体部200の制御部は、遠隔操作装置300、人体検知装置600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0020】
<2>衛生洗浄装置の動作、作用
以上のように構成された衛生洗浄装置は次のように動作する。
【0021】
非使用時において、冬季等の室温が低い場合は、便座部400が例えば約18℃となる
ように制御部により温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。当然ながら夏季等で室温が高い場合には便座部400への通電は行わない。
【0022】
ここで、使用者が遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチを操作することにより、便座設定温度が制御部に送信される。制御部は遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を制御部の記憶部に記憶する。
【0023】
使用者がトイレットルームに入室すると、人体検知装置600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部に送信される。
【0024】
人体検知装置600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知すると、制御部は便座便蓋回動機構を駆動して便座部400と蓋部500を開放するとともに、便座部400の測定温度値および記憶部に記憶された便座設定温度に基づいて便座部400の便座ヒータの駆動を開始し、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇され、快適な温度の便座部400へ使用者が着座することが可能となる。
【0025】
使用者が用便終了後は、遠隔操作装置300を操作することにより、ノズル部40から洗浄水を噴出させ局部を洗浄し、また乾燥ユニットを駆動して洗浄後の局部の乾燥を任意に行うことができる。
【0026】
使用者がトイレットルームから退室すると、人体検知装置600の検知が終了し、検知信号が制御部に送信されると、制御部は便座部を待機温度に維持するとともに、便座便蓋回動機構を駆動して便座部400と蓋部500を閉成する。
【0027】
<3>人体検知装置の回路構成
図2は人体検知装置600の構成を示す回路図である。
【0028】
図に示すように、人体検知装置600の主な回路構成としては、人体の有無を検知する焦電センサ610と、焦電センサの出力信号を増幅する増幅回路620と、増幅回路620で増幅された信号と予め設定した基準電圧とを比較する比較回路630と、比較回路630の出力により人体の有無を判断するマイコン640と、人体有無の信号を人体検知装置600から本体部200の制御部に送信する送信部650を備えている。図3は焦電センサ610の構成を示す断面図である。
【0029】
焦電センサ610の外面には、光学フィルタ611が設置してあり、その内部には入射される赤外線からの温度変化を電気信号に変換する焦電素子612が配置してあり、焦電センサ610の底面にはソース613とグランド614の端子が設けてある。
【0030】
自然界にあるすべての物体はその物体のもつ温度に応じた赤外線をその表面から放射するが、光学フィルタ611により人体に応じた赤外線だけを焦電センサ610内に入射させる。
【0031】
入射される赤外線からの温度変化を電気信号に変換する作用を焦電作用というが、図4は焦電作用を示す模式図である。図に示すように、通常は、焦電素子612に+、−の浮遊電荷が生じている状態になっている。この状態を図4の平衡状態であるという。この平衡状態から前に述べたように人体に応じた赤外線が入射されると、焦電素子612の外側に浮遊している電荷の一部が離れて非平衡状態になる。その時にその電荷が電気信号となり、焦電センサ610のソース613とグランド614間に電気的変化が発生し、焦電センサ610は出力を行う。
【0032】
増幅回路620の増幅器621の入力端子には固定抵抗R4と温度センサであるサーミスタRthが接続してあり、固定抵抗R4は焦電センサ610のソース613と接続してあり、サーミスタRthは焦電センサ610のグランド614に接続されている。
【0033】
焦電センサ610の出力は増幅回路620の固定抵抗R4とサーミスタRthによって増幅率を変化させながら増幅される。
【0034】
増幅された出力が、比較回路630固定抗R8、R9で予め設定してある基準電圧以上になると、その期間だけ比較回路630は出力信号を出力する。
【0035】
出力信号がマイコン640に入力されるとマイコン640は人が入室したと判断し、送信部650に信号を送信する。
【0036】
マイコン640から信号が送信部650に送られると、送信部650は本体部200に人体検知の信号を送信し、制御部は衛生洗浄装置100の各機能の制御を行う。
【0037】
一方、焦電センサ610の出力は周囲温度と検知対象物である人体の体温との温度差で変化する。検知対象物である人体の体温は周囲温度が変化しても一定(約36℃)であるのに対し、周囲温度は季節や時間により変化するため、例えば冬季の周囲温度が低い場合は、体温と周囲温度の温度差が大きくなり焦電センサ610の出力は大きくなり、逆に夏季の周囲温度が高い場合は、体温と周囲温度の温度差が小さくなり焦電センサ610の出力は小さくなる。
【0038】
焦電センサ610の出力が変化した場合、例えば温度差が大きい冬季の場合、検知対象物が遠くに離れている場合でも相当の出力を発するため、人体を誤検知することがある。逆に温度差が小さい夏季には、検知対象物が検知すべき範囲にあるにもかかわらず出力が低くなり、感知ができない場合が発生する。また、出力レベルを同一とした場合、焦電センサ610と検知対象物との距離が変化し、周囲温度が高い時は近くのものを検知し、周囲温度が低い時は遠くのものを検知する。
【0039】
上記焦電センサ610の周囲温度の変化による課題を解決するために、本実施の形態における増幅回路620は、固定抵抗R4とサーミスタRthによって周囲温度の変化に対応して増幅率を変化させることにより、出力を補正する機能を備えている。
【0040】
増幅回路620の増幅率Eは1+R5/Rthで示されるが、サーミスタRthの温度に対する抵抗の特性は図5に示すように、温度が上昇すると抵抗値が低くなるように変化する。したがって周囲温度が上昇した場合は増幅率Eが高くなり、周囲温度が低下した場合は増幅率Eが低くなる。
【0041】
図6は焦電センサ610の出力と増幅回路620増幅率の温度による変化を示すものであり、焦電センサ610の出力が低い場合に増幅回路620の増幅率Eが高くなり、逆に焦電センサ610の出力が高い場合に増幅回路620の増幅率Eが低くなっている。このような特性を備えた本実施の形態における焦電センサ610の出力を増幅回路620で増幅することにより、増幅回路620の出力は周囲温度が変化してもほぼ一定となる。
【0042】
図7は本願発明の増幅回路620と。増幅回路のサーミスタRthを固定抵抗にした場合の人体検知距離の特性を示すものである。図に示すように、サーミスタRthを固定艇庫にした場合は温度変化により検知距離が変化するのに対し、本実施の形態のサーミスタRthを使用した場合は温度が変化しても検知距離はほぼ一定となる。
【0043】
以上のように、本実施の形態における人体検知装置は、季節や時間により周囲温度が変化したした場合でも同じレベルで人体を検知することが可能であり、しかもそれを実現する構成は増幅回路に温度センサであるサーミスタを配設するという簡単な構成であり、従来のマイコンによる補正に見られる複雑なソフト等を組み込む必要がなく、低コストで精度の高い人体検知を実現できるものである。
【0044】
なお、本実施の形態においては、人体検知装置は衛生洗浄装置の独立した部材として構成したが、これに限るものではなく、例えば遠隔操作装置と一体で構成したり、本体部に組み込むこと等が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる人体検知装置は、周囲温度が変化した場合でも同一レベルで物体を検知することができるので、人体以外の動物や車両および各種製品等の検知装置の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1における人体検知装置を備えた衛生洗浄装置の斜視図従来における回路構成図
【図2】本発明の実施の形態1における人体検知装置の回路図本発明の実施例における焦電センサ及び増幅回路を備えた回路構成図
【図3】本発明の実施の形態1における焦電センサ断面図
【図4】本発明の実施の形態1における焦電効果を示す模式図焦電効果図
【図5】本発明の実施の形態1におけるサーミスタの温度特性を示すグラフ
【図6】本実施の形態1における焦電センサの出力と増幅回路の増幅率の温度特性を示すグラフ
【図7】本発明の実施の形態1における人体検知装置の人体検知距離の温度特性を示すグラフ
【図8】従来の人体検知装置の回路図
【符号の説明】
【0047】
100 衛生洗浄装置
200 本体部
300 遠隔操作装置
400 便座部
500 蓋部
600 人体検知装置
610 焦電センサ
620 増幅回路
621 増幅器
630 比較回路
700 便器
800 ノズル部
Rth サーミスタ(温度センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を検知する焦電センサと、前記焦電センサの出力を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の出力に応じて人が入室したことを判断する比較回路と、室温を検知する温度センサとを備え、前記焦電センサの出力は前記温度センサを介して前記の増幅回路の増幅器へ入力する回路構成を特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の人体検知装置と、便器の上面に設置する本体部と、前記本体部に回動自在に枢支した便座部および蓋部と、人体局部に向けて洗浄水を噴出するノズル部と、遠隔操作装置とを備えた衛生洗浄装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−58463(P2009−58463A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227745(P2007−227745)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】