説明

人工器官

親水性を備えたセラミック・コーティングは人工器官プリフォームにて形成される。親水性を備えたセラミック・コーティングは多孔質であり、ナノサイズの薬の粒子を収容することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
身体は、動脈、他の血管および他の体腔のような様々な通路を含む。これらの通路は、時に閉塞されるか脆弱化される。例えば、通路は腫瘍によって閉塞されるか、プラークによって制限されるか、或いは動脈瘤によって脆弱化される。これらが生じる場合に、通路は再び開放されるか、医療用の人工器官によって補強される。人工器官は通常身体中のルーメンに位置される管状部材である。人工器官の例はステント、覆われたステント、およびステントグラフトを含む。
【0003】
人工器官は人工器官を所望の部位へ搬送するときに、小型化されるか、縮径形態にして人工器官を支持するカテーテルによって体内において搬送される。部位に到達すると、人工器官は拡張し、これにより、例えば、ルーメンの壁と接触する。ステントの搬送は、ヒースによる特許文献1にさらに開示される。
【0004】
拡張機構は人工器官を強制的に径方向に拡張することを含む。例えば、拡張機構は、バルーンを搬送するカテーテルを含むが、このカテーテルは、バルーンにより拡張可能な人工器官を搬送する。バルーンは、ルーメン壁に接するように所定位置にて拡張される人工器官を変形し固定すべく膨張可能である。バルーンは続いて収縮され、カテーテルがルーメンから取り払われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6290721号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ナノサイズの薬の粒子を収容可能である多孔質の親水性を備えたセラミック・コーティングが形成されたプリフォームを備える人工器官を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本発明は、プリフォームを備える人工器官を特徴とする。プリフォームは、30度未満の、例えば、5度、あるいは1度未満の接触角度を有する親水性を備えたセラミック・コーティングを含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、人工器官を形成する方法を特徴とする。方法は(a)プリフォームにセラミック・コーティングを形成する工程、および(b)紫外線によりセラミック・コーティングを処理する工程を含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、プリフォームに30度未満の接触角度を有する親水性を備えたセラミック・コーティングを形成する工程を含む人工器官を形成する方法を特徴とする。
【0010】
実施例は、次の特徴のうちの任意の1つ以上を含む。親水性を備えたセラミック・コーティングは気孔を含む。気孔は親水性を備えた治療薬、例えばアルブミン結合パクリタクセルのナノ粒子を含む。ナノ粒子は、少なくとも100nm、例えば約130nmの平均径を有する。親水性を備えたセラミック・コーティングは二酸化チタン、ルチル、アナターゼや、二酸化ケイ素を含む。
【0011】
人工器官を形成する方法の実施例は、さらに次の特徴のうちの任意の1つ以上を含む。工程(a)において形成されたセラミック・コーティングは疎水性を備え、90度より大きい接触角度を有し、工程(b)の間に、例えばセラミック・コーティングの少なくとも一部、例えばその全体の疎水性が低減される。セラミック・コーティングは、例えば回転コーティングを使用して、プリフォームにゾル・ゲル溶液を堆積させることにより形成する。ゾル・ゲル溶液はポリエチレングリコールおよび二酸化チタン先駆体、あるいは二酸化ケイ素および二酸化チタン先駆体を含む。ポリエチレングリコールは6000より大きな分子量を有し、先駆体はチタン・アルコキシドを含む。セラミック・コーティングは気孔を含み、工程(a)は、例えばか焼によってポリエチレングリコールを分解させることにより気孔を形成する工程をさらに含む。セラミック・コーティングは工程(b)に先だって水蒸気に暴露される。セラミック・コーティングは気孔を含み、工程(b)はプリフォームを例えばアルブミン・パクリタキセルのナノ粒子を含む水溶液に浸漬することにより、気孔に治療薬を投入する工程をさらに含む。工程(b)の後に、セラミック・コーティングは親水性を備え、最大30度の接触角度を有する。
【0012】
実施例は、後述する1つ以上の効果を含む。ステントは、薬の収容および溶出を促進する気孔および親水性特性を有するセラミック・コーティングにより形成される。特に、多孔質のセラミック・コーティングがゾル・ゲル法を使用して形成される。セラミック・コーティングは好適な機械的強度を備える。多孔質なコーティングの気孔は、ステントに薬を収容することに使用される。セラミック・コーティングは二酸化チタンを含み、二酸化チタンをアナターゼやルチルの状態に変換すべく低温の水蒸気に暴露される。低温にて接触させることにより、ステントのポリマおよび薬品のうち少なくともいずれか一方が破壊されることを回避することができる。アナターゼやルチルの状態の二酸化チタンを含むセラミック・コーティングは、さらに物理気相蒸着法によってステントに形成されてもよい。セラミック・コーティングは感光性を備え、紫外線照明に暴露されると、親水性を備える。セラミック・コーティングは抗菌性を備える。親水性を備えたセラミック・コーティングは、親水性を備えた薬、例えばアルブミン結合粒子の形態のパクリタクセルの吸収を促進する。1つ以上の多孔質の親水性を備えたセラミック・コーティングがステントに形成される。セラミック・コーティングはそれぞれ溶出される薬を収容する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】折りたたまれた状態のステントの搬送、ステントの拡張およびステントの配備を示す長手方向断面図。
【図1B】折りたたまれた状態のステントの搬送、ステントの拡張およびステントの配備を示す長手方向断面図。
【図1C】折りたたまれた状態のステントの搬送、ステントの拡張およびステントの配備を示す長手方向断面図。
【図2】開口を形成したステントを示す斜視図。
【図3A】ステント壁を示す断面図。
【図3B】図3Aのステント壁を示す平面写真。
【図3C】図3Aのステント壁を示す斜視図。
【図4】図3A乃至3Cのステントを製造する方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
出版物、特許出願明細書、特許明細書、およびここに示した他の参照文献はすべて、それらの全体がここに開示されたものとする。
他の特徴および発明の効果は後述の発明を実施するための形態、および請求の範囲から明らかになるであろう。
【0015】
様々な図面において同様の参照符号は類似の要素を示す。
図1A乃至1Cに、ステント20が、カテーテル14の先端部近傍に搬送されたバルーン12を覆うように位置され、バルーンとステントを搬送する部分が閉塞領域18に到達するまで、図1Aに示すルーメン16を通して配向されることを示す。ステント20は、続いてバルーン12を膨張させることにより径方向に拡張し、血管壁に対して圧迫され、これにより、閉塞部18が圧迫され、図1Bに示すように閉塞部18を包囲する血管壁は、径方向に拡張する。圧力がバルーンから解放され、図1Cに示すようにカテーテルが血管から取り払われる。
【0016】
図2において、ステント20は、壁23に形成される複数の開口22を含む。ステント20は、外側(又は反管腔側(abluminal))表面24、内部、管腔(あるいは傍内腔(adluminal))、表面26、および複数のカット面表面28を含むいくつかの表面領域を含む。図示のように、ステントはバルーンにより拡張可能であるか、自己拡張型ステントである。ステントの例はヒースによる上記特許文献1、即ち米国特許第6290721号明細書に開示される。
【0017】
図3A乃至3Cにおいて、ステント壁30はステント本体32およびセラミック・コーティング34を含む。セラミック・コーティング34には治療薬40を含む気孔36が形成される。
【0018】
いくつかの実施例において、ステント本体32は、例えば合金等の金属のような金属材料から形成される。金属材料の例は316Lのステンレス鋼、コバルトクロム合金、ニチノール、登録商標名PERSS、MP35N、および他の好適な金属材料を含む。
【0019】
いくつかの実施例において、セラミック・コーティング34は、例えば、アナターゼ又はルチル型構造を有する二酸化チタン(TiO)を含む。セラミック・コーティング34は、さらに酸化バナジウム(V)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、カリウム・タンタル酸塩(KTaO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄(Fe)、あるいは酸化タングステン(WO)を含んでもよい。
【0020】
コーティング34は、気孔36によって分離される樹状突起38を備えた樹状突起形状を有する。いくつかの実施例において、樹状突起38は、例えば約50nm乃至約500nmの平均の長さ部分Lを有し、例えば約50nm乃至約500nmの平均径Dを有する。気孔36は樹状突起38の長さLと同様の深みを有し、例えば約10nm乃至約100nmの径を有する。TiOは生体適合性を備えるため、コーティング34により、医療上の効果が得られる。例えば、TiOは詳細に後述するが、高い抗菌性を備えるべく処理される。TiOの生体適合性は、さらに2004年出版のTsyganov等によるAppl. Surf. Sci.235の156乃至163に開示される。酸化バナジウムを含むコーティング34は、多孔質のナノ構造、例えばバラのような(roselike)構造を含む。酸化バナジウムをナノ構造化したコーティングの特性は、2007年出版のLim等によるJ. Am. Chem. Soc. 129、4128および4129に開示される。
【0021】
セラミック・コーティング34の少なくとも一部、例えばその全体は、親水性を備える。例えば、セラミック・コーティング34、即ち樹状突起38の表面に対する水滴の接触角度は約30度、約25度、約20度、約15度、約10度や、約8度未満である。いくつかの実施例において、セラミック・コーティング34は高い親水性を備え、セラミック・コーティング34に対する水滴の接触角度は、例えば約5度、約3度、約1度や、約0.5度未満である。
【0022】
いくつかの実施例において、治療薬40はアルブミン結合パクリタクセルを含む。アルブミン結合パクリタクセルは、例えば約100nmから約200nm、あるいは130nmの径を有するナノ粒子の形態にあってもよい。これらのナノ粒子は親水性を備えるため、治療薬40は、樹状突起38の親水性表面と十分に接触し、且つ容易に気孔36を満たすことができる。
【0023】
いくつかの実施例において、セラミック・コーティング34はさらに二酸化ケイ素(SiO)を含む。SiOは、樹状突起38の機械的強度を高めることができ、これによりコーティング34は、大きな樹状突起高さLおよび深みを有する気孔36を得られるように厚みを備えることができる。大量の治療薬40がコーティング34に収容可能である。
【0024】
図4に、図3A乃至3Cに示したステントを形成するための工程A乃至Dを含む方法の例を示す。
特に工程Aにおいて、コーティング34は、例えばチタン・アルコキシドの先駆体を含むゾル・ゲル溶液を使用した回転コーティングによりTiOをステント本体32にコーティングすることによって形成される。ゾル・ゲル溶液はさらにポリエチレングリコール(PEG)を含むことができる。いくつかの実施例において、ゾル・ゲル溶液中のPEGは、例えば少なくとも約5000乃至約6000の、および/又は例えば約15000乃至20000の分子量を有する。PEG分子はコーティング34のひび割れを低減することができる。いくつかの実施例において、コーティング34には、ひび割れがない。コーティング34は、続いて例えば約400℃以上、あるいは約550℃以上にてか焼され、TiOは、アナターゼかルチル型構造を有するように結晶する。か焼にて、PEG分子は分解し、TiOコーティングに気孔36が形成される。気孔36の密度および径はコーティング34に付加されたPEG分子の数および分子量を制御することにより調整可能である。例えば、PEG分子の数がより大きくなると、気孔の密度はより高くなり、PEG分子の分子量がより大きくなると、より大きな寸法の気孔が形成される。
【0025】
いくつかの実施例において、アナターゼやルチル型構造を有するTiOを含むコーティング34も、ゾル・ゲルから派生したTiOおよびゾル・ゲルから派生したシリカ(SiO)を水蒸気に暴露することにより準備することができる。TiO先駆体、例えばチタン・テトライソプロポキシド、およびSiO先駆体、例えば、シリコン・テトラエトキシドを含むゾル・ゲル溶液は、ステント本体32をコーティングする。コーティングは、例えば60℃にて乾燥され、例えば、60℃乃至180℃(例、90℃)の比較的低温にて、例えば100%の相対湿度を有する水蒸気に暴露される。上述したように形成されたコーティング34は、約0乃至50mol%のSiOおよびアナターゼやルチル型構造を有する結晶のTiOを含む。コーティングが水蒸気に暴露される場合に、コーティングに含まれるSiOにより、TiOの結晶化が促進される。付加的に、SiOは、さらにステント本体のコーティングの付着および機械的強度を高める。いくつかの実施例において、TiOとSiOは異なる相を有し、これらの相を分離することにより、コーティング34に気孔36が形成される。気孔36の密度および径は、コーティング34に含まれるSiOの量および水蒸気の温度のうち少なくともいずれか一方を制御することにより調整可能である。水蒸気の工程の作用温度が比較的低いことにより、水蒸気工程において、あるいは水蒸気工程に先立ってポリマおよび治療薬が包含される。ゾル・ゲル法も2005年出版のGuo等による表面およびコーティング技術198、24乃至29、1999年出版の今井等によるJ, American Ceramic Society82、2301乃至2304、2008年6月18日に出願された米国特許出願第61/073647号明細書、および2008年5月29日に出願された米国特許出願第61/056912号明細書に開示される。
【0026】
工程Bにおいて、コーティング34の少なくとも一部、例えばその全体は、約1時間にわたって紫外線(UV)放射に暴露される。紫外線に暴露されることが好ましくないコーティング34の部分は、例えば耐紫外線性カバーによって覆われてもよい。紫外線は、ここで使用されるように、可視光線の波長より短いが軟X線の波長より長い波長を備えた電磁波放射線であると定義される。例えば、紫外線は、約156nm乃至約400nm、例えば365nmや、193nmの波長を有する。紫外線の入射光子により、アナターゼやルチル型構造のTiOの光触媒効果が引き起こされ、コーティング34は、親水性又は超親水性となる。紫外線および光触媒効果により、さらにコーティング34は殺菌される。例えば、紫外線Aの光子が例えば二酸化チタンのセラミックに吸収される場合に、電子対と穴が生成される。光生成穴は、ヒドロキシル・ラジカル(*OH)を形成すべく水と反応し、光生成電子は、スーパー・オキシド・ラジカル陰イオン(*O)を形成すべく分子の酸素と反応する。ヒドロキシル・ラジカルおよびスーパー・オキシド・ラジカル陰イオンは極めて反応性に富み、例えばコーティング34の細菌のような有機種を酸化し、これにより破壊することができる。TiOコーティングの光触媒効果および超親水性に関する情報も、2002年出版のYu等によるJ. Photochemistry and Photobiology A: Chemistiy 148, 331乃至339、2005年出版のKanruppuchamy等によるMaterials Chemistry and Physics 93, 251乃至254、2004年出版のZhong等によるAppl. Phys. Lett. 85, 5067乃至5069に開示される。
【0027】
工程Cにおいて、治療薬40はステント壁30を水溶液に浸漬することにより気孔36内を満たす。水溶液は治療薬40、例えば親水性を備えたアルブミン・パクリタキセルや登録商標名Abraxane(ABI−007)を含む。アルブミン・パクリタキセルは、TiOコーティングの気孔より小さな径を有するナノ粒子の形態にある。親水性を備えたコーティング34に接触すると、ナノ粒子は気孔36に吸収され気孔36を満たす。TiOコーティングおよびアルブミン・パクリタクセル・ナノ粒子の両者の親水性により、ステントに容易に薬を投入することができ、さらに、大量の薬を気孔に投入することができる。ステントは、例えば90℃にて続いて乾燥される。
【0028】
工程Dにおいて、任意により、TiOを含み、且つ治療薬を含む別のコーティングが、工程A乃至Cを繰り返すことにより、コーティング34に形成されてもよい。特に、第2のコーティングを形成する工程Aにおいて、治療薬40がこれらの連続する工程によって影響を付与されないように、ゾル・ゲル派生のTiOおよびゾル・ゲル派生のシリカ(SiO)を水蒸気に低温にて暴露する工程が好ましい。
【0029】
用語「治療薬」、「薬学的意味における活性薬剤」、「薬学的意味における活性物質」、「薬学的意味における有効成分」、「薬」および他の関連用語は、ここで交換可能に使用され、小さな有機分子、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、核酸、オリゴヌクレオチド、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、遺伝子治療薬の搬送のためのベクター、細胞、および例えば再狭窄を低減するか防止する薬剤として血管系治療法に対する候補と認識される治療薬を含むが、これらに限定されるものではない。小さな有機分子とは、全体で50あるいはより少数の炭素原子、および100未満の非水素原子を有する有機分子を示す。
【0030】
治療薬の例は、例えば抗血栓薬(例えばヘパリン)、抗増殖/抗有糸分裂薬(例えばパクリタクセル、5フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、平滑筋細胞増殖阻害剤(例えば、単クローン抗体)、およびチミジンキナーゼ阻害剤)、酸化防止剤、抗炎症剤(例えばデクサメタゾーン、プレドニゾロン、コルチコステロン)、麻酔薬(例えばリドカイン、ブピバカインおよびロピバカイン)、抗凝血剤、抗生物質(例えばエリスロマイシン、トリクロサン、セファロスポリンおよびアミノグリコシド)、内皮細胞成長および付着のうち少なくともいずれか一方を刺激する薬剤を含む。治療薬は非イオンであっても自然界における陰イオンおよび陽イオンのうち少なくともいずれか一方であってもよい。治療薬は、単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。好適な治療薬は、再狭窄(例えばパクリタキセル)、抗増殖性の薬剤(例えばシスプラチン)および抗生物質(例えばエリスロマイシン)の阻害剤を含む。治療薬の付加的な例は米国特許出願公開第2005/0216074号明細書に開示される。実施例において、薬はポリマ・コーティングの多孔質な領域内に組み込むことができる。薬溶出コーティング用ポリマも米国特許出願公開第2005/019265号明細書に開示される。機能的な分子、例えば、有機物、薬、ポリマ、タンパク質、DNAおよび同様の材料は、溝、穴、空間およびステントの他の要素に組み込むことができる。
【0031】
好適なポリマは、例えば、ポリカルボン酸、酢酸セルロースと硝酸セルロースとを含むセルロースのポリマ、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、架橋ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマを含むポリ無水物、ポリアミド、ポリビニルアルコール、EVAのようなビニル単量体の共重合体、ポリビニル・エーテル、ポリスチレンと共重合体のようなポリビニルの芳香薬、イソブチレン、イソプレンおよびブタジエンのような他のビニル単量体とこれらの共重合体、例えば、スチレン−イソブチレン−スチレン(SIBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエチレン・テレフタレートを含むポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリエーテル・スルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレンを含むポリアルキレン、ポリエチレンおよび高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンを含むハロゲン化ポリアルキレンや、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレンを含む天然ゴムおよび合成ゴム、これらとスチレンのような他のビニル単量体との共重合体、ポリウレタン、ポリオルトエステル、タンパク質、ポリペプチド、シリコン、シロキサン・ポリマ、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、吉草酸塩、並びにこれらの混合物および共重合体の他、他の生物分解性を備えたポリマ、生体吸収性を備えたポリマおよび生物学的安定性を備えたポリマ、並びにこれらの共重合体も含む。
【0032】
ポリウレタン分散(BAYHDROL.RTM.等)およびアクリルラテックス分散のようなポリマ分散によるコーティングも本発明の範囲内にある。例えば、ポリマは、タンパク質ポリマ、フィブリン、コラーゲンおよびこれらの派生物、セルロース、スターチ、デキストラン、アルギン等の多糖類およびこれらの多糖類の派生物、細胞外マトリックス成分、ヒアルロン酸や、別の生物剤、あるいはこれらのうち任意のものの好適な混合物であってもよい。一実施例において、好適なポリマは、マサチューセッツ州ナティック(Natick)に所在するボストン・サイエンティフィック株式会社(Boston Scientific Corporation)からHYDROPLUS.RTM.として市場にて販売されているポリアクリル酸であり、これは米国特許第5091205号明細書に開示され、その全体がここで開示されたものとする。米国特許第5091205号明細書は、体液に暴露されたときに医療器具が迅速に円滑になるように1つ以上のポリイソシアナート(polyiocyanates)によりコーティングされた医療器具を開示する。本発明の好適な別例において、ポリマはポリ乳酸とポリカプロラクトンの共重合体である。好適なポリマは米国特許出願公開第2006/0038027号明細書に開示される。
【0033】
実施例において、ポリマは、相当な量の薬溶液を吸収することができる。本発明に従って医療器具にコーティングとして塗布されると、乾燥したポリマは通常約1乃至約50マイクロメートルの厚みの順となる。例えば、約0.2乃至0.3マイクロメートルの非常に肉薄なポリマ・コーティング、および例えば10マイクロメートルを超えるはるかに厚みを有するコーティングが、さらに可能である。多数の層のポリマ・コーティングが設けられる。そのような多数の層は、同じか異なる高分子材料から形成される。
【0034】
ここで開示される任意のステントは、例えば硫酸バリウム、プラチナ、あるいは金のような放射線不透過性を備えた材料を付加することによって、あるいは放射線不透過性を備えた材料で覆うことによって放射線不透過性に染められるか、放射線不透過性に構成される。
【0035】
ステントは、ステンレス鋼(例えば316L、登録商標名BioDur 108(UNS S29108)、304Lのステンレス鋼、米国特許出願公開第2003/0018380号明細書、米国特許出願公開第2002/0144757号明細書、米国特許出願公開第2003/0077200号明細書に開示されるようなステンレス鋼および5乃至60重量%の1つ以上の放射線不透過性を備えた要素(例えばPt、Ir、Au、W)(登録商標名PERSS)を含む合金)、ニチノール(ニッケル・チタン合金)、Elgiloyのようなコバルト合金、L605合金、MP35N、チタン、チタン合金(例えばTi−6A1−4V、Ti−50Ta、Ti−10Ir)、プラチナ、プラチナ合金、ニオブ、ニオブ合金(例えばNb−IZr)Co−28Cr−6Mo、タンタルおよびタンタル合金等の金属材料を含む(即ち、これらから製造される)。材料の他の例は、2003年9月26日に同一出願人により出願された米国特許出願第10/672891号明細書、および2005年1月3日に出願された米国特許出願第11/035316号明細書に開示される。他の材料は、例えばSchetsky、L.McDonaldの「形状記憶合金」、1982年出版のJohn Wiley & SonsのEncyclopedia of Chemical Technologyの(第3刷)20巻の726乃至736頁、および2003年1月17日に同一出願人により出願された米国特許出願第10/346487号明細書に開示される超弾性合金、あるいは偽弾性合金のような弾性および生体適合性を備える金属を含む。
【0036】
ここに開示されるステントは、血管系、例えば冠血管系・末梢血管系、非血管系のルーメン用に構成することができる。例えば、それらは、食道又は前立腺で使用するために構成することができる。他のルーメンは胆管のルーメン、肝臓のルーメン、膵臓のルーメン、尿道のルーメンを含む。
【0037】
ステントは、所望の形状および径を有することができる(例えば冠状動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管系ステント、胃腸のステント、泌尿器のステント、気管又は気管支のステントおよび神経系のステント)。応用に応じて、ステントは、例えば約1mm乃至約46mmの径を有する。所定の実施例において、冠動脈ステントは、約2mm乃至約6mmの拡張した径を有する。いくつかの実施例において、末梢ステントは、約4mm乃至約24mmの拡張した径を有する。所定の実施例において、胃腸および/又は泌尿器用ステントは、約6mm乃至約30mmの拡張した径を有する。いくつかの実施例において、神経病用ステントは、約1mm乃至約12mmまでの拡張した径を有する。ステント腹部大動脈瘤(AAA)および胸部大動脈瘤(TAA)ステントは、約20mm乃至約46mmの径を有する。例えば、特許文献1、即ち米国特許第6290721号明細書に示すように、ステントはバルーン拡張型であっても、自己拡張型であっても、あるいは両者の組み合わせであってもよい。
【0038】
他の実施例を請求の範囲に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30度未満の接触角度を含む親水性を備えたセラミック・コーティングを有するプリフォームからなる人工器官。
【請求項2】
前記親水性を備えたセラミック・コーティングは5度未満の接触角度を有することを特徴とする請求項1に記載の人工器官。
【請求項3】
前記親水性を備えたセラミック・コーティングは1度未満の接触角度を持つことを特徴とする請求項1に記載の人工器官。
【請求項4】
前記親水性を備えたセラミック・コーティングは気孔を含むことを特徴とする請求項1に記載の人工器官。
【請求項5】
前記気孔は親水性を備えた治療薬を含むことを特徴とする請求項4に記載の人工器官。
【請求項6】
前記親水性を備えた治療薬はアルブミン結合パクリタクセルのナノ粒子を含むことを特徴とする請求項5に記載の人工器官。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、約130nmの平均径を有することを特徴とする請求項6に記載の人工器官。
【請求項8】
前記気孔は、少なくとも100nmの平均径を有することを特徴とする請求項4に記載の人工器官。
【請求項9】
前記親水性を備えたセラミック・コーティングは二酸化チタンを含むことを特徴とする請求項1に記載の人工器官。
【請求項10】
前記親水性を備えたセラミック・コーティングはルチルを含むことを特徴とする請求項1に記載の人工器官。
【請求項11】
前記親水性を備えたセラミック・コーティングはアナターゼを含むことを特徴とする請求項1に記載の人工器官。
【請求項12】
前記親水性を備えたセラミック・コーティングは二酸化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1に記載の人工器官。
【請求項13】
(a)プリフォームにてセラミック・コーティングを形成する工程と、
(b)セラミック・コーティングを紫外線により処理する工程とを含むことを特徴とする人工器官の形成方法。
【請求項14】
工程(a)において形成されたセラミック・コーティングは疎水性を備え、90度を越える接触角度を有し、工程(b)の間に、セラミック・コーティングの少なくとも一部は疎水性が低減されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プリフォームにゾル・ゲル溶液を堆積させることによりセラミック・コーティングを形成する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
回転コーティングによってゾル・ゲル溶液を堆積させる工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ポリエチレングリコールおよび二酸化チタン先駆体を含むゾル・ゲル溶液を堆積させる工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリエチレングリコールは6000より大きな分子量を有し、前記先駆体がチタン・アルコキシドを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記セラミック・コーティングは気孔を含み、工程(a)はポリエチレングリコールの分解により気孔を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
か焼によってポリエチレングリコールを分解する工程を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
二酸化ケイ素および二酸化チタン先駆体を含むゾル・ゲル溶液を堆積させる工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項22】
工程(b)に先だって水蒸気にセラミック・コーティングを暴露する工程をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
セラミック・コーティングは気孔を含み、工程(b)が気孔に治療薬を投入する工程をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項24】
アルブミン・パクリタキセルのナノ粒子を含む水溶液に前記プリフォームを浸漬することにより、治療薬を投入する工程を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(b)の後に、セラミック・コーティングは親水性を備え、最大30度の接触角度を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項26】
工程(a)において形成された前記セラミック・コーティングは疎水性を備え、90度を越える接触角度を有し、工程(b)の間に、セラミック・コーティング全体の疎水性が低減されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項27】
プリフォームに30度未満の接触角度を有する親水性を備えたセラミック・コーティングを形成する工程を含む人工器官を形成する方法。
【請求項28】
前記親水性を備えたセラミック・コーティングは気孔を含み、方法が気孔に親水性を備えた治療薬を投入する工程をさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519545(P2012−519545A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553070(P2011−553070)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/026026
【国際公開番号】WO2010/101988
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】