人工液流補綴装置
患者への移植に適し、液流の通過する単一液流路を備え、流入口および流入口から離れた発散部位をそれぞれ明確に形成するよう形作られた、人工補綴装置を含む器具。当該人工補綴装置には、軸方向に伸長できる複数のストラット(112)が含まれる。これは、患者の心周期を通して、個々のストラットの遠位末端部が、互いに、近位末端部に比較して大きな間隔を保つことができるように、少なくとも当該発散部位分だけ伸長し、外部に向けて発散する。当該発散部位には、ストラットに組み合わされた発散エンベロープ(111)が含まれる。これは、心収縮期における開口状態を再現するように作られており、これにより、血流が当該装置を通過することを可能にする。さらに、折り畳み、血流通過を遮断し、心拡張期の閉口状態を再現するよう作られている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え込み型人工補綴装置に関するものである。本発明は、心臓の大動脈弁の狭窄症の治療を目的とする、経動脈施術により植え込み可能な補綴装置において特に有用であり、かかる適用法を旨に以下に解説されている。しかしながら、本発明は、大動脈弁逆流症、および大動脈弁狭窄症と逆流症の合併疾患、弁膜症病変、血管閉塞症、または尿路や消化管などの他の体液の閉塞症の治療、またこれらに限定されることなく、その他の疾病治療に用いられることも認識されている。本発明はまた、人工補填装置の移植施術法にも関連している。
【背景技術】
【0002】
大動脈弁狭窄症は、左心室収縮の際に大動脈弁の開口が制限されることが原因となり、左心室から大動脈に流れ出る血流に閉塞が起こる疾患である。大動脈弁開口部が狭窄(標準的成人の正常値3cm2から、重度の場合は0.5cm2)した結果、弁口圧が大幅に低下し、正常な心拍出量および大動脈圧は、左心室の収縮期圧の亢進という犠牲を払うことによってのみ維持することができる。左心室内に発生する高圧により、内壁圧および心筋酸素消費量が増加する。肥大拡張(心筋量の代償的増加)などの順応過程により、心臓は増加した負荷に対して暫時持ちこたえることができるが、終局的には心機能低下は不可避である。
【0003】
大動脈弁狭窄の症例の大半(65歳以上の患者の90%)は、高リポたんぱく血症、高血圧、老化(後天性大動脈弁狭窄症)により引き起こされる進行性線維鞘および正常弁の石灰沈着変性に起因している。息切れを呈している重度の大動脈弁狭窄症患者の平均生存年数は2年未満。急死に至る例も多く、手術に充分耐えうる場合は、無症候性患者の外科治療を推奨する研究者もいる。
【0004】
大動脈弁狭窄症単独の患者グループに対する外科治療の結果は良好である。この場合の患者の手術死亡率は約5%。しかしながら、重度の大動脈弁狭窄症を発症している患者のほとんどは70〜80歳代である。これらの患者には、冠動脈疾患、脳血管疾患、アテローム性硬化症、腎不全、糖尿病など、複数の合併症の危険因子が見られる。結果として、手術死亡率および罹病率は相当高くなる。さらに、石灰化した大動脈弁を機械的補綴装置に置き換えた場合、血栓塞栓症の合併発症を避けるため、抗凝固療法が必須となる。血栓塞栓症は、特に高齢になるにつれ、患者への出血の危険性を増大させる。従って、生物学的補綴器官の移植が、高齢者においては好ましい。しかしながら、外科的に移植された生物学的弁は、不適当な血行力学的側面を併せもっている。弁を装着する縫合輪自体により、弁の開口部が小さくなるからである。これは特に、女性患者において問題となる。比較的小さなサイズ(心臓が小さいため)の生体弁を使用しなければならないため、拍出の重大な妨げになることがある。
【0005】
人工心肺を使用する心臓切開手術を高齢患者に実施することは、死亡、卒中、呼吸器および腎機能不全などを含む重大な危険がともなうため、バルーン・カテーテルによる狭窄弁の拡張が、外科手術の代替えになるものと期待された。しかし残念なことに、バルーン・カテーテルの速効作用は高いとは言えず、実質的にはすべての患者において数週間/数ヶ月以内に狭窄の再反跳が発生し、結果は、施術をしなかった患者とほとんど同等という、誠に思わしくないものであった。そのため、バルーン拡張施術は、手術禁忌が明白な場合──または稀な症例として──「一時しのぎの方法」であると考えられている。
【0006】
近年、冠動脈へのステントの使用に関連して、充分な大きさの弁口を確保し、弾性反跳および再狭窄を回避するため、弁付きステントの使用が提案されている。Spencer他(米国特許番号6,730,118)、Andersen他(米国特許番号5,840,081)、およびGabbay(米国特許番号4,759,758)はすべて、経動脈拡張施術を目的とする特定の設計の弁付きステントについて記載している。Cribier他は、WO 98/29057に、周縁縫合により装着できる弁を持つ折り畳み式ステントについて記載している。この網/弁システムは、拡張式バルーンで配置される。1992年、Andersen他は、拡張式ステンレス製ステントに縫合された折り畳み式豚大動脈弁の実験結果を報告している。この弁付きステントは、16F Mullins鞘に前方積載(フロントロード)された18〜22mmバルーン・カテーテルに装着され、肺位に植え込まれ、肺尖(または弁尖)を完全に置き換える。これは、ステントの完全拡張展開により、ステントと肺動脈壁の間に押しつけられる。しかしながら、この施術は、大動脈部位に施すと、冠動脈閉塞症を引き起こすことがあり、その場合は患者の生命にかかわる。
【0007】
ステントが大動脈弁輪の全域で拡張展開していない場合でも、大動脈尖(または弁尖)の心室側のアテローム症沈着物が、冠動脈の入口部に押しつけられることがある。これは、重度の冠動脈の閉塞または塞栓の原因となる。サイズ可変式ステントを拡張展開するために、石灰化の進行した大動脈弁を多大に膨満させることは、弁のカルシウム沈着物による塞栓、または弁の皹裂を引き起こすことがあり、ひいては重度の大動脈弁逆流症に結びつく。さらに、大型のステント弁は、僧帽弁前尖などの周囲の構造を阻害することもある(損傷を引き起こし、機能を低下させる)。また、左室流出路に突出した場合は、通常は重度の大動脈弁狭窄症において肥大する心室中隔を阻害することもある。
【0008】
以下の引例は、人工補綴弁について記載しており、有用性が検討されている。
米国特許5,344,422 Deac
米国特許5,908,451 Yeo
米国特許6,312,465 Griffin他
米国特許出願公報2004/0260389 Case他
PCT特許出願公報2005/002466 Shwammenthal他(本特許出願の譲受人に譲渡されている)
【0009】
Yeo特許の図1-3に、開口状態において、弁を通過する3つの血流路(1つの中央流路と2つの側流路)を形成する、1組の弁尖を備えた1個の弁が示されている。同様に、Griffin特許の図1A、1B、6、7に、開口状態において、弁を通過する3つの血流路(1つの中央流路と2つの側流路)を形成する、1組の弁尖を備えた1個の弁が示されている。
【0010】
以下の引例もまた、有用性が検討されている。
米国特許5,354,330、米国特許4,078,268、米国特許4,846,830、米国特許5,108,425、米国特許6,299,638、米国特許出願公報2004/0186563、米国特許出願公報2004/0215333、米国特許出願公報2005/011511
【0011】
以下の文献において、有用性が検討されていると見られる。
Heinrich RS et al., Ann Biomed Eng. 1996 Nov-Dec;24(6):685-94. 大動脈弁狭窄症における流体力学的エネルギー損失の実験分析:圧回復の重要性。
Heinrich RS et al., J Heart Valve Dis. Sep. 1998;8(5):509-15. 大動脈弁狭窄症の重度指標として、弁口部のみでは不十分:大動脈全域でのエネルギー損失における近位および遠位幾何学の効果。
Marcus RH et al., Circulation. Sep 1, 1998;98(9):866-72. 小径大動脈の機械的補綴の評価:ドプラ勾配の生理学的関連性、液流強化の活用、および弁口部の定量限界。
PD Stein et al., Circulation Research, Vol. 39, 5 8-65, 1976 by American Heart Association. 人の上行大動脈における血液乱流;正常弁および疾患弁。
Ku D., Annual Review of Fluid Mechanics Vol. 29: 399-434(1997年発行). 動脈の血流。
Weyman AB et al., Rev Cardiovasc Med. 2005;61(1)23-32. 大動脈弁狭窄症:物理学的および生理学的考察──数値が実際に意味すること。
Deac RF et al., Ann Thorac Surg. Aug. 1995 Aug;60(2 Suppl):S433-8. 僧帽弁生理学および外科学における新たな発展:僧帽弁ステント不在心膜弁。
ここに引用されているすべての特許および特許出願、論文は、参考としてここに包含するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、その実施態様として、血管に既存している弁に装着可能な人工補綴装置の提供を旨としている。これは、以下に詳細を記載する通り、弁および補綴装置を通過する液流の圧回復を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明であるところの人工補綴装置の実施態様を以下に解説する。人工補綴装置を含む器具は、液流の通過する単一液流路を備え、患者への移植に適し、以下を明確に形成する形状を備えている:
・流入口
・流入口から離れた発散部位
・軸方向に伸長できる複数のストラットを含む人工補綴装置。これは、患者の心周期を通して、個々のストラットの遠位末端部が、互いに、近位末端部に比較して大きな間隔を保つことができるように、少なくとも当該発散部位分だけ伸長し、外部に向けて発散する。
・発散エンベロープを含む発散部位。これは、ストラットに組み合わされており、心収縮期における開口状態を再現するように作られており、これにより、血流が当該装置を通過することを可能にする。さらに、折り畳み、血流通過を遮断し、心拡張期の閉口状態を再現するよう作られている。
【0014】
実施態様の1例において、当該器具は、発散部位と組み合わさり、その周囲を取り巻くステントを含む。
【0015】
実施態様の1例において、当該エンベロープは、それぞれの場所でストラットと組み合わされた、単一素材を含む。
【0016】
実施態様の1例において、当該エンベロープは、各部位にそれぞれ2つのストラットが装着された、複数の分割部位を含む。
【0017】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、1つの装着部位を含む。これは、当該装置を患者の大動脈弁に装着するためのものである。移植において、当該発散部位は、患者の上行大動脈内に収容される。
【0018】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、装着部位(留め具など)を含む。これは、患者の人体弁の反対側に合わさる(留まる)ように形成されている。
【0019】
実施態様の1例において、発散部位は、開張角度0.1°〜50°をもって開く。
【0020】
実施態様の1例において、発散部位は、開張角度3°〜10°をもって開く。
【0021】
実施態様の1例において、発散部位は、開張角度5°〜8°をもって開く。
【0022】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、移植する患者の大動脈弁口の大きさに合わせて形成される。既存の弁口の直径が、施術により拡大されることはない。
【0023】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、頸部セクションを明確に形作るよう形成される。これは、液流入口と発散部位の間である。
【0024】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、患者の上行大動脈内に植え込むことができるように形成される。この際、発散部位は、収縮期における、頸部セクション内で損失した血圧の圧快復をもたらすよう形成される。
【0025】
実施態様の1例において、当該頸部セクションは、患者の大動脈弁口内に位置するよう形成される。
【0026】
実施態様の1例において、当該頸部セクションは、軸方向の長さ20mm以下となる。
【0027】
実施態様の1例において、上記軸方向の長さは1〜10mmとなる。
【0028】
実施態様の1例において、上記軸方向の長さは約2mmとなる。
【0029】
実施態様の1例において、上記軸方向の長さは5mmとなる。
【0030】
本発明であるところの人工補綴装置の実施態様を解説する。これには、血管の弁に押す着できる弁口装着部位が含まれる。また、流入口および流入口から伸長する発散部位、流入口付近の近位末端部、および近位末端部から離れた遠位末端部が含まれる。ここにおいて、発散部位の遠位末端部は、液流通過のため、近位末端部よりも比較的大きな断面積になっている。当該発散部位には、液流通過を促し、遠位末端部における圧を回復させる発散テーパを備えることができる。例えば、このテーパは、角度αを1°から25°(約5°など)に変化させることができる。流入口は、遠位方向に非発散にできる(収束または直線など)。
【0031】
内部エンベロープは、発散部位および弁口装着部位の内壁のどちらか1つ、または両方を覆うことができる。この内部エンベロープは、連続状または非連続状(開口状またはスリット状など)にできる。
【0032】
当該弁口装着部位には、例えば、弁尖と合うように形成された弁輪クランプなど、弁口に近い弁の反対側に留まるよう形成された、係留部位を含むことができる。
【0033】
本発明の実施態様として、人工補綴弁は、発散部位内に配置することができる。この人工補綴弁(人工心臓弁、生体心臓弁、同種心臓弁、血管弁、心膜弁などを含むが、これに限定されない)は、発散部位を通過する液流をコントロールするよう形成されている。人工補綴弁は、流入口に代替えまたは追加として配置することができる。
【0034】
本発明の実施態様として、さらに、弁輪アレーを支持器として発散部位の遠位に配置することができる。これは、血管内壁に合わせることができる。軸方向に伸長できる複数のストラットを、弁口装着部位付近に旋回装着し、少なくとも発散部位分だけ伸長することができる。
【0035】
以下の解説により、本発明のさらなる機能と有用性を明らかにする。
【0036】
本発明は、参考添付図面を引例として限定しつつ解説されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図2の引例により、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置の無制限の構成性能が図解されている。図1A〜1Cにより、人工補綴装置が、重度の大動脈弁狭窄症に罹患した心臓の大動脈弁への負荷を軽減するために使用できる仕組みが図解されている。本発明は、循環系の血流の仕組みにおけるいかなる説および解説にも依存せず、さらにあらゆる説および解説は、解説のみを目的として提供されていることをここに特筆する。また、以下に詳しく解説されている複数の実施態様は、解説のみを目的とし、本発明はこれらの構成に制限されるものではないことも特筆する。
【0038】
循環系における血流調節の法則は、輸送管システムに似ている。大動脈圧および心拍出量は、圧受容器システムにより調節される。圧受容器システムは、大動脈および近位大動脈分枝(無名動脈および頸動脈)に伸展受容器を備えている。圧が減少すると、あらかじめ決められた体血圧に達するまで、心拍出量が増加する。
【0039】
図1Aでは、左室(LV)からの血流が大動脈弁口(AO)を通り、大動脈(AA)に流れる仕組みが図解されている。この血流は、大動脈弁口AOの狭窄状態の影響を受ける。このような狭窄状態は、大動脈弁口AOを縮小し、大動脈AAへの乱流を発生させる。これにより、大動脈に流入する血圧の実質的下降がもたらされる。このような血圧低下は、圧受容器システムにより感知されると、左室収縮期圧を上昇させ、従って、左室内壁の膨張力および心筋酸素消費量を増加させ、終局的には心機能の低下を引き起こす。
【0040】
図1Aに示されている狭窄弁口が、図1Bに示されているように、Venturiチューブ構造、つまり発散型円すい構造の、同じ直径の人工補綴装置に置き換えられると、非乱流性血流が大動脈に流れ、当該装置の遠位末端(幅広)部での圧が回復する。すると、圧受容器システムは血圧低下を感知しなくなり、低下した血圧を補正するための左室への負荷の増加がなくなる。従って、図1Aに示された狭窄弁を、図1Bに示された発散構造(円すい構造が好ましい)の人工補綴装置と置き換えることにより、左室の負荷を削減することができる。
【0041】
図1Cにより、図1Aに示された狭窄弁に対抗している心臓の負荷、およびこの弁が人工補綴装置に置き換えられてからの心臓の負荷の差異が図解されている。この人工補綴装置は、図1Bに示された発散型円すい構造を備えている。引例目的として、図1Cには次の条件が設定されている:拍出量5l/min;頸部断面積0.5cm2;必要な圧較差100mmHg;当例での圧受容器システムにより要求される大動脈圧125。従って、狭窄弁(図1A)による損失圧力水頭の実質的低下は、収縮期左室圧220mmHGをもたらす。しかしながら、図1Bに示された発散型円すい構造の人工補綴装置を加えることにより、85mmHGへの圧回復を達成することができ、また、収縮期血圧140mmHgをもたらすことができる。重要な点として、損失圧力水頭の低下を95mmHgから15mmHgに抑えることができる。
【0042】
図2に図解されている人工補綴装置には、環状基部2(基部セクション2または頸部セクション2とも呼ばれる)を含むことができる。これは、大動脈弁口AOに、断面が環状になるように植え込まれており、弁尖の片面に合わせることができる弁輪クランプ3を外部末端に備え、逆流に対する障壁として機能する。さらに、弁尖のもう一方の面に合わせることができる別の弁輪クランプ4を備えている。この実施態様、ならびに本発明のすべての実施態様において、人工補綴装置のすべての部品は、医学的に安全なあらゆる素材を混合して構成することができる。素材は、金属(ステンレス、NITINOLなど)またはプラスチック(ナイロン、ポリウレタンなど)を含み、またこれに限定されない。
【0043】
人工補綴装置の基部セクション2は、比較的短く、直線形で、単一直径にできる。さらに、大動脈弁口内に配置することができる。人工補綴装置の余剰部は、大動脈AAに伸長することができ、5に示されているように発散構造(円すい構造が好ましい)にすることができる。この直径は、左室内の近位末端部PEから、大動脈内の遠位末端部DEまで徐々に拡大していく。発散型(円すい構造が好ましい)セクション5のテーパ角度(α)は、血流速度を徐々に減少させることにより、または人工補綴装置の遠位末端部の血圧回復により、大動脈への非乱流性血流を生成することを目的にするなど、Venturi流体力学に基づいて決定することができる。
【0044】
発散部位セクション5は、凹型または凸型、例えばカサ型、チューリップ型、ラッパ型など、自由に直線形または曲線形にすることができる。発散部位セクション5の遠位末端部は、液流通過のため、近位末端部よりも比較的大きな断面積になっている。
【0045】
従って、流体力学において広く知られている通り、小径の基部または頸部セクション2における血流速度が増加し、よって側圧または静圧は低下する;発散型(円すい構造が好ましい)セクション5の漸進的拡大は、血流速度を低下させ、それにより側圧または静圧は回復する(圧回復)。このような構造により、層流または非乱流性血流が生成され、発散型(円すい構造が好ましい)セクション5における液流分離は、減少または消失する。さらに、人工補綴装置の遠位末端部DEにおける損失水頭は低下する。
【0046】
以下にさらに詳しく解説するように、当該人工補綴装置は、その遠位末端部DEに1個の補綴弁を備えることができる。現在複数の人工大動脈弁システムが販売されており、一般的にそれぞれは、人工心臓弁および生体心臓弁に分類されている(同種心臓弁、静脈弁、心膜弁のいずれか)。
【0047】
身長も体重も異なる様々な患者に適応するため、本人工補綴装置は、その拡張状態において、図3に示されている通り、以下の寸法にすることができる:直径D1、近位末端部PEは5〜30mmにでき、一般的には約14mm;直径D2、遠位末端部DEは10〜40mmにでき、一般的には約20mm;基部または頸部セクション2の軸長L1は、0〜20mmにでき、一般的には約2mm;近位末端部から遠位末端部への軸長L2は、5〜70mmにでき、一般的には約37mm。
【0048】
また別の無制限性能の例として、頸部セクション2の一般的直径D1は、13〜15mmにできる(成人の流出路のおよそ3分の2を覆う);L1の一般的長さは5mm;発散型円すい構造セクションの一般的長さ(L2-L1)は、18〜60mm;一般的開角α(開張角度、直行線からの開角、円すいの角度の半分)は、0.1°〜50°、一般的には5°〜8°で、αが5°の場合、層流のためのほとんど完全な圧回復ができる。例えば、直線頸部セクション2の直径が14mm(断面積154mm2)の場合、チューブはこの部位に装着されており、開角αが5°で35mm離れれば、遠位末端部での直径は20mm(断面積314mm2)となる。従って、この装置では、その末端部(大動脈内)において、頸部(弁内の直行部位)が経14mmしかなくとも、好ましい血流力学特性をともないつつ、経20mmの生体弁を適応させることができる。
【0049】
図4〜8に示されている人工補綴装置
先に示した通り、本発明である人工補綴装置には、発散型(円すい構造が好ましい)セクション5の遠位末端部DEに人工補綴装置とともに植え込まれる、人工弁が含まれることが好ましい。しかしながら、いくつかの適用環境においては、本人工補綴装置は、人工弁なしに植え込み、人工弁は二次手術により大動脈内の人工補綴装置の下流に植え込むことができることも期待されている。
【0050】
図4〜8には、人工弁を含む本発明であるところの、実施態様に制限のない、人工補綴装置の構成が図解されている。
【0051】
図5の断面図に示されている通り、人工補綴装置には、発展型構造体10(金属製の網の構造など)が含まれるため、植え込み箇所までカテーテルにより動脈を経由して配置できる。この症例では、大動脈弁狭窄症に疾患した大動脈弁の弁輪または弁口である。図解されている人工補綴装置には、例としてさらに、無制限性能を表すものとして、生体または柔軟性のあるポリマー、またはその他の素材の内部エンベロープ11が組み合わされており、これが構造体の内壁を完全に覆っている。
【0052】
図解されている人工補綴装置の構造体10およびそのライナー11は、大動脈弁口(AO、図2)内に植え込むために組み合わされた、短く、直線形の頸部セクション12を含むことができる。この人工補綴装置は、さらに、大動脈弁口の片側の弁尖の表面に合わせるため、弁輪クランプ13を;大動脈弁口の反対側の弁尖の表面に合わせるため、弁輪クランプ14(実施態様の1例として、近位弁輪のみが使用されている)を;大動脈AAに伸びる発散型(円すい構造が好ましい)セクション15を含むことができる。この構造では、近位末端部PEの短い頸部セクション12から、遠位末端部DEへ向かって、発散型(円すい構造が好ましい)セクション15は徐々にその直径を拡大していく。図2の実施態様にあり、上記に解説されているように、遠位末端部での圧を回復し、人工補綴装置を通して、大動脈への非乱流性血流を生成するためである。
【0053】
本発明の実施態様の1例において、近位弁輪クランプのみで使用できることを特筆する。遠位末端部における本装置の係留は、好ましくは/それに限定されることなく、自己拡張する大動脈壁ステントの影響を受けることができる。
【0054】
図解されている人工補綴装置の遠位末端部は、人工補綴弁16を含むことができる。人工補綴弁16は、発散セクション15のどこにでも配置することができる。人工補綴弁16は、折り畳み式の人工または生体弁(柔軟なポリマー・フィルム製など)であることが好ましく、これは、収縮期に人工補綴装置の遠位末端部を開くため、および拡張期に閉じるために効果的である。例えば、人工補綴弁16は、ライナー11と同じ素材にでき、図5の17に示されているように、装着帯に沿って装着できる。
【0055】
折り畳み式生体補綴弁が好まれる一方、その他の人工補綴弁システムを使用することも可能である。例えば、ケージ型ボール弁、ケージ型ディスク弁、傾斜ディスク弁、二尖弁、チェック弁などがある。実施態様の1つにおいて、機械的または人工の補綴弁を使用することができる。もう1つ使用できる人工の補綴弁は、心膜弁である。これには、例えば、Mitoroflow Aortic Pericardial Heart Valveがあり、CarboMedics社(Sorinグループ)から発売されている。これには、合理化された縫合板があり、血流増加部のための心膜弁配置を最適化している。
【0056】
人工補綴弁16は、発散形状(円すい形など)にでき、人工補綴弁16が発散型セクション15となることも、さらに特筆する。つまり、人工補綴弁を追加して発散部位を構築する必要がなく、人工補綴弁そのものが発散部位になりうる。
【0057】
本発明の実施態様の無制限性を表すものであるが、図解された人工補綴装置の発展態様においては、弁輪クランプ13および14のそれぞれが、係留部位の弁輪アレーを含むことができる。これは、大動脈弁輪の反対側の弁尖の表面に合わせられている。図6〜8にさらに詳しく示されている。図8に図解されているように、弁輪クランプ13には、係留部位13aの弁輪アレー含むことができる。これは、大動脈弁口AOの左室側で、患者本人の弁尖の表面18(図6)に合わせることができる。さらに、弁輪クランプ14は、係留部位14aと同様の弁輪アレーを含むことができる。これは、大動脈弁輪の大動脈側で、患者本人の弁尖の表面19(図8)に合わせることができる。
【0058】
発散部位10の内表面への、内部エンベロープまたはライナー11の装着には、適切なあらゆる方法を使用することができる。無制限性能を示す例として、長期耐久型の生体適合接着剤を使用した接着などが含まれる。その他に、プラスチック製のエンベロープ11の発散セクション15に接する部分を音波で軟化させ、結合させる、超音波結合、発散セクション15を植え込むためにポリマー素材を注入形成する方法などがある。また他にも、発散セクション15に内部エンベロープを固定させる機械的な固定装置、また、内部エンベロープを発散セクション15に縫合する縫合技術なども含まれる。
【0059】
上述してあるように、人工補綴装置のすべての部品は、医学的に安全なあらゆる素材、およびそれらの混合で作成することができる。素材には、金属(ステンレス、NITINOLなど)やプラスチック(ナイロン、ポリウレタンなど)などがあり、またこれらに限定されない。ライナー11は、いかなる制限も受けず、生体適合ポリマーまたはプラスチック素材、または生体素材(心膜など)で作成することができる。
【0060】
使用可能な金属の例として、タングステン、プラチナ、チタンなどがある。必要な物理的属性を備えた合金としては、ステンレススチール316およびNITINOL(ニッケルチタン)が含まれ(またこれらに限定されない)、その双方とも、生体適合性を備え、市場で入手可能である。例えば、NITINOLは、弁輪クランプ13および14、発散型円すいセクション5に使用できる。また、テンレススチール316などの従来型の金属ステント素材は、基部または頸部セクション12に使用できる。ダクロンは、NITINOLベースの装置を覆うために一般的に使用されるが、内部エンベロープまたはライナー11のためには、他の適合素材である生体適合ポリマーやエラストマー素材が使用される。
【0061】
図9、10、11(および11A〜11C)の人工補綴装置
図9では、上記に解説されている図4〜8に示されているものと同様の人工補綴装置が図解されている。理解を促すことを目的に、対応する部品には同じ番号が割り当てられている。図9の人工補綴装置の主な違いは、構造体10の遠位末端部DEに備えられた支持器20である。これは、図10に示されているように、大動脈内での人工補綴装置の支持のため、特に遠位末端部において、大動脈の内壁表面に合わせることができる。
【0062】
図11では、弁輪クランプ34の係留部位34aは、遠位側(大動脈)の弁尖を大動脈弁輪に合わせることができる。40で示されている支持器は、人工補綴装置の遠位(幅広)側から伸びる弁輪アレーを構成し、接続部41を含んでいる。発散型(円すい構造が好ましい)セクション35は、係留部位34aから伸び、支持器40に達している。係留部位34aは、頸部セクション33aに備えられた係留部位33aと共働し、装置を大動脈弁口に固定支持する。支持器40は、大動脈の内壁表面、好ましくは近隣の、人工補綴装置の遠位末端部に合うように構成されている。これは、大動脈弁輪に人工補綴装置が植え込まれるときに、その側の末端を固定支持するためである。これらは、大動脈弁輪に隣接する冠動脈を遮る、または塞ぐことのないように構成される(図16Fに関連して、以下に解説されている)。
【0063】
簡略化を目的として、図11では、図5で11および16として示されている内部ライナーおよび人工補綴弁などが省略されている。
【0064】
図11A〜11Cでは、図9〜11と同様の、支持器を備えた人工補綴装置が図解されている。図11Aでは、弁尖(大動脈弁輪内など)に装着された人工補綴装置が図解されている。図11Bでは、収縮期に人工補綴装置を通過する血流が図解されている。血流は、非乱流状態で人工補綴装置の発散部位を通過し、発散部位の遠位末端部での圧回復が見られる。図11Cでは、拡張期に人工補綴装置を通過する血流が図解されている。人工補綴装置が、弁口での血流の逆流を防いでいることがわかる。
【0065】
図12〜14の人工補綴装置
図12〜14では、人工補綴弁としても機能する基部110およびエンベロープ111を含むことができる人工補綴装置が図解されている。収縮期において、エンベロープ111は開口し、その目的で構成された発散型円すい構造により、大動脈への非乱流性血流を生成し、エンベロープの遠位末端部での圧回復を行なう。拡張期には、エンベロープ111は閉じ、血流を遮断(実質的に、または完全に遮断)する。図12〜14に示されている人工補綴装置(他の図にあるものと同様に)は、単一の血流を生成することを特筆する。言い換えるならば、当該装置に流入する血液は、装置内の普通の区分を通過して流出する。
【0066】
基部110は、大動脈弁輪内に植え込まれる人工補綴装置の頸部セクション(図5の12など)に対応し、さらに、大動脈弁輪内の弁尖の反対側の表面に合わせ、その反対側にある係留部位113および114の2基の弁輪アレーを含む。これらは、図5の弁輪クランプ13および14に対応する。
【0067】
エンベロープ111は、基部110の内表面を覆っている。さらに、人工補綴装置の発散型(円すい型が好ましい)セクション、また、人工補綴装置の遠位末端部に備えられた人工補綴弁(それぞれ、図5のセクション15および弁16に対応)を定めるため、基部110の外部に伸びている。
【0068】
エンベロープ111は、さらに、112aにおいて基部110に旋回装着された、軸方向に伸長できる複数のストラット112を含むことができる。これは、収縮期にエンベロープが伸長し、弁が開口状態になることを可能にし、血流の通過を促す。また同時に、その目的で構成された発散型円すい構造により、大動脈に非乱流性血流を送り、遠位末端部において圧回復を行なう。また、ストラット112は、エンベロープ11が、拡張期に閉じることも促し、血流の遮断を効果的に行なう。これにより、人工補綴弁の機能が発揮される。図14は、半開状態のエンベロープ111を表している。ストラット112は、一般的には、心周期全体を通して(図14に示されている拡張期を含む)、発散型構造になっていることを特筆する。
【0069】
ストラット112は、強化するため、基部110と同様の素材で作成することができ、統合形状のヒンジによって、基部に旋回装着することができる。また、ストラット112の強化は、金属やプラスチックなど、収縮期の弁開口状態の円すい構造において、充分な強度をもってエンベロープ111を支持できる別の素材で行なうこともできる。これは、適切な手段により、ヒンジを用い、機械的に基部110に装着される。
【0070】
これにより、図12〜14に図解されている人工補綴弁が、左室から大動脈への血流を調整し、上記に解説されている非乱流性血流を大動脈に送り、圧回復を行なうばかりではなく、収縮期に開口し、拡張期に閉じる人工補綴弁としても機能することがわかる。
【0071】
図13に示されている構成では、上記に解説されているように、エンベロープ111は、人工補綴弁として開閉することができる。つまり、人工補綴装置の発散部位は、それ自体が人工補綴弁として機能し、収縮期に開口し、拡張期に閉じる。発散部位内のどこにも人工補綴弁を設置する必要はない(他の実施態様においても解説されている)。
【0072】
つまり、旋回強化ストラット112付きの発散部位を作成する代わりに、発散部位は、それ自体で人工補綴弁となることができる。図4から8の実施態様を参照のこと。
【0073】
配置の態様
上記に解説されているように、本発明であるところの人工補綴装置は、体内循環系の内壁に存在する弁口に植え込むことができる。従って、循環系を介して移植箇所に配置するための圧縮状態を持つよう、また、弁口への移植のため、移植箇所で拡張状態にできるよう作成されている。上記に解説されている本発明の実施態様は、患者の心臓の大動脈弁輪への移植を目的としており、そのため、大動脈弁輪への経動脈配置、および、移植を行なう大動脈弁輪での拡張のために作成されている。
【0074】
配置の一鞘態様は、図15A〜15Hおよび16A〜16hとともに、二鞘態様は、図17A〜17hとともに、以下に解説されている。
【0075】
一鞘態様
図15A〜15Hでは、人工補綴装置を配置する施術法が図解されている。図2の例では一鞘施術法が用いられており、図16A〜16Fでは、図11に示されている構成の人工補綴装置を配置するための施術法が図解されている。これには、支持器40の弁輪アレーが含まれている。
【0076】
図15A〜15Hに示されている一鞘施術法では、PDで表された人工補綴装置は、図2に示されている構成になっている。これは、大動脈弁AVの大動脈弁口AO内に、弁輪クランプ3および4を使って植え込まれている。このように移植されたとき、人工補綴装置の頸部セクション2は、大動脈弁口AOに植え込まれており、人工補綴装置の発散型円すいセクション5は、大動脈AA内に収容されている。
【0077】
移植箇所に人工補綴装置PDを配置するため、当該装置はカテーテル200に挿入することができる。これには、移植後の拡張のためのバルーン201および鞘202が含まれている。バルーン201は、しぼんだ状態で、人工補綴装置の頸部セクション2および2基の弁輪クランプ3および4を受け入れる。鞘202は、人工補綴装置全体を取り入れ、弁輪クランプ13および14、発散型円すいセクション15を含み、圧縮状態で、経動脈配置まで保持する。バルーンの前拡張(バルーン弁形成術)を行なった後にも、当該装置を挿入することができる。この場合、装置挿入(移植)カテーテルには、バルーンは含まれない。
【0078】
カテーテルは、患者の末梢動脈に挿入することができ、従来の方法で操作し、頸部2を大動脈弁口AOに合わせ、2基の弁輪クランプ3および4とともに、配置することができる。これは、弁尖の反対側に位置しており、弁尖を形成する(図15A)。
【0079】
鞘202は、その後、片側に移動しつつ(図15B)、拡張のため、最初の弁輪クランプ3(図15C)が、つぎに弁輪クランプ4(図15Dおよび15E)が、最後に人工補綴装置の発散型円すいセクション5(図15F)がリリースされる。バルーン201は、その後、膨張し(図15G)、基部セクション2を弁口内にしっかりと固着させる。その後しぼみ(図15H)、カテーテル200、バルーン201、鞘202が動脈から抜かれる。弁口内には、クランプで固着された人工補綴装置が残される。
【0080】
人工補綴装置は2基の弁輪クランプ3および4で固定されているため、バルーンの使用は必須条件ではない。それでも、弁口内に人工補綴装置を適切かつ確実に移植するために使用できる。2基の弁輪クランプ3および4を使用することにより、頸部セクション2がほんのわずかだけ伸びるようにすることが可能になる。その部分は従来のステント・タイプの移植に比べればはるかに小さく、そのため、冠動脈の遮断や閉塞の危険性が低下する。
【0081】
図16Aおよび16Fでは、図11に示されている人工補綴装置(支持器40の弁輪アレーを含む)の配置における、上記に解説されている一鞘施術法が図解されている。その状況は以下:図16Aに示されているように、頸部セクション32は大動脈弁口内に位置している;図16Bに示されているように、鞘201は、クランプ33の係留部位33aをリリースするために効果的な側に動かされている;図16に示されているように、鞘が動きつづけることにより、もう1つの弁輪クランプ34の係留部位34aがリリースされる;図16Dおよび16Eに示されているように、鞘が動きつづけることにより、人工補綴装置の発散型セクション35がリリースされはじめる;図16Fに示されているように、鞘はリリースのために効果的に動かされ、発散型セクション35、発散型セクション35の周囲の支持器40を含む人工補綴装置は完全に拡張する。特に図16Fに示されているように、支持器40は、人工補綴装置が移植された状態で、冠動脈CAを遮らないように構成することができる。
【0082】
図16A〜16hに図解されている方法では、バルーンは使用されていないが、図15A〜15Hに関連して上記に解説されているように、バルーンを使用する価値もまた認められている。大動脈弁口内への人工補綴装置の移植をより確実に行うためである。
【0083】
二鞘態様
図17A〜17hでは、人工補綴装置の配置における二鞘施術法が図解されている。ここでの人工補綴装置は、引例を目的とし、図4〜8に示されているものである。以下に解説する。
【0084】
二鞘施術法においては、300で示されているカテーテルは、人工補綴装置の弁輪クランプ13に合わせるため、外部末端に第一鞘301を、ならびに、人工補綴装置の弁輪クランプ14および発散型円すいセクション15に合わせるため、鞘301から内部に伸びる第二鞘302を含んでいる。この状況は、図17Aに図解されている。
【0085】
カテーテルは、まず最初に、人工補綴装置の頸部セクション12を大動脈弁口に配置するために操作される(図17A)。その後、鞘302は、片側横方向(図では右方向)に動かされ、弁輪クランプ14(図17B)をリリースする。クランプがリリースされると、カテーテルは心臓の内部に向かって(左方向)わずかに動かされ(図17C)、弁輪クランプ14の係留部位14aを、弁尖のその側にしっかりと固着させる。このとき、図17Cに示されているように、弁輪クランプ14は、弁尖の大動脈側(図8の18)にしっかりと合わせられる。
【0086】
その後、外部鞘301は、左方向に、心臓の内部へ、鞘302から離れるよう動かされる。これにより弁輪クランプ13がリリースされ、左室(図17D)に向いた弁尖の表面(図8の19)に密着する拡張状態になる。この後、カテーテル300は、弁輪クランプ13の係留部位13aを弁尖のその表面にしっかりと合わせるため、反対方向(右方向)に動かすことができる。
【0087】
その後、大動脈内の鞘302は、図17Eおよび17Fに示されているように、人工補綴装置の余剰をリリースし、拡張するため、鞘301からさらに離れるように動かすことができる。
【0088】
また、図17A〜17Fに図解されているカテーテルは、望みに応じて、バルーンを含めることができる(図には示されていない)。これは、大動脈弁口内で、基部12をわずかに追加して拡張するためであり、その後、バルーンをしぼめ、カテーテルと鞘を取り除く。
【0089】
上記の配置施術法において、バルーンが使用されていなくとも、人工補綴装置の基部セクションは、鞘(1つまたは2つ)が取り除かれたとき、わずかに拡張することが認められている。これは、大動脈弁輪内に基部をしっかりと固着させ、カテーテルおよび鞘を取り除けるようにするためである。しかしながら、バルーンの使用により、冠動脈の遮断や閉塞になることはないが、人工補綴装置の基部をさらに拡張させることができ、より効果的に弁尖内に固着させることができる。
【0090】
図18Aおよび18Bの引例により、人工補綴装置80が図解されている。これは、本発明のさらに別の実施態様に沿うように構成されている。人工補綴装置80は、図4の10と同様の構成になっており、同じ部品には同じ番号が割り当てられている。人工補綴装置80は、近位装着部品82(装置の心室または弁尖側)を含むことができる。これは、係留部位84の配列からなり、左室流出路(心室中隔基底、僧帽弁前尖の基底部)を形作る壁面に向かって伸び、壁面を覆うため、ライナー86に覆われている。近位装着部品82およびライナー86は、その近位末端部が遠位末端部(係留部位84の近く)より幅広のラッパ型形状にすることができる。この形状により、壁面ステント(または壁面ステント状のもの)を覆う形で、心室流入路を作成することができる。放射状に働く力により、流入口を心室中隔および弁前尖に押しつけ、装置を安定させる。この流入口は、左右対称、または、前弁尖の短部を覆うように伸び、僧帽弁の機能を損なうことのないよう、左右非対称にできる。
【0091】
図19Aおよび19Bの引例により、人工補綴装置90が図解されている。これは、本発明のさらに別の実施態様に沿うように構成されている。人工補綴装置80は、図4の10と同様の構成になっており、同じ部品には同じ番号が割り当てられている。人工補綴装置90では、生体適合素材の弁16が、比較的小さな直径(一般的に12〜16mm、これに限定されない)の流入口92に装着されており、これが人体の弁に移植される。ここでは、発散型圧回復流出口94は、全開した弁尖の末端部付近からはじまっている。収縮期に全開した弁は、直線形(その長さは弁尖により決まる)となり、発散型圧回復流出口への血流の直接流入を継続する。拡張期においては、弁が閉じることにより、人工補綴弁および発散型流出口のあいだに、弁尖の長さと同等の間隔が作られ、これにより、発散型流出口の近位(上流)末端部を通って、冠動脈への血流供給を可能にする。実施態様の1例においては、遠位の発散型流出口94は、リブ、ストラット、またはその他の接続部位96を介して、人工補綴弁に接続することができる(流入口92が弁尖を備えている例)。また別の実施態様として図19Cに示されているように、発散型流出口94は、人工補綴弁と接続(流入口94に接続されていない例)することができる。これにより、2段階の移植術(発散型流出口が先に配置し、すでに拡張されている流出口を経由しての人工補綴弁移植、またはその逆)が可能になる。この構成においては、発散型流出口は、壁面ステントの形で大動脈壁に伸びる遠位(下流)末端部をカバーすることができる。または、ライナーは、大動脈壁に到達する前に終わることができる。これにより、大動脈壁と発散型流出口の隙間の経路を通って、冠動脈への血流供給が可能になる。
【0092】
さらに別の実施態様においては、人体の弁の上に、その弁を残したまま、圧回復装置を取り付けることができる。この圧回復装置は、発散型ディフューザを形作る内部カバー形状となることができる。この内部形状は、収束セクションまたは直線セクション(変化のない区分)を備えることができる。既存の高速噴出に合わせるため、運動エネルギーの放散の前に、狭まった大動脈弁口の上部に配置することができ、装置を覆うライナーへの血流の早期再合流を導く。その後、装置の流出口の発散型形状により、血流の漸進的な拡張が起こり、エネルギー放散のない血流速度の斬新的な低下が起こり、運動エネルギーは外圧に再変換される(圧回復)。近位(上流)末端部は、冠動脈の上部から、好ましくは、またそれに限定されることなく、細管移行部においてはじまることができる。この実施態様においては、冠動脈への血流供給は、装置移植前と同様の仕組みで発生する。一方で、装置は大動脈人工補綴皮膜として機能し、大動脈の内腔を再形成し、圧を回復させる。また別の実施態様では、装置の近位(上流)末端部が、冠動脈の人体弁、またはその直上からはじまる。このとき、冠動脈血流は、発散型流出口の遠位(下流)末端部にあるライナーの端、および、大動脈壁への結合部との間に残された隙間から、壁面ステントの仕組みで供給される。
【0093】
ここにある本発明に関する解説は、複数の実施態様とともに記載されているが、これらは引例のみを目的としており、本発明はこれらに制限されるものではない。本発明の範囲には、記載されている実施態様の複合、さらに、ここに記載されてはいないが、専門家の発想する応用や変異などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1A】図1Aは、狭窄弁に起因する健康問題、ならびに狭窄弁口を、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置に置換する有用性を解説する図面である。
【図1B】図1Bは、狭窄弁に起因する健康問題、ならびに狭窄弁口を、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置に置換する有用性を解説する図面である。
【図1C】図1Cは、狭窄弁に起因する健康問題、ならびに狭窄弁口を、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置に置換する有用性を解説する図面である。
【図2】図2では、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置が、圧を回復し、大動脈に非乱流性血流をもたらすことにより、上記の問題を治療することが図解されている。
【図3】図3は、図2の人工補綴装置の側面図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施態様における、人工補綴装置の略図である。
【図5】図5は、図4の人工補綴装置の側面図である。
【図6】図6は、心臓側から見た端面図であり、図4および5の大動脈弁輪に植え込まれた当該人工補綴装置が図解されている。
【図7】図7は、図4および5の当該人工補綴装置を大動脈側から見た斜視図である。
【図8】図8は、当該人工補綴装置を植え込んだ状態において、弁輪クランプが反対側の弁尖に合わせられた例の部分図である。
【図9】図9は、図4と同様の状態の人工補綴装置の図解である。しかしここでは、植え込まれた状態において、支持器が当該人工補綴装置の遠位部に使用されている。
【図10】図10では、大動脈弁輪に植え込まれた図9の当該人工補綴装置が図解されている。
【図11】図11は、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置の別の構成の断面図である。
【図11A】図11Aは、弁尖に装着された人工補綴装置を図解。
【図11B】図11Bは、収縮期における人工補綴装置の血流を図解。
【図11C】図11Cは、拡張期における人工補綴装置の血流を図解。
【図12】図12は、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置のさらに別の構成の簡略図である。
【図13】図13は、図12の当該装置の側面図。
【図14】図14では、図12および13の、当該人工補綴装置の半開(完全に閉じられていない)状態が示されている。
【図15A】図15Aは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15B】図15Bは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15C】図15Cは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15D】図15Dは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15E】図15Eは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15F】図15Fは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15G】図15Gは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15H】図15Hは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16A】図16Aは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16B】図16Bは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16C】図16Cは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16D】図16Dは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16E】図16Eは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16F】図16Fは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図17A】図17Aは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17B】図17Bは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17C】図17Cは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17D】図17Dは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17E】図17Eは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17F】図17Fは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図18A】図18Aは、本発明のさらに別の実施態様に則って構成された人工補綴装置の簡略図および側面図である。
【図18B】図18Bは、本発明のさらに別の実施態様に則って構成された人工補綴装置の簡略図および側面図である。
【図19A】図19Aは、本発明のさらに別の実施態様に則って構成された人工補綴装置の簡略図および側面図である。ここでは、比較的小さな直径の流入口に装着された生体適合素材の弁が含まれている。発散型圧回復拍出口は、完全開口した弁尖末端部付近からはじまっている。
【図19B】図19Bは、本発明のさらに別の実施態様に則って構成された人工補綴装置の簡略図および側面図である。ここでは、比較的小さな直径の流入口に装着された生体適合素材の弁が含まれている。発散型圧回復拍出口は、完全開口した弁尖末端部付近からはじまっている。
【図19C】図19Cは、図19Aおよび19Bの人工補綴装置のバリエーションの簡略図である。ここでは、発散型拍出口はまだ接続されておらず、2段階の移植施術を可能にしている。
【図1a】
【図1b】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植え込み型人工補綴装置に関するものである。本発明は、心臓の大動脈弁の狭窄症の治療を目的とする、経動脈施術により植え込み可能な補綴装置において特に有用であり、かかる適用法を旨に以下に解説されている。しかしながら、本発明は、大動脈弁逆流症、および大動脈弁狭窄症と逆流症の合併疾患、弁膜症病変、血管閉塞症、または尿路や消化管などの他の体液の閉塞症の治療、またこれらに限定されることなく、その他の疾病治療に用いられることも認識されている。本発明はまた、人工補填装置の移植施術法にも関連している。
【背景技術】
【0002】
大動脈弁狭窄症は、左心室収縮の際に大動脈弁の開口が制限されることが原因となり、左心室から大動脈に流れ出る血流に閉塞が起こる疾患である。大動脈弁開口部が狭窄(標準的成人の正常値3cm2から、重度の場合は0.5cm2)した結果、弁口圧が大幅に低下し、正常な心拍出量および大動脈圧は、左心室の収縮期圧の亢進という犠牲を払うことによってのみ維持することができる。左心室内に発生する高圧により、内壁圧および心筋酸素消費量が増加する。肥大拡張(心筋量の代償的増加)などの順応過程により、心臓は増加した負荷に対して暫時持ちこたえることができるが、終局的には心機能低下は不可避である。
【0003】
大動脈弁狭窄の症例の大半(65歳以上の患者の90%)は、高リポたんぱく血症、高血圧、老化(後天性大動脈弁狭窄症)により引き起こされる進行性線維鞘および正常弁の石灰沈着変性に起因している。息切れを呈している重度の大動脈弁狭窄症患者の平均生存年数は2年未満。急死に至る例も多く、手術に充分耐えうる場合は、無症候性患者の外科治療を推奨する研究者もいる。
【0004】
大動脈弁狭窄症単独の患者グループに対する外科治療の結果は良好である。この場合の患者の手術死亡率は約5%。しかしながら、重度の大動脈弁狭窄症を発症している患者のほとんどは70〜80歳代である。これらの患者には、冠動脈疾患、脳血管疾患、アテローム性硬化症、腎不全、糖尿病など、複数の合併症の危険因子が見られる。結果として、手術死亡率および罹病率は相当高くなる。さらに、石灰化した大動脈弁を機械的補綴装置に置き換えた場合、血栓塞栓症の合併発症を避けるため、抗凝固療法が必須となる。血栓塞栓症は、特に高齢になるにつれ、患者への出血の危険性を増大させる。従って、生物学的補綴器官の移植が、高齢者においては好ましい。しかしながら、外科的に移植された生物学的弁は、不適当な血行力学的側面を併せもっている。弁を装着する縫合輪自体により、弁の開口部が小さくなるからである。これは特に、女性患者において問題となる。比較的小さなサイズ(心臓が小さいため)の生体弁を使用しなければならないため、拍出の重大な妨げになることがある。
【0005】
人工心肺を使用する心臓切開手術を高齢患者に実施することは、死亡、卒中、呼吸器および腎機能不全などを含む重大な危険がともなうため、バルーン・カテーテルによる狭窄弁の拡張が、外科手術の代替えになるものと期待された。しかし残念なことに、バルーン・カテーテルの速効作用は高いとは言えず、実質的にはすべての患者において数週間/数ヶ月以内に狭窄の再反跳が発生し、結果は、施術をしなかった患者とほとんど同等という、誠に思わしくないものであった。そのため、バルーン拡張施術は、手術禁忌が明白な場合──または稀な症例として──「一時しのぎの方法」であると考えられている。
【0006】
近年、冠動脈へのステントの使用に関連して、充分な大きさの弁口を確保し、弾性反跳および再狭窄を回避するため、弁付きステントの使用が提案されている。Spencer他(米国特許番号6,730,118)、Andersen他(米国特許番号5,840,081)、およびGabbay(米国特許番号4,759,758)はすべて、経動脈拡張施術を目的とする特定の設計の弁付きステントについて記載している。Cribier他は、WO 98/29057に、周縁縫合により装着できる弁を持つ折り畳み式ステントについて記載している。この網/弁システムは、拡張式バルーンで配置される。1992年、Andersen他は、拡張式ステンレス製ステントに縫合された折り畳み式豚大動脈弁の実験結果を報告している。この弁付きステントは、16F Mullins鞘に前方積載(フロントロード)された18〜22mmバルーン・カテーテルに装着され、肺位に植え込まれ、肺尖(または弁尖)を完全に置き換える。これは、ステントの完全拡張展開により、ステントと肺動脈壁の間に押しつけられる。しかしながら、この施術は、大動脈部位に施すと、冠動脈閉塞症を引き起こすことがあり、その場合は患者の生命にかかわる。
【0007】
ステントが大動脈弁輪の全域で拡張展開していない場合でも、大動脈尖(または弁尖)の心室側のアテローム症沈着物が、冠動脈の入口部に押しつけられることがある。これは、重度の冠動脈の閉塞または塞栓の原因となる。サイズ可変式ステントを拡張展開するために、石灰化の進行した大動脈弁を多大に膨満させることは、弁のカルシウム沈着物による塞栓、または弁の皹裂を引き起こすことがあり、ひいては重度の大動脈弁逆流症に結びつく。さらに、大型のステント弁は、僧帽弁前尖などの周囲の構造を阻害することもある(損傷を引き起こし、機能を低下させる)。また、左室流出路に突出した場合は、通常は重度の大動脈弁狭窄症において肥大する心室中隔を阻害することもある。
【0008】
以下の引例は、人工補綴弁について記載しており、有用性が検討されている。
米国特許5,344,422 Deac
米国特許5,908,451 Yeo
米国特許6,312,465 Griffin他
米国特許出願公報2004/0260389 Case他
PCT特許出願公報2005/002466 Shwammenthal他(本特許出願の譲受人に譲渡されている)
【0009】
Yeo特許の図1-3に、開口状態において、弁を通過する3つの血流路(1つの中央流路と2つの側流路)を形成する、1組の弁尖を備えた1個の弁が示されている。同様に、Griffin特許の図1A、1B、6、7に、開口状態において、弁を通過する3つの血流路(1つの中央流路と2つの側流路)を形成する、1組の弁尖を備えた1個の弁が示されている。
【0010】
以下の引例もまた、有用性が検討されている。
米国特許5,354,330、米国特許4,078,268、米国特許4,846,830、米国特許5,108,425、米国特許6,299,638、米国特許出願公報2004/0186563、米国特許出願公報2004/0215333、米国特許出願公報2005/011511
【0011】
以下の文献において、有用性が検討されていると見られる。
Heinrich RS et al., Ann Biomed Eng. 1996 Nov-Dec;24(6):685-94. 大動脈弁狭窄症における流体力学的エネルギー損失の実験分析:圧回復の重要性。
Heinrich RS et al., J Heart Valve Dis. Sep. 1998;8(5):509-15. 大動脈弁狭窄症の重度指標として、弁口部のみでは不十分:大動脈全域でのエネルギー損失における近位および遠位幾何学の効果。
Marcus RH et al., Circulation. Sep 1, 1998;98(9):866-72. 小径大動脈の機械的補綴の評価:ドプラ勾配の生理学的関連性、液流強化の活用、および弁口部の定量限界。
PD Stein et al., Circulation Research, Vol. 39, 5 8-65, 1976 by American Heart Association. 人の上行大動脈における血液乱流;正常弁および疾患弁。
Ku D., Annual Review of Fluid Mechanics Vol. 29: 399-434(1997年発行). 動脈の血流。
Weyman AB et al., Rev Cardiovasc Med. 2005;61(1)23-32. 大動脈弁狭窄症:物理学的および生理学的考察──数値が実際に意味すること。
Deac RF et al., Ann Thorac Surg. Aug. 1995 Aug;60(2 Suppl):S433-8. 僧帽弁生理学および外科学における新たな発展:僧帽弁ステント不在心膜弁。
ここに引用されているすべての特許および特許出願、論文は、参考としてここに包含するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、その実施態様として、血管に既存している弁に装着可能な人工補綴装置の提供を旨としている。これは、以下に詳細を記載する通り、弁および補綴装置を通過する液流の圧回復を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明であるところの人工補綴装置の実施態様を以下に解説する。人工補綴装置を含む器具は、液流の通過する単一液流路を備え、患者への移植に適し、以下を明確に形成する形状を備えている:
・流入口
・流入口から離れた発散部位
・軸方向に伸長できる複数のストラットを含む人工補綴装置。これは、患者の心周期を通して、個々のストラットの遠位末端部が、互いに、近位末端部に比較して大きな間隔を保つことができるように、少なくとも当該発散部位分だけ伸長し、外部に向けて発散する。
・発散エンベロープを含む発散部位。これは、ストラットに組み合わされており、心収縮期における開口状態を再現するように作られており、これにより、血流が当該装置を通過することを可能にする。さらに、折り畳み、血流通過を遮断し、心拡張期の閉口状態を再現するよう作られている。
【0014】
実施態様の1例において、当該器具は、発散部位と組み合わさり、その周囲を取り巻くステントを含む。
【0015】
実施態様の1例において、当該エンベロープは、それぞれの場所でストラットと組み合わされた、単一素材を含む。
【0016】
実施態様の1例において、当該エンベロープは、各部位にそれぞれ2つのストラットが装着された、複数の分割部位を含む。
【0017】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、1つの装着部位を含む。これは、当該装置を患者の大動脈弁に装着するためのものである。移植において、当該発散部位は、患者の上行大動脈内に収容される。
【0018】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、装着部位(留め具など)を含む。これは、患者の人体弁の反対側に合わさる(留まる)ように形成されている。
【0019】
実施態様の1例において、発散部位は、開張角度0.1°〜50°をもって開く。
【0020】
実施態様の1例において、発散部位は、開張角度3°〜10°をもって開く。
【0021】
実施態様の1例において、発散部位は、開張角度5°〜8°をもって開く。
【0022】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、移植する患者の大動脈弁口の大きさに合わせて形成される。既存の弁口の直径が、施術により拡大されることはない。
【0023】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、頸部セクションを明確に形作るよう形成される。これは、液流入口と発散部位の間である。
【0024】
実施態様の1例において、当該人工補綴装置は、患者の上行大動脈内に植え込むことができるように形成される。この際、発散部位は、収縮期における、頸部セクション内で損失した血圧の圧快復をもたらすよう形成される。
【0025】
実施態様の1例において、当該頸部セクションは、患者の大動脈弁口内に位置するよう形成される。
【0026】
実施態様の1例において、当該頸部セクションは、軸方向の長さ20mm以下となる。
【0027】
実施態様の1例において、上記軸方向の長さは1〜10mmとなる。
【0028】
実施態様の1例において、上記軸方向の長さは約2mmとなる。
【0029】
実施態様の1例において、上記軸方向の長さは5mmとなる。
【0030】
本発明であるところの人工補綴装置の実施態様を解説する。これには、血管の弁に押す着できる弁口装着部位が含まれる。また、流入口および流入口から伸長する発散部位、流入口付近の近位末端部、および近位末端部から離れた遠位末端部が含まれる。ここにおいて、発散部位の遠位末端部は、液流通過のため、近位末端部よりも比較的大きな断面積になっている。当該発散部位には、液流通過を促し、遠位末端部における圧を回復させる発散テーパを備えることができる。例えば、このテーパは、角度αを1°から25°(約5°など)に変化させることができる。流入口は、遠位方向に非発散にできる(収束または直線など)。
【0031】
内部エンベロープは、発散部位および弁口装着部位の内壁のどちらか1つ、または両方を覆うことができる。この内部エンベロープは、連続状または非連続状(開口状またはスリット状など)にできる。
【0032】
当該弁口装着部位には、例えば、弁尖と合うように形成された弁輪クランプなど、弁口に近い弁の反対側に留まるよう形成された、係留部位を含むことができる。
【0033】
本発明の実施態様として、人工補綴弁は、発散部位内に配置することができる。この人工補綴弁(人工心臓弁、生体心臓弁、同種心臓弁、血管弁、心膜弁などを含むが、これに限定されない)は、発散部位を通過する液流をコントロールするよう形成されている。人工補綴弁は、流入口に代替えまたは追加として配置することができる。
【0034】
本発明の実施態様として、さらに、弁輪アレーを支持器として発散部位の遠位に配置することができる。これは、血管内壁に合わせることができる。軸方向に伸長できる複数のストラットを、弁口装着部位付近に旋回装着し、少なくとも発散部位分だけ伸長することができる。
【0035】
以下の解説により、本発明のさらなる機能と有用性を明らかにする。
【0036】
本発明は、参考添付図面を引例として限定しつつ解説されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図2の引例により、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置の無制限の構成性能が図解されている。図1A〜1Cにより、人工補綴装置が、重度の大動脈弁狭窄症に罹患した心臓の大動脈弁への負荷を軽減するために使用できる仕組みが図解されている。本発明は、循環系の血流の仕組みにおけるいかなる説および解説にも依存せず、さらにあらゆる説および解説は、解説のみを目的として提供されていることをここに特筆する。また、以下に詳しく解説されている複数の実施態様は、解説のみを目的とし、本発明はこれらの構成に制限されるものではないことも特筆する。
【0038】
循環系における血流調節の法則は、輸送管システムに似ている。大動脈圧および心拍出量は、圧受容器システムにより調節される。圧受容器システムは、大動脈および近位大動脈分枝(無名動脈および頸動脈)に伸展受容器を備えている。圧が減少すると、あらかじめ決められた体血圧に達するまで、心拍出量が増加する。
【0039】
図1Aでは、左室(LV)からの血流が大動脈弁口(AO)を通り、大動脈(AA)に流れる仕組みが図解されている。この血流は、大動脈弁口AOの狭窄状態の影響を受ける。このような狭窄状態は、大動脈弁口AOを縮小し、大動脈AAへの乱流を発生させる。これにより、大動脈に流入する血圧の実質的下降がもたらされる。このような血圧低下は、圧受容器システムにより感知されると、左室収縮期圧を上昇させ、従って、左室内壁の膨張力および心筋酸素消費量を増加させ、終局的には心機能の低下を引き起こす。
【0040】
図1Aに示されている狭窄弁口が、図1Bに示されているように、Venturiチューブ構造、つまり発散型円すい構造の、同じ直径の人工補綴装置に置き換えられると、非乱流性血流が大動脈に流れ、当該装置の遠位末端(幅広)部での圧が回復する。すると、圧受容器システムは血圧低下を感知しなくなり、低下した血圧を補正するための左室への負荷の増加がなくなる。従って、図1Aに示された狭窄弁を、図1Bに示された発散構造(円すい構造が好ましい)の人工補綴装置と置き換えることにより、左室の負荷を削減することができる。
【0041】
図1Cにより、図1Aに示された狭窄弁に対抗している心臓の負荷、およびこの弁が人工補綴装置に置き換えられてからの心臓の負荷の差異が図解されている。この人工補綴装置は、図1Bに示された発散型円すい構造を備えている。引例目的として、図1Cには次の条件が設定されている:拍出量5l/min;頸部断面積0.5cm2;必要な圧較差100mmHg;当例での圧受容器システムにより要求される大動脈圧125。従って、狭窄弁(図1A)による損失圧力水頭の実質的低下は、収縮期左室圧220mmHGをもたらす。しかしながら、図1Bに示された発散型円すい構造の人工補綴装置を加えることにより、85mmHGへの圧回復を達成することができ、また、収縮期血圧140mmHgをもたらすことができる。重要な点として、損失圧力水頭の低下を95mmHgから15mmHgに抑えることができる。
【0042】
図2に図解されている人工補綴装置には、環状基部2(基部セクション2または頸部セクション2とも呼ばれる)を含むことができる。これは、大動脈弁口AOに、断面が環状になるように植え込まれており、弁尖の片面に合わせることができる弁輪クランプ3を外部末端に備え、逆流に対する障壁として機能する。さらに、弁尖のもう一方の面に合わせることができる別の弁輪クランプ4を備えている。この実施態様、ならびに本発明のすべての実施態様において、人工補綴装置のすべての部品は、医学的に安全なあらゆる素材を混合して構成することができる。素材は、金属(ステンレス、NITINOLなど)またはプラスチック(ナイロン、ポリウレタンなど)を含み、またこれに限定されない。
【0043】
人工補綴装置の基部セクション2は、比較的短く、直線形で、単一直径にできる。さらに、大動脈弁口内に配置することができる。人工補綴装置の余剰部は、大動脈AAに伸長することができ、5に示されているように発散構造(円すい構造が好ましい)にすることができる。この直径は、左室内の近位末端部PEから、大動脈内の遠位末端部DEまで徐々に拡大していく。発散型(円すい構造が好ましい)セクション5のテーパ角度(α)は、血流速度を徐々に減少させることにより、または人工補綴装置の遠位末端部の血圧回復により、大動脈への非乱流性血流を生成することを目的にするなど、Venturi流体力学に基づいて決定することができる。
【0044】
発散部位セクション5は、凹型または凸型、例えばカサ型、チューリップ型、ラッパ型など、自由に直線形または曲線形にすることができる。発散部位セクション5の遠位末端部は、液流通過のため、近位末端部よりも比較的大きな断面積になっている。
【0045】
従って、流体力学において広く知られている通り、小径の基部または頸部セクション2における血流速度が増加し、よって側圧または静圧は低下する;発散型(円すい構造が好ましい)セクション5の漸進的拡大は、血流速度を低下させ、それにより側圧または静圧は回復する(圧回復)。このような構造により、層流または非乱流性血流が生成され、発散型(円すい構造が好ましい)セクション5における液流分離は、減少または消失する。さらに、人工補綴装置の遠位末端部DEにおける損失水頭は低下する。
【0046】
以下にさらに詳しく解説するように、当該人工補綴装置は、その遠位末端部DEに1個の補綴弁を備えることができる。現在複数の人工大動脈弁システムが販売されており、一般的にそれぞれは、人工心臓弁および生体心臓弁に分類されている(同種心臓弁、静脈弁、心膜弁のいずれか)。
【0047】
身長も体重も異なる様々な患者に適応するため、本人工補綴装置は、その拡張状態において、図3に示されている通り、以下の寸法にすることができる:直径D1、近位末端部PEは5〜30mmにでき、一般的には約14mm;直径D2、遠位末端部DEは10〜40mmにでき、一般的には約20mm;基部または頸部セクション2の軸長L1は、0〜20mmにでき、一般的には約2mm;近位末端部から遠位末端部への軸長L2は、5〜70mmにでき、一般的には約37mm。
【0048】
また別の無制限性能の例として、頸部セクション2の一般的直径D1は、13〜15mmにできる(成人の流出路のおよそ3分の2を覆う);L1の一般的長さは5mm;発散型円すい構造セクションの一般的長さ(L2-L1)は、18〜60mm;一般的開角α(開張角度、直行線からの開角、円すいの角度の半分)は、0.1°〜50°、一般的には5°〜8°で、αが5°の場合、層流のためのほとんど完全な圧回復ができる。例えば、直線頸部セクション2の直径が14mm(断面積154mm2)の場合、チューブはこの部位に装着されており、開角αが5°で35mm離れれば、遠位末端部での直径は20mm(断面積314mm2)となる。従って、この装置では、その末端部(大動脈内)において、頸部(弁内の直行部位)が経14mmしかなくとも、好ましい血流力学特性をともないつつ、経20mmの生体弁を適応させることができる。
【0049】
図4〜8に示されている人工補綴装置
先に示した通り、本発明である人工補綴装置には、発散型(円すい構造が好ましい)セクション5の遠位末端部DEに人工補綴装置とともに植え込まれる、人工弁が含まれることが好ましい。しかしながら、いくつかの適用環境においては、本人工補綴装置は、人工弁なしに植え込み、人工弁は二次手術により大動脈内の人工補綴装置の下流に植え込むことができることも期待されている。
【0050】
図4〜8には、人工弁を含む本発明であるところの、実施態様に制限のない、人工補綴装置の構成が図解されている。
【0051】
図5の断面図に示されている通り、人工補綴装置には、発展型構造体10(金属製の網の構造など)が含まれるため、植え込み箇所までカテーテルにより動脈を経由して配置できる。この症例では、大動脈弁狭窄症に疾患した大動脈弁の弁輪または弁口である。図解されている人工補綴装置には、例としてさらに、無制限性能を表すものとして、生体または柔軟性のあるポリマー、またはその他の素材の内部エンベロープ11が組み合わされており、これが構造体の内壁を完全に覆っている。
【0052】
図解されている人工補綴装置の構造体10およびそのライナー11は、大動脈弁口(AO、図2)内に植え込むために組み合わされた、短く、直線形の頸部セクション12を含むことができる。この人工補綴装置は、さらに、大動脈弁口の片側の弁尖の表面に合わせるため、弁輪クランプ13を;大動脈弁口の反対側の弁尖の表面に合わせるため、弁輪クランプ14(実施態様の1例として、近位弁輪のみが使用されている)を;大動脈AAに伸びる発散型(円すい構造が好ましい)セクション15を含むことができる。この構造では、近位末端部PEの短い頸部セクション12から、遠位末端部DEへ向かって、発散型(円すい構造が好ましい)セクション15は徐々にその直径を拡大していく。図2の実施態様にあり、上記に解説されているように、遠位末端部での圧を回復し、人工補綴装置を通して、大動脈への非乱流性血流を生成するためである。
【0053】
本発明の実施態様の1例において、近位弁輪クランプのみで使用できることを特筆する。遠位末端部における本装置の係留は、好ましくは/それに限定されることなく、自己拡張する大動脈壁ステントの影響を受けることができる。
【0054】
図解されている人工補綴装置の遠位末端部は、人工補綴弁16を含むことができる。人工補綴弁16は、発散セクション15のどこにでも配置することができる。人工補綴弁16は、折り畳み式の人工または生体弁(柔軟なポリマー・フィルム製など)であることが好ましく、これは、収縮期に人工補綴装置の遠位末端部を開くため、および拡張期に閉じるために効果的である。例えば、人工補綴弁16は、ライナー11と同じ素材にでき、図5の17に示されているように、装着帯に沿って装着できる。
【0055】
折り畳み式生体補綴弁が好まれる一方、その他の人工補綴弁システムを使用することも可能である。例えば、ケージ型ボール弁、ケージ型ディスク弁、傾斜ディスク弁、二尖弁、チェック弁などがある。実施態様の1つにおいて、機械的または人工の補綴弁を使用することができる。もう1つ使用できる人工の補綴弁は、心膜弁である。これには、例えば、Mitoroflow Aortic Pericardial Heart Valveがあり、CarboMedics社(Sorinグループ)から発売されている。これには、合理化された縫合板があり、血流増加部のための心膜弁配置を最適化している。
【0056】
人工補綴弁16は、発散形状(円すい形など)にでき、人工補綴弁16が発散型セクション15となることも、さらに特筆する。つまり、人工補綴弁を追加して発散部位を構築する必要がなく、人工補綴弁そのものが発散部位になりうる。
【0057】
本発明の実施態様の無制限性を表すものであるが、図解された人工補綴装置の発展態様においては、弁輪クランプ13および14のそれぞれが、係留部位の弁輪アレーを含むことができる。これは、大動脈弁輪の反対側の弁尖の表面に合わせられている。図6〜8にさらに詳しく示されている。図8に図解されているように、弁輪クランプ13には、係留部位13aの弁輪アレー含むことができる。これは、大動脈弁口AOの左室側で、患者本人の弁尖の表面18(図6)に合わせることができる。さらに、弁輪クランプ14は、係留部位14aと同様の弁輪アレーを含むことができる。これは、大動脈弁輪の大動脈側で、患者本人の弁尖の表面19(図8)に合わせることができる。
【0058】
発散部位10の内表面への、内部エンベロープまたはライナー11の装着には、適切なあらゆる方法を使用することができる。無制限性能を示す例として、長期耐久型の生体適合接着剤を使用した接着などが含まれる。その他に、プラスチック製のエンベロープ11の発散セクション15に接する部分を音波で軟化させ、結合させる、超音波結合、発散セクション15を植え込むためにポリマー素材を注入形成する方法などがある。また他にも、発散セクション15に内部エンベロープを固定させる機械的な固定装置、また、内部エンベロープを発散セクション15に縫合する縫合技術なども含まれる。
【0059】
上述してあるように、人工補綴装置のすべての部品は、医学的に安全なあらゆる素材、およびそれらの混合で作成することができる。素材には、金属(ステンレス、NITINOLなど)やプラスチック(ナイロン、ポリウレタンなど)などがあり、またこれらに限定されない。ライナー11は、いかなる制限も受けず、生体適合ポリマーまたはプラスチック素材、または生体素材(心膜など)で作成することができる。
【0060】
使用可能な金属の例として、タングステン、プラチナ、チタンなどがある。必要な物理的属性を備えた合金としては、ステンレススチール316およびNITINOL(ニッケルチタン)が含まれ(またこれらに限定されない)、その双方とも、生体適合性を備え、市場で入手可能である。例えば、NITINOLは、弁輪クランプ13および14、発散型円すいセクション5に使用できる。また、テンレススチール316などの従来型の金属ステント素材は、基部または頸部セクション12に使用できる。ダクロンは、NITINOLベースの装置を覆うために一般的に使用されるが、内部エンベロープまたはライナー11のためには、他の適合素材である生体適合ポリマーやエラストマー素材が使用される。
【0061】
図9、10、11(および11A〜11C)の人工補綴装置
図9では、上記に解説されている図4〜8に示されているものと同様の人工補綴装置が図解されている。理解を促すことを目的に、対応する部品には同じ番号が割り当てられている。図9の人工補綴装置の主な違いは、構造体10の遠位末端部DEに備えられた支持器20である。これは、図10に示されているように、大動脈内での人工補綴装置の支持のため、特に遠位末端部において、大動脈の内壁表面に合わせることができる。
【0062】
図11では、弁輪クランプ34の係留部位34aは、遠位側(大動脈)の弁尖を大動脈弁輪に合わせることができる。40で示されている支持器は、人工補綴装置の遠位(幅広)側から伸びる弁輪アレーを構成し、接続部41を含んでいる。発散型(円すい構造が好ましい)セクション35は、係留部位34aから伸び、支持器40に達している。係留部位34aは、頸部セクション33aに備えられた係留部位33aと共働し、装置を大動脈弁口に固定支持する。支持器40は、大動脈の内壁表面、好ましくは近隣の、人工補綴装置の遠位末端部に合うように構成されている。これは、大動脈弁輪に人工補綴装置が植え込まれるときに、その側の末端を固定支持するためである。これらは、大動脈弁輪に隣接する冠動脈を遮る、または塞ぐことのないように構成される(図16Fに関連して、以下に解説されている)。
【0063】
簡略化を目的として、図11では、図5で11および16として示されている内部ライナーおよび人工補綴弁などが省略されている。
【0064】
図11A〜11Cでは、図9〜11と同様の、支持器を備えた人工補綴装置が図解されている。図11Aでは、弁尖(大動脈弁輪内など)に装着された人工補綴装置が図解されている。図11Bでは、収縮期に人工補綴装置を通過する血流が図解されている。血流は、非乱流状態で人工補綴装置の発散部位を通過し、発散部位の遠位末端部での圧回復が見られる。図11Cでは、拡張期に人工補綴装置を通過する血流が図解されている。人工補綴装置が、弁口での血流の逆流を防いでいることがわかる。
【0065】
図12〜14の人工補綴装置
図12〜14では、人工補綴弁としても機能する基部110およびエンベロープ111を含むことができる人工補綴装置が図解されている。収縮期において、エンベロープ111は開口し、その目的で構成された発散型円すい構造により、大動脈への非乱流性血流を生成し、エンベロープの遠位末端部での圧回復を行なう。拡張期には、エンベロープ111は閉じ、血流を遮断(実質的に、または完全に遮断)する。図12〜14に示されている人工補綴装置(他の図にあるものと同様に)は、単一の血流を生成することを特筆する。言い換えるならば、当該装置に流入する血液は、装置内の普通の区分を通過して流出する。
【0066】
基部110は、大動脈弁輪内に植え込まれる人工補綴装置の頸部セクション(図5の12など)に対応し、さらに、大動脈弁輪内の弁尖の反対側の表面に合わせ、その反対側にある係留部位113および114の2基の弁輪アレーを含む。これらは、図5の弁輪クランプ13および14に対応する。
【0067】
エンベロープ111は、基部110の内表面を覆っている。さらに、人工補綴装置の発散型(円すい型が好ましい)セクション、また、人工補綴装置の遠位末端部に備えられた人工補綴弁(それぞれ、図5のセクション15および弁16に対応)を定めるため、基部110の外部に伸びている。
【0068】
エンベロープ111は、さらに、112aにおいて基部110に旋回装着された、軸方向に伸長できる複数のストラット112を含むことができる。これは、収縮期にエンベロープが伸長し、弁が開口状態になることを可能にし、血流の通過を促す。また同時に、その目的で構成された発散型円すい構造により、大動脈に非乱流性血流を送り、遠位末端部において圧回復を行なう。また、ストラット112は、エンベロープ11が、拡張期に閉じることも促し、血流の遮断を効果的に行なう。これにより、人工補綴弁の機能が発揮される。図14は、半開状態のエンベロープ111を表している。ストラット112は、一般的には、心周期全体を通して(図14に示されている拡張期を含む)、発散型構造になっていることを特筆する。
【0069】
ストラット112は、強化するため、基部110と同様の素材で作成することができ、統合形状のヒンジによって、基部に旋回装着することができる。また、ストラット112の強化は、金属やプラスチックなど、収縮期の弁開口状態の円すい構造において、充分な強度をもってエンベロープ111を支持できる別の素材で行なうこともできる。これは、適切な手段により、ヒンジを用い、機械的に基部110に装着される。
【0070】
これにより、図12〜14に図解されている人工補綴弁が、左室から大動脈への血流を調整し、上記に解説されている非乱流性血流を大動脈に送り、圧回復を行なうばかりではなく、収縮期に開口し、拡張期に閉じる人工補綴弁としても機能することがわかる。
【0071】
図13に示されている構成では、上記に解説されているように、エンベロープ111は、人工補綴弁として開閉することができる。つまり、人工補綴装置の発散部位は、それ自体が人工補綴弁として機能し、収縮期に開口し、拡張期に閉じる。発散部位内のどこにも人工補綴弁を設置する必要はない(他の実施態様においても解説されている)。
【0072】
つまり、旋回強化ストラット112付きの発散部位を作成する代わりに、発散部位は、それ自体で人工補綴弁となることができる。図4から8の実施態様を参照のこと。
【0073】
配置の態様
上記に解説されているように、本発明であるところの人工補綴装置は、体内循環系の内壁に存在する弁口に植え込むことができる。従って、循環系を介して移植箇所に配置するための圧縮状態を持つよう、また、弁口への移植のため、移植箇所で拡張状態にできるよう作成されている。上記に解説されている本発明の実施態様は、患者の心臓の大動脈弁輪への移植を目的としており、そのため、大動脈弁輪への経動脈配置、および、移植を行なう大動脈弁輪での拡張のために作成されている。
【0074】
配置の一鞘態様は、図15A〜15Hおよび16A〜16hとともに、二鞘態様は、図17A〜17hとともに、以下に解説されている。
【0075】
一鞘態様
図15A〜15Hでは、人工補綴装置を配置する施術法が図解されている。図2の例では一鞘施術法が用いられており、図16A〜16Fでは、図11に示されている構成の人工補綴装置を配置するための施術法が図解されている。これには、支持器40の弁輪アレーが含まれている。
【0076】
図15A〜15Hに示されている一鞘施術法では、PDで表された人工補綴装置は、図2に示されている構成になっている。これは、大動脈弁AVの大動脈弁口AO内に、弁輪クランプ3および4を使って植え込まれている。このように移植されたとき、人工補綴装置の頸部セクション2は、大動脈弁口AOに植え込まれており、人工補綴装置の発散型円すいセクション5は、大動脈AA内に収容されている。
【0077】
移植箇所に人工補綴装置PDを配置するため、当該装置はカテーテル200に挿入することができる。これには、移植後の拡張のためのバルーン201および鞘202が含まれている。バルーン201は、しぼんだ状態で、人工補綴装置の頸部セクション2および2基の弁輪クランプ3および4を受け入れる。鞘202は、人工補綴装置全体を取り入れ、弁輪クランプ13および14、発散型円すいセクション15を含み、圧縮状態で、経動脈配置まで保持する。バルーンの前拡張(バルーン弁形成術)を行なった後にも、当該装置を挿入することができる。この場合、装置挿入(移植)カテーテルには、バルーンは含まれない。
【0078】
カテーテルは、患者の末梢動脈に挿入することができ、従来の方法で操作し、頸部2を大動脈弁口AOに合わせ、2基の弁輪クランプ3および4とともに、配置することができる。これは、弁尖の反対側に位置しており、弁尖を形成する(図15A)。
【0079】
鞘202は、その後、片側に移動しつつ(図15B)、拡張のため、最初の弁輪クランプ3(図15C)が、つぎに弁輪クランプ4(図15Dおよび15E)が、最後に人工補綴装置の発散型円すいセクション5(図15F)がリリースされる。バルーン201は、その後、膨張し(図15G)、基部セクション2を弁口内にしっかりと固着させる。その後しぼみ(図15H)、カテーテル200、バルーン201、鞘202が動脈から抜かれる。弁口内には、クランプで固着された人工補綴装置が残される。
【0080】
人工補綴装置は2基の弁輪クランプ3および4で固定されているため、バルーンの使用は必須条件ではない。それでも、弁口内に人工補綴装置を適切かつ確実に移植するために使用できる。2基の弁輪クランプ3および4を使用することにより、頸部セクション2がほんのわずかだけ伸びるようにすることが可能になる。その部分は従来のステント・タイプの移植に比べればはるかに小さく、そのため、冠動脈の遮断や閉塞の危険性が低下する。
【0081】
図16Aおよび16Fでは、図11に示されている人工補綴装置(支持器40の弁輪アレーを含む)の配置における、上記に解説されている一鞘施術法が図解されている。その状況は以下:図16Aに示されているように、頸部セクション32は大動脈弁口内に位置している;図16Bに示されているように、鞘201は、クランプ33の係留部位33aをリリースするために効果的な側に動かされている;図16に示されているように、鞘が動きつづけることにより、もう1つの弁輪クランプ34の係留部位34aがリリースされる;図16Dおよび16Eに示されているように、鞘が動きつづけることにより、人工補綴装置の発散型セクション35がリリースされはじめる;図16Fに示されているように、鞘はリリースのために効果的に動かされ、発散型セクション35、発散型セクション35の周囲の支持器40を含む人工補綴装置は完全に拡張する。特に図16Fに示されているように、支持器40は、人工補綴装置が移植された状態で、冠動脈CAを遮らないように構成することができる。
【0082】
図16A〜16hに図解されている方法では、バルーンは使用されていないが、図15A〜15Hに関連して上記に解説されているように、バルーンを使用する価値もまた認められている。大動脈弁口内への人工補綴装置の移植をより確実に行うためである。
【0083】
二鞘態様
図17A〜17hでは、人工補綴装置の配置における二鞘施術法が図解されている。ここでの人工補綴装置は、引例を目的とし、図4〜8に示されているものである。以下に解説する。
【0084】
二鞘施術法においては、300で示されているカテーテルは、人工補綴装置の弁輪クランプ13に合わせるため、外部末端に第一鞘301を、ならびに、人工補綴装置の弁輪クランプ14および発散型円すいセクション15に合わせるため、鞘301から内部に伸びる第二鞘302を含んでいる。この状況は、図17Aに図解されている。
【0085】
カテーテルは、まず最初に、人工補綴装置の頸部セクション12を大動脈弁口に配置するために操作される(図17A)。その後、鞘302は、片側横方向(図では右方向)に動かされ、弁輪クランプ14(図17B)をリリースする。クランプがリリースされると、カテーテルは心臓の内部に向かって(左方向)わずかに動かされ(図17C)、弁輪クランプ14の係留部位14aを、弁尖のその側にしっかりと固着させる。このとき、図17Cに示されているように、弁輪クランプ14は、弁尖の大動脈側(図8の18)にしっかりと合わせられる。
【0086】
その後、外部鞘301は、左方向に、心臓の内部へ、鞘302から離れるよう動かされる。これにより弁輪クランプ13がリリースされ、左室(図17D)に向いた弁尖の表面(図8の19)に密着する拡張状態になる。この後、カテーテル300は、弁輪クランプ13の係留部位13aを弁尖のその表面にしっかりと合わせるため、反対方向(右方向)に動かすことができる。
【0087】
その後、大動脈内の鞘302は、図17Eおよび17Fに示されているように、人工補綴装置の余剰をリリースし、拡張するため、鞘301からさらに離れるように動かすことができる。
【0088】
また、図17A〜17Fに図解されているカテーテルは、望みに応じて、バルーンを含めることができる(図には示されていない)。これは、大動脈弁口内で、基部12をわずかに追加して拡張するためであり、その後、バルーンをしぼめ、カテーテルと鞘を取り除く。
【0089】
上記の配置施術法において、バルーンが使用されていなくとも、人工補綴装置の基部セクションは、鞘(1つまたは2つ)が取り除かれたとき、わずかに拡張することが認められている。これは、大動脈弁輪内に基部をしっかりと固着させ、カテーテルおよび鞘を取り除けるようにするためである。しかしながら、バルーンの使用により、冠動脈の遮断や閉塞になることはないが、人工補綴装置の基部をさらに拡張させることができ、より効果的に弁尖内に固着させることができる。
【0090】
図18Aおよび18Bの引例により、人工補綴装置80が図解されている。これは、本発明のさらに別の実施態様に沿うように構成されている。人工補綴装置80は、図4の10と同様の構成になっており、同じ部品には同じ番号が割り当てられている。人工補綴装置80は、近位装着部品82(装置の心室または弁尖側)を含むことができる。これは、係留部位84の配列からなり、左室流出路(心室中隔基底、僧帽弁前尖の基底部)を形作る壁面に向かって伸び、壁面を覆うため、ライナー86に覆われている。近位装着部品82およびライナー86は、その近位末端部が遠位末端部(係留部位84の近く)より幅広のラッパ型形状にすることができる。この形状により、壁面ステント(または壁面ステント状のもの)を覆う形で、心室流入路を作成することができる。放射状に働く力により、流入口を心室中隔および弁前尖に押しつけ、装置を安定させる。この流入口は、左右対称、または、前弁尖の短部を覆うように伸び、僧帽弁の機能を損なうことのないよう、左右非対称にできる。
【0091】
図19Aおよび19Bの引例により、人工補綴装置90が図解されている。これは、本発明のさらに別の実施態様に沿うように構成されている。人工補綴装置80は、図4の10と同様の構成になっており、同じ部品には同じ番号が割り当てられている。人工補綴装置90では、生体適合素材の弁16が、比較的小さな直径(一般的に12〜16mm、これに限定されない)の流入口92に装着されており、これが人体の弁に移植される。ここでは、発散型圧回復流出口94は、全開した弁尖の末端部付近からはじまっている。収縮期に全開した弁は、直線形(その長さは弁尖により決まる)となり、発散型圧回復流出口への血流の直接流入を継続する。拡張期においては、弁が閉じることにより、人工補綴弁および発散型流出口のあいだに、弁尖の長さと同等の間隔が作られ、これにより、発散型流出口の近位(上流)末端部を通って、冠動脈への血流供給を可能にする。実施態様の1例においては、遠位の発散型流出口94は、リブ、ストラット、またはその他の接続部位96を介して、人工補綴弁に接続することができる(流入口92が弁尖を備えている例)。また別の実施態様として図19Cに示されているように、発散型流出口94は、人工補綴弁と接続(流入口94に接続されていない例)することができる。これにより、2段階の移植術(発散型流出口が先に配置し、すでに拡張されている流出口を経由しての人工補綴弁移植、またはその逆)が可能になる。この構成においては、発散型流出口は、壁面ステントの形で大動脈壁に伸びる遠位(下流)末端部をカバーすることができる。または、ライナーは、大動脈壁に到達する前に終わることができる。これにより、大動脈壁と発散型流出口の隙間の経路を通って、冠動脈への血流供給が可能になる。
【0092】
さらに別の実施態様においては、人体の弁の上に、その弁を残したまま、圧回復装置を取り付けることができる。この圧回復装置は、発散型ディフューザを形作る内部カバー形状となることができる。この内部形状は、収束セクションまたは直線セクション(変化のない区分)を備えることができる。既存の高速噴出に合わせるため、運動エネルギーの放散の前に、狭まった大動脈弁口の上部に配置することができ、装置を覆うライナーへの血流の早期再合流を導く。その後、装置の流出口の発散型形状により、血流の漸進的な拡張が起こり、エネルギー放散のない血流速度の斬新的な低下が起こり、運動エネルギーは外圧に再変換される(圧回復)。近位(上流)末端部は、冠動脈の上部から、好ましくは、またそれに限定されることなく、細管移行部においてはじまることができる。この実施態様においては、冠動脈への血流供給は、装置移植前と同様の仕組みで発生する。一方で、装置は大動脈人工補綴皮膜として機能し、大動脈の内腔を再形成し、圧を回復させる。また別の実施態様では、装置の近位(上流)末端部が、冠動脈の人体弁、またはその直上からはじまる。このとき、冠動脈血流は、発散型流出口の遠位(下流)末端部にあるライナーの端、および、大動脈壁への結合部との間に残された隙間から、壁面ステントの仕組みで供給される。
【0093】
ここにある本発明に関する解説は、複数の実施態様とともに記載されているが、これらは引例のみを目的としており、本発明はこれらに制限されるものではない。本発明の範囲には、記載されている実施態様の複合、さらに、ここに記載されてはいないが、専門家の発想する応用や変異などが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1A】図1Aは、狭窄弁に起因する健康問題、ならびに狭窄弁口を、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置に置換する有用性を解説する図面である。
【図1B】図1Bは、狭窄弁に起因する健康問題、ならびに狭窄弁口を、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置に置換する有用性を解説する図面である。
【図1C】図1Cは、狭窄弁に起因する健康問題、ならびに狭窄弁口を、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置に置換する有用性を解説する図面である。
【図2】図2では、本発明の実施態様の1例として、人工補綴装置が、圧を回復し、大動脈に非乱流性血流をもたらすことにより、上記の問題を治療することが図解されている。
【図3】図3は、図2の人工補綴装置の側面図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施態様における、人工補綴装置の略図である。
【図5】図5は、図4の人工補綴装置の側面図である。
【図6】図6は、心臓側から見た端面図であり、図4および5の大動脈弁輪に植え込まれた当該人工補綴装置が図解されている。
【図7】図7は、図4および5の当該人工補綴装置を大動脈側から見た斜視図である。
【図8】図8は、当該人工補綴装置を植え込んだ状態において、弁輪クランプが反対側の弁尖に合わせられた例の部分図である。
【図9】図9は、図4と同様の状態の人工補綴装置の図解である。しかしここでは、植え込まれた状態において、支持器が当該人工補綴装置の遠位部に使用されている。
【図10】図10では、大動脈弁輪に植え込まれた図9の当該人工補綴装置が図解されている。
【図11】図11は、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置の別の構成の断面図である。
【図11A】図11Aは、弁尖に装着された人工補綴装置を図解。
【図11B】図11Bは、収縮期における人工補綴装置の血流を図解。
【図11C】図11Cは、拡張期における人工補綴装置の血流を図解。
【図12】図12は、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置のさらに別の構成の簡略図である。
【図13】図13は、図12の当該装置の側面図。
【図14】図14では、図12および13の、当該人工補綴装置の半開(完全に閉じられていない)状態が示されている。
【図15A】図15Aは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15B】図15Bは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15C】図15Cは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15D】図15Dは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15E】図15Eは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15F】図15Fは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15G】図15Gは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図15H】図15Hは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16A】図16Aは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16B】図16Bは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16C】図16Cは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16D】図16Dは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16E】図16Eは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図16F】図16Fは、本発明の実施態様の1例であり、複数の種類の人工補綴装置を植え込む一鞘施術法の図解である。
【図17A】図17Aは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17B】図17Bは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17C】図17Cは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17D】図17Dは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17E】図17Eは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図17F】図17Fは、本発明の実施態様の1例であり、人工補綴装置を植え込む二鞘施術法の図解である。
【図18A】図18Aは、本発明のさらに別の実施態様に則って構成された人工補綴装置の簡略図および側面図である。
【図18B】図18Bは、本発明のさらに別の実施態様に則って構成された人工補綴装置の簡略図および側面図である。
【図19A】図19Aは、本発明のさらに別の実施態様に則って構成された人工補綴装置の簡略図および側面図である。ここでは、比較的小さな直径の流入口に装着された生体適合素材の弁が含まれている。発散型圧回復拍出口は、完全開口した弁尖末端部付近からはじまっている。
【図19B】図19Bは、本発明のさらに別の実施態様に則って構成された人工補綴装置の簡略図および側面図である。ここでは、比較的小さな直径の流入口に装着された生体適合素材の弁が含まれている。発散型圧回復拍出口は、完全開口した弁尖末端部付近からはじまっている。
【図19C】図19Cは、図19Aおよび19Bの人工補綴装置のバリエーションの簡略図である。ここでは、発散型拍出口はまだ接続されておらず、2段階の移植施術を可能にしている。
【図1a】
【図1b】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への移植に適し、液流の通過する単一液流路を備え、以下をそれぞれ明確に形成するよう形作られた、人工補綴装置を含む器具であって、
流入口と、
流入口から離れた発散部位と、を画成するように形成された器具において、
前記人工補綴装置が、軸方向に伸長できる複数のストラットを含んでいて、前記複数のストラットは、患者の心周期を通して、個々のストラットの遠位末端部が、互いに、近位末端部に比較して大きな間隔を保つことができるように、少なくとも当該発散部位分だけ伸長し、外部に向けて発散するようになっており、
発散エンベロープを含む前記発散部位は、ストラットに組み合わされており、心収縮期における開口状態を再現するように作られており、これにより、血流が当該装置を通過することを可能にしていて、さらに、折り畳み、血流通過を遮断し、心拡張期の閉口状態を再現するよう作られている、
器具。
【請求項2】
前記発散部位と組み合わさり、その周囲を取り巻くステントを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
それぞれの場所でストラットと組み合わされた、単一素材からなるエンベロープを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
各部位にそれぞれ2つのストラットが装着された、複数の分割部位を備えたエンベロープを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
人工補綴装置が1つの装着部位を備えていて、前記装着部位は前記装置を患者の大動脈弁に装着するためのものであり、移植において、前記発散部位は、患者の上行大動脈内に収容されるようになっている、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
人工補綴装置が複数の装着部位を備えていて、前記装着部位は、患者の人体弁の反対側に合わさるように形成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
開張角度0.1°〜50°をもって開く発散型セクションを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
開張角度3°〜10°をもって開く発散型セクションを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
開張角度5°〜8°をもって開く発散型セクションを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項10】
移植する患者の大動脈弁口の大きさに合わせて形成された人工補綴装置を含んでいて、患者の人体に既存の弁口の直径が、施術により拡大されることはない、請求項1に記載の器具。
【請求項11】
移植する患者の大動脈弁口の大きさに合わせて形成された人工補綴装置を含んでいて、患者の大動脈弁は切除されていない、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
液流入口と発散部位の間に頸部セクションを明確に形作るよう形成された人工補綴装置を含む、請求項1−11のいずれか一項に記載の器具。
【請求項13】
患者の上行大動脈内に植え込むことができるように形成された人工補綴装置を含んでいて、この際、発散部位は、収縮期における、頸部セクション内で損失した血圧の圧快復をもたらすよう形成されている、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
患者の大動脈弁口内に位置するよう形成された当該頸部セクションを含む、請求項12に記載の器具。
【請求項15】
軸方向の長さ20mm以下である当該頸部セクションを含む、請求項12に記載の器具。
【請求項16】
軸方向の長さが1〜10mmである、請求項15に記載の器具。
【請求項17】
軸方向の長さが約2mmである、請求項15に記載の器具。
【請求項18】
軸方向の長さが5mmである、請求項15に記載の器具。
【請求項1】
患者への移植に適し、液流の通過する単一液流路を備え、以下をそれぞれ明確に形成するよう形作られた、人工補綴装置を含む器具であって、
流入口と、
流入口から離れた発散部位と、を画成するように形成された器具において、
前記人工補綴装置が、軸方向に伸長できる複数のストラットを含んでいて、前記複数のストラットは、患者の心周期を通して、個々のストラットの遠位末端部が、互いに、近位末端部に比較して大きな間隔を保つことができるように、少なくとも当該発散部位分だけ伸長し、外部に向けて発散するようになっており、
発散エンベロープを含む前記発散部位は、ストラットに組み合わされており、心収縮期における開口状態を再現するように作られており、これにより、血流が当該装置を通過することを可能にしていて、さらに、折り畳み、血流通過を遮断し、心拡張期の閉口状態を再現するよう作られている、
器具。
【請求項2】
前記発散部位と組み合わさり、その周囲を取り巻くステントを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
それぞれの場所でストラットと組み合わされた、単一素材からなるエンベロープを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
各部位にそれぞれ2つのストラットが装着された、複数の分割部位を備えたエンベロープを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
人工補綴装置が1つの装着部位を備えていて、前記装着部位は前記装置を患者の大動脈弁に装着するためのものであり、移植において、前記発散部位は、患者の上行大動脈内に収容されるようになっている、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
人工補綴装置が複数の装着部位を備えていて、前記装着部位は、患者の人体弁の反対側に合わさるように形成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
開張角度0.1°〜50°をもって開く発散型セクションを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
開張角度3°〜10°をもって開く発散型セクションを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
開張角度5°〜8°をもって開く発散型セクションを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項10】
移植する患者の大動脈弁口の大きさに合わせて形成された人工補綴装置を含んでいて、患者の人体に既存の弁口の直径が、施術により拡大されることはない、請求項1に記載の器具。
【請求項11】
移植する患者の大動脈弁口の大きさに合わせて形成された人工補綴装置を含んでいて、患者の大動脈弁は切除されていない、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
液流入口と発散部位の間に頸部セクションを明確に形作るよう形成された人工補綴装置を含む、請求項1−11のいずれか一項に記載の器具。
【請求項13】
患者の上行大動脈内に植え込むことができるように形成された人工補綴装置を含んでいて、この際、発散部位は、収縮期における、頸部セクション内で損失した血圧の圧快復をもたらすよう形成されている、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
患者の大動脈弁口内に位置するよう形成された当該頸部セクションを含む、請求項12に記載の器具。
【請求項15】
軸方向の長さ20mm以下である当該頸部セクションを含む、請求項12に記載の器具。
【請求項16】
軸方向の長さが1〜10mmである、請求項15に記載の器具。
【請求項17】
軸方向の長さが約2mmである、請求項15に記載の器具。
【請求項18】
軸方向の長さが5mmである、請求項15に記載の器具。
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図15d】
【図15e】
【図15f】
【図15g】
【図15h】
【図16a】
【図16b】
【図16c】
【図16d】
【図16e】
【図16f】
【図17a】
【図17b】
【図17c】
【図17d】
【図17e】
【図17f】
【図18a】
【図18b】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図15d】
【図15e】
【図15f】
【図15g】
【図15h】
【図16a】
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【図16c】
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【図16e】
【図16f】
【図17a】
【図17b】
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【図18a】
【図18b】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【公表番号】特表2008−537891(P2008−537891A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548964(P2007−548964)
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/IL2005/001399
【国際公開番号】WO2006/070372
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506008917)ベンター テクノロジーズ リミティド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【国際出願番号】PCT/IL2005/001399
【国際公開番号】WO2006/070372
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(506008917)ベンター テクノロジーズ リミティド (2)
【Fターム(参考)】
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