説明

人工礁

【課題】 着生プレートに着生したアワビ等の磯根資源を簡単に採取することができると共に、設置場所に応じた所望の形状に形成することができる人工礁を提供すること。
【解決手段】 アワビやサザエを含む磯根資源を着生させることができ、その着生後に成長した磯根資源を採取することができる人工礁8であって、溝部を有する側壁部10と、その溝部に対して両側の各縁部が着脱自在に保持され磯根資源が着生する着生プレート9とを備える。海底に設置したこの人工礁8の着生プレート9の表面に、放流されたアワビやサザエを含む磯根資源を着生させることができ、その着生後に成長したアワビ等の磯根資源を採取することができる。この成長した磯根資源を着生プレート9から採取するときは、着生プレート9を側壁部10から簡単に取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば海底に設置して使用することができ、放流したアワビやサザエを含む磯根資源を着生させて、その着生後に成長した磯根資源を採取することができる人工礁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の人工礁の一例として、図9に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。同図に示す人工礁1は、複数の薄板2が上下方向に互いに隙間5を隔てて配置されているものである。これらの薄板2は、スペーサ3によって互いの間隔が規定されており、連結棒4によって一体に締結されている。
【0003】
この人工礁1によると、薄板2間の隙間5を魚の産卵場所として提供することができる。そして、薄板2どうしのそれぞれの隙間5は、上下の各薄板2によって覆われて外部から見え難くなっているので、魚の産卵及び育成に適している。
【特許文献1】特開2003−219755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図9に示す従来の人工礁1では、例えばこの人工礁1に対してアワビやサザエを含む磯根資源(図示せず)を放流して、各薄板2の表面にアワビ等の磯根資源を着生させて、その着生後に成長した磯根資源を採取するという使用を考えた場合、各薄板2に着生して成長したアワビ等を採取するときは、薄板2どうしの隙間5に手を入れて作業を行う必要があり、手間が掛かるという問題がある。
【0005】
そこで、それぞれの隙間5に手を入れ易くするために、隙間5を大きくすると、その分だけ人工礁1全体の嵩が大きくなって設置等の費用が嵩む。また、各薄板2の奥行きの寸法を短くして、薄板2の奥に手が届き易くすることも考えられるが、薄板2の面積を所定の大きさにしようとすると、各薄板2の横幅の寸法を長くする必要がある。このように、各薄板2の形状に制約があると、この人工礁1を所望の設置場所に設置できないことがある。
【0006】
そして、図9に示す各ナット6を連結棒4から外して、複数のそれぞれの薄板2をばらばらにすれば、各薄板2の表面に着生するアワビ等を採取し易いが、アワビ等を採取するたびに、人工礁1を分解したり組み立てることは、その分の手間と時間が掛かるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、着生プレートに着生したアワビ等の磯根資源を簡単に採取することができると共に、設置場所に応じた所望の形状に形成することができる人工礁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る人工礁は、アワビやサザエを含む磯根資源を着生させることができ、その着生後に成長した前記磯根資源を採取することができる人工礁であって、基体と、その基体に対して凹部と凸部との係合によって着脱自在に取り付けられ前記磯根資源が着生する着生プレートとを備えることを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る人工礁によると、海底に設置したこの人工礁の着生プレートの表面に、例えば放流したアワビやサザエを含む磯根資源を着生させることができ、その着生後に成長したアワビ等の磯根資源を採取することができる。そして、成長したアワビ等の磯根資源を着生プレートから採取するときは、着生プレートを、凹部と凸部との係合が外れる方向に移動させて基体から取り外せばよい。これによって、この取り外した着生プレートから磯根資源を簡単に採取することができる。また、着生プレートを、凹部と凸部とが係合する方向に移動させることによって、基体に簡単に取り付けることもできる。
【0010】
そして、この発明に係る人工礁において、複数の前記着生プレートは、略水平又は傾斜した状態で上下方向に多段に配置され、それぞれの前記着生プレートの両側の各縁部が、前記基体に複数設けられている溝部によって保持されるようにするとよい。このようにすると、着生プレートの両縁部を、基体に設けられている溝部に対して係合させたり取り外すことによって、着生プレートを基体に対して、簡単に取り付けたり取り外すことができる。そして、着生プレートを上下方向に多段に配置した構成としたので、この人工礁の設置面積を小さくすることができるし、作業者が磯根資源を放流して各着生プレートに着生させたり、磯根資源を各着生プレートから採取する際に、作業のための移動距離を短くすることができる。また、着生プレートを略水平に配置すると、磯根資源が着生プレートに着生し易くすることができるし、着生プレートを傾斜させて配置することによって、着生プレート上に土砂等が溜まり難くすることができる。
【0011】
また、この発明に係る人工礁において、前記基体に取り付けられている複数の前記着生プレートを前記基体に係止するための係止装置が設けられ、前記係止装置は、前記各着生プレート及び前記基体に設けられているそれぞれの係止孔と、前記それぞれの係止孔に挿通して前記各着生プレートを前記基体に係止するための棒状の係止部材とを備えるようにするとよい。このようにすると、基体に取り付けられた複数の着生プレートを基体に対して係止するときは、係止部材を、各着生プレート及び基体に設けられているそれぞれの係止孔に挿通すればよい。各着生プレートを基体に係止することによって、例えば各着生プレートが潮流等によって基体から外れないようにすることができる。そして、係止を解除するときは、係止部材を、各着生プレート及び基体に設けられている各係止孔から引き抜けばよい。この係止解除状態で、各着生プレートを基体に対して簡単に着脱することができる。
【0012】
更に、この発明に係る人工礁において、前記基体は、底盤と、この底盤と間隔を隔てて配置され平面形状が略十字形状の屋根部と、この屋根部の十字の各方向に突出する4つの各突出部を支持するように前記底盤に設けられ、対応する前記突出部の突出方向と平行する側壁部とを有し、前記各突出部ごとに設けられた前記側壁部は、互いに間隔を隔てて対向して設けられ、この互いに対向する側壁部の間に前記着床プレートを設けるとよい。このように構成すると、十字形状の屋根部の突出部どうしの間に隅角部が形成され、この隅角部に設けられている側壁部は、平面方向から見て略L字状に配置される。この略L字状に配置される側壁部には、潮流が衝突して渦が発生し易いので、このL字状部分には、海藻の胞子や流れ藻が滞留して着生し易く、よって、このL字状部分に海藻等を増殖させることができる。この増殖した海藻等は、アワビ等の磯根資源の餌となる。そして、略十字形状の屋根部の突出部の下方に配置されている着生プレートどうしの隙間から潮流を流入させることができ、この流入した潮流を他の突出部の下方に配置されている着生プレートどうしの隙間から流出させることができる。これによって、新鮮な潮流をアワビ等の磯根資源に行き渡らせることができる。
【0013】
そして、この発明に係る人工礁において、前記屋根部に開口部を設け、前記屋根部をセラミックス製の多孔質部材で形成すると共に、前記側壁部の外面又は前記底盤の上面にセラミックス製の多孔質部材を取り付けるとよい。このように、屋根部に開口部を設けると、各着生プレートどうしの隙間から流入する潮流をこの開口部からも流出させることができ、これによって、新鮮な潮流をアワビ等の磯根資源に十分に行き渡らせることができる。そして、屋根部をセラミックス製の多孔質部材で形成すると共に、側壁部の外面又は底盤の上面にセラミックス製の多孔質部材を取り付けると、この多孔質部材に海藻の胞子や流れ藻が着生し易く増殖させることができる。
【0014】
また、この発明に係る人工礁において、網状体で形成された餌料生物増殖構成体、又は多数の石を前記基体の底盤に設けるとよい。この餌料生物増殖構成体によると、網状体の多数の微細な空間が餌料生物の繁殖の住処となり、餌料生物を増殖させることができる。そして、多数の石によると、石どうしの間に形成される多数の複雑な形状の隙間が餌料生物や魚類の住処となり、餌料生物や魚類を繁殖させることができる。この増殖した餌料生物は、磯根資源の餌となる。
【0015】
更に、この発明に係る人工礁において、瓦ユニットを備え、この瓦ユニットは、複数枚の瓦を略水平にして、表裏の向きを交互に変えて上下方向に多段に配置して枠体内に設けた構成であって、前記基体の底盤に取り外し可能に設けられ、前記底盤から取り外した前記瓦ユニットを、前記基体の屋根部に設けた開口部に通して引上げ可能にするとよい。この瓦ユニットによると、表面が粗面である瓦を略水平に配置しているので、瓦の表面に磯根資源が安定して着生することができる。また、瓦を交互に表裏の向きを変えて多段に配置することによって、瓦どうしの間の空間を磯根資源の育成に適した大きに形成することができる。そして、瓦ユニットを基体の屋根部に設けた開口部に通して引上げることができるので、例えば瓦ユニットを地上に引き上げて、それぞれの瓦に着生して成長したアワビ等の磯根資源を簡単に採取することができる。
【0016】
そして、この発明に係る人工礁において、前記基体は、屋根部を有し、前記屋根部の上面が、外周に向かうに従って下降する傾斜面として形成するとよい。このように、屋根部の上面が外周に向かうに従って下降する傾斜面とすることによって、魚網が引っ掛かり難くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る人工礁によると、着生プレートを基体に対して凹部と凸部との係合によって着脱自在に取り付ける構成であるので、着生プレートを基体から簡単に取り外して着生プレートから磯根資源を簡単に採取することができる。また、このように、着生プレートから磯根資源を簡単に採取することができるので、作業者が着生プレートから磯根資源を手で採取し易くするために、着生プレート及び人工礁全体の形状を制限する必要がないし、人工礁を設置場所に応じた所望の形状にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る人工礁の一実施形態を図1〜図6を参照して説明する。図1に示すこの人工礁8は、海底に設置することができるものであり、例えばアワビ、サザエ、ウニ、ナマコ、イセエビ等の磯根資源をこの人工礁8に対して放流して着生させることができ、その着生後に成長したアワビ等の磯根資源を採取することができるものであり、磯根資源が着生することができる多数の着生プレート9、・・・と、この着生プレート9、・・・が取り付けられる側壁部10、・・・と、この側壁部10、・・・が設けられている底盤11と、側壁部10に支持されている屋根部12とを備えている。
【0019】
底盤11は、図1及び図2に示すように、平面形状が略正方形の板状体である。この底盤11の上面に、多数の側壁部10がこの底盤11と一体に設けられており、この多数の側壁部10上に屋根部12が取り付けられている。また、底盤11の上面の四隅には、吊下げ部13を設けてあり、この吊下げ部13を使用して人工礁8を吊下げて設置できるようになっている。
【0020】
屋根部12は、図1及び図3に示すように、合計4つの傾斜板(突出部)14によって形成され、この4つの傾斜板14は、平面方向から見て略十字形状となるように配置されている。つまり、これら4つの傾斜板14は、屋根部12の中心から4方向に外側に向かって突出するように配置され、外側に向かうに従って下降する方向に傾斜している。そして、この略十字形状に形成された屋根部12の中央部には、矩形の開口部12aが形成されている。
【0021】
側壁部10は、図1及び図2に示すように、4つの各傾斜板14に対して4つずつ設けられており、対応する傾斜板14を支持している。各側壁部10は、互いに所定の間隔を隔てて対向して配置され、対応する傾斜板14が屋根部12の中心から水平方向に突出するその方向と平行している。そして、これら互いに対向して配置されている側壁部10の間に複数の着生プレート9、・・・が着脱自在に設けられている。これら底盤11、屋根部12及び側壁部10が基体である。
【0022】
着生プレート9は、図4に示すように、略水平な状態で上下方向に多段に配置することができるように形成されており、それぞれの着生プレート9の両側の各縁部9a、9aが、側壁部10に複数設けられている溝部10aによって保持されるようにしてある。これらの着生プレート9は、同一の形状であり、図5(b)に示すように、奥行き方向に長い矩形の板状体である。着生プレート9の横幅は、着生プレート9が取り付けられる2つの側壁部10、10の壁面に設けられている溝部10a、10aに装着することができる寸法に形成されている。
【0023】
各溝部10aは、図5(a)に示すように、側壁部10の壁面に多数設けてあり、上下方向の間隔は、例えば50mmである。このように、溝部10aを多数設けてあるので、図4に示すように、着生プレート9に着生するアワビ等の磯根資源の大きさに応じて、適当な溝部10aに着生プレート9を装着して使用することができる。
【0024】
また、図4に示すように、側壁部10と10との間に装着された着生プレート9、・・・を、側壁部10、10に係止するための係止装置15が設けられている。この係止装置15は、側壁部10と10との間に上下方向に例えば多段に装着された着生プレート9を一括して側壁部10に係止することができるものであって、傾斜板14、各着生プレート9及び底盤11に設けられているそれぞれの係止孔16、17、18と、それぞれの係止孔16、17、18に挿通して、各着生プレート9を側壁部10に係止するための棒状の係止部材19とを備えている。
【0025】
各着生プレート9に設けられている各係止孔17は、図4に示すように、例えば手を掛けることができる大きさの長孔(貫通孔)であり、着生プレート9の前縁部の略中央位置に1つ形成されている。このように係止孔17を長孔としたのは、作業者が側壁部10に装着されている着生プレート9を引き出したり側壁部10に装着するときに、この係止孔17に手を掛けることができ、容易に出し入れできるようにするためである。
【0026】
各傾斜板14及び底盤11に設けられている各係止孔16、18は、図4に示すように、例えば円孔(貫通孔)である。これらの各係止孔16、18は、係止部材19を挿通することができる大きさである。
【0027】
係止部材19は、図4に示すように、所定長さの棒状部19aを備え、上端に環状の把手19bが設けられている。この棒状部19aは、傾斜板14、複数の着生プレート9及び底盤11に形成されたそれぞれの係止孔16、17、18に挿通することができる太さ及び長さであり、この挿通した状態で、上端に設けられている把手19bが傾斜板14の上面に当接して係止部材19が保持される。このように、係止部材19を各係止孔16、17、18に挿入することによって、各着生プレート9、・・・を対応する各側壁部10に係止することができ、これによって、例えば各着生プレート9が潮流27等によって側壁部10から外れないようにすることができる。
【0028】
図6は、屋根部12を構成する傾斜板14を、例えばアンカーボルト20によって側壁部10の上端部に固定して取り付けている構造を示している。これらの傾斜板14は、例えばセラミックス製の多孔質部材で形成されている。また、図1、図2及び図6に示すように、側壁部10の外面、及び矩形底盤11の上面の4つの各角部にセラミックス製の多孔質部材21をアンカーボルト20によって固定して取り付けてある。このセラミックス製の多孔質部材14、21は、例えば破砕瓦をセメントペーストによって結合したものであり、空隙率は例えば約25%であり、空隙は連通している。
【0029】
この多孔質部材21に形成されている入り組んだ形状の隙間は、微生物や原始動物、多毛類や甲殻類の幼生等の住処に適しており、更に、海藻の胞子や流れ藻等の海藻類が着生するものとして優れている。そして、これら微生物や海藻類は、それぞれの着生プレート9に着生するアワビ等の磯根資源の餌となり、磯根資源の育成及び増殖に使用される。
【0030】
そして、図2に示すように、底盤11の中央部には、石収容籠22を設けてある。この石収容籠22内には、多数の石(例えば栗石)23、・・・が配置されている。この栗石23の重量は、人工礁8を海底に安定して設置するためにも機能している。そして、多数の栗石23どうしの間には、多数の複雑な形状の隙間が形成されるので、それぞれの隙間が餌料生物や魚類の住処となり、餌料生物や魚類の繁殖を促進することができる。
【0031】
なお、着生プレート9は、例えばプラスチックや防錆処理を施した軽量金属製であり、係止部材19は、例えばステンレス製である。側壁部10及び底盤11は、例えばコンクリートで一体に形成されている。底盤11の一辺の長さは、例えば約3.5mである。
【0032】
上記のように構成された図1等に示す人工礁8は、例えば海底に設置することができる。そして、この人工礁8に対して、例えばアワビやサザエを含む磯根資源(図示せず)を放流することによって、これら磯根資源を多数の着生プレート9の上下の各表面に着生させることができる。そして、その着生したアワビ等の磯根資源が成長した後に、これら磯根資源を採取することができる。
【0033】
つまり、この成長したアワビ等の磯根資源を着生プレート9から採取するときは、図4に示す係止部材19を引き上げてそれぞれの係止孔16、17、18から引き抜けばよい。これによって、各着生プレート9の側壁部10に対する係止を解除することができ、それぞれの着生プレート9を側壁部10の溝部10aから簡単に引き抜いて取り外すことができる。よって、この取り外した着生プレート9から磯根資源を簡単に採取することができる。
【0034】
そして、磯根資源を採取した後に、図4に示すように、それぞれの着生プレート9を側壁部10に設けられているそれぞれの溝部10aに挿入して装着する。そして、係止部材19を各係止孔16、17、18に挿入することによって、各着生プレート9が側壁部10から外れないように簡単に係止することができる。
【0035】
このように、この係止装置15を使用することによって、各着生プレート9を側壁部10に対して簡単に係止することができるし、係止を簡単に解除することができる。そして、係止を解除すると、各着生プレート9を側壁部10に対して、簡単に取り付けることができるし、取り外すこともでき、そして、各着生プレート9を取り外すことによって、各着生プレート9から磯根資源を簡単に採取することができる。また、このように、着生プレート9から磯根資源を簡単に採取することができるので、作業者がそれぞれの着生プレート9から磯根資源を手で採取し易くするために、着生プレート9及び人工礁8全体の形状を制限する必要がないし、人工礁8を設置場所に応じた所望の形状にすることができる。
【0036】
そして、図4に示すように、着生プレート9を上下方向に多段に配置することができる構成としたので、この人工礁8の設置面積を小さくすることができるし、作業者が磯根資源を放流して磯根資源を各着生プレート9に着生させたり、磯根資源を各着生プレート9から採取する際に、作業のための移動距離を短くすることができる。また、着生プレート9が略水平に装着されているので、磯根資源が着生プレート9に着生し易い。
【0037】
ただし、図には示さないが、各溝部10aを傾斜させて形成して、各着生プレート9を傾斜させて配置するようにしてもよい。このようにすると、各着生プレート9上に土砂等が溜まり難くすることができ、土砂等が邪魔にならずに磯根資源を簡単に採取することができる。
【0038】
更に、図4に示すように、側壁部10に設けられている多数の溝部10aは、高さ方向に多段に設けてあるので、上下の着生プレート9どうしの間隔が、磯根資源の大きさに応じて形成されるように、着生プレート9を所望の溝部10aに装着することができる。
【0039】
そして、図1に示すように、平面形状が十字形状の屋根部12の傾斜板14どうしの間には、隅角部24が形成され、それぞれの隅角部24に設けられている側壁部10、10は、平面方向から見てL字状に配置されている(図2参照)。このL字状の側壁部10、10には、潮流27が衝突して渦25が発生し易いので、このL字状部分には、海藻の胞子や流れ藻等が滞留して着生し易く、よって、このL字状部分に海藻等を増殖させることができる。この増殖した海藻等は、アワビ等の磯根資源の餌となる。そして、屋根部12を形成する傾斜板14の下方に配置されている着生プレート9どうしの隙間26から潮流27を流入させることができ、この流入した潮流27を他の傾斜板14の下方に配置されている着生プレート9どうしの隙間26から流出させることができる。これによって、新鮮な潮流27をアワビ等の磯根資源に行き渡らせることができる。これによって、磯根資源を効率よく成長させることができる。
【0040】
また、図1に示すように、屋根部12の中央部に開口部12aを設けた構成としたので、各着生プレート9どうしの隙間26から流入する潮流27をこの開口部12aからも流出させることができ、これによって、新鮮な潮流27をアワビ等の磯根資源に十分に行き渡らせることができる。そして、このように潮流27が人工礁8内を適度に通過することができるし、側壁部10のL字状部分に渦25が発生し易いので、多孔質部材で形成された屋根部12や、側壁部10の外面及び底盤11の上面に取り付けた多孔質部材21に海藻の胞子や流れ藻等が着生し易く増殖させることができる。これらの海藻等は、餌料生物や磯根資源の餌となり、磯根資源を効率よく成長増殖させることができる。
【0041】
更に、図1に示すように、この人工礁8によると、屋根部12の平面形状を略十字形状とし、屋根部12を構成する各傾斜板14が外側に向かうに従って下降する方向に傾斜し、各傾斜板14の水平方向の外縁部が、側壁部10の鉛直方向の外縁部と接合して連なる構成としたので、この人工礁8に魚網が引っ掛かり難くすることができる。
【0042】
ただし、上記実施形態では、図2に示すように、底盤11の中央部に多数の栗石23を配置したが、これに代えて、図7(a)に示すような餌料生物増殖構成体28を設置してもよい。この餌料生物増殖構成体28は、略立方体に形成された外側枠体29を有し、この外側枠体29内に多数の増殖構成体ユニット30、・・・が収容されている。それぞれの増殖構成体ユニット30は、図7(b)に示すように、略立方体に形成された内側枠体31を有し、この内側枠体31の6つの各面に網部材32が張られている。そして、この網部材32で形成された略立方体の内側空間に、例えば魚網等の網状体(図示せず)が折畳んで収容されている。この網状体の多数の微細な空間は、餌料生物の繁殖の住処となり、餌料生物を増殖させることができる。この増殖した餌料生物は、磯根資源の餌となる。
【0043】
また、図7(a)に示す餌料生物増殖構成体28では、外側枠体29内に図7(b)に示す増殖構成体ユニット30を多数配置した構成としたが、この増殖構成体ユニット30に代えて、図8に示す瓦ユニット33を外側枠体29内に多数配置した構成(磯根資源増殖構成体(図示せず))としてもよい。それぞれの瓦ユニット33は、図8に示すように、複数枚の瓦35を略水平にして、表裏の向きを交互に変えて上下方向に多段に配置して、内側枠体31内に配置した構成である。この瓦ユニット33によると、表面が粗面である瓦35を略水平に配置しているので、瓦35の上表面に磯根資源が安定して着生することができる。また、瓦35を交互に表裏の向きを変えて多段に配置することによって、瓦35どうしの間の空間を磯根資源36、・・・の育成に適した大きに形成することができる。
【0044】
そして、図7(a)に示すように、外側枠体29の上面には、4つの吊下げ部37、・・・が溶接されている。この吊下げ部37を使用して餌料生物増殖構成体28又は磯根資源増殖構成体を吊下げて、屋根部12に形成されている開口部12aに通して、底盤11上に取り外し自在に設置することができる。そのために、開口部12aは、これら餌料生物増殖構成体28及び磯根資源増殖構成体よりも大きい寸法に形成されている。
【0045】
また、磯根資源増殖構成体は、吊り上げて屋根部12に設けた開口部12aに通して引上げることができる。従って、例えば磯根資源増殖構成体を地上に引き上げて、それぞれの瓦35に着生して成長したアワビ等の磯根資源を簡単に採取することができる。
【0046】
更に、上記実施形態では、図4に示すように、側壁部10、10の側面に設けた溝部10a、10aに着生プレート9の縁部9a、9aを挿入することによって、この着生プレート9を側壁部10、10に着脱自在に取り付ける構成としたが、これに代えて、図には示さないが、例えば側壁部10の側面に、上側突起及び下側突起を上下方向に間隔を隔てて複数組み設け、この上側突起と下側突起との間に着生プレート9の両側の各縁部9a、9aを挿入して取り付ける構成としてもよい。
【0047】
そして、上記実施形態では、図4に示すように、着生プレート9に設けた係止孔17に手を掛けて、この着生プレート9を引き出したり押込むことができる構成としたが、例えば着生プレート9の上面の手前側の縁部に把手を設け、この把手を掴んでこの着生プレート9を引き出したり押込むことができる構成としてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、図1に示すように、屋根部12の平面形状を十字形状としたが、これ以外の形状の例えば平面方向から見て3方向又は5方向に向かって延びる形状としてもよいし、四角形等の多角形としてもよい。そして、この多角形の屋根部の下方に着生プレート9を設ける。
【0049】
更に、上記実施形態において、多数の栗石23、上記磯根資源増殖構成体、及び餌料生物増殖構成体28のうちの2つ、又は3つを底盤11に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係る人工礁は、着生プレートに着生したアワビ等の磯根資源を簡単に採取することができると共に、設置場所に応じた所望の形状に形成することができる優れた効果を有し、このような人工礁等に適用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の一実施形態に係る人工礁を示す斜視図である。
【図2】同実施形態に係る人工礁のA−A断面図である。
【図3】同実施形態に係る人工礁の正面図である。
【図4】同実施形態に係る人工礁の着生プレートが係止装置で係止されている状態を示す部分拡大斜視図である。
【図5】(a)は同実施形態に係る人工礁から着生プレートを取り外した状態を示す部分拡大斜視図、(b)は同実施形態の着生プレートを示す拡大斜視図である。
【図6】同実施形態に係る人工礁の屋根部と側壁部との結合構造を示す拡大縦断面図である。
【図7】(a)は同発明の他の実施形態に設けられる餌料生物増殖構成体を示す拡大斜視図、(b)は同餌料生物増殖構成体が備える増殖構成体ユニットを示す拡大斜視図である。
【図8】同発明の更に他の実施形態に設けられる瓦ユニットを示す拡大斜視図である。
【図9】従来の人工礁を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
8 人工礁
9 着生プレート
9a 着生プレートの縁部
10 側壁部
10a 溝部
11 底盤
12 屋根部
12a 開口部
13、37 吊下げ部
14 傾斜板(屋根部)
15 係止装置
16、17、18 係止孔
19 係止部材
20 アンカーボルト
21 多孔質部材
22 石収容籠
23 栗石
24 隅角部
25 渦
26 隙間(着生プレート)
27 潮流
28 餌料生物増殖構成体
29 外側枠体
30 増殖構成体ユニット
31 内側枠体
32 網部材
33 瓦ユニット
35 瓦
36 磯根資源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アワビやサザエを含む磯根資源を着生させることができ、その着生後に成長した前記磯根資源を採取することができる人工礁であって、
基体と、その基体に対して凹部と凸部との係合によって着脱自在に取り付けられ前記磯根資源が着生する着生プレートとを備えることを特徴とする人工礁。
【請求項2】
複数の前記着生プレートは、略水平又は傾斜した状態で上下方向に多段に配置され、それぞれの前記着生プレートの両側の各縁部が、前記基体に複数設けられている溝部によって保持されることを特徴とする請求項1記載の人工礁。
【請求項3】
前記基体に取り付けられている複数の前記着生プレートを前記基体に係止するための係止装置が設けられ、前記係止装置は、前記各着生プレート及び前記基体に設けられているそれぞれの係止孔と、前記それぞれの係止孔に挿通して前記各着生プレートを前記基体に係止するための棒状の係止部材とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の人工礁。
【請求項4】
前記基体は、底盤と、この底盤と間隔を隔てて配置され平面形状が略十字形状の屋根部と、この屋根部の十字の各方向に突出する4つの各突出部を支持するように前記底盤に設けられ、対応する前記突出部の突出方向と平行する側壁部とを有し、前記各突出部ごとに設けられた前記側壁部は、互いに間隔を隔てて対向して設けられ、この互いに対向する側壁部の間に前記着床プレートが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の人工礁。
【請求項5】
前記屋根部に開口部を設け、前記屋根部をセラミックス製の多孔質部材で形成すると共に、前記側壁部の外面又は前記底盤の上面にセラミックス製の多孔質部材を取り付けたことを特徴とする請求項4記載の人工礁。
【請求項6】
網状体で形成された餌料生物増殖構成体、又は多数の石を前記基体の底盤に設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の人工礁。
【請求項7】
瓦ユニットを備え、この瓦ユニットは、複数枚の瓦を略水平にして、表裏の向きを交互に変えて上下方向に多段に配置して枠体内に設けた構成であって、前記基体の底盤に取り外し可能に設けられ、前記底盤から取り外した前記瓦ユニットを、前記基体の屋根部に設けた開口部に通して引上げ可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の人工礁。
【請求項8】
前記基体は、屋根部を有し、前記屋根部の上面が、外周に向かうに従って下降する傾斜面として形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の人工礁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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